溶接部のガスパージ装置
【課題】
容器のマンホール本体に、鏡板を裏波溶接して閉止する際に、裏波溶接部分近傍に限定して容器内に不活性のガスを充填し酸素濃度を低く維持するガスパージ治具を提供する。
【解決手段】
マンホール本体内でガスパージ治具の傘部を展開して内部空間4とガスパージ領域外容器内部空間5とを区画する。その区画後においても、ガスパージ治具の傘先端キャップ
18に通気口53を設けてあるので、不活性ガスを充填しないガスパージ領域外容器内部空間5と容器外空間54とが内筒11を通して通気できる。そのため、不活性ガスを充填するガスパージ領域である内部空間4を両空間の圧力差による通気の経路とならずにすみ、よって内部空間4が通気された場合に生じる不活性ガスの内部空間4からの流出および内部空間4内への空気の流入を防止できる。このようにして不活性ガスを充填後の内部空間4内の酸素濃度の増加を防止する。
容器のマンホール本体に、鏡板を裏波溶接して閉止する際に、裏波溶接部分近傍に限定して容器内に不活性のガスを充填し酸素濃度を低く維持するガスパージ治具を提供する。
【解決手段】
マンホール本体内でガスパージ治具の傘部を展開して内部空間4とガスパージ領域外容器内部空間5とを区画する。その区画後においても、ガスパージ治具の傘先端キャップ
18に通気口53を設けてあるので、不活性ガスを充填しないガスパージ領域外容器内部空間5と容器外空間54とが内筒11を通して通気できる。そのため、不活性ガスを充填するガスパージ領域である内部空間4を両空間の圧力差による通気の経路とならずにすみ、よって内部空間4が通気された場合に生じる不活性ガスの内部空間4からの流出および内部空間4内への空気の流入を防止できる。このようにして不活性ガスを充填後の内部空間4内の酸素濃度の増加を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接構造物に溶接を施す際に溶接構造物の内側に面した溶接部周囲を不活性ガスでガスパージする溶接部のガスパージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等に採用される容器のマンホールは一般にフランジ構造であり、溶接で閉止されることはない。しかし、例えば使用済燃料再処理施設の放射線線量が高い溶液を内包するステンレス製容器のマンホールのように、試運転後、鏡板をマンホール本体に溶接して容器を閉止する場合がある。
【0003】
このマンホール閉止の際は、マンホール本体に鏡板を外側から裏波溶接するため、容器内にガス保護壁(パージダム)を形成して酸素濃度が1%未満となるよう不活性ガスで空気を置換して溶接を行う必要がある。そのためには、裏波溶接用の治具は、例えば放射線透過試験を実施する際に、線源(ガンマ線照射装置)を容器内に挿入するための開口部
(以下、ガンマホール)等の容器の最終開口部から挿入,回収が可能である必要がある。
【0004】
また、上記のガスパージ治具は容器外からの挿入,回収が可能でありながら、パージダムとしての機能を果たすとともに、例えば使用済燃料再処理施設の容器内と容器外に圧力差があり不活性ガスの流出および空気の流入が生じる環境下でも、十分なガスのシール性を確保できなければならない。さらに、マンホール本体に溶接する鏡板の周囲に構造物があり十分な作業領域が確保できない場所においても設置できるものでなければならない。
【0005】
このような治具を使わない方法として配管の溶接に使用されている水溶性紙をマンホール本体に貼り付け、パージダムを形成する方法が考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この方法は、小径の配管に対しては有効な方法であるが、500mmから600mmと内径の大きな容器のマンホール本体に適用した場合、容器内の湿分を吸い込んで剥がれやすく安定して良好な裏波溶接を得難い上、多量の水溶性紙を使用することとなり容器内に不溶解のまま残る可能性がある。また、溶接の熱影響により水溶性紙が変質し、水溶性が低下するのを防止するため、設置場所を溶接線から充分離す必要があるが、マンホール本体では溶接線から水溶性紙を充分に離して設置するスペースがない場合がある。
【0007】
一方、従来からある配管のガスパージ用の治具は、マンホール鏡板のガンマホール(内径50mmから80mm)から取り出せないことやマンホール本体の長さが短いことから、これを容器のマンホール溶接に適用することはできない。
【0008】
【特許文献1】特開平9−10933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、容器内と容器外に圧力差がある場合でも、不活性ガスパージ領域の酸素濃度を極力低く維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記発明の目的を達成するための手段は、溶接構造物内に形成された空間内に挿入されて拡大することによって、その空間を不活性ガスを充填する第1の領域と前記不活性ガスを充填しない第2の領域とに分離する不通気性のシートと、前記シートを支持するフレームと、前記フレームを操作して、前記シートを拡大及び縮小する操作手段と、前記第2の領域と、前記溶接構造物外の空間との間を連通する通気路と、前記第1の領域に前記不活性ガスを供給する流路を備えた溶接部のガスパージ装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶接作業に際して不活性ガスを充填する領域の周囲に圧力差を生じている各空間が隣接していても、その各空間の間で通気できるので、各空間から不活性ガスを充填する領域への空気の侵入が抑制でき、不活性ガスの充填領域における不活性ガス濃度の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態に係わる各実施例について図面に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、図1〜図8を引用して実施例1について説明する。使用済燃料再処理施設の放射線線量が高い溶液を内包するステンレス製の容器のマンホールのように、試運転後、鏡板をマンホール本体に溶接して容器を閉止する場合がある。本実施例ではその鏡板をマンホール本体に溶接する際の例である。
【0014】
図1,図2に示すステンレス製の容器1aは、液体や気体を貯蔵する円筒形の容器である。この容器1aは使用済燃料再処理施設の建物の中の部屋に設置され、この部屋内は部屋の中の雰囲気が部屋の外に出ないように部屋の外に比較して空調換気設備で負圧に維持されている。この容器1aの上側または側面に円筒形のマンホール本体1bが設けられる。マンホール本体1bは、径が300mm〜600mmでステンレス鋼板製である。マンホール本体1bは、溶接によって容器1aに結合される。
【0015】
マンホール本体1bの開口部は、鏡板1cで塞がれる。鏡板1cはマンホール本体1bへ溶接線2に沿って裏波溶接で結合する。このように、マンホールはマンホール本体1bと鏡板1cとの溶接構造物によって成り立っている。なお、容器1aも溶接構造物である。
【0016】
この溶接に際し、溶接線2をマンホールの外側から裏波溶接するためにマンホール内部空間4の空気を不活性ガス3で置換するためのガスパージ領域の区画装置(以下、ガスパージ治具という。)を用いる。鏡板1cはガンマ線照射装置を容器内に挿入するためのガンマホールと称する挿入穴1dを有する。この挿入穴1dからガスパージ治具はマンホール本体1bの内部に挿入される。
【0017】
ガスパージ治具について、以下に説明する。ガスパージ治具は、大別すると、スライド式のシリンダ部6とシリンダ部6に取り付けられた傘部7とより構成されている。シリンダ部6は、図3のように、中空円筒状の外筒10と、その外筒10内にその外筒10の内面に対して隙間を有して通された中空円筒状の内筒11を備えている。
【0018】
外筒10には、上部に操作側シリンダガイド12が、下部に傘側シリンダガイド13が止めネジで固定されている。内筒11は操作側シリンダガイド12および先端側の傘側シリンダガイド13とに通されていて外筒10の中を上下方向へスライドできるように摺動自在に支持されている。操作側シリンダガイド12と内筒11及び外筒10との間には、気密性を維持するためのシール部材としてのOリング19が設けられている。傘側シリンダガイド13の下部にはシリンダガイドキャップ15が止めネジ20で装着され、傘側シリンダガイド13の下端と内筒11との間の隙間から不活性ガス3がガスパージ領域外容器内部空間5に漏れることを抑制している。
【0019】
傘側シリンダガイド13の外周囲には、傘側シリンダガイド13の外周囲やシリンダガイドキャップ15との間で円筒状の隙間が円筒状スリットとしてできるように、シリンダガイドキャップ15の外径よりも内径が大径なシリンダガイドカバー14を止めネジ20で固定してある。
【0020】
操作側シリンダガイド12には不活性ガス注入口26として、不活性ガスの圧送設備からのホースが操作側シリンダガイド12内のガス通路21と接続されている。不活性ガス注入口26から導入された不活性ガスは、操作側シリンダガイド12内のガス通路21を通り、操作側シリンダガイド12と内筒11の隙間であるガス通路22を経て、外筒10と内筒11の間に形成された隙間であるガス通路23に導かれる。
【0021】
そのガス通路23を通った不活性ガスは、さらにガス通路24,傘側シリンダガイド
13と内筒11との隙間を通って傘側シリンダガイド13内に設けた水平なガス通路25を通って、傘側シリンダガイド13とシリンダガイドカバー14との間に形成された円筒状スリット16からマンホール内部空間4へと拡散できるようになっている。
【0022】
また、傘部7の傘側シリンダガイドキャップ15は、取り付け部に傘部7が展開して開いた状態においてガス保護用のシート42と接触するパッキン17が設けられる。このパッキン17により、円筒状スリット16から噴出した不活性ガスがガスパージ領域外容器内部空間5に漏れ出ることが防がれる。
【0023】
このようにして、不活性ガスの漏洩を防ぎながら、不活性ガスを注入口26から噴出用の円筒状スリット16まで導かれる構造としている。
【0024】
傘部7は以下のような構成を有する。即ち、図3,図4および図5に示すように、傘部7は傘型フレームを有する。傘型フレームとは、放射状15°間隔に配置された複数本の親フレーム40と、同じく受フレーム41とを有する。親フレーム40と受フレーム41との一端側部分はリベットローラ固定リベット継手52で繋がれ、その継手を中心に相互に上下方向へ回転自在に接続されている。
【0025】
親フレーム40の他端部分は、傘側シリンダガイドキャップ15に上下回転自在に軸着され、受フレーム41の他端部分は傘先端キャップ18に上下回転自在に軸着されている。
【0026】
傘先端キャップ18は、内筒11の下端を覆うように内筒11に装着され、止めネジで内筒11の下端部分に固定されている。その傘先端キャップ18には、内筒11の内側と通じる通気口53が開口している。この通気口53からガスパージ領域外容器内部空間5の空気が内筒11の中を通気路として通り容器1aが設置されている部屋の空間である容器外部空間54へ出ることが出来る構成である。
【0027】
このようなガスパージ治具は、外筒10を押さえながら内筒11を下方へ押し込むことにより、親フレーム40と受フレーム41とが直線になり、傘型フレームが伸び、シート42が窄むように畳まれて傘部7が閉じ、図2に示す縮小状態となる。外筒10を押さえながら逆に内筒11を上方へ引くと親フレーム40と受フレーム41がリベット継手50で屈折し、傘部7が開かれ図1に示すような展開されて拡大の状態となる。
【0028】
図1に示すように、外筒10には挿入穴1dの上端部へ嵌め込むことにより設置され、ガスパージ治具の位置決めをするストッパ30が存在する。パージダムを形成するために適切な位置まで傘部を縮小した状態でガスパージ治具をストッパ30と挿入穴1dへ挿入後、ストッパ30の固定レバー31を回すことによりストッパ30が外筒10に固定され、位置決めが可能である。またストッパ30は、ガスパージ治具の落下防止具としても機能する。
【0029】
図6は、ガス保護用のシート42の外周部形状を示す。ガス保護用のシート42は、傘フレームが展開して傘部7が開かれたとき、親フレーム40と受フレーム41の先端を内包する最小径の円の直径より20mmから30mm程度大き目の外径を有する。つまり、傘部7を広げると、シート42の外径は、傘型フレームの外径よりも大きく形成されている。
【0030】
このため、図4に示す通り、傘部7を展開して拡大されたとき、傘型フレームの先端にローラ固定リベット継手52で回転自在に固定されたローラ51が、ガス保護用のシート42の外周側部(シートシール部43)をマンホール本体1bの内壁(内面)に押し付け、ガス保護用シートシール部43が垂れ下がるように折れ曲がりながらマンホール本体
1bの内壁に密着する。この密着により、不活性ガスがガス保護用のシート42の上方に位置する第1の領域であるマンホールの内部空間4から第2の領域であるガスパージ領域外容器内部空間5へ漏れ出るのを防ぐ。
【0031】
図7は、ガス保護用シート42のシートシール部が折れ曲がりマンホール本体1bの内壁面に接した状態を拡大して示す。図6に示すように、ガス保護用シート42のシートシール部43には切り欠き44がある。ガス保護用シート42のシートシール部43に切り欠き44を設けない構造とした場合は、傘部7を開いたとき、図7中の(a)図に示すようにガス保護用シートシール部にしわ46が寄るため、マンホール内壁とガス保護用シートシール部の間に隙間47が生じる。
【0032】
この隙間47はマンホール内部空間4からガスパージ領域外容器内部空間5へのガス漏れの経路となるため、ガスパージの効率低下を招く。図6に示す切り欠き44は、ガス保護用シートのシートシール部43が直角に折れ曲がるとき、三角形の切り欠きが閉じシート42に寄るしわを吸収するため、図7中の(b)図に示すように、隙間が発生せず有効なパージダムを形成することができる。
【0033】
シリンダ部6および傘部7のフレーム等はアルミ製とすることにより軽量化ができ取り扱いが容易である。ガス保護用のシート42はガラス繊維クロスにシリコンコーティングを施した耐熱性に優れたものとし、溶接熱によるシート溶解を防いでいる。
【0034】
次に実施例1を動作の面から説明する。マンホール本体1bと鏡板1cとを溶接線2で溶接する時には、溶接線2での溶接開先合わせを実施後、図2に示すようにガスパージ治具の傘部7を縮小させた状態(窄めた状態)で挿入穴1dからマンホール本体1bの内部に所定の位置まで挿入する。所定の位置とは、シリンダガイドカバー14が溶接線よりも下方且つマンホール本体1bの下端よりの上方に位置することが目安とされる。
【0035】
このようにするとシート42が溶接線2よりも下方に位置する。そこで、挿入穴1dの上部開口部に差し込んだストッパ30の固定レバー31を操作してストッパ30と外筒
10を固定する。このことにより、ガスパージ治具の位置決めをする。次にガスパージ治具の内筒11を引張り上げて、傘部7を開き(展開状態)パージダムを形成させる。ストッパ30にはガス抜き管33や酸素濃度計が通される穴が開けられ、その穴の周囲はテープで目張りして密閉性を確保している。
【0036】
そして、図1に示すようにストッパ30から挿入した酸素濃度計32でマンホール本体の内部空間4の酸素濃度を測定しながら不活性ガス注入口26より、例えば不活性ガスとしてアルゴンガスを注入する。注入されたアルゴンガスは操作側シリンダガイドガス通路21から操作側シリンダガイドと内筒11との間の隙間によるガス通路22を通過し、さらに内筒11と外筒10との間の隙間によるシリンダ内ガス通路23を通過し、さらに傘側シリンダガイド13と内筒との間の隙間によるガス通路24を通過し、さらに傘側シリンダガイドガス通路25を通過し、さらにシリンダガイドカバー14とシリンダガイドキャップとの間の隙間による円筒状スリット16を通過して、その円筒状スリット16の下端からマンホール本体の内部空間4内に噴出し、マンホール本体の内部空間4の空気がアルゴンガスに置換される。
【0037】
アルゴンは分子量が40であり、一方、空気の平均分子量が29のため、空気より重いアルゴンがマンホール本体の内部空間4の下部から徐々に空気を上方へ押し上げ、押し上げられた空気はストッパ30を通して挿入穴1d内と容器外部空間54との間を連通させたガス抜き管33から容器外部空間54へ排出される。
【0038】
アルゴンの流量を調整してマンホール内部の酸素濃度が規定の濃度より低くなるようにし、溶接線2を作業員がマンホール外側からTIG溶接する。マンホール本体1bとマンホール鏡板1cはマンホールの外側から完全溶込溶接できるように、図8に示すようなU形開先70とし、裏波71が出るよう調整された条件にて溶接を行う。第1層目の裏波溶接のみでなく、その後の数層の溶接においてもマンホール内部をアルゴンガスで置換しながら溶接を行い、マンホール溶接線内側からの酸素の影響による溶接部の品質低下を防ぐ。
【0039】
その溶接中においても容器1aが設置されている部屋が負圧に維持されていることから、ガスパージ領域外容器内部空間5の圧力と容器外部空間54とに圧力差が生じる。この時、ガスパージ領域外容器内部空間5の空気が不活性ガスパージ領域であるマンホール本体の内部空間4を通過してガスパージ領域外容器内部空間5の空間へ移行しようとする。このような空気の移動が生じると、マンホール本体の内部空間4にパージされた不活性ガス3が隣接する空間へ漏れる上、空気が内部空間4に入ってくるので、内部空間4内の不活性ガス濃度が低下しようとする。
【0040】
ところが、本発明の実施例では、ガスパージ領域外容器内部空間5と容器外部空間54との間で圧力差が生じた際には、通気口53と内筒11を経て容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5との間で空気が通気しますので、マンホール本体の内部空間4を経由して容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5との間で空気が通気する現象の発生を防止できる。そのため、その通気によってマンホール本体の内部空間4にパージされた不活性ガス3が巻き込まれて隣接する容器外部空間54やガスパージ領域外容器内部空間5に漏出することが防止できる。
【0041】
さらに、ガスパージ領域外容器内部空間5と容器外部空間54の圧力が平均化され、マンホール本体の内部空間4にパージされた不活性ガス3がガスパージ領域外容器内部空間5に漏れることを防止し、圧力が平均化されることによっても有効なパージダムを形成できる。
【0042】
不活性ガスがマンホール本体の内部空間4に停滞するように、傘型フレームの親フレーム40にはガス保護用シートになるシート42が張られ、そのシート42が親フレーム
40に糸45で縫い付けられている。これによって、傘部7が展開した際には、円形のパージダムが形成される。シート42は、可撓性を有し、かつ不活性ガスや空気を通さない不通気性の材料で作られている。
【0043】
また、溶接時に発生する熱で、容器外部空間54の温度が上がり、圧力が高くなっても、内筒11の先端の穴から容器外部空間54の空気が入り、内筒11の中を通り、傘先端キャップ18に設けられた通気口53から、ガスパージ領域外容器内部空間5へ流れ、容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5の圧力を均一化する作用が働き、不活性ガスを有効にパージすることを維持できる。
【0044】
余盛72が所定の高さになるまで層を重ね溶接終了後、ガスパージ治具の内筒11を押し込んで傘部を畳み、挿入穴から治具を取り出す。
【0045】
このようにガスパージ治具の傘部のシートをホール本体内で広げることにより、溶接部周囲を不活性ガスが充満する不活性ガス充填空間に保ち、内筒11を通じて、傘先端キャップ18に設けられた通気口53によって、ガスパージ領域外容器内部空間5と容器外部空間54の圧力差を低減させ、ガスの漏れが抑えられ、不活性ガス充填空間のガス濃度を良好に保つことができる。ガス濃度良好に保つことによって、良好な裏波溶接をすることができる。
【実施例2】
【0046】
次に図9,図10に示す実施例2について説明する。前述した実施例1は容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5の圧力差を傘先端キャップ18に設けられた通気口53から内筒11を通して均圧化している。実施例2は、容器1aが設置されている部屋の圧力変動,容器外部空間54,マンホール本体の内部空間4,ガスパージ領域外容器内部空間5の溶接時に生じる大きな圧力変動が原因で、マンホール本体の内部空間4にパージされた不活性ガス3の流出および空気の流入によるガス濃度の低下を防止するために実施例1のガスパージ治具の外側に均圧装置を取り付ける。
【0047】
均圧装置は外筒の外周囲を囲うように配置された円管状の均圧管55と、均圧管55の下端に固定され、親フレーム40上のシート42と均圧管55の下端との間をシールするための均圧管パッキン56とより構成される。図10のように、固定治具61が外筒10に取り付けられ、その固定治具61で均圧管55をガスパージ治具に固定する。均圧管
55の上端に設けた水平なフランジの下端面と挿入穴1dの上端との間には、均圧管シール材60が均圧管55の挿入穴1dへの装着部位から気体が漏れないように施されている。その均圧管シール材60の一部には穴が開けられて、その穴に不活性ガス注入ホース
59やガス抜き管33や酸素濃度計32が通される。
【0048】
空気が均圧管55内と容器外部空間54との間で図10の矢印のように通気できる通路が確保されている。その通路以外の固定治具61と均圧管55上端との間には、シールが設けられている。
【0049】
均圧管パッキン56は均圧管パッキン押え57で均圧管55の先端に固定される。均圧管パッキン押え57は、均圧管パッキン押え用ネジ58で均圧管55に固定される。
【0050】
均圧装置を取り付ける際には、親フレーム40に取り付けられたガス保護用のシート
42のパッキン17と均圧管パッキン56との間の部分を除去しておく。また、均圧管
55を取り付ける場合には、不活性ガス3は不活性ガス注入口26から注入せずに、均圧管55とガンマホール1dの間にガス抜き管33の他に不活性ガス注入ホース59を通過さておいて、不活性ガス注入ホース59に不活性ガスのボンベを繋いで、不活性ガス3をマンホール本体の内部空間4に注入できる。このように不活性ガス注入通路を新たに確保してあるので、操作側シリンダガイド12の操作側シリンダガイドガス通路21から不活性ガス注入口26が取り外され、操作側シリンダガイド12の操作側シリンダガイドガス通路21は容器外部空間54に開放されている。その他の構成は実施例1と同じである。
【0051】
本実施例では、実施例1と同様にしてシート42をマンホール本体1b内で展開してマンホール本体の内部空間4とガスパージ領域外容器内部空間5との間を区画する。シート42が展開すると、シート42と均圧管パッキン56とが互いに押し当たってシート42と均圧管パッキン56との間はシールされる。
【0052】
その後に、不活性ガス注入ホース59を通じて不活性ガスをマンホール本体の内部空間4内に注入し、マンホール本体の内部空間4内の空気はガス抜き管33を通じて容器外部空間54へ排出される。このようにしてマンホール本体の内部空間4内の雰囲気は不活性ガスに置換される。不活性ガスをマンホール本体1bの内部空間4内に注入しながら溶接線2をマンホール本体1bの外側から裏波溶接する。
【0053】
容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5に圧力差が生じていると、その圧力差によって、実施例1と同様に内筒11を通って容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5との間で空気の移動が生じる。
【0054】
空気の移動は他の通路においても起こる。即ち、ガスパージ領域外容器内部空間5の圧力が高い場合にはガス保護用のシート42の除去した部分から均圧管55内に空気が入り、固定治具61と均圧管55の隙間から、容器外部空間54に抜ける。容器外部空間54の圧力が高い場合には逆の流れで空気がガスパージ領域外容器内部空間5に入る。
【0055】
さらに、ガスパージ領域外容器内部空間5の圧力が高い場合にはガス保護用のシート
42の除去した部分から均圧管55に入った空気は、傘側シリンダガイド13とシリンダガイドカバー14との間に形成された円筒状スリット16から傘側シリンダガイド内のガス通路25を通ってガス通路24,外筒10と内筒11の間に形成されたシリンダ内のガス通路23に導かれる。シリンダ内のガス通路23を通った空気は、操作側シリンダガイド12と内筒11の隙間であるガス通路22を通り、操作側シリンダガイド12内のガス通路21を通って容器外部空間54へ出る。容器外部空間54の圧力が高い場合には逆の流れで空気がガスパージ領域外容器内部空間5に入る。
【0056】
このように、容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5の通気性を向上させることによって、容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5の圧力を均圧化し、マンホール本体の内部空間4が空気の通気経路とならないようにして、マンホール本体の内部空間4にパージされた不活性ガス3の濃度を一定に保つことができる。
【実施例3】
【0057】
次に図11に示す実施例3について説明する。実施例3は、実施例2の一部を改良した例である。前述した実施例2では均圧管55を固定治具61でガスパージ治具に固定している。実施例3では、固定治具61に均圧管挿入取付治具62を設け、内側に均圧管押えバネ63を設置する。
【0058】
均圧管挿入取付治具62は、中央部に開口部を有する円板80と、その円板80の開口部縁に上端が固定された短管81と、円板の下面に固定されて短管81の外側に配置された円管状のバネケース82とを備えている。その短管81とバネケース82との間には、上下方向にバネストローク方向を向けて、均圧管押えバネ63が配置されている。
【0059】
均圧管挿入取付治具62を均圧管55の上端に図11のように差し込むと、均圧管押えバネ63の下端は、均圧管55の外周囲に固定したバネ受け83で受け止められ、均圧管押えバネ63の上端は円板80の下面にて下方へ押さえつけられる。均圧管55の上端と円板80との間には均圧管シール材60が実施例2と同様に設けられる。その均圧管シール材60を貫通して不活性ガス注入ホース59やガス抜き管33が容器外部空間54からマンホール本体の内部空間4側に通される点は実施例2と同様である。
【0060】
この実施例の場合には、内筒11を外筒10に対して上方へ引き上げてマンホール本体内で傘部7を開いてシート42を展開する。その後に、内筒11を下方へ下がらないように支持した上で固定治具61を押し下げる。固定治具61が押し下がる均圧管挿入取付治具62も押し下げられるので、均圧管押えバネ63が圧縮する。均圧管押えバネ63が圧縮することによる反力で均圧管55は下方へ押されて親フレーム40に取り付けられたガス保護用のシート42に均圧管パッキン56を強く押し付けることができる。
【0061】
その押し付けが維持できるように外筒10を固定治具61がクランプして、固定治具
61と外筒10とを一体化する。均圧管挿入取付治具62が押し下がった位置においては、均圧管挿入取付治具62と挿入穴1d上端との間に均圧管シール材60が施される。図11の構造では、短管81と均圧管55との間や均圧管55とバネケース82との間に空気の抜ける隙間があるように見受けられるが、実際にはその短管81と均圧管55との間の隙間は互いに上下方向に動ける最低限の隙間が設定されているので、均圧管55内の空気が図11中の矢印のように容器外部空間54へ抜け出ることが出来るものの、短管81と均圧管55との間の隙間を通過することが困難な構造とされている。
【0062】
このように、均圧管挿入取付治具62の均圧管押えバネ63のバネ力によって、ガス保護用のシート42に均圧管パッキン56を強く押し付けてシール性を向上させ、マンホール本体の内部空間4にパージされた不活性ガス3の濃度を一定に保つことができる。その他の事柄は、実施例2と同様である。
【実施例4】
【0063】
次に図12に示す実施例4について説明する。実施例4は、実施例2の構造の一部を改良した例である。改良点は以下の通りである。即ち、実施例2の内筒11に関して、傘部7を開いた状態で、操作側シリンダガイド12よりも上方の部分が内筒繋ぎ部リベット継手64によって継がれて屈曲自在に構成されている。屈曲箇所は図12のように2箇所とされ、内筒の端部が下方へUターンするように下方へ向けることが出来る。
【0064】
この実施例では、内筒11が屈曲する関係で内筒11を容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5との間の空気の通気路として利用できなくなっても、内筒11と外筒10との間の隙間や均圧管55がその通気路として用いられるので、容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5の圧力を均圧化でき、且つマンホール本体の内部空間4内を容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5との間の通気路になることが避けられる。
【0065】
このように、ガスパージ治具の内筒11に内筒繋ぎ部リベット継手64を設けることによって、ガスパージ治具の内筒11を段階的に曲げられる構造にしている。このように、内筒11が段階的に曲げられコンパクトになることによって、マンホール本体1bに溶接するマンホールの鏡板1cの周囲に構造物65があり、十分な作業領域が確保できない場所においても、ガスパージ治具の設置が可能な構造としている。その他の事柄は、実施例2と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明によるガスパージ治具は、容器に付属したマンホールに鏡板を溶接して、そのマンホールを閉止する際に、その溶接の裏波側の空間に不活性ガスを停滞させるためのパージダム形成に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施例1に基づくガスパージ治具を、容器のマンホール内で傘部を開いてセットした状態を示すマンホール内の縦断面図である。
【図2】本発明の実施例1に基づくガスパージ治具を、容器のマンホール内で傘部を閉じた状態を示すマンホール内の縦断面図である。
【図3】本発明の実施例1によるガスパージ治具の説明図にして、(a)図はシリンダ部の縦断面図、(b)図は(a)図の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の実施例1によるガスパージ治具の傘部先端がマンホール内壁に接した部分の縦断面図である。
【図5】本発明の実施例1に基づくガスパージ治具を、容器のマンホール内で傘部を開いてセットした状態での傘フレームとガス保護用シートとマンホール本体との関係を示した平面図である。
【図6】本発明の実施例1に基づくガスパージ治具の傘部のガス保護用シート外周部形状を示す平面図である。
【図7】本発明の実施例1に基づくガスパージ治具の傘部のガス保護用シートシール部がマンホール内壁に接した状態を示す説明図にして、(a)図はガス保護用シートに切欠きを付けなかった場合を示し、(b)図はガス保護用シートに切欠きを付けた場合を示す。
【図8】本発明の実施例1で、マンホールの鏡板の溶接線での溶接部の縦断面図である。
【図9】本発明の実施例2に基づくガスパージ治具を、容器のマンホール内で傘部を開いてセットした状態を示すマンホール内の縦断面図である。
【図10】図9の要部拡大断面図である。
【図11】本発明の実施例3に基づくガスパージ治具の均圧管挿入取付治具部の縦断面図である。
【図12】本発明の実施例4に基づくガスパージ治具を容器のマンホール内で傘部を開いてセットした状態を示すマンホール内の縦断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1a…容器、1b…マンホール本体、1c…マンホールの鏡板、1d…ガンマホール
(挿入穴)、2…溶接線、3…不活性ガス、4…マンホール本体の内部空間、5…ガスパージ領域外容器内部空間、6…シリンダ部、7…傘部、10…外筒、11…内筒、12…操作側シリンダガイド、13…傘側シリンダガイド、14…シリンダガイドカバー、15…シリンダガイドキャップ、16…円筒状スリット、17…パッキン、18…傘先端キャップ、19…Oリング、20…止めネジ、21…操作側シリンダガイドガス通路、22,24…ガス通路、23…シリンダ内ガス通路、25…傘側シリンダガイドガス通路、26…不活性ガス注入口、30…ストッパ、31…固定レバー、32…酸素濃度計、33…ガス抜き管、40…親フレーム、41…受フレーム、42…ガス保護用のシート、43…ガス保護用シートシール部、44…切り欠き、45…糸、46…しわ、47…隙間、50…フレーム繋ぎ部リベット継手、51…ローラ、52…ローラ固定リベット継手、53…通気口、54…容器外部空間、55…均圧管、56…均圧管パッキン、57…均圧管パッキン押え、58…均圧管パッキン押え用ネジ、59…不活性ガス注入ホース、60…均圧管シール材、61…固定治具、62…均圧管挿入取付治具、63…均圧管押えバネ、64…内筒繋ぎ部リベット継手、65…構造物、70…U形開先、71…裏波、72…余盛、
80…円板、81…短管、82…バネケース、83…バネ受け。
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接構造物に溶接を施す際に溶接構造物の内側に面した溶接部周囲を不活性ガスでガスパージする溶接部のガスパージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等に採用される容器のマンホールは一般にフランジ構造であり、溶接で閉止されることはない。しかし、例えば使用済燃料再処理施設の放射線線量が高い溶液を内包するステンレス製容器のマンホールのように、試運転後、鏡板をマンホール本体に溶接して容器を閉止する場合がある。
【0003】
このマンホール閉止の際は、マンホール本体に鏡板を外側から裏波溶接するため、容器内にガス保護壁(パージダム)を形成して酸素濃度が1%未満となるよう不活性ガスで空気を置換して溶接を行う必要がある。そのためには、裏波溶接用の治具は、例えば放射線透過試験を実施する際に、線源(ガンマ線照射装置)を容器内に挿入するための開口部
(以下、ガンマホール)等の容器の最終開口部から挿入,回収が可能である必要がある。
【0004】
また、上記のガスパージ治具は容器外からの挿入,回収が可能でありながら、パージダムとしての機能を果たすとともに、例えば使用済燃料再処理施設の容器内と容器外に圧力差があり不活性ガスの流出および空気の流入が生じる環境下でも、十分なガスのシール性を確保できなければならない。さらに、マンホール本体に溶接する鏡板の周囲に構造物があり十分な作業領域が確保できない場所においても設置できるものでなければならない。
【0005】
このような治具を使わない方法として配管の溶接に使用されている水溶性紙をマンホール本体に貼り付け、パージダムを形成する方法が考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この方法は、小径の配管に対しては有効な方法であるが、500mmから600mmと内径の大きな容器のマンホール本体に適用した場合、容器内の湿分を吸い込んで剥がれやすく安定して良好な裏波溶接を得難い上、多量の水溶性紙を使用することとなり容器内に不溶解のまま残る可能性がある。また、溶接の熱影響により水溶性紙が変質し、水溶性が低下するのを防止するため、設置場所を溶接線から充分離す必要があるが、マンホール本体では溶接線から水溶性紙を充分に離して設置するスペースがない場合がある。
【0007】
一方、従来からある配管のガスパージ用の治具は、マンホール鏡板のガンマホール(内径50mmから80mm)から取り出せないことやマンホール本体の長さが短いことから、これを容器のマンホール溶接に適用することはできない。
【0008】
【特許文献1】特開平9−10933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、容器内と容器外に圧力差がある場合でも、不活性ガスパージ領域の酸素濃度を極力低く維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記発明の目的を達成するための手段は、溶接構造物内に形成された空間内に挿入されて拡大することによって、その空間を不活性ガスを充填する第1の領域と前記不活性ガスを充填しない第2の領域とに分離する不通気性のシートと、前記シートを支持するフレームと、前記フレームを操作して、前記シートを拡大及び縮小する操作手段と、前記第2の領域と、前記溶接構造物外の空間との間を連通する通気路と、前記第1の領域に前記不活性ガスを供給する流路を備えた溶接部のガスパージ装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶接作業に際して不活性ガスを充填する領域の周囲に圧力差を生じている各空間が隣接していても、その各空間の間で通気できるので、各空間から不活性ガスを充填する領域への空気の侵入が抑制でき、不活性ガスの充填領域における不活性ガス濃度の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態に係わる各実施例について図面に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、図1〜図8を引用して実施例1について説明する。使用済燃料再処理施設の放射線線量が高い溶液を内包するステンレス製の容器のマンホールのように、試運転後、鏡板をマンホール本体に溶接して容器を閉止する場合がある。本実施例ではその鏡板をマンホール本体に溶接する際の例である。
【0014】
図1,図2に示すステンレス製の容器1aは、液体や気体を貯蔵する円筒形の容器である。この容器1aは使用済燃料再処理施設の建物の中の部屋に設置され、この部屋内は部屋の中の雰囲気が部屋の外に出ないように部屋の外に比較して空調換気設備で負圧に維持されている。この容器1aの上側または側面に円筒形のマンホール本体1bが設けられる。マンホール本体1bは、径が300mm〜600mmでステンレス鋼板製である。マンホール本体1bは、溶接によって容器1aに結合される。
【0015】
マンホール本体1bの開口部は、鏡板1cで塞がれる。鏡板1cはマンホール本体1bへ溶接線2に沿って裏波溶接で結合する。このように、マンホールはマンホール本体1bと鏡板1cとの溶接構造物によって成り立っている。なお、容器1aも溶接構造物である。
【0016】
この溶接に際し、溶接線2をマンホールの外側から裏波溶接するためにマンホール内部空間4の空気を不活性ガス3で置換するためのガスパージ領域の区画装置(以下、ガスパージ治具という。)を用いる。鏡板1cはガンマ線照射装置を容器内に挿入するためのガンマホールと称する挿入穴1dを有する。この挿入穴1dからガスパージ治具はマンホール本体1bの内部に挿入される。
【0017】
ガスパージ治具について、以下に説明する。ガスパージ治具は、大別すると、スライド式のシリンダ部6とシリンダ部6に取り付けられた傘部7とより構成されている。シリンダ部6は、図3のように、中空円筒状の外筒10と、その外筒10内にその外筒10の内面に対して隙間を有して通された中空円筒状の内筒11を備えている。
【0018】
外筒10には、上部に操作側シリンダガイド12が、下部に傘側シリンダガイド13が止めネジで固定されている。内筒11は操作側シリンダガイド12および先端側の傘側シリンダガイド13とに通されていて外筒10の中を上下方向へスライドできるように摺動自在に支持されている。操作側シリンダガイド12と内筒11及び外筒10との間には、気密性を維持するためのシール部材としてのOリング19が設けられている。傘側シリンダガイド13の下部にはシリンダガイドキャップ15が止めネジ20で装着され、傘側シリンダガイド13の下端と内筒11との間の隙間から不活性ガス3がガスパージ領域外容器内部空間5に漏れることを抑制している。
【0019】
傘側シリンダガイド13の外周囲には、傘側シリンダガイド13の外周囲やシリンダガイドキャップ15との間で円筒状の隙間が円筒状スリットとしてできるように、シリンダガイドキャップ15の外径よりも内径が大径なシリンダガイドカバー14を止めネジ20で固定してある。
【0020】
操作側シリンダガイド12には不活性ガス注入口26として、不活性ガスの圧送設備からのホースが操作側シリンダガイド12内のガス通路21と接続されている。不活性ガス注入口26から導入された不活性ガスは、操作側シリンダガイド12内のガス通路21を通り、操作側シリンダガイド12と内筒11の隙間であるガス通路22を経て、外筒10と内筒11の間に形成された隙間であるガス通路23に導かれる。
【0021】
そのガス通路23を通った不活性ガスは、さらにガス通路24,傘側シリンダガイド
13と内筒11との隙間を通って傘側シリンダガイド13内に設けた水平なガス通路25を通って、傘側シリンダガイド13とシリンダガイドカバー14との間に形成された円筒状スリット16からマンホール内部空間4へと拡散できるようになっている。
【0022】
また、傘部7の傘側シリンダガイドキャップ15は、取り付け部に傘部7が展開して開いた状態においてガス保護用のシート42と接触するパッキン17が設けられる。このパッキン17により、円筒状スリット16から噴出した不活性ガスがガスパージ領域外容器内部空間5に漏れ出ることが防がれる。
【0023】
このようにして、不活性ガスの漏洩を防ぎながら、不活性ガスを注入口26から噴出用の円筒状スリット16まで導かれる構造としている。
【0024】
傘部7は以下のような構成を有する。即ち、図3,図4および図5に示すように、傘部7は傘型フレームを有する。傘型フレームとは、放射状15°間隔に配置された複数本の親フレーム40と、同じく受フレーム41とを有する。親フレーム40と受フレーム41との一端側部分はリベットローラ固定リベット継手52で繋がれ、その継手を中心に相互に上下方向へ回転自在に接続されている。
【0025】
親フレーム40の他端部分は、傘側シリンダガイドキャップ15に上下回転自在に軸着され、受フレーム41の他端部分は傘先端キャップ18に上下回転自在に軸着されている。
【0026】
傘先端キャップ18は、内筒11の下端を覆うように内筒11に装着され、止めネジで内筒11の下端部分に固定されている。その傘先端キャップ18には、内筒11の内側と通じる通気口53が開口している。この通気口53からガスパージ領域外容器内部空間5の空気が内筒11の中を通気路として通り容器1aが設置されている部屋の空間である容器外部空間54へ出ることが出来る構成である。
【0027】
このようなガスパージ治具は、外筒10を押さえながら内筒11を下方へ押し込むことにより、親フレーム40と受フレーム41とが直線になり、傘型フレームが伸び、シート42が窄むように畳まれて傘部7が閉じ、図2に示す縮小状態となる。外筒10を押さえながら逆に内筒11を上方へ引くと親フレーム40と受フレーム41がリベット継手50で屈折し、傘部7が開かれ図1に示すような展開されて拡大の状態となる。
【0028】
図1に示すように、外筒10には挿入穴1dの上端部へ嵌め込むことにより設置され、ガスパージ治具の位置決めをするストッパ30が存在する。パージダムを形成するために適切な位置まで傘部を縮小した状態でガスパージ治具をストッパ30と挿入穴1dへ挿入後、ストッパ30の固定レバー31を回すことによりストッパ30が外筒10に固定され、位置決めが可能である。またストッパ30は、ガスパージ治具の落下防止具としても機能する。
【0029】
図6は、ガス保護用のシート42の外周部形状を示す。ガス保護用のシート42は、傘フレームが展開して傘部7が開かれたとき、親フレーム40と受フレーム41の先端を内包する最小径の円の直径より20mmから30mm程度大き目の外径を有する。つまり、傘部7を広げると、シート42の外径は、傘型フレームの外径よりも大きく形成されている。
【0030】
このため、図4に示す通り、傘部7を展開して拡大されたとき、傘型フレームの先端にローラ固定リベット継手52で回転自在に固定されたローラ51が、ガス保護用のシート42の外周側部(シートシール部43)をマンホール本体1bの内壁(内面)に押し付け、ガス保護用シートシール部43が垂れ下がるように折れ曲がりながらマンホール本体
1bの内壁に密着する。この密着により、不活性ガスがガス保護用のシート42の上方に位置する第1の領域であるマンホールの内部空間4から第2の領域であるガスパージ領域外容器内部空間5へ漏れ出るのを防ぐ。
【0031】
図7は、ガス保護用シート42のシートシール部が折れ曲がりマンホール本体1bの内壁面に接した状態を拡大して示す。図6に示すように、ガス保護用シート42のシートシール部43には切り欠き44がある。ガス保護用シート42のシートシール部43に切り欠き44を設けない構造とした場合は、傘部7を開いたとき、図7中の(a)図に示すようにガス保護用シートシール部にしわ46が寄るため、マンホール内壁とガス保護用シートシール部の間に隙間47が生じる。
【0032】
この隙間47はマンホール内部空間4からガスパージ領域外容器内部空間5へのガス漏れの経路となるため、ガスパージの効率低下を招く。図6に示す切り欠き44は、ガス保護用シートのシートシール部43が直角に折れ曲がるとき、三角形の切り欠きが閉じシート42に寄るしわを吸収するため、図7中の(b)図に示すように、隙間が発生せず有効なパージダムを形成することができる。
【0033】
シリンダ部6および傘部7のフレーム等はアルミ製とすることにより軽量化ができ取り扱いが容易である。ガス保護用のシート42はガラス繊維クロスにシリコンコーティングを施した耐熱性に優れたものとし、溶接熱によるシート溶解を防いでいる。
【0034】
次に実施例1を動作の面から説明する。マンホール本体1bと鏡板1cとを溶接線2で溶接する時には、溶接線2での溶接開先合わせを実施後、図2に示すようにガスパージ治具の傘部7を縮小させた状態(窄めた状態)で挿入穴1dからマンホール本体1bの内部に所定の位置まで挿入する。所定の位置とは、シリンダガイドカバー14が溶接線よりも下方且つマンホール本体1bの下端よりの上方に位置することが目安とされる。
【0035】
このようにするとシート42が溶接線2よりも下方に位置する。そこで、挿入穴1dの上部開口部に差し込んだストッパ30の固定レバー31を操作してストッパ30と外筒
10を固定する。このことにより、ガスパージ治具の位置決めをする。次にガスパージ治具の内筒11を引張り上げて、傘部7を開き(展開状態)パージダムを形成させる。ストッパ30にはガス抜き管33や酸素濃度計が通される穴が開けられ、その穴の周囲はテープで目張りして密閉性を確保している。
【0036】
そして、図1に示すようにストッパ30から挿入した酸素濃度計32でマンホール本体の内部空間4の酸素濃度を測定しながら不活性ガス注入口26より、例えば不活性ガスとしてアルゴンガスを注入する。注入されたアルゴンガスは操作側シリンダガイドガス通路21から操作側シリンダガイドと内筒11との間の隙間によるガス通路22を通過し、さらに内筒11と外筒10との間の隙間によるシリンダ内ガス通路23を通過し、さらに傘側シリンダガイド13と内筒との間の隙間によるガス通路24を通過し、さらに傘側シリンダガイドガス通路25を通過し、さらにシリンダガイドカバー14とシリンダガイドキャップとの間の隙間による円筒状スリット16を通過して、その円筒状スリット16の下端からマンホール本体の内部空間4内に噴出し、マンホール本体の内部空間4の空気がアルゴンガスに置換される。
【0037】
アルゴンは分子量が40であり、一方、空気の平均分子量が29のため、空気より重いアルゴンがマンホール本体の内部空間4の下部から徐々に空気を上方へ押し上げ、押し上げられた空気はストッパ30を通して挿入穴1d内と容器外部空間54との間を連通させたガス抜き管33から容器外部空間54へ排出される。
【0038】
アルゴンの流量を調整してマンホール内部の酸素濃度が規定の濃度より低くなるようにし、溶接線2を作業員がマンホール外側からTIG溶接する。マンホール本体1bとマンホール鏡板1cはマンホールの外側から完全溶込溶接できるように、図8に示すようなU形開先70とし、裏波71が出るよう調整された条件にて溶接を行う。第1層目の裏波溶接のみでなく、その後の数層の溶接においてもマンホール内部をアルゴンガスで置換しながら溶接を行い、マンホール溶接線内側からの酸素の影響による溶接部の品質低下を防ぐ。
【0039】
その溶接中においても容器1aが設置されている部屋が負圧に維持されていることから、ガスパージ領域外容器内部空間5の圧力と容器外部空間54とに圧力差が生じる。この時、ガスパージ領域外容器内部空間5の空気が不活性ガスパージ領域であるマンホール本体の内部空間4を通過してガスパージ領域外容器内部空間5の空間へ移行しようとする。このような空気の移動が生じると、マンホール本体の内部空間4にパージされた不活性ガス3が隣接する空間へ漏れる上、空気が内部空間4に入ってくるので、内部空間4内の不活性ガス濃度が低下しようとする。
【0040】
ところが、本発明の実施例では、ガスパージ領域外容器内部空間5と容器外部空間54との間で圧力差が生じた際には、通気口53と内筒11を経て容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5との間で空気が通気しますので、マンホール本体の内部空間4を経由して容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5との間で空気が通気する現象の発生を防止できる。そのため、その通気によってマンホール本体の内部空間4にパージされた不活性ガス3が巻き込まれて隣接する容器外部空間54やガスパージ領域外容器内部空間5に漏出することが防止できる。
【0041】
さらに、ガスパージ領域外容器内部空間5と容器外部空間54の圧力が平均化され、マンホール本体の内部空間4にパージされた不活性ガス3がガスパージ領域外容器内部空間5に漏れることを防止し、圧力が平均化されることによっても有効なパージダムを形成できる。
【0042】
不活性ガスがマンホール本体の内部空間4に停滞するように、傘型フレームの親フレーム40にはガス保護用シートになるシート42が張られ、そのシート42が親フレーム
40に糸45で縫い付けられている。これによって、傘部7が展開した際には、円形のパージダムが形成される。シート42は、可撓性を有し、かつ不活性ガスや空気を通さない不通気性の材料で作られている。
【0043】
また、溶接時に発生する熱で、容器外部空間54の温度が上がり、圧力が高くなっても、内筒11の先端の穴から容器外部空間54の空気が入り、内筒11の中を通り、傘先端キャップ18に設けられた通気口53から、ガスパージ領域外容器内部空間5へ流れ、容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5の圧力を均一化する作用が働き、不活性ガスを有効にパージすることを維持できる。
【0044】
余盛72が所定の高さになるまで層を重ね溶接終了後、ガスパージ治具の内筒11を押し込んで傘部を畳み、挿入穴から治具を取り出す。
【0045】
このようにガスパージ治具の傘部のシートをホール本体内で広げることにより、溶接部周囲を不活性ガスが充満する不活性ガス充填空間に保ち、内筒11を通じて、傘先端キャップ18に設けられた通気口53によって、ガスパージ領域外容器内部空間5と容器外部空間54の圧力差を低減させ、ガスの漏れが抑えられ、不活性ガス充填空間のガス濃度を良好に保つことができる。ガス濃度良好に保つことによって、良好な裏波溶接をすることができる。
【実施例2】
【0046】
次に図9,図10に示す実施例2について説明する。前述した実施例1は容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5の圧力差を傘先端キャップ18に設けられた通気口53から内筒11を通して均圧化している。実施例2は、容器1aが設置されている部屋の圧力変動,容器外部空間54,マンホール本体の内部空間4,ガスパージ領域外容器内部空間5の溶接時に生じる大きな圧力変動が原因で、マンホール本体の内部空間4にパージされた不活性ガス3の流出および空気の流入によるガス濃度の低下を防止するために実施例1のガスパージ治具の外側に均圧装置を取り付ける。
【0047】
均圧装置は外筒の外周囲を囲うように配置された円管状の均圧管55と、均圧管55の下端に固定され、親フレーム40上のシート42と均圧管55の下端との間をシールするための均圧管パッキン56とより構成される。図10のように、固定治具61が外筒10に取り付けられ、その固定治具61で均圧管55をガスパージ治具に固定する。均圧管
55の上端に設けた水平なフランジの下端面と挿入穴1dの上端との間には、均圧管シール材60が均圧管55の挿入穴1dへの装着部位から気体が漏れないように施されている。その均圧管シール材60の一部には穴が開けられて、その穴に不活性ガス注入ホース
59やガス抜き管33や酸素濃度計32が通される。
【0048】
空気が均圧管55内と容器外部空間54との間で図10の矢印のように通気できる通路が確保されている。その通路以外の固定治具61と均圧管55上端との間には、シールが設けられている。
【0049】
均圧管パッキン56は均圧管パッキン押え57で均圧管55の先端に固定される。均圧管パッキン押え57は、均圧管パッキン押え用ネジ58で均圧管55に固定される。
【0050】
均圧装置を取り付ける際には、親フレーム40に取り付けられたガス保護用のシート
42のパッキン17と均圧管パッキン56との間の部分を除去しておく。また、均圧管
55を取り付ける場合には、不活性ガス3は不活性ガス注入口26から注入せずに、均圧管55とガンマホール1dの間にガス抜き管33の他に不活性ガス注入ホース59を通過さておいて、不活性ガス注入ホース59に不活性ガスのボンベを繋いで、不活性ガス3をマンホール本体の内部空間4に注入できる。このように不活性ガス注入通路を新たに確保してあるので、操作側シリンダガイド12の操作側シリンダガイドガス通路21から不活性ガス注入口26が取り外され、操作側シリンダガイド12の操作側シリンダガイドガス通路21は容器外部空間54に開放されている。その他の構成は実施例1と同じである。
【0051】
本実施例では、実施例1と同様にしてシート42をマンホール本体1b内で展開してマンホール本体の内部空間4とガスパージ領域外容器内部空間5との間を区画する。シート42が展開すると、シート42と均圧管パッキン56とが互いに押し当たってシート42と均圧管パッキン56との間はシールされる。
【0052】
その後に、不活性ガス注入ホース59を通じて不活性ガスをマンホール本体の内部空間4内に注入し、マンホール本体の内部空間4内の空気はガス抜き管33を通じて容器外部空間54へ排出される。このようにしてマンホール本体の内部空間4内の雰囲気は不活性ガスに置換される。不活性ガスをマンホール本体1bの内部空間4内に注入しながら溶接線2をマンホール本体1bの外側から裏波溶接する。
【0053】
容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5に圧力差が生じていると、その圧力差によって、実施例1と同様に内筒11を通って容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5との間で空気の移動が生じる。
【0054】
空気の移動は他の通路においても起こる。即ち、ガスパージ領域外容器内部空間5の圧力が高い場合にはガス保護用のシート42の除去した部分から均圧管55内に空気が入り、固定治具61と均圧管55の隙間から、容器外部空間54に抜ける。容器外部空間54の圧力が高い場合には逆の流れで空気がガスパージ領域外容器内部空間5に入る。
【0055】
さらに、ガスパージ領域外容器内部空間5の圧力が高い場合にはガス保護用のシート
42の除去した部分から均圧管55に入った空気は、傘側シリンダガイド13とシリンダガイドカバー14との間に形成された円筒状スリット16から傘側シリンダガイド内のガス通路25を通ってガス通路24,外筒10と内筒11の間に形成されたシリンダ内のガス通路23に導かれる。シリンダ内のガス通路23を通った空気は、操作側シリンダガイド12と内筒11の隙間であるガス通路22を通り、操作側シリンダガイド12内のガス通路21を通って容器外部空間54へ出る。容器外部空間54の圧力が高い場合には逆の流れで空気がガスパージ領域外容器内部空間5に入る。
【0056】
このように、容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5の通気性を向上させることによって、容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5の圧力を均圧化し、マンホール本体の内部空間4が空気の通気経路とならないようにして、マンホール本体の内部空間4にパージされた不活性ガス3の濃度を一定に保つことができる。
【実施例3】
【0057】
次に図11に示す実施例3について説明する。実施例3は、実施例2の一部を改良した例である。前述した実施例2では均圧管55を固定治具61でガスパージ治具に固定している。実施例3では、固定治具61に均圧管挿入取付治具62を設け、内側に均圧管押えバネ63を設置する。
【0058】
均圧管挿入取付治具62は、中央部に開口部を有する円板80と、その円板80の開口部縁に上端が固定された短管81と、円板の下面に固定されて短管81の外側に配置された円管状のバネケース82とを備えている。その短管81とバネケース82との間には、上下方向にバネストローク方向を向けて、均圧管押えバネ63が配置されている。
【0059】
均圧管挿入取付治具62を均圧管55の上端に図11のように差し込むと、均圧管押えバネ63の下端は、均圧管55の外周囲に固定したバネ受け83で受け止められ、均圧管押えバネ63の上端は円板80の下面にて下方へ押さえつけられる。均圧管55の上端と円板80との間には均圧管シール材60が実施例2と同様に設けられる。その均圧管シール材60を貫通して不活性ガス注入ホース59やガス抜き管33が容器外部空間54からマンホール本体の内部空間4側に通される点は実施例2と同様である。
【0060】
この実施例の場合には、内筒11を外筒10に対して上方へ引き上げてマンホール本体内で傘部7を開いてシート42を展開する。その後に、内筒11を下方へ下がらないように支持した上で固定治具61を押し下げる。固定治具61が押し下がる均圧管挿入取付治具62も押し下げられるので、均圧管押えバネ63が圧縮する。均圧管押えバネ63が圧縮することによる反力で均圧管55は下方へ押されて親フレーム40に取り付けられたガス保護用のシート42に均圧管パッキン56を強く押し付けることができる。
【0061】
その押し付けが維持できるように外筒10を固定治具61がクランプして、固定治具
61と外筒10とを一体化する。均圧管挿入取付治具62が押し下がった位置においては、均圧管挿入取付治具62と挿入穴1d上端との間に均圧管シール材60が施される。図11の構造では、短管81と均圧管55との間や均圧管55とバネケース82との間に空気の抜ける隙間があるように見受けられるが、実際にはその短管81と均圧管55との間の隙間は互いに上下方向に動ける最低限の隙間が設定されているので、均圧管55内の空気が図11中の矢印のように容器外部空間54へ抜け出ることが出来るものの、短管81と均圧管55との間の隙間を通過することが困難な構造とされている。
【0062】
このように、均圧管挿入取付治具62の均圧管押えバネ63のバネ力によって、ガス保護用のシート42に均圧管パッキン56を強く押し付けてシール性を向上させ、マンホール本体の内部空間4にパージされた不活性ガス3の濃度を一定に保つことができる。その他の事柄は、実施例2と同様である。
【実施例4】
【0063】
次に図12に示す実施例4について説明する。実施例4は、実施例2の構造の一部を改良した例である。改良点は以下の通りである。即ち、実施例2の内筒11に関して、傘部7を開いた状態で、操作側シリンダガイド12よりも上方の部分が内筒繋ぎ部リベット継手64によって継がれて屈曲自在に構成されている。屈曲箇所は図12のように2箇所とされ、内筒の端部が下方へUターンするように下方へ向けることが出来る。
【0064】
この実施例では、内筒11が屈曲する関係で内筒11を容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5との間の空気の通気路として利用できなくなっても、内筒11と外筒10との間の隙間や均圧管55がその通気路として用いられるので、容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5の圧力を均圧化でき、且つマンホール本体の内部空間4内を容器外部空間54とガスパージ領域外容器内部空間5との間の通気路になることが避けられる。
【0065】
このように、ガスパージ治具の内筒11に内筒繋ぎ部リベット継手64を設けることによって、ガスパージ治具の内筒11を段階的に曲げられる構造にしている。このように、内筒11が段階的に曲げられコンパクトになることによって、マンホール本体1bに溶接するマンホールの鏡板1cの周囲に構造物65があり、十分な作業領域が確保できない場所においても、ガスパージ治具の設置が可能な構造としている。その他の事柄は、実施例2と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明によるガスパージ治具は、容器に付属したマンホールに鏡板を溶接して、そのマンホールを閉止する際に、その溶接の裏波側の空間に不活性ガスを停滞させるためのパージダム形成に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施例1に基づくガスパージ治具を、容器のマンホール内で傘部を開いてセットした状態を示すマンホール内の縦断面図である。
【図2】本発明の実施例1に基づくガスパージ治具を、容器のマンホール内で傘部を閉じた状態を示すマンホール内の縦断面図である。
【図3】本発明の実施例1によるガスパージ治具の説明図にして、(a)図はシリンダ部の縦断面図、(b)図は(a)図の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の実施例1によるガスパージ治具の傘部先端がマンホール内壁に接した部分の縦断面図である。
【図5】本発明の実施例1に基づくガスパージ治具を、容器のマンホール内で傘部を開いてセットした状態での傘フレームとガス保護用シートとマンホール本体との関係を示した平面図である。
【図6】本発明の実施例1に基づくガスパージ治具の傘部のガス保護用シート外周部形状を示す平面図である。
【図7】本発明の実施例1に基づくガスパージ治具の傘部のガス保護用シートシール部がマンホール内壁に接した状態を示す説明図にして、(a)図はガス保護用シートに切欠きを付けなかった場合を示し、(b)図はガス保護用シートに切欠きを付けた場合を示す。
【図8】本発明の実施例1で、マンホールの鏡板の溶接線での溶接部の縦断面図である。
【図9】本発明の実施例2に基づくガスパージ治具を、容器のマンホール内で傘部を開いてセットした状態を示すマンホール内の縦断面図である。
【図10】図9の要部拡大断面図である。
【図11】本発明の実施例3に基づくガスパージ治具の均圧管挿入取付治具部の縦断面図である。
【図12】本発明の実施例4に基づくガスパージ治具を容器のマンホール内で傘部を開いてセットした状態を示すマンホール内の縦断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1a…容器、1b…マンホール本体、1c…マンホールの鏡板、1d…ガンマホール
(挿入穴)、2…溶接線、3…不活性ガス、4…マンホール本体の内部空間、5…ガスパージ領域外容器内部空間、6…シリンダ部、7…傘部、10…外筒、11…内筒、12…操作側シリンダガイド、13…傘側シリンダガイド、14…シリンダガイドカバー、15…シリンダガイドキャップ、16…円筒状スリット、17…パッキン、18…傘先端キャップ、19…Oリング、20…止めネジ、21…操作側シリンダガイドガス通路、22,24…ガス通路、23…シリンダ内ガス通路、25…傘側シリンダガイドガス通路、26…不活性ガス注入口、30…ストッパ、31…固定レバー、32…酸素濃度計、33…ガス抜き管、40…親フレーム、41…受フレーム、42…ガス保護用のシート、43…ガス保護用シートシール部、44…切り欠き、45…糸、46…しわ、47…隙間、50…フレーム繋ぎ部リベット継手、51…ローラ、52…ローラ固定リベット継手、53…通気口、54…容器外部空間、55…均圧管、56…均圧管パッキン、57…均圧管パッキン押え、58…均圧管パッキン押え用ネジ、59…不活性ガス注入ホース、60…均圧管シール材、61…固定治具、62…均圧管挿入取付治具、63…均圧管押えバネ、64…内筒繋ぎ部リベット継手、65…構造物、70…U形開先、71…裏波、72…余盛、
80…円板、81…短管、82…バネケース、83…バネ受け。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接構造物内に形成された空間内に挿入されて拡大することによって、その空間を不活性ガスを充填する第1の領域と前記不活性ガスを充填しない第2の領域とに分離する不通気性のシートと、
前記シートを支持するフレームと、
前記フレームを操作して、前記シートを拡大及び縮小する操作手段と、
前記第2の領域と、前記溶接構造物外の空間との間を連通する通気路と、
前記第1の領域に前記不活性ガスを供給する流路を備えた溶接部のガスパージ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記フレームは、一端側の部分同士が上下回転自在に連結された親フレームと受けフレームとを備え、
前記操作手段は、前記親フレームの他端側部分を上下回転自在に支持している外筒と、前記外筒内に上下方向へ移動自在に組み合わせられると共に前記受けフレームの他端側部分を上下回転自在に支持している内筒とを備え、
前記内筒内が前記通気路とされている溶接部のガスパージ装置。
【請求項3】
請求項1において、前記操作手段が折れ曲がる構造を備えている溶接部のガスパージ装置。
【請求項4】
請求項1において、前記操作手段の外周囲に、前記第2の領域と前記溶接構造物外の空間との間を連通する均圧管を備えている溶接部のガスパージ装置。
【請求項5】
請求項2において、前記内筒と外筒との間の隙間が前記不活性ガスの流路とされている溶接部のガスパージ装置。
【請求項1】
溶接構造物内に形成された空間内に挿入されて拡大することによって、その空間を不活性ガスを充填する第1の領域と前記不活性ガスを充填しない第2の領域とに分離する不通気性のシートと、
前記シートを支持するフレームと、
前記フレームを操作して、前記シートを拡大及び縮小する操作手段と、
前記第2の領域と、前記溶接構造物外の空間との間を連通する通気路と、
前記第1の領域に前記不活性ガスを供給する流路を備えた溶接部のガスパージ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記フレームは、一端側の部分同士が上下回転自在に連結された親フレームと受けフレームとを備え、
前記操作手段は、前記親フレームの他端側部分を上下回転自在に支持している外筒と、前記外筒内に上下方向へ移動自在に組み合わせられると共に前記受けフレームの他端側部分を上下回転自在に支持している内筒とを備え、
前記内筒内が前記通気路とされている溶接部のガスパージ装置。
【請求項3】
請求項1において、前記操作手段が折れ曲がる構造を備えている溶接部のガスパージ装置。
【請求項4】
請求項1において、前記操作手段の外周囲に、前記第2の領域と前記溶接構造物外の空間との間を連通する均圧管を備えている溶接部のガスパージ装置。
【請求項5】
請求項2において、前記内筒と外筒との間の隙間が前記不活性ガスの流路とされている溶接部のガスパージ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−326661(P2006−326661A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156549(P2005−156549)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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