説明

溶着機、多層プリント配線板の製造方法

【課題】被溶着部材を高温で溶着する場合であっても、溶着時における被溶着部材への過度な加圧を抑制又は防止することのできる溶着機、及びその溶着機を用いた多層プリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】多層プリント配線板の内層の構成部材を所定箇所において溶着する溶着機の溶着ビット11a,11bには、それぞれヒータビット131a,131b(ヒータ取付部品)によりヒータ102a、102bが装着されている。そして、ヒータビット131a,131bには、それぞれ溶着ビット11a及び11bの接近を規制するストッパとして、調整用部材12a,12bが設けられている。溶着ビット11a,11bと調整用部材12a,12bとは、少なくとも溶着温度において互いに同様の熱変形特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被溶着部材(例えば多層プリント配線板の内層の構成部材)を所定箇所において溶着する溶着機、及びその溶着機を用いた多層プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶着機として、内層板溶着機が知られている(例えば特許文献1参照)。内層板溶着機は通常、点状にプリプレグを加熱及び加圧する上下一対の溶着ビットを複数組備えている。内層板溶着機のフレームには、上下一対の溶着ビットの少なくとも一方を上下方向に往復動させるアクチュエータとして、エアシリンダが組み付けられている。このエアシリンダの先端には、適宜の取付部材を介して、上下一対の溶着ビット、すなわち第1溶着ビット(上側ビット)又は第2溶着ビット(下側ビット)が取り付けられている。内層板溶着機における溶着ヘッドは、エアシリンダ、並びに第1及び第2溶着ビットなどから構成されている。そして、こうした溶着ヘッドは通常、例えば溶着ビットを加熱するためのヒータを有し、各溶着ビットの温度は、そのヒータにより、例えば「280〜350℃」程度に保たれる。
【特許文献1】特許第3883736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、内層板溶着機は、例えば複数の両面基板とその間に挿入された接着材とからなる構造体(被溶着部材)について、所定の箇所を溶着ビットによって加圧及び加熱し、接着材を溶融して両面基板同士を接着させることにより、多層プリント配線板を製造する。そして、接着材を溶着する際には、上下の溶着ビットの間隔(ビット同士が近づくことのできる限界の間隔)が重要になる。
【0004】
詳しくは、第1溶着ビット(上側ビット)及び第2溶着ビット(下側ビット)により被溶着部材(両面基板及び接着材からなる上記構造体)を挟んで加圧及び加熱すると、接着材が溶融するにつれて、溶着ビットの圧力によりその溶着ビットに当接している部分が押しつぶされて凹む(厚さが薄くなる)。そして、溶着部が溶融して押しつぶされ、凹んでいく過程で、凹んだ部分の両面基板が溶着ビットによってその凹部に引きずり込まれていく。このため、予め所定の位置関係に調整された両面基板同士の関係がずれてしまうことがある。そして、両面基板同士の位置関係にこうしたずれが生じると、そのずれに応じて、配線等の位置関係等にもずれが生じ、その結果、多層プリント配線板としての品質が劣化してしまうことが懸念されるようになる。
【0005】
こうした問題を防止又は抑制するため、すなわち第1及び第2溶着ビットが必要以上に多層プリント配線板を押しつぶすことがないように、例えば第1溶着ビットと第2溶着ビットとの間隔を調整するための位置調整部を備える内層板溶着機なども提案されている。こうした位置調整部としては、例えば各溶着ビット用にそれぞれ設けられた調整用ネジが互いに当接することにより、第1溶着ビットと第2溶着ビットとの接近を、所定の間隔で規制するものが知られている。ここで、第1及び第2溶着ビット間の間隔(より厳密には、これらビット同士が近づくことのできる限界の間隔)は、例えば調整用ネジの締め込み量に基づいて調整することができる。
【0006】
しかしながら上述のように、溶着ビットは通常、「280〜350℃」程度まで加熱され、その熱が、例えば溶着ビット周辺の部品に伝達した場合には、その熱により部品が変形することがある。そして、こうした周辺部品の変形が生じると、その変形に応じて、溶着ビットの位置もずれ、その位置ずれに起因して、被溶着部材の溶着部が過度に加圧されることが懸念されるようになる。実際、発明者の実験では、熱によりヒータ取付部品(第1溶着ビットの周辺部品に相当)が伸びてしまい、第1溶着ビットが初期位置よりも下方に「0.5mm」程度ずれることが確認された。
【0007】
なお、こうした部品の熱変形の影響も加味した調整をするために、溶着ビットが加熱された状態において位置調整部の調整用ネジを操作することも考えられる。しかし、こうした調整作業(ネジ操作)は、高温部分の作業となり、作業性が悪い。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、被溶着部材を高温で溶着する場合であっても、溶着時における被溶着部材への過度な加圧を抑制又は防止することのできる溶着機、及びその溶着機を用いた多層プリント配線板の製造方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る溶着機は、被溶着部材を所定箇所において溶着する溶着機であって、互いに対向するように配置され、前記被溶着部材を両面から挟むように加圧及び加熱して溶着する第1溶着ビット及び第2溶着ビットを備え、前記第1溶着ビット及び前記第2溶着ビットの少なくとも一方は、それら第1溶着ビット及び第2溶着ビットが互いに接近する方向に、移動可能とされ、前記第1溶着ビットには、ヒータ取付部品によりヒータが装着されるとともに、該ヒータ取付部品には、位置調整用部材が設けられ、前記位置調整用部材は、前記第2溶着ビット側に配置された所定の部材に当接することにより、調整可能な所定の間隔で前記第1溶着ビットと前記第2溶着ビットとの接近を規制するものであり、前記位置調整用部材は、少なくとも1つの温度領域において、前記第1溶着ビットと同様の熱変形特性を有する、ことを特徴とする。
【0010】
前記位置調整用部材は、前記第1溶着ビットと同等の寸法を有する、構成としてもよい。
【0011】
前記位置調整用部材は、前記ヒータ取付部品に設けられたネジ穴に螺合して、そのネジ穴への締め込み量に基づいて、前記所定の間隔を調整可能とする調整用ネジである、構成としてもよい。
【0012】
前記第2溶着ビットには、ヒータ取付部品によりヒータが装着され、前記第2溶着ビット側に配置された所定の部材は、該第2溶着ビットの前記ヒータ取付部品に設けられており、少なくとも前記温度領域において、前記第2溶着ビットと同様の熱変形特性を有する、構成としてもよい。
【0013】
前記第2溶着ビット側に配置された所定の部材は、前記第2溶着ビットと同等の寸法を有する、構成としてもよい。
【0014】
前記第2溶着ビット側に配置された所定の部材は、該第2溶着ビットの前記ヒータ取付部品に設けられたネジ穴に螺合するネジであり、そのネジ穴への締め込み量に基づいて、前記位置調整用部材と共に、前記所定の間隔を調整可能とするものである、構成としてもよい。
【0015】
前記温度領域には、少なくとも溶着温度が含まれる、構成としてもよい。
【0016】
本発明の第2の観点に係る多層プリント配線板の製造方法では、複数の内層板を作製する第1の工程と、前記複数の内層板の間に、層間接着材を挿入し、本発明の第1の観点に係る溶着機により、前記内層板と前記層間接着材とを所定箇所において溶着する第2の工程と、前記第2の工程により層間接着材と溶着された内層板のうち、最外に位置する内層板の少なくとも一方に、層間絶縁材を介して導体膜を形成する第3の工程と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
被溶着部材を高温で溶着する場合にも、溶着時における被溶着部材への過度な加圧を抑制又は防止することのできる溶着機、及びその溶着機を用いた多層プリント配線板の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る溶着機及び多層プリント配線板の製造方法を具体化した一実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態の溶着機は、いわゆる内層板溶着機であり、図1((a)は初期状態、(b)は溶着ビット近接状態)に示すように、C型架100(当該溶着機のフレームに相当)と、溶着ヘッド部10と、溶着ヘッド部10のアクチュエータとして機能するエアシリンダ101と、を備えている。溶着ヘッド部10及びエアシリンダ101は、それぞれC型架100に組み付けられている。溶着ヘッド部10は、互いに対向するように配置されて多層プリント配線板の接着材(例えばプリプレグ)を点状に加熱及び加圧する上下一対の第1溶着ビット11a及び第2溶着ビット11bと、これら溶着ビット11a,11bの位置(上下方向の位置)を個別に調整するための調整用部材12a,12bと、を有する。そして、エアシリンダ101は、被溶着部材に接近又は離間させるべく第1溶着ビット11aを上下方向(エアシリンダ101の軸方向)に往復動させるものであり、例えば溶着時には、図1(a)の初期状態から、第1溶着ビット11aを下方に移動させることにより、図1(b)の溶着ビット近接状態にする。なお、説明の便宜上、1組の溶着ビットのみを図示しているが、当該内層板溶着機は、上下一対の溶着ビットを複数組備えている。
【0020】
溶着ビット11a,11bは、C型架100の各先端部分の内側表面に、それぞれ溶着ヘッドベース13a,13bを介して、互いに対向するように配置されている。より詳しくは、図2〜図4(特に図3を参照)に溶着ヘッド部10を拡大して示すように、溶着ビット11a,11bは、それぞれ各溶着ビットを加熱するためのヒータ102a,102bを内蔵するヒータビット131a,131b(ヒータ取付部品)を備える。ヒータ102a,102bは、溶着ビット11a,11bに近接して(調整用部材12a,12bよりも溶着ビット11a,11bの方に近い位置に)配置されている。なお、ヒータ102a,102bは、例えばSUS−304からなり、ガラスチューブの先端にジーゲル線が取り付けられることで、棒状に形成されている。ただし、こうしたヒータに限られず、任意のヒータを用いることができる。ヒータ102a,102bにより、各溶着ビットを、例えば「280〜350℃」程度に加熱可能となっている。
【0021】
第1溶着ビット11a(上側ビット)は、ヒータビット131aと、矩形状の3枚の板、すなわちヒータビット131a側(下側)から、断熱材132a、放熱部材133a、及び断熱材134aの順に積層された積層構造体とを介して、エアシリンダ101と連結されている。第1溶着ビット11aとエアシリンダ101との連結部には、これら両者を結合させる結合部材101a(エアシリンダ101の取付部材)が設けられている。
【0022】
ここで、断熱材132a、放熱部材133a、及び断熱材134aは、断熱材132aと放熱部材133aとが、下側から例えば金属製のボルト151により、また放熱部材133aと断熱材134aとが、上側から例えば金属製のボルト152により、それぞれ連結されることによって、3枚が一体に結合している。このように放熱部材133aを挟むことで、その放熱効果により、ヒータビット131aから結合部材101aへ伝達される熱量を低減し、結合部材101aの温度を下げることができる。なお、放熱部材133aは、例えば鉄やステンレスなどの放熱性に優れる材料からなる。一方、断熱材132a及び断熱材134aは、例えばガラス繊維などの断熱性に優れる材料からなる。
【0023】
ボルト151及びボルト152は、互いに直接つながらないように、すなわち互いに所定の距離だけ離間するように、配置されている。これにより、ヒータビット131aから発せられる熱は、結合部材101aへ伝達される際に必ず放熱部材133aを通り、放熱されることになる。
【0024】
断熱材134aには、その一部がくり抜かれて、貫通孔153が形成されている。この貫通孔153により、放熱部材133aの上面は露出している。これにより、放熱効果が高められている。
【0025】
さらに、結合部材101aは、上下方向(長手方向)にだけでなく、その側方(短手方向)にも、例えば鉄やステンレスなどの放熱性に優れる材料からなる放熱部材154を有する。結合部材101aと放熱部材154とは、例えばボルトにより締結され、その接合面の一部では、結合部材101aが切り欠かれている。こうした切り欠きを結合部材101aに設けることで、熱の伝わる面積を小さくしている。ここで、放熱部材154は、エアシリンダ101を位置決めするフレーム(C型架100)の一部としても機能する。このため、溶着ヘッドの構造を、コンパクトにする(簡素化する)ことができる。
【0026】
一方、第2溶着ビット11b(下側ビット)は、ヒータビット131b及び断熱材132bを介してフレーム(C型架100)に固定されている。
【0027】
調整用部材12aは、図1及び図2に示すように、ヒータビット131aに設けられたネジ穴に螺合して、そのネジ穴への締め込み量(換言すればネジの突出量)に基づいて、第1溶着ビット11aと第2溶着ビット11bとの間隔を調整可能とする調整用ネジである。一方、調整用部材12bは、ヒータビット131bの表面において、調整用部材12aに対向する位置に固定された棒材である。これら調整用部材12a及び12bは、溶着ビット11a及び11bの接近を規制するストッパとして機能する。すなわち、図1(b)に示すように、調整用部材12aと調整用部材12bとが互いに当接(頭部同士が当接)することにより、調整用部材12aにより設定された間隔で第1溶着ビット11aと第2溶着ビット11bとの接近(エアシリンダ101による溶着ビット11aの駆動)が規制されるようになっている。詳しくは、調整用部材12a(調整用ネジ)は、締め込み量に応じて、突出量D1を可変とする。このため、調整用部材12aの締め込み量に基づいて、調整用部材12aと調整用部材12bとが互いに当接した時の第1溶着ビット11aと第2溶着ビット11bとの間隔、換言すれば両ビット11a,11b間の最小の間隔D0(ビット同士が近づくことのできる限界の間隔)を調整することができるようになっている。
【0028】
こうした構成であれば、ユーザは、調整用部材12a(調整用ネジ)の締め込み量を調整することで、溶着工程において、溶着ビット11a及び11bが、過度に多層プリント配線板を押しつぶすことがないように、間隔D0を調整することができる。
【0029】
この溶着機では、第1溶着ビット11a及び調整用部材12aが、共にヒータビット131aに設けられており、第2溶着ビット11b及び調整用部材12bが、共にヒータビット131bに設けられている。そして、第1溶着ビット11aと調整用部材12aとは、互いに熱に対する変形態様(例えば変形量や変形方向など)が、例えば1つの温度領域(例えば溶着温度に相当する温度領域「280〜350℃」)において等しくなっている。詳しくは、第1溶着ビット11a及び調整用部材12aは、両ビット11a及び11bの互いに接近する方向への伸び量が、少なくとも溶着温度において、等しくなっている。また、第1溶着ビット11aと調整用部材12aとは、互いにほぼ等しい寸法(例えば長さや幅)に設定されている。このように、第1溶着ビット11a及び調整用部材12aの寸法を互いに同しく設定することで、両者の熱変形特性を近づける(好ましくは一致させる)ことができる。こうした構造であれば、ヒータ加熱に伴う温度変化に起因して第1溶着ビット11aが伸びても、調整用部材12aも同様に(同じ量だけ)伸びるため、調整用部材12aと調整用部材12bとが互いに当接した時の第1溶着ビット11aと第2溶着ビット11bとの間隔D0は変化しない(又は変化が小さい)。なお、第1溶着ビット11aと調整用部材12aとの熱変形特性を等しくする上では、例えば両者について、熱変形特性の近い材料(好ましくは熱変形特性の等しい材料又は同一の材料)を用いることが望ましい。本実施形態において、溶着ビット11a及び11b、並びにヒータビット131a及び131bの材料は、例えば真ちゅうであり、調整用部材12a及び12bの材料は、例えばSUS(ステンレス鋼)である。
【0030】
一方、第2溶着ビット11bと調整用部材12bも、第1溶着ビット11aと第2溶着ビット11bとが互いに接近する方向への伸び量が、少なくとも上記溶着温度において、等しくなっている。また、第2溶着ビット11bと調整用部材12bとは、互いにほぼ等しい寸法(例えば長さや幅)に設定されている。こうした構造であれば、ヒータ加熱に伴う温度変化に起因して、第2溶着ビット11bが伸びても、調整用部材12bも同様に(同じ量だけ)伸びるため、調整用部材12aと調整用部材12bとが互いに当接した時の第1溶着ビット11aと第2溶着ビット11bとの間隔D0は変化しない(又は変化が小さい)。
【0031】
このように、本実施形態の溶着機においては、溶着ビット及び調整用部材が、共通のヒータビット(ヒータ取付部品)に配置され、各ヒータビットにおいて、互いに同様の熱変形特性を有する。すなわち、ヒータで高温まで加熱した場合でも、溶着ビットと調整用部材とは、共にヒータの近傍で同程度の温度に熱せられ、同様の熱変形をする。このため、間隔D0は、少なくとも溶着温度においては、ヒータ温度によらず、ほぼ一定に保たれる。
【0032】
上記溶着機により多層プリント配線板を製造する際には、まず、例えば図5(a),(b)に示すように、例えば厚さ「18μm」程度の銅箔等の金属箔を張り付けた絶縁基板を用い、その表面(例えば両面)に通常のエッチング技術により所望の導電回路を形成し、内層板501,502を作製する。このとき、後工程で溶着を行う所定の箇所に、ドット状の金属パターン501a,502aも併せて形成する。なお、絶縁基板としては、例えば熱硬化性のガラス・エポキシ樹脂、ガラス・ポリイミド樹脂、又はガラス・BT(ビスマレイミド・トリアジン)樹脂等の耐熱樹脂などからなるものを用いることができる。また、内層板501,502には、位置決め用の基準穴501b,502bを複数個(図5(b)には、それぞれ1つのみ図示)設けておく。
【0033】
次に、基準穴501b,502bに対応した基準穴503bを有する例えばプリプレグからなる絶縁性の接着材503(例えば1枚、ただし複数枚でも可)を、内層板501,502の間に挿入し、図6(a),(b)に示すように、基準穴501b〜503bに基準ピン600を挿入して、内層板501,502と接着材503とを位置決めし、重ね合わせる。なお、プリプレグは、ガラス繊維にエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸したものであり、例えば加熱及び加圧することにより熱硬化させて、両面配線板や銅箔等に接着することができる。
【0034】
次に、エアシリンダ101により溶着ビット11aを駆動し、溶着ビット11a,11bにより、内層板501,502及び接着材503の一式を、金属パターン501a,502aの部分において上下から挟んで加熱及び加圧する。このとき、調整用部材12a及び12bが、溶着ビット11a及び11bの接近を規制するストッパとして機能することで、溶着時における被溶着部材への過度な加圧が抑制される。溶着温度(各溶着ビットの温度)は、例えば「280〜350℃」とする。これにより、内層板501,502と接着材503とが溶着され、積層体が得られる。
【0035】
次に、図7(a),(b)に示すように、この積層体の表裏(最外層の各表面)にそれぞれ絶縁性の接着材505,506(いずれも例えばプリプレグ)を重ね、さらにその外側に外層導体用の金属箔507,508を重ね合わせ、加熱及び加圧により成形して、所望の多層プリント配線板を得る。
【0036】
こうした製造方法であれば、より高い信頼性をもって、多層プリント配線板を量産することができる。
【0037】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0038】
上記実施形態では、第1溶着ビット11a側の調整用部材12aだけでビット間の間隔D0を調整するようにしたが、これに限られず、調整用部材12aに代えて、又は調整用部材12aと共に、第2溶着ビット11b側の調整用部材12bで、間隔D0を調整するようにしてもよい。具体的には、例えば調整用部材12bを、ヒータビット131bに設けられたネジ穴に螺合する調整用ネジとすることで、そのネジ穴への締め込み量に基づいて、間隔D0を調整することができるようになる。そしてこの場合も、第1溶着ビット11aの場合と同様、調整用部材12b及びヒータビット131b等について上述の構造を採用することで、溶着時における被溶着部材への過度な加圧等を抑制することができる。
【0039】
上記実施形態では、第1溶着ビット11a(上側ビット)に、積層構造体(断熱材132a、放熱部材133a、及び断熱材134aからなる積層構造体)を適用した。しかしこれに限られず、第2溶着ビット11b(下側ビット)に、同様の積層構造体を適用してもよい。また、第1溶着ビット11a及び第2溶着ビット11bの両方に、積層構造体を適用してもよい。
【0040】
エアシリンダ101に代えて、他のアクチュエータ(例えば電動モータなど)を用いるようにしてもよい。また、こうしたアクチュエータは、第1溶着ビット11a(上側ビット)に代えて第2溶着ビット11b(下側ビット)に、あるいは第1溶着ビット11a及び第2溶着ビット11bの両方に、設けるようにしてもよい。さらに、第1溶着ビット11a及び第2溶着ビット11bの両方を同時に、その位置関係を維持したまま移動させるアクチュエータを設けるようにしてもよい。
【0041】
上記実施形態では、2枚の内層板501,502により多層プリント配線板を製造する場合について言及したが、本発明に係る多層プリント配線板の製造方法は、より多くの内層板、すなわち3枚以上の内層板により多層プリント配線板を製造する場合にも、同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る溶着機及び多層プリント配線板の製造方法の一実施形態について、(a)は該溶着機の初期状態を示す図、(b)は該溶着機の溶着ビット近接状態を示す図である。
【図2】溶着ヘッド部を拡大して示す斜視図である。
【図3】溶着ヘッド部を拡大して示す正面図である。
【図4】溶着ヘッド部を拡大して示す側面図である。
【図5】本実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法の第1工程について、(a)は同工程の斜視図、(b)は同工程の断面図である。
【図6】本実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法の第2工程について、(a)は同工程の斜視図、(b)は同工程の断面図である。
【図7】本実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法の第3工程について、(a)は同工程の斜視図、(b)は同工程の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 溶着ヘッド部
11a 第1溶着ビット
11b 第2溶着ビット
12a、12b 調整用部材
100 C型架
101 エアシリンダ
101a 結合部材
102a、102b ヒータ
131a、131b ヒータビット(ヒータ取付部品)
132a、132b、134a 断熱材
133a 放熱部材
151、152 ボルト
153 貫通孔
154 放熱部材
501、502 内層板
503 接着材(層間接着材)
505、506 接着材(層間絶縁材)
507、508 金属箔(導体膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶着部材を所定箇所において溶着する溶着機であって、
互いに対向するように配置され、前記被溶着部材を両面から挟むように加圧及び加熱して溶着する第1溶着ビット及び第2溶着ビットを備え、
前記第1溶着ビット及び前記第2溶着ビットの少なくとも一方は、それら第1溶着ビット及び第2溶着ビットが互いに接近する方向に、移動可能とされ、
前記第1溶着ビットには、ヒータ取付部品によりヒータが装着されるとともに、該ヒータ取付部品には、位置調整用部材が設けられ、
前記位置調整用部材は、前記第2溶着ビット側に配置された所定の部材に当接することにより、調整可能な所定の間隔で前記第1溶着ビットと前記第2溶着ビットとの接近を規制するものであり、
前記位置調整用部材は、少なくとも1つの温度領域において、前記第1溶着ビットと同様の熱変形特性を有する、
ことを特徴とする溶着機。
【請求項2】
前記位置調整用部材は、前記第1溶着ビットと同等の寸法を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶着機。
【請求項3】
前記位置調整用部材は、前記ヒータ取付部品に設けられたネジ穴に螺合して、そのネジ穴への締め込み量に基づいて、前記所定の間隔を調整可能とする調整用ネジである、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶着機。
【請求項4】
前記第2溶着ビットには、ヒータ取付部品によりヒータが装着され、
前記第2溶着ビット側に配置された所定の部材は、該第2溶着ビットの前記ヒータ取付部品に設けられており、少なくとも前記温度領域において、前記第2溶着ビットと同様の熱変形特性を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶着機。
【請求項5】
前記第2溶着ビット側に配置された所定の部材は、前記第2溶着ビットと同等の寸法を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の溶着機。
【請求項6】
前記第2溶着ビット側に配置された所定の部材は、該第2溶着ビットの前記ヒータ取付部品に設けられたネジ穴に螺合するネジであり、そのネジ穴への締め込み量に基づいて、前記位置調整用部材と共に、前記所定の間隔を調整可能とするものである、
ことを特徴とする請求項4に記載の溶着機。
【請求項7】
前記温度領域には、少なくとも溶着温度が含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶着機。
【請求項8】
複数の内層板を作製する第1の工程と、
前記複数の内層板の間に、層間接着材を挿入し、請求項1に記載の溶着機により、前記内層板と前記層間接着材とを所定箇所において溶着する第2の工程と、
前記第2の工程により層間接着材と溶着された内層板のうち、最外に位置する内層板の少なくとも一方に、層間絶縁材を介して導体膜を形成する第3の工程と、
を備える、
ことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−295888(P2009−295888A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149915(P2008−149915)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】