説明

溶融亜鉛メッキ処理方法および溶融亜鉛メッキ処理におけるロボット装置

【課題】複数のワークを収納容器内に収納した状態で後処理液に浸漬することに基づく、各ワークにおけるメッキ膜の損傷を防止する。
【解決手段】ロボットハンド1の先端部材2に対して、溶融亜鉛メッキ液が付着された複数のワークを収納する収納容器3が取付けられ、その収納容器3に微振動を付与するバイブレータ71が備えられている。バイブレータ71は、アンモニア水や冷却水等の後処理液中に浸漬する際、収納容器3に微振動を付与することになっており、その微振動は、収納容器3内の各ワークに伝達されて、各ワークにおけるメッキ膜同士の結合を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融亜鉛メッキ処理方法および溶融亜鉛メッキ処理におけるロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融亜鉛メッキにおいては、溶融亜鉛メッキ液中にどぶ漬けされた後のワークは、遠心分離装置等のたれ切り装置によって余分な溶融亜鉛メッキ液が分離された後、収納容器内にまとまった数が収納され、その収容容器内の複数のワークは、その収納容器内に収納した状態で所定の後処理液中に浸漬される。特に、ワークが、ボルトやナットのようなねじ部を有する等、凹凸部を有する場合には、ねじ溝等の凹部内への余分な溶融亜鉛メッキ液の付着やねじ山等の凸部でのばり除去のために、後処理液としてアンモニア水が用いられ、このアンモニア水での後処理後に冷却水による後処理が多く行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、たれ切り装置によって余分な溶融亜鉛メッキ液が分離された後の収納容器内の各ワークは、溶融亜鉛メッキ液中にどぶ漬けされてまもないため、未だ高温の状態(後処理液の温度に比して)にあり、しかも、収納容器内においては各ワークは互いに接触した状態にある。このため、このような収納容器内の複数のワークを後処理液中に浸漬した場合には、後処理液の温度が、その時点のワークの温度よりもかなり低いことから、急冷されて、ワークの接触しているメッキ膜部分が結合(凝固)されるおそれがある。この結果、そのように結合しているワーク同士を引き離した場合には、メッキ膜が剥がれ、良好に溶融亜鉛メッキ処理が施されたワークを得ることが困難となる。
【0004】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その第1の目的は、複数のワークを収納容器内に収納した状態で後処理液に浸漬することに基づく、各ワークにおけるメッキ膜の損傷を防止できる溶融亜鉛メッキ処理方法を提供することにある。
第2の目的は、上記溶融亜鉛メッキ処理方法を実施できる溶融亜鉛メッキ処理におけるロボット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記第1の目的を達成するため、本発明(請求項1)にあっては、
溶融亜鉛メッキ液が付着された複数のワークを、収納容器内に収納しつつ、該溶融亜鉛メッキ液よりも温度が低い後処理液中に浸漬する際に、該収納容器に微振動を付与する溶融亜鉛メッキ処理方法において、
前記収納容器に対する微振動を、該微振動よりも大きな上下振動と共に、該収納容器に付与する構成としてある。
【0006】
前記第2の目的を達成するため、本発明(請求項2)にあっては、
溶融亜鉛メッキ液が付着された複数のワークを、収納容器内に収納しつつ、後処理液中に浸漬する際に用いられ、該後処理液中において該収納容器に微振動を付与するロボット装置であって、
ロボットハンドの先端部に、溶融亜鉛メッキ液が付着された複数のワークが収納される収納容器が上下動自在に保持され、
前記収納容器に微振動を付与する微振動付与手段が備えられ、
前記ロボットハンドに、前記収納容器を前記微振動よりも大きく上下動させて該収納容器に上下動を付与するための駆動手段が設けられている構成としてある。上記請求項2を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項3,4に記載のとおりである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載された発明によれば、収納容器を後処理液中に浸漬する際に、該収納容器に微振動を付与することから、後処理液によってメッキ膜が凝固傾向を高めるとしても、各ワークに対して微振動が伝達されることになり、各ワークのメッキ膜が接触した状態で凝固して該各ワークが結合しようとすることが防止されることになる。このため、結合したワーク同士を引き離すことに基づきメッキ膜が剥がれるということがなくなり、複数のワークを収納容器内に収納した状態で後処理液に浸漬することに基づく、各ワークにおけるメッキ膜の損傷を防止できることになる。
【0008】
また、収納容器に対する微振動を、該微振動よりも大きな上下振動と共に、該収納容器に付与することから、後処理液に各ワークを十分に接触させる上下振動作業を、常に一定の態様で行うことが可能となり、各ワークにおける溶融亜鉛メッキの品質の均一化を高めることができることになる。
【0009】
請求項2に記載された発明によれば、ロボットハンドの先端部に、溶融亜鉛メッキ液が付着された複数のワークが収納される収納容器が保持され、その収納容器に微振動を付与する微振動付与手段が備えられていることから、その微振動付与手段による微振動に基づき、後処理液中に複数のワークを収納容器をもって浸漬する際、各ワークのメッキ膜が接触した状態で凝固して該各ワークが結合しようとすることが防止できることになる。
【0010】
また、ロボットハンドの先端部に収納容器が上下動自在に保持され、ロボットハンドに、収納容器を微振動よりも大きく上下動させて該収納容器に上下動を付与するための駆動手段が設けられていることから、収納容器に対して、微振動と共に、該微振動よりも大きな上下振動が付与されることになり、各ワークのメッキ膜が接触した状態で凝固して該各ワークが結合しようとすることを防止できると共に、後処理液に各ワークを十分に接触させる上下振動作業を、常に一定の態様で行って、各ワークにおける溶融亜鉛メッキの品質の均一化を高めることができることになる。
【0011】
請求項3に記載された発明によれば、後処理液が、アンモニア水、又は該アンモニア水の後に用いられる冷却水の少なくとも一方であることから、後処理液としてアンモニア水または冷却水の少なくとも一方を用いた一般的な後処理を行う場合においても、収容容器に対する微振動に基づき、各ワークのメッキ膜が接触した状態で凝固することを防止できることになる。
【0012】
請求項4に記載された発明によれば、アンモニア水による後処理および冷却水による後処理を行う場合であっても、収容容器に対する微振動に基づいて各ワークにおけるメッキ膜同士が結合(凝固)することを防止できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、実施形態に係る溶融亜鉛メッキ処理装置を示しており、その溶融亜鉛メッキ処理装置は、高温状態(例えば520℃前後)の溶融亜鉛メッキ液を貯溜する溶融亜鉛メッキ釜41と、上下方向の振動を利用した亜鉛メッキ液のたれ切り装置42と、遠心力を利用した溶融亜鉛メッキ液のたれ切り(遠心分離)装置43と、ロボット装置Rと、溶融亜鉛メッキ液の温度状態よりも低い温度状態(90〜100℃前後)のアンモニア水(第1後処理液)を貯溜した第1後処理液槽(フラックス処理槽)44と、アンモニア水の温度状態よりも低い温度状態(例えば20〜30℃前後)の冷却水(第2後処理液)を貯溜した第2後処理液槽45とを備えており、遠心分離装置43と第1、第2の後処理液槽44、45とに対して、ロボット装置Rは、そのロボットハンド1がアクセス可能とされ、遠心分離装置43以降、ロボット装置Rを利用して、工程が自動化できることになっている。
【0014】
このような溶融亜鉛メッキ処理装置を用いた溶融亜鉛メッキ処理においては、基本的には、図1の矢印に示すように、先ず、複数のワーク(例えばボルト、ナット等)が、溶融亜鉛メッキ釜41内の溶融亜鉛メッキ液中に対してどぶ漬けされ、次いで、たれ切り装置42によって、各ワークに付着した余分な溶融亜鉛メッキ液が、上下方向にワークを振ることにより大まかに除去され、この後、遠心分離装置43にその複数のワークが供給されて、余分な溶融亜鉛メッキ液が各ワークから除去される。そして、遠心分離装置43から、ロボット装置R(に保持された後述の収納容器3)へと複数のワークが移され、そのロボット装置Rにより、第1後処理液槽44、第2後処理液槽45を経て、第2後処理液槽45近傍における放出位置に対して、その各ワークが放出される。
【0015】
より具体的に、上記遠心分離装置43、上記ロボット装置Rを中心として説明する。
先ず、上記遠心分離装置43について説明すると、遠心分離装置43は、図2に示すように、上記機能を果たすべく、遠心分離、反転可能な分離容器57等が設けられている。すなわち、床上に配設されるフレーム51上に図2紙面直角方向に一対の支柱52が設けられ、その一対の支柱52に跨がって回転軸53が回転自在に保持されている。この回転軸53には、略L字状をとされた保持部材54の一端部が一体化されていると共に、油圧式の回転型アクチュエ−タ55が連結されている。保持部材54には、円筒状の外筒56が一体化され、この外筒56内において、有底筒状の分離用容器57が配設されている。分離用容器57は、遠心分離可能とすべく、例えばその側壁および底壁が例えば金属多孔板(パンチングメタル)によって構成されて、溶融亜鉛メッキ液の通過する開口を多数有するようになっており、その分離用容器57は、保持部材54に油圧式の回転型アクチュエ−タ58(回転軸58a)を介して保持されて、保持部材54に対して回転自在に保持されている。
【0016】
上記分離用容器57は、保持部材54、外筒56、アクチュエ−タ58と共に、前記回転軸53を中心として揺動可能となっており、この揺動によって、分離用容器57は、図2実線で示す分離位置と、図2一点鎖線で示す取出し位置との間で姿勢変更可能とされている。
【0017】
上記分離位置では、分離用容器57のワーク出入口57aが上方を向きかつその底壁が略水平になった状態となり、この分離位置において、アクチュエ−タ58によって分離用容器57を回転させることによって、分離用容器57内のワークから余分な溶融亜鉛メッキ液が遠心力によって、外筒56へ向けて飛散され、外筒56に衝突した溶融亜鉛メッキ液は、当該外筒56と分離用容器57との間の径方向間隙59を通して、下方へ落下、回収される。
【0018】
上記取出し位置では、上記分離位置から、回転軸53が図2時計方向に略145度回動された状態となることになっている。この取出し位置では、分離用容器57のワーク出入口57aが斜め下方を向いて、その内部のワークが重力により落下される。この場合、分離位置から取出し位置へ向けての分離用容器57の移動は、分離用容器57が上方へ持ち上げられるようにして行われるので、その途中で分離用容器57からワークが不用意に落下されることはない。また、回転軸53が、分離用容器57の外側方に位置しているので、取出し位置において分離用容器57からワークが落下される落下空間は十分広いものとすることができる。
【0019】
なお、分離位置において分離用容器57がアクチュエ−タ58によって回転される前に、蓋部材60によって分離用容器57のワーク出入口57aが塞がれ、遠心分離が終了した後、取出し位置へ向けての分離用容器57の揺動の前に、蓋部材60が、分離用容器57を挟んで回転軸53とは反対側へ向けて後退される。
【0020】
次に、前記ロボット装置Rについて説明する。ロボット装置Rは、図3、図4に示すように、合計6軸の回動軸を有し、そのロボットハンド1の先端部に位置する先端部材2には、フレーム70を介して、収納容器3が取付けられている。収納容器3は、全体として浅い有底筒状とされているが、通液性が十分確保されるように、耐熱性の優れた材質例えば鉄系金属性の籠あるいはざるによって構成されており、この収納容器3は、遠心分離装置43から、溶融亜鉛メッキ液が付着された高温状態の複数のワークを受け取り、その複数のワークを収納した状態で、後処理液中に浸漬することになっている。
この場合、この収納容器3は、遠心分離装置43から複数のワークを受け取るときには、ロボット装置Rにより、前記分離用容器57の取出し位置において該分離用容器57から複数のワークが落下される位置に位置されることになる。この際、収納容器3が、分離用容器57からのワークを受け取り位置にきたことを確認するため(図2一点鎖線で示す位置にきたことの確認)、ロボット装置Rの一部によって例えば押圧操作されるスイッチ(センサ)61を設けて、このスイッチ61が作動したことが確認されたことを条件として、分離用容器57を分離位置から取出し位置へ向けて揺動開始させるようにすることができる。
【0021】
前記フレーム70には、図4に示すように、収納容器3とは反対側において、微振動付与手段としてのバイブレータ71が取付けられている。バイブレータ71は、その作動(回転)により微振動を発生するもので、バイブレータ71には、遠心力振動モータ、遠心力振動を発生する空気式ボールバイブレータ71等が用いられ(本実施形態においては、エクセン株式会社製CS−25 始動空気圧6kg/cm2で11000V.P.M前後の高周波振動のものを使用)、そのバイブレータ71による微振動は、本実施形態においては、フレーム70を介して横振動等として収納容器3に伝達されることになっている。この微振動は、本実施形態においては、外見上(人の目で見た場合)、収納容器3の姿勢、位置に変化を与えない程度とされており、その微振動に基づき収納容器3内の各ワークに微少な接近離間動(微振動)を生じさせることになっている。勿論、このバイブレータ71には耐液処理が施されている。
【0022】
前記フレーム70にはまた、図4に示すように、ブラケット72を介して、液検出手段としての液検出センサ73が固定されている。液検出センサ73は、下方へ長く伸びる検知部73aを有して、検知部73aの先端は、収納容器3が後処理液31中に浸漬する前に検知すべく、収納容器3の底壁よりもさらに下方に突出されている。このような液検出センサ73は、検知部73aの先端を含んで先端から所定距離だけ上方位置までの特定範囲が液中に浸漬されたとき、液検出ということで所定の信号を出力するもので、その信号に基づき、前記バイブレータ71が作動されることになっている。
【0023】
このような溶融亜鉛メッキ処理装置(ロボット装置42等)においては、収納容器3に遠心分離装置43から複数のワークが受け渡されると(図2参照)、後処理を行うべく、その収納容器3は、図5に示すように、第1後処理液槽44内のアンモニア水(後処理液31)中に、その液面から浅い角度を有するように斜めから浸入されて、該アンモニア水中に完全に所定時間、浸漬され、その後、収納容器3は、アンモニア水中から、その液面に対して浅い角度でもって引き出される。尚、本実施形態においては、タイマ等を利用して、前記液検出センサ73がアンモニア水を検出しないように設定されている。
【0024】
収納容器3がアンモニア水中から引き出されると、収納容器3は、第2後処理液層45内の冷却水へと搬送される。この冷却水に対しても収納容器3は、図5に示すように、その液面から浅い角度を有するように斜めから浸入されることになっており、この際、収納容器3が冷却水中に浸入する前において、液検出センサ73は冷却水の存在を検出し、それに基づきバイブレータ71が作動(微振動開始)される。これにより、そのバイブレータ71による微振動が収納容器3に伝達され、その収納容器3内の複数のワークも微振動されることになり、その微振動状態を維持しつつ、収納容器3は冷却水中に浸入されることになる。
【0025】
収納容器3は、冷却水中においても所定時間、完全に浸漬されることになるが、この場合においても、収納容器3は、その微振動状態が維持し続けられることになる。そして、収納容器3は、冷却水中での所定時間の完全な浸漬を終えると、アンモニア水の場合同様、冷却水中から、その液面に対して浅い角度でもって引き出される。
【0026】
収納容器3が冷却水中から引き出されて、液検出センサ73も冷却水から引き出されると、収納容器3に対する微振動が停止され、収納容器3は、その内部の複数のワークを所定の放出位置に放出する。
【0027】
したがって、上記溶融亜鉛メッキ処理においては、収納容器3を冷却水中に浸漬する際に、該収納容器3に微振動を付与することから、溶融亜鉛メッキ液よりも温度が低い冷却水によってメッキ膜が凝固傾向を高めるとしても、各ワークに対して微振動が伝達されることになり、各ワークのメッキ膜が接触した状態で凝固して該各ワークが結合しようとすることが防止されることになる。
【0028】
しかもこの場合、この収納容器3に対する微振動は、冷却水中に浸漬する前及び冷却水中から出た後においても、余裕をもって各ワークに対して微振動が伝達されることになり、各ワークのメッキ膜が接触した状態で凝固することが極めて確実に防止されることになる。
【0029】
図6〜図10は他の実施形態を示す。この他の実施形態において、前記実施形態と同一構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
この実施形態においては、ロボット装置Rにより、後処理時に、収納容器3に対して、前記微振動と共に、該微振動よりも大きな上下振動が付与されることになっている。
【0031】
すなわち、図6〜図8に示すように、ロボットハンド1の先端部に位置する先端部材2には、収納容器3が駆動セット体Sを介して取付けられている。駆動セット体Sは、図7、図8に示すように、鉄板等により構成された取付基板11を有し、この取付基板11の一端部つまり上端部が、ロボットハンド1の先端部材2にボルトによって固定されている。取付基板11の一方側板面には、エアシリンダ装置12のシリンダ12aが、上下方向に伸ばして固定されており、エアシリンダ装置12のピストンロッド12bは下方に伸びて、その先端部が、収納容器3の外側壁に溶接等により固定された連結具13に対して直結されている。シリンダ装置12は、シリンダ12aをその軸方向から挟むように一対のフランジ部材12cを有し、この一対のフランジ部材12c同士が、それぞれシリンダ12aと平行に伸びる合計4本の連結ロッド12dによって連結されている。各連結ロッド12dは、シリンダ12aを取り巻くように、かつシリンダ12aの周方向等間隔(実施例では90度間隔)でもって配設されている。
【0032】
前記4本の連結ロッド12dのうち、取付基板11から遠い2本の前側の連結ロッド12dは、ガイドロッドを構成するもので、このガイドロッドとしての前連結ロッド12dには、嵌合部材14が上下方向に摺動自在に嵌合されている(図9をも参照)。この嵌合部材14の上下方向長さは、上下のフランジ部12cの間の距離よりも短くされて、所定ストロ−クだけ当該上下のフランジ部12c間で上下方向に変位可能とされている。なお、上記2本の前連結ロッド12dを結んで得られる仮想平面は、取付基板11と平行となっている。
【0033】
前記嵌合部材14は、上下方向に伸びるロッド状の連結部材15を介して、収納容器3の外側壁に一体的に連結されている。この連結部材15、嵌合部材14、前連結ロッド12dによって、収納容器3を上下方向に滑らかに案内するためのガイド機構Gが構成される。すなわち、シリンダ装置12を伸縮させたとき、収納容器3が上下駆動されるが、ガイド機構Gによって、収納容器3の上下動が円滑に行われることになる。
【0034】
前記取付基板11の上端側部には、図7、図8に示すように、ブラケット16を介して、液検出手段としての液検出センサ17が固定されている。液検出センサ17は、下方へ長く伸びる検知部17aを有して、検知部17aの先端は、収納容器3のほぼ底壁付近に位置されている。この液検出センサ17は、検知部17aの先端を含んで先端から所定距離だけ上方位置までの特定範囲が液中に浸漬されたとき、液検出ということで所定の信号を出力するものとなっている。
【0035】
前記取付基板11のシリンダ装置12とは反対側面には、切換弁18が固定されている。この切換弁18は、シリンダ装置12に対するエアの供給態様を変更して、該シリンダ装置12の伸長と縮長とを交互に行わせるためのものである。
【0036】
シリンダ装置12と切換弁18との接続系統が図10に示される。この図10において、ピストンによって画成されたシリンダ12a内の2室が符号21、22で示される。前記切換弁18は4ポ−ト・2ポジションの電磁式とされて、室21が系路21Aを介して、また室22が系路22Aを介して切換弁18に接続される。
【0037】
切換弁18が図10の切換状態にあるときは、図示を略すコンプレッサからのエアが、系路22Aを介して室22に供給される一方、室21が切換弁18を介して大気に解放され、シリンダ装置12は縮長される。切換弁18が図7の状態から切換えられると、室21にエアが供給される一方、室22が大気に解放されて、シリンダ装置12が伸長される。
【0038】
切換弁18の切換えを高速で行うことにより、シリンダ装置12の伸縮が高速で行われて、収納容器3が上下振動されることになる(例えば1秒間に数回)。収納容器3の上下振動の速度、振幅、および上下振動される作動時間が、切換弁18を制御するタイマ装置23によって決定される。このタイマ装置23は、液検出センサ17による液検出、およびロボット制御系からの収納容器3が後処理液31中の所定位置(図8一点鎖線で示す収納容器3が略水平となった位置)になったことの位置信号を共に受けたことを条件として、起動される。
【0039】
前記取付基板11のシリンダ装置12とは反対側面には、図7に示すように、前記実施形態に係るバイブレータ71が取付けられ、前記嵌合部材14には、図7、図8に示すように、ブラケット72を介して、前記実施形態に係る液検出センサ73が固定されている。
【0040】
このような溶融亜鉛メッキ処理装置(ロボット装置42等)においては、収納容器3がアンモニア水中に完全に浸漬されると、液検出センサ17に基づき、その状態で、前記切換弁18が高速で切換作動され、シリンダ装置12は高速で伸縮動されることになり、収納容器3は、微振動と共に上下振動される状態となる。
したがって、収納容器3の微振動に基づき各ワークのメッキ膜が接触した状態で凝固することを防止できるだけでなく、微振動と共に該微振動よりも大きな上下振動が付与されることに基づき、後処理液31に各ワークを十分に接触させる上下振動作業を、常に一定の態様で行うことが可能となり、各ワークにおける溶融亜鉛メッキの品質の均一化を高めることができることになる。
【0041】
以上実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば次のような場合をも含むものである。収納容器3を上下駆動する駆動手段としては、例えば油圧式シリンダ装置や電気式モータ等適宜のものを用いることができる。後処理液による後処理は、たれ切り装置42、43のいずれか一方のみの処理を行った後に行うこともでき、またたれ切りを行わないでただちに後処理を行うこともできる(ワークの種類によって異なる)。
【0042】
液検出センサ17、73は、適宜の種類のものを用いることができ、またこのようなセンサを別途有しないものであってもよい。
【0043】
バイブレータ71は、収納容器3に直接、取付け、或いは連結部材15等に取付けけてもよい。
【0044】
後処理液としてのアンモニア水において、各ワークを後処理する場合においても、収納容器3に微振動を付与してもよい。
【0045】
シリンダ装置12に基づく収納容器3の上下動をロボット装置R自体に行わせてもよい。
【0046】
液検出センサ73を収納容器3等、収納容器3との相対的位置関係がわかる部材に取付けるようにしてもよい。
【0047】
収納容器3の後処理液31中への浸入、引き出しの際、収納容器3が直線的に移動するようにしてもよく、あるいは略円弧軌跡を描いて移動するようにしてもよい。
【0048】
本発明の目的は、明記された内容に限らず、実質的に好ましいあるいは利点として記載された内容に対応したもの提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】溶融亜鉛メッキ処理装置の好ましい配置例を示す平面図。
【図2】遠心分離装置の好ましい例を示す要部側面断面図。
【図3】本発明によるロボット装置の一例を示す斜視図。
【図4】収納容器を微振動させる部分の詳細を示す側面図。
【図5】収納容器の後処理液に対する姿勢変更状態を示す簡略説明図。
【図6】本発明によるロボット装置の他の例を示す斜視図。
【図7】収納容器を上下駆動、微振動させる部分の詳細を示す側面図。
【図8】図7を矢印X方向から見たときの図。
【図9】図8のX4−X4線相当断面図。
【図10】エアシリンダ装置の系統図。
【符号の説明】
【0050】
1:ロボットハンド
2:ロボットハンドの先端部材
3:収納容器
12:シリンダ装置
31:後処理液
41:溶融亜鉛メッキ液槽
43:遠心分離装置
44:第1後処理液槽(アンモニア水)
45:第2後処理液槽(冷却水)
71:バイブレータ
R:ロボット装置
S:駆動セット体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融亜鉛メッキ液が付着された複数のワークを、収納容器内に収納しつつ、該溶融亜鉛メッキ液よりも温度が低い後処理液中に浸漬する際に、該収納容器に微振動を付与する溶融亜鉛メッキ処理方法において、
前記収納容器に対する微振動を、該微振動よりも大きな上下振動と共に、該収納容器に付与する、
ことを特徴とする溶融亜鉛メッキ処理方法。
【請求項2】
溶融亜鉛メッキ液が付着された複数のワークを、収納容器内に収納しつつ、後処理液中に浸漬する際に用いられ、該後処理液中において該収納容器に微振動を付与するロボット装置であって、
ロボットハンドの先端部に、溶融亜鉛メッキ液が付着された複数のワークが収納される収納容器が上下動自在に保持され、
前記収納容器に微振動を付与する微振動付与手段が備えられ、
前記ロボットハンドに、前記収納容器を前記微振動よりも大きく上下動させて該収納容器に上下動を付与するための駆動手段が設けられている、
ことを特徴とする溶融亜鉛メッキ処理におけるロボット装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記後処理液が、アンモニア水、又は該アンモニア水の後に用いられる冷却水の少なくとも一方である、
ことを特徴とする溶融亜鉛メッキ処理におけるロボット装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記後処理液がアンモニア水および冷却水であって、アンモニア水中および冷却水中の両方において前記収納容器が微振動される、
ことを特徴とする溶融亜鉛メッキ処理におけるロボット装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−182635(P2007−182635A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101978(P2007−101978)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【分割の表示】特願平10−275503の分割
【原出願日】平成10年9月29日(1998.9.29)
【出願人】(596013811)株式会社湯沢亜鉛鍍金工業所 (1)
【Fターム(参考)】