説明

溶融接合部を備えたガラスセラミック物品およびその製造方法

少なくとも1箇所の溶着接合部(100)を有する単一部品または多部品ガラスセラミック物品(10,20,30,40,50,60,70,80,90)と、少なくとも1箇所の溶着を実施することを含む、このような物品(10,20,30,40,50,60,70,80,90)の製造方法が開示されている。本発明は、ガラスセラミックの先駆物質ガラスの溶着技術のマスターに基づくものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミック物品およびその製造方法に関する。特に本発明は、少なくとも1箇所の溶融接合部を有するガラスセラミック物品およびこのような物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラスセラミック製品は種々の用途において周知である。その例を挙げると、
電気式調理用レンジ(一般的に平坦であることが好ましい):
ガスレンジ:ガスバーナーを設けるための開口部を備えた平坦なもの、あるいは三次元的形状を有するもの(特許文献1参照)
調理器具:フライパン、鍋、皿等のようなもの。
【0003】
ガラスセラミック材料を成分材料から選ぶ理由は、
審美的判断基準:ガラスセラミックは、不透明または透明、および種々の色彩を持つ種々の外観の下で種々の形状をとることができる
良好な機械的強度:
優れた耐熱衝撃性:熱膨張係数が極めて小さい、殆どゼロのガラスセラミック材料を得ることが可能である。
【0004】
これらのガラスセラミック製品を得るための旧来の方法は下記の諸ステップ、すなわち、
ガラスセラミックの先駆物質ガラス(またはかかるガラスの先駆物質フィラー)をガラス製造炉内で溶融するステップと、
溶融ガラスを周知のガラス製造法によって成形するステップと、
随意的に仕上げ作業を行なう(外部的および内部的切取り、エッジの仕上げ等)ステップと、
求められている微小構造を生成させるために、最終的に適当なセラミック化熱処理を行なうステップとからなる。
【0005】
したがって現在、これらガラスセラミック製品の形状は、成形方法の実施の可能性によって限定されている。
【0006】
主として行なわれる成形方法は(上述のセラミック化に先立って行なわれる)、
圧延法:表面が加工されていないローラを用いて行うと、平坦な表面を備えた板が得られ、表面が加工されている少なくとも一つのローラを用いて行なうと、凹凸のある少なくとも一つの表面を備えた板が得られる
吸引を伴う圧延法:板の表面上に突出部を形成可能(特許文献1参照)
プレス加工法:種々の形状のもの(上述した形式の調理器具)が得られるが、それでもなおこの用途の分野には制限がある。プレス法ではサイズが大きく、かつ厚さの薄いものは成形不能である。
【0007】
ガラスセラミック製品を製造する状況においては、本発明者等の知る限りでは、セラミック化熱処理の前でも後でも、溶着作業が導入されたことは皆無である。
【0008】
ガラス部品の溶着は、化学産業のためのチューブ状部材の製造に特に利用される周知の方法である。チューブ(円筒すなわち中空の均等物)、ロッド(中実で細長い製品)のような部材は、当該ガラスのアニール温度に近い温度で予め加熱され、次いで、それらを軟化させるのに十分な高い温度にするために、溶着すべき領域が局部的に加熱される。次いで溶着すべき部品同士が、軟化せしめられた領域において接触せしめられる。一般的には、溶着作業によって発生した歪を除くために、溶着された部品に対し、アニール熱処理が施される。
【0009】
この形式の(溶着)方法は、ガラスセラミック部品には適用できない。局部加熱を施すと、結晶成長のような微小構造の変化が避けられず、所期のものとは異なる性質の結晶が形成される。これにより、製品の品質を著しく損なう外観および特性(膨張係数等)の変化が生じる。
【0010】
この形式の(溶着)方法は、ガラスセラミックの先駆物質ガラス部材には適用できない。いずれにせよ、その可能性ある専門技術に関し先入観が存在した。
【0011】
当業者が、加熱された領域の制御されないセラミック化(すなわち、変色した、または乳白色の外観を有する領域の形成、部材の他の部分との膨張係数の相違)や、溶着後の冷却中における割れや、アセンブリ内部の膨張係数の変化に基く、目標とする機械的特性とのずれによる局部的歪の発生等を恐れるのも無理からぬことである。
【0012】
そこで、本発明者等は、セラミック化熱処理に先立って少なくとも1回の溶着作業を伴うガラスセラミック製品の製造方法をマスターできることを実証した。
【0013】
特許文献2には、リブを備えたガラスシートを互いに接着し、その後セラミック化することによってガラスセラミック製品を作成する方法が開示されている。
【0014】
特許文献3には、熱的に結晶化が可能な複数のガラス多面体を、この多面体の表面同士を結合させるのに十分な熱にさらし、次いでガラスに核を形成し、その後結晶化して、熱的に結晶化された一体の鏡ブランクを形成することによって、テレスコープ式の鏡ブランクを作成する方法が開示されている。
【0015】
特許文献4には、細長い平行なガス通路が貫通した非多孔質材料からなる、低膨張係数を有するセラミック材料のマトリクスを作成する方法が開示されている。このようなマトリクスは、ガスタービンエンジンの熱交換器とすることができる。この特許文献4に開示された方法の実施の形態は、複数のガラスチューブを接着してマトリクスを形成し、次いでこれを熱により結晶化することを含んでいる。
【0016】
これらの引用特許文献に開示された方法はすべて、ガラスシート、多面体およびチューブのようなガラス部品を接着して先駆物質ガラス物品を形成する場合に、セラミック化に先立って、ガラス部品全体を加熱することを含んでいる。これら部品の全体加熱は、時として不可能なことがあり、あるいは或る種のガラスセラミック物品の製造に関しては少なくとも経済的ではない。接着領域の局部的加熱のみを含む方法が高く望まれている。
【特許文献1】佛国特許出願公開第2,735,562号明細書
【特許文献2】米国特許第3,279,931号明細書
【特許文献3】米国特許第3,661,546号明細書
【特許文献4】米国特許第4,248,297号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このような状況に鑑み、本発明者等は、溶着領域の局部的加熱のみを含む、ガラスセラミックの先駆物質ガラスに対し少なくとも1箇所の溶着を実施する新規なガラスセラミック製品の製造方法を開発した。
【0018】
この独創的な方法は特に、新規な形状のガラスセラミック製品を得ることを可能にするものである。いかなる場合でも、上記方法によって得られる製品は、形状の新規さではなく、独創的な製造方法の特徴、すなわち、それらのガラスセラミック構造に少なくとも1箇所の溶着接合部が存在するという特徴を有する点が新規である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の目的によれば、本発明は、ガラスセラミック物品に関し、その単一部品構造または多部品構造が少なくとも一箇所の溶着接合部を有する。
【0020】
このガラスセラミック物品は、単一部材(部品)から、または少なくとも2個の部材(部品)から得られた。このガラスセラミック物品は、
単一部品の、一般に両端である異なる部分の溶着によって、
いくつかの部材を一緒に溶着(組付け)することによって得られた。
【0021】
本発明の物品のガラスセラミック構造は、その特徴として、溶着の印(痕跡または傷跡)、すなわち、少なくとも1箇所の溶着接合部を有する。このガラスセラミックは、この溶着接合部において、不規則な形状および/または異なる表面外観を有する。多少なりと目に見えるこの溶着接合部は、概して極めて僅かではあるが、物品の外観に影響を与える。この溶着接合部はさらに、例えば、色の有無、色の違い、または異なる成分によって異なるガラスセラミック間の仕切りを表すことができる。
【0022】
本発明では、環状またはチューブ状の形状を有するガラスセラミック物品を特に、単一部品物品と呼ぶ。
【0023】
さらに一般的に言えば、本発明の物品は、明確であれ不明確であれ、個々の独立した要素の組付けによって得られる。したがって、最も一般的な実施の形態によれば、本発明のガラスセラミック物品は、その構造の種々の構成部品間に少なくとも1箇所の溶着接合部を持つ、少なくとも2部品(多部品)からなる構造を有する。1箇所の溶着接合部において、あるいは複数箇所の溶着接合部において一体に接合された上記構成部品は、特にそれらの成分および/または色彩に関して同一または異なるガラスセラミックである。
【0024】
本発明の物品を構成するガラスセラミックは、β水晶相および/またはβリシア輝石が主結晶相を有することが有利である。本発明の物品は、異なるガラスセラミック部品の組付けから得ることができる。β水晶相およびβリシア輝石結晶相は、それらが低い熱膨張係数を有することから好ましいものである。β水晶相またはβリシア輝石結晶相を有するガラスセラミックからなる単一部品構造または多部品構造の物品が特に好ましい。
【0025】
別のタイプの結晶相を有するガラスセラミックからなるガラスセラミック物品も、本発明から除外されるものではなく、これは、特に求められている特有の特性(例えば高温における安定性のような低熱膨張係数以外の特性)に関する。
【0026】
本発明の他の態様によれば、少なくとも1箇所の溶着接合部を持つ単一部品構造または多部品構造を有するガラスセラミック物品の製造方法が提供される。この方法は、
単一部品または多部品からなる先駆物質ガラス物品を溶着によって用意するステップと、
該先駆物質ガラス物品をセラミック化してガラスセラミック物品にするステップとを含み、
種々のガラス材料が多部品構造に組み込まれる場合には、これら種々のガラス材料がほぼ一致する熱膨張係数を有し、かつ同一条件でのセラミック化が可能である、ガラスセラミック物品の製造方法において、上記溶着を溶着領域の局部加熱によって行なうことを特徴とするものである。
【0027】
本発明のさらなる特徴および効果は、後述する詳細な説明、特許請求の範囲ならびに添付図面から、当業者であれば容易に理解するであろう。
【0028】
後述する全体的な説明および詳細な説明は、単に本発明を例示したに過ぎず、特許請求の範囲に記載された本発明の性質および性格を理解するための概要および骨組みの提供を意図したものである。
【0029】
添付図面は、本発明のさらなる理解のために用意したものであり、本明細書の一部をなすものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明のガラスセラミック物品の多部品構造は、一般に、プレート、ロッド、チューブ(細長い部材、中実または中空)、および/またはプレス加工された形式の物を含む。これらの部品は、このような構造内において同一形式の部品および/または他形式の部品に溶着されている。したがって、本発明のガラスセラミック物品の少なくとも二部品構造は、下記の物を含むことが可能である。すなわち、
少なくとも2枚のプレート:例えば、容積を設定するためにエッジ同士が90°をなして溶着された4枚、5枚のプレート、
少なくとも1枚のプレートと、上述のロッド/チューブ・ファミリーからの少なくとも一つの物(細長い物のファミリー、中実または中空):例えば、1枚のプレートの表面に対し直角に配置された上記ファミリーからの短い物、または上記プレートの表面に寝かせた上記ファミリーからの長い物、または
ロッド/チューブ・ファミリーからの少なくとも二つの物、または
少なくとも一つのプレスされた物と上述のロッド/チューブ・ファミリーからの少なくとも一つの物。
【0031】
上述のリストは全てを網羅したものではない。
【0032】
当業者であれば、すでに本発明の利点と、上述の「溶着された」物品に設けられた数々の開口部とを明白に理解したであろう。
【0033】
これらは明らかに下記の製品として用いられ、または下記の製品を構成する。すなわち、
オーブンの覆い:4枚または5枚のプレートを組み付けたもの、または
支持格子:ガスレンジ上で鍋を支持するための格子、あるいは、熱処理用または熱・化学処理用格子、これらは例えば少なくとも1本の長いロッドで構成されるもの、または
レンジのバーナーキャップ、例えばプレート部分と、このアセンブリを固定するための複数の短いロッドとからなるもの、または
突出部を備えたプレート:少なくとも1個の突出部(連続した線のような)で飾られた、または少なくとも1個の突起を備えたプレート。
【0034】
上述のように、以下に説明する本発明の方法は、形状の故ではなく、少なくとも1箇所の溶着接合部を有するガラスセラミック構造の故に新規なガラスセラミック物品を製造することができる。実際に本発明の方法は、従来技術の公知の(成形)方法によってすでに得られた形状の物品と、従来技術の公知の(成形)方法によって得られることは考えられない複雑な形状の物品との双方を得ることができる。その形状の故に新規な物品は一般に、それらを構成する材料の体積に比較して大きな空間を占め、および/または、それらを構成する材料の体積に比較して大きな表面積を有する。これらは、比である二つのパラメータによって特徴付けられている。すなわち、
=塞がれた空間の体積/材料の体積
=物品全体を収容する最小の真直ぐな角柱の体積/物品を構成する材料の体積
=表面積/体積
=物品の全表面積/この物品を構成する材料の体積。
【0035】
それらの形状が新規な本発明のガラスセラミック物品の大部分は、上記に定義された比の一つまたは双方が下記の値を有することによって特徴付けられている。すなわち、
≧8 および/または R≧6cm−1
【0036】
このような形状パラメータを有するこのような物品は、本発明者の知る限り、従来技術によっては決して得られなかったものである。
【0037】
本発明の第2の目的、すなわち、上記のような、その単一部品構造または多部品構造が少なくとも1箇所の溶着接合部を有するガラスセラミック物品の製造方法を以下に詳細に説明する。上記方法は、前述のように、溶着作業がセラミック化に先立って行なわれることによって、すなわち、溶着作業がガラスセラミックの先駆物質ガラスに施されることによって特徴付けられる。
【0038】
この方法は、溶着によって単一部品構造または多部品構造を有する、ガラスセラミックの先駆物質ガラスからなる先駆物質物品を調製することを含み、ほぼ一致する熱膨張係数を有し、かつ同一条件でのセラミック化が可能であれば異種のガラス材料を多部品構造に組み込むことが可能である。次に上記先駆物質物品をセラミック化する。
【0039】
本発明の物品の最終的な形状は、セラミック化に先立つ少なくとも1箇所の溶着作業の実施に伴って与えられる。
【0040】
上記溶着作業は、一般に単一部品からなるガラスセラミックの先駆物質ガラスに施される場合(この場合はリングまたはチューブが作成される)と、同一のガラスセラミックの先駆物質ガラスまたは異種のガラスセラミックの先駆物質ガラスからなる少なくとも二つの部品(三つ以上の部品が関係する場合には平行または連続的に)に施される場合とがある。上記異種のガラスは、
a)一体に溶着されることを可能にするためには、主としてそれらの熱膨張係数がほぼ一致していなければならず、
b)同一の条件下でセラミック化されることが可能でなければならない。このアセンブリが溶着によって作成された後に、このアセンブリに対しセラミック化熱処理が施される。
【0041】
溶着されたガラスは、色が付いていても、付いていていなくても、異なる色彩を有していても、成分が異なっていてもよい。
【0042】
溶着された先駆物質物品(少なくとも1箇所の溶着接合部を有する)に施されるセラミック化処理は、上記ガラスのセラミック化に適した古典的なセラミック化処理である。
【0043】
請求項に記載された方法の画期的なステップは、疑いもなく最初の溶着ステップである。
【0044】
溶着されたアセンブリの構造(先駆物質ガラス物品の構造)において、各部品は初期の形状に極めて近い形状を残していることが可能である。したがって、共通のエッジに沿って溶着される2枚のガラスシートは、それぞれ殆ど変形されていない。
【0045】
組み付けられる複数の部品のうちの少なくとも一つがかなり変形されていることも可能である。したがって、初期には真直ぐであった小径のチューブが、他のチューブの周囲に巻きつけられたり、ロッドが曲げられたりすることも可能である。
【0046】
したがって、本発明の方法の、先駆物質物品を調製することである第1ステップは、先駆物質物品の単一部品または上記先駆物質物品の複数の部品のうちの少なくとも一つの意図的なかなりの変形を伴って実施されることが可能である。
【0047】
上記溶着を行なうための第1ステップでは、いかなるセラミック化の開始をも防止するために十分に迅速な熱処理によって、溶着すべき部品の一部分の粘度が、それらの軟化点粘度以下の適当な値に低下せしめられる。
【0048】
この溶着は、古典的なガラス/ガラス溶着であるが、いかなるセラミック化の開始をも防止するために、完全にマスターすべきことがある。それは迅速に行なうということである。
【0049】
溶着手法は、溶着すべき当該ガラスおよび溶着される領域の形状に応じて最適化すべきである。
【0050】
溶着すべき部分は加熱される。一般に上記部品のサイズ、寸法にもよるが、溶着すべき部品の少なくとも一つの全体を加熱することも排除されるべきではない。
【0051】
溶着すべき二つの部品の溶着は、下記の条件下で行なわれることが一般に推奨される。すなわち、
溶着すべき部品の一方は、5000Pa・s(50000ポアズ)未満の値まで、好ましくは1000Pa・s(10000ポアズ)未満の値まで粘度を低下せしめられるのに対し、溶着すべき部品の他方は、5×1011Pa・s(5×1012ポアズ)以下の値まで粘度を低下せしめられる。
【0052】
粘度に設定されたこれらの条件は、明らかに当該ガラスに関する温度条件を決定する。
【0053】
溶着される双方の部品は、一般にそれぞれの寸法に適した粘度を有する。理論的には、大きいサイズの部品に組み付けられる小さいサイズの部品の方がより高温に加熱される傾向がある。
【0054】
溶着の実施には、全体加熱形式と移動局部加熱形式とがある。第1の加熱形式においては、溶着領域全体が局部的に加熱され、次いで一体に溶着される。第2の加熱形式においては、移動局部加熱が行なわれ、溶着は順次的に行なわれる。
【0055】
上記した最も低い粘度値(5000Pa・s(50000ポアズ)未満、好ましくは1000Pa・s(10000ポアズ)未満)を得るための推奨される加熱条件は下記の通りである。すなわち、
全体加熱の実施に関しては、全体を加熱する時間が30秒未満、好ましくは20秒未満が推奨され、
移動局部加熱の実施に関しては、100mm/分を超える、好ましくは200mm/分を超える接触速度が推奨される。
【0056】
溶着に使用される装置は、溶着作業の実施に適したものであれば、いずれの形式のものであってもよい。バーナー、レーザー、またはプラズマが用いられる(特に、メタン、プロパン、水素をガスとして用いることができる酸素・ガスバーナー)。バーナーおよびレーザーを用いることが、特にバーナーを用いることが推奨される。
【0057】
上記溶着の重要なステップは、溶着すべき部品の少なくとも一つを、それの粘度がすでに低下せしめられているように、予め加熱しておくことである。このような予熱により、溶着されたアセンブリが、続く冷却期間中に破壊されるのを防止することができる。 このことは、特に寸法の大きい部品の溶着に際して特に推奨される。
【0058】
このような予熱の実施は、部品の少なくとも一つの粘度を1016Pa・s(1017ポアズ)未満まで低下させることが推奨される。溶着の実施には、一方の部品の粘度が5×1011Pa・s(5×1012ポアズ)未満にまで低下せしめられ、他方の粘度が5000Pa・s(50000ポアズ)未満にまで低下せしめられることが好ましい。
【0059】
上記溶着の重要なステップは、次のアニール熱処理である。
【0060】
寸法の小さい部品の場合を除き、要するに溶着(この溶着は、最終製品を破壊に導く可能性のある歪みを発生させる)後にアセンブリを自然に冷却することが好ましい。
【0061】
しかしながら、このような(溶着後の)アニール熱処理は、もし溶着された部品が直ちにセラミック化される場合には(もし溶着された部品が直接セラミック温度の炉内に移される場合には)不必要である。
【0062】
したがって、アニール熱処理は、セラミック化の先延ばしが予測される場合に、大きいサイズの部品に対して実施されることが推奨される。このようなアニーリングは、溶着された部品の粘度が少なくとも1016Pa・s(1017ポアズ)に達するように実施されることが好ましい。
【0063】
上述した本発明の製造方法には、下記の二通りの方法がある。すなわち、
(1)方法1
随意的に予熱する(一般に推奨される)ステップと、
必要に応じて溶着装置への移送するステップと、
溶着するステップと、
アニール熱処理するステップと、
セラミック化を先延ばしにするステップとからなり、
(2)方法2
随意的に予熱する(一般に推奨される)ステップと、
必要に応じて溶着装置への移送するステップと、
溶着するステップと、
直接セラミック化するステップとからなる。
【0064】
本明細書に上述されているように、ガラスセラミックが、β水晶相および/またはβリシア輝石を主結晶相とすることが好ましい。このようなガラスセラミックを得るために、本発明の方法の実施には、一つの部品にβ水晶相および/またはβリシア輝石結晶相を有するガラスセラミックの先駆物質ガラスを用いることが推奨される。同様に、本明細書に上述されている物品を得るために、本発明の方法の実施には、シート、ロッド、チューブ、および/またはプレス成形された物の形式の少なくとも二つの部品を用いることが推奨される。
【0065】
本発明の効果は、当業者であれば理解できる筈である。完成品においても、所望の先駆物質ガラスに関しても、多くの形状のものを得ることが可能なこと、および異種の部品、特に色彩の異なる部品が得られる無限の可能性があることを強調したい。
【0066】
図1Aおよび図1B(斜視図)によれば、ガラスセラミックの先駆物質ガラスからなる2枚のシート1,2を90°をなして溶着するために、全体形式の溶着が行なわれる。最初にそれぞれのエッジ1′,2′を適当な温度に加熱する(図1A)。次に、上記エッジ1′,2′を密着させて溶着する(図1B)。点線100′は、上記シート1,2の間の溶着接続部を示す。
【0067】
図2(断面図)によれば、移動局部加熱形式の溶着が行なわれる。シート4上にロッド3を溶着する場合、双方の部品をバーナー5で加熱し、徐々に溶着する。上記バーナー5は、溶着を行いながら少しずつ前進する。
【0068】
図3Bには、リング形式の単一部品構成からなるガラスセラミック物品10が斜視図で示されている。この物品は、ガラスセラミックの先駆物質ガラスロッド10″の加熱、曲げ、溶着(全体加熱形式)(図3A)、次いでセラミック化によって得られる。上記ガラスセラミックの先駆物質ガラスロッド10′における溶着線は100′で概略的に示され、ガラスセラミックのリング10における溶着線は100で概略的に示されている。
【0069】
図4Aには、組み付けられる要素である、ディスク22″(プレス成形品)とロッド部材21″とが示されている。
【0070】
このディスク22″とこれらロッド部材21″とは、ガラスセラミックの先駆物質ガラスである。これらは、バーナーキャップの先駆物質20′(図4B)を形成するために、本発明の方法により溶着される(全体溶着)。ロッド部材21″は溶着接続部100′によってディスク22′に組み付けられる。
【0071】
先駆物質20′は次にセラミック化される。図4Bに対して上下を逆にされた最終的なガラスセラミック物品20が図4Cに示されている。点線は、この最終物品20の構成要素であるロッド部材21とディスク22との間の溶着接続部100を表している。
【0072】
図5〜図9には、ガラスセラミックの先駆物質ガラスである部材を溶着し(全体加熱形式の溶着の実施)、次いで得られたアセンブリをセラミック化することによって得られる本発明の物品が示されている。
【0073】
図5においては、鍋を載せるのに適したバーナーキャップ30を概略的に示す。このバーナーキャップ30は、4個の曲がったロッド31と1枚のディスク32(このディスク32の先駆物質部材は、ガラスセラミックの先駆物質ガラスの平らなシートから切り出されたもの)。上記ロッド31とディスク32とは、溶着接続部100において一体に接続されている。
【0074】
図6には、(本発明による極めて有用な物品である)鍋敷き40が概略的に示されている。この鍋敷き40は、1枚のシートと二つのロッドとからなる。各ロッドを、加熱し、成形し、取っ手を形成するためにシートの2箇所に溶着した。全体をセラミック化した。この鍋敷き40は、溶着接続部100を介してシート42に連結された2個の取っ手41を備えている。
【0075】
図7には、特に調理用焼き網として有用な格子50が概略的にしめされている。この格子50は、ガラスセラミックの先駆物質ガラスのロッドから作成した。枠51となる先駆物質の枠を、最初に加熱し、成形し、そして溶着し、横棒52となる先駆物質のロッドを固定した。次に全体をセラミック化した。点線は、他の図と同様に溶着接続部100を表す。
【0076】
図8においては、同じ形式の、より複雑な構造60が示されている。この構造は、加熱し、成形し、そして溶着したガラスロッドから得られる。全体はセラミック化されている。点線は、構成要素であるロッド61間の溶着接続部100を表す。このような構造は、熱処理/熱化学処理の支持体として用いることができる利点がある。
【0077】
物品50および60は、ロッドの加熱、成形、および組立て、ならびにセラミック化によって得られる、同一形式の本発明による物品である。
【0078】
オーブンの覆いとして用いることができる図9の物品を得るために、ガラスセラミックの先駆物質ガラスの5枚のプレートを組み付け(エッジ同士を90°の角度に溶着)、このアセンブリをセラミック化した。溶着接続部100が、5枚のプレート71からなる多面体の稜線のすべてを形成している。
【0079】
図10Aおよび10Bにおいては、プレート82とロッド81とから構成された本発明の二部品構造80からなる物品が、斜視図および断面図でそれぞれ示されている。U字状(溶着時に成形された)の上記ロッド81は、上記プレート82上に横たえられている。ガラスセラミックの先駆物質ガラスの状態のこれら二つの部材を、加熱し、次いで移動局部加熱によって溶着した。点線は溶着接続部100(連続的に形成された)を示す。
【0080】
最終的物品においては、ロッド81が単純に審美的理由で、または実用的および審美的理由で、存在して差し支えない。したがって、もし調理用レンジに限定する場合には、ロッド81は二領域を区切る機能、すなわち調理領域と自由に使える機能を有する領域と区切る機能を果たすことができる。もし調理領域が閉塞された態様で区切られている場合は、ロッドは、流出を防止する壁を形成する。
【0081】
図11においても、本発明の二部品構造からなる物品90が示されている。この二部品構造は、大径のチューブ92と、これの周りに(溶着によって一体化された)螺旋状に巻き付けられた小径のチューブ91とからなる。
【0082】
本発明のこのような物品90は熱交換器として用いることができる。
【0083】
これはガラスセラミックの先駆物質ガラスから得られる。加熱され、成形された小径のチューブを、移動局部加熱によって大径のチューブの周りに溶着する。次いで全体をセラミック化する。
【0084】
このガラスセラミック物品において、点線100は(連続的に形成された)溶着接続部を表す。
【0085】
添付図面に示された本発明の物品は、本明細書に定義されている比RおよびRによって特徴付けられる。
【0086】
図3B、図5、図6(取っ手41の形状から見て)、図7、図8、および図9の物品は、R≧8、および/またはR≧6cm−1であることによって特徴付けられた新規な形状を提供する。
【0087】
図4Cの物品も、ロッド21の形状によっては、新規な形状とすることができる。
【0088】
ここで、下記の二つの実施例によって、本発明の物品および方法について説明する。
【0089】
ガラスセラミックの先駆物質である一種類のガラスを用いた。
【0090】
このガラスは酸化物の重量パーセントで表すと、下記の成分を有する。すなわち、
SiO :68.25
Al:19.2
LiO :3.5
MgO :1.2
ZnO :1.6
BaO :0.8
TiO:2.6
ZrO:1.7
As:0.6
NaO+KO:0.35
:0.2
このようなガラスはガラスセラミックを生成させることで知られており、その熱膨張係数はゼロに極めて近く、すなわち、このガラスセラミックは、優れた耐熱衝撃性を有し、したがって調理用レンジの構成材料として極めて適している。
【0091】
下記の実施例で実施される(推奨される)セラミック化処理は下記の通りである。すなわち、
60℃/分の割合で温度を675℃(核形成温度)まで上昇させ、
20分間に温度を675℃から核形成温度範囲を抜けて790℃まで上昇させ、
20分間に温度を結晶化温度〈930℃〉まで上昇させ、
上記結晶化温度〈930℃〉を12分間維持し、
室温まで急冷する。
【0092】
上述の先駆物質ガラス成分を有する二種類の物品を用いた。
【0093】
2枚の平らなシート(長さ×幅×厚さ:150mm×70mm×4mm)
(中実の)円筒状ロッド(外径5mm)。
【実施例1】
【0094】
ガラスセラミック物品:ガラスセラミック・プレート上にガラスセラミック・ロッドが溶着されたもの。
【0095】
厚さ4mmの平らなシート(上述参照)を、適当な支持体上に配置するのに先立って、最初に650℃まで予熱した(粘度が約4×1013Pa・s(4×1014ポアズ)になる)。
【0096】
上記ロッドを約1350℃まで局部的に加熱し(その粘度が約600Pa・s(6000ポアズ)になる)、上記シートが、その上に上記ロッドが溶着される領域において約800℃(すなわち、その粘度が10Pa・s(1010ポアズ)になる)の温度に達する局部的加熱を受けるようにするために、酸素メタン・バーナーを用いて、上記外径5mmのロッドを局部的に加熱した。この加熱は、上記シートの、その上に上記ロッドが溶着される領域に近接して行なった。
【0097】
軟化したロッド(η=約6000ポアズ)を上記平らなシート上に配置し、1000mm/分の(バーナーの)接触速度をもってシート上に溶着した。
【0098】
上記ロッドを300mmの長さに亘って溶着した(移動局部加熱)後、この二部品アセンブリを600℃(約1016Pa・s(1017ポアズ)の粘度に対応する温度)の炉内に配置した。上記アセンブリを上記温度条件の炉内に約30分間放置し(アニール熱処理)、次いで徐冷した。
【0099】
次に、得られた二部品アセンブリに対し、推奨されるセラミック化処理を施した。
【0100】
別の実施例によれば、溶着されたアセンブリに対し、直接(アニール熱処理も冷却も行なわずに)セラミック化処理を施すこともできる。
【0101】
得られたガラスセラミック物品は、図10Aおよび図10Bに示された形式のものである。
【実施例2】
【0102】
ガラスセラミック物品:2枚のガラスセラミック・プレートがエッジ同士を突き合わせて(角度90°をもって)溶着されたもの。
【0103】
上述した形式の(上述に成分が重量%で示され、かつ上述した寸法を有する)2枚の平らなシートを、最初に650℃まで予熱した(粘度が約4×1013Pa・s(4×1014ポアズ)になる)。次いで、それらプレートのエッジ(長さ70mm)同士を互いに突き合わせ、かつそれらプレートが互いに90°をなして位置決めされるように適当な支持体上に移した。
【0104】
双方のエッジを直線状酸素・メタン・バーナーによって12秒間だけ加熱して約1400℃の温度(粘度を約400Pa・s(4000ポアズ)まで低下させる温度)にした。次いで双方のエッジを接触させ、10秒間保持した。かくして、2枚のシートを90°をなして組み付け(溶着)した。
【0105】
このように構成されたアセンブリ(図1Bに概略図示)を600℃(約1016Pa・s(1017ポアズ)の粘度に対応する温度)の炉内に配置した。上記アセンブリをこの温度で約30分間放置した(アニール熱処理)。
【0106】
次に上記アセンブリを徐冷し、次いで推奨されるセラミック化処理を施した。
【0107】
別の実施例によれば、溶着されたアセンブリに対し、直接(アニール熱処理も冷却も行なわずに)セラミック化処理を施すこともできる。
【0108】
この得られた二部品アセンブリは、機械的強度および熱衝撃のテストにおいて、いかなる弱点も示さなかった。
【0109】
本発明の範囲および精神から離れることなしに、本発明に対する種々の変形、変更が可能なことは、当業者であれば明らかであろう。従って本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内でなされた本発明の変形、変更をカバーすることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1Aおよび図1Bは、角度90°をなして溶着された2枚のシートの斜視図
【図2】移動局部加熱による溶着の実施例の断面図
【図3】図3Aは、本発明の物品の製造方法の第1ステップを示す概略図、図3Bは、本発明の単一部品物品の斜視図
【図4】図4Aおよび図4Bは、本発明の物品の製造方法の第1ステップを示す概略図、図4Cは本発明の多部品物品の斜視図
【図5】本発明の多部品物品の斜視図
【図6】本発明の多部品物品の斜視図
【図7】本発明の多部品物品の斜視図
【図8】本発明の多部品物品の斜視図
【図9】本発明の多部品物品の斜視図
【図10】図10Aおよび図10Bは、本発明の多部品物品の斜視図および断面図
【図11】本発明の多部品物品の斜視図
【符号の説明】
【0111】
1,2,4,42 シート
3,21,31,81 ロッド
5 バーナー
10 リング
20,30 バーナーキャップ
22,32 ディスク
40 鍋敷き
41 取っ手
50 格子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一部品構造または多部品構造を有する先駆物質ガラス物品を溶着によって調製し、次いで該先駆物質ガラスをセラミック化してガラスセラミック物品にするステップを含み、異種のガラス材料が前記多部品構造に組み込まれている場合には、該異種のガラス材料が、ほぼ一致する熱膨張係数を有しかつ同一条件でのセラミック化が可能である、ガラスセラミック物品の製造方法において、
溶着領域の局部加熱によって前記溶着を行なうことを特徴とするガラスセラミック物品の製造方法。
【請求項2】
前記溶着を実施するために、前記溶着すべき部品が、熱処理によりそれら部品の軟化点以下の適当な値にまで低下せしめられた粘度を有し、前記熱処理を、いかなるセラミック化の開始をも防止するために十分に迅速に行なうことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記溶着すべき部品の一方が、5000Pa・s(50000ポアズ)未満の値にまで低下せしめられた粘度を有し、前記溶着すべき部品の他方が、5×1011Pa・s(5×1012ポアズ)以下の値にまで低下せしめられた粘度を有することを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記溶着が、溶着中に前溶着領域全体を局部加熱することを含み、該溶着を30秒以内の時間内で行なうことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記溶着が、100mm/分を超える接触速度で行なわれる移動局部加熱形式であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ガラスセラミックの先駆物質ガラスが、β水晶相および/またはβリシア輝石の主結晶相を有する先駆物質ガラスであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ガラスセラミック物品の単一部品構造または多部品構造が少なくとも一つの溶着接合部を有することを特徴とする、請求項1記載の方法によって製造されたガラスセラミック物品(10,20,30,40,50,60,70,80,90)。
【請求項8】
前記ガラスセラミック物品のガラスセラミック成分が、β水晶相および/またはβリシア輝石の主結晶相を有することを特徴とする請求項7記載のガラスセラミック物品(10,20,30,40,50,60,70,80,90)。
【請求項9】
前記ガラスセラミック物品が、オーブンの覆い(70)、支持格子(70)、調理用レンジのバーナーキャップ(20,30)、または突出部(80)を備えたプレート(80)のうちの一つであることを特徴とする請求項7または8記載のガラスセラミック物品(20,30,50,70,80)。
【請求項10】
空間を塞いでいる体積/材料の体積の比が8以上で、表面積/体積の比が6cm−1以上である基準のうちの一方および/または双方を備えていることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項記載のガラスセラミック物品(10,30,40,50,60,70)。

【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−530399(P2007−530399A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520210(P2006−520210)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/021342
【国際公開番号】WO2005/016838
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(598066019)
【Fターム(参考)】