説明

溶融温度の差異を用いての遺伝子型分類方法

【課題】蛍光オリゴヌクレオチドを用いないで低価格のアッセイを可能にし、成功比率を高める遺伝子型分類方法を提供する。
【解決手段】特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基と第2塩基に相補する2種類の異なった溶融温度を示す前方向プライマー、前記特定ヌクレオチド多型現象部位の下流に相補的な逆方向プライマー、およびDNAポリメラーゼを含んでなる核酸サンプルの増幅反応後、該反応生成物の溶融温度を測定し、該溶融温度により前記特定ヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、核酸増幅の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景:
複数の遺伝子及び環境因子により影響される複雑な生物学的形質の同定は、非常に困難且つ挑戦的な課題である。一遺伝子形質に比較して、形質の複雑な変動を担当するすべてのゲノム領域を、それらの領域がいかに分離するかのさらなる知識を伴わないで、追跡することは不可能である。複雑な形質の分析において重要な開発は、単一ヌクレオチド多型現象(SNP)及び他のヌクレオチド多型現象、例えば塩基欠失、挿入及び複数の塩基変化を包含する分子/遺伝子マーカーの多くの収集の確立であった。ヌクレオチド多型現象のいくつかのデータベースは、確立されており、そして内容的に確実に進歩している。安価で且つ高い処理能力の遺伝子型分類技法が、複雑な形質に関与する遺伝子の対立遺伝子変動を検出するために、ヌクレオチド多型現象により提供される機会を十分に開発する必要がある。
【0003】
多くの遺伝子型分類技法は、対立遺伝子識別、標的物増幅及び検出プラットフォームの種々の方法に基づいて、過去数年、開発されて来た。検出機能は、大まかには次の2種のカテゴリーに分類される:固相−介在性検出及び相同検出。固相介在性検出は、質量分光測定、マイクロアレイ、微小球及び電気泳動を包含する検出段階に固体支持体を使用する。相同検出方法は、開始から最後まで溶液において行われ、そして分離又は精製段階を必要としない。多くの相同検出システムは、蛍光検出方法を利用する。対立遺伝子−特異的PCRを行うための方法はまた、相同検出方法としても分類され得る。
【0004】
単一管遺伝子型分類方法は開発されて来たが、しかしほとんどは蛍光−修飾されたオリゴヌクレオチドを必要とし、そしてそれらの材料の費用は高価である。蛍光プローブを用いないで、安価で且つ強い相同遺伝子型分類方法が所望される。
【発明の開示】
【0005】
発明の要約:
本発明は、(a)特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、 特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマー、前記特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的な逆方向プライマー、及びDNAポリメラーゼ、を含んで成る増幅反応における核酸サンプルを増幅し;(b)増幅反応生成物を生成せしめ;(c)前記増幅反応生成物の溶融温度を測定し;そして(d)前記増幅反応生成物の溶融温度により前記特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定することを含んで成る、核酸サンプルにおける特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基の決定方法を包含する。
【0006】
ある態様においては、上記方法はさらに、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第3塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第3の5’非相補的配列を含んで成る第3の前方向プライマーを含むことができる。本発明はさらに、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第4塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第4の5’非相補的配列を含んで成る第4の前方向プライマーを含むことができる。
【0007】
ある態様においては、(a)特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマー、前記特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的な逆方向プライマー、及びDNAポリメラーゼ、を含んで成る増幅反応における核酸サンプルを増幅し;(b)増幅反応生成物を生成せしめ;(c)前記増幅反応生成物の溶融温度を測定し;そして(d)前記増幅反応生成物の溶融温度により前記特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定することを含んで成る、核酸サンプルにおける特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基の決定方法が提供される。
【0008】
さらに、上記方法は、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第3塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第3の5’非相補的配列を含んで成る第3の前方向プライマーを含むことができる。前記方法はさらに、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第4塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第4の5’非相補的配列を含んで成る第4の前方向プライマーを含んで成る。
【0009】
ある態様においては、(a)特定のヌクレオチド多型現象部位での第1の前方向プライマーの3’末端で第1の多型現象(2個の塩基を含んで成る)及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、特定のヌクレオチド多型現象部位での第2の前方向プライマーの3’末端で第2の多型現象(第1の多型現象とは少なくとも1つの塩基により異なる2個の塩基を含んで成る)及び第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマー、特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的な逆方向プライマー、及びDNAポリメラーゼを含んで成る増幅反応における核酸サンプルを増幅し;b)増幅反応生成物を生成せしめ;c)前記増幅反応生成物の溶融温度を測定し;そしてd)前記増幅反応生成物の溶融温度により前記特定のヌクレオチド多型現象部位での2個の塩基を決定することを含んで成る、核酸サンプルにおける特定のヌクレオチド多型現象部位での2個の塩基を決定するための方法が提供される。
【0010】
さらに、上記方法は、1又は複数の追加の前方向プライマーを含み、個々の追加の前方向プライマーは、特定のヌクレオチド多型現象部位での個々の追加の前方向プライマーの3’末端で追加の多型現象(これは、特定のヌクレオチド多型現象部位での個々の前方向プライマーに基づいて個々の多型現象とは少なくとも1個の塩基で異なる2個の塩基を含んで成る)、及び個々の前方向プライマーに基づいて個々の5’非相補的配列とは、溶解温度で異なる5’非相補的配列を含んで成る。
【0011】
ある態様においては、(a)特定のヌクレオチド多型現象部位での第1の前方向プライマーの3’末端で第1の多型現象(3個の塩基を含んで成る)及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、特定のヌクレオチド多型現象部位での第2の前方向プライマーの3’末端で第2の多型現象(第1の多型現象とは少なくとも1つの塩基により異なる3個の塩基を含んで成る)及び第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマー、特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的な逆方向プライマー、及びDNAポリメラーゼを含んで成る増幅反応における核酸サンプルを増幅し;b)増幅反応生成物を生成せしめ;c)前記増幅反応生成物の溶融温度を測定し;そしてd)前記増幅反応生成物の溶融温度により前記特定のヌクレオチド多型現象部位での3個の塩基を決定することを含んで成る、核酸サンプルにおける特定のヌクレオチド多型現象部位での3個の塩基を決定するための方法が提供される。
【0012】
上記方法は、1又は複数の追加の前方向プライマーを含み、個々の追加の前方向プライマーは、特定のヌクレオチド多型現象部位での個々の追加の前方向プライマーの3’末端で追加の多型現象(これは、特定のヌクレオチド多型現象部位での個々の前方向プライマーに基づいて個々の多型現象とは少なくとも1個の塩基で異なる3個の塩基を含んで成る)、及び個々の前方向プライマーに基づいて個々の5’非相補的配列とは、溶解温度で異なる5’非相補的配列を含んで成る。
【0013】
すべての上記方法はさらに、核酸サンプルの増幅、その増幅反応生成物の創造、及び溶解温度の測定が単一の管において行われ得ることを包含する。前記方法はさらに、1つの反応における複数の多型現象部位の複数の検出として記載される、1つの増幅反応における核酸サンプルにおける第2の特定のヌクレオチド多型現象部位での少なくとも1つの第2塩基を決定することを含んで成る。増幅反応は、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)又は他のプライマー介在性増幅方法であり得る。DNAポリメラーゼは、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いており、温開始活性を有するよう修飾され得、そしてTaq Stoffel Fragmentであり得る。増幅反応は、蛍光二本鎖核酸結合色素、例えばSYBRグリーン、又はインターカレーション色素、例えば臭化エチジウムを含むことができる。温開始活性は、他の成分の使用、例えばアプタマー又は抗−Taq抗体の使用に起因する。
【0014】
本発明はまた、特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、及び特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマーを含んで成るキットを提供する。
【0015】
上記キットは、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第3塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第3の5’非相補的配列を含んで成る第3の前方向プライマーを含んで成る。前記キットはさらに、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第4塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第4の5’非相補的配列を含んで成る第4の前方向プライマーを含んで成る。
【0016】
ある態様においては、特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、及び特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマーを含んで成るキットが提供される。
【0017】
上記キットはさらに、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第3塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第3の5’非相補的配列を含んで成る第3の前方向プライマーを含んで成ることができる。前記キットはさらに、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第4塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第4の5’非相補的配列を含んで成る第4の前方向プライマーを含んで成る。
【0018】
ある態様においては、特定のヌクレオチド多型現象部位での第1の前方向プライマーの3’末端で第1の多型現象(2個の塩基を含んで成る)及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、特定のヌクレオチド多型現象部位での第2の前方向プライマーの3’末端で第2の多型現象(第1の多型現象とは少なくとも1つの塩基により異なる2個の塩基を含んで成る)及び第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマーを含んで成るキットが提供される。
【0019】
上記キットはさらに、1又は複数の追加の前方向プライマーを含み、個々の追加の前方向プライマーは、特定のヌクレオチド多型現象部位での個々の追加の前方向プライマーの3’末端で追加の多型現象(これは、特定のヌクレオチド多型現象部位での個々の前方向プライマーに基づいて個々の多型現象とは少なくとも1個の塩基で異なる2個の塩基を含んで成る)、及び個々の前方向プライマーに基づいて個々の5’非相補的配列とは、溶解温度で異なる5’非相補的配列を含んで成る。
【0020】
ある態様においては、特定のヌクレオチド多型現象部位での第1の前方向プライマーの3’末端で第1の多型現象(3個の塩基を含んで成る)及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、特定のヌクレオチド多型現象部位での第2の前方向プライマーの3’末端で第2の多型現象(第1の多型現象とは少なくとも1つの塩基により異なる3個の塩基を含んで成る)及び第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマーを含んで成るキットが提供される。
【0021】
上記キットは、さらに、1又は複数の追加の前方向プライマーを含み、個々の追加の前方向プライマーは、特定のヌクレオチド多型現象部位での個々の追加の前方向プライマーの3’末端で追加の多型現象(これは、特定のヌクレオチド多型現象部位での個々の前方向プライマーに基づいて個々の多型現象とは少なくとも1個の塩基で異なる3個の塩基を含んで成る)、及び個々の前方向プライマーに基づいて個々の5’非相補的配列とは、溶解温度で異なる5’非相補的配列を含んで成ることができる。
【0022】
すべての上記キットは、特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的な逆方向プライマーを含んで成る。前記キットはさらに、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠き、温開始活性を有し、そしてTaq Stoffel Fragmentであり得る、DNAをポリメラーゼを含んで成る。前記温開始活性は、アプタマーの使用、又は抗−Taq抗体の使用を包含する、他の成分に起因することができる。
【0023】
5’非相補的配列がいずれかのヌクレオチド、又は少なくとも75%のG及びCヌクレオチド、90%までのG及びCヌクレオチド、又は100%までの及び100%のG及びCヌクレオチドから構成され得る、すべての上記方法及びキットがさらに包含される。さらに、前記非相補的配列は、(a)ヌクレオチド塩基類似体、及び(b)化学的に修飾されたヌクレオチオ塩基の少なくとも1つを含んで成る。前記非相補的配列の長さは、2〜25個の塩基対であり得るが、しかしまた、40又は50個の塩基対まで拡張され得る。前記第1の配列は、6個の塩基対であり得、そして配列:5’−GCGGGC−3’(配列番号1)であり得、そして第2の配列は、14個の塩基対であり得、そして配列:5’− GCGGGCAGGGCGGC−3’(配列番号2)であり得。他方では、前記第1の配列は、3個の塩基対であり得、そして配列:5’−GCG−3’(配列番号3)であり得る。
【0024】
増幅生成物の溶融温度を測定することにより、特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定するための上記方法及びキットの他に、細管電気泳動検出の使用を包含する(但し、それだけには限定されない)他の検出方法は、上記方法と共に、上記方法の他に、又は上記方法の代わりに使用され得る。それらの他の検出方法は、上記方法により創造される増幅生成物が、サイズ、分子量及び溶融温度により分離され得る固有の特徴を使用することができる。
【0025】
例えば、ある態様においては、特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマー、前記特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的な逆方向プライマー、及びDNAポリメラーゼを含んで成る増幅反応における核酸サンプルを増幅し;増幅反応生成物を生成せしめ;そして前記増幅反応生成物が前記第1の前方向プライマーからか、又は前記第2の前方向プライマーから創造されるかを決定することにより、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定することを含んで成る、核酸サンプルにおける特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基の決定方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明の特定の記載:
1.定義:
本発明を詳細に記載する前、本発明が、もちろん変化することができる、特定の方法、組成物、反応混合物、キット、システム、コンピューター、又はコンピューター読取媒体に制限されないことは、理解されるべきである。本明細書に使用される用語は、特定の態様のみの記載のためであり、そして制限を意図するものではないことがまた、理解されるべきである。さらに、特にことわらない限り、本明細書に使用されるすべての技法及び科学用語は、当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。本発明の記載においては、次の用語法及びその分法的変形が、下記に示される定義に従って使用されるであろう。
【0027】
“対立遺伝子−特異的”とは、1つの対立遺伝子に対して特異的である反応を言及し、ここで前記反応は、その特異的対立遺伝子が存在する場合のみ、進行する。前記用語はまた、“対立遺伝子−特異的”であるオリゴヌクレオチド配列も言及し、ここで前記オリゴヌクレオチドは、特定の多型現象部位での特定の対立遺伝子の配列に適合され、そして前記オリゴヌクレオチド配列は同じ多型現象部位での他の対立遺伝子配列に適合されない。典型的には、プライマーとして作用する対立遺伝子−特異的オリゴヌクレオチドは、プライマーの3’末端で又はその近くで特定の対立遺伝子配列を包含するであろう。
【0028】
“ヌクレオチド多型現象”とは、コード配列、遺伝子又は得られるタンパク質に影響を及ぼすことができるか又は及ぼすことができない定義される位置での2個以上の交互の塩基の存在を言及する。塩基変化は、“単一ヌクレオチド多型現象”又は“SNP”又は“スニップ”として知られている単一の塩基変化であり得る。塩基変化は、前記位置での配列の複数の塩基置換であり得、そして挿入及び欠失配列を包含することができる。
【0029】
“塩基”とは、天然に存在するヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を包含する、オリゴヌクレオチドの個々のヌクレオチド成分を意味する。
“末端塩基”とは、最後のヌクレオチド塩基、又はオリゴヌクレオチドの末端での塩基類似体を意味する。3’末端の塩基は、オリゴヌクレオチドの3’末端で見出される。5’末端の塩基は、オリゴヌクレオチドの5’末端で見出される。
【0030】
“化学的に修飾されたヌクレオチド塩基”とは、非天然の成分を含むよう修飾されたヌクレオチドを意味する。
“ヌクレオチド塩基類似体”とは、天然に存在するヌクレオチド塩基として機能することができる非天然に存在するヌクレオチド塩基を意味する。
“最後から2番目の3’塩基”とは、オリゴヌクレオチドの3’末端での最後のヌクレオチド塩基の次の塩基、又は塩基類似体を意味する。
【0031】
“プライマー”とは、オリゴヌクレオチドを言及する。PCRに使用されるオリゴヌクレオチドは、プライマーが新しいDNA鎖の合成を開始する場合、プライマーとして機能することができる。PCRに使用されるオリゴヌクレオチドはまた、“プローブ”として機能することができる。典型的には、PCRにおいては、DNAの上方の又はコード鎖に基づいて企画去れるオリゴヌクレオチドプライマー(DNA配列が“標準”の左から右形で書かれる場合)は、“前方向”又は“上流”のプライマーとして知られており、そしてDNAの下方の又は非コード鎖に基づいて企画されるオリゴヌクレオチドプライマーは、“逆方向”又は“下流”のプライマーとして知られている。しかしながら、“前方向”及び“逆方向”プライマーは、DNAのいずれかの鎖に基づいて企画され得る。
【0032】
“5’非相補的配列”は、オリゴヌクレオチドの残りに適合される標的DNAに見出される配列と適合しないオリゴヌクレオチドの5’末端での又はその近くでの配列のセグメントを意味する。この非相補的配列は、いずれかの天然に存在するヌクレオチド塩基又はヌクレオチド塩基類似体を含んで成ることができる。
【0033】
“溶融温度”とは、二本鎖のDNA分子の50%がDNAの二本の一本鎖に分離する点での温度を意味する。この温度は、多くの方法、例えばWetmur 1991 (Wetmur, J.G. 1991, DNA probe: applications of the principles of nucleic acid hybridization. Crit Rev Biochem Mol Biol 26: 227-259: 引用により本明細書に組込まれる)による最も近くに隣接する計算により評価され得る。
【0034】
“蛍光二本鎖ヌクレオチド結合色素”とは、二本鎖核酸に結合する蛍光色素化合物を意味する。例えば、これは、SYBR-Gree I (Molecular Probesカタログ番号S7585)を包含する。
“蛍光二本鎖ヌクレオチドインターカレーション色素”とは、二本鎖核酸間に挿入する蛍光色素化合物を意味する。例えば、これは、臭化エチジウムを包含することができる。
“DNAポリメラーゼ”とは、一本鎖核酸鋳型から新規DNA鎖を合成する酵素を意味する。例えば、これは、サーマス・アクアチカス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼI又はその微分値、例えばStoffelフラグメントを包含する。
【0035】
“Stoffelフラグメント”とは、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を含まないTaq DNAポリメラーゼIの切断された形を意味する。(Applied Biosystems Part No. N808−0038;また、次のものも参照のこと:Lawyer FC, Stoffel S, Saiki RK, Chang SY, Landre PA, Abramson RD, 及びGelfand DH. 1993, 十分な長さのサーマス・アクアチカスDNAポリメラーゼ及び5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いている切断された形の高レベル発現、精製及び酵素特徴化。PCR Methods and Application 2: 275-287, 引用により本明細書に組込まれる)。
【0036】
“5’−3’エキソヌクレアーゼ-”とは、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いているポリメラーゼを意味する。
“温開始”とは、ポリメラーゼが活性的である温度以上で及び二本鎖のDNAが一本鎖DNAに溶融する温度で又はその近くで、開始加熱段階の後まで増幅反応におけるポリメラーゼの活性を遅延する技法を意味する。温開始技法の例は、修飾されたポリメラーゼ、例えば“ゴールド”修飾の使用、アプタマーの使用、及び抗−Taq抗体の使用を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0037】
“ゴールド”とは、引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第5,677,152号及び第5,773,258号に記載される方法によるポリメラーゼの修飾を意味する。
“アプタマー”とは、引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第5,693,502号に記載されるように、DNAポリメラーゼを認識し、そして結合し、そしてポリメラーゼ活性を効果的に阻害する一本鎖DNAを意味する。
【0038】
“抗−Taq抗体”とは、引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第6,140,086号に記載されるように、ポリメラーゼインヒビターを意味する。
“複数”とは、1組以上のプライマーによる増幅、又は単一の反応における1つ以上の多型現象部位の増幅を意味する。
【0039】
II. 溶融温度の差異を用いての遺伝子型分類方法:
本出願は、蛍光オリゴヌクレオチドを用いないで低価格のアッセイを可能にし、そしてアッセイの開発のために成功比率を可能にするいくつかの遺伝子型分類方法を記載する。本発明の1つの特徴は、それぞれ、個々の対立遺伝子−特異的プライマーへの異なった5’非相補的配列の結合である。得られる増幅生成物は、異なった非相補的配列のために、異なった解離性質を有するであろう。すべての対立遺伝子からの増幅生成物は、前に記載された方法の不均衡な増幅反応及び解離特性を低める非相補的配列を担持する。ヌクレオチド多型現象部位でホモ接合性であり、且つヘテロ接合性であるサンプルが、それらの方法により区別される。
【0040】
対立遺伝子−特異的プライマーは、置換、挿入及び欠失多型現象を包含する、単一ヌクレオチド多型現象又は複数のヌクレオチド多型現象又は対立遺伝子を増幅するよう企画され得る。1つの特徴は、個々の対立遺伝子−特異的プライマーが、それが企画され、そして増幅反応を開始する興味ある多型現象配列に好ましくは適合し、そして興味ある多型現象配列に好ましくは適合しないプライマーは、増幅反応を開始しないであろうことである。興味ある単一のヌクレオチド多型現象部位は、対立遺伝子−特異的プライマーの3’末端で最後の塩基により信号を送られ得る。
【0041】
さらに、興味ある単一ヌクレオチド多型現象部位は、プライマーの3’末端で終わりから2番目の塩基により信号を送られ得る。興味あるヌクレオチド多型現象部位の2個の長さの塩基である場合、その部位は、対立遺伝子−特異的プライマーの3’末端で最後の2個の塩基により信号を送られ得る。ヌクレオチド現象部位が2個以上の塩基から成る場合、それらのヌクレオチドは、対立遺伝子−特異的プライマーの3’末端で2〜6個の長さの塩基対により信号を送られ得る。対立遺伝子−特異的プライマーがプライマーの3’末端で6個よりも多くの塩基に信号を送るよう企画され得ることは可能である。
【0042】
個々のヌクレオチド多型現象部位、又は対立遺伝子部位で、対立遺伝子的プライマー3’配列についての複数のオプションが見出され得る。例えば、特にサンプルにおける特定の多型現象部位で、“G”塩基が見出されるが、しかし特定のサンプルにおいては、“C”又は/及び“A”塩基が見出され得る。この例においては、3個のユニークプライマー、すなわちプライマーの3’末端でそれぞれ異なるか、又はプライマーの3’末端の最後から2番目で異なり、そして興味ある塩基を含んで成るプライマーが企画される。第2の例においては、典型的にはサンプルにおける特定の多型現象部位で、配列“CT”が見出されるが、しかし特定のサンプルにおいては、配列“AG”、“AT”又は“CA”が見出され得る。
【0043】
この第2の例においては、プライマーの3’末端の最後の2個の塩基でそれぞれ異なり、そして興味ある塩基を含んで成る4個のユニークなプライマーが企画される。一般的に、個々の多型現象部位で可能な対立遺伝子−特異的プライマーの数(4種の天然に存在する塩基A, C, G及びTに基づかれる)は、次の式に基づいて計算され得る:X=4N、式中Xは可能性あるユニークプライマーの数に等しく、そしてNは多型現象部位で異なる塩基の数に等しい。例えば、特定の部位で、3個の塩基、例えば“ACT”及び“GTA”は、多型性であり得る。この例においては、すべての可能なプライマー配列の企画を所望する場合、X=43=64が可能性あるユニークな配列である。
【0044】
すべての対立遺伝子−特異的プライマーの企画における1つの特徴は、個々の5’末端でのユニーク配列の組込みである。個々の対立遺伝子−特異的プライマーは、非相補的配列(ヌクレオチド多型現象部位から上流の配列と適合しない配列)のユニーク5’末端を含んで成る。このユニーク5’非相補的配列は典型的には、主にG及びC塩基を含むが、しかしまた、A及びT塩基も含むことができる。この配列は、90%のG−C塩基、又は100%までのG−C塩基、又は少なくとも75%のG−C塩基であり得る。5’非相補的配列が、天然に存在しない塩基、ヌクレオチド塩基類似体又は他の化学ヌクレオチド修飾体を含むことができることは可能である。
【0045】
典型的には、配列の長さは、2〜25個の塩基であるが、しかし2〜40個又は2〜50個の長さの塩基であり得る。例においては、2種の対立遺伝子−特異的プライアーを有する多型現象は、6個の長さの塩基5’配列を有する1つのプライマーを有し、そして第2のプライマーは、14個の長さの塩基の5’配列を有する。さらに、第1の5’非相補的配列の配列は、5’−GCGGGC−3’(配列番号1)であり得、そして第2の5’非相補的配列の配列は、5’−GCGGGCAGGGCGGC−3’(配列番号2)であり得る。他方では、第1の非相補的配列は、5’−GCG−3’(配列番号3)であり得る3個の長さの塩基の5’配列であり得る。
【0046】
個々の5’非相補的配列は、結合の強さ(G−C結合は、A−T結合よりも強い)、配列の長さ、配列の二次構造、及びたぶん、ヌクレオチド塩基類似体及び化学的に修飾されたヌクレオチド塩基の使用から発生する影響により決定される、異なった溶融プロフィールをそれぞれ有することにおいて、他の5’非相補的配列からはユニークである。増幅の間、プライマーは、増幅生成物又はアンプリコン中に組込まれる。従って、完結されたアンプリコンは、ユニーク5’配列を含む。異なった対立遺伝子−特異的プライマーから生成されるアンプリコンは、異なったユニーク5’配列をそれぞれ含むであろう。溶融曲線分析は、5’ユニーク配列がアンプリコンに含まれることを決定し、それにより、ヌクレオチド多型現象が元のサンプルに存在することを決定する。
【0047】
アンプリコンの溶融温度を測定することにより特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定する上記方法の他に、他の検出方法は、上記方法により創造される増幅生成物又はアンプリコンがサイズ、分子量及び溶融温度により分離される固有の特性を使用する。確かな態様においては、増幅反応温度により分離される固有の特性を使用する。確かな態様においては、増幅反応生成物又はアンプリコンが第1の前方向プライマー又は第2の前方向プライマーから創造されるかどうかを検出することにより、特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定する方法が提供される。サイズによりDNAフラグメントを区別する方法は、当業界において公知である。
【0048】
前方向プライマーの企画においては、第1の実験企画試験に基づいて予測されるようにして行う増幅反応の速度を早めるためには、特定のヌクレオチド多型現象前方向プライマーに異なった長さの5’非相補的配列を結合することが助けになる。例えば、前方向プライマーの3’末端でG又はTヌクレオチドを含んで成る所定の多型現象部位で、より長い5’非相補的配列(例えば、14bpの配列)が、3’末端で強い結合ヌクレオチド(G)のために企画される前方向プライマー上に結合され、そして短い非相補的配列(例えば6bpの配列)がその3’末端で弱い結合ヌクレオチド(T)のために企画された他のプライマーに結合され得る。
【0049】
典型的には、前方向プライマーは、約0.2μMの濃度で増幅反応に存在する。しかしながら、1つの前方向プライマーが不均等な結果を生ぜしめる、他の前方向プライマーよりも効果的な増幅をもたらす場合、この不均等を、より効果的に増幅するプライアーのプライマー濃度の低下により、又はより低く効果的に増幅するプライマーのプライマー濃度の上昇により変更することができる。他の標準の増幅アッセイパラメーターは、最適化、例えばPCRにおけるアニーリング温度の調節、酵素濃度、金属イオン濃度、等の調節を必要とする。
【0050】
増幅反応はまた、対立遺伝子−特異的プライマーからの逆方向にプライマーを含む。この逆方向プライマーは、ヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的である。この逆方向プライマーは典型的には、ヌクレオチド多型現象部位からわずか20bp下流に存在し、良好な増幅効率、及び長さ45〜70bpの範囲での比較的短いアンプリコンをもたらす。逆方向プライマーはまた、ヌクレオチド多型現象部位から100bpまでの下流にあり、長さ120bp以上のアンプリコンをもたらす。特定のヌクレオチド多型現象部位で企画されるすべての逆方向プライマーと組み合わされるこの逆方向プライマーは、核酸サンプルを増幅することができる。この得られるアンプリコンはすべて、同じ3’末端配列を有するであろう。
【0051】
方法のある態様においては、追加の5’非相補的配列を有さない、個々の前方向多型現象−特異的プライマーの3’部位は、反応における他の前方向プライマーに類似するTm特徴を有するよう企画される。例えば、前方向プライマーのすべての3’部位は、約58℃のTmを有するよう企画され得る。次に、記載されるように、ユニークな非相補的配列は、個々の多型現象−特異的プライマーの5’末端に付加される。逆方向プライマーは、前方向プライマーの多型現象−特異的部分のTmによりわずかに高いTmを有するよう企画され得る。例えば、前方向プライマーの3’部分が約58℃のTmを有する場合、逆方向プライマーは、約61℃のTmを有するよう企画され得る。
【0052】
本発明の方法は、核酸サンプルにおける特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基の決定を包含する。この核酸サンプルは典型的には、ゲノムDNAであるが、しかしまたRNAでもあり得る。典型的には、DNA又はRNAは、細胞培養抽出物、又は完全な血液、白血球、血漿又は血清から精製されるが、しかしまた、他の源、例えば頬細胞、髪又は唾液からでもあり得る。核酸サンプルはその源から精製されず、そしてその元のサンプル状態又は半精製状態で方法に使用されることが可能である。
【0053】
増幅反応はまた、DNAポリメラーゼを包含するポリメラーゼを含み、そして例えば逆転写酵素活性を有するポリメラーゼを包含することができる。増幅反応の特異性は、ポリメラーゼ及び関連する活性の選択により影響され得る。例えば、切断された形のTaqポリメラーゼ、Stoffel DNAポリメラーゼ(Lawyer, F. C., Stoffel, R.K. Saiki, S.Y. Chang, P.A. Landre, R.D. Abramson, 及びD.H. Gelfand. 1993. 十分な長さのサーマス・アクアチカスのDNAポリメラーゼ及び5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いている切断された形の高レベル発現、精製、及び酵素特徴化。PCR Methods Appl 2: 275-287)は、3’プライマー鋳型ミスマッチの識別を増強することが示されている(Tada, M., M. Omata, S Kawai, H. Saisho, M. Ohto, R.K. Saiki, 及びJ.J. Sminsky. 1993. 膵臓腺癌を有する患者の膵液及び末梢血液におけるras遺伝子突然変異の検出。Cancer Res 53: 2472-2474)。それらの出版物は、引用により本明細書に組込まれる。
【0054】
増幅反応の特異性をさらに高めるには、“温開始”技法が使用され得る。それらの技法は、増幅の初期周期における非特異的反応の量の低下により低められた非特異的増幅の利点を提供する。増幅反応に“温開始”を提供するためには、例えばポリメラーゼが高温で添加され;しかしながら、これは、多数のサンプルが増幅される場合、不便である。温開始を提供するもう1つの通常のアプローチは、初期周期において非特異的活性を妨げる成分を使用することである。1つの例は、引用により組込まれるアメリカ特許第5,677,152号及び第5,773,258号に記載されるように、反応に単純化された温開始を提供するために使用されるDNAポリメラーゼの化学的に修飾されたバージョンの使用である。この態様で修飾されたポリメラーゼは、“ゴールド”ポリメラーゼと呼ばれる。
【0055】
“ゴールド”ポリメラーゼは、その混合物が高温で、例えば95℃で一定の期間、例えば3〜15分間、加熱されるまで、増幅反応混合物においては不活性である。この“ゴールド”修飾体は、いずれかのポリメラーゼ、例えばStoffel“ゴールド”フラグメントDNAポリメラーゼを創造するStoffelフラグメントDNAポリメラーゼと共に使用され得る。このタイプの修飾されたポリメラーゼの使用、又はもう1つの温開始方法の使用は、反応の初期加熱段階において生じる非特異的増幅を非常に低めることができる。温壊死活性はまた、他の成分の使用、例えばアプタマー又は抗−Taq抗体の使用に起因する。
【0056】
前記方法は、二本鎖DNA結合又はインターカレーション色素、例えば臭化エチジウム又はSYBR−グリーン(Molecular Probs)の使用を記載する。それらの色素は、増幅反応の間、存在し、それらは、増幅反応が終結した後、添加される。色素は、増幅生成物又はアンプリコンの溶融温度を決定するために使用される。
【0057】
本発明の方法は、いずれかのプライマー介在性増幅技法に使用され得る。ポリメラーゼ鎖反応又はPCRは、当業界において良く知られているプライマー介在性増幅技法である。他のプライマー介在性増幅技法は、リガーゼ鎖反応(LCR)、供給された線状増幅(LLA)及び鎖置換増幅(SDA)を包含するが、但しそれらだけには限定されない。本発明の方法は、単一の密閉された管において行われ、複数の多型現象部位の1つの管検出、複雑な後−増幅操作の排除、及びアンプリコン汚染の危険性の有意な低下を可能にする。増幅反応の体積は、使用される増幅方法及び装置に関連し、そしてその体積は、100μl又はそれ以下、又は50μl又はそれ以下、又は10μl又はそれ以下、又は5μl又はそれ以下であり得る。
【0058】
増幅の後、特定の多型現象は、例えばプライマーが増幅したことを示す溶融曲線の分析の観察により決定される。この溶融曲線分析は、例えば同時PCR装置、例えばABI5700/7000(96ウェル型)又はABI7900(384ウェル型)装置及びオンボードソフトウェア(SDS2.1)を用いて行われ得る。二本鎖DNA結合色素は、アンプリコンの溶融温度の決定のためのインジケーターを提供する。アンプリコンが低温度で二本鎖である場合、色素は蛍光であろう。温度が高められるにつれて、アンプリコンは、配列の長さ、塩基組成及び他のヌクレオチド類似体又は修飾体の存在を包含する因子の複雑性に基づいての速度で溶融し始めるであろう。二本鎖アンプリコンが一本鎖に溶融するにつれて、色素の蛍光性は低下するであろう。増幅生成物の蛍光強度は、例えば60℃〜92℃で測定される。溶融分析値は、蛍光における変化の負の微分値を計算することにより決定される。個々のユニークアンプリコン配列は、異なった溶融分析値をもたらすであろう。
【0059】
溶融曲線の使用に見出される所望の特徴は、エンドポイント分析におけるPCR生成物を試験する能力である。蛍光シグナルを同時にモニターすることは必要でないので、いずれの熱サイクラーでも増幅段階のために使用され得る。いくつかの場合、従来のやや高価なサーモサイクラーにおけるオフライン増幅は、蛍光読取り能力を有する最も高価な装置の良好な使用を可能にする。それらの方法は、標準の384ブロックサーモサイクラーにおける従来のPCR増幅による384−ウェル型での核酸多型現象決定を可能にする。サンプルの複数の384プレートが、標準の二重−ブロックサーモサイクラー(ABI9700)において増幅され、そして次に、同時サーモサイクラー(ABI7900)に移され、エンドポイント溶融曲線分析が行われる。
【0060】
溶融曲線分析は、蛍光における変化の負の微分値を計算するために、オンボードソフトウェア(SDS2.1)を用いて、同時装置、例えばABI7900上で行われ得る。溶融分析は、テキストファイルとしてオンボードソフトウェアから取られ、そして一連の標準化及び品質の参照計算を行うよう企画され、そして多型現象遺伝子型の半自動評点を可能にする特注ファイルに導入され得る。分析方法の最初の段階においては、個々のサンプルについての蛍光データは、与えられる個々の蛍光測定のためにウェル〜ウェルの温度の差異により標準化され得る。
【0061】
次に、溶融曲線の2つのピークの外側の温度境界に対応する、興味ある全体のデータ領域が、装置のノイズ又はスプリアウスから発生する人工シグナル、すなわち非特異的増幅(例えば、プライマー−ダイマー)を排除するために決定され得る。次に、2つの溶融曲線ピークを明確に分離する中心温度点が決定され得る。第2回目の標準化は、個々のサンプルに関して、最大ピークの高さがそのピーク領域の左又は右に存在することが決定されるような中心温度を用いて行われ、次にすべてのサンプルは、それらのピーク最大値の温度がその領域(左又は右)についての平均温度に標準化されるよう、いずれかの領域に陥ることにより標準化され得る。
【0062】
非鋳型参照として企画されるいずれかのサンプルについての生の蛍光値(60℃で)の最初の2つのデータ点を平均できる品質参照アルゴリズムが実施され、そして遺伝子コーリングから低い初期の生の蛍光値を有するいずれかのサンプルを除去することができる。60℃で最高の非鋳型参照よりも低い初期の生の蛍光読取を有するサンプルは、遺伝子型コーリングを保証するために不十分な量のPCRアンプリコンを含むことが仮定され得る。この計算は、非特異的増幅生成物(例えば、プライマー−ダイマー)の溶融曲線に基づいて増幅が遺伝子型の割り当てを失敗したサンプルを妨げることができる。次に、溶融曲線のデータ点が、2つの個々のピーク領域内に統合され得る。
【0063】
分析ソフトウェアは、それぞれ左及び右ピークについての平均ピーク最大の+/−1℃として統合についてのデフォルトピーク領域を定義することができる。識別を最大化し、そしてクラスター化を改良するためにそれらのピーク領域を調節することが必要である。個々のサンプルついてのその得られる値が、第1及び第2の対立遺伝子についての統合されたピーク領域に対応する座標と用いて、散布図に図示され得;原点(0, 0)に対する個々の点の逆正接値(y/x)が計算され、ここでx及びyは2つのピーク統合値である。最も近い図心分類に基づいてサンプルを4種の遺伝子型カテゴリーに自動的に分類する、k−平均クラスターリングアルゴリズムは、遺伝子型を自動的に割り当てするために使用され得る(Anderberg, M.R. 1973, Cluster analysis for application. Academic Press, New York; 及びSharma, S. 1996. Applied Multirariate Techniques. John Willey & Sons, New York; 両者とも引用により本明細書に組込まれる)。
【0064】
このアルゴリズムは、クラスターリング工程の間、使用される測定基準としても個々のサンプルの逆正接値を用いる。非鋳型参照として予備定義されるか、又は前に記載された品質参照により濾過され得るサンプルは、クラスターリングの間、使用されない。それらのサンプルは、“NA”ラベルとして割り当てられ得る。データは、予定される数のクラスターに分類され(4種のクラスターは3種の遺伝子型クラスター及び1つのNAクラスターを有するか、又は変異ホモ接合体が特定の実施に存在していない場合、3種の遺伝子型クラスターを有する)、そしてサンプルはサンプルデータとクラスターの中心(図心)との間の最少距離を有するクラスターに割り当てられる。多型現象遺伝子は、個々のクラスターにおいて自動的にサンプルに割り当てられる。
【0065】
遺伝子型コーリング工程の処理量をさらに高めるために、前に記載されたのと同じk−平均アルゴリズムを用いるJava(登録商標)に書かれる独立型適用が開発されている。この適用は、与えられる多型現象部位についての複数の384−ウェルプレートからの溶融曲線結果を同時に分析し、そして遺伝子型を自動的に割り当てことができる。この適用は、温度標準化の間、1℃(デフォールト値は、実験的に決定される場合、使用され得る)以上シフトされるサンプルを注目することによりアウトライアーであると思われる遺伝子型を識別することができる。遺伝子型はそれらのサンプルに割り当てられ、そしてデフォールト許容温度シフトが、ピーク最大温度において変動性を有するアッセイのために高められ得る。ソフトウェアはまた、特定のクラスターに属することの低い条件的確立を有するサンプルを示すことができる。
【0066】
その示されるサンプルは、溶融曲線の観察の後、手動的に変えられるか又は排除され得る。この384−ウェル型の使用は、従来の96−ウェル型のサーモサイクラーにより処理量において有意な上昇をもたらした。比較的単純な実験設定、例えば1つのBioMek 2000, 2つのABI9700サーモサイクラー及び1つのABI7900HT同時サーモサイクラーを用いて、1人の技術者は1日当たり約3,500の多型現象について8〜10のプレートを通常、処理することができる。この処理量は、96−プローブ用具(例えば、BioMek Fx)を用いてのより早い液体取扱ロボット、追加のABI9700、及びABI7900HT上に利用できる自動負荷装置プレートスタッカーの使用により改良され得る。これは、1日当たり6,000−10,000の多型現象の処理を可能にするために、プレート処理のために必要とされる、必要な実施時間を低める。
【実施例】
【0067】
例1.14bp及び6bpの5’領域
PCR反応を、100μlの反応体積でゲノムDNAに対して行う。反応及びサイクル条件を、非相同対立遺伝子増幅及びプライマー−ダイマー形成を最少にするために、下記のような条件に最適化する。実験室内で調製された(アメリカ特許第5,677,152号及び第5,773,258号に従う)、Taq StoffelフラグメントDNAポリメラーゼの修飾された(“ゴールド”と称する)バージョンを使用し、反応に温開始を提供する。2つの可能な対立遺伝子と共に1つの多型現象塩基部位を有する個々のヌクレオチド多型現象部位に関しては、2つの前方向プライマーを、多型現象塩基の1つのみと適合する個々のプライマーの末端の3’塩基により企画する。
【0068】
個々の前方向プライマーの5’末端は、GCに富んでいる配列を含んで成り;1つのプライマーは標的DNAに対して非相補的な14塩基の長さの5’末端を有し、そして第2のプライマーは標的DNAに対して非相補的な6塩基の長さの5’末端を有する(表1の下線の配列を参照のこと)。共通の逆方向プライマーは、個々の多型現象部位の下流に企画される。個々の多型現象部位は、別々の反応において分析される。多型現象(SNP)は、2005年4月21日のNCBIヒトSNP(dbSNP)データベースからの次の参照クラスター(rs)番号に関連する、2003年6月13日の名称又はGenBank受託番号により示される:ApoB71=rs1367117、AC006408.1_51078=rs734351、 AC006408.1_45311=rs2585、 AC006408.1_65008=rs1004446。
【0069】
【表1】

【0070】
PCR反応は、最終濃度で次のものを含む:0.2μMの個々のプライマー;12単位のStoffel “ゴールド”ポリメラーゼ;2単位のUNG(ウラシルN−グリコシラーゼ);10mMのトリス−HCl、40mMのKCl、pH8.0;2mMのMgCl2、50μMの個々のdATP, dCTP及びdGTP; 25μMのdTPP; 75μMのdUTP; 0.2×SYBR Green I(Molecular Probes);5%DMSO; 2.2%のグリセロール;2.0μMのROX色素(Molecular Probes)。 20ngのゲノムDNA(標準の方法を用いて細胞系から精製された)を、個々の反応に添加する。
【0071】
PCRを、ABI5700装置(Applied Biosystems)上で行う。2種の初期加熱段階を行う:UNGを活性化するために50℃で2分、続いて、“ゴールド”ポリメラーゼを活性化するために95℃で12分。95℃で20秒、58℃で40秒及び72℃で20秒の3段階増幅の45サイクルを行う。
【0072】
増幅の後、溶融曲線分析を、ABI5700装置上で行う。PCR生成物の蛍光強度を、60℃〜92℃で測定する。得られる分析値を、テキストファイルとしてオンボードソフトウェアから取り出し、そしてMS Excelスプレッドシートに移す。溶融曲線を、個々の反応に関して、温度に対する蛍光の変化の負の微分値をプロットすることにより生成する。個々の多型現象部位に関して、低い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される短い6塩基の5’非相補的配列を有する前方向プライマーによる増幅に対応する。より高い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される長い14塩基の5’非相補的配列を有する他の前方向プライマーによる増幅に対応する。溶融曲線ピークが両温度範囲にある場合、両前方向プライマーによる増幅が示される。
【0073】
例2.10bp及び3bpの5’領域
PCRを、次の変更を伴って、例1に記載されるような反応条件及び分析方法により行う。PCR反応を、50μlの反応体積で10ngのゲノムDNAにより行う。個々の前方向プライマーの5’末端は、GCに富んでいる配列を含んで成り、1つは標的DNAに対して非相補的な10塩基の長さの5’末端を有し、そして第2のプライマーは標的DNAに対して非相補的な3塩基の長さの5’末端を有する(表2の下線の配列を参照のこと)。
【0074】
【表2】

【0075】
個々の多型現象部位に関して、低い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される短い3塩基の5’非相補的配列を有する前方向プライマーによる増幅に対応する。より高い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される長い10塩基の5’非相補的配列を有する他の前方向プライマーによる増幅に対応する。溶融曲線ピークが両温度範囲にある場合、両前方向プライマーによる増幅が示される。
【0076】
例3.26bp及び18bpの5’領域
PCRを、次の変更を伴って、例1に記載されるような反応条件及び分析方法により行う。PCR反応を、50μlの反応体積で10ngのゲノムDNAにより行う。個々の前方向プライマーの5’末端は、GCに富んでいる配列を含んで成り、1つは標的DNAに対して非相補的な26塩基の長さの5’末端を有し、そして第2のプライマーは標的DNAに対して非相補的な18塩基の長さの5’末端を有する(表3の下線の配列を参照のこと)。
【0077】
【表3】

【0078】
個々の多型現象部位に関して、低い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される短い18塩基の5’非相補的配列を有する前方向プライマーによる増幅に対応する。より高い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される長い26塩基の5’非相補的配列を有する他の前方向プライマーによる増幅に対応する。溶融曲線ピークが両温度範囲にある場合、両前方向プライマーによる増幅が示される。
【0079】
例4.最後から2番目の3’塩基を有する、14bp及び6bpの5’領域
PCRを、次の変更を伴って、例1に記載されるような反応条件及び分析方法により行う。PCR反応を、50μlの反応体積で10ngのゲノムDNAにより行う。PCRを、ABI5700装置(Applied Biosystems)上で行う。2種の初期加熱段階を行う:UNGを活性化するために50℃で2分、続いて、“ゴールド”ポリメラーゼを活性化するために95℃で12分。95℃で20秒、65℃で40秒及び72℃で20秒の3段階増幅の38サイクルを行う。2種の前方向プライマーを、多型現象塩基の1つのみと適合する個々のプライマーの最後から2番目の3’塩基により企画する。個々の前方向プライマーの5’末端は、GCに富んでいる配列を含んで成り、1つのプライマーは標的DNAに対して非相補的な14塩基の長さの5’末端を有し、そして第2のプライマーは標的DNAに対して非相補的な6塩基の長さの5’末端を有する(表4の下線の配列を参照のこと)。
【0080】
【表4】

【0081】
個々の多型現象部位に関して、低い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される短い6塩基の5’非相補的配列を有する前方向プライマーによる増幅に対応する。より高い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される長い14塩基の5’非相補的配列を有する他の前方向プライマーによる増幅に対応する。溶融曲線ピークが両温度範囲にある場合、両前方向プライマーによる増幅が示される。
【0082】
例5.2つの多型現象部位の多重検出
PCRを、次の変更を伴って、例1に記載されるような反応条件及び分析方法により行う。PCR反応を、50μlの反応体積で10ngのゲノムDNAにより行う。PCRを、ABI5700装置(Applied Biosystems)上で行う。2種の初期加熱段階を行う:UNGを活性化するために50℃で2分、続いて、“ゴールド”ポリメラーゼを活性化するために95℃で12分。95℃で20秒、58℃で40秒及び72℃で20秒の3段階増幅の40サイクルを行う。2つの多型現象部位についてのプライマー組を、1つの反応管中に組合す。個々の前方向プライマーの5’末端は、GCに富んでいる配列を含んで成り、第1のプライマーは10塩基の長さの5’末端を有し、第2のプライマーは3塩基の長さの5’末端を有し、第3のプライマーは26塩基の長さの5’末端を有し、そして第4のプライマーは18塩基の長さの5’末端を有する(表5の下線の配列を参照のこと)。
【0083】
【表5】

【0084】
2つの多型現象部位の多重検出に関しては、増幅は4種のユニークピークをもたらすことができる。最も低い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される最も短い5’非相補的配列を有する第1の前方向プライマーによる増幅に対応する。第2〜最も低い温度範囲での溶融曲線は、結合される10塩基の5’非相補的配列を有する第2の前方向プライマーによる増幅に対応する。第2〜最も高い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される18塩基の5’非相補的配列を有する第3の前方向プライマーによる増幅に対応する。最も高い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される最も長い26塩基の5’非相補的配列を有する第4の前方向プライマーによる増幅に対応する。溶融曲線ピークが複数の温度範囲にある場合、2、3又はすべての4個の前方向プライマーによる増幅が示される。
【0085】
例6.14bp及び3bpの5’領域
PCRを、次の変更を伴って、例1に記載されるような反応条件及び分析方法により行う。PCR反応を、15μlの反応体積で4ngのゲノムDNAにより行う。1.8単位のStoffel Goldを使用し;UNGは反応混合物に添加されない。ROX色素を0.25μMで添加する。個々の前方向プライマーの5’末端は、GCに富んでいる配列を含んで成り、1つのプライマーは標的DNAに対して非相補的な14塩基の長さの5’末端を有し、そして第2のプライマーは標的DNAに対して非相補的な3塩基の長さの5’末端を有する(表6の下線の配列を参照のこと)。
【0086】
共通の逆方向プライマーを、多型現象部位の下流に企画する。PCRを、ABI7900HT Fast Real-Time PCR System装置(Applied Biosystems)上で行う。2種の初期加熱段階を行う:U50℃で2分、続いて、“ゴールド”ポリメラーゼを活性化するために95℃で12分。95℃で20秒、58℃で60秒及び72℃で30秒の3段階増幅の35サイクルを行う。多型現象ESR1−rs746432は、2005年4月21日のNCBIヒトSNP(dbSNP)データベースからの参照クラスター(rs)番号である。
【0087】
【表6】

【0088】
個々の多型現象部位に関して、低い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される短い3塩基の5’非相補的配列を有する前方向プライマーによる増幅に対応する。より高い温度範囲での溶融曲線ピークは、結合される長い14塩基の5’非相補的配列を有する他の前方向プライマーによる増幅に対応する。溶融曲線ピークが両温度範囲にある場合、両前方向プライマーによる増幅が示される。
本明細書に記載される例及び態様は、例示目的のためであり、本発明の範囲を制限するものではないことが理解される。本明細書に記載される例及び態様の種々の修飾又は変更は本発明の範囲内で行われ得ることは当業者に明らかであることも理解される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、溶融温度の差異を用いての遺伝子型分類の原理を示す。核酸は、2種の前方向対立遺伝子−特異的プライマー及び共通の逆方向プライマーにより増幅される。6塩基対又は3塩基対を含んで成る、短い非相補的配列“末端”は、1つの対立遺伝子−特異的プライマー(対立遺伝子1に対して特異的)に結合され、そして14塩基対を含んで成る、長い相補的配列“末端”は、他の対立遺伝子−特異的プライマー(対立遺伝子2に対して特異的)に結合される。対立遺伝子1についてホモ接合性のサンプルは、短いプライマーによってのみ増幅され、そして溶融曲線において低い温度ピークを付与する。対立遺伝子2についてのホモ接合性のサンプルとは、長いプライマーによってのみ増幅され、そして高い温度ピークを付与する。ヘテロ接合性サンプルは、両プライマーにより増幅され、そして溶融曲線は2つのピークをもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸サンプルにおける特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基の決定方法であって、
a)特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、
特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマー、
前記特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的な逆方向プライマー、及び
DNAポリメラーゼ、
を含んで成る増幅反応における核酸サンプルを増幅し;
b)増幅反応生成物を生成せしめ;
c)前記増幅反応生成物の溶融温度を測定し;そして
d)前記増幅反応生成物の溶融温度により前記特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定することを含んで成る方法。
【請求項2】
前記増幅反応が、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第3塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第3の5’非相補的配列を含んで成る第3の前方向プライマーを、さらに含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記増幅反応が、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第4塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第4の5’非相補的配列を含んで成る第4の前方向プライマーを、さらに含んで成る請求項2記載の方法。
【請求項4】
核酸サンプルにおける特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基の決定方法であって、
a)特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、
特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマー、
前記特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的な逆方向プライマー、及び
DNAポリメラーゼ、
を含んで成る増幅反応における核酸サンプルを増幅し;
b)増幅反応生成物を生成せしめ;
c)前記増幅反応生成物の溶融温度を測定し;そして
d)前記増幅反応生成物の溶融温度により前記特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定することを含んで成る方法。
【請求項5】
前記増幅反応が、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第3塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第3の5’非相補的配列を含んで成る第3の前方向プライマーを、さらに含んで成る請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記増幅反応が、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第4塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第4の5’非相補的配列を含んで成る第4の前方向プライマーを、さらに含んで成る請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記核酸サンプルの増幅、前記増幅反応生成物の創造、及び前記溶融温度の測定が、単一の管において行われる請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記5’非相補的配列が、
a)ヌクレオチド塩基類似体、及び
b)化学的に修飾されたヌクレオチオ塩基の少なくとも1つを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記5’非相補的配列が、2〜25個の長さの塩基対である請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記第1の5’非相補的配列が3個の長さの塩基対であり、そして前記第2の5’非相補的配列が14個の長さの塩基対である請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記第1の5’非相補的配列の配列が、5’−GCG−3’(配列番号3)であり、そして前記第2の5’非相補的配列の配列が、5’−GCGGGCAGGGCGGC−3’(配列番号2)である請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記DNAポリメラーゼが、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いている請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記DNAポリメラーゼが、温開始活性を有するよう修飾される請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記増幅反応が、
a)蛍光二本鎖核酸結合色素、及び
b)インターカレーション色素の1つを含む請求項1記載の方法。
【請求項15】
特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、及び
特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマーを含んで成るキット。
【請求項16】
前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第3塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第3の5’非相補的配列を含んで成る第3の前方向プライマーを、さらに含んで成る請求項15記載のキット。
【請求項17】
前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第4塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第4の5’非相補的配列を含んで成る第4の前方向プライマーを、さらに含んで成る請求項16記載のキット。
【請求項18】
特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、及び
特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマーを含んで成るキット。
【請求項19】
前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第3塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第3の5’非相補的配列を含んで成る第3の前方向プライマーを、さらに含んで成る請求項18記載のキット。
【請求項20】
前記特定のヌクレオチド多型現象部位での第4塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1及び第2の5’非相補的配列とは溶融温度で異なる第4の5’非相補的配列を含んで成る第4の前方向プライマーを、さらに含んで成る請求項19記載のキット。
【請求項21】
前記特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的逆方向プライマーをさらに含んで成る請求項15記載のキット。
【請求項22】
前記5’非相補的配列が、
a)ヌクレオチド塩基類似体、及び
b)化学的に修飾されたヌクレオチオ塩基の少なくとも1つを含んで成る請求項15記載のキット。
【請求項23】
前記5’非相補的配列が、2〜25個の長さの塩基対である請求項15記載のキット。
【請求項24】
前記第1の5’非相補的配列が3個の長さの塩基対であり、そして前記第2の5’非相補的配列が14個の長さの塩基対である請求項15記載のキット。
【請求項25】
前記第1の5’非相補的配列の配列が、5’−GCG−3’(配列番号3)であり、そして前記第2の5’非相補的配列の配列が、5’−GCGGGCAGGGCGGC−3’(配列番号2)である請求項15記載のキット。
【請求項26】
DNAポリメラーゼをさらに含んで成る請求項15記載のキット。
【請求項27】
前記DNAポリメラーゼが、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いている請求項26記載のキット。
【請求項28】
前記DNAポリメラーゼが、温開始活性を有するよう修飾される請求項26記載のキット。
【請求項29】
a)蛍光二本鎖核酸結合色素、及び
b)インターカレーション色素の少なくとも1つをさらに含んで成る請求項15記載のキット。
【請求項30】
核酸サンプルにおける特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基の決定方法であって、
a)特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、
特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマー、
前記特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的な逆方向プライマー、及び
DNAポリメラーゼ、
を含んで成る増幅反応における核酸サンプルを増幅し;
b)増幅反応生成物を生成せしめ;そして
c)前記増幅反応生成物が前記第1の前方向プライマーからか、又は前記第2の前方向プライマーから創造されるかを決定することにより、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定することを含んで成る方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸サンプルにおける特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基の決定方法であって、
a)特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、
特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマー、
前記特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的な逆方向プライマー、及び
DNAポリメラーゼ、
を含んで成る増幅反応における核酸サンプルを増幅し;
b)増幅反応生成物を生成せしめ;
c)前記増幅反応生成物の溶融温度を測定し;そして
d)前記増幅反応生成物の溶融温度により前記特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定することを含んで成る方法。
【請求項2】
核酸サンプルにおける特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基の決定方法であって、
a)特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、
特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマー、
前記特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的な逆方向プライマー、及び
DNAポリメラーゼ、
を含んで成る増幅反応における核酸サンプルを増幅し;
b)増幅反応生成物を生成せしめ;
c)前記増幅反応生成物の溶融温度を測定し;そして
d)前記増幅反応生成物の溶融温度により前記特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定することを含んで成る方法。
【請求項3】
特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、及び
特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマーを含んで成るキット。
【請求項4】
特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、及び
特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な最後から2番目の3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマーを含んで成るキット。
【請求項5】
核酸サンプルにおける特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基の決定方法であって、
a)特定のヌクレオチド多型現象部位での第1塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び第1の5’非相補的配列を含んで成る第1の前方向プライマー、
特定のヌクレオチド多型現象部位での第2塩基に対して相補的な3’末端塩基、及び前記第1の5’非相補的配列とは溶融温度において異なる第2の5’非相補的配列を含んで成る第2の前方向プライマー、
前記特定のヌクレオチド多型現象部位の下流の配列に対して相補的な逆方向プライマー、及び
DNAポリメラーゼ、
を含んで成る増幅反応における核酸サンプルを増幅し;
b)増幅反応生成物を生成せしめ;そして
c)前記増幅反応生成物が前記第1の前方向プライマーからか、又は前記第2の前方向プライマーから創造されるかを決定することにより、前記特定のヌクレオチド多型現象部位での塩基を決定することを含んで成る方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−230401(P2006−230401A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−18750(P2006−18750)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】