説明

溶融金属ノズル用耐火物およびその亀裂部からの大気吸引防止方法

【課題】 溶融金属容器から溶融金属を注出する溶融金属ノズル用耐火物を熱スポーリングによる亀裂から大気を吸い込むのを防止し、耐火物の亀裂近傍の組織酸化を防止し、組織劣化も抑制、漏鋼トラブルも発生しないようにすることにある。
【解決手段】 取鍋やタンディッシュ等の溶融金属容器から溶融金属を注出する溶融金属ノズル用耐火物1を熱スポーリングによる亀裂部から外気の空気をノズル内に吸引するのを抑制するために、上記ノズル用耐火物1の外周面部に所定の温度で溶融して亀裂11、12部に侵入して亀裂11、12部を閉塞する亀裂閉塞材13を塗布するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金分野における取鍋、タンディッシュ等の溶融金属容器から溶融金属を流出させる際に使用するスライディングノズル用の上ノズル、スライディングプレート、中間ノズル、下部ノズル等の溶融金属ノズル用耐火物およびその亀裂部からの大気吸引防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼用の取鍋下端部に取り付けられる溶鋼鋳込流量制御用のスライディングノズルは、上ノズル、スライディングプレート、中間ノズル、下部ノズルからなり、それぞれの間には目地と呼ばれる接合ための微細な空間が生じる。したがって、使用時には、その目地部にモルタル耐火物若しくは予めドーナツ状に形作られた一定の厚みを有したパッキン耐火物を設置し、その空隙を充満して使用している。
【0003】
ところが、しばしば、その目地を起点として耐火物の異常損粍が発生し、内孔部を流通する溶鋼が炉外へ排出する漏鋼トラブルが発生する。その要因は、目地耐火物の設置ミス、偏芯、ノズル用耐火物の亀裂などが考えられる。また、耐火物、特にノズル用耐火物は、内孔に1000℃以上の非常に高温の溶鋼を受鋼すると、その熱スポールの影響で亀裂が発生する。その際、ノズル内孔近傍に圧縮応力が、ノズル外周に引っ張り応力が生成して外周側から亀裂が発生する。その後、受鋼の回数が増すにしたがって亀裂が伸長し、最終的にノズルの内孔に到達する。究極的には全く亀裂が発生しない耐火物の開発が耐火物業界の目標だが、現在の技術では未達である。
【0004】
亀製がノズルの内孔側に到達すると、内孔は負圧な雰囲気にあるため、亀裂を介して外気の大気を吸引する可能性がある。目地耐火物の設置が完全で、目地耐火物の損傷が軽微であれば、大気を吸引することはないが、往々にして目地部分から大気を吸引しやすい。目地部分より大気を吸引すると、亀裂に大気が侵入して亀裂近傍の耐火物組織の酸化が進む。さらに、大気の吸引が継続されれば、耐火物組織が脆弱劣化していく。そのような状態までノズルの損傷が進行すると、ノズル内孔部を流通している溶鋼が劣化した耐火物組織を破壊し、溶損しながら亀製にそって進み、最終的にノズル外周に達して漏鋼に至る。
【0005】
従来、特開平10−235457、特開2003−250605のようにスライディングノズルや浸漬ノズルでの大気の引き込みを防止するシール方法が提案されている。
しかし、これらは、スライディングノズルの固定プレートと摺動プレートの間や、スライドゲートと浸漬ノズルの接合部の間のシールで、これらの間の目地部やパッキン部の隙間からの大気の引き込みを防止するもので、スライディングプレートやノズルの熱スポールで生じる亀裂からの大気を吸い込むのを防止するものでなかった。
【特許文献1】特開平10−235457
【特許文献2】特開2003−250605
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱スポールによるノズル用耐火物の亀裂の発生は、現在のところ避けられないが、亀裂を閉塞させて亀裂から大気を吸い込むのを防止できれば、たとえ目地パッキンの設置の不具合があっても、大気をノズル内に侵入しなくできる。したがって、熱スポールによるノズル用耐火物に亀裂が発生しても、亀裂部から大気をノズル内に侵入しなくして耐火物の亀裂近傍の組織酸化を防止でき、組織劣化も抑制、漏鋼トラブルも発生しないようにすることが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した点に鑑み、上記の課題を解決するために、取鍋やタンディッシュ等の溶融金属容器から溶融金属を流出する溶融金属ノズル用耐火物であって、熱スポーリングによる亀裂部からの外気の空気をノズル内部に吸引するのを抑制するために、上記ノズル用耐火物の外周面部に使用の所定温度で軟化または溶融して亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を塗布したことを特徴とする溶融金属ノズル用耐火物を提供するものである。
【0008】
また、溶融金属のノズル用耐火物の上面または/および下面部に所定の温度で軟化または溶融して亀裂部に侵入し、または亀裂部を覆って亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を0.005〜3mmの厚さで塗布したことを特徴とする溶融金属ノズル用耐火物を提供するものである。
【0009】
さらに、溶融金属のノズル用耐火物のノズル間、またはスライディングプレートとの接合面、およびこれらの外周面部に所定の温度で溶融して亀裂部に侵入し、または亀裂部を覆って亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を塗布したことを特徴とする溶融金属ノズル用耐火物を提供するものである。
【0010】
さらにまた、取鍋やタンディッシュ等の溶融金属容器から溶融金属を流出する溶融金属ノズル用耐火物の亀裂部からの大気吸引防止方法であって、上記ノズル用耐火物の外周面部に使用の所定温度で軟化または溶融して亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を0.005〜3mmの厚さ、好ましくは0.1〜0.5mmの厚さで塗布し、ノズル用耐火物の外周面部に熱スポーリングによる亀裂が発生したときに上記外周面部に塗布した亀裂閉塞材が軟化または溶融して亀裂部を閉塞して外気の空気を耐火物の内部に吸引するのを抑制するようにしたことを特徴とする溶融金属ノズル用耐火物の亀裂部からの大気吸引防止方法提供するものである。
【0011】
またさらに、溶融金属のノズル用耐火物の外周面部に亀裂閉塞材を0.1〜0.5mmの厚さで塗布したことを特徴とする溶融金属ノズル用耐火物を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の溶融金属ノズル用耐火物は、取鍋やタンディッシュ等の溶融金属容器から溶融金属を流出する溶融金属注入用耐火物であって、熱スポーリングによる亀裂部からの外気の空気をノズル内部に吸引するのを抑制するために、上記ノズル用耐火物の外周面部に使用の所定温度で軟化または溶融して亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を塗布したことによって、内孔に1000℃以上の非常に高温の溶鋼を受鋼して、その熱スポールの影響で亀裂が発生しても、ノズル用耐火物の外周面部に塗布した亀裂閉塞材が溶融して亀裂部を閉塞し、亀裂部から大気を吸い込むのを防止でき、耐火物の亀裂近傍の組織酸化を防止でき、組織劣化も抑制でき、漏鋼の発生も防止できる。
【0013】
また、溶融金属のノズル用耐火物の上面または/および下面部に所定の温度で軟化または溶融して亀裂部に侵入し、または亀裂部を覆って亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を0.005〜3mmの厚さで塗布したことによって、たとえノズル用耐火物の上面または/および下面部の目地パッキン等の設置に不具合があっても、亀裂閉塞材が溶融して亀裂部を閉塞して大気をノズル内部に侵入するのを防止でき、上記したように耐火物の亀裂近傍の組織酸化を防止でき、組織劣化も抑制でき、漏鋼の発生も防止できる。
【0014】
さらに、溶融金属ノズル用耐火物のノズル間、またはスライディングプレートとの接合面、およびこれらの外周面部に所定の温度で溶融して亀裂部に侵入し、または亀裂部を覆って亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を塗布したことによって、目地部に不具合があっても、亀裂閉塞材が溶融して亀裂部を閉塞して大気をノズル内部に侵入するのを防止できて、上記したように耐火物の亀裂近傍の組織酸化を防止でき、組織劣化も抑制でき、漏鋼の発生も防止できる。
【0015】
さらに、溶融金属ノズル用耐火物の外周面部に使用の所定温度で軟化または溶融して亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を0.005〜3mmの厚さ、好ましくは0.1〜0.5mmの厚さで塗布し、溶融金属ノズル用耐火物の外周面部に熱スポーリングによる亀裂が発生したときに上記外周面部に塗布した亀裂閉塞材が軟化または溶融して亀裂部を閉塞して外気の空気を耐火物の内部に吸引するのを抑制することによって、内孔に1000℃以上の非常に高温の溶鋼を受鋼して、その熱スポールの影響で亀裂が発生しても、ノズルの外周面部に塗布した亀裂閉塞材が溶融して亀裂部に侵入し、または亀裂部を覆って亀裂部を閉塞し、亀裂部から大気を吸い込むのを防止でき、耐火物の亀裂近傍の組織酸化を防止でき、組織劣化も抑制でき、漏鋼の発生も防止できる。上記したように目地パッキン等の設置の不具合があっても、大気をノズル内に侵入するのを防止でき、上記したように耐火物の亀裂近傍の組織酸化を防止でき、組織劣化も抑制でき、漏鋼の発生も防止できる。
【0016】
さらにまた、ノズル用耐火物の外周面部に亀裂閉塞材を0.1〜0.5mmの厚さで塗布したことによって、熱スポールによって亀裂を生ずるノズル用耐火物に容易に亀裂閉塞材を刷毛やスプレーで塗布して、上記のように亀裂閉塞材が溶融して亀裂部に侵入し、または亀裂部を覆って亀裂部を閉塞し、亀裂部から大気を吸い込むのを防止でき、耐火物の亀裂近傍の組織酸化を防止でき、組織劣化も抑制でき、漏鋼の発生も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の溶融金属ノズル用耐火物およびその亀裂部からの大気吸引防止方法は、溶融金属ノズル用耐火物の外周面部に使用の所定温度で軟化または溶融して亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を塗布し、上記ノズル用耐火物の外周面部に熱スポーリングによる亀裂が発生したときに上記外周面部に塗布した亀裂閉塞材が軟化または溶融して亀裂部を閉塞して外気の空気を耐火物の内部に吸引するのを抑制することを特徴としている。
【0018】
溶融金属ノズル用耐火物としては、ノズル内部に溶融金属を流通して熱スポーリングで亀裂を発生し、亀裂部から大気を吸引する場所に使用する耐火物のすベてに適用できる。このノズル用耐火物に亀裂が発生しても直ちに耐火物の使用が終わるのではなく、まわりの耐火物やメタルケースなどに保持されて使用することができ、使用を延長することができる。大気を吸引する耐火物としては、取鍋の上ノズル、スライデイングプレート(上プレート、下プレート)、その下にある中間ノズル、下部ノズル、エアシールパイプ(ロングノズル)、また取鍋とモールド間にあり、溶鋼の保持する中間容器のタンディッシュに装着される上ノズル、プレート、中間ノズル、下部ノズル、浸潰ノズルなどが適用可能である。
【0019】
これらの部位は、取鍋ではタンディッシュの溶鋼湯面、タンディッシュではモールド内の溶鋼湯面からの高さに応じた減圧環境が作られ、亀裂の発生により大気を吸引し、鋼の品質の劣化や耐火物白身の劣化により、耐火物においては損耗により、その使用が著しく制限される。
【0020】
上ノズル、スライディングノズル、中間ノズル、下部ノズルのそれぞれの間は、目地と呼ばれる微細な空間が生じる。したがって、使用時には、その目地部にモルタル耐火物若しくは予めドーナツ状に形作られた一定の厚みを有したパッキン耐火物を設置し、その空隙を充満して実機使用しているが、上記したようにしばしばその目地を起点として耐火物の異常損耗が発生し、内部の溶鋼が炉外へ漏鋼するドラブルが起こる。
【0021】
この溶融金属ノズル用耐火物1としては、上記の取鍋、タンディッシュ等の溶融金属容器の底部に交換可能に装着して鋳造装置等に溶融金属を流出して金型等に注入するようにしているもので、図1のように上ノズル2、スライディングプレート3、中間ノズル4、下部ノズル5等が適用できる。そして、このような溶融金属ノズル用耐火物1は、それぞれの間の目地部6、7、8、9にモルタルやパッキン等のシール材(図示せず)をそれぞれ装着して漏鋼等がないように接合している。しかし、ノズル内孔10は、1000℃以上の非常に高温の溶鋼を受鋼し、その熱スポールの影響でノズル内孔近傍に圧縮応力が、ノズル外周に引っ張り応力が生成して外周側から、たとえば図2(a)、(b)のようにノズル外周部に亀裂11、12が発生し、受鋼の回数が増すにしたがってこれらの亀裂11、12が伸長し、最終的にノズル内孔10に到達し、亀裂11、12を介して外気の大気を吸引する事態が発生する。亀裂は、上ノズル2、スライディングプレート3部にも発生する。
【0022】
製鋼用溶鋼取鍋は、上記したように溶鋼流量を制御するため、溶鋼鍋の底部に上ノズル2、スライデイングノズル3、中間ノズル4、下部ノズル5が配置される。スライディングノズル3を用いた溶鋼の鋳造中においては、スライディングノズル3の内孔10を溶鋼流路が摺動プレートの摺動作に縮小し、一定の流速に制御される。このような環境下においては、ベルヌーイの法則から、溶鋼のヘッド圧に応じて減圧状態になる。特に、嵌合部を要するる絞り部近傍、中間ノズル4、下部ノズル5では、溶鋼の圧力がスライディングノズル3周辺の大気圧に対してほぼ真空近くの負圧となる。
【0023】
特に、ノズル用耐火物1は、内孔10に1000℃以上の非常に高温の溶鋼を受鋼すると、その熱スポールの影響で亀裂が発生し、受鋼の回数が増すにしたがって亀裂が伸長し最終的に内孔に到達する。亀製11、12がノズル内孔10側に到達すると、内孔10は負圧な雰囲気にあるため、亀裂11、12を介して外気の大気を吸引する可能性がある。目地耐火物の設置が完全で、目地耐火物の損傷が軽微であれば、大気を吸引することはないが、往々にして目地部分から大気を吸引しやすい。目地部分より大気を吸引すると、亀裂に大気、すなわち酸素を21%含有する空気が侵入し、亀裂近傍の耐火物組織のカーポン酸化が進む。そのため、ノズル用耐火物1の外周面部に所定の温度で溶融して亀裂11、12部に侵入して亀裂11、12部を閉塞する亀裂閉塞材13を付着し、熱スポーリングによる亀裂11、12から外気の空気をノズル内孔10に吸引するのを抑制し、耐火物組織の脆弱劣化を防止するように対処している。
【0024】
亀裂閉塞材13は、上ノズル2とスライディングプレート3の間、スライディングプレート3間、ノズル4とスライディングプレート3の間、上記ノズル4、5間の目地材6、7、8、9やパッキン材の外周部からこれらのノズル、スライディングプレート3の外側の周面部にわたって塗布することができる。また、亀裂閉塞材13は、上記ノズル2とスライディングプレート3の間の接合面、スライディングプレート3間の接合面、ノズル4とスライディングプレート3の接合面、上記ノズル4、5の接合面、およびこれらの外周面部にわたって塗布することもできる。特に、亀裂11、12は、上ノズル2や、中間ノズル4、下部ノズル5の上下端部の外周のコーナー部分から始まるため、図2(a)、(b)のようにこれらの上端面、下端面の外周面部の表面部に塗布しておくことが望ましいものであり、重要である。
【0025】
本発明は、ノズル用耐火物1の亀裂が発生する位置する上記した表面個所に、溶剤、上薬、酸化防止剤などのバインダー等の亀裂閉塞材13を予め塗布し、使用温度で溶融したり、液相化して亀裂部の表面を閉塞することで、亀裂からの大気吸引を抑制することである。塗布する亀裂閉塞材13は、その目地部分等の亀裂部が使用時に達する温度城で溶融し、亀裂部を覆うことで亀裂からの大気吸引を抑制するだけでなく、毛細管現象により耐火物の表面に発生した亀裂内に侵入して亀裂を閉塞することを特徴とする。なお、融液との濡れ性により、亀裂内部に浸透しない場合もあるが、亀裂の表面を覆うことで大気の侵入を阻止できるので、その場合も目的は達成できる。それにより、たとえ目地パッキンの設置不具合から大気が目地部等に存在しても、大気が亀裂内に侵入するのを防止できる。
【0026】
亀裂閉塞材13としては、このように軟化したり、溶融して亀裂部を閉塞するもので、ノズル用耐火物1が亀裂発生時に溶けて亀裂部を覆ったり、侵入して閉塞することが必要である。亀裂の発生する温度の200℃から1200℃、好ましくは300〜700℃で溶融する(実使用時にノズルの外周に亀裂が入るときに、ノズルの上端部および下端部の最外側の温度で溶融していることが必要)釉薬や、金属酸化物、セラミックスの塗布材をを使用できる。
【0027】
亀裂閉塞材13の粘度としては、上記のように溶ける温度で、0.01cP〜200P程度のものが適用できる。0.1cP以下では溶融した後の粘度が低すぎて流れ出してしまい、1000P以上では粘り過ぎて、亀裂部を覆ったり、亀裂部に侵入することが難しい。好ましくは、適宜の流動性のある2cP〜700P位が望ましい。
【0028】
また、亀裂閉塞材13は、主成分がAl23 、P23 、Na2 O、K2 Oの軟化点約400℃のリン酸ガラス粉末の釉薬や、SiO2 、Al23 、B23 、Na2 O、K2 O、ZnOの軟化点約500〜600℃の硼酸ガラス粉末の釉薬や、SiO2 、Al23 、P23 、Na2 O、K2 O等の金属酸化物、セラミックスの塗着材が適用できる。これらの釉薬等は、そのまま水やバインダーに分散させて用いてもよいし、ノズル表面への接着を強固にするために結合材、例えばデキストリン等を添加し使用してもよい。
【0029】
亀裂閉塞材13は、釉組成にもとづいて設定でき、たとえばゼーゲル式でのROの合量を1.0当量としてAl23 0.1〜0.2、P23 0.1〜0.2、Na2 O0.05〜0.2、K2 O0.1〜0.2としたり、SiO2 1.0〜2.5、Al23 0.1〜0.5、B23 0.1〜0.2、Na2 O0.1〜0.3、K2 O0.1〜0.3、ZnO0.1〜0.2等の所定配合の耐火性の軟化、溶融材とすることができる。
【0030】
亀裂閉塞材14の塗布個所としては、メタルケース14を被覆しているノズル用耐火物1ではノズルの上端面、および下端面、これらの外周面、メタルケース14を被覆していない場合はその露出している耐火物の外周面の全面にわたって塗布することができる。亀裂の入る位置を特定できる場合は、亀裂の入る位置に重点的に塗布することにより、亀裂閉塞材13の塗布する量を少なくできてコストメリットを享受できる。なお、亀裂が入る位置としては、予めノズル用耐火物1の外周部に切れ目や切欠部等をいれておくこともできる。
【0031】
また、亀裂閉塞材13の塗布厚みとしては、0.005mmの5μm〜3mmとすることができる。5μmより薄いと亀裂の幅を覆うには十分でなく、3mmより厚いと溶融時に溶け出して嵌合部に隙間を生じさせるので好ましくない。好ましくは、0.1〜0.5mmの厚さ、より望ましくは0.2mmの厚さで、亀裂部を閉塞しやすくできる。この亀裂閉塞材13の塗布方法としては、予めノズル用耐火物1を製造する工場において塗布してもよいし、現地で使用の直前に塗布してもよい。塗布の方法は、刷毛で塗ってもよいし、スプレーしてもよく、容易に均一に塗布できるものが好ましい。なお、加圧して上記した表面部に浸透しておくようにもできる。
【0032】
また、亀裂閉塞材13は、ノズル用耐火物1とメタルケースとの間に溜り部を設けて塗布したり、ノズル上部においては溶融液がノズル外へ流れ出さないように外部のメタルケースと耐火物との間や、メタルケース側、耐火物側、あるいはその両方に亀裂閉塞材13を留める円周状の溝等の溜り部を設けることもできる。さらに、パッキングに亀裂閉塞材13を染みこませておき、パッキングを耐火物の上記した表面に密着して設置するようにしてもよい。
【実施例】
【0033】
表1は、本発明の実施例とその比較例を示すもので、亀裂閉塞材13として300〜700℃で溶融するように主成分がAl23 、P23 、Na2 O、K2 Oの組成としたガラス粉末の釉薬を使用し、2cP〜700Pの粘性の液状に溶剤を混合して調整し、図2(a)、(b)のように取鍋用のメタルケース付きの中間ノズル4の上面と下面、メタルケース付きの下部ノズル5の上面と下面に表のように種々の厚さとして塗布し、塗布しない比較例のものとをA製鉄所で試験した。
【0034】
その結果、いずれもノズル用耐火物には亀裂が発生したが、図3のように本発明の実施例のものはいずれもノズル表面からの大気の侵入の形跡はなく、使用回数も延長され、本発明の目的は達成された。一方、図4のように従来の比較例のものでは、ノズル用耐火物の亀裂部にはノズル表面から大気が侵入して酸化している。なお、ノズルの表面に亀裂閉塞材13を被覆していると、その塗布厚みが0.06mmといった薄くてもかなりの効果を有するものであり、好ましくは0.1〜0.5mm位であると言える。
【0035】
本発明の実施例と比較例の比較表
【表1】



























【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の溶融金属ノズル用耐火物の構成説明用図、
【図2】同上のノズル用耐火物の中間ノズル(a)、と下部ノズル断面図(b)、
【図3】同上のノズル用耐火物の中間ノズルの亀裂状態断面図、
【図4】比較例のノズル用耐火物の中間ノズルの亀裂状態断面図。
【符号の説明】
【0037】
1…溶融金属ノズル用耐火物 10…ノズル内孔 11、12…亀裂
13…亀裂閉塞材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋やタンディッシュ等の溶融金属容器から溶融金属を流出する溶融金属ノズル用耐火物であって、
熱スポーリングによる亀裂部からの外気の空気をノズル内部に吸引するのを抑制するために、上記ノズル用耐火物の外周面部に使用の所定温度で軟化または溶融して亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を塗布したことを特徴とする溶融金属ノズル用耐火物。
【請求項2】
溶融金属のノズル用耐火物の上面または/および下面部に所定の温度で軟化または溶融して亀裂部に侵入し、または亀裂部を覆って亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を0.005〜3mmの厚さで塗布した請求項1に記載の溶融金属ノズル用耐火物。
【請求項3】
溶融金属のノズル用耐火物のノズル間、またはスライディングプレートとの接合面、およびこれらの外周面部に所定の温度で溶融して亀裂部に侵入し、または亀裂部を覆って亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を塗布した請求項1に記載の溶融金属ノズル用耐火物。
【請求項4】
取鍋やタンディッシュ等の溶融金属容器から溶融金属を流出する溶融金属ノズル用耐火物の亀裂部からの大気吸引防止方法であって、
上記ノズル用耐火物の外周面部に使用の所定温度で軟化または溶融して亀裂部を閉塞する亀裂閉塞材を0.005〜3mmの厚さ、好ましくは0.1〜0.5mmの厚さで塗布し、
ノズル用耐火物の外周面部に熱スポーリングによる亀裂が発生したときに上記外周面部に塗布した亀裂閉塞材が軟化または溶融して亀裂部を閉塞して外気の空気を耐火物の内部に吸引するのを抑制するようにしたことを特徴とする溶融金属ノズル用耐火物の亀裂部からの大気吸引防止方法。
【請求項5】
ノズル用耐火物の外周面部に亀裂閉塞材を0.1〜0.5mmの厚さで塗布した請求項1ないし3のいずれかに記載の溶融金属ノズル用耐火物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−23057(P2010−23057A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184819(P2008−184819)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000199821)JFE炉材株式会社 (42)
【Fターム(参考)】