説明

溶解システム及びそれによる溶解方法

【課題】透析用原液の追加生成をすべきか否かの判断を自動的且つ正確に行わせることができるとともに、透析治療終了時点で大量の透析用原液が余ってしまうという不具合を回避することができ、且つ、貯槽内における透析用原液の減少割合を精度よく求めて、供給すべき透析用原液が不足するか否かの判定の信頼性をより向上させることができる溶解システム及びそれによる溶解方法を提供する。
【解決手段】貯槽7内の透析用原液の残量を連続的且つリアルタイムで検出し得るリニアセンサ8と、検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて透析装置4による透析液の消費速度を求め、貯槽7内の透析用原液の減少割合を演算する演算手段10と、透析用原液の減少割合に基づき貯槽7内の透析用原液が空となるまでの時間の推定、供給すべき透析用原液が不足するか否かの判定を行う判定手段11とを具備したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析用粉末薬剤を所定濃度に溶解して透析用原液を得るための溶解装置を具備した溶解システム及びそれによる溶解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等で腎不全患者の治療に使用される透析液は、一般に重炭酸塩系と酢酸系とに区分され、このうち重炭酸塩系の透析液は、重炭酸ナトリウムを含まないもの(以下、A剤という。)と重炭酸ナトリウム(以下、B剤という。)の2種類の薬剤に水を混合して調整されるものである。近年、運搬性向上の観点から、これらA剤及びB剤を粉末化したもの(以下、透析用粉末薬剤という。)を透析の前に溶解する試みがなされているが、溶解後の溶液(特にB剤)については経時的に濃度の低下が生じやすく、透析後に翌日の分を作り置きしておくことが難しかった。
【0003】
このため、透析毎に溶解作業が必要となり、従来から溶解のための溶解装置が各種提案されている。例えば特許文献1には、透析用粉末薬剤を溶解する溶解槽(希釈タンク)と、該溶解槽にて生成した透析用原液を一時的に収容する貯槽(貯蔵タンク)とを具備し、当該貯槽で収容された透析用原液を人工透析液供給装置に逐次送液する溶解装置が開示されている。
【特許文献1】特開昭57−159529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の溶解装置を具備した溶解システムにおいては、以下の如き問題があった。
病院等医療機関における溶解装置で溶解生成する透析用原液は、極めて多量であるとともに患者数が一定でない故使用量が日毎に変動し、且つ、原液組成の時間的変化を回避する理由から、通常、複数回に分けて生成される。即ち、貯槽内の透析用原液が少なくなった時点で追加の透析用原液を溶解槽で生成し、当該透析用原液が不足する事態を回避しているのである。
【0005】
然るに、通常の病院等医療機関においては、複数の透析装置が設置された透析室と透析用原液を生成する溶解装置(該溶解装置にて生成された透析用原液(A剤及びB剤)を混合して所定濃度の透析液を作製する透析液供給装置など含む)が設置された機械室とは別個とされており、貯槽内の透析用原液が少なくなっているか否かを判断するには、透析技士等医療従事者が透析室と機械室との両方を頻繁に監視しなければならないという問題があった。
【0006】
また、医療従事者が貯槽内の透析用原液の量を目視して、追加の生成を必要とするか否かの判断がなされるのであるが、各患者の透析治療時間が3〜5時間位の範囲で異なるため、これから使用するであろう透析用原液を予測するのは極めて困難である。従って、透析用原液の不足による透析治療の中断を避けるべく、透析治療終了間際において追加生成が不要であろうと思われる場合であっても、念のために追加生成せざるを得ず、大量の透析用原液が余ってしまう可能性が高いという問題もあった。
【0007】
ところで、本出願人は、貯槽内の透析用原液の減少割合を求め、当該減少割合に基づき貯槽内の透析用原液が空となるまでの時間を推定するとともに、供給すべき透析用原液が不足するか否かを判定することにより、大量の透析用原液が余ってしまうのを回避することを検討するに至った。しかしながら、所謂多人数用の溶解システムに適用した場合、透析液供給装置を介在することから、貯槽内における透析用原液の減少割合をスムーズに求めることができない場合があった。
【0008】
透析液供給装置は、溶解装置と透析装置との間に介在するとともに、溶解装置にて生成された透析用原液(A剤及びB剤)を混合して所定濃度の透析液を作製し、その透析液を透析装置に供給するためのものであり、通常、透析液の収容量が下限に達すると上限の収容量となるまで溶解装置から透析用原液が供給され、当該上限の収容量に達した時点で当該透析用原液の供給が停止される透析液貯槽を具備している。
【0009】
しかして、溶解装置の貯槽内においては、透析用原液の残量が経時的に減少する減少期間(貯槽から透析液貯槽に透析用原液が供給される期間)と、当該残量が経時的に減少せず停滞した停滞期間(貯槽から透析液貯槽への透析用原液の供給が停止した期間)とが存在し、経時的に見て残量が略階段状に変化することから、貯槽内における透析用原液の減少割合を精度よく求めることができず、供給すべき透析用原液が不足するか否かの判定の信頼性を維持することができない虞がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、透析用原液の追加生成をすべきか否かの判断を自動的且つ正確に行わせることができるとともに、当該透析用原液が不足する事態を避けつつ透析治療終了時点で大量の透析用原液が余ってしまうという不具合を回避することができ、且つ、貯槽内における透析用原液の減少割合を精度よく求めて、供給すべき透析用原液が不足するか否かの判定の信頼性をより向上させることができる溶解システム及びそれによる溶解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、所定量の透析用粉末薬剤及び水が投入され、当該透析用粉末薬剤を溶解及び攪拌して透析用原液を得る溶解槽と、前記溶解槽で得られた透析用原液を一時的に収容する貯槽と、該貯槽内に収容された透析用原液を、患者に透析治療を施すための複数の透析装置側に供給する原液供給ラインとを有した溶解装置と、前記原液供給ラインと連通して当該原液供給ラインから送液された透析用原液と所定量の水とを混合して作製された所定濃度の透析液を収容しつつ前記透析装置に供給するとともに、当該透析液の収容量が下限に達すると上限の収容量となるまで前記原液供給ラインから透析用原液が供給され、当該上限の収容量に達した時点で当該透析用原液の供給が停止される透析液貯槽を有した透析液供給装置とを具備した溶解システムであって、前記溶解装置は、前記貯槽内の透析用原液の残量を連続的且つリアルタイムで検出し得る原液量検出手段と、前記原液量検出手段にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて前記透析装置による透析液の消費速度を求め、その消費速度から前記貯槽内の透析用原液の減少割合を演算する演算手段と、該演算手段で演算された透析用原液の減少割合に基づき前記貯槽内の透析用原液が空となるまでの時間を推定するとともに、供給すべき透析用原液が不足するか否かを判定する判定手段とを具備したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の溶解システムにおいて、前記演算手段は、前記原液量検出手段にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて前記透析液貯槽の透析液の収容量が上限から下限に達するまでの時間を推定し、その推定時間に基づき前記透析装置による透析液の消費速度を演算することを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の溶解システムにおいて、前記演算手段は、前記原液量検出手段にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて前記透析液貯槽の透析液の収容量が下限から上限に達するまでの時間を推定し、その推定時間に基づき前記透析装置による透析液の消費速度を演算することを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の溶解システムにおいて、前記経時的推移の変化点は、透析用原液の残量が経時的に減少する減少期間と、当該残量が経時的に減少せず停滞した停滞期間との境界点であることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の溶解システムにおいて、前記経時的推移の変化点は、透析用原液の残量が経時的に所定割合で減少する第1減少期間と、該第1減少期間と異なる割合で残量が経時的に減少する第2減少期間との境界点であることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、所定量の透析用粉末薬剤及び水が投入され、当該透析用粉末薬剤を溶解及び攪拌して透析用原液を得る溶解槽と、前記溶解槽で得られた透析用原液を一時的に収容する貯槽と、該貯槽内に収容された透析用原液を、患者に透析治療を施すための複数の透析装置側に供給する原液供給ラインとを有した溶解装置と、前記原液供給ラインと連通して当該原液供給ラインから送液された透析用原液と所定量の水とを混合して作製された所定濃度の透析液を収容しつつ前記透析装置に供給するとともに、当該透析液の収容量が下限に達すると上限の収容量となるまで前記原液供給ラインから透析用原液が供給され、当該上限の収容量に達した時点で当該透析用原液の供給が停止される透析液貯槽を有した透析液供給装置とを具備した溶解システムによる溶解方法であって、前記貯槽内の透析用原液の残量を連続的且つリアルタイムで検出し得る原液量検出工程と、前記原液量検出工程にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて前記透析装置による透析液の消費速度を求め、その消費速度から前記貯槽内の透析用原液の減少割合を演算する演算工程と、該演算工程で演算された透析用原液の減少割合に基づき前記貯槽内の透析用原液が空となるまでの時間を推定するとともに、供給すべき透析用原液が不足するか否かを判定する判定工程とを具備したことを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の溶解システムによる溶解方法において、前記演算工程は、前記原液量検出工程にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて前記透析液貯槽の透析液の収容量が上限から下限に達するまでの時間を推定し、その推定時間に基づき前記透析装置による透析液の消費速度を演算することを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の溶解システムによる溶解方法において、前記演算工程は、前記原液量検出工程にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて前記透析液貯槽の透析液の収容量が下限から上限に達するまでの時間を推定し、その推定時間に基づき前記透析装置による透析液の消費速度を演算することを特徴とする。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求項6〜請求項8の何れか1つに記載の溶解システムによる溶解方法において、前記経時的推移の変化点は、透析用原液の残量が経時的に減少する減少期間と、当該残量が経時的に減少せず停滞した停滞期間との境界点であることを特徴とする。
【0020】
請求項10記載の発明は、請求項6〜請求項8の何れか1つに記載の溶解システムによる溶解方法において、前記経時的推移の変化点は、透析用原液の残量が経時的に所定割合で減少する第1減少期間と、該第1減少期間と異なる割合で残量が経時的に減少する第2減少期間との境界点であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1又は請求項6の発明によれば、透析用原液の減少割合に基づき、貯槽内の透析用原液が空となるまでの時間を演算して推定し、供給すべき透析用原液が不足するか否かを判定するので、透析用原液の追加生成をすべきか否かの判断を自動的且つ正確に行わせることができるとともに、当該透析用原液が不足する事態を避けつつ透析治療終了時点で大量の透析用原液が余ってしまうという不具合を回避することができる。
【0022】
更に、当該請求項1、6(請求項2、7、又は請求項3、8も同様)によれば、貯槽内における透析用原液の残量の経時的推移の変化点に基づいて透析装置による透析液の消費速度を演算するとともに、その透析液の消費速度から貯槽内の透析用原液の減少割合を算出するので、貯槽内における透析用原液の減少割合を精度よく求めて、供給すべき透析用原液が不足するか否かの判定の信頼性をより向上させることができる。
【0023】
請求項4又は請求項9の発明によれば、経時的推移の変化点は、透析用原液の残量が経時的に減少する減少期間と、当該残量が経時的に減少せず停滞した停滞期間との境界点であり、その変化点に基づいて透析装置による透析液の消費速度を演算するとともに、その透析液の消費速度から貯槽内の透析用原液の減少割合を算出するので、当該変化点を容易に把握でき、透析装置による透析液の消費速度、貯槽内の透析用原液の減少割合をより精度よく求めることができる。
【0024】
請求項5又は請求項10の発明によれば、経時的推移の変化点は、透析用原液の残量が経時的に所定割合で減少する第1減少期間と、該第1減少期間と異なる割合で残量が経時的に減少する第2減少期間との境界点であるので、透析液供給装置を介さず溶解装置から透析用原液が供給され、その透析用原液から所定濃度の透析液を作製しつつ透析治療が施される患者に供給し得る個人用透析装置を具備した溶解システムにも適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る溶解システムは、透析用粉末薬剤を所定濃度に溶解して透析用原液を得るためのもので、図1に示すように、機械室に設置された溶解装置1及び透析液供給装置2と、機械室とは隔離された透析室に設置された複数の透析装置4(透析監視装置)及び中央監視装置3とから主に構成されている。
【0026】
溶解装置1で生成された透析用原液(A剤、B剤の各濃厚液)は、原液供給ラインL1(図3におけるL1a、L1b)を介して透析液供給装置2に至り、そこで所定濃度の透析液が作製されるとともに、かかる透析液は、透析液供給ラインL2〜L4を介して各透析装置4(透析監視装置)に供給されるよう構成されている。尚、各透析装置4と中央監視装置3とは、それぞれ配線D1〜D3にて電気的に接続されている。
【0027】
溶解装置1は、図2に示すように、定量粉体フィーダ5と、溶解槽6と、貯槽7と、レベルセンサ8(原液量検出手段)と、演算手段10と、判定手段11と、入力手段12とから主に構成されている。尚、図示はしないが、同図と同様な構成の溶解装置が別個に配設されており、それぞれが透析用粉末薬剤としてのA剤、B剤を溶解撹拌して、各透析用原液を生成し得るようになっている。
【0028】
定量粉体フィーダ5は、所定量の透析用粉体薬剤(A剤又はB剤)を溶解槽6内に投入するためのもので、その駆動源が判定手段11と電気的に接続され、当該判定手段11からの制御信号に基づき、所定量の透析用粉体薬剤を溶解槽6内に投入し得るよう構成されている。また、溶解槽6は、水供給源Aと水供給ラインL5を介して接続されており、当該水供給ラインL5に配設された電磁バルブVwを開放することにより、溶解槽6内に溶解用の水が供給されるよう構成されている。
【0029】
溶解槽6は、上述の定量粉体フィーダ5及び水供給源Aから所定量の透析用粉体薬剤及び水が投入され、当該透析用粉末薬剤を溶解及び撹拌して透析用原液(各薬剤の濃厚液)を得るためのもので、内部の収容空間における所定位置にフロートスイッチ9が配設されている。即ち、溶解槽6内に溶解用の水が供給され、その水位がフロートスイッチ9に達した時点で当該水の供給を停止することにより、一定量の水が当該溶解槽6内に収容され得るようになっているのである。尚、図示しない撹拌手段等により、供給された水と透析用粉末薬剤とを撹拌して略均等な濃度の透析用原液を得るようにする。
【0030】
また、溶解槽6の下底からは移送ラインL6が延設されており、その途中に移送ポンプP1が配設されるとともに、当該移送ラインL6の先端が貯槽7に接続されている。これにより、移送ポンプP1を駆動させれば、溶解槽6にて得られた透析用原液が貯槽7内に至るようになっている。
【0031】
貯槽7は、溶解槽6で得られた透析用原液を一時的に収容するためのもので、ここから透析用原液が後述する透析液供給装置2(複数の透析装置4側)に必要量だけ順次供給されるよう構成されている。この貯槽7の下底からは、原液供給ラインL1(厳密には、2つの貯槽から延びる原液供給ラインL1a、L1b)が延設されており、その先端が透析液供給装置2に接続されている。即ち、貯槽7内の透析用原液は、透析液供給装置2に送られて所定濃度の透析液とされた後、各透析装置4に供給されるよう構成されているのである。
【0032】
一方、貯槽7の下面には、圧力ゲージ等から成るレベルセンサ8(原液量検出手段)が配設されており、かかるレベルセンサ8にて貯槽7内の透析用原液の残量を連続的且つリアルタイムで検出し得るよう構成されている。レベルセンサ8としての圧力ゲージは、貯槽7底面に付与される圧力から換算して当該貯槽7内における透析用原液の液圧を経時的に検出し得るもので、その検出された液圧に基づき透析用原液の量(残液の量)を連続的且つリアルタイムに検出することができる。
【0033】
尚、貯槽7内の液位(又は透析用原液の残量そのものであってもよい)を連続的且つリアルタイムに検出することにより、その液位の低下割合(透析用原液の減少割合)を検出し得るものであれば、圧力ゲージに代えて他の検出手段(超音波液面センサ若しくは磁歪式リニア変位センサ等)としてもよい。
【0034】
かかる原液量検出手段としてのレベルセンサ8は、演算手段10と電気的に接続されている。この演算手段10は、レベルセンサ8にて連続的且つリアルタイムで検出された残量及び後述する透析液の消費速度に基づき、貯槽7内における透析用原液の減少割合を演算するものである。即ち、貯槽7内の透析用原液の液位を連続的且つリアルタイムに検出することにより、当該液位の低下割合(透析用原液の減少割合)を求めることができ、その減少割合に基づき透析用原液の消費速度を認識することができるのである。更に具体的な演算方法については後述する。
【0035】
透析液供給装置2は、図3に示すように、水が流動するとともにその水量を計測する水計量手段13が配設された水供給ラインLwと、定量ポンプPa(ピストンポンプ)が接続されるとともにA剤を溶解して得られた透析用原液を流動させる原液ラインL1aと、定量ポンプPb(ピストンポンプ)が接続されるとともにB剤を溶解して得られた透析用原液を流動させる原液ラインL1bと、透析液貯槽14と、送液ポンプP2とを主に有して構成されている。水供給ラインLwにおける水は、水計量手段13を経た後、原液ラインL1a及びL1bからの透析用原液を混合し、所定濃度の透析液を作製した後、その透析液が透析液貯槽14内に至ることとなる。尚、同図において作製した透析液の濃度を測定する濃度測定部や透析液を加温する加温部などは省略してある。
【0036】
透析液貯槽14は、原液供給ラインL1a及びL1bと連通して当該原液供給ラインL1a及びL1bから送液された透析用原液と水供給ラインLwから送液された所定量の水とを混合して作製された所定濃度の透析液を収容しつつ透析液供給ラインL2〜L4を介して各透析装置4に供給するためのものである。かかる透析液貯槽14には、フロートスイッチSH、及びフロートスイッチSLが配設されており、当該透析液貯槽14内の透析液の液位が上限又は下限に達したことを検出することが可能とされている。
【0037】
しかして、透析液供給装置2は、フロートスイッチSLによる液位の検出により、その透析液貯槽14内に収容された透析液の収容量が下限に達したと判断すると、定量ポンプPa、Pbが駆動して原液供給ライン(L1a、L1b)からの透析用原液の供給、水計量手段13からの水の供給、透析液の作製及び透析液貯槽14内への収容がなされるようになっている。そして、フロートスイッチSHによる液位の検出により、透析液貯槽14内の透析液の収容量が上限に達したと判断された時点で、定量ポンプPa、Pbの駆動を停止させ、透析用原液の供給を停止する。
【0038】
即ち、透析液貯槽14内の透析液の収容量が上限から下限の間にあるときは、原液供給ライン(L1a、L1b)からの透析用原液の供給及び水の供給が停止されるとともに、当該下限に達した時点で原液供給ライン(L1a、L1b)からの透析用原液の供給及び水の供給が開始されるよう構成されているのである。このように、原液供給ライン(L1a、L1b)からの透析用原液の供給は、断続的に行われることとなる。
【0039】
然るに、透析液が透析液貯槽14を経由することにより、透析液から発生したガス等を分離除去し得るよう構成されており、ガス等が分離除去された透析液は、送液ポンプP2の駆動により透析液供給ラインL2〜L4を介して各透析装置4に供給される。こうして、各透析装置4に供給された透析液により、患者に対して透析治療が施されることとなる。また、各透析装置4と中央監視装置3との間では、透析治療に関わるデータ(治療条件や治療時間等)が送受信されており、最適且つ安全な治療が行われるよう構成されている。
【0040】
ここで、原液供給ライン(L1a、L1b)からの透析用原液の供給が断続的に行われるため、溶解装置6における貯槽7内の透析用原液の残量は、図4の如く経時的に略階段状(即ち、供給が間欠的)に推移することとなる。具体的には、溶解装置1の貯槽7内においては、透析用原液の残量が経時的に減少する減少期間T2(貯槽7から透析液貯槽14に透析用原液が供給される期間)と、当該残量が経時的に減少せず停滞した停滞期間T1(貯槽7から透析液貯槽14への透析用原液の供給が停止した期間)とが存在し、経時的に見て残量が略階段状に変化するのである。
【0041】
本実施形態に係る演算手段10は、レベルセンサ8(原液量検出手段)にて検出された残量の経時的推移の変化点(B1〜B6…)に基づいて透析装置4による透析液の消費速度を求め、その消費速度から貯槽7内の透析用原液の減少割合を演算し得るものである。具体的には、演算手段10は、図4で示す如き残量の経時的推移から、例えば差分演算や微分演算等の手法により傾きの変化点(即ち、残量の経時的推移の変化点(B1〜B6…))を把握することにより、停滞期間T1と減少期間T2とを判別可能とされているのである。
【0042】
このように判別された停滞期間T1は、既述したように、貯槽7から透析液貯槽14に透析用原液が供給されないものの当該透析液貯槽14からは透析装置4に透析液が供給されることにより、透析液貯槽14における透析液の収容量が上限から下限に至るまでの時間であり、且つ、当該上限から下限に至るまでの透析液の量は透析液貯槽14の容量の大きさにより一義的に決まり既知(これを便宜上「収容量C」という)であることから、透析液の消費速度は、C/T1(即ち、既知の収容量C÷停滞期間T1)なる演算式により求められる。
【0043】
更に、演算手段10は、上記の如く求められた透析液の消費速度から貯槽7内の透析用原液の減少割合(液位の低下割合)を演算し、その求められた減少割合をデータとして判定手段11に送信する。判定手段11は、演算手段10で演算された透析用原液の減少割合に基づき貯槽7内の透析用原液が空(残液が略0)となるまでの時間を推定するとともに、供給すべき透析用原液が不足するか否かを判定するためのものである。
【0044】
この判定手段11には、入力手段12が電気的に接続されており、かかる入力手段12により透析装置4による透析治療が全て終了する時刻(その日の全患者の透析治療が終了する予定時刻)を入力し得るよう構成されている。尚、入力手段12は、演算手段10とも電気的に接続されており、透析液貯槽14における透析液の収容量が上限から下限に至るまでの透析液の既知量(収容量C)を入力し得るようにもなっている。
【0045】
しかして、判定手段11は、貯槽7内の透析用原液が空となる推定された時間(不足時間)と透析装置4による透析治療が全て終了する時刻(透析終了時刻)とを比較し、不足時間が経過した時刻が透析終了時刻を経過しているか否かを判定すれば、透析用原液が不足するか否かが判定できるのである。具体的には、不足時間経過後の時刻が透析終了時刻を超えていなければ、追加の透析用原液は不要とされる一方、超えていれば不足すると判定されて追加の透析用原液が必要と判断される。
【0046】
尚、入力手段12にてその日の患者数など他のデータを入力し得るよう構成してもよく、その入力されたデータを参照して判定手段11による透析用原液の不足の判定を行わせるようにしてもよい。また、演算手段10、判定手段11及び入力手段12を中央監視装置3内に具備させれば、通常透析室にいる透析技士等医療従事者が機械室に行かなくても入力手段12による入力等が可能となる。
【0047】
判定手段11と定量粉体フィーダ5及び電磁バルブVwとは電気的に接続されており、当該判定手段11により供給すべき透析用原液が不足すると判定されると、所定の制御信号が定量粉体フィーダ5及び電磁バルブVwの駆動源に送信されるよう構成されている。これにより、前記判定手段により供給すべき透析用原液が不足すると判定されたことを条件として、溶解槽6に所定量の透析用粉末薬剤及び水を自動的に投入して追加の透析用原液を得ることができる。
【0048】
ここで、溶解槽6で追加の透析用原液を得るためには、水及び透析用粉末薬剤の投入、及び溶解、撹拌動作のために所定時間を要する。そのため、本実施形態においては、溶解槽6で追加の透析用原液を得るのに必要な時間を予め測定しておき、その必要な時間を勘案したタイミングにて溶解槽6に所定量の透析用粉末薬剤及び水を自動的に投入するよう制御されることとなる。
【0049】
次に、本実施形態に係る溶解装置における作用について説明する。
まず、予め入力手段12にて、透析液貯槽14における透析液の収容量が上限から下限に至るまでの透析液の既知量(収容量C)、及び透析装置4による透析治療が全て終了する時刻(透析終了時刻)等を入力しておく。そして、電磁バルブVwを開放して、フロートスイッチ9が液位を検知するまで溶解槽6内に水を投入するとともに、定量粉体フィーダ5から所定量の透析用粉末薬剤を投入し、当該透析用粉体薬剤を溶解及び撹拌して透析用原液を得る。通常、本実施形態の如き溶解装置においては、溶解可能な容量はフロートスイッチ9で決まる水量に相当する量だけであり、1袋分の透析用粉体薬剤から生成される透析用原液量(例えばB原液の場合は、11.34L、A原液の場合は、9L)が得られるよう設定されている。
【0050】
その後、移送ポンプP1を駆動させて、溶解槽6内の透析用原液の全量を貯槽7に移送させておく。しかして、透析治療が開始されると、原液供給ラインL1を介して透析液供給装置2に透析用原液が供給され、そこで所定濃度の透析液が作製されるとともに、当該作製された透析液が透析液貯槽14に収容されつつ各透析装置4に供給されて患者に対する透析治療が施されることとなる。上記の如き溶解装置1による透析用原液の供給の過程において、貯槽7内の透析用原液の残量(液位)をレベルセンサ8にて連続的且つリアルタイムで検出し(原液量検出工程)、その検出値を演算手段10に送信する。
【0051】
そして、演算手段10は、レベルセンサ8にて検出された透析用原液の残量に基づき、原液量検出工程にて検出された残量の経時的推移の変化点(B1〜B6…)を判別し、停滞期間T1を把握することにより、C/T1なる演算式(収容量Cは既述のように入力されている)にて透析液の消費速度を求め、その消費速度から貯槽7内の透析用原液の減少割合を演算する(演算工程)。
【0052】
演算工程にて求められた減少割合は、判定手段11に送信され、当該減少割合から貯槽7内の透析用原液が空となるまでの時間を演算して推定するとともに、その推定した時間と入力手段12にて入力された透析終了時刻とを比較し、供給すべき透析用原液が不足するか否かが判定される(判定工程)。かかる判定手段11による追加の要否判定は、本実施形態においては、例えば追加の透析用原液を得るのに必要な時間を予め測定しておき、その必要な時間間際まで溶解作業を行うのを待ち、その後、溶解作業を行わせるよう構成されている。
【0053】
判定工程にて透析用原液が不足すると判定された場合、制御信号が定量粉体フィーダ5及び電磁バルブVwの駆動源に送信され、溶解槽6に所定量の透析用粉末薬剤及び水を自動的に投入して追加の透析用原液を得る。但し、上述したように、当該制御信号は、追加の透析用原液を得るのに必要な時間間際まで待ち、その後送信されることとなる。
【0054】
以上のように、本実施形態において適用される溶解システムは、透析液供給装置2を有した多人数用(単独の透析液供給装置から複数の透析装置にそれぞれ作製した透析液を送液するもの)であるため、通常、透析液調整は間欠に行われ、貯槽7内の透析用原液も間欠に残量が変化することとなるが、このような場合でも、間欠に変化する透析用原液の残量から透析液の消費速度を求め、透析液用原液の減少割合を正確に求めることができる。
【0055】
また、透析治療終了に近づくに伴い、透析治療が施される患者数が順次減るので、透析用原液の減少割合も減ることとなる。従って、透析治療が行われる時間帯の遅い段階(最終段階)で判定手段11による追加の要否の判定を行うようにするのが好ましい。即ち、既述の如く1回の溶解で得られる透析用原液量は、A原液の場合において9Lであるので、1日に実際に使用されるA原液量が仮に200Lだとすると、198Lの透析用原液が作製される22回の溶解動作まで(所定時間経過まで)は判定手段11による判定を行わず、透析終了時刻間際となった時点で当該時刻を基準として追加の要否の判定するようにしてもよい。尚、実施に使用される透析用原液量(200L)を正確に把握するのは困難であるが、例えばおおまかに15袋(9L×15袋=135L)の原液を作製するまでは溶解動作を続け、それ以降は透析終了時刻を基準として追加の要否判定を行いながら溶解を続行させるようにしてもよい。
【0056】
また更に、溶解槽6内に透析用原液が残存している場合、追加の透析用原液を更に生成する必要がないため、判定手段11による追加の要否の判定は、当該溶解槽6内に透析用原液が残存していない場合に限るのが好ましい。
【0057】
本実施形態によれば、透析用原液の減少割合に基づき、貯槽7内の透析用原液が空となるまでの時間を演算して推定し、供給すべき透析用原液が不足するか否かを判定するので、透析用原液の追加生成をすべきか否かの判断を自動的且つ正確に行わせることができるとともに、当該透析用原液が不足する事態を避けつつ透析治療終了時点で大量の透析用原液が余ってしまうという不具合を回避することができる。
【0058】
また、貯槽7内における透析用原液の残量の経時的推移の変化点(B1〜B6…)に基づいて透析装置4による透析液の消費速度を演算するとともに、その透析液の消費速度から貯槽7内の透析用原液の減少割合を算出するので、貯槽7内における透析用原液の減少割合を精度よく求めて、供給すべき透析用原液が不足するか否かの判定の信頼性をより向上させることができる。
【0059】
尚、判定手段11又は判定工程により供給すべき透析用原液が不足すると判定されたことを条件として、溶解槽6に所定量の透析用粉末薬剤及び水を自動的に投入して追加の透析用原液を得るので、透析技士等医療従事者の負担を軽減し、作業性をより向上させることができる。更に、判定手段11又は判定工程が、貯槽7内の透析用原液が空となる推定された時間と透析装置4による透析治療が全て終了する時刻とを比較し、透析用原液が不足するか否かを判定するので、より精度よく、透析用原液の追加生成をすべきか否かの判断を自動的に行わせることができる。
【0060】
また更に、経時的推移の変化点は、透析用原液の残量が経時的に減少する減少期間T2と、当該残量が経時的に減少せず停滞した停滞期間T1との境界点(B1〜B6…)であるので、例えば何れも経時的に減少する期間の境界点を変化点とする場合に比べ、当該変化点を容易且つ正確に把握することができる。従って、その正確に把握された変化点に基づいて透析装置による透析液の消費速度を演算するとともに、その透析液の消費速度から貯槽7内の透析用原液の減少割合を算出するので、透析装置4による透析液の消費速度、貯槽内の透析用原液の減少割合をより精度よく求めることができる。
【0061】
特に、本実施形態においては、上述の如く溶解槽6の容量が比較的小さい(B原液の場合は、11.34L、A原液の場合は、9L)ため、1回の溶解に要する時間が短くなっている。このため、追加の透析用原液を得るのに必要な時間を勘案したタイミングを遅らせることができ、判定精度をより向上させることができるとともに、1回の溶解量が少ない故、透析用原液の無駄を更に減らすことができる。尚、本実施形態によれば、透析用原液の使用量を正確に求めなくても、予想される使用量より少なめに溶解するよう動作させ、不足が生じた際に自動的に追加溶解できる。
【0062】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る溶解システムは、第1の実施形態と同様、機械室に設置された溶解装置1及び透析液供給装置2と、機械室とは隔離された透析室に設置された複数の透析装置4(透析監視装置)及び中央監視装置3とから主に構成(図1参照)されたものであり、その溶解装置1は、図5に示すように、溶解槽6と、貯槽7と、レベルセンサ8(原液量検出手段)と、演算手段10と、判定手段11と、入力手段12と、報知手段16とから主に構成されている。
【0063】
溶解槽6は、内部の収容空間の一部にフロートシャフトとフロートから成るフロート式センサ15が配設されており、電磁バルブVwを開放することにより供給される水の水位を検出し得るようになっている。また、本実施形態に係る溶解槽6は、第1の実施形態の定量粉体フィーダの如き自動的に透析用粉末薬剤を投入する手段を具備しておらず、ボトルや袋などに収容された透析用粉末薬剤を手作業で投入するものである。
【0064】
報知手段16は、判定手段11により供給すべき透析用原液が不足すると判定されたことを条件として、溶解槽6にて追加の透析用原液が必要である旨の報知を行うものである。報知手段16は、例えば画面などの表示手段にて追加の透析用原液が必要である旨のメッセージを表示したり、或いはLED等による点灯又は点滅を行って報知を行うものであってもよい。また、別個にスピーカ等を設け、当該スピーカから警告音を発するよう構成してもよい。尚、報知手段16は、機械室或いは透析室の何れに設置してもよいが、透析室に設置すれば、通常透析室にいる透析技士等医療従事者に対して確実に注意を促すことができる。
【0065】
次に、本実施形態に係る溶解装置における作用について説明する。
まず、予め入力手段12にて、透析液貯槽14における透析液の収容量が上限から下限に至るまでの透析液の既知量(収容量C)、及び透析装置4による透析治療が全て終了する時刻(透析終了時刻)を入力しておく。そして、手動操作で電磁バルブVwを開放して、フロートスイッチ15が所望の液位を検知するまで溶解槽6内に水を投入するとともに、手作業にて所定量の透析用粉末薬剤を投入し、当該透析用粉体薬剤を溶解及び撹拌して透析用原液を得る。
【0066】
通常、本実施形態の如き溶解装置においては、透析技士等医療従事者が頻繁に機械室に行かなければならなくなるのを回避すべく溶解槽6の容量は比較的大きく(通常、100〜200L)設定される一方、装置全体の大型化を避けるべく貯槽7は比較的小さく(通常、50L程度)設定されている。
【0067】
その後、移送ポンプP1を駆動させて、溶解槽6内の透析用原液の全量を貯槽7に移送させておく。しかして、透析治療が開始されると、原液供給ラインL1を介して透析液供給装置2に透析用原液が供給され、そこで所定濃度の透析液が作製されるとともに、当該作製された透析液が各透析装置4に供給されて患者に対する透析治療が施されることとなる。
【0068】
上記の如き溶解装置1による透析用原液の供給の過程において、第1の実施形態と同様、レベルセンサ8による原液量検出工程、演算手段10による演算工程、及び判定手段11による判定工程が行われる。そして、判定工程にて透析用原液が不足すると判定された場合、報知手段16により所定の報知がなされ、これに従い、透析技士等医療従事者が手動操作で電磁バルブVwを開放させ、所望量の水を供給するとともに、手作業にて溶解槽6に所定量の透析用粉末薬剤を投入して追加の透析用原液を得る。
【0069】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様、透析用原液の減少割合に基づき、貯槽7内の透析用原液が空となるまでの時間を演算して推定し、供給すべき透析用原液が不足するか否かを判定するので、透析用原液の追加生成をすべきか否かの判断を自動的且つ正確に行わせることができるとともに、当該透析用原液が不足する事態を避けつつ透析治療終了時点で大量の透析用原液が余ってしまうという不具合を回避することができる。
【0070】
更に、貯槽7内における透析用原液の残量の経時的推移の変化点(B1〜B6…)に基づいて透析装置4による透析液の消費速度を演算するとともに、その透析液の消費速度から貯槽7内の透析用原液の減少割合を算出するので、貯槽7内における透析用原液の減少割合を精度よく求めて、供給すべき透析用原液が不足するか否かの判定の信頼性をより向上させることができる。即ち、間欠に変化する透析用原液の残量から透析液の消費速度を求め、透析液用原液の減少割合を正確に求めることができるのである。
【0071】
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。
本実施形態に係る溶解システムは、先の実施形態と同様、機械室に設置された溶解装置1及び透析液供給装置2と、機械室とは隔離された透析室に設置された複数の透析装置4(透析監視装置)及び中央監視装置3とから主に構成(図1参照)されたものであり、その溶解装置1は、図6に示すように、溶解槽17と、貯槽18と、レベルセンサ19(原液量検出手段)と、演算手段10と、判定手段11と、入力手段12とから主に構成されている。
【0072】
尚、先の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付すこととし、その詳細な説明を省略することとする。また、先の実施形態と同様、図5と同様な構成の溶解装置が別個に配設されており、それぞれが透析用粉末薬剤としてのA剤、B剤を溶解撹拌して、各透析用原液を生成し得るようになっているとともに、図1で示すように、各溶解装置から透析液供給装置2に透析用原液が供給されるようになっている。
【0073】
溶解槽17は、内部の収容空間の一部にフロートスイッチSH(上限検知用)、SL(下限検知用)を有しており、電磁バルブVwを開放することにより供給される水の水位を所定とするよう構成されている。溶解槽17と貯槽18とは上下に併設されており、両者は電磁バルブVが接続された移送ラインL8にて連結されている。即ち、電磁バルブVを開放すれば、溶解槽17内の透析用原液が重力にて貯槽18内に送液されるようになっている。
【0074】
また、移送ラインL8の途中と溶解槽17の上部とは循環ラインL7にて接続されており、該循環ラインL7の途中に循環ポンプP3が接続されるとともに、透析用粉末薬剤を収容したボトルBが接続され得るようになっている。これにより、電磁バルブVを閉塞した状態にて循環ポンプP3を駆動させれば、溶解槽17内の水が循環ラインL7及びボトルB内を循環することとなり、溶解及び攪拌がなされて均一濃度の透析用原液を得ることができる。尚、ボトルBは、追加の溶解が必要とされると、空のものから新たな透析用粉末薬剤を収容したものに自動的に交換されるよう構成されている。
【0075】
また、本実施形態に係る判定手段11は、電磁バルブVw及び循環ポンプP3の駆動源と電気的に接続されており、当該判定手段11により供給すべき透析用原液が不足すると判定されると、電磁バルブVwを開放して溶解槽17内に水を自動的に供給するとともに、循環ポンプP3を駆動させて水を循環ラインL7及びボトルB内で循環させ、当該ボトルB内の透析用粉末薬剤を攪拌しつつ溶解し得るよう構成されている。
【0076】
然るに、図6中、符号L9は、溶解槽17及び貯槽18の上部から延設された通気ラインを示しており、電磁バルブVを開放して溶解槽17内の透析用原液が貯槽18内に移送される過程で、貯槽18内に存在していた空気を排出するとともに、溶解槽17で透析用原液が減少した分だけ当該溶解槽17内に空気を導入し得るようになっている。
【0077】
本実施形態によっても、先の実施形態と同様、溶解装置1による透析用原液の供給の過程において、レベルセンサ8による原液量検出工程、演算手段10による演算工程、及び判定手段11による判定工程が行われるので、貯槽18内における透析用原液の残量の経時的推移の変化点(B1〜B6…)に基づいて透析装置4による透析液の消費速度を演算するとともに、その透析液の消費速度から貯槽18内の透析用原液の減少割合を算出することができる。従って、貯槽18内における透析用原液の減少割合を精度よく求めて、供給すべき透析用原液が不足するか否かの判定の信頼性をより向上させることができる。
【0078】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されず、例えば図7に示すように、透析室に個人用透析装置20(透析装置毎に透析液供給装置の如き透析液を作製する手段を具備したもの)が配設されたものに適用してもよい。かかる溶解システムによれば、溶解装置1で作製された透析用原液は、各透析装置4(多人数用透析装置)と、個人用透析装置20との両方に供給されるよう構成されており、各透析装置4においては透析液供給装置2を介して間欠的に透析用原液が供給される一方、個人用透析装置20においては連続的に透析用原液が供給される。
【0079】
この場合、溶解装置内における貯槽の透析用原液の経時的推移は、図8で示すように、透析用原液の残量が経時的に所定割合で減少する第1減少期間T4と(溶解装置の貯槽から透析液貯槽への透析用原液の供給が停止しているとともに、当該貯槽からの個人用透析装置への透析用原液の供給が維持されている期間)、該第1減少期間T4と異なる割合(本実施形態においては大きい割合)で残量が経時的に減少する第2減少期間T3(溶解装置の貯槽から透析液貯槽及び個人用透析装置に透析用原液が供給される期間)とが形成されることとなる。
【0080】
然るに、第1減少期間T4及び第2減少期間T3の境界点が上述した実施形態の変化点(B1〜B5…)に相当し、当該変化点にて第1減少期間T4を判別すれば、上記実施形態の如き手法にて、貯槽内の透析用原液の減少割合を演算することができる。即ち、第1減少期間T4から多人数用透析装置(透析装置4)における透析液の消費速度を求めることができるとともに、その第1減少期間T4における透析用原液の減少量(V1)を求めて当該減少量V1を透析液に換算した数値を用いれば、個人用透析装置における透析液の消費速度を求めることができる。
【0081】
例えば、C/T4(但し、Cは上記実施形態と同様、透析液貯槽の収容量)なる演算式を用いれば、多人数用透析装置(透析装置4)における透析液の消費速度を求めることができ、(V1を透析液に換算した量)/T4なる演算式を用いれば、個人用透析装置における透析液の消費速度を求めることができる。このようにして求められた透析液の消費速度から、溶解装置における貯槽内の透析用原液の減少割合を演算し、その透析用原液の減少割合に基づき貯槽内の透析用原液が空となるまでの時間を推定するとともに、供給すべき透析用原液が不足するか否かを判定することができる。
【0082】
上記の如く、原液量検出手段にて検出された透析液の残量の経時的推移の変化点が、透析用原液の残量が経時的に所定割合で減少する第1減少期間と、該第1減少期間と異なる割合で残量が経時的に減少する第2減少期間との境界点とされるので、透析液供給装置2を介さず溶解装置1から透析用原液が供給され、その透析用原液から所定濃度の透析液を作製しつつ透析治療が施される患者に供給し得る個人用透析装置を具備した溶解システムにも適用可能である。
【0083】
更に、上記実施形態においては、停滞期間T1を把握することにより、C/T1なる演算式(収容量Cは既述のように入力されている)にて透析液の消費速度を求め、その消費速度から貯槽7内の透析用原液の減少割合を演算するよう構成されているが、これに代えて、レベルセンサ(原液量検出手段)にて検出された透析用原液の残量に基づき、検出された残量の経時的推移の変化点(B1〜B6…)を判別し、減少期間T2を把握するよう構成してもよい。
【0084】
この場合、透析液の消費速度は、(「V2を透析液に換算した量」−C)/T2(C:既知の収容量)なる演算式により求めることができる。但し、V2は、図4に示すように、変化点B1とB2(B3とB4、B5とB6…も同様)の間で減少した残量から導かれるものとし、透析液に換算した量とは、例えば透析用原液が透析液貯槽にて希釈される割合(希釈割合)をV2に乗じた数値とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
貯槽内の透析用原液の残量を連続的且つリアルタイムで検出し得る原液量検出手段(原液量検出工程)と、原液量検出手段(原液量検出工程)にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて透析装置による透析液の消費速度を求め、その消費速度から貯槽内の透析用原液の減少割合を演算する演算手段(演算工程)と、演算手段(演算工程)で演算された透析用原液の減少割合に基づき貯槽内の透析用原液が空となるまでの時間を推定するとともに、供給すべき透析用原液が不足するか否かを判定する判定手段(判定工程)とを溶解システム及びそれによる溶解方法であれば、他の機能が付加された如き形態によるもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態(第1〜第3の実施形態に共通)における溶解システムを示す模式図
【図2】本発明の第1の実施形態における溶解装置の構成を示す模式図
【図3】本発明の実施形態(第1〜第3の実施形態に共通)における透析液供給装置の構成を示す模式図
【図4】本発明の実施形態(第1〜第3の実施形態に共通)における溶解装置の貯槽内における透析用原液の残量の経時的推移を示すグラフ
【図5】本発明の第2の実施形態における溶解装置の構成を示す模式図
【図6】本発明の第3の実施形態における溶解装置の構成を示す模式図
【図7】本発明の他の実施形態における溶解システムを示す模式図
【図8】同他の実施形態における溶解装置の貯槽内における透析用原液の残量の経時的推移を示すグラフ
【符号の説明】
【0087】
1 溶解装置
2 透析液供給装置
3 中央監視装置
4 透析装置(透析監視装置)
5 定量粉体フィーダ
6 溶解槽
7 貯槽
8 レベルセンサ(原液量検出手段)
9 フロートスイッチ
10 演算手段
11 判定手段
12 入力手段
13 水計量手段
14 透析液貯槽
15 フロート式センサ
16 報知手段
17 溶解槽
18 貯槽
19 レベルセンサ(原液量検出手段)
20 個人用透析装置
B1〜B6… 変化点
T1 停滞期間
T2 減少期間
T3 第2減少期間
T4 第1減少期間
L1(L1a、L1b) 原液供給ライン
L2〜L4 透析液供給ライン
L5 水供給ライン
L6 移送ライン
L7 循環ライン
L8 移送ライン
L9 通気ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の透析用粉末薬剤及び水が投入され、当該透析用粉末薬剤を溶解及び攪拌して透析用原液を得る溶解槽と、前記溶解槽で得られた透析用原液を一時的に収容する貯槽と、該貯槽内に収容された透析用原液を、患者に透析治療を施すための複数の透析装置側に供給する原液供給ラインとを有した溶解装置と、
前記原液供給ラインと連通して当該原液供給ラインから送液された透析用原液と所定量の水とを混合して作製された所定濃度の透析液を収容しつつ前記透析装置に供給するとともに、当該透析液の収容量が下限に達すると上限の収容量となるまで前記原液供給ラインから透析用原液が供給され、当該上限の収容量に達した時点で当該透析用原液の供給が停止される透析液貯槽を有した透析液供給装置と、
を具備した溶解システムであって、
前記溶解装置は、
前記貯槽内の透析用原液の残量を連続的且つリアルタイムで検出し得る原液量検出手段と、
前記原液量検出手段にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて前記透析装置による透析液の消費速度を求め、その消費速度から前記貯槽内の透析用原液の減少割合を演算する演算手段と、
該演算手段で演算された透析用原液の減少割合に基づき前記貯槽内の透析用原液が空となるまでの時間を推定するとともに、供給すべき透析用原液が不足するか否かを判定する判定手段と、
を具備したことを特徴とする溶解システム。
【請求項2】
前記演算手段は、前記原液量検出手段にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて前記透析液貯槽の透析液の収容量が上限から下限に達するまでの時間を推定し、その推定時間に基づき前記透析装置による透析液の消費速度を演算することを特徴とする請求項1記載の溶解システム。
【請求項3】
前記演算手段は、前記原液量検出手段にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて前記透析液貯槽の透析液の収容量が下限から上限に達するまでの時間を推定し、その推定時間に基づき前記透析装置による透析液の消費速度を演算することを特徴とする請求項1記載の溶解システム。
【請求項4】
前記経時的推移の変化点は、透析用原液の残量が経時的に減少する減少期間と、当該残量が経時的に減少せず停滞した停滞期間との境界点であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の溶解システム。
【請求項5】
前記経時的推移の変化点は、透析用原液の残量が経時的に所定割合で減少する第1減少期間と、該第1減少期間と異なる割合で残量が経時的に減少する第2減少期間との境界点であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の溶解システム。
【請求項6】
所定量の透析用粉末薬剤及び水が投入され、当該透析用粉末薬剤を溶解及び攪拌して透析用原液を得る溶解槽と、前記溶解槽で得られた透析用原液を一時的に収容する貯槽と、該貯槽内に収容された透析用原液を、患者に透析治療を施すための複数の透析装置側に供給する原液供給ラインとを有した溶解装置と、
前記原液供給ラインと連通して当該原液供給ラインから送液された透析用原液と所定量の水とを混合して作製された所定濃度の透析液を収容しつつ前記透析装置に供給するとともに、当該透析液の収容量が下限に達すると上限の収容量となるまで前記原液供給ラインから透析用原液が供給され、当該上限の収容量に達した時点で当該透析用原液の供給が停止される透析液貯槽を有した透析液供給装置と、
を具備した溶解システムによる溶解方法であって、
前記貯槽内の透析用原液の残量を連続的且つリアルタイムで検出し得る原液量検出工程と、
前記原液量検出工程にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて前記透析装置による透析液の消費速度を求め、その消費速度から前記貯槽内の透析用原液の減少割合を演算する演算工程と、
該演算工程で演算された透析用原液の減少割合に基づき前記貯槽内の透析用原液が空となるまでの時間を推定するとともに、供給すべき透析用原液が不足するか否かを判定する判定工程と、
を具備したことを特徴とする溶解システムによる溶解方法。
【請求項7】
前記演算工程は、前記原液量検出工程にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて前記透析液貯槽の透析液の収容量が上限から下限に達するまでの時間を推定し、その推定時間に基づき前記透析装置による透析液の消費速度を演算することを特徴とする請求項6記載の溶解システムによる溶解方法。
【請求項8】
前記演算工程は、前記原液量検出工程にて検出された残量の経時的推移の変化点に基づいて前記透析液貯槽の透析液の収容量が下限から上限に達するまでの時間を推定し、その推定時間に基づき前記透析装置による透析液の消費速度を演算することを特徴とする請求項6記載の溶解システムによる溶解方法。
【請求項9】
前記経時的推移の変化点は、透析用原液の残量が経時的に減少する減少期間と、当該残量が経時的に減少せず停滞した停滞期間との境界点であることを特徴とする請求項6〜請求項8の何れか1つに記載の溶解システムによる溶解方法。
【請求項10】
前記経時的推移の変化点は、透析用原液の残量が経時的に所定割合で減少する第1減少期間と、該第1減少期間と異なる割合で残量が経時的に減少する第2減少期間との境界点であることを特徴とする請求項6〜請求項8の何れか1つに記載の溶解システムによる溶解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−220784(P2008−220784A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65829(P2007−65829)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】