説明

溶解度が改良された顆粒洗剤組成物の製造方法

本発明は、約20重量%〜約60重量%の水溶性及び/又は水分散性ポリマーと、約20重量%〜約80重量%の水溶性無機塩とを含む基材組成物に関する。本発明の基材組成物は、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの中央粒径を有し、約10重量%未満の非水溶性材料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顆粒洗剤組成物の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、溶解度が改良された顆粒洗剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数年の間に、洗剤市場は重質液体(HDL)洗濯洗剤へと移行した。この移行のほとんどは、HDL洗剤製品の予め溶解されている性質によって進められ、該性質は、顆粒洗濯洗剤に付随する未溶解又は部分的に溶解した残留物が布地上に時折発生することを排除するが、同時に、HDL洗剤は、製剤、特に水溶性及び/又は水分散性ポリマー類に溶液系前駆体を使用するよう、洗濯洗剤配合者により多くの自由及び柔軟性を提供する。前記水溶性及び/又は水分散性ポリマー類の化学は、改良された洗剤性能を、特にビルダー機能性及び汚れ分散性に関して供給するように過去10年にわたって進展した。さらに、ポリマー類を使用する顆粒洗剤のために特に開発できる追加の機能性が存在する場合がある:例えば、他の方法では漂白剤の化学的性質を妨害しうる重金属のキレート化である。この性能進展に基づき、より高濃度の水溶性前駆体を顆粒洗剤に含めることがますます望ましくなった。
【0003】
一般に、洗剤顆粒又は粉末を調製できる方法には、2つの主要な種類がある。第1の種類の方法は、高多孔質洗剤顆粒を製造するために水性洗剤スラリーをスプレー乾燥塔内でスプレー乾燥することを伴なう(例えば、低密度洗剤組成物の製造のための塔プロセス)。第2の種類の方法では、種々の洗剤構成成分がドライミックスされ、その後非イオン性又は陰イオン性界面活性剤のような結合剤とともに凝集されて、高密度洗剤組成物を製造する(例えば、高密度洗剤組成物の製造のための凝集プロセス)。
【0004】
さらに、凝集プロセスと類似した、押出しプロセスが、乾燥粉末と液体結合剤構成成分との組み合わせを使用して洗剤粒子を製造するために使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記方法において、得られる洗剤顆粒の密度を支配する重要要因は、前記顆粒の形状、多孔性及び粒度分布、種々の洗剤補助剤成分の密度、種々の洗剤補助剤成分の形状、並びにそのそれぞれの化学的組成である。上記の方法のうち、スプレー乾燥は、溶液系前駆体の広い処方部分を処理するのに十分に適すると考えられる。
【0006】
ただし、スプレー乾燥には、スプレー乾燥を所望の最終製品の製造に適さなくする数点の問題が存在する。顆粒洗剤製品の溶解度を改良する必要性もなお存在する。したがって、所望の最終製品の製造に適した、洗剤顆粒の製造方法を開発する必要性がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本発明は、約20重量%〜約60重量%の水溶性及び/又は水分散性ポリマーと、約20重量%〜約80重量%の水溶性無機塩とを含む基材組成物に関する。該基材組成物は、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの中央粒径を有し、約10重量%未満の非水溶性材料を含有する。
【0008】
本発明の1つの実施形態によると、溶解度が改良された顆粒洗剤組成物を形成するための方法が提供される。該方法は、ポリマーと塩とを混合してスラリーの形態の混合物を得る工程、スラリー混合物をスプレー乾燥して、乾燥顆粒粉末(dry granular power)を得る工程、及び乾燥顆粒粉末(dry granular power)を粉砕して、約1マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲の中央粒径を有する基材組成物を形成する工程を含む。
【0009】
上述のように、一般的に溶液前駆体の形態である高濃度の水溶性前駆体を顆粒洗剤に含める必要性がある。課題は、溶液前駆体を、(a)物理的に安定であり(すなわち、大気から過度の水分を吸収して製品の物理的及び/又は化学的不安定を招くことがない)、(b)洗浄液中で容易に再分散可能であり素早く溶解し、(c)高密度小型洗剤に対する地域市場要求を満たし(例えば、日本)、(d)経済的な原料供給源及び経済的な方法を使用して上記目的を達成する、乾燥顆粒形態へと変換することである。
【0010】
スプレー乾燥は、低密度洗剤、又は中密度洗剤さえも製造するための1つの典型的な方法である。ただし、スプレー乾燥には、スプレー乾燥を所望の最終製品の製造に適さなくする数点の問題が存在する。ブローされた顆粒は、一般に、嵩密度が低すぎて多くの市場のニーズを満たさない。さらに、高濃度の溶液系前駆体及び高濃度の界面活性剤を有する複合物製剤のスプレー乾燥は、加工において困難を呈することもある:例えば、べたっとした製品がスプレー乾燥塔の壁に付着し、製品品質問題を引き起こす。加えて、このように高濃度の有機材料を有するスプレー乾燥した顆粒は、一般的に、物理的安定性が低くなる傾向及び処理性が低くなる傾向がある。
【0011】
本発明は、一般的に、複合物組成物の微小粒子から成り、該複合物組成物の少なくとも1つの構成成分は溶媒系前駆体から誘導される。基材組成物は一般的に微小乾燥粉末の形態であることから、凝集又は押出しプロセスにおける供給原料粉末として好適である。
【0012】
結果として、本発明は、高濃度の溶媒系前駆体、特に水溶性及び/又は水分散性ポリマー類を、乾燥顆粒洗剤処方に添加するための効率的な方法を可能にする。本発明は、凝集プロセスのような、顆粒洗剤製品を製造するための後続プロセスでの使用に好適な基材粉末も提供する。基材は一般に、中間体のブローされた粉末から誘導され、溶液前駆体を乾燥するためにスプレー乾燥プロセスが使用される。スプレー乾燥は、一般に、前駆体の溶液混合物又はスラリー混合物から大量の水分を乾燥するための最も費用効率の高い方法である。
【0013】
より大きな粒子(すなわち、100マイクロメートル以上の中央粒径を有する粒子)がスプレー乾燥プロセスで形成される場合、基材組成物の粒径をより微小な粒径範囲(すなわち、1〜50マイクロメートル又はそれ以下の中央粒径を有する粒子)に縮小するために、乾燥粉砕処理工程を使用してもよい。
【0014】
最後に、基材組成物は実質的に高濃度の水溶性成分を含むことから、本発明の基材組成物を含む洗剤組成物は、改良された溶解度特性を示す。さらに、基材組成物の表面化学は、粒子状形態のとき、基材組成物の残りの部分と比較して水溶性及び/又は水分散性ポリマーの濃度がより高いことが観察される。さらに、基材組成物の表面でのポリマー濃度の相対的増大は、該基材で作られた顆粒の溶解性能の改良にさらなる利点を提供することも観察される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、基材組成物は粒子状形態であり、外部領域と内部領域とを含み、該基材組成物内のポリマーの分布は、基材組成物の外部領域が、内部領域の水溶性及び/又は水分散性ポリマーの濃度と比較してより高濃度の水溶性及び/又は水分散性ポリマーを含むようなものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
定義
本明細書で参照される成分のパーセンテージ、比、及び濃度はすべて、指示がない限り、基材組成物の総量の重量に基づく。本明細書で言及されるすべての測定は、特に明記されない限り25℃で行なわれる。本明細書で使用するとき、用語「含む」及びその派生語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の存在を明記するが、他の記載されない特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の存在を排除するものではない制限のない用語であることを意図する。この定義は、類似の意味を有する語、例えば、「有する」「包含する」「備える」という用語及びその派生語にも適用される。この用語は、用語「から成る」及び「のみから本質的に成る」を包含する。
【0017】
基材組成物
本発明の基材組成物は、約20重量%〜約60重量%、好ましくは約30重量%〜約50重量%、又は約30重量%〜約40重量%、又は約40重量%〜約50重量%の、水溶性及び/又は水分散性ポリマーと、約20重量%〜約80重量%、好ましくは約40重量%〜約70重量%、又は約40重量%〜約50重量%、又は約55重量%〜約65重量%の水溶性無機塩とを含む。また、本発明の基材組成物は、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートル、又は約1マイクロメートル〜約50マイクロメートルの中央粒径を有する。さらに、本発明の基材組成物は約10重量%未満の非水溶性材料を含有する。基材組成物の水溶性は、以下により詳細に記載される方法によって決定される。
【0018】
基材組成物の物理的形態は、水溶性無機塩の核が少なくとも部分的に、又はさらには実質的に、水溶性及び/若しくは水分散性ポリマーで封入、カプセル化並びに/又はコーティングされているようなものであってもよい。理論に束縛されるものではないが、水溶性無機塩の核の表面での水溶性及び/又は水分散性ポリマーの分布は、洗剤製品の溶解性能を改善すると考えられ、布地上の残留物の大幅な低減につながる。
【0019】
基材組成物の中央粒径は、一般的に、以下により詳細に記載される方法によって決定される。
【0020】
基材組成物の水溶性決定方法
基材組成物の水溶性は、一般的に以下の方法で決定される。
1.3.5gの基材組成物を計量し、それを236mL(8oz.)瓶に入れる。
2.前記瓶に150mlの水を添加し、蓋をして70℃の水浴中に3時間置く。
3.前記瓶を水浴から取り出し、機械的振とう器に置いて1時間激しく振とうする。
4.フィルターホルダーアセンブリ(例えば、ミリポア社(Millipore Corporation)、米国マサチューセッツ州ベレリカ(Bellerica)より供給されるモデルXX1004700フィルターホルダーアセンブリ)及び0.45マイクロメートルの孔径を有するセルロース薄膜フィルター(例えば、ミリポア社(Millipore Corporation)、米国マサチューセッツ州ベレリカ(Bellerica)より供給されるHAWP04700フィルター)を用いて、前記試料を、予め計量した1枚の風袋を計量した濾紙を通して濾過する。瓶からの試料の除去を確実とするため該瓶を水で数回すすぎ、すすぎ水も濾紙を通して注ぐ。
5.一度試料を濾紙を通じて排水する。濾紙上に回収された固体材料が離れるのを避けるため、濾紙を折る。濾紙を、風袋を計量した150mlビーカーに入れ、100℃で一晩乾燥する。
6.続いて、前記濾紙をデシケータ(dessicator)内におき、一定重量が得られるまで、乾燥及び室温(25℃)に冷却し、続いて計量する。続いて、いかなる残留物も含有する濾紙の総重量から最初の濾紙の風袋重量を減算することによって、濾紙上の固体材料の重量を決定する。
7.不溶性材料のパーセンテージが次のようにして計算される:不溶性材料の重量%=100×(工程6後の濾紙上の固体材料の重量(g)/工程1で投入した試料の重量(g)(3.5g))
一般的に、該基材組成物は、工程1で最初にビーカーに投入された量の10重量%未満の固体材料を、工程6後の濾紙上に残す。
【0021】
基材組成物の中央粒径の決定方法
基材組成物の中央粒径は一般にISO8130−13、「コーティング粉末−第13部:レ−ザー回折による粒径分析(Coating powders-Part 13:Particle size analysis by laser diffraction)」に従って決定される。乾燥粉末供給器を備えた好適なレーザー回折粒径分析器は、ホリバ・インスツルメンツ社(Horiba Instruments Incorporated)(米国カリフォルニア州アーバイン(Irvine))、マルバーン・インスツルメンツ社(Malvern Instruments Ltd)(英国ウスターシャー(Worcestershire))、及びベックマン−コールター社(Beckman-Coulter Incorporated)(米国カリフォルニア州フラートン(Fullerton))から得ることができる。
【0022】
結果は、ISO9276−1:1998、「粒径分析の結果表示−第1部:グラフ表示(Representation of results of particle size analysis Part 1:Graphical Representation)」、図A.4、「対数横座標を用いてグラフ用紙にプロットされた累積分布Q(Cumulative distribution Q3 plotted on graph paper with a logarithmic abscissa)」に従って表示される。中央粒径は、累積分布(Q)が50パーセントに等しい点における横座標の値として定義される。
【0023】
水溶性及び/又は水分散性ポリマー
本発明の基材組成物は、約20重量%〜約60重量%、好ましくは約30重量%〜約50重量%、又は約30重量%〜約40重量%、又は約40重量%超〜約50重量%の水溶性及び/又は水分散性ポリマーを含む。前記水溶性及び/又は水分散性ポリマーは、好ましくは高分子ポリカルボン酸であり、より好ましくはポリアクリル酸ポリマー、ポリマレイン酸ポリマー、ポリアクリル酸−マレイン酸コポリマー及びこれらの混合物から成る群から選択される。本発明の水溶性及び/又は水分散性ポリマーは、それらの塩、好ましくはポリアクリル酸ナトリウム、ポリマレイン酸ナトリウム等のようなアルカリ塩も含む。水溶性及び/又は水分散性ポリマーは、一般的に、3.3E−21〜1.7E−19g(2,000Da〜100,000Da)、又は好ましくは5.0E−21〜8.3E−21g(3,000Da〜5,000Da)、又は1.7E−20〜2.5E−20g(10,000Da〜15,000Da)、又はさらには8.3E−20〜1.5E−19g(50,000Da〜90,000Da)の分子量を有する。ポリマーの水溶性又は水分散性は、一般的に、以下により詳細に記載される方法によって決定される。
【0024】
ポリマーの水溶性又は水分散性の決定方法
ポリマーの水溶性又は水分散性は、一般的に、次の方法によって決定される。
1.3.5gの水溶性及び/又は水分散性ポリマーを計量し、それを236mL(8oz.)の瓶に入れる。
2.前記瓶に150mlの水を添加し、蓋をして70℃の水浴中に3時間置く。
3.前記瓶を水浴から取り出し、機械的振とう器に置いて1時間激しく振とうする。
4.フィルターホルダーアセンブリ(例えば、ミリポア社(Millipore Corporation)、米国マサチューセッツ州ベレリカ(Bellerica)より供給されるモデルXX1004700)及び0.45マイクロメートルの孔径を有するセルロース薄膜フィルター(例えば、ミリポア社(Millipore Corporation)、米国マサチューセッツ州ベレリカ(Bellerica)より供給されるHAWP04700フィルター)を用いて、前記試料を、予め計量した1枚の風袋を計量した濾紙を通して濾過する。瓶からの試料の除去を確実とするため該瓶を水で数回すすぎ、すすぎ水も濾紙を通して注ぐ。
5.前記試料すべてを、一度、濾紙を通して排水する。濾紙上に回収された固体材料が離れるのを避けるため、濾紙を折る。濾紙を、風袋を計量した150mlビーカーに入れ、100℃で一晩乾燥する。
6.続いて、前記濾紙をデシケータ(dessicator)内におき、一定重量が得られるまで、乾燥及び室温(25℃)に冷却し、続いて計量する。続いて、いかなる残留物も含有する乾燥フィルターの総重量から最初のフィルターの風袋重量を減算することによって、濾紙上に残された固体材料の重量を決定する。
7.不溶性材料のパーセンテージは、次のようにして計算される:不溶性材料の重量%=100×(工程6後の濾紙上の固体材料の重量(g)/工程1で投入した試料の重量(g)(3.5g))
一般的に、水溶性及び/又は水分散性ポリマーは、工程1で最初にビーカーに投入された量の0.5重量%を超えない固体材料を、工程6後の濾紙上に残す。
【0025】
水溶性無機塩
本発明の基材組成物は、約20重量%〜約80重量%、好ましくは約40重量%〜約70重量%、又は約40重量%〜約50重量%、又は約55重量%〜約65重量%の水溶性無機塩を含む。水溶性無機塩は、好ましくは硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩及びこれらの混合物から成る群から選択される。好ましいケイ酸塩はケイ酸ナトリウムであり、より好ましくは、該ケイ酸ナトリウムは、SiO対NaOのモル比が約1.0〜約3.2、好ましくは約1.4〜約2.2、より好ましくは約1.6〜約2.0である。
【0026】
重量平均粒径
本発明の基材組成物は、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートル、好ましくは約1マイクロメートル〜約50マイクロメートル、より好ましくは約1マイクロメートル〜約25マイクロメートルの中央粒径を有する。中央粒径は、乾燥粉末供給器を備えたレーザー回折を使用することによって測定される。
【0027】
非水溶性材料
本発明の基材組成物は、約10重量%未満、好ましくは約5重量%未満、より好ましくは約1重量%未満の非水溶性材料を含む。典型的な非水溶性材料はゼオライトであり、本発明の基材組成物は好ましくは実質的にゼオライトを含まない。
【0028】
第1の界面活性剤
本発明の基材組成物は、任意に、しかし好ましくは約1重量%〜約20重量%、好ましくは約1重量%〜約10重量%、又は1重量%〜5重量%、又はさらには2重量%〜4重量%の第1の界面活性剤を含む。好ましい第1の界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びこれらの混合物から成る群から選択される。より好ましい第1の界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、アルキルサルフェート(AS)、アルキルエトキシサルフェート(AES)及びこれらの混合物から成る群から選択される。第1の界面活性剤としての使用に好適なその他の界面活性剤は、米国特許第6,391,839号(アディソン(Addison)、2002年5月21日発行)により詳細に記載されている。
【0029】
基材組成物の製造方法
本発明の基材組成物は、(1)ポリマーと塩とを混合してスラリーの形態の混合物を得る工程、(2)工程(1)のスラリー混合物をスプレー乾燥して、乾燥顆粒粉末を得る工程、及び(3)工程(2)の乾燥顆粒粉末を粉砕して、約1マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲の中央粒径を有する基材組成物を製造する工程を含む方法によって調製される。
【0030】
工程(1)スラリー混合物の獲得
この工程は、スラリーの形態の混合物を形成する水溶性及び/又は水分散性ポリマーと水溶性無機塩との混合を伴なう。スラリー混合物は一般的に、ポリマーを含む連続溶液相と、塩を含む不連続相とを含む。任意に、この工程で界面活性剤がポリマー及び塩に添加されて、スラリー混合物の一部を形成してもよい。一般的に、好適なスラリーは、乾燥成分を液体成分中に、任意に水の添加で懸濁することによって調製できる。工程(1)では、水を添加しないか、又は最低限の量のみを添加することが好ましい場合があるが、それは、添加水を最小限にすることが、スプレー乾燥工程での全乾燥負荷を低減し、これがプロセスのエネルギー消費を低減するからである。典型的には、水溶性無機塩は、少なくとも一部は、スラリー中に分散された粉末の形態(すなわち、実質的に未溶解の形態)である。
【0031】
工程(2)乾燥顆粒粉末を得るためのスラリー混合物のスプレー乾燥
この工程は、乾燥顆粒粉末を製造するための、工程(1)で得られたスラリー混合物のスプレー乾燥を伴なう。スラリー混合物は、霧状液滴を形成するために霧化され、該液滴が続いてスプレー乾燥塔内で乾燥されて、乾燥顆粒粉末を、一般的には自由流動微粒子の形態で形成する。この工程では、一般的にポリマーの薄層を塩の表面上で乾燥し、該塩材料を少なくとも部分的に封入し、又は完全に封入さえもする。
【0032】
工程(3)乾燥顆粒粉末の粉砕
この工程は、約1マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲の中央粒径を有する基材組成物を製造するための、工程(2)で得られた乾燥顆粒粉末の粉砕を伴なう。この工程では、乾燥顆粒粉末を基材組成物に粉砕するために、十分な機械的エネルギーが必要である。乾燥顆粒粉末の粉砕に好適な粉砕機としては、高速ピンミル、逆回転ピンミル、ハンマーミル、空気分級機ミル及びジェットミルが挙げられる。好ましい粉砕機は、高速ピンミル、例えば、ホソカワ・アルパイン(Hosokawa Alpine)によって提供されるネッシュ(Netsch)CUMである。
【0033】
本発明の別の実施形態において、工程(1)で得られたスラリー混合物を粉砕し、微細分散された混合物を準備し、続いて微細分散された混合物を微細噴霧ノズルを使用してスプレー乾燥して、約1マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲の中央粒径を有する基材組成物を直接形成することが可能である。本実施形態において、好適な粉砕機としては、スラリー混合物の不連続相を粉砕及び脱凝集できるコロイドミル、ボールミル及び高速ローター・ステーターミキサーが挙げられる。好適な粉砕機は、IKAヴェルデ社(IKA Werde GmbH)(ドイツ国シュタウフェン(Staufen))によって供給されるIKAミルである。
【0034】
微細分散された混合物は、スプレー乾燥工程にかけることができ、これは、微細分散された混合物の十分な霧化を提供して、後に直接乾燥されて約1マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲の中央粒径を有する基材組成物を形成する微細霧状液滴を形成する。スプレー乾燥は、燃焼ノズルのような微細噴霧ノズルを使用して実施される。
【0035】
洗剤組成物
本発明の洗剤組成物は、約10重量%〜約60重量%の基材組成物を含んでもよい。該洗剤組成物は、ビルダー、酵素及びその他の従来成分をさらに含んでもよい。
【0036】
第2の界面活性剤
本発明の洗剤組成物は、約1重量%〜約20重量%の第2の界面活性剤を含む。第2の界面活性剤は、基材組成物に添加できる第1の界面活性剤と同じであるか又は異なることができる。好ましい第2の界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びこれらの混合物から成る群から選択される。より好ましい第2の界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、アルキルサルフェート(AS)、アルキルエトキシサルフェート(AES)及びこれらの混合物から成る群から選択される。第2の界面活性剤としての使用に好適なその他の界面活性剤は、米国特許第6,391,839号(アディソン(Addison)、2002年5月21日発行)に記載されている。
【0037】
第1の界面活性剤が、AS、AES及びこれらの混合物から成る群から選択され、第2の界面活性剤がLASであるのが好ましい場合がある。
【0038】
その他の成分
本発明の洗剤組成物は、ビルダー、酵素、染料、香料、又は他の従来成分をさらに含んでもよい。好適なその他の成分は、米国特許第6,391,839号(アディソン(Addison)、2002年5月21日発行)に記載されている。
【0039】
洗剤組成物の製造方法
本発明の洗剤組成物は、(1)ポリマーと塩とを混合してスラリーの形態の混合物を得る工程、(2)前記スラリー混合物をスプレー乾燥して、乾燥顆粒粉末を得る工程、(3)前記乾燥顆粒粉末を粉砕して、約1マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲の中央粒径を有する基材組成物を形成するよう粒径を縮小する工程、及び(4)前記基材組成物を、流体結合剤とともに凝集し、洗剤顆粒組成物を得る工程を含む方法によって調製されてもよい。
【0040】
工程(1)、(2)及び(3)は、本発明の基材組成物の調製方法について上記により詳細に記載されたものと同じプロセス条件、パラメータ及び特徴を必要とする。
【0041】
工程(4)は、工程(3)からの基材組成物を流体結合剤とともに凝集して洗剤顆粒組成物を得ることを伴なう。凝集は、いかなる好適な凝集装置を使用して実施されてもよい。好ましくは、凝集装置は、高剪断ミキサー−アグロメレータ、中剪断ミキサー−アグロメレータ、低剪断流動床凝集システム、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0042】
流体結合剤
流体結合剤は、基材組成物を凝集するためのいかなる好適な流体であることもできる。好ましくは、流体結合剤は、水、第2の界面活性剤、第2の界面活性剤の酸前駆体、又はこれらの混合物を含む。
【実施例】
【0043】
実施例1.基材組成物の製造方法
工程1(混合)
10〜13直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(NaLAS)ペースト(50%水溶液)、ポリアクリル酸ナトリウム溶液(44%水溶液)、ケイ酸ナトリウム1.6R(47%水溶液)及び炭酸ナトリウム粉末を、低剪断混合容器に入れ、水性スラリー混合物を形成する。
【0044】
工程2(スプレー乾燥)
該スラリー混合物を80℃に加熱し、高圧(6,000〜7,000kPa)下で、空気入口温度300〜310℃の従来の向流スプレー乾燥塔に供給する。霧化したスラリーを乾燥して、乾燥顆粒粉末を製造する。
【0045】
工程3(粉砕)
乾燥顆粒粉末を、高速ピンミル(例えば、ネッシュ(Netsch)CUMミル、ピンディスクローター付き、1570.8rad/s(15000RPM)にて運転し、300kg/hrの供給量)により粉砕して、1マイクロメートル〜50マイクロメートルの範囲の重量平均粒径を有し、4重量%のNaLAS、35重量%のポリアクリル酸ナトリウム、14重量%のケイ酸ナトリウム1.6R、43重量%の炭酸ナトリウム及び残部の水分を含む、基材組成物を製造する。
【0046】
実施例2基材組成物
下記の成分の量は、重量%単位である。
【表1】

【0047】
実施例3.ペースト凝集による顆粒洗濯洗剤組成物の製造方法
実施例1に従って調製される基材組成物を、高剪断ミキサー(high-sheer mixer)(CB100レーディゲ(Loedige))に、任意にその他の乾燥粉末、例えばゼオライトA及び/又は炭酸ナトリウムとともに、投入する。高活性界面活性剤ペースト(例えば、72重量%の活性直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(NaLAS))を、高速ミキサーに投入し、混合要素によって粉末類とともに分散して混合物を形成する。該混合物を、中剪断アグロメレータ(KM1500レーディゲ(Loedige))に投入する。粒径を構築するため二次結合剤(例えば、水)を中剪断アグロメレータ内に任意にスプレーし、該混合物を高密度化及び凝集して湿潤粒塊を形成する。該湿潤粒塊をふるいにかけて過大な材料(>2250マイクロメートル)を除去し、流動床乾燥器内で乾燥させる。得られる乾燥粒塊をふるいにかけて過大な材料(>1180マイクロメートル)を除去し、顆粒洗濯洗剤組成物を製造する。
【0048】
実施例4.乾燥中和による顆粒洗濯洗剤組成物の製造方法
実施例1に従って調製される基材組成物を、高剪断ミキサー(high-sheer mixer)(CB100レーディゲ(Loedige))に、炭酸ナトリウム粉末及び、任意にゼオライト粉末とともに投入する。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(HLAS)を液体結合剤として高速ミキサーに投入し、混合要素によって粉末類とともに分散して混合物を形成する。混合物を、中剪断(moderate-sheer)アグロメレータ(KM1500レーディゲ(Loedige))に投入する。粒径を構築するため二次結合剤(例えば、水)を中剪断アグロメレータ内に任意にスプレーし、該混合物を高密度化及び凝集して湿潤粒塊を形成する。該粒塊をふるいにかけて過大な材料(>2250マイクロメートル)を除去し、続いて任意に流動床乾燥器内で乾燥させる。得られる乾燥粒塊をふるいにかけて過大な材料(>1180マイクロメートル)を除去し、顆粒洗濯洗剤組成物を製造する。
【0049】
実施例5.乾燥中和とペースト凝集との組み合わせによる顆粒洗濯洗剤組成物の製造方法
実施例1に従って調製される基材組成物を、高剪断ミキサー(high-sheer mixer)(CB100レーディゲ(Loedige))に、炭酸ナトリウム粉末及び、任意にゼオライト粉末とともに投入する。続いて、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(HLAS)を液体結合剤として高速ミキサーに投入し、混合要素によって粉末類とともに分散して混合物を形成する。混合物を、中剪断(moderate-sheer)アグロメレータ(KM1500レーディゲ(Loedige))に投入する。高活性界面活性剤ペースト結合剤(72重量%のアルキル硫酸ナトリウム水性ペースト)を添加する。任意に、粒径を構築するための追加の水を中剪断アグロメレータに添加し、該混合物を高密度化及び凝集して湿潤粒塊を形成する。該粒塊をふるいにかけて過大な材料(>2250マイクロメートル)を除去し、続いて任意に流動床乾燥器内で乾燥させる。得られる乾燥粒塊をふるいにかけて過大な材料(>1180マイクロメートル)を除去し、顆粒洗濯洗剤組成物を製造する。
【0050】
実施例6.実施例5の基材を使用して製造された洗剤粒塊
【表2】

【0051】
実施例7.顆粒洗濯洗剤組成物、基材粉末を用いて製造された粒塊を含有する完全製品組成物
下記の成分の量は、重量%単位である。
【表3】

【0052】
本発明の特定の実施形態が説明及び記載されてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行えることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。本明細書に引用される文献はすべて、関連部分において参考として組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本発明に関する先行技術であることを承認するものとして解釈されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20重量%〜60重量%の水溶性及び/又は水分散性ポリマーと、20重量%〜80重量%の水溶性無機塩とを含む基材組成物であって、該基材組成物が約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの中央粒径を有し、該基材組成物が約10重量%未満の非水溶性材料を含む、基材組成物。
【請求項2】
前記水溶性及び/又は水分散性ポリマーが、ポリアクリル酸ポリマー、ポリマレイン酸ポリマー、ポリアクリル酸−マレイン酸コポリマー、これらの塩類及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の基材組成物。
【請求項3】
前記基材組成物が、1重量%〜20重量%の第1の界面活性剤を含む、請求項1又は2に記載の基材組成物。
【請求項4】
前記水溶性無機塩が、硫酸塩、炭酸塩及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の基材組成物。
【請求項5】
前記基材組成物が、SiO対NaOのモル比が1.0〜3.2であるケイ酸ナトリウムを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の基材組成物。
【請求項6】
前記基材組成物が実質的にゼオライトを含まない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の基材組成物。
【請求項7】
前記基材組成物が粒子状形態であり、外表面を含み、該外表面における水溶性及び/又は水分散性ポリマーの濃度が該基材組成物の残りの部分における水溶性及び/又は水分散性ポリマーの濃度よりも高い、請求項1〜6のいずれか1項に記載の基材組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の基材組成物の製造方法であって、前記方法が、
(1)水溶性及び/又は水分散性ポリマーと水溶性無機塩とを混合してスラリーの形態の混合物を形成する工程、
(2)工程(1)のスラリー混合物をスプレー乾燥して、乾燥顆粒粉末を得る工程、並びに
(3)工程(2)の乾燥顆粒粉末を粉砕して、1マイクロメートル〜50マイクロメートルの範囲の中央粒径を有する基材組成物を製造する工程
を含む、方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の基材組成物を含む、洗剤組成物。
【請求項10】
前記洗剤組成物が第2の界面活性剤を含む、請求項9に記載の洗剤組成物。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の洗剤組成物の調製方法であって、前記方法が、
(1)水溶性及び/又は水分散性ポリマーと水溶性無機塩とを混合してスラリーの形態の混合物を形成する工程、
(2)工程(1)のスラリー混合物をスプレー乾燥して、乾燥顆粒粉末を得る工程、
(3)工程(2)の乾燥顆粒粉末を粉砕して、1マイクロメートル〜50マイクロメートルの範囲の中央粒径を有する基材組成物を製造する工程、並びに
(4)工程(3)の基材組成物を、流体結合剤とともに凝集し、洗剤顆粒組成物を得る工程
を含む、方法。

【公表番号】特表2008−509279(P2008−509279A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525798(P2007−525798)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/028588
【国際公開番号】WO2006/020790
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】