説明

滅菌包装体

【課題】滅菌の種類が限定されず、リークの危険もなく、包装コストが低く、袋の開封が容易である滅菌包装体を提供する。
【解決手段】滅菌包装体の縁部より中側に開口している穴20を該穴20より大きな滅菌用シール30で前記滅菌包装体の内部からヒートシールし、その中に内容物を収容し、前記穴20の外側から内容物を滅菌する事が出来るものである。滅菌包装体の縁部に開封用のノッチ22を形成し、該ノッチ22の開封方向に対して、その開封を干渉しない部分に前記滅菌用シール30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌用シートを使用して外部から滅菌が実施できる滅菌用包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、プラスチックフィルムからなる培養袋の通気用の開口部に、通気性多孔質シートを熱圧着してなる培養袋であって、熱圧着の強さが引っ張り試験機で0.1〜1.5kgf/15mmであることを特徴とし、培養袋内に培地原料を充填し、きのこ種菌を植菌した後に培養袋の通気性多孔質シートを、きのこ菌糸が培地天面から50%以上蔓延した時点で剥離して更に培養することを特徴とするきのこ類の培養方法である。
そして、特許文献1の図1では、ガゼット折りして袋状に成形されたプラスチックフィルム製の袋に、通気用の開口部が形成され、この通気用の開口部に通気性多孔質シートを熱圧着して接合部を形成している。そして、同文献図2(B)では、既に培地の天面部分のきのこ菌糸の菌体量やその分泌物は、通気性多孔質シートをある程度剥がして雑菌侵入が生じても、雑菌が繁殖することができず、雑菌汚染されにくい状態になっており、通気性多孔質シートを剥がすタイミングは、きのこ菌糸の活力を高水準に維持し、子実体の早期発生、高収量を得るために、先に述べた培養袋内酸素消費量のピーク時、もしくはピーク直後が望ましいと記載されている。即ち通気性多孔質シートは、プラスチックフィルム製の袋の中のきのこ菌培養のために通気性を確保する事が目的であり、或る程度菌を培養した後に通気性シートを剥がし、袋外に子実体原基を誘導して子実体を発生させるものである。
【0003】
特許文献2は、きのこ菌類の培養容器用通気性フィルタを、熱可塑性樹脂からなる所定寸法の通気孔を有する通気性有孔フィルムの上に所定の空気透過特性を有するpH7〜11の不織布を重ねて一体化したので、培養容器内は外部の湿度環境に左右されることなく、栽培期間中に所要の通気性を確実に維持できるものである。
そして、特許文献2の図3に示すように、きのこ菌類の培養容器4は、その上端に開口部7を有する筒型の袋状素材から成形したものであり、すなわち、筒型の袋状素材の閉鎖された下端8を内側に折返し、二重に折り重ねた底部の左右隅部のそれぞれ4か所を三角形状に区画するようにヒートシール線9を形成し、上部側面の2か所に通気穴5を形成し、これを覆うように通気性フィルタAをヒートシールによって取り付けたものである。この発明も通気性を維持するために通気孔を有する通気性有孔フィルムの上に空気透過特性を有するpH7〜11の不織布を重ねて一体化したものである。
【0004】
他方、主として医療用包装袋でかつ袋外から袋内の内容物に対して滅菌処理が可能な包装袋は、従来図5のような方法で、包装していた。即ち内容物Aを収納した包装袋50は、袋の下部52を折り返してあり、袋の左右はシール部54であり、上部56は折り返され、折り返された先には、滅菌用シート58が延設されている。滅菌用シート58は、シール部54の上にもヒートシールされているので、段差60がシール部54との間で生じている。
ところで、滅菌用シートは紙製である為、滅菌はガス滅菌(EOG;エチレンオキサイドガス)しか実施出来なかった。又、滅菌シートとシール部との間は段差が発生している為、この部分でリークの可能性も否定できなかった。又滅菌用シートは紙が横方向に横断している為、紙材料の使用量が多く、包装コストが大である。又、図5のように、ノッチ62を袋上部56に設けた場合、開封は縦方向にされるため、紙の切断が必ずしも容易ではなかった。
【特許文献1】特開平9−187168号公報
【特許文献2】特開平9−248059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の主として医療用包装袋に用いられていた図5の方法では、滅菌の種類が限られ、リークの危険があり包装コストも嵩み、袋の開封にも支障があったので、これらの欠点を克服した主として医療用包装袋を提供することを課題とする。
又、特許文献1及び2は通気性を用途として設けられた通気孔に関するものであり、構成も本発明とは異なり、通気シートを外面に設けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の構成は、滅菌包装体の縁部より中側に開口している穴を該穴より大きな滅菌用シールで前記滅菌包装体の内部からヒートシールし、その中に内容物を収容し、前記穴の外側から内容物を滅菌する事が出来るものであり、滅菌用シートは樹脂フィルムを主原料としたものであると好適であるがそれに限定されない。又、滅菌包装体の縁部に開封用のノッチを形成し、該ノッチの開封方向に対して、その開封を干渉しない部分に前記滅菌用シールを設けると良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1記載の発明は、滅菌包装体の縁部より中側に開口している穴を該穴より大きな滅菌用シールで前記滅菌包装体の内部からヒートシールし、その中に内容物を収容し、前記穴の外側から内容物を滅菌する事が出来るものであり、滅菌用シール部分が従来品に対して大幅に縮小出来、包装コストが削減できる。また、開口している孔の内部に滅菌用シールを設けたので、段差は内方向に存在するが、段差の範囲が小さくしかも、滅菌包装体の縁部より中側に開口している孔が存在しているので、シールリークの可能性が少ない。
又、滅菌包装体の縁部に開封用のノッチを形成し、該ノッチの開封方向に対して、その開封を干渉しない部分に前記滅菌用シールを設けると開封がスムーズである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の詳細を説明する。図1は本発明の包装袋の正面図である。10はプラスチックフィルム製のパウチ包装袋(滅菌用包装体)であり、袋の下部12を折り返してあり、袋の左右はシール部14、16であり、上部はシール部18である。円形穴20が、パウチ包装袋10の縁部より中側で、中央付近に開口している。開口している位置は必ずしも中央付近である必要は無い。要は滅菌作業が可能な位置であれば良い。パウチ包装袋10の内側で、しかも穴20の内側には、滅菌用シート30が、内側からヒートシールされている。
【0009】
図2(a)は、図1の滅菌用シート30及び穴20の詳細であり、図2(b)に示すように、滅菌用シート30は、パウチ包装袋10の内側からヒートシール部32により、パウチ10にヒートシールされている。34は、ヒートシール部より穴20側で何らの処理もされていない部分である。
【0010】
滅菌用シート30は樹脂フィルムであることが好ましいが、それに限定されるものではない。要するにパウチ包装袋への熱圧着が所定の接合強度の範囲内で設定できるものであればよく、例えば、滅菌紙では、ポリプロピレン、ポリエチレン等に代表される合成パルプと木材パルプとを混抄したものを用い、熱溶融する合成パルプとヒートシール性のない木材パルプの混入率を調整することにより、所望の剥離強度を得ることかできる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系のプラスチックやポリエステル、ナイロン、ビニール、ポリ塩化ビニル等により成形されたものであってもよく、これらの中から、溶融温度や密度などの物性の異なるシートを張り合わせたものを滅菌用シートとして用い、剥がす際には各材質の層間が剥離することにより、所定の接合強度とするようにしてもよい。また、熱圧着での溶融性をもたない木材パルプなど天然物が主原料の場合は、ホットメルトタイプの糊料をコーティングしたものを用いれば、界面剥離によりイージーピール性を付与できる。
同様に、例えばパルプ繊維を80重量%以上含有している不織布であっても良い。
なお、本発明の実施例の紙製滅菌用シートは表面にヒートシール材がコーティングされている。そして、前述したように滅菌用シートは、PE樹脂でも代替できる。即ち紙製滅菌用シートの場合は、ガス滅菌しか採用できないが、PE樹脂滅菌用シートは、ガス滅菌、蒸気滅菌、ガンマ滅菌等の滅菌方法が広く選択できる。
また本発明の滅菌用シートは、滅菌ガスは透過性があるが、有害菌等は透過しないものである。
【0011】
図1のうち、滅菌包装体の縁部に開封用のノッチ22を形成し、該ノッチの開封方向、即ち24分断線上にパウチ包装袋10を開封・切断できる。そして、その開封を干渉しない部分に滅菌用シール30を設けてある。この部分でパウチ包装袋10を切断できるので、滅菌用シール30に干渉されずに、パウチ包装袋10を切断でき効率的である。
【0012】
図3は、本発明の使用状態を説明する正面図であり、内容物Aは、パウチ包装袋10の内側に収容されている。滅菌用シート30、穴20が、パウチ包装袋10の中心側に設けられている。なお、穴20の設ける位置は、特に中心にある必要は無い、要するに滅菌作業に支障が無ければ、位置に付いては、どこでも良い。なお、符号22はノッチである。
【0013】
図4は、本発明の使用状態を説明する裏面図であり、内容物Aは、パウチ10の内側に収容されている。
本発明の滅菌用シートが付加された滅菌包装体は以上の実施例に限定されることはないが、発明の要部は、滅菌用シートを必要な範囲に縮小化した点にある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の滅菌包装体の正面図である。
【図2】(a)は滅菌用シートの拡大正面図、(b)は(a)のb−b線断面図である。
【図3】本発明の滅菌包装体の使用状態を示す正面図である。
【図4】本発明の滅菌包装体の使用状態を示す裏面図である。
【図5】従来の医療用滅菌包装体の例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0015】
10 パウチ包装袋
12 袋下部
14、16 左右シール部
18 上部シール部
20 円形穴
22 ノッチ
24 分断線
30 滅菌用シート
32 ヒートシール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌包装体の縁部より中側に開口している穴を該穴より大きな滅菌用シールで前記滅菌包装体の内部からヒートシールし、その中に内容物を収容し、前記穴の外側から内容物を滅菌する事が出来ることを特徴とした滅菌包装体。
【請求項2】
滅菌用シートは樹脂フィルムを主原料とした請求項1記載の滅菌包装体。
【請求項3】
前記滅菌包装体の縁部に開封用のノッチを形成し、該ノッチの開封方向に対して、その開封を干渉しない部分に前記滅菌用シールを設けたことを特徴とする請求項1記載の滅菌包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−249030(P2009−249030A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103244(P2008−103244)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】