説明

滑り軸受の試験装置

【課題】本発明は、試験シャフトに自動的に片当たりを修正して正確な試験を行うことが出来る滑り軸受の試験装置を提供するものである。
【解決手段】本発明に係る滑り軸受の試験装置は、試験シャフトを垂直方向で且つフレキシブル継手により多少の揺動可能として回転させる構成にし、この試験シャフトに試験メタルを抱きつくように接触した状態で押圧装置により試験メタルと試験シャフトの接触負荷を作用させる構成であるから、試験メタルを抱きつく様に接触させたとき、試験シャフトがフレキシブル保持してあるの、試験メタルに沿うて回転する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り軸受の試験装置に関するものである。すなわち、すべり面で軸を受ける滑り軸受は、給油により発生する油圧で軸と軸受の擬着(焼き付き)を防ぐものであり、その構造が簡単であることから広く利用されている。このすべり軸受の性能は、軸受の面圧(P)と軸受の周速(V)の積(PV値)がすべり軸受の材質の選定ガイドラインとなるため、その限界を試験することが極めて重要である。本発明は、滑り軸受のPV値を知る試験装置に関するものである。
【技術の背景】
【0002】
従来、すべり軸受の試験装置としては特許文献1に示される装置があった。
【0003】
以下、特許文献1について特許文献1の公開公報の図1とその符号を括弧内に記載して用い説明するので本願には図示しない。
【0004】
特許文献1の試験装置は、その図1に示されるように、基台(11)の上部に2つの台座(12)と台座(13)をスリット(間隔)(16)設けて積み上げ、前記台座(13)に前記スリット(16)を貫通し電動機で回転させられる柱状部材(2)を設け、前記スリット(16)内に軸受(3)を前記柱状部材(2)に沿わせる軸受保持部材(17)を設け、この軸受保持部材に振動を与える加振装置(20)を設けた構成である。
【0005】
特許文献1に開示された試験装置は、柱状部材(2)に軸受保持部材(17)で軸受(3)を沿わせた状態である図1において、加振装置(20)で軸受保持部材(17)に振動(負荷)を加えながら、柱状部材(2)回転させることで、軸受(3)のPV値を測定しようとするものである。
【0006】
特許文献1開示されたこの試験装置は、柱状部材(2)を水平方向で回転自在に保持して、この柱状部材(2)を軸受保持部材(17)により軸受(3)沿わせる構成であるから、固定された柱状部材(2)の長手方向に幅を持って軸受(3)を沿わせる構造であるから、片当たりを発生し易い。また、片当たりは試験が終了した後で軸受(3)の磨耗状況でわかるため、柱状部材(2)と軸受(3)との間に片当たりが発生したまま試験をし易い。そして、片当たりを起こしたまま試験してもその試験結果のきわめて不正確たなり、使用できないPV値となる。この点を解決しようとして、柱状部材(2)の長手方向に幅を持って軸受(3)の長手方向にロードセル(118A〜118C)を複数個配置して、このロードセル(118A〜118C)温度が均質になるように軸受保持部材を傾き調整機構(140)でコンピュータ制御する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−275633
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した特許文献1の試験装置は、電動機で回転させられる柱状部材(2)を水平に設置したので、この柱状部材(2)と軸受(3)の片当たりが発生する。この片当たりを傾き調整機構(140)をコンピュータ制御して解消しようとしたものであるが、片当たりを解消する傾き調整機構(140)の作動遅れなどにより片当たりを確実に解消できない問題点を有するものである。
【0009】
本発明は、滑り軸受の試験装置に片当たりが発生しない機構を組み込むことにより、片当たりの発生を検知して修正するのでなく、自動的に片当たりを修正して正確な試験を行うことが出来る装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る滑り軸受の試験装置は、下部機台の上部に上部機台を設けた機台と、下部機台にその下部が固定されたトーションバーと、前記上部機台の上部に固定され前記トーションバーの軸心とほぼ同一軸線上に配置され動力源で駆動される回転軸を保持する軸受と、この軸受が保持する回転軸に固定され揺動可能であり試験シャフトを固定した軸継手と、前記下部機台の上部に回転可能に支持され前記トーションバーの上部が固定されその内部の中心部分に前記試験シャフトが位置する試験室を形成する試験機台と、この試験機台を貫通し前記試験室に臨み前記試験シャフトと交差する方向の出力端を有し試験機台に固定された押圧装置と、この押圧装置の出力端に対抗する位置で前記試験機台を貫通し試験室に臨み前記試験シャフトと交差する方向の受力端を有し試験機台に固定された受力装置と、前記試験シャフトに試験メタルを沿わせる保持部材を備え前記押圧装置と試験シャフトとの間に配置してある押圧側保持装置と、前記試験シャフトに試験メタルを沿わせる保持部材を備え前記受力装置と間に配置してある受力側保持装置とで構成した保持装置と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
第2の発明に係る滑り軸受の試験装置は、前記押圧装置を油圧シリンダとしたことを特徴とする。
【0012】
第3の発明に係る滑り軸受の試験装置は、前記受力装置をその内部にロードセルを備えた構成としたことを特徴とする。
【0013】
第4の発明に係る滑り軸受の試験装置は、前記押圧側保持装置と前記重圧側保持装置が試験メタルを保持する着脱自在な保持爪を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る滑り軸受の試験装置は、試験シャフトを垂直方向で且つフレキシブル継手により多少の揺動可能として回転させる構成にし、この試験シャフトに試験メタルを抱きつくように接触した状態で押圧装置により試験メタルと試験シャフトの接触負荷を作用させる構成であるから、試験メタルを抱きつく様に接触させた試験シャフトは接触負荷を作用させる方向に自由度があるので、試験メタルがその長手方向に傾いても試験シャフトも同様に傾くのでの片当たりを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の一部断面を含む正面図。
【図2】図1の要部拡大図
【図3】図1の要部拡大平面図
【図4】保持装置の平面図
【図5】保持装置の断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態の一部断面を含む正面図である図1とその部分拡大図である図2において、滑り軸受の試験装置15は、下部の横桟16とこの横桟16の上部で平行に横桟17を備えた下部機台10とその下部機台10の上に駆動源(図示せず)が設けられる上部機台11を設置した機台13を有する。
【0017】
この機台13の下部機台10の下部に設けられた横桟16の中央部には、トーションバー20の下端21と、筒状構造体22の下端24とが固定されている。この筒状構造体22は、前述した様にその下端24が横桟16に取り付けてありその上端23が前記横桟16に平行に設けた上部の横桟17に固定することで下部機台10に固定している。
【0018】
この筒状構造体22は、前記横桟17に取り付けられる上端23部分の内部に円筒状凹部25を備えており、この円筒状凹部25の内部で、試験機台30の下端に設けてある円筒支持部31をスラストベアリング32で回動自在に保持してある。
【0019】
試験機台30の下端に設けてある円筒支持部31には、その下端と前記筒状構造体22の上部に回動可能に設けてありトーションバー20の上端を保持する支持部材28が連結体34で連結してある。
【0020】
試験機台30と筒状構造体22との関係は、上述したように試験機台30の円筒支持部31が回動自在に構成されているので、試験機台30に回転モーメントが作用するとトーションバー20を捻る。したがって、トーションバー20の捻られる量を電気的に変換して測定すると、試験機台30に作用している回転負荷を測定(試験メタル61、62と試験シャフト40の焼きつき状態)できる。
【0021】
上部機台11の上部に固定される軸受50は、トーションバー20の軸線26とほぼ一致する軸線上で回転する回転軸27を支持する。この回転軸27には、その下端にフレキシブル継手28が設けてある。
【0022】
このフレキシブル継手28の下端には、前記試験機台30の試験室36内にする試験シャフト40が取り付けてある。前記した回転軸27とフレキシブル継手28と試験シャフト40の軸心は、前記トーションバー20の軸線26とほぼ同一である。そして、この軸線26は、図3に示すように試験機台30の試験室31の中心とほぼ一致する。つまり、駆動源により回転させられる各種の部品は、トーションバー20の軸線26を中心に回転刷る構造である。
【0023】
図3に配置関係の概略を示し、その詳細を図2に示す押圧装置41と受力装置51は、試験機台30の横桟17方向の軸線18に沿って配置してありその本体が試験機台30の側面に固定してある。そして、押圧装置41の出力端と受力装置51の受力端53は互いに対抗した位置にある。したがって、押圧装置41の出力は、受力装置51に正確に受け止められる構造である。
【0024】
押圧装置41は、油圧シリンダで構成してありそのピストン42がその圧力室44に作用する油圧により発生する押圧力をそのロッド43より出力端47より外部に出力する。また、圧力室45に油圧が作用するとロッド43は後退する。また、押圧装置41と対抗する位置に配置してある受力装置51は、その本体52に摺動自在に保持されその先端に受力端53を備えたロッド54を備えた構造であり、前記受力端53に作用する押圧力がロッド43を介してロードセル55に伝達する構成である。
【0025】
押圧装置41の本体には、切換弁46が設けてあり、この切換弁46で押圧装置41の圧力室44又は圧力室45への圧油の給排をおこなう。また、試験室31内に設けたヒータ76は、試験室31内の潤滑油を加熱するもので、潤滑油の温度を常に適温に保つこの潤滑油の温度は温度計77で計測されている。さらに、押圧装置41に設けたストッパー48は、試験機台30の過大な回転(試験シャフト40と試験メタル61と試験メタル62の焼き付きにより発生する過大な回転)によりトーションバー20が折損した時試験機台30の回転を阻止するようになっている。
【0026】
試験メタル61、62を保持する保持装置60は、試験シャフト40と押圧装置41の出力端47との間に試験メタル61を保持して試験シャフト40に沿わせる押圧側保持装置63と、試験シャフト40と受力端53の間に試験メタル62を保持して試験シャフト40に沿わせる受圧側保持装置64とで構成してあり、前記押圧側保持装置63と押圧装置41の出力端47とはピン65で連結位置決めさ、同様に受圧側保持装置64の受力端53とはピン66で連結位置決めされて試験シャフト40に沿わせる機能を有する。
【0027】
保持装置60の押圧側保持装置63の両端には、保持爪71、72をボルトで着脱自在に設けてありこの保持爪7172により試験メタル61を押圧側保持装置63に装着する。同様に、受圧側保持装置64の両端には、保持爪73、74をボルトで着脱自在に設けてあり、この保持爪73、74により試験メタル62を圧側保持装置64に装着する。
【0028】
保持装置60は、図5に示すように、保持爪71、72と交差しない適当な位置に試験メタル61に達する孔を穿ち、この孔75内に試験メタル61に接触する温度計76を設けてある。なお、受圧側保持装置64も同様の構造をしており試験メタル62の温度を常時測定する構成である。
【0029】
作動
次に上述した実施形態の作動について述べる。図1のように試験メタル61、62を試験シャフト40に沿わせるには、滑り軸受の試験装置15の押圧装置41の圧力室45に作動圧油を供給し、ロッド43を後退させ試験シャフト40を外し試験室31が空になった状態にしておく。次に、保持装置60の押圧側保持装置63の保持爪71、72を外して試験メタル61を装着た後保持爪71、72を締結して押圧側保持装置63に試験メタル61を固定する。同様にして受圧側保持装置64にも試験メタル62を取り付け保持装置60に試験メタル61、62が装着された状態にしておく。
【0030】
次いで、まず受圧側保持装置64を受力端53に上記した受圧側保持装置64を装着した後に試験シャフト40をフレキシブル継手28に装着する、そして、押圧側保持装置63を出力端47に装着する。この様にして保持装置60と試験シャフト40を図1のようにセットする。次に、押圧装置41の圧力室44に圧油を供給し、押圧側保持装置63と受圧側保持装置64が試験メタル62と試験メタル62を試験シャフト40に抱きつくように沿わせる。この時試験シャフト40の軸心に対して試験メタル61と試験メタル62の軸心の傾きがあっても、フレキシブル継手28により試験シャフト40の軸心が傾く。そして、試験室31に潤滑油を満たしこの潤滑油を所定の温度に保たせる。このとき試験シャフト40と保持装置60との間に少し軸心のずれが発生するが、フレキシブル継手28により、芯ずれによる片当たりを防止できる。
【0031】
上述の様にして図1に示すような状況で、駆動源により回転軸27を介して試験シャフト40を回転させつつ押圧装置41の圧力室44に油圧を作用させて、出力端47が試験シャフト40に押圧側保持装置63を押圧する。この押圧側保持装置63への押圧力は、試験シャフト40から受圧側保持装置64を介して受力装置51の受力端53とロッド54で受け止められる、その締め付け力が、ロードセル55で測定される。
【0032】
上記押圧装置41と受力装置51が試験機台30に対抗して固定してあるので、の押圧装置41の出力は、試験シャフト40を介在して内部張力として作用するのみである。この内部張力は、試験機台30を旋回させる力として作用し試験機台30の下部に設けたトーションバー20を捻る力となる。したがって、試験シャフト40と試験メタル61と試験メタル62の接触圧力はトーションバー20の変化量として測定できる。
【0033】
また、試験シャフト40に試験メタル61、62を押圧することで、上昇する温度は、押圧側保持装置63、64内に設けた温度計76で測定される。
【0034】
この様に、試験メタル61、62に作用する押圧力は、ロードセル55で測定し、試験シャフト40と試験メタル61、62の焼付き度合いは、トーションバー20の捻り度合いで測定され、試験メタル61、62の温度は、温度計76で常時測定され、潤滑油の温度は温度計77で測定される。
【0035】
したがって、この実施形態の滑り軸受の試験装置では、試験シャフト40の回転速度と、試験メタル61、62の温度と、押し圧力と、焼付き度合と、潤滑油の温度との関係を測定できる。具体的例としては、試験メタル61、試験メタル62の極限値を知るには、トーションバー20が最大の捻り(試験シャフト40と試験メタル61,62とが焼きついた時)を検出したときの状況である、潤滑油の温度、試験メタル61、62の温度、回転軸27の回転数、試験メタル61、62への押圧力を知ることがで、その値がその滑り軸受の限界であるから、このときの面圧(P)と回転数(V)の積であるPV値を測定できる。
【符号の説明】
【0036】
10 下部機台
11 上部機台
13 機台
15 滑り軸受の試験装置
20 トーションバー
30 試験機台
31 試験室
36 試験室
40 試験シャフト
41 押圧装置
51 受力装置
55 ロードセル
60 保持装置
61 試験メタル
62 試験メタル
63 押圧側保持装置
64 受圧側保持装置
71〜74 保持爪
76 温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部機台の上部に上部機台を設けた機台と、
下部機台にその下部が固定されたトーションバーと、
前記上部機台の上部に固定され前記トーションバーの軸心とほぼ同一軸線上に配置され動力源で駆動される回転軸を保持する軸受と、
この軸受が保持する回転軸に固定され揺動可能であり試験シャフトを固定した軸継手と、
前記下部機台の上部に回転可能に支持され前記トーションバーの上部が固定されその内部の中心部分に前記試験シャフトが位置する試験室を形成する試験機台と、
この試験機台を貫通し前記試験室に臨み前記試験シャフトと交差する方向の出力端を有し試験機台に固定された押圧装置と、
この押圧装置の出力端に対抗する位置で前記試験機台を貫通し試験室に臨み前記試験シャフトと交差する方向の受力端を有し試験機台に固定された受力装置と、
前記試験シャフトに試験メタルを沿わせる保持部材を備え前記押圧装置と試験シャフトとの間に配置してある押圧側保持装置と、前記試験シャフトに試験メタルを沿わせる保持部材を備え前記受力装置と間に配置してある受力側保持装置とで構成した保持装置と、
を備えたこと、を特徴とする滑り軸受の試験装置。
【請求項2】
前記押圧装置を油圧シリンダとしたことを特徴とする前記請求項1記載の滑り軸受の試験装置。
【請求項3】
前記受力装置をその内部にロードセルを備えた構成としたことを特徴とする前記請求項1記載請求項2記載の滑り軸受の試験装置。
【請求項4】
前記押圧側保持装置と前記重圧側保持装置が試験メタルを保持する着脱自在な保持爪を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の滑り軸受の試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−83187(P2012−83187A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229391(P2010−229391)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(391037571)神鋼造機株式会社 (4)
【Fターム(参考)】