説明

漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維

【課題】 ポリアクリル酸架橋セルロース繊維、その繊維の製造方法、及び繊維を含む製品を提供する。
【解決手段】 漂白剤で処理されたポリアクリル酸架橋セルロース繊維を含む、漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維とその製造方法を提供する。該繊維は、漂白剤で処理されていないポリアクリル酸架橋セルロース繊維より大きい白色度指数を有することが好ましく、該漂白剤が過酸化水素を含むことが好ましい。また、漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を含む吸収性製品であって、該漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維が漂白剤で処理されたポリアクリル酸架橋セルロース繊維を含む、前記製品を提供する。該製品は、布巾、ティシュー、又はタオルであることが好ましく、また、幼児用おむつ、成人用失禁製品、又は婦人用衛生製品であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明の分野
本発明は、漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維と、漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を製造するための方法及び使用するための方法とに関する。
【0002】
本発明の背景
セルロース繊維は、おむつなどの吸収性製品の基本構成要素である。これらの繊維は、液体吸収構造を形成するが、これは吸収性製品において鍵となる機能要素である。セルロースフラフ(fluff)パルプは、セルロース繊維の一形態であり、空隙体積の高い又は嵩
高い液体吸収繊維構造が形成されることから、この用途には好ましい繊維である。しかしながら、この構造は湿ると崩壊する傾向がある。繊維構造の嵩が崩壊又は低減すると、湿潤状態の構造において保持することができる液体の体積が低減し、セルロース繊維構造の湿っていない部分への液体の吸い上がりが抑制される。その結果として、乾燥した嵩高い繊維構造の潜在的吸収力が実現されることはなく、繊維構造の湿潤嵩が繊維構造全体の液体保持能を決定する。
【0003】
架橋セルロース繊維から形成された繊維構造は、一般的に、非架橋繊維から形成されたものと比較して、湿潤嵩が向上されている。嵩が向上されるということは、架橋の結果として繊維に与えられた剛性、撚り、及びカールの結果である。したがって、有利なことには、架橋繊維はその湿潤嵩を向上させるために吸収性製品に組み込まれる。
【0004】
ポリカルボン酸は架橋セルロース繊維に対して使用されてきた。例えば、米国特許第5,137,537号;米国特許第5,183,707号;及び米国特許第5,190,563号を参照のこと。これら
の参照文献には、C2−C9ポリカルボン酸で架橋され、個々に区別されたセルロース繊維を含有する吸収性構造が記載されている。これらの個々に区別された架橋繊維から作られた吸収性構造は、高い乾燥及び湿潤弾性を示し、非架橋繊維を含有する構造と比較して湿りに対して改良された応答性を有する。そのうえ、好ましいポリカルボン酸架橋剤であるクエン酸は、比較的低い価格で大量に入手可能であり、このためクエン酸はホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド付加生成物と商業的に競合している。
【0005】
ポリカルボン酸架橋剤が提供する利点にもかかわらず、クエン酸などの低分子量ポリカルボン酸により架橋されたセルロース繊維は時が経つにつれてその架橋を失い、非架橋繊維へと逆戻りする傾向がある。例えば、クエン酸架橋繊維は、貯蔵時に無視できないほどの架橋の損失を示す。そのような架橋の逆戻りは、一般的には、繊維の嵩及び吸収能を高めるという繊維架橋の目的をくつがえす。したがって、これらのポリカルボン酸により架橋された繊維の有効貯蔵寿命は比較的短く、このためこれらの繊維はその有用性が幾分限定される。しかし、高分子ポリカルボン酸架橋繊維は、これらの繊維から調製された繊維ウェブの寿命にわたって実質的に変化しない密度を示す。例えば、米国特許第6,620,865
号を参照のこと。この密度の老化又は逆戻りに対する抵抗は、高分子ポリカルボン酸架橋剤を用いて形成された安定な繊維内架橋に関係している。対照的に、クエン酸により架橋されたセルロース繊維は、無視できない密度の増加を示し、時が経つにつれて嵩及び吸収能の損失を伴う。一般的には、密度の増加は、繊維中の架橋レベルの減少(すなわち逆戻り)を示している。密度増加に加えて、繊維ウェブにおける架橋の損失により、嵩高さが小さいウェブとなり、その結果、吸収能及び液体捕捉能は減少する。
【0006】
残念ながら、クエン酸又はポリカルボン酸架橋剤は、架橋反応を行うために必要とされる高温において、白色のセルロース繊維の変色(すなわち黄変)を引き起こし得る。
漂白は、パルプのパルプ白色度を上げるための一般的な方法である。フラフパルプの外観を改良するための産業上の慣例は、パルプをこれまでよりも高いレベルの白色度まで漂白することである(紙パルプ技術協会(TAPPI)又は国際標準化機構(ISO))。伝統的な漂白剤としては、元素状態の塩素、二酸化塩素、及び次亜塩素酸塩が挙げられる。しかし、漂白は費用がかかり、環境的に苛酷であり、多くの場合、製造のボトルネックの源である。消費者の好みはより明るく白いパルプについて広まっていることから、製造業者らはこれまでよりも積極的に漂白ストラテジーを追求している。高度に漂白されたパルプは漂白程度の低い等価物よりも“白い”が、これらのパルプは依然として黄白色である。黄白色の製品は望ましくない。消費者が黄白色と比較して明らかに青白色を好むことを示唆する研究は無数にある。青白色はより白い、すなわち「新鮮」、「新しい」、「清潔」と知覚されるが、黄白色は「古い」、「色褪せた」、「汚い」と判断される。
【0007】
繊維の変色に加えて、不快なにおいも、クエン酸などのα−ヒドロキシカルボン酸の使用に関連し得る。最近では、クエン酸架橋セルロース繊維と関連した特有のにおいを除去することができ、これらの繊維をアルカリ溶液(例えば、水酸化ナトリウムの水溶液)及び酸化性漂白剤(例えば、過酸化水素)と接触させることにより、白色度を改良できることが分かっている。米国特許第5,562,740号を参照のこと。この方法においては、アルカ
リ溶液により仕上がり繊維のpHを約4.5から好適に5.5−6.5まで上げている。このことと、酸化性漂白剤とを組合せることにより、クエン酸架橋繊維の「いぶしたような焦げた」においの特徴は排除される。また、酸化性漂白剤は最終製品の白色度を増すのに役立つ。
【0008】
したがって、有利な嵩と改良された白色度及び白さを有する架橋セルロース繊維に対する必要性が存在する。本発明はこれらの必要性を満足させようとするものであり、更なる関連した利点を提供する。
【0009】
発明の要旨
一の側面において、本発明は、漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を提供する。本発明の漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維は、1種以上の漂白剤で処理されており高い嵩と改良された白さとを有する架橋セルロース繊維を提供する、ポリアクリル酸架橋セルロース繊維である。
【0010】
本発明の別の側面においては、漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を製造するための方法を提供する。この方法では、ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を1種以上の漂白剤で処理して、改良された白さを有する架橋セルロース繊維を提供する。一の態様においては、架橋剤は過酸化水素である。別の態様においては、架橋剤は過酸化水素と水酸化ナトリウムの組合せである。
【0011】
他の側面においては、本発明は、漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を含む吸収性製品を提供し、この吸収性製品としては、布巾、タオル、及びティシュー、並びに幼児用おむつ、成人用失禁製品、及び婦人用衛生製品が挙げられる。
【0012】
好ましい態様の具体的な説明
一の側面において、本発明は、漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を提供する。本発明の漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維は、1種以上の漂白剤で処理されており、高い嵩と、以下に説明する白さ指数(Whiteness Index)により測定して、改良された白
さとを有する架橋セルロース繊維を提供する、ポリアクリル酸架橋セルロース繊維である。この漂白ポリアクリル酸架橋繊維は、漂白剤で処理されていないポリアクリル酸架橋繊維と比較して高い白さ(すなわち、大きい白さ指数)を有する。
【0013】
本発明の漂白セルロース繊維は、ポリアクリル酸架橋セルロース繊維から作られる。これらの架橋セルロース繊維は、セルロース繊維を一定量のポリアクリル酸架橋剤で処理して、高い嵩を有する繊維内架橋セルロース繊維を提供することにより得られる。
【0014】
ポリアクリル酸架橋セルロース繊維とポリアクリル酸架橋セルロース繊維を製造するための方法は、米国特許第5,549,791号、5,998,511号、及び6,306,251号に記載されており
、これらは各々全体として参照により本明細書中に明示的に援用される。
【0015】
ポリアクリル酸架橋セルロース繊維は、ポリアクリル酸を繊維内架橋を行うのに充分な量でセルロース繊維に施用することにより調製することができる。セルロース繊維に施用する量は、繊維の全重量に基づいて約1〜約10重量パーセントであることができる。一の態様においては、架橋剤は乾燥繊維の全重量に基づいて約4〜約6重量パーセントである。
【0016】
ポリアクリル酸架橋セルロース繊維は、架橋触媒を用いて調製することができる。適する触媒としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウムなどの酸性塩や、リン(III)を含有する酸のアルカリ金属塩
を挙げることができる。一の態様においては、架橋触媒は次亜リン酸ナトリウムである。使用する触媒の量は、乾燥繊維の全重量に基づいて約0.1〜約5重量パーセントで変化させることができる。
【0017】
他の供給源からも入手可能であるが、本発明の漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を製造するために有用なセルロース繊維は、主として木材パルプ由来である。本発明に関して使用するのに適する木材パルプ繊維は、その後の漂白の有無にかかわらず、クラフト法や亜硫酸法などの周知のケミカル法から得ることができる。また、パルプ繊維はサーモメカニカル法、ケミサーモメカニカル法、又はこれらの組合せにより処理してもよい。好ましいパルプ繊維は、ケミカル法により製造される。砕木パルプ繊維、再生又は二次木材パルプ繊維、及び漂白・非漂白木材パルプ繊維を使用することができる。好ましい出発材料は、サザンパイン、ダグラスファー、トウヒ及びツガなどの長繊維の針葉樹材種から調製される。木材パルプ繊維の製造の詳細は当業者に周知である。適する繊維は、Weyerhaeuser Companyを含む多数の会社から商業的に入手可能である。例えば、サザンパインから製造された、本発明において使用することができる適するセルロース繊維は、Weyerhaeuser CompanyからCF416、CF405、NF405、PL416、FR416、FR516及びNB416の名称で入手可能
である。
【0018】
また、本発明において有用な木材パルプ繊維は、本発明に関して使用する前に前処理してもよい。この前処理には、繊維を蒸気又は化学的処理に供するなどの物理的処理が含まれる。限定と解釈すべきではないが、繊維を前処理する例としては、難燃剤を繊維に施用することや、界面活性剤又は、繊維の界面化学を変更する溶媒などの他の液体を施用することが挙げられる。他の前処理としては、抗菌物質、顔料、及び増密度剤(densification agent)又は柔軟剤を組み込むことが挙げられる。また、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂
などの、他の化学物質で前処理した繊維を使用してもよい。更に、複数の前処理を組合せて使用してもよい。
【0019】
本発明を実施する際に有用なポリアクリル酸架橋セルロース繊維は、Young, Sr et al.への米国特許第5,447,977号(参照により全体として本明細書中に明示的に援用される)
に記載されるような系と装置により調製してもよい。簡単には、セルロース繊維のマット又はウェブを繊維処理帯域を通して輸送するための運搬装置;繊維処理帯域にて処理物質を供給源から繊維に施用するためのアプリケーター;マットを構成する個々のセルロース繊維を引き離して、実質的に破壊されておらず本質的に単一にされたセルロース繊維から
なる繊維出力を形成するためのファイバライザー;残留水分をフラッシュ蒸発させるための、ファイバライザーに連結された乾燥機;及び、乾燥させ硬化させた架橋繊維を形成するための、繊維の付加的加熱のための制御温度帯域と架橋剤を硬化させるためのオーブンを含む系及び装置により繊維を調製する。
【0020】
本明細書中で使用するように、「マット」という用語は、セルロース繊維又は互いに共有結合していない他の繊維を含む任意の不織シート構造を言う。これら繊維には、木材パルプ若しくは、綿布、大麻、イネ科の牧草、サトウキビ、トウモロコシの茎を含む他の供給源、又はシートへと撚ることができるセルロース繊維の他の適する供給源から得られる繊維が挙げられる。セルロース繊維のマットは、好ましくは、伸張させたシート形態であるが、サイズの異なる数多くの梱包シートの一つであってもよく、又は連続ロールであってもよい。
【0021】
セルロース繊維のマットは、それぞれ、運搬装置(例えば、コンベヤーベルト又は一連の駆動ローラー)により輸送する。運搬装置により、マットを繊維処理帯域を通して運ぶ。
【0022】
繊維処理帯域では、セルロース繊維のマットに架橋剤溶液を施用する。架橋剤溶液は、好ましくは、吹付け、ロール塗り、浸漬を含む当技術分野において知られている種々の方法のうち任意の方法を用いてマットの片面又は両面に施用する。一旦架橋剤をマットに施用したら、例えば、マットを一対のローラーを通して通過させることにより、この溶液をマット全体に均一に分布させてもよい。
【0023】
マットの繊維を架橋剤で処理したあと、マットをハンマーミルに通して送ることにより、含浸させたマットを繊維化させる。ハンマーミルは、マットをその構成要素である個々のセルロース繊維へとばらばらにするのに役立ち、セルロース繊維は次いで乾燥ユニットを通して空気運搬し、残留水分を除去する。好ましい態様においては、繊維マットを湿潤状態で繊維化する。
【0024】
得られる処理済みパルプを、次いで、追加の加熱帯域(例えば、乾燥機)を通して空気運搬して、パルプの温度を硬化温度まで上げる。一の態様においては、乾燥機は、繊維を受容し、繊維から残留水分をフラッシュ乾燥法により除去するための第一の乾燥帯域と、架橋剤を硬化させるための第二の乾燥帯域とを含む。また、別の態様においては、処理済み繊維にフラッシュ乾燥機を通して送風して残留水分を除去し、硬化温度まで加熱し、次いで、オーブンに移しそこで続いて処理済み繊維を硬化させる。概して、処理済み繊維を乾燥させてから、架橋させるのに充分な時間・温度で硬化させる。典型的には、繊維を、約120℃〜約200℃の温度で約1〜約20分間オーブン乾燥して硬化させる。
【0025】
本発明の別の側面においては、漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を製造するための方法が提供される。この方法においては、ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を1種以上の漂白剤で処理して、改良された白さ(すなわち、高い白さ指数)を有するポリアクリル酸架橋セルロース繊維を提供する。
【0026】
漂白剤はポリアクリル酸架橋セルロース繊維に施用する。一の態様においては、漂白剤は過酸化水素である。別の態様においては、漂白剤は過酸化水素と水酸化ナトリウムの組合せである。他の適する漂白剤としては、過酸(例えば、過酢酸)、過酸化ナトリウム、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム、及び次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。また、漂白剤の混合物を使用してもよい。
【0027】
ポリアクリル酸架橋セルロース繊維は、有利なことには、繊維1トンあたり約0.1〜
約20ポンド(約0.05〜約9kg)の過酸化水素で処理することができる。一の態様においては、繊維1トンあたり約0.1〜約10ポンド(約0.05〜約5kg)の過酸化水素で繊維を処理する。別の態様においては、繊維1トンあたり約0.1〜約2ポンド(約0.05〜約0.9kg)の過酸化水素で繊維を処理する。
【0028】
本方法の一の態様においては、過酸化水素及び水酸化ナトリウムを、ポリアクリル酸架橋繊維を含有する空気流れ中に吹き付けることにより、漂白剤をポリアクリル酸架橋繊維に施用する。この態様においては、繊維1トンあたり水酸化ナトリウムを約5ポンド(約2kg)まで繊維に施用することができる。一の態様においては、ポリアクリル酸架橋繊維は乾燥している。次いで、得られる漂白ポリアクリル酸架橋繊維を梱包装置へと運び、そこで生成繊維を搬送のため梱包する。
【0029】
本発明の漂白ポリアクリル酸架橋繊維の特性及び特徴を以下に説明する。
ポリアクリル酸架橋セルロース繊維は、サザンパインクラフトパルプ繊維(CF416,Weyerhaeuser Co.)を、ポリアクリル酸(ACUMER 9932, Rohm & Haas)(繊維のオーブン乾
燥重量全体に基づいて4重量%のポリアクリル酸)及び次亜リン酸ナトリウム(繊維のオーブン乾燥重量全体に基づいて0.7重量%)で処理することにより調製し、その後、表1に記載し表2に特性付けるように、再加湿して漂白させた。次いで、処理済み繊維を193℃で8分間硬化させた。これら繊維を、水又は表1に説明する漂白剤(すなわち、過酸化水素(H22)/水酸化ナトリウム(NaOH))を含有する水により再加湿した。
【0030】
サンプルA−Hを表1及び2に示す。サンプルAは対照であり、過酸化水素又は水酸化ナトリウムで処理していないポリアクリル酸架橋繊維である。サンプルB−Dは、ポリアクリル酸架橋繊維を、繊維1風乾メートルトンあたり、水酸化ナトリウム無しで、それぞれ、0.65,1.5,及び3.4キログラムの過酸化水素に供することにより調製した。サンプルEは、ポリアクリル酸架橋繊維を、繊維1風乾メートルトンあたり、過酸化水素無しで、1.2キログラムの水酸化ナトリウムに供することにより調製した。サンプルF−Hは、ポリアクリル酸架橋繊維を、繊維1風乾メートルトンあたり、それぞれ、0.45,1.45,及び4.0キログラムの過酸化水素並びに0.90,1.45,及び1.6キログラムの水酸化ナトリウムに供することにより調製した。表1は、繊維サンプル(サンプルA−H)を提供する漂白処理をまとめている。施用量は、架橋繊維1風乾メートルトン(admt)に対して施用した化学物質固体の量(キログラム)である。括弧内の値は1トンあたりのポンドの単位である。実験最小値は、再加湿した生成物の測定水分含量に基づく計算値である。これは、測定水分含量を達成するのに必要な量の水に関して施用された化学物質の量である。水は加熱繊維の冷却により蒸発して失われることから、施用される化学物質の実際量は計算された実験最小値よりも多いと見込まれる。この計算は、1風乾メートルトンが水分含量10重量%であると仮定している。
【0031】
【表1】

【0032】
本発明の原理を説明するためには、白さ及び白色度の検討が有用である。Websterの辞
書によれば、白は、“顕著な明度をもつ物体の色であり、可視スペクトル全域にわたる殆ど全ての入射エネルギーを拡散して反射する物体に属すると特質上感じられる色”と定義される。名詞又は形容詞として使用する場合、白は“色がない”と定義される。殆どの天然産物や多くの人工製品は、“色がない”ということはない。“白い”製品がフラフパルプ、紙、織物、プラスチック、又は歯であるか否かにかかわらず、殆ど常に、白以外の固有の色が製品に付随して存在する。ここで二つの仮定的な物体を考える。第一の物体は、Websterの白の定義を満たし、反射率の高い一様なスペクトルを特徴とするものであり、
第二の物体は、第一の物体に少量の青色着色料を添加したものである(スペクトルは一様でなくなる)。たとえその全反射率が一定のスペクトル領域において低いとしても、殆どの人は第二の物体がより白いと判断するであろう。更に、人間の色覚の主観性に関しては、無意識に一定の関連付けがなされる。青白色は“きれいで純粋”と関連付けられる一方、“黄白色”は“汚い、古い、又は不純”の象徴である。結果として、充填材及びその色合いが適切である(例えば、赤−青、緑−青)着色料のタイプや量と、対象に対する最適な光学的処方とが、多大な関心を払われる主題となっている。
【0033】
白さの属性(TAPPI白色度ではない)は、顧客による製品の白さに関する好みとよく相
関している。TAPPI白色度が等しい二つの製品間で選択権を与えられた場合、人間は通常
、白さの属性が高い製品を好む。CIE白さの適用は、そのような白さの属性の唯一の指標
である。同様に、比較される製品より白さの高い製品は、それが低い白色度を示す場合であっても、好ましい。北アメリカにおけるTAPPI白色度と、残りの全世界にわたるISO白色度は、製品の“白さ”を粗く定量するために使用されるパルプ及び紙産業の特別な標準規格である。TAPPI又はISOのいずれの標準規格が適用されるかにかかわらず、白色度は457nmの有効波長で測定される製品のパーセント反射率と定義される。一般に、当産業では白色度が高いとは白さが高いことを意味すると認識されるが、必ずしも常にそうではない。白色度は可視スペクトルの青色端において行われる帯域限定測定であるから、本質的には製品がどれだけ青いかを測定している。白色度の表示に依拠すれば、TAPPI白色度を
最大にすることができ、更に白ではなく青く見える製品を製造することができる。白色度は、製品がどれだけ白いかという示度をほとんど提供しないし、その明度、色相、又は彩度について何も示さない。白さの表示としてこれでは不充分である。このように、白さが主目的である場合に白色度を追求するのは危険である。
【0034】
L,a及びbを用いて、表面の色外観の3つの属性について測定した値を以下のとおり
に示す:Lは明度を示し、黒色を示すゼロから完全な白色を示す100まで増加する;aは、プラスは赤色を示し、マイナスは緑色を示し、ゼロは灰色を示す;そしてbは、プラスは黄色を示し、マイナスは青色を示し、ゼロは灰色を示す。反対色の概念は、1878年にへーリングによって提唱された。1940年代以来、数多くの測定可能なL,a,b次元は、CIEドキュメントNo.15に定義される、それらをCIE XYZ 3刺激値に関連させる等式により定義してきた。所与の色について測定された値は、それらの値が表される色空間に依存する。[TAPPI 1213 sp-98“光学的測定用語法(Optical measurements terminology)”(紙の外観評価に関する)]。
【0035】
基本的な色測定は商業的に入手可能な装置(例えば、Technibrite MicroTB-1C, Technydine Corp.)を用いて行われる。この装置は、白色度フィルタ及び色フィルタを通して走査する。各々のフィルタ位置において50回読み取りを行い平均する。測定は、白色度,R(X),R(Y),及びR(Z)として報告される。白色度はISO白色度(457nm
)であり、R(X)は絶対赤色反射率(595nm)であり、R(Y)は絶対緑色反射率(557nm)であり、R(Z)は絶対青色反射率(455nm)である。次いで、CIE
三刺激関数X,Y,及びZを次の等式にしたがって計算する:X=0.782R(X)+0.198R(Z),Y=R(Y),及びZ=1.181R(Z)。次に、L値,a値及びb値を、確立された等式を用いて算定する(Technibrite Micro TB-1C Instruction Manual TTM 575-08, 1989年10月30日)。白さ指数,WI(CDM-L)は、TAPPI T 1216
sp-98(TAPPI 1216 sp-98“白さ、黄色度、白色度、及び発光反射率ファクターについての指数(Indices for whiteness, yellowness, brightness and luminous reflectance factor)”)にしたがった等式,WI(CDM-L)=L−3bにより計算した。
【0036】
サンプルA−Hについての白さ指数およびハンター色値を表2に示す。色(ハンターL,a,b)及び白さ指数(WI)は、初期値、1日後及び14日後の値を示す。
【0037】
【表2】

【0038】
表2に示す白さと色値をみると、ハンターLは過酸化水素の量の増加に伴い増加し、ハンターbは過酸化水素の増加に伴い減少しており、その結果白さ指数(WI)は増加している。例えば、サンプルA−Dについて0日の測定値を用いると、過酸化水素の量を増加させることにより、ハンターLが増加し(95.2,95.6,95.6,96.1)、ハンターbが減少する(7.43,7.14,6.13,5.92)。水酸化ナトリウムが存在するサンプルE−Hに関しても、同様の傾向が見られる。ハンターLは増加し(95.3,95.5,95.8,95.9)、ハンターbは減少する(7.13,7.10,6.13,5.92)。しかし、ハンターbの変化は、水酸化ナトリウムの添加により影響を受ける。例えば、サンプルC(過酸化水素1.5kg)とサンプルG(過酸化水素1.45kg)を比較すると、ハンターb値は、水酸化ナトリウム無しで0日で7.04
であり(サンプルC)、水酸化ナトリウム有りで0日で6.13(サンプルG)であることが分かる。水酸化ナトリウム処理材料は、約1ポイントのアドバンテージがある。しかし、14日の暗所貯蔵後には、水酸化ナトリウムで処理したサンプル(G)は、5.95で本質的には変わらないが、水酸化ナトリウム無しのサンプル(C)のハンターbは3.51まで低下した。水酸化ナトリウム処理材料は、水酸化ナトリウムを施用していないサンプルと比較して、2ポイント以上のアドバンテージをあけられている。概して、最良の結果は、白さ指数の増加が示すように、時間の経過(例えば、14日間)により得られ、過酸化水素のみでの処理により達成される(サンプルB−Dを参照のこと)。
【0039】
本発明の漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維は、有利なことに、例えば、板紙、ティシュー、タオルや布巾、並びに、幼児用おむつ、失禁製品、及び婦人用ケア製品などのパーソナルケア吸収性製品を含む種々の製品に組み込むことができる。したがって、別の側面においては、本発明は、漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を含んでいる布巾、タオル、及びティシュー、並びに、幼児用おむつ、成人用失禁製品、及び婦人用衛生製品を含む吸収性製品を提供する。
【0040】
本発明の好ましい態様を説明してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更を本発明になし得ることは理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漂白剤で処理されたポリアクリル酸架橋セルロース繊維を含む、漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維。
【請求項2】
漂白剤で処理されていないポリアクリル酸架橋セルロース繊維より大きい白色度指数を有する、請求項1記載の繊維。
【請求項3】
該漂白剤は過酸化水素を含む、請求項1記載の繊維。
【請求項4】
該漂白剤は過酸化水素を水酸化ナトリウムと組合せて含む、請求項1記載の繊維。
【請求項5】
ポリアクリル酸架橋繊維に漂白剤を施用することを含む、漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維の製造方法。
【請求項6】
該漂白剤は過酸化水素を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
過酸化水素を繊維1トンあたり約0.1〜約20ポンド(約0.05〜約9kg)の量で繊維に施用する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
該漂白剤は過酸化水素を水酸化ナトリウムと組合せて含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
水酸化ナトリウムを繊維1トンあたり約5ポンド(約2kg)までの量で繊維に施用する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維を含む吸収性製品であって、該漂白ポリアクリル酸架橋セルロース繊維が漂白剤で処理されたポリアクリル酸架橋セルロース繊維を含む、前記製品。
【請求項11】
該製品は布巾、ティシュー、又はタオルである、請求項10記載の製品。
【請求項12】
該製品は幼児用おむつ、成人用失禁製品、又は婦人用衛生製品である、請求項10記載の製品。

【公開番号】特開2011−32630(P2011−32630A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204443(P2010−204443)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2005−55778(P2005−55778)の分割
【原出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(302009279)ウェヤーハウザー・カンパニー (36)
【Fターム(参考)】