説明

漏洩検出装置及び空調装置

【課題】流体の漏洩を精度よく検出する。
【解決手段】漏洩の発生による被覆材12の変化にともなって上昇する歪みゲージ13,13の抵抗値に基づいて、冷媒の漏洩を検出する。被覆材12は、例えば汚れが付着していたり、結露していたとしても、流出した冷媒の量に比例して膨張する。このため、精度よく漏洩を検出することができる。また、被覆材12の素材を、漏洩検出装置10の用途や、使用環境に応じて選択することで、装置の経年劣化による検出不良を長期にわたって抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩検出装置及び空調装置に関し、更に詳しくは、流体の漏洩を検出する漏洩検出装置、及び前記漏洩検出装置を備える空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調装置は、冷却対象となる空間(冷却対象空間)と外部空間との間を循環する冷媒の冷凍サイクルを利用して、冷却対象空間の冷却を行う。冷媒の循環には、一般に、冷却対象空間と外部空間との間に敷設された銅管が用いられる。これらの銅管は、例えば継手やフレアナットによって、コンプレッサや熱交換器に接続される。
【0003】
この種の装置では、接続箇所のゆるみや、銅管の経年劣化等が原因で、銅管を循環する冷媒が外部に漏洩することがある。冷媒の漏洩は、装置の冷却効率を低下させるばかりでなく、装置の用途によっては、予想外の不具合を誘発させることがある。そこで、冷媒の漏洩を検出する技術が種々提案されている(例えば特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/054353号
【特許文献2】特開2007−85892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された漏洩検知方法は、漏洩が予想される箇所に配置された流体保持体のインピーダンスが、冷媒の漏洩が発生する前と、発生した後で変化することを利用して、冷媒の漏洩を検知するものである。しなしながら、流体保持体のインピーダンスは、汚れの付着や、結露などによっても変化してしまう。このため、周囲環境の温度や湿度が変化することにより、誤検出が発生することが考えられる。また、流体保持体の経年劣化が進行すると、インピーダンスが変化する。この場合には、冷媒の漏洩を精度良く検出することが困難になる。
【0006】
特許文献2に記載された装置は、冷媒が循環するパイプの内部空間と外部空間との間に形成された空間に位置するセンサを用いて、漏洩が始まる前に上述の空間に進入する冷媒を検出することによって、冷媒の漏洩を事前に検知する。しかしながら、内部空間と外部空間との間に新たな空間を形成すると、パイプの接続箇所が2重構造となり、十分な接続強度が得られないことが考えられる。
【0007】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、長期にわたって、流体の漏洩を精度良く検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の漏洩検出装置は、
内部に流体が存在する配管を被覆する被覆材と、
前記被覆材の変化を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記流体の漏洩の有無を判断する判断手段と、
前記検出結果を、前記判断手段に伝送する伝送手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流体の漏洩に起因して生じる被覆材の変化が検出される。そして、被覆材の変化度合いに基づいて、配管からの漏洩が検出される。このため、汚れに強く、劣化の進行が遅い素材を被覆材として用いることで、長期にわたって流体の漏洩を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る漏洩検出装置を示す図である。
【図2】被覆材、継手及び銅管の位置関係を示す図である。
【図3】漏洩検出装置の動作を説明するための図である。
【図4】変形例1に係る漏洩検出装置を示す図である。
【図5】変形例1に係る漏洩検出装置の動作を説明するための図である。
【図6】変形例2に係る漏洩検出装置を示す図である。
【図7】変形例2に係る漏洩検出装置の動作を説明するための図である。
【図8】変形例3に係る漏洩検出装置の別例を示す図である。
【図9】変形例3に係る漏洩検出装置の動作を説明するための図である。
【図10】変形例4に係る漏洩検出装置を示す図である。
【図11】変形例5に係る漏洩検出装置を示す図である。
【図12】変形例5に係る漏洩検出装置の動作を説明するための図である。
【図13】第2の実施形態に係る空調装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る漏洩検出装置10を示す図である。この漏洩検出装置10は、継手51と銅管50の接続部から漏洩する流体を検出する装置である。図1に示されるように、漏洩検出装置10は、継手51と銅管50との接続部を被覆する被覆材12、被覆材12に設けられた2つの歪みゲージ13,13、これらの歪みゲージ13,13にケーブル20を介して接続される判断装置11を有している。
【0012】
銅管50及び継手51は、例えば空調装置の室外ユニットと室内ユニットとの間を循環する冷媒の通路を構成している。図2に示されるように、銅管50の端部にはフランジ50aが形成されている。銅管50の端部に装着されたフレアナット53が、継手51のおねじ部51aに螺合されることで、フランジ50aが、パッキン60を介して、継手51に密着する。これにより、継手51と銅管50とが相互に接続される。
【0013】
被覆材12は、銅管50及び継手51の接続部をフレアナット53とともに被覆している。この被覆材12は、例えば樹脂、ラバー、及びシリコン等の比較的弱い力で変形或いは破断する素材からなる。
【0014】
この被覆材12による接続部の被覆は、例えば筒状に成形された樹脂からなる被覆材12に、銅管50と継手51の接続部が挿入された状態で、被覆材12を収縮させることにより行う。
【0015】
歪みゲージ13,13は、変形すると抵抗値が大きくなる素子である。これらの歪みゲージ13,13は、絶縁シートと、絶縁シートの表面に形成された導体パターンを有している。図1に示されるように、歪みゲージ13,13それぞれは、フレアナット53を挟むように配置され、被覆材12に密着した状態となっている。
【0016】
判断装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、及び主記憶部等を備えるマイクロコンピュータである。この判断装置11は、ケーブル20を介して歪みゲージ13,13の抵抗値を計測する。そして、歪みゲージ13,13の抵抗値が閾値以上になった場合に、銅管50と継手51との接続部から冷媒が漏洩していると判断し、判断結果を外部装置へ出力する。
【0017】
判断装置11による判断結果の出力は、例えば、接続部からの漏洩がなく、判断装置11による判断が否定された場合に、ローレベルとなり、接続部からの漏洩が発生し、判断装置11による判断が肯定された場合に、ハイレベルとなる検出信号を出力することにより行う。
【0018】
次に、上述のように構成された漏洩検出装置10の動作について説明する。銅管50と継手51との接続部から冷媒が漏洩すると、漏洩した冷媒は銅管50と被覆材12との隙間、及び継手51と被覆材12との隙間に進入する。そして、接続部からの漏洩が継続すると、図3に示されるように、被覆材12が膨張し変形する。被覆材12が変形すると、被覆材12に密着した歪みゲージ13,13も同様に変形し、歪みゲージ13,13の抵抗値が上昇する。
【0019】
判断装置11は、ケーブル20を介して、歪みゲージ13,13の抵抗値を監視する。そして、歪みゲージ13,13のいずれかの抵抗値が閾値以上になった場合に、検出信号の値をハイレベルにする。これにより、漏洩の発生が外部へ通知される。
【0020】
以上説明したように、本実施形態では、漏洩の発生による被覆材12の変化にともなって上昇する歪みゲージ13,13の抵抗値に基づいて、冷媒の漏洩が検出される。被覆材12は、例えば汚れが付着したり、結露したとしても、流出した冷媒の量に比例して膨張する。このため、精度よく漏洩を検出することができる。また、被覆材12の素材を、漏洩検出装置10の用途や、使用環境に応じて選択することで、装置の経年劣化による検出不良を長期にわたって抑制することができる。
【0021】
なお、上記実施形態では、被覆材12の素材が樹脂等であることとした。被覆材12は、接続部から流体が漏洩することによって、少なくとも一部が変形すればよい。したがって、被覆材12の素材は、上述した樹脂等に限定されるものではない。
【0022】
上記実施形態では、銅管50と継手51の接続部を、筒状に成形された被覆材12を、用いて被覆することとした。これに限らず、被覆材12として、例えばシート状の素材を用い、このシート状の素材を接続部に貼り付けることによって、接続部を被覆することとしてもよい。
【0023】
接続部に液状の樹脂を、刷毛を用いて塗布し、或いはスプレーした後に、塗布された樹脂を硬化させて、接続部を被覆する被覆材12を形成することとしてもよい。この場合には、紫外線硬化性を有する樹脂、空気に接触すると硬化する樹脂を被覆材12として用いることが考えられる。
【0024】
被覆材12は、できるだけ銅管50及び継手51に隙間無く密着させるのが好ましい。例えば、被覆材12と、銅管50或いは継手51との間に隙間があると、この隙間から、漏洩した流体が外部に排出されてしまう。この場合には、被覆材12の内部の圧力が十分に上がらないため、被覆材12の変化量が小さくなってしまう。一方、被覆材12が、銅管50及び継手51に隙間無く密着している場合には、被覆材12の内部に進入した流体が外部に漏れることがない。このため、被覆材12の内部の圧力が十分に上がり、被覆材12が大きく変化する。これにより、精度よく流体の漏洩を検出することが可能となる。また、銅管50及び継手51に密着した被覆材12は、漏洩の進行を抑制する。このため、被覆材12は、銅管50及び継手51に密着していることが好ましい。
【0025】
被覆材12として用いる材料は、必ずしも一体成形されたものである必要はなく、複数の部材から構成されていてもよい。この場合は、複数の部材のうちの少なくとも1つが、容易に変形し、或いは破断する部材であることが望ましい。
【0026】
複数の部材からなる被覆材12を用いて、銅管50と継手51との接続部を被覆する場合には、被覆材12を構成する部材同士を、それぞれが相互に密着するように接続する必要がある。部材同士が隙間無く密着している場合には、接続部からの漏洩により、被覆材12が大きく変形するため、精度よく流体の漏洩を検出することができる。
【0027】
本実施形態では、図1に示されるように、歪みゲージ13,13が被覆材12の内側に配置されている。これに限らず、歪みゲージ13,13は、被覆材12の外側に配置されていてもよい。また、被覆材12と一体化されていてもよい。この場合には、被覆材12の表面或いは内部に、変形により抵抗値が変化する導体パターンを形成することが考えられる。被覆材12と一体化した歪みゲージを用いることで、被覆材12に対する歪みゲージ13,13の取り付けミスを防止することができる。
【0028】
本実施形態では、銅管50及び継手51の一端と、フレアナット53が、被覆材12によって被覆されている。これに限らず、銅管50、継手51,及びフレアナット53の全部を被覆材12を用いて覆うこととしてもよい。特に、漏洩が発生すると予想される箇所の特定が困難である場合や、漏洩に起因する被害の拡大が予想される場合等には、配管の大部分を被覆材12で被覆するのが好ましい。
【0029】
具体的には、配管を循環する流体が、HFC冷媒のように可燃性を有する場合には、冷媒の漏洩により、建物火災や爆発が危惧される。また、流体が人体に悪影響を与えるものである場合には、流体の漏洩により生活環境に悪影響を及ぼすことが考えられる。このような場合には、配管の大部分を被覆材12で被覆することで、漏洩に起因する被害の拡大を抑制することができる。
【0030】
本実施形態では、判断装置11が、判断結果に応じた値の検出信号を出力することとした。これに限らず、判断装置11は、歪みゲージ13,13の抵抗値を時系列的に記憶してデータベースを生成し、必要に応じて抵抗値に関するデータを外部装置へ出力することとしてもよい。これにより、データベースを参照することで、漏洩の発生頻度、漏洩の程度、流出した流体の量、設備の経年劣化の進行状況などを把握することが可能となる。また、設備のメンテナンス計画や修繕に必要なコストを、ある程度正確に把握することが可能となる。
【0031】
本実施形態では、歪みゲージ13,13と判断装置11が、ケーブル20によって接続されている。これに限らず、歪みゲージ13,13と、判断装置11の設置位置とが遠く離れている場合には、歪みゲージ13,13の抵抗値を、無線通信を利用して判断装置11へ通知することとしてもよい。この場合には、歪みゲージ13,13に、歪みゲージ13,13から出力される信号を変調して送信する送信機を接続し、判断装置11に送信機からの出力信号を受信する受信器を配置することが考えられる。
【0032】
また、歪みゲージ13,13と判断装置11とを銅管50を介して接続し、判断装置11は、銅管50を介して、歪みゲージ13,13の抵抗を計測することとしてもよい。更に、判断装置11への電力の供給を、銅管50を介して行ってもよい。
【0033】
本実施形態では、銅管50と継手51とが、フレアナットによって接続されている場合について説明した。これに限らず、銅管50は、継手51に溶接されることにより、継手51に接続されていてもよい。この場合にも上述した要領で、銅管50及び継手51との接続部からの漏洩を検出することができる。
【0034】
本実施形態に係る漏洩検出装置10の構成は一例であり、種々の変形が可能である。以下、本実施形態に係る漏洩検出装置10の変形例について説明する。なお、本実施形態に係る漏洩検出装置10と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いる。
【0035】
《変形例1》
図4は、変形例1に係る漏洩検出装置10Aを示す図である。図4に示されるように、漏洩検出装置10Aを構成する被覆材12の両側には、例えば銅やアルミを素材とする金属線14,14が巻き付けられている。そして、金属線14,14の両端は、ケーブル20を介して、判断装置11に接続されている。
【0036】
漏洩検出装置10Aでは、銅管50と継手51との接続部から流体が漏洩すると、図5に示されるように、被覆材12が膨張し、金属線14,14それぞれが断線する。判断装置11は、金属線14,14の抵抗値を監視し、金属線14或いは金属線14が断線することにより、その抵抗値が閾値を超えた場合に、検出信号をハイレベルにする。これにより、漏洩の発生が外部へ通知される。
【0037】
《変形例2》
図6は、変形例2に係る漏洩検出装置10Bを示す図である。この漏洩検出装置10Bは、金属線14に代わる導体パターン15,15を有している点で、変形例1に係る漏洩検出装置10Aと相違している。
【0038】
導体パターン15は、被覆材12の表面に、例えばカーボンペースト等の導電性を有するペーストを塗布し、これを硬化させることにより形成することができる。また、導体パターン15,15を、被覆材12に予め形成しておくこととしてもよい。この場合には、例えば被覆材12に銅箔を貼り付けて、この銅箔をエッチングすることにより、導体パターン15を形成することができる。
【0039】
漏洩検出装置10Bでは、銅管50と継手51との接続部から流体が漏洩すると、図7に示されるように、被覆材12が膨張し、導体パターン15,15それぞれが破断する。判断装置11は、導体パターン15、15が破断することにより、その抵抗値が閾値を超えた場合に、検出信号をハイレベルにする。これにより、漏洩の発生が外部へ通知される。
【0040】
《変形例3》
変形例1及び変形例2では、被覆材12の両側にそれぞれ1つずつ、金属線14或いは導体パターン15が形成されている場合について説明した。これに限らず、例えば図8に示される漏洩検出装置10Cのように、被覆材12の両側に複数の金属線14或いは導体パターン15を配置してもよい。この場合には、被覆材12の変形量が少なくても、図9に示されるように、複数の導体パターン15のうちの少なくとも1つが破断すると考えられる。このため、導体パターン15の抵抗値を個別に計測することにより、被覆材12のわずかな変形を正確に検出することができる。したがって、少量の流体の漏洩についても、精度良く検出することが可能となる。
【0041】
また、破断した導体パターン15の個数によって、漏洩の程度をある程度予測することができる。通常、被覆材12の変形は中央から両端へ進行する。このため、導体パターン15は、漏洩初期には、中央近傍に配置された導体パターン15が破断し、漏洩の進行に応じて、順次外側に位置する導体パターン15が破断していく。また、漏洩が軽微のものである場合には、被覆材12の中央に近いところに位置する導体パターン15のみが破断する。したがって、どの位置の導体パターン15が破断したかを特定することで、漏洩の規模をある程度予測することが可能となる。また、ある導体パターン15が破断した時刻から、次の導体パターンが破断するまでの時間を計測することによって、漏洩の規模及び進行の程度をある程度予測することができる。
【0042】
《変形例4》
同様に、例えば図10に示される漏洩検出装置10Dのように、上記実施形態で説明した歪みゲージ13を複数配置することとしてもよい。これにより、被覆材12の変形を精度よく検出することができ、結果的に少量の流体の漏洩についても、精度良く検出することが可能となる。
【0043】
《変形例5》
図11は、変形例5に係る漏洩検出装置10Eを示す図である。図11に示されるように、漏洩検出装置10Eを構成する被覆材12の両側には、例えばサーミスタ等の温度センサ16が配置されている。この温度センサ16は、漏洩した流体と、被覆材とが化学反応を起こすことによって上昇する被覆材12及び流体の温度を計測する。
【0044】
漏洩検出装置10Eでは、銅管50と継手51との接続部から流体が漏洩すると、図12に示されるように、被覆材12の内部に流体が進入し、被覆材12が膨張する。膨張した被覆材12の内部では、流体と被覆材とが反応し、温度センサ16近傍の被覆材及び流体の温度が上昇する。
【0045】
判断装置11は、温度センサ16を介して、被覆材12或いは流体の温度を計測する。そして、計測した温度が閾値を超えた場合に、検出信号をハイレベルにする。これにより、漏洩の発生が外部へ通知される。
【0046】
本変形例に係る漏洩検出装置10Eにおいては、例えば流体がアンモニアである場合には、被覆材12として、アンモニアと反応する水を含む素材を用いることが考えられる。また、本変形例では、漏洩した流体と被覆材12とが反応する場合について説明した。これに限らず、被覆材12の内側に、漏洩する流体と反応する反応剤を添加しておいてもよい。
【0047】
以上、第1の実施形態に係る漏洩検出装置10の変形例について説明したが、これらの変形例は一例である。例えば、判断装置11は、被覆材12が変形により破断するときの音や振動が変換された電気信号の波形を観測し、波形のピーク値が閾値を超えた場合に、流体の漏洩が発生したと判断することとしてもよい。
【0048】
このように、被覆材12の破断の際に生じる音や振動に基づいて、流体の漏洩を判断する場合には、歪みゲージ等の検出手段を、被覆材12に直接設置する必要がない。このため、例えば検出手段として、1つの集音マイクを設置するだけで、複数の被覆材12の破断を検出することができる。これにより、漏洩を検出する箇所が比較的多い場合に、装置の製造コストを削減することが可能となる。
【0049】
また、被覆材12の変形を検出する検出手段として、被覆材12の内側の圧力を計測する圧力センサを用いることとしてもよい。この場合には、判断装置11は、圧力センサを介して被覆材12の内部の圧力を計測する。そして、計測した圧力が閾値を超えた場合に、流体の漏洩が発生したと判断する。圧力に基づいて漏洩を検出する漏洩検出装置では、硬質の被覆材12を用いることができる。
【0050】
また、被覆材12の素材として、通常は可視光に対して透過性を有し、漏洩した流体と接触すると透過性を失うものを用い、漏洩の検出手段として、被覆材12を透過した光を検出する光センサを用いてもよい。被覆材12を透過した光を検出する光センサとしては、例えば赤外線センサ等を用いることができる。
【0051】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図13は第2の実施形態に係る空調装置100のブロック図である。この空調装置100は、蒸気圧縮方式の空調装置である。図13に示されるように、空調装置100は、室外ユニット110、及び2台の室内ユニット120A,120Bを備えている。
【0052】
室外ユニット110は、例えばオフィスビルの屋上に配置されている。この室外ユニット110は、制御装置111、熱交換器112、電動ファン113、コンプレッサ114、四方弁115、及び閉鎖弁116を有している。
【0053】
制御装置111は、CPU(Central Processing Unit)、及び室内ユニット120A、120Bと通信を行う通信ユニットを有している。この制御装置111は、温度センサTH1〜TH3を介して、熱交換器112の一次側及び二次側の冷媒の温度と、熱交換器112を介して吐出される空気の温度を計測する。また、圧力センサHP,LPを介して、コンプレッサ114の一次側及び二次側の圧力を計測する。そして、計測した結果に基づいて、コンプレッサ114及び電動ファン113の出力を調整する。
【0054】
熱交換器112は、例えば伝熱管と放熱フィンとを有するクロスフィン方式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。この熱交換器112は、空調装置100が冷房運転を行っている場合に、凝縮器として機能し、空調装置100が暖房運転を行っている場合に、蒸発器として機能する。
【0055】
電動ファン113は、遠心ファン或いは多翼ファンと、このファンを回転させるファンモータを備えている。この電動ファン113は、外気を熱交換器112へ供給する。
【0056】
コンプレッサ114は、インバータモータを備える容積式圧縮機である。このコンプレッサ114は、冷媒を圧縮して四方弁115へ吐出する。
【0057】
四方弁115は、熱交換器112を流れる冷媒の方向を切り替えるための弁である。この四方弁115は、空調装置100が冷房運転を行っているときに、冷媒を矢印b2に示される方向に循環させる。そして、空調装置100が暖房運転を行っているときに、冷媒を矢印b1に示される方向へ循環させる。
【0058】
室内ユニット120A,120Bそれぞれは、例えば空調対象となる空間の天井或いは壁面に配置されている。そして、空調対象となる空間に、空調空気を吐出する。また、本実施形態では、室外ユニット110に対して、室内ユニット120Aと室内ユニット120Bとが並列に接続されている。図13に示されるように、これらの室内ユニット120A,120Bは、膨張弁124と、室外ユニット110と同様に、制御装置121、熱交換器122、及び電動ファン123を有している。
【0059】
膨張弁124は、熱交換器122を流れる冷媒の流量を調整するための電動膨張弁である。
【0060】
図13に示されるように、室外ユニット110を構成する各ユニットと、室内ユニット120A,120Bを構成する各ユニットは、それぞれ銅管50によって接続されている。冷媒は、銅管50を介して、室外ユニット110と室内ユニット120A,120Bの間を循環する。
【0061】
第1の実施形態に係る漏洩検出装置10は、図13の矢印a1及び矢印a7に示される閉鎖弁116と銅管50との接続箇所と、矢印a2〜a4、及び矢印a8〜a10に示される継手51と銅管50との接続箇所と、矢印a5及び矢印a11に示される銅管50と室内ユニット120Aとの接続箇所と、矢印a6及び矢印a12に示される銅管50と室内ユニット120Bとの接続箇所に設けられている。これらの箇所は、銅管50、室外ユニット110、及び室内ユニット120A,120Bを構成する各部によって形成される冷媒回路のうち、漏洩が起こる確率が高いと考えられる箇所である。
【0062】
本実施形態に係る空調装置100では、矢印a1〜a12によって示される位置に配置された漏洩検出装置10を介して、冷媒回路からの漏洩が常時監視される。そして、漏洩検出装置10によって、いずれかの箇所からの漏洩が検出されると、検出結果が例えば、室内ユニット120A,120Bを構成する制御装置121の液晶ディスプレイに表示される。これにより、空調装置100のユーザは、空調装置100からの漏洩を視認することが可能となる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る空調装置100は、冷媒回路からの漏洩を検出する漏洩検出装置10を備えている。このため、冷媒回路からの漏洩が精度良く検出される。したがって、装置の補修の要否、経年劣化の進行の程度などを正確に把握することができ、空調装置100を安全に運用することが可能となる。
【0064】
なお、上記実施形態では、空調装置100が漏洩検出装置10を備えている場合について説明した。これに限らず、空調装置100は、漏洩検出装置10A〜10Eを備えていてもよい。
【0065】
漏洩検出装置10が設置される場所は、図13の矢印a1〜a12に示される位置に限定されない。例えば、銅管50がL字状に折れ曲がった箇所など、冷媒の流れに乱れが生じる場所に漏洩検出装置を配置してもよい。
【0066】
本実施形態に係る室外ユニット110及び室内ユニット120A,120Bは、クロスフィン方式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器を備えている。この熱交換器では、伝熱管の接続部がU字状になるため、この部分に、漏洩検出装置を配置してもよい。
【0067】
本実施形態における漏洩検出装置10の用途は、空調装置100の稼働中に、冷媒回路からの漏洩を検出することを主たる目的とする。この他、本発明に係る漏洩検出装置を用いることで、例えば、空調装置100の異常が発見された後に、漏洩したと思われる箇所に本発明の漏洩検出装置を設置することで、異常が発生した箇所、或いは漏洩の規模を正確に特定することが可能となる。
【0068】
本実施形態では、空調装置100が、判断装置11を有する漏洩検出装置10を備えている場合について説明した。これに限らず、漏洩検出装置10を構成する判断装置11の機能を、室外ユニット110の制御装置111に付加してもよい。これにより、室外ユニット110と漏洩検出装置を1つのユニットとして構成することができる。したがって、装置の小型化、及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0069】
同様の理由から、判断装置11の機能を、室内ユニット120A,120Bの制御装置121に付加してもよい。この場合には、制御装置121のディスプレイに漏洩の検出結果を表示させることで、室内ユニット120A,120Bが設置された室内で、漏洩の有無を確認することができる。室内ユニット120A,120Bに引き込まれる銅管50は天井裏等、アクセスが困難な場所に配置されることが多い。このため、室内で漏洩の確認をすることで、その後の空調装置100のメンテナンスが容易になる。
【0070】
また、本実施形態では、空調装置100が、2台の室内ユニット120A,120Bを有している場合について説明した。これに限らず、空調装置100は、3台以上の室内ユニットを有していてもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態及び変形例に係る漏洩検出装置は、歪みゲージ等の検出手段と、判断装置11がケーブル20を介して接続されている。これに限らず、検出手段と判断装置11は、銅管50を介して接続されていてもよい。この場合には、検出手段の検出結果が、銅管50を介して、判断装置11へ出力される。
【0072】
また、上記実施形態及び変形例では、漏洩検出装置10を構成する判断装置11が、漏洩の有無の判断を行った。これに限らず、遠方に配置された1台の判断装置11が、LAN(Local Area Network)、インターネット、電話回線、或いは無線通信網を介して、複数の検出手段からの出力を監視し、流体の漏洩を検出することとしてもよい。
【0073】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の漏洩検出装置は、流体の漏洩の検出に適している。また、本発明の空調装置は、空調対象となる空間の空調を行うのに適している。
【符号の説明】
【0075】
10,10A〜10E 漏洩検出装置
11 判断装置
12 被覆材
13 歪みゲージ
14 金属線
15 導体パターン
16 温度センサ
20 ケーブル
50 銅管
50a フランジ
51 継手
51a おねじ部
53 フレアナット
60 パッキン
100 空調装置
110 室外ユニット
111 制御装置
112 熱交換器
113 電動ファン
114 コンプレッサ
115 四方弁
116 閉鎖弁
120A,120B 室内ユニット
121 制御装置
122 熱交換器
123 電動ファン
124 膨張弁
HP 圧力センサ
LP 圧力センサ
TH1〜TH3 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が存在する配管を被覆する被覆材と、
前記被覆材の変化を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記流体の漏洩の有無を判断する判断手段と、
前記検出結果を、前記判断手段に伝送する伝送手段と、
を備える漏洩検出装置。
【請求項2】
前記被覆材は、前記配管の端部を被覆している請求項1に記載の漏洩検出装置。
【請求項3】
前記被覆材は、前記流体によって伸縮し、破断し、材質が変化し、腐食し、又は変形する請求項1又は2に記載の漏洩検出装置。
【請求項4】
前記被覆材は、前記流体との接触による発熱によって熱変形する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の漏洩検出装置。
【請求項5】
前記被覆材は、成形品である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の漏洩検出装置。
【請求項6】
前記被覆材は、前記配管に塗布された材料を硬化させたものである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の漏洩検出装置。
【請求項7】
前記被覆材は、前記配管に貼り付けることが可能なシールである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の漏洩検出装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記被覆材の歪みを検出する歪みゲージである請求項1乃至7のいずれか一項に記載の漏洩検出装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記被覆材に配線された検出回路を有し、
前記被覆材は、変化したときに前記検出回路を断線する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の漏洩検出装置。
【請求項10】
前記検出手段は、前記被覆材が変化する際に発生する振動の波形を検出する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の漏洩検出装置。
【請求項11】
前記被覆材を複数備え、
前記検出手段は、複数の前記被覆材の変化を検出する請求項10に記載の漏洩検出装置。
【請求項12】
前記伝送手段は、無線通信を用いて、前記判断手段の判断結果を伝送する請求項1乃至11のいずれか一項に記載の漏洩検出装置。
【請求項13】
前記伝送手段は、前記配管を介して、前記判断手段の判断結果を伝送する請求項1乃至11のいずれか一項に記載の漏洩検出装置。
【請求項14】
前記判断手段への電力は、前記配管を介して供給される請求項1乃至13のいずれか一項に記載の漏洩検出装置。
【請求項15】
前記検出手段の検出結果を記憶する記憶手段を備える請求項1乃至14のいずれか一項に記載の漏洩検出装置。
【請求項16】
空調対象空間に空調した空気を供給する室内ユニットと、
前記空調対象空間の外部に配置され、外気と熱交換を行う室外ユニットと、
前記室内ユニットと前記室外ユニットとの間で、冷媒を循環させるための配管と、
前記配管に設けられた請求項1乃至15のいずれか一項に記載の漏洩検出装置と、
を備える空調装置。
【請求項17】
前記漏洩検出装置への電力が、前記室内ユニットを介して供給される請求項16に記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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