説明

演奏操作子の駆動装置

【課題】簡単かつ安価な構成でありながら、可動部材の位置検出精度の向上を図ることができる鍵の駆動装置の提供。
【解決手段】コイル41で駆動されて鍵20に駆動力を付与するプランジャ(可動部材)46と、プランジャ46の位置を検出する位置センサ47と備えた駆動装置40であって、位置センサ47は、プランジャ46側に設けた移動電極112を有する移動子110と、固定側に設けた誘導電極103及び電位検出電極104を有する固定子101とを備えた静電型エンコーダであり、かつ、板状で弾力性を有する移動子110が撓んだ状態で固定子101に当接していることで、プランジャ46に回転方向の付勢力が生じており、当該付勢力によって回転規制部48の当接部48aが被当接部48bに当接してプランジャの回転及びガタつきが規制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵などの演奏操作子を駆動するソレノイドなどの駆動手段を備えた駆動装置に関し、詳細には、可動部材の位置を検出する位置検出手段を備えた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アコースティックピアノなど生音を発生する自然鍵盤楽器の鍵盤ユニットは、押鍵により回動するハンマが打弦して発音するように構成されており、鍵とハンマの間には、ジャックやウィッペンを有してなるアクション機構が設けられている。このアクション機構によって、演奏者の指に鍵から独特の反力が掛かるようになっており、自然鍵盤楽器の鍵盤ユニットでは、各楽器に特有の鍵タッチ感が得られる。
【0003】
一方、電子音を発生する電子鍵盤楽器の鍵盤ユニットは、押鍵時に鍵を初期位置に復帰させるスプリングや質量体(擬似ハンマ)などを備えており、それらの反力によって自然鍵盤楽器の鍵タッチ感を模擬している。しかしながら、電子鍵盤楽器は、押鍵により電子音を発生させる装置であり、実際に打弦して発音する機構を有しないので、自然鍵盤楽器のような複雑なアクション機構がない。そのため、自然鍵盤楽器のアクション機構で生じる鍵タッチ感を忠実には再現しきれず、電子鍵盤楽器の鍵タッチ感は、厳密には自然鍵盤楽器の鍵タッチ感とは異なるものとなっている。
【0004】
そこで、電子鍵盤楽器では、自然鍵盤楽器に近い鍵動作あるいは鍵タッチ感を得ることを目的として、押鍵に対する反力を変化させる鍵駆動装置や制御装置(力覚制御手段)が提案されている。この一例として、特許文献1に記載の鍵盤ユニットは、鍵を駆動するためのアクチュエータ(ソレノイド)と、該アクチュエータを制御する制御手段とを備えており、これらによって鍵タッチ感を任意に調節して自然鍵盤楽器の演奏感覚を模擬するようになっている。そして、この場合、ソレノイドのプランジャの位置(変位)情報を検出するための位置検出手段を備えることで、当該位置検出手段の検出信号に基づいてソレノイドを駆動制御し、鍵の駆動力あるいは反力の制御を行うようになっている。
【0005】
このような位置検出手段の具体例として、特許文献2に記載の鍵盤装置は、ソレノイドのプランジャの位置を検出するための反射型の光センサを備えている。すなわち、特許文献2に記載の鍵盤装置は、プランジャの移動方向に並行して光反射特性が漸増若しくは漸減変化する特性を示すように色調を変化させた濃淡パターンと、当該濃淡パターンの色調の変化に応じた光の反射量の変化によってプランジャの移動を検出する光反射型センサとからなる位置センサ部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許2956180号公報
【特許文献2】特開2005−195619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、往復動するプランジャを備えたアクチュエータでは、プランジャのスムーズな動作を確保するために、プランジャとそれを支持する軸受との間に若干の隙間(クリアランス)を設けることが必要である。特に、コイルを挟んでプランジャの両端に配置された軸受同士の間隔が長くなるほど、プランジャの傾きを許容するために、プランジャと軸受との隙間の寸法を大きく設定する必要がある。ところが、この隙間を設けていることにより、プランジャの動作に僅かではあるがガタが生じるおそれがある。そうすると、当該ガタの影響で位置センサの反射光にぶれが生じるなどして、安定したプランジャの位置検出が行えず、位置検出精度の向上を図ることができないという問題があった。
【0008】
なお、プランジャの位置を検出する位置検出手段としては、上記のような反射型の光センサ以外にも、光学式デジタルセンサや、差動トランス型センサ、磁気スケール型センサなどもある。しかしながら、光学式デジタルセンサは、構造が複雑であるために機構が大型であり、大きな取付スペースが必要である。差動トランス型センサは、励磁などの回路、検出コイルが必要であり、それらを含めると高価になる。磁気スケール型センサは、ソレノイドからの漏れ磁場がノイズとなり検出精度が落ちるため、ソレノイドのプランジャの位置検出にはあまり適していない。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単かつ安価な構成でありながら、可動部材の位置検出精度の向上を図ることができる位置検出手段を備えた演奏操作子の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明にかかる演奏操作子の駆動装置は、演奏操作子(20)に駆動力を付与するための可動部材(46)と、可動部材(46)を軸方向に往復動可能かつ軸周りに回転可能に支持するガイド部(43)と、可動部材(46)に設けた当接部(48a)が固定側に設けた被当接部(48b)に当接することで可動部材(46)の回転が規制される回転規制部(48)と、可動部材(46)を駆動するための駆動源(41)と、可動部材(46)の位置を検出するための位置検出手段(47)と、を備え、位置検出手段(47)は、可動部材(46)側に設けた移動電極(112)を有する移動子(110)と、固定側に設けた誘導電極(103)及び電位検出電極(104)を有する固定子(101)とを備え、固定子(101)の誘導電極(103)に電圧を印加し、静電誘導により移動電極(112)に発生した電位分布を電位検出電極(104)で検出することによって固定子(101)に対する移動子(110)の位置を検出する構成のいわゆる静電型エンコーダであり、位置検出手段(47)の移動子(110)は、板状で面の撓みに対する弾力性を有し、一端が自由端となるように可動部材(46)に取り付けられており、移動子(110)が撓んだ状態で固定子(101)に当接していることで、可動部材(46)に回転方向の付勢力が生じており、当該付勢力によって回転規制部(48)の当接部(48a)が被当接部(48b)に当接していることを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる演奏操作子の駆動装置によれば、上記構成を採用したことにより、駆動装置の構造を複雑化させずに、位置検出手段による位置検出精度を効果的に向上させることができる。すなわち、可動部材の位置を検出する位置検出手段として、小型かつ薄型で位置検出性能に優れた静電型エンコーダを用いたことで、簡単かつ安価な構成でありながら、可動部材の位置検出精度を向上させることができる。また、静電型エンコーダでは、移動子に配線を接続する必要がないので、移動子を取り付けた可動部材の動きが阻害されずに済み、駆動手段のスムーズな動作を確保できるようになる。
また、この位置検出手段は、面の撓みに対する弾力性を有する板状の移動子を備え、該移動子を撓ませた状態で固定子に対して押し当てた構成なので、移動子の電極面と固定子の電極面とを確実に接触させることができ、静電型エンコーダによる可動部材の位置検出精度をさらに向上させることができる。
そのうえで、弾力性を有する板状の移動子が撓んだ状態で固定子に当接していることで、可動部材に回転方向の付勢力が生じており、当該付勢力によって、回転規制部の当接部が被当接部に当接して可動部材の回転が規制されるようにした。これにより、ガイド部でガイドされて軸方向に往復動する可動部材の動作にガタが生じることを効果的に抑制できる。したがって、可動部材のガタに起因する位置検出精度の低下を防ぐことができる。
以上によって、簡単かつ安価な構成でありながら、可動部材の位置検出精度の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明にかかる演奏操作子の駆動装置は、上記構成に加えて、移動子(110)の電極面(112)を固定子(101)の電極面(104)に対して付勢する付勢部材(37)をさらに備えるとよい。これによれば、付勢部材の付勢によって、移動子の電極面を固定子の電極面に対して均一に当接させることができるので、電極面のクリアランスを安定させることができ、位置検出手段の位置検出精度をさらに向上させることができる。
【0013】
また、本発明にかかる演奏操作子の駆動装置は、他の態様として、演奏操作子(20)に駆動力を付与するための可動部材(46)と、可動部材(46)を軸方向に往復動可能かつ軸周りに回転可能に支持するガイド部(43)と、可動部材(46)に設けた当接部(48a)が固定側に設けた被当接部(48b)に当接することで可動部材(46)の回転が規制される回転規制部(48)と、可動部材(46)を駆動するための駆動源(41)と、可動部材(46)の位置を検出するための位置検出手段(47)と、を備え、位置検出手段(47)は、可動部材(46)側に設けた移動電極(112)を有する移動子(110)と、固定側に設けた誘導電極(103)及び電位検出電極(104)を有する固定子(101)とを備え、固定子(101)の誘導電極(103)に電圧を印加し、静電誘導により移動電極(112)に発生した電位分布を電位検出電極(104)で検出することによって固定子(101)に対する移動子(110)の位置を検出する構成であり、位置検出手段(46)の移動子(110)は、一端が自由端となるように可動部材(46)に取り付けられた板状の部材からなり、移動子(110)の電極面を固定子(101)の電極面に対して押圧した状態で付勢する付勢部材(37)を備え、移動子(110)が固定子(101)に対して付勢部材(37)で付勢されていることで、当該付勢力によって回転規制部(48)の当接部(48a)が被当接部(48b)に当接して可動部材(46)の回転が規制されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、先に示した別構成の駆動装置と同様、位置検出手段に静電型エンコーダを用いたことで、簡単かつ安価な構成でありながら、可動部材の位置検出精度を効果的に向上させることができる。それに加えて、移動子の電極面を固定子の電極面に対して押圧した状態で付勢する付勢部材を備えたことで、移動子の電極面と固定子の電極面を均一に接触させることができるので、電極面のクリアランスを安定させることができ、位置検出手段の検出精度をさらに向上させることができる。さらに、付勢部材による移動子への付勢力で、回転規制部の当接部が被当接部に当接して可動部材の回転が規制されるようにしたことで、ガイド部でガイドされて軸方向に往復動する可動部材の動作にガタが生じることを効果的に抑制できる。したがって、可動部材のガタに起因する位置検出精度の低下を防ぐことができる。
以上によって、簡単かつ安価な構成でありながら、可動部材の位置検出精度の向上を図ることができる。
なお、ここでの括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる演奏操作子の駆動装置によれば、簡単かつ安価な構成でありながら、位置検出手段による可動子の位置検出精度を効果的に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる鍵の駆動装置を備えた電子鍵盤楽器の全体の機能構成例を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態にかかる鍵の駆動装置を示す図であり、鍵及びその周辺の構成部品を示す概略側面図である。
【図3】(a)は、駆動装置を示す部分側面図で、(b)は、位置センサの概略平面図である。
【図4】(a)は、静電型エンコーダの構成例を示す斜視図であり、(b)は、固定子を示す図、(c)は、移動子を示す図である。
【図5】移動子の位置に応じてベクトルの位相角が変化する様子を説明するための図で、(a)は、移動子がd=0の位置にある場合、(b)は、移動子が電位検出電極のピッチの距離d=Psだけ右方向に移動した場合を示す。
【図6】鍵及び質量体の動作を説明するための図で、(a)は、鍵が非押鍵位置にある状態、(b)は、鍵が押鍵位置にある状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる駆動装置を示す図で、(a)は、駆動装置を示す部分側面図、(b)は、位置センサの概略平面図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる駆動装置を示す図で、(a)は、駆動装置を示す部分側面図、(b)は、位置センサの概略平面図である。
【図9】本発明の第4実施形態にかかる駆動装置を備えた鍵盤装置を示す図であり、鍵及びその周辺の構成部品を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態にかかる鍵(演奏操作子)の駆動装置を備えた電子鍵盤楽器の全体の機能構成を示すブロック図である。同図に示す電子鍵盤楽器1は、鍵20及び該鍵20を駆動するための駆動装置40を有する鍵盤装置10と、ペダル装置52と、鍵盤装置10やペダル装置52を含む電子鍵盤楽器1の全体を制御するための主制御部50とを備えている。鍵盤装置10とペダル装置52及び主制御部50など電子鍵盤楽器1の各部は、バス51を介して互いに接続されている。
【0018】
主制御部50は、CPU51、ROM52、RAM53、フラッシュメモリ(EEPROM)54を備えている。また、CPU51にはタイマ55が接続されている。CPU51は、鍵盤装置10を含む電子鍵盤楽器1全体の制御を司る。ROM52やフラッシュメモリ54には、CPU51が実行する制御プログラムや各種テーブルデータのほか、後述する力覚付与テーブル80が記憶されている。RAM53は、演奏データ、テキストデータなどの各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算処理結果などを一時的に記憶する。タイマ55は、タイマ割り込み処理における割り込み時間などの各種時間を計時する。
【0019】
また、電子鍵盤楽器1には、主制御部50のほか、設定操作部61、表示装置63、音声出力部65、外部記憶装置66、HDD67、通信インターフェイス68、MIDIインターフェイス69などが設けられている。通信インターフェイス68には、外部装置71を接続でき、MIDIインターフェイス69には、MIDI機器72を接続できる。また、通信インターフェイス68は、インターネットなどの通信ネットワーク73を介して外部のサーバ装置74との間で通信を行えるようになっている。設定操作部61には、演奏者が設定操作情報を入力するために用いる不図示の各種スイッチなどが含まれ、スイッチの操作による信号がCPU51に供給されるようになっている。外部記憶装置66やHDD67は、上記の制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種楽曲データなどを記憶するものである。表示装置63は、表示制御回路62を介してバス51に接続されており、音声出力部65は、音源回路64を介してバス51に接続されている。
【0020】
図2及び図3は、鍵盤装置10を示す図で、図2は、鍵20及びその周辺の概略側面図、図3は、駆動装置40及びその周辺の詳細構成を示す部分拡大側面図である。鍵盤装置10は、電子鍵盤楽器1の一部である平板状のフレーム11と、それぞれがフレーム11に対して回動可能に支持された鍵20及び質量体(擬似ハンマ)30と、鍵20と質量体30の間に設置した電磁アクチュエータからなる駆動装置40とを備えて構成されている。なお、以下の説明では、鍵20の長手方向における両側のうち、電子鍵盤楽器1の演奏者の側を手前あるいは前といい、その反対側を奥あるいは後という。なお、図2では、鍵盤装置10が備える並設された複数の鍵20のうち、1個の鍵20及びその周辺の構成部品を示している。また、同図では、鍵20が白鍵である場合を示しているが、黒鍵の場合も同様の構成になっている。なお、図示は省略するが、鍵盤装置10には、鍵20の動作に応じた楽音を発生させるように、鍵20の動作を電気的な出力に変換するためのスイッチ接点機構も設けられている。
【0021】
鍵20は、前後方向の中間の位置がフレーム11上の鍵支点12に支持されている。鍵支点12は、フレーム11上で鍵20の配列方向に沿って延びるバランスレール12aの上に立設した支点ピン12bを備えており、鍵20は、支点ピン12bに支持されている。鍵20は、前端20a及び後端20bが鍵支点12を中心に上下方向へ回動可能であり、演奏者による押鍵部20cへの押鍵操作に応じて回動するようになっている。また、鍵20の前端20aの下方には、フロントピン13が立設されている。フロントピン13は、その上端が鍵20の裏面側に挿入されており、回動する鍵20の前端20aの横方向の振れを規制するものである。
【0022】
鍵20の後端20bの下方には、鍵上限ストッパー21が設置されており、前端20aの下方には、鍵下限ストッパー22が設置されている。鍵上限ストッパー21及び鍵下限ストッパー22は、いずれもフレーム11の上面に固定されたフェルトなどの緩衝材を備えて構成されている。鍵上限ストッパー21は、非押鍵位置(図6(a)参照)にある鍵20の後端20bの下面に当接し、鍵20の回動を非押鍵位置で規制する。一方、鍵下限ストッパー22は、押鍵位置(図6(b)参照)にある鍵20の前端20aの下面に当接し、鍵20の回動を押鍵位置で規制する。
【0023】
また、鍵支点12より後方のフレーム11上には、質量体30を支持するための柱状の支持部14が設けられている。支持部14は、フレーム11上で隣接する鍵20の間から、複数鍵域ごとに1つの割合で各鍵20の真上に張り出している。この支持部14は、所定間隔で前後に配置された前壁14aと後壁14bを備えている。前壁14aと後壁14bは、いずれも垂直に立設されて、鍵20よりも高い位置まで延びている。
【0024】
支持部14に支持された質量体30は、各鍵20に対応して設置されており、鍵支点12よりも後側の真上位置に設置されている。質量体30は、支持部14の前壁14aの上端に設けた質量体支点31から後方に延びる直線棒状のシャンク部32と、該シャンク部32の先端に取り付けた所定の質量を有する質量部(錘)33とを備えて構成されている。シャンク部32は、質量体支点31に回動自在に支持されており、鍵20の長手方向に沿う垂直面内で上下に回動するようになっている。質量部33は、シャンク部32の先端においてその回動方向に沿って延びる棒状に形成されている。この質量体30は、質量体支点31を中心にシャンク部32を腕として質量部33が鍵20の後端近傍の上方で上下方向に回動するようになっている。
【0025】
支持部14の後壁14bには、質量体30の回動を規制するための質量体上限ストッパー34及び質量体下限ストッパー35が設けられている。質量体下限ストッパー35は、下限位置に回動した質量体30のシャンク部32を当接させるものであり、質量体上限ストッパー34は、上限位置に回動した質量体30のシャンク部32を当接させるものである。これら質量体下限ストッパー35及び質量体上限ストッパー34によって、質量体30は、シャンク部32が質量体支点31から後側の斜め下方向に延びる下限位置(図6(a)参照)と、シャンク部32が質量体支点31から後側の略水平方向に延びる上限位置(図6(b)参照)との間で回動するように規制される。質量体30は、後述するプランジャ46を介して鍵20の動作に連動するようになっており、駆動装置40との協働によって、鍵20にその演奏操作に対する反力を与えるものである。
【0026】
鍵20及び質量体30に所定の駆動力を付与するための駆動装置40は、鍵支点12より後側の鍵20の上面と、質量体30のシャンク部32との間に設置されている。本実施形態の駆動装置40は、双方向駆動型の電磁アクチュエータで、図3に示すように、上下に同軸状に並べて設置した往動コイル41a及び復動コイル41bからなるコイル(駆動源)41と、該コイル41が巻回された円筒状のボビン(ガイド部)43の内周側に設置されたプランジャ(可動部材)46とを備えて構成されている。プランジャ46は、ボビン43によって上下動可能かつ回転可能にガイドされている。また、往動コイル41a及び復動コイル41bの外周には、それらを囲むヨーク49a,49bが設置されている。
【0027】
ヨーク49a,49bは、その後側面が平板状のプレート15を介して支持部14の後壁14bの前面に固定されている。したがって、往動コイル41a及び復動コイル41bは、固定側である支持部14及びフレーム11に固定されている。一方、プランジャ46は、ボビン43の内周面で上下方向に摺動(往復動)自在に設置された柱状の強磁性体からなる胴部42aと、胴部42aの上端に連結した棒状の第1ロッド42b及び下端に連結した第2ロッド42cとを備える。第1ロッド42bの上端には、水平面状の上面を有する円柱状の台部材44が取り付けられている。一方、第2ロッド42cの下端には、緩衝及び摺動作用を有するキャップ状のカバー部材45が取り付けられている。そして、胴部42aと第1ロッド42b及び第2ロッド42cの軸芯は、垂直方向に向かって一直線状に配列されている。
【0028】
質量体30のシャンク部32には、円筒状のローラ36が取り付けられている。ローラ36は、軸方向が鍵20の配列方向に沿う水平向きで、下側面(円筒面)が台部材44の上面に載置されている。一方、プランジャ46の第2ロッド42cの下端のカバー部材45は、対向する鍵20の上面に設けたスクリュー(ネジ)25の上に載置されている。したがって、プランジャ46は、質量体30の自重による負荷で、質量体30と鍵20の間に挟まれた状態で配置されている。
【0029】
駆動装置40では、往動コイル41a及び復動コイル41bに駆動電流が供給されることで、プランジャ46を軸方向に沿って双方向へ駆動するようになっている。すなわち、復動コイル41bに駆動電流が供給されると、プランジャ46は下側へ移動する。これにより、プランジャ46から鍵20の鍵支点12よりも後側に対して下向きの荷重が付与されるので、鍵20の離鍵方向へかかる荷重が増加する。一方、往動コイル41aに駆動電流が供給されると、プランジャ46は上側へ移動する。これにより、プランジャ46から鍵20の鍵支点12よりも後側に対して下向きにかかる荷重が軽減されるので、鍵20の離鍵方向へかかる荷重が減少する。
【0030】
そして、駆動装置40には、プランジャ46の位置を検出するための位置センサ(位置検出手段)47が設置されている。位置センサ47は、図3に示すように、プランジャ46に取り付けられた板状の移動子110と、移動子110を面接触させるようにコイル41側(固定側)に設置された板状の固定子101とを備え、固定子101の誘導電極103(図4参照)に電圧を印加し、静電誘導により移動子110の移動電極112(図4参照)に発生した電位分布を固定子101の電位検出電極104(図4参照)で検出することによって、移動子110の位置を検出する静電型エンコーダである。
【0031】
静電型エンコーダの原理及び構成について説明する。なお、静電型エンコーダの基本原理及び詳細な構成については、特開2005−221472号公報に開示されている。図4(a)は、静電型エンコーダの構成例を示す図で、図4(b)は、静電型エンコーダが備える固定子101を示す図、図4(c)は、移動子110を示す図である。静電型エンコーダは、固定子101と、該固定子101に対して面接触状態で往復動が可能な移動子110とからなるセンサ部と、それ以外の電気回路からなる周辺回路とに分けられる。そして、交流発信器121の出力をアンプ122で適当な大きさに増幅し、固定子101の端子Uと端子Vに搬送波の差動出力として印加する。そして、固定子101の端子Aと端子Cに得られる信号を差動アンプ123aで受け、また、端子Bと端子Dに得られる信号を差動アンプ123bで受け、後段の乗算器124a,124bとローパスフィルタ125a,125bとからなる同期検波回路で搬送波成分を取り除き、2つのベースバンド信号からなる複素数成分「REAL」と「IMAG」を抽出する。これらの2つの差動アンプ123a,123bと乗算器124a,124b及びローパスフィルタ125a,125bは、全体でベクトル生成回路120を構成する。そして、位相分割回路126で逓倍処理を行い、移動距離に対応したA相パルスとB相パルスとの2つのインクリメント信号を出力する。
【0032】
図4(b)に示す固定子101は、絶縁体102の中に組み込まれた誘導電極103a,103bと電位検出電極104とを備えている。そして、搬送波を入力する端子Uは、誘導電極103aに接続され、もう一方の端子Vは、誘導電極103bに接続されている。このような固定子101は、一般的に電子機器に用いられているプリント基板やフレキシブルプリント基板で製作できる。
【0033】
図4(c)に示す移動子110は、固定子101の面に当接するように設置されている。移動子110は、絶縁体111の中に電極面112の一対の櫛歯状電極112a,112bが交差指状に相対配置され、櫛歯状電極112a,112bの基部は、固定子101の誘導電極103a,103bに重なるように配置されている。移動子110には、外部との接続が一切なくても、固定子101の誘導電極103a,103bを径由して、静電誘導による電気エネルギーが供給される。このため、本実施形態のように、被測定物であるプランジャ46に移動子110を取り付ければ、信号線の引き回しなどの制約無しにプランジャ46を自由に移動させることができ、プランジャ46のスムーズな動作を確保できるようになる。
【0034】
そして、図示しない外部電源によって、固定子101の誘導電極103aには、プラスが印加されており、誘導電極103bには、マイナスが印加されている。このとき、静電誘導の原理により、移動子110が有する一方の櫛歯状電極112aの基部には、マイナスの真電荷が誘起され、櫛歯状電極112aの櫛歯端には、プラスの真電荷が誘起される。また、他方の櫛歯状電極112bの基部には、プラスの真電荷が誘起され、櫛歯端にはマイナスの真電荷が誘起される。そして、2つの櫛歯状電極112a,112bの櫛歯端が対峙する中央付近では、電極同士が絶縁されて距離も近いことから、プラスとマイナスの電荷がお互いに引き合い、櫛歯表面にはある程度均一した密度で真電荷が分布する。このように、上述した静電誘導と交差指状に相対配置された2つの櫛歯状電極112a,112bによって、電極中央部付近では、プラスとマイナスの真電荷が交互に分布する交番電位分布が形成される。
【0035】
図5(a)及び(b)は、移動子110の位置に応じて電位検出電極104で検出された電圧を成分としたベクトルが変化する様子を説明する図である。なお、実際には、図4(a)に示す交流発信器121から発生する搬送波信号を用いて駆動するため、時間的な変化を考慮する必要があるが、ここでは、分かり易くするために、搬送波信号を一瞬の時間で切り出した状態、即ち時間変化の無い直流信号で説明する。
【0036】
図5(a)は、移動子110がd=0の位置にある場合を示している。電位検出電極104は4相電極配置となっており、0度位相の電極が端子Aに、90度位相の電極が端子Bに、180度位相の電極が端子Cに、270度位相の電極が端子Dにそれぞれ結線されている。固定子101の誘導電極103a,103bに外部から電圧を印加すると、静電誘導によって、移動子110の櫛歯電極112a,112bに「−−」,「++」,「−−」,「++」の真電荷が発生し、交番電位分布151ができる。すると、この交番電位分布151の影響を受けて、固定子101の電位検出電極104には「+」,「0」,「−」,「0」の電荷が繰り替えし誘起され、端子Aには+、端子Bにはゼロ、端子Cには−、端子Dにはゼロの電圧が発生する。すると、差動アンプ123aにはプラスの電圧が発生し、差動アンプ123bの出力はゼロとなる。この差動アンプ123aの出力を複素数の実数成分「REAL」、差動アンプ123bの出力を複素数の虚数成分「IMAG」として複素数空間で表すと、「REAL」成分のみのベクトルが得られる。
【0037】
図5(b)は、移動子110が電位検出電極104のピッチの距離d=Psだけ右方向に移動した場合を示しており、このときには、電位検出電極104には「0」,「+」,「0」,「−」の電荷が繰り返し誘起され、端子Aにはゼロ、端子Bには+、端子Cにはゼロ、端子Dには−の電圧がそれぞれ発生する。すると、差動アンプ123aの出力はゼロ、差動アンプ123bの出力にはプラスの電圧が発生し、複素数空間では「IMAG」成分のみのベクトルが得られる。
【0038】
このようにして、移動子110の位置に応じて、複素数空間でのベクトル角が変化する。移動子110が丁度、電位検出電極104のピッチPs間隔で移動する毎に、ベクトルが90度づつ回転していき、移動距離d=4Psでまた元に戻る。従って、複素数空間でのベクトル角を検出することで、移動子110がどの位置にあるかが検出できる。また、ピッチ以下の移動、例えば移動距離がd=Ps/8とすれば、そのベクトルの位相変化量は11.25度となり、微細な移動変化量もベクトル位相に正確に反映される。
【0039】
上記構成の静電型エンコーダでは、図5(a)及び(b)から分かるように、移動子110の櫛歯状電極112a,112bに発生する交番電位分布151を固定子101に複数配置された電位検出電極104で検出するため、櫛歯状電極112a,112bと電位検出電極104とが必ずしも完全に平行になっていなくても所望の電圧が検出される。このため、固定子101と移動子110との位置決めは概略的で良く、厳密な位置合わせは不要である。なお、固定子101と移動子110とは、必ずしも当接している必要は無く、信号が検出できる範囲であれば、多少離れていても良い。
【0040】
そして、本実施形態の位置センサ47では、図3に示すように、移動子110は、合成樹脂材などからなる可撓性を有する薄板状の部材である。この移動子110は、面の撓みに対する弾力性(面が撓んだときに元の平面状に戻ろうとする復帰力)を有している。この移動子110は、外形が略長方形状で、その一方の側辺が台部材44の側面に固定されており、対向する他方の側辺が自由端になっている。そして、面が撓んだ状態で、自由端側の面が固定子101の面に対して押圧状態で当接している。これにより、移動子110の電極面(櫛歯状電極)112が固定子101の電極面(電位検出電極)104に対して押圧された状態で当接しており、プランジャ46の軸方向への往復動に伴い、移動子110の電極面112と固定子101の電極面104とが摺接するようになっている。
【0041】
また、プランジャ46には、軸周りの回転(自転)を規制するための回転規制部48が設けられている。回転規制部48は、プランジャ46における台部材44の側面に設けた小突起状の当接部48aと、固定側であるコイル41の上面(プランジャ46の周囲の上面)に設けた柱状の被当接部48bとを備えており、ボビン(ガイド部)43によってガイドされているプランジャ46の当接部48aが被当接部48bに当接することで、プランジャ46の回転が規制されるようになっている。また、当接部48aを挟んで被当接部48bと反対側の位置には、被当接部48cが設置されている。この被当接部48cは、被当接部48bと同様の柱状に形成されていて、被当接部48bに当接している当接部48aに対して若干の間隔を有して配置されている。なお、図3(a)では、被当接部48cの図示を省略している。
【0042】
そして、位置センサ47の移動子110が撓んだ状態で固定子101に当接していることで、移動子110の弾力による反作用で、プランジャ46に回転方向の付勢力が生じている。この付勢力によって、通常は、回転規制部48の当接部48aが被当接部48bに当接して(押し当てられて)プランジャ46の回転が規制された状態になっている。また、被当接部48cを設けていることで、何らかの外乱で、図3(b)における反時計周り方向にプランジャ46を回転させる強い力が作用した場合でも、当接部48aが被当接部48cに当接することで、プランジャ46の同方向への回転が規制される。これにより、移動子110が過度に撓んで破損することを防止できるようになっている。
【0043】
次に、上記構成の鍵盤装置10の動作について説明する。図6は、鍵盤装置10の動作を説明するための図で、(a)は、鍵20が非押鍵位置にある状態を示し、(b)は、鍵20が押鍵位置にある状態を示している。鍵20は、鍵支点12の前後の質量(自重)バランスによって生じる押鍵方向への付勢力と、プランジャ46を介してかかる質量体30からの荷重との大小関係によって、押鍵力が作用していない状態では、後端20bの下面が鍵上限ストッパー21に当接し、前端20aの押鍵部20cが最上位置に上昇しており、図6(a)に示す非押鍵位置にある。このとき、質量体30は、シャンク部32が質量体下限ストッパー35に当接した下限位置にある。一方、非押鍵位置にある鍵20が押鍵操作されると、鍵20は、プランジャ46を介して質量体30を押し上げながら鍵支点12を中心に押鍵方向へ回動する。こうして、前端20aの下面が鍵下限ストッパー22に当接する位置まで回動し、図6(b)に示す押鍵位置となる。鍵20が押鍵位置のとき、プランジャ46を介して鍵20によって押し上げられた質量体30は、シャンク部32が質量体上限ストッパー34に当接する上限位置にある。そして、鍵20に対する押鍵力が解除されると、鍵20には、自重で下方へ回動する質量体30からプランジャ46を介して荷重が加わる。鍵20は、この荷重と自重バランスとの両方によって非押鍵位置へ復帰する。
【0044】
このような質量体30の慣性質量を利用した鍵20の動作が行われる際に、駆動装置40でプランジャ46を双方向へ駆動することで、質量体30から鍵20にかかる付勢力をアシストあるいは軽減することができる。したがって、主制御部50により駆動装置40の駆動を制御することで、押鍵操作に対する反力の力覚制御を行うことができる。
【0045】
鍵20の駆動を制御する駆動制御回路は、図1に示すように、主制御部50と、主制御部50の指令に応じて駆動装置40に駆動用のPWM(パルス幅変調)信号を出力する制御ドライバ58を備えている。主制御部50のROM52には、駆動装置40が発生すべき駆動力のパターンを格納した鍵盤用力覚付与テーブル80が格納されている。位置センサ47によって検出された鍵20の位置情報は、主制御部50に出力されるようになっている。主制御部50からの制御信号は、制御ドライバ58に入力される。制御ドライバ58は、主制御部50からの制御信号に基づいて、駆動装置40に駆動用の信号を供給する。
【0046】
そして、本実施形態の鍵20の駆動装置40は、プランジャ46の位置を検出する位置センサ47として、プランジャ(可動部材)46側に設けた移動電極112を有する移動子110と、固定側であるコイル41上に設けた誘導電極103及び電位検出電極104を有する固定子101とを備え、固定子101の誘導電極103に電圧を印加し、静電誘導により移動子110の移動電極112に発生した電位分布を固定子101の電位検出電極104で検出することによって、固定子101に対する移動子110の位置を検出する構成の静電式センサを採用している。このように、プランジャ46の位置を検出する位置センサ47として、小型かつ薄型で位置検出精度が良好な静電型エンコーダを用いたことで、簡単かつ安価な構成でありながら、プランジャ46の位置検出精度を効果的に向上させることができる。また、静電型エンコーダでは、移動子110側に配線を接続する必要がないので、移動子110を取り付けたプランジャ46の動きが阻害されずに済み、駆動装置40のスムーズな動作を確保できる。
【0047】
また、面の撓みに対する弾力性を有する板状の移動子110を備え、該移動子110を撓ませた状態で固定子101に対して押し当てた構成なので、移動子110の電極面112と固定子101の電極面104とを確実に接触させることができる。したがって、静電型エンコーダによるプランジャ46の位置検出精度をさらに向上させることができる。そのうえで、弾力性を有する板状の移動子110が撓んだ状態で固定子101に当接していることで、プランジャ46に回転方向の付勢力が生じており、当該付勢力によって、回転規制部48の当接部48aが被当接部48bに当接してプランジャ46の回転が規制されるようにしている。これにより、ボビン(ガイド部)43でガイドされて軸方向に往復動するプランジャ46の動作にガタが生じることを効果的に抑制できる。したがって、プランジャ46のガタに起因する位置検出精度の低下を防ぐことができる。以上によって、簡単かつ安価な構成でありながら、プランジャ46の位置検出精度の向上を図ることができる。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。これらの点は、他の実施形態についても同様である。
【0049】
図7は、本発明の第2実施形態にかかる駆動装置40−2を示す図で、(a)は、駆動装置40−2の全体を示す概略側面図、(b)は、位置センサ47−2を示す概略平面図である。本実施形態の駆動装置40−2は、第1実施形態の駆動装置40の構成に加えて、移動子110の電極面112を固定子101の電極面104に対して付勢する付勢部材37を備えている。また、第1実施形態の駆動装置40が双方向駆動型の電磁アクチュエータであったのに対して、本実施形態の駆動装置40−2は単方向駆動型の電磁アクチュエータである点が異なっている。これらの点を除く他の構成は、第1実施形態の駆動装置40と同じである。
【0050】
すなわち、駆動装置40−2が備える付勢部材37は、フェルトあるいは不織布などで構成されたシート状の部材である。この付勢部材37は、コイル41の上端面に立設した支柱37aの後側面に取り付けられており、固定子101の前面に当接する移動子110を手前側から固定子101に向けて押圧した状態で設置されている。
【0051】
また、駆動装置40−2は、単一のコイル41の駆動でプランジャ46を下方(鍵20側)にのみ移動させるようになっている。したがって、図示は省略するが、本実施形態の鍵盤装置10−2が備える駆動制御回路は、単一のコイル41を備えた駆動装置40−2の駆動を制御するために必要な構成を備えている。
【0052】
本実施形態の駆動装置40−2では、付勢部材37による付勢で、移動子110の電極面112を固定子101の電極面104に対して均一に当接させることができるので、電極面112,104のクリアランスを安定させることができる。したがって、位置センサ47−2によるプランジャ46の位置検出精度をさらに向上させることができる。また、移動子110が固定子101と付勢部材37とで挟まれた状態で移動するので、プランジャ46の動作がさらに安定し、その点においても位置検出精度が向上する。
【0053】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図8は、本発明の第3実施形態にかかる駆動装置40−3を示す図で、(a)は、駆動装置40−3の全体を示す概略側面図、(b)は、駆動装置40−3が備える位置センサ47−3の概略平面図である。なお、図8(a)では、質量体30のシャンク部32や鍵20など、駆動装置40−3に隣接する他の部材の図示は省略している。本実施形態の駆動装置40−3は、一端が自由端となるようにプランジャ46に取り付けられた板状の移動子110が撓んでいない状態で固定子101に当接している。そのうえで、移動子110の電極面112を固定子101の電極面104に対して付勢する付勢部材37が設けられている。
【0054】
すなわち、台部材44の側面から突出する移動子110は、その面が平面状になっている。そして、付勢部材37による付勢で、固定子101の電極面104に対して移動子110の電極面112が押し当てられた状態になっている。付勢部材37は、第2実施形態と同様の構成である。したがって、本実施形態では、移動子110は、必ずしも可撓性及び弾力性を有していなくてもよく、硬質の材料からなる平板状部材であってもよい。そして、移動子110が付勢部材37で固定子101に付勢されていることで、回転規制部48の当接部48aが被当接部48bに当接してプランジャ46の回転が規制された状態になっている。
【0055】
また、第1実施形態の駆動装置40では、プランジャ46の往復動が筒状のボビン43でガイドされていたのに対して、本実施形態の駆動装置40−3は、ボビン43に代えて、プランジャ46をコイル41の上方及び下方でガイドする第1軸受38a及び第2軸受38bを備えている。第1軸受38aは、プランジャ46の第1ロッド42bの上端近傍の外周を支持するように設置されており、第2軸受38bは、プランジャ46の第2ロッド42cの下端近傍の外周を支持するように設置されている。そして、第1軸受38a及び第2軸受38bは、プランジャ46のスムーズな動作を確保するために、第1ロッド42b及び第2ロッド42cの外周に対して若干の隙間(クリアランス)A,A’を有している。
【0056】
鍵盤装置10では、詳細な図示は省略するが、駆動装置40−3を鍵20の横幅のスペースに収容するために、隣接する鍵20を駆動する駆動装置40−3を上下に互い違いにずらして配列することが行われる。この場合、コイル41を挟んでプランジャ46の両端に配置された第1軸受38aと第2軸受38bの間隔は、コイル41を上下に2個並べた分の寸法を少なくとも確保しなければならないため、当該間隔が大きくなってしまう。そして、第1軸受38aと第2軸受38bの間隔が長くなるほど、プランジャ46の傾きに対する動作を許容するために、第1軸受38a及び第2軸受38bにおけるクリアランスA,A’の寸法を大きく設定する必要がある。ところが、クリアランスA,A’を大きく設定することで、プランジャ46の動作にガタが生じ易くなるという問題がある。
【0057】
これに対して、本実施形態の駆動装置40−3では、位置センサ47−3の移動子110が付勢部材37で付勢されていることで、当該付勢力によって回転規制部48の当接48aが被当接部48bに当接してプランジャ46の回転及びガタつきが規制されるようにしている。したがって、第1軸受38a及び第2軸受38bの隙間A,A’の寸法が大きくても、第1軸受38a及び第2軸受38bでガイドされて軸方向に往復動するプランジャ46のスムーズな動作を確保できる。したがって、プランジャ46のガタに起因する位置センサ47の検出精度の低下を防ぐことができる。
【0058】
また、本実施形態の駆動装置40−3でも、付勢部材37によって、移動子110の電極面112を固定子101の電極面104に対して均一に当接させることができるので、電極面112,104のクリアランスを安定させることができ、位置センサ47−3による位置検出精度の向上を図ることができる。なお、本実施形態の駆動装置40−3では、撓んでいない平板状の移動子110−3を備えた位置センサ47−3を設置した場合を説明したが、これに代えて、撓んだ状態で設置した移動子110を備えた第1実施形態の位置センサ47、又は第2実施形態の位置センサ47−2を設置することも可能である。
【0059】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図9は、第4実施形態にかかる鍵盤装置10−4の構成を概念的に示す図である。本実施形態の鍵盤装置10−4は、第1実施形態の鍵盤装置10と比較して、鍵20と質量体30の配置の上下関係が逆転しており、それに伴い、鍵20と質量体30の間に設置した駆動装置40−4もその向きが上下逆転している。また、鍵20、質量体30、駆動装置40−4それぞれの動作の方向も第1実施形態に対して逆になっている。
【0060】
すなわち、本実施形態の鍵盤装置10−4では、鍵20の下側に質量体30が設置されており、鍵20の下面と質量体30との間に駆動装置40−4及びプランジャ46が配置されている。プランジャ46は、上方に延びる第2ロッド42cの上端が鍵支点12よりも前側の鍵20の下面に当接しており、下方に延びる第1ロッド42bに固定された台部材44の下端が、質量体支点31に対して質量部33とは反対側に延伸するシャンク部32の上面に当接している。なお、駆動装置40−4及び位置センサ47−4の構成は、上下が逆転している点を除けば、第1実施形態の駆動装置40及び位置センサ47と同じである。
【0061】
本実施形態の鍵盤装置10−4においても、鍵20は、鍵支点12の前後の自重バランスと、プランジャ46を介してかかる質量体30からの荷重との両方によって、押鍵操作がされてない状態では、図9に示すように、後端20bの下面が鍵上限ストッパー21に当接した非押鍵位置にある。このとき、質量体30は、質量体下限ストッパー35に当接した下限位置にある。そして、押鍵操作が行われると、鍵20は、プランジャ46を介して質量体30のシャンク部32を押し下げながら回動する。こうして、鍵20は、前端20aの下面が鍵下限ストッパー22に当接する押鍵位置になる。プランジャ46を介して鍵20により押し下げられることで回動した質量体30は、鍵20が押鍵位置のとき、質量体上限ストッパー34に当接して上限位置になる。一方、鍵20を押し下げている押鍵力が解除されると、鍵20には、回動する質量体30からプランジャ46を介して荷重が加わる。鍵20は、この荷重と自重バランスとの両方で非押鍵位置へ復帰する。
【0062】
本実施形態の駆動装置40−4でも、プランジャ46の位置を検出する位置センサ47に移動子110と固定子101を備えた静電型エンコーダを用いたことで、簡単かつ安価な構成でありながら、プランジャ46の位置検出精度を向上させることができる。また、位置センサ47は、移動子110を撓ませた状態で固定子101に押し当てた構成なので、移動子110の電極面112と固定子101の電極面104とを確実に接触させることができ、位置センサ47によるプランジャ46の位置検出精度をさらに向上させることができる。また、プランジャ46のガタつきも抑えることができる。
【0063】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。たとえば、上記各実施形態では、駆動装置40〜40−4で駆動される演奏操作子が鍵20である場合を示したが、本発明にかかる駆動装置によって駆動される演奏操作子は、鍵には限らず、それ以外の演奏操作子、例えばペダルなどであってもよい。また、本発明にかかる位置センサは、駆動装置が備える軸方向に往復動可能かつ軸周りに回転可能に支持された可動部材の位置を検出するものであれば、プランジャ以外の部材の位置を検出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 電子鍵盤楽器
10 鍵盤装置
20 鍵
30 質量体
38a 第1軸受(ガイド部)
38b 第2軸受(ガイド部)
40 駆動装置
41 コイル(駆動源)
41a 往動コイル
41b 復動コイル
43 ボビン(ガイド部)
46 プランジャ(可動部材)
47 位置センサ(位置検出手段)
48 回転規制部
48a 当接部
48b被当接部
50 主制御部
52 ペダル装置
101 固定子
103(103a,103b) 誘導電極
104 電位検出電極(電極面)
110 移動子
112(112a,112b) 櫛歯状電極(移動電極,電極面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏操作子に駆動力を付与するための可動部材と、
前記可動部材を軸方向に往復動可能かつ軸周りに回転可能に支持するガイド部と、
前記可動部材に設けた当接部が固定側に設けた被当接部に当接することで前記可動部材の回転が規制される回転規制部と、
前記可動部材を駆動するための駆動源と、
前記可動部材の位置を検出するための位置検出手段と、を備え、
前記位置検出手段は、前記可動部材側に設けた移動電極を有する移動子と、固定側に設けた誘導電極及び電位検出電極を有する固定子とを備え、前記固定子の誘導電極に電圧を印加し、静電誘導により前記移動電極に発生した電位分布を前記電位検出電極で検出することによって前記固定子に対する前記移動子の位置を検出する構成であり、
前記位置検出手段の前記移動子は、板状で面の撓みに対する弾力性を有し、一端が自由端となるように前記可動部材に取り付けられており、
前記移動子が撓んだ状態で前記固定子に当接していることで、前記可動部材に回転方向の付勢力が生じており、当該付勢力によって前記回転規制部の前記当接部が前記被当接部に当接している
ことを特徴とする演奏操作子の駆動装置。
【請求項2】
前記移動子の電極面を前記固定子の電極面に対して付勢する付勢部材をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の演奏操作子の駆動装置。
【請求項3】
演奏操作子に駆動力を付与するための可動部材と、
前記可動部材を軸方向に往復動可能かつ軸周りに回転可能に支持するガイド部と、
前記可動部材に設けた当接部が固定側に設けた被当接部に当接することで前記可動部材の回転が規制される回転規制部と、
前記可動部材を駆動するための駆動源と、
前記可動部材の位置を検出するための位置検出手段と、を備え、
前記位置検出手段は、前記可動部材側に設けた移動電極を有する移動子と、固定側に設けた誘導電極及び電位検出電極を有する固定子とを備え、前記固定子の誘導電極に電圧を印加し、静電誘導により前記移動電極に発生した電位分布を前記電位検出電極で検出することによって前記固定子に対する前記移動子の位置を検出する構成であり、
前記位置検出手段の前記移動子は、一端が自由端となるように前記可動部材に取り付けられた板状の部材からなり、
前記移動子の電極面を前記固定子の電極面に対して付勢する付勢部材を備え、
前記移動子が前記固定子に対して前記付勢部材で付勢されていることで、当該付勢力によって前記回転規制部の前記当接部が前記被当接部に当接している
ことを特徴とする演奏操作子の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−107287(P2011−107287A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260508(P2009−260508)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】