説明

漬物用床、および漬物製造方法

【課題】ぬかの代りに粉炭を用いることによって、ぬか味噌臭くない漬物用床を提供すること。
【解決手段】粉炭2に栄養源となるブドウ糖、乳酸菌、および酵母菌の少なくともいずれかひとつを添加し、前記粉炭にこれらの有用微生物を繁殖させてぬかの代りに炭を基材とした漬物用床1を作る。このようにして作った炭を用いた漬物用床1に、大根3、きゅうり、なす等の野菜等の物品を素材として漬け込み、漬物をつくる。従来のようにぬかを用いた漬物用床の場合には、漬け込んだ物品が薄黄色を呈するようになるが、本発明のように、ぬかに代えて粉炭を用いると、炭に含有されるK,Ca成分による中和作用および白炭を使った場合の炭表面の官能基による化学的吸着作用により、乳酸の発生を抑えるせいか、薄黄色に染まることが少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜等の漬物を漬けるための床に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、野菜等の漬物を漬けるための床としては、古来よりぬか床が知られている。ぬか床を用いると、ぬかの味がひとつの風味を醸しだして、風味ある漬物を得ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述したような従来のぬか床は、人によっては、そのぬか味噌臭さを嫌う人もあり、また、一般家庭においては、ぬか床を用いた漬物容器の近辺に発散する臭いを嫌う人もある。
以上のような理由によって、ぬか味噌臭くない漬物用床が望ましいが、現実的には、ぬかを用いなければ漬物はできないという固定観念があった。
そのために、一般家庭での漬物つくりが普及しないという現状である。
【0004】
そこで、本発明は、ぬかの代りに粉炭を用いることによって、ぬか味噌臭くない漬物用床を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる請求項1の漬物用床は、粉炭を混入してなることを特徴としている。
請求項2では、ぬかもしくはおからに、炭を混入してなることを特徴としている。
請求項3では、有用微生物として、乳酸菌もしくは酵母菌の少なくとも何れか一方を含んでいることを特徴としている。
請求項4の漬物製造方法は、漬物素材を、粉炭を混入してなる漬物用床に漬け込んだ後に取り出すことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の漬物用床によれば、粉炭を混入しているので、この粉炭が有用微生物の繁殖の基材となり、野菜等の素材を漬けると、素材の色が鮮やかで優れた保存性と、優れた味覚の漬物が得られる。
また、本発明の漬物製造方法によれば、漬物素材を、粉炭を混入してなる漬物用床に漬け込んだ後に取り出すので、上記効果を奏する漬物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明にかかる漬物用床および漬物製造方法を、その実施の形態を示した図1に基づいて詳細に説明する。
本発明においては、粉炭2に栄養源となるブドウ糖、乳酸菌、および酵母菌の少なくともいずれかひとつを添加し、前記粉炭にこれらの有用微生物を繁殖させてぬかの代りに炭を基材とした漬物用床1を作る。
【0008】
このようにして作った炭を用いた漬物用床1に、大根3、きゅうり、なす等の野菜等の物品を素材として漬け込み、漬物をつくる。
【0009】
従来のようにぬかを用いた漬物用床の場合には、漬け込んだ物品が薄黄色を呈するようになるが、この原因は、乳酸によるものっと考えられる。しかし、本発明のように、ぬかに代えて粉炭を用いると、炭に含有されるK,Ca成分による中和作用および白炭を使った場合の炭表面の官能基による化学的吸着作用により、乳酸の発生を抑えるせいか、薄黄色に染まることが少ない。
例えば、大根3を漬けると真っ白い状態のままの漬物ができ、なすの紫色や、きゅうりの緑色等が何れも鮮やかであり新鮮である。
【0010】
なお、野菜の脱水作用により、床の表面に水が滲出することがあるが、この滲出した水は無色透明な綺麗な水であるので、取り除けば良い。
また、粉炭として粉末白炭を使用すれば、水のクラスターを小さくして浸透性を高くする働きも得られる。
そして、炭の持つ脱臭効果により、漬物容器の近辺での臭いの発散を抑制できる。
なお、基材には、粉炭だけでもよく、ぬかやおからを混入させなくてもよいが、ぬかやおからを用いた従来の漬物用の漬物床に粉炭を混入させて、ぬかやおからと粉炭とを混在させた床でもよい。
さらには、粉炭に代えて、炭の塊や炭を粉砕したものを、ぬか床に混入してもよい。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例1では、粉炭として粉末白炭を8リットル、酵母菌として生ビールを2リットル、および水道水を沸騰させてカルキ分を抜いて冷ました水を少々加えて水分調整をし、さらに、整腸剤として市販されている4種類の乳酸菌を計65グラム、無添加の良質な味噌を50グラム、ブドウ糖を100グラム、そしてオリゴ糖を100グラム混入して、よく攪拌して漬物用床を作る。
このようにして作った漬物用床を複数の容器に分配する。
【0012】
分配したひとつの容器には、塩度約20%の梅干しを漬けて2カ月後に開封した。その結果、保存性は良好で、塩味は強いが美味しい梅干し漬けが得られた。
【0013】
分配した別の容器には、梅干しを生ビールに漬けて塩出しした梅干しを漬けて、2カ月後に開封した。その結果、保存性は良好で、塩味の辛味はなく、梅の素味が素晴らしい梅干し漬けが得られた。
【0014】
なお、以上の梅干し漬けを床から取り出すときに梅の皮が破れることもあり、また、粉炭が付着することを防止するために、梅干し等の物品は、通水性の高い袋に入れてまとめ漬けする方が好ましい。
【0015】
以上のように、本発明による漬物用床に大根、なす、きゅうり、にんにく、ごぼう等を漬けて2カ月後に取り出すと、優れた保存性が得られると共に、大根の白色、なすの紫色、きゅうりの緑色等の素材の色が鮮やかに得られ、にんにくやごぼうも新鮮であり、漬ける前と殆ど変わりの無い外観が得られる。ごぼうは、塩味があるがささがきにしても良い状態であって美味である。
また、粉末白炭を用いたので、比重が1.8であって、付着した炭も簡単に水で洗い流すことができる。粉末白炭によって発生した酸を吸着するという効果も得られる。
【0016】
分配したさらに別の容器には、蒸留精製した木酢液の希釈液を添加し、牛肉や豚肉を布で巻いて漬け込んだ。その結果、生肉の状態でありながらスモーク風味が付き、焼き肉にすると美味であった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる漬物用床の使用状態の説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1 漬物用床
2 粉炭
3 大根、素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉炭を混入してなる漬物用床。
【請求項2】
ぬかもしくはおからに炭を混入してなる漬物用床。
【請求項3】
有用微生物として、乳酸菌もしくは酵母菌の少なくとも何れか一方を含んでなることを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の漬物用床。
【請求項4】
漬物素材を、粉炭を混入してなる漬物用床に漬け込んだ後に取り出すことを特徴とする漬物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−115757(P2006−115757A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306772(P2004−306772)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(593076220)
【Fターム(参考)】