説明

漬物用調味液

【課題】安全性が高く、食塩、酢酸及びカテキン類が低減化され、且つ抗菌作用のある漬物用調味液を提供すること。
【解決手段】食塩1.0〜4.0質量%、酢酸又はその塩0.03〜0.3質量%及びカテキン類0.008〜0.15質量%を含有する漬物用調味液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漬物用調味液に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍冷蔵技術が広く普及するまでは、一般家庭において野菜、畜肉類や魚介類等の食材の保存性(保存期間)を向上しつつ新たな風味を食材に付与するため漬物が作られ、食されていた。
現代では、市販の漬物が広く流通する一方で家庭用の漬物用調味液が市販されるようになり、この漬物用調味液を用いれば食材に漬物の風味を手軽に付与できる点から、一般家庭において漬物用調味液を用いて浅漬けが広く食されるようになってきている。
【0003】
漬物に用いる食材は、食材の保存や流通工程において微生物に汚染されている場合、カット等の加工工程でカット断面から微生物が内部に侵入拡散し、汚染されている場合等もあるので、漬物を保存している間菌の増殖を防止し、漬物の保存性を向上させることのできる漬物用調味液が望まれている。一般的な漬物用調味液には、4質量%程度以上の食塩や0.3%程度以上の酢酸が含まれている。
【0004】
しかしながら、このような一般的な漬物用調味液を用いた漬物には多くの食塩が含まれており、近年、食塩の過剰摂取は高血圧等を引き起こすとして、一般消費者は漬物に含まれる食塩の低減化を望むようになっている。ところが、この食塩の低減化は微生物による漬物の腐敗を進み易くするため、減塩化された漬物は、減塩によって損なわれた抗菌性を他の抗菌性物質で補う必要がある。しかも、一般消費者は、合成系の抗菌性物質よりも抗菌性は弱いものの長期間摂取しても安全性が高いとされる天然系の抗菌性物質を好む傾向にある。
また、漬物用調味液に含まれる酢酸には酢酸特有の酸味や臭い等があるため、食材の風味を損ない易く、多く配合することは好ましくない。
【0005】
そして、茶葉抽出物を用いた漬物用抗菌剤、特に1%酢酸ナトリウムと酢酸でpH5.1に調整した4%食塩添加基本調味液に茶抽出物を添加した漬物用抗菌剤が報告されている(特許文献1)。
しかしながら、当該漬物用抗菌剤では、酢酸が通常の0.3%よりも高濃度であるため食材の風味が損なわれ、また減塩化もできておらず、一般消費者のニーズにあった漬物用調味液とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−166466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、食塩及び酢酸の使用量を減らし、且つ抗菌作用のある漬物用調味液を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、良好な風味と抗菌作用の両立を図るべく種々検討した結果、食塩、酢酸及びカテキン類の3種を併用し特定の濃度にすれば、抗菌性が維持又は向上しつつ、食材の風味が損なわれず、減塩化された漬物用調味液が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)の発明に係るものである。
(1)食塩1.0〜4.0質量%、酢酸又はその塩0.03〜0.3質量%及びカテキン類0.008〜0.15質量%を含有する漬物用調味液。
(2)浅漬け用調味液である上記(1)記載の調味液。
(3)野菜及び上記(1)又は(2)記載の調味液を含む漬物。
(4)野菜を上記(1)又は(2)記載の調味液に漬けて得られる漬物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の漬物用調味液は、食塩及び酢酸の使用量が減量されていても優れた抗菌作用を有する。
従って、当該漬物用調味液を用いれば、食材の風味を殆ど損なうことなく、保存性が維持又は向上した漬物を得ることができる。また、減塩化されているので、高血圧症等を予防又は改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いる食塩は、公知の製造法で得たものでもよく市販で入手したものでもよく、食品上許容される塩化ナトリウム又は天然塩(海水由来や岩塩由来)が挙げられる。
本発明の漬物用調味液中の食塩含有量は、減塩化及び抗菌作用、酢臭抑制の点から、塩化ナトリウム換算で1.0〜4.0質量%であることが必要であり、2.0〜3.5質量%であるのがより好ましい。
【0012】
本発明に用いる酢酸又はその塩は、公知の製造法で得たものでもよく市販で入手したもの(例えば、穀物酢等の食酢)でもよい。当該塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩:カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩:アンモニウム塩等が挙げられる。
本発明の漬物用調味液中の酢酸又はその塩の含有量は、酢カドの抑制及び抗菌作用の点から、酢酸(分子量82.03)換算で0.03〜0.3質量%であることが必要であり、0.05〜0.25質量%であるのがより好ましく、0.05〜0.20質量%であるのが更に好ましい。
ここで、酢カドとは、食酢特有の刺激臭や酸味を指し、この抑制とは刺激臭や酸味を少なくし、まろやかな風味を持たせることをいう。
【0013】
本発明に用いるカテキン類とは、カテキン、カテキンガレート、ガロカテキン及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類、並びにエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類の総称であり、これらの一種以上を含有するのが好ましい。また、カテキン類は、非重合体であるのが好ましい。
【0014】
本発明に使用するカテキン類は、一般的には茶葉;カカオ豆;ブドウ、カキなどの果実等の植物から直接抽出すること、又はその抽出物を濃縮若しくは精製することにより得ることができる。すなわち、本発明のカテキン類として、前記植物抽出物やその抽出濃縮物若しくは精製物、他の原料由来のもの、市販品、カラム精製品及び化学合成品を使用してもよい。植物抽出物等中のカテキン類の純度は、乾燥質量換算で全量中20質量%以上であることが望ましいが、更には30質量%以上、特に30〜95質量%であるのが好ましい。
【0015】
例えば、茶葉抽出は、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica、またはそれらの雑種から得られる茶葉より製茶された茶葉に、水や熱水、場合によってはこれらに抽出助剤を添加して抽出することにより行うことができる。また、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。
当該製茶された茶葉には、(1)煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜煎り茶などの緑茶類;(2)総称して烏龍茶と呼ばれる鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶などの半発酵茶;(3)紅茶と呼ばれるダージリン、ウバ、キーマンなどの発酵茶が含まれる。
抽出助剤としては、アスコルビン酸ナトリウム等の有機酸又はこれら有機酸塩類が挙げられる
【0016】
当該茶抽出物の濃縮は、上記抽出物を濃縮することにより行うことができ、当該茶抽出物の精製は、溶剤やカラムを用いて精製することにより行うことができる。茶抽出物の濃縮物や精製物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状等種々のものが挙げられる。
例えば、当該茶抽出物(茶カテキンともいう。)は、特開昭59-219384号、特開平4-20589号、特開平5-260907号、特開平5-306279号等に詳細に例示されている方法で調製することができる。また、市販品を用いることもでき、斯かる市販品としては、三井農林(株)「ポリフェノン」、(株)伊藤園「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」、DSMニュートリショナル・プロダクツ「テアビゴ」、サントリー(株)「サンウーロン」等が挙げられる。
【0017】
当該茶抽出物中のカテキン類は、非重合体若しくは重合体で存在し、かつ液に溶解しているもの又は茶の微細粉末の懸濁物に吸着若しくは包含された固形状のものとして存在する。
また、茶葉中のカテキン類の大部分はエピ体カテキン類として存在しており、このエピ体カテキン類を用いて熱や酸やアルカリ等の処理により立体異性体である非エピ体に変化させることができる。従って、非エピ体カテキン類を使用する場合には、緑茶類、半発酵茶類又は発酵茶類からの抽出液や茶抽出液の濃縮物を水溶液にして、例えば40〜140℃、0.1分〜120時間加熱処理して得ることができる。また非エピカテキン類含有量の高い茶抽出液の濃縮物を使用してもよい。それらは単独又は併用してもよい。
【0018】
本発明の漬物用調味液中のカテキン類含有量は、抗菌作用の点から、0.008〜0.15質量%であることが好ましく、0.01〜0.1質量%であることがより好ましく、0.04〜0.08質量%であるのが更に好ましい。
【0019】
本発明の漬物用調味液において、減塩化され、食材の風味を殆ど損なうことなく、保存性が向上した漬物が得られる点から、食塩:酢酸:カテキン類の配合質量比は、1.0〜4.0:0.03〜0.3:0.008〜0.15が好ましい。特に減塩化の点および食材の風味を損なわない点から食塩:酢酸:カテキン類の配合質量比は、2.0〜3.5:0.05〜0.25:0.01〜0.1であるのが好ましく、2.0〜3.5:0.05〜0.25:0.04〜0.08であるのがより好ましく、2.0〜3.5:0.05〜0.20:0.04〜0.08であるのが更に好ましい。
【0020】
後記実施例に示すとおり、食塩、酢酸及びカテキン類を各特定の濃度で併用した場合、
これらの相乗効果によって優れた抗菌作用が認められ、具体的に一般的に野菜や果物等の
食材に付着しているような微生物(一般生菌)に有効であったと共に食塩及び酢酸の使用
量を減らすことができた。
従って、これらを配合してなる組成物は、酢酸由来の酢カドが抑制されて風味が良く、減塩化された抗菌性を有する漬物用調味液として有用である。食塩、酢酸又はその塩及びカテキン類の3種を各特定の濃度になるように調味液に配合することにより調味液に抗菌性を付与し、長期間の保存が可能となると共に風味の良い漬物用調味液を得ることができる。また、当該調味液は減塩化されているため、高血圧症等食塩の過剰摂取に由来する症状の予防及び/又は改善に効果的である。
ここで、野菜や果物等に付着する一般生菌としては、土壌や堆肥、ヒトや動物の糞便等に存在する微生物等が挙げられ、具体的には、大腸菌群(Escherichia coli)、サルモネラ属(Salmonella)細菌、エロモナス(Aeromonas)属細菌、カンピロバクター属(Campylobacter)細菌、リステリア属(Listeria)細菌、ブドウ球菌属(Staphylococcus)細菌及びエルシニア属(Yersinia)細菌等が挙げられ、この中には腐敗や食中毒を引き起こす微生物も存在する。
【0021】
本発明で用いる食塩、酢酸又はその塩及びカテキン類を上記特定量で併用した場合に、微生物である細菌及び真菌の何れでも有効であるが、より好ましくは細菌に有効であり、これら菌の状態が芽細胞及び/又は栄養細胞であっても有効である。当該細菌としては、グラム陽性菌又はグラム陰性菌に限定されず、以下のようなものが挙げられる。これら微生物のうち、上記野菜や果物等に付着する一般生菌に有効である。
【0022】
例えば、グラム陰性菌としては、S. dysenteria(赤痢菌A亜群),S. flexneri(赤痢菌B亜群),S. boydii(赤痢菌C亜群),S. sonnei(赤痢菌D亜群)等の赤痢属(Shigella)細菌:ブルセラ属(Brucella)細菌:E. coli.O157等の大腸菌群(Escherichia coli):S. typhi(チフス菌),S. paratyphi A(パラチフスA菌),S. paratyphi B(パラチフスB菌),S. Typhimurium (ネズミチフス菌)S. Enteritidis(ゲルトネル菌)等のサルモネラ属(Salmonella)細菌:V. cholerae(コレラ菌),V. parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)等のビブリオ属(Vibrio)細菌:緑膿菌(P. aeruginosa)等のシュードモナス属(Pseudomonas)細菌;A. hidrophila(エロモナス・ヒドロフィア)、A.sobria(エロモナス・ソブリア)、A.caviae(エロモナス・キャビエ)、A.salmonicida(エロモナス・サルモニサイダ)等のエロモナス(Aeromonas)属細菌、C. jejuniC. coli等のカンピロバクター属(Campylobacter)細菌等が挙げられる。
また、例えば、グラム陽性菌としては、枯草菌(B. subtilis)、炭疽菌(B. anthracis)、セレウス菌(B. cereus)等のバシラス属(Bacillus)細菌:リステリア・モノサイトゲネス菌(L. monocytogenes)リステリア・イバノヴィ菌(L. ivanovii)、リステリア・シーリゲリー菌(L. seeligeri)等のリステリア属(Listeria)細菌:Al. acidoterrestris(旧B. acidoterrestris)等のアリシクロバチルス属(Alicyclobacillus)細菌:S. aureus(黄色ブドウ球菌),S. pyogenes等のブドウ球菌属(Staphylococcus)細菌:C. botulinum(ボツリヌス菌),C. perfringens(ウェルシュ菌),C. difficile, C. sporogens等のクロストリジウム属(Clostridium)細菌:Leuconostoc mesenteroides等のリューコノストック属(Leuconostoc)細菌をはじめとする乳酸球菌:Lactobacillus plantarum等のラクトバチルス属(Lactobacillu)細菌をはじめとする乳酸桿菌::Desulfotomaculum nigrificans等のデスルフォマクルム属(Desulfotomaculum)細菌:Enterococcus faecalis等のエンテロコッカス(Enterococcus)細菌;Y. enterocolitica(エルシニア・エンテロコリチカ)等のエルシニア属(Yersinia)細菌等が挙げられる。
【0023】
本発明の漬物用調味液は、常法に従って食塩、酢酸及びカテキン類を上記各濃度となるように配合し、水等公知の溶剤等の任意成分を添加し調整することで製造できる。この際、食塩、酢酸又はその塩及びカテキン類を混合して一つの製剤としたものを用いてもよく、また別々の製剤としたものを用い使用時に混合してもよい。また、製剤の形態は、特に制限されず、用途に応じて、液体、粉体、固体、ペースト状等のいずれであってもよい。
【0024】
本発明の漬物用調味液には、その形態及び用途に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲内で上記必須成分以外の成分、例えば、砂糖、酒、みりん、醤油、味噌、昆布等の基本的な調味料;グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸系調味料;グアニン酸ナトリウム等の核酸調味料;蛋白質加水分解物;酸化防止剤;唐辛子、コショウ、山椒等の香辛料;無機酸類;無機酸塩類;無機塩類;色素類;乳化剤;保存料;甘味料;酸味料;pH調整剤;品質安定剤;多糖増粘剤等を適宜配合することができる。
【0025】
pH調整剤としては、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸等の有機酸塩、リン酸、塩酸、硫酸等の無機塩、水酸化ナトリウム等の水酸化物、アンモニア又はアンモニア水、クエン酸アミン類、低級アルカノールアミン類、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記pH調整剤により本発明の漬物用調味液のpHを調整することができるが、特に限定されず、漬物用調味液(20℃)のpHを3〜9とするのが好ましい。
【0026】
本発明の漬物は、上記漬物用調味液を食材に添加し、当該調味液に食材が浸漬した状態又は当該調味液が食材に付着した状態で、10分〜7日間保存することによって得ることができる。このとき、当該調味液と食材とを適宜混合してもよい。このように上記漬物用調味液を用いることによって、食材に抗菌性を付与し、食材の保存性を向上しつつ、長期保存可能で食材の風味が活きた漬物を得ることができる。
【0027】
上記食材としては、例えば、野菜、果物、畜肉及び淡産又は海産魚介類等が挙げられるが、このうち野菜や果物が好ましい。野菜としては、例えば、キュウリ、ハクサイ、キャベツ、ダイコン、カブ、トマト及びナス等が挙げられる。
当該食材には、前記野菜等を洗浄したもの等の未加工品の他、これらをカットしたもの、乾燥や塩蔵等の保存処理をしたもの等の加工品が含まれ、当該食材は上記漬物用調味液と配合する前に、付着している一般生菌を減少させる点から水等で洗浄することが望ましい。
このときの上記漬物用調味液の使用量は特に限定されないが、食材に風味及び抗菌性を付与する点から、食材が浸る程度使用し、好ましくは食材30質量部に対して30〜400質量部が好ましい。
【0028】
また、保存温度は、10℃以下が好ましく、特に5℃以下が好ましい。保存期間は、上記漬物用調味液が食材に浸透しつつ風味が損なわれない点から10分から7日間が好ましい。
本発明の上記漬物用調味液を用いることによって食材の保存性を向上させることや食材の風味を活かすことができる。漬物の種類は限定しないが調理手段の簡便さの点から浅漬けが好ましい。
ここで、浅漬けとは、1分〜5日程度の短期間、食材に漬物用調味液を付着させた又は当該調味液に食材を浸漬したものでをいう。
【実施例】
【0029】
実施例1
各調味液は、食塩(0、2、3.5質量%)、酢酸(酢酸換算:0、0.05、0.1、0.3質量%)及びカテキン類として緑茶抽出物(0、0.05、0.1質量%)を表1に示した濃度になるように純水で溶解し、pH4.5(20℃)に調整した。
食塩:塩化ナトリウム(ナカライテスク社製)
酢酸ナトリウム無水物(分子量82.03、ナカライテスク社製)
カテキン類:緑茶抽出物「POLYPHENON 70A」カテキン製剤〔三井農林(株)製〕(カテキン類純度79.2質量% カテキン類比率;カテキン 0.4%、ガロカテキン 0.6%、カテキンガレート 1.1%、ガロカテキンガレート 5.0%、エピカテキン 2.3%、エピガロカテキン 2.6%、エピカテキンガレート 18.9%、エピガロカテキンガレート 69.1%)を使用した。
【0030】
上記調製した漬物用調味液1〜13(270mL)をそれぞれにストマッカー袋に添加し、更に各袋にカットしたキュウリの未殺菌野菜(30g)を入れ、全体をよく混ぜた後、野菜を漬物用調味液に浸漬した状態で10℃24時間保存した。24時間後、袋から野菜を取り出し水気を切った後、新しいストマッカー袋に入れて密閉後、再び10℃で保存した。0、3及び7日目に取り出し一般生菌数を測定した。
一般生菌数は平板塗抹法により求めた。TSA(Tryptic Soy Agar)寒天培地〔(Becton Dickinson社)1.7%カゼイン分解物、0.3%大豆酵素分解物、0.25%デキストロース、0.5%塩化ナトリウム、1.5%寒天、pH7〕上のコロニー数から生菌濃度を算出した。
上記の結果を表1〜3に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
実施例2
食塩4.0質量%で、酢酸は酢酸ナトリウムを酢酸換算で0.03〜1.0質量%となるように調味液を調製後、各調味液における酸っぱさ(酢カド)についてパネラー22名で官能評価を行なった。その結果を表4に示した。
斯様に酢酸の1.0質量%については7割り程度のパネラーが酸っぱさが強いまたは強すぎると感じたが、0.1質量%については強いまたは強すぎると感じたパネラーはいなかった。
このように、酢酸濃度の低減により酢カドを抑制することが可能であると考える。
【0035】
【表4】

【0036】
上記の結果より、風味および減塩化の点から食塩4.0%、酢酸0.3%、カテキン類0.15%と上限値を設定した。
上記の結果より、耐菌性の点から食塩1.0%、酢酸0.03%、カテキン類0.008%と下限値を設定した。
以上の結果より、調味液中、食塩1.0〜4.0質量%、酢酸又はその塩0.03〜0.3質量%及びカテキン類0.008〜0.15質量%とすれば、食塩、酢酸及びカテキン類の全てが低減化され、且つ抗菌作用のある漬物用調味液を得ることができ、これを用いれば保存性の向上し、食材の風味を活かした浅漬けを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食塩1.0〜4.0質量%、酢酸又はその塩0.03〜0.3質量%及びカテキン類0.008〜0.15質量%を含有する漬物用調味液。
【請求項2】
浅漬け用調味液である請求項1記載の調味液。
【請求項3】
野菜及び請求項1又は2記載の調味液を含む漬物。
【請求項4】
野菜を請求項1又は2記載の調味液に漬けて得られる漬物の製造方法。

【公開番号】特開2010−227086(P2010−227086A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167585(P2009−167585)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】