説明

潜在的な不具合状況を確定する試験台および方法

【課題】 潜在的な不具合状況を確定する試験台および方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、自動動作ユニット(2)を有する、駆動機構の潜在的な不具合状況を確定する試験台および方法に関する。本発明によれば、自動動作ユニットは、容器を事前定義された動作シーケンスで動かし、試験プロセス中に要求に従って容器(5)から液体媒体が抽出されることが可能であり、要求に従う抽出は、事前定義された条件に従って液体媒体を搬送する調整装置(6)によって具現化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動動作ユニットを有する、駆動機構の潜在的な不具合状況を確定する試験台および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量生産される車両の場合、ただし特にモータースポーツで使用される車両の場合、極限状態下で駆動エンジンを試験することが必要である。さらに、モータースポーツで使用される車両の場合、たとえばオイルまたはガソリン等、搬送される動作媒体が、最終的に消費される量でのみ搬送されることが、重量の理由で望ましい。特に、オイルタンク内のオイル充填量が低減した場合、テストトラックまたはレーストラックにおける車両の高速度、加速または傾斜姿勢により、空気が導入される可能性があり、それによって、概して駆動機構に損傷がもたらされる。したがって、従来のドライブトレイン試験台においてこうした潜在的な不具合状況をシミュレートする試みがなされてきたが、ここでもまた駆動機構に対する損傷の危険がある。
【0003】
下記特許文献1は、駆動機構を含む完成した車両を試験することができるローラ試験台を記載している。ローラの励振は、実際のテストトラックにおける実際の試験運転中に記録されて試験台コントローラに転送される測定値に基づいて行われる。この場合もまた、オイルレベルが低い場合に、制御されない空気の導入が発生する。
【0004】
下記特許文献2は、単に、6自由度で動作可能なキャリッジによって、車両内の試験者にいかに動きの印象を与えることができるかを提示している。車両に対し、下記特許文献3から、オイルレベルが低い場合に、車両が傾斜姿勢にある場合であっても、内燃機関に対し給油装置によってオイルを確実に供給することができることがさらに知られている。
【0005】
最後に、下記特許文献4は、自動車の製造システムに組み込まれるロボットを開示しており、このロボットは、自動車のタンクの燃料センサと、前記自動車のタンクの漏れ気密性とを、ロボットアームの動作によって試験する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2 246 686A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2004 045 125A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第27 01 939A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第107 07 022A1号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10 2006 026 408A1号明細書
【特許文献6】米国特許第7 036 360B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これを出発点とすると、本発明の目的は、エンジンに対する損傷がないようにするために、液体媒体で充填された容器、特にオイルタンクの極限の装填からもたらされる潜在的な不具合状況を特定することができる、試験台および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明に従い、請求項1および請求項5の特徴によって達成される。有利な改良形態は、従属請求項の特徴から明らかになる。
【0009】
本発明の本質は、自動動作ユニット、特に市販の産業ロボットを使用して、容器内の液体媒体のレベルに対する、たとえばテストトラックにおける正確にその容器に作用する力による影響をシミュレートすることにある。同時に、液体媒体の消費が実際のテストトラックにおける消費に対応するように、容器内に収容されている媒体が動作シーケンスに従って抽出される。この目的で、試験台は、事前定義された動作シーケンスで容器を動かす自動動作ユニットを備えている。容器を充填している媒体、たとえばオイルまたはガソリン等の動作媒体は、試験プロセス中に要求に従って抽出される。要求に従う抽出は、事前定義された条件に従って液体媒体を搬送する調整装置によって具現化される。ここで、調整装置を、ドライブトレイン試験台上で実際の内燃機械によって形成してもよい。ここで、要求に従う抽出の事前定義された条件と、自動動作ユニットの定義された動作シーケンスとは、試験運転の現実的な再現またはそのシミュレーションをもたらすように、互いに整合される。潜在的な不具合状況を確定するために、容器と調整装置との間に、体積流量を確定することができる体積流量測定装置が接続されている。体積流量が低下した場合、エンジンに圧力損失があることを推測することができる。さらに、連結ホースの容器と調整装置との間に検査窓を設けることができ、その検査窓により、空気の導入もまた視覚的に特定することができる。
【0010】
空気の導入がまだ発生していない容器内に収容されているオイルの最低充填量を確定するために、試験プロセスを種々の充填レベルで再現することができる。
【0011】
自動動作ユニットの動作シーケンスを、実際の試験運転中に記録されるかまたは車両シミュレーションから生成された測定値から定義することができる。したがって、既知のレーストラックの厳しいコーナーのプロファイルを測定することができ、測定されたデータが試験プロセスに対する基礎としての役割を果たすことができる。
【0012】
測定値は、好ましくは、前後方向加速度値、横方向加速度値および/または垂直加速度値であり、そこから、自動動作ユニットのX方向、Y方向および/またはZ方向の動作変位および/または動作角度を定義することができる。
【0013】
試験運転中のオイル消費の現実的な再現のために、調整装置は、容器からオイルを送り出すオイル調整装置であり得る。
【0014】
また、本発明により、自動動作ユニットを有し、その自動動作ユニットによって容器が事前定義された動作シーケンスで動かされる、駆動機構の潜在的な不具合状況を確定する方法であって、試験プロセス中に要求に従って容器から液体媒体が抽出され、その要求に従う抽出が、調整装置によって具現化され、調整装置により液体媒体が事前定義された条件に従って搬送される、方法もまた提案される。
【0015】
試験運転中に記録されるトラックデータを、好ましくは、制御ユニットにおいてロボットアームの動作に変換することができる。
【0016】
自動動作ユニットの変位移動を低減するために、容器を、前記運転状況において容器に作用する一定の加速度値に対応する角度位置に配置することができる。それにより、低加速度値および高加速度値の両方を、比較的長期間にわたって再現することができる。
【0017】
本発明による試験台の有利な実施形態を、図面に基づいて以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】試験台の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
試験台1は、自動動作ユニット2を備え、これはこの場合、市販のロボット3として設計されている。前記試験台は、そのロボットアーム4にグリッパー(詳細には図示せず)を有しており、それによって、試験対象のオイルタンク5が規定された空間位置に保持される。オイルタンク5は、試験される充填レベルまでオイルで充填されている。さらに、オイルタンク5は、管路8を介して調整装置6に接続されており、調整装置6は、事前に定義された基準に従ってオイルタンク5からオイルを送り出す。ここで、オイルタンク5と調整装置6との間に配置された体積流量測定装置7(流量計)によって、オイルタンク5から吸い出される体積流量および関連する圧力損失が測定される。さらに、体積流量測定装置7の下流に、検査窓9も接続されている。検査窓9により、管路8で搬送されるオイルおよびいかなる空気混入も見ることができる。
【0020】
ロボット3および調整装置6の両方には、制御ユニット10によって対応するデータが提供される。前記データは、実際のテストトラックで記録されるかまたは車両シミュレーションから生成されるトラックデータ11を含む。こうしたトラックデータは、車両の前後方向加速度、横方向加速度あるいは垂直加速度および/またはオイル充填レベルデータを含むことができる。ここで、すべての時点tに対して、対応する加速度値が割り当てられている。概して、慣性力およびロボットの変位により、レーストラックで発生する可能性のあるすべての加速度値(たとえば最大3G)を、動作シーケンスの1対1の移行によって再現することができるとは限らないため、事前に定義された補償を行わなければならない。この目的で、高加速度値での傾斜した潤滑オイル面に対応するオイルタンクの角度位置を提供することが提案される。前記角度位置を、同様に、アルゴリズムによってすべての時点に対して対応して定義することができる。
【符号の説明】
【0021】
2 自動動作ユニット
5 容器
6 調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前定義された動作シーケンスで容器(5)を動かす自動動作ユニット(2)を有する、駆動機構の潜在的な不具合状況を確定する試験台であって、試験プロセス中に要求に従って前記容器(5)から液体媒体を抽出することができ、要求に従う前記抽出が、事前定義された条件に従って前記液体媒体を搬送する調整装置(6)によって具現化される、試験台。
【請求項2】
前記事前定義された動作シーケンスを、実際の試験運転中に記録されたかまたは車両シミュレーションから生成された、測定値、特に加速度値から確定することができることを特徴とする、請求項1に記載の試験台。
【請求項3】
前記測定値が、前後方向加速度値、横方向加速度値および/または垂直加速度値であり、そこから、前記自動動作ユニット(2)のX方向、Y方向および/またはZ方向における動作変位および/または動作角度を定義することができることを特徴とする、請求項1または2に記載の試験台。
【請求項4】
前記調整装置(6)がオイル調整装置であることを特徴とする、請求項1に記載の試験台。
【請求項5】
自動動作ユニット(2)を有し、前記自動動作ユニット(2)によって容器(5)が事前定義された動作シーケンスで動かされる、駆動機構の潜在的な不具合状況を確定する方法であって、試験プロセス中に要求に従って前記容器(5)から液体媒体が抽出され、要求に従う前記抽出が、調整装置(6)によって具現化され、前記調整装置(6)により、前記液体媒体が事前定義された条件に従って搬送される、方法。
【請求項6】
トラックデータ(11)が、制御ユニットにおいてロボットアーム(4)の動作に変換されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記トラックデータ(11)の変換時に、前記自動動作ユニットによって高加速度値を再現するために、前記容器の角度位置が考慮されることを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−215573(P2012−215573A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−68888(P2012−68888)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【出願人】(510238096)ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (63)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】