説明

潜熱回収型給湯器・給湯暖房機等における排気手段

【技術課題】 潜熱回収型給湯機において、その給排気トップから排出される排気の流速を高めて給気口から吸引される給気に引き込まれて給気中の酸素濃度を低下させ、不完全燃焼等の原因となるリサイクル現象を防止する。
【解決手段】 潜熱回収により排気温度が40〜100℃以下の給湯機1において、その排気口14内に排気の流れに旋回流を発生させてサイクロンの作用で排気の流速を高める加速器17を取り付ける。このように、排気口14内に加速器17を取り付けることにより、排気の流速が高まるため、排気のリサイクルを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱効率を約95%まで向上し、これにより省エネルギーを実現すると共にランニングコストを大幅に削減することが可能な潜熱回収型給湯器・給湯暖房機等(以下「潜熱回収型給湯機」という。)における排気手段に関する。
【背景技術】
【0002】
一次熱交換器で顕熱を回収した約200℃の排気中から二次熱交換器を用いて潜熱を回収することにより、排気温度が約40〜100℃に低下する所謂潜熱回収型給湯機等が多く使用されている。
【0003】
また、この潜熱回収型の給湯器・給湯暖房機等として、特開2005−180779(特許文献1)には前記潜熱回収用の二次熱交換器とドレン蒸発器を備えた温水機が紹介されており、特開平10−148398号公報(特許文献2)には一次熱交換器と二次熱交換器間において循環する温水量を制御する給湯機が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−180779号公報
【特許文献2】特開平10−148398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの潜熱回収型給湯機等は、前記のとおり排気温度が40〜100℃というように極限まで低下してしまうことから、熱効率の点では大きな意味を有しているが、次のような問題がある。
【0006】
a.排気のリサイクル
燃焼排気が給気側に大量に戻り引き起こす現象で機器の燃焼に必要な酸素量が確保されなくなり、機器が不完全燃焼し振動燃焼や立ち消えが起こる。潜熱回収型の機器は前記のように40〜100℃と排気温度が低いため、潜熱回収を行わない通常の機器と比較して同一インプット(ガス使用量が同じ場合)の場合、排気のボリューム(体積)は小さく排気管内の流速が遅くなり、風の影響で排気のリサイクルが発生しやすくなる。
【0007】
b.給気部に発生する霜による給気閉塞
排気に含まれる水蒸気分が外気に触れた瞬間に凍結し給気に吸引する瞬間に給気部表面に吸着して給気側が閉塞する現象が発生する。この現象が起こるには条件があり、外気温度が−20℃以下、晴れた日の明け方、無風の日に起こる現象で、日の出と共に外気温度が上昇すると給気に付着した霜は消滅する。この現象を解決する方法は、給排気トップのリサイクルが少ない形状にすることである。
【0008】
c.排気の拡散変化
潜熱回収型の機器の燃焼排気温度は、通常の機器と比較して低いため、外気温度との差が少なく燃焼排気と大気の拡散が悪くなっている。燃焼排気と大気の拡散が悪いと給気側に排気がリサイクルした場合、濃い濃度の排気が戻ってくるため、給気中の酸素濃度が低下して機器の燃焼状態を悪化させる。
【0009】
d.排気温度が低い
通常の機器の燃焼排気温度は、機器出口近傍で200℃前後ある。これに対して潜熱回収型機器の燃焼排気温度は、前記のとおり40℃〜100℃と低くなっている。機器のインプットが同じで空気比も同じ場合、排気温度の違いで燃焼排気のボリュームに違いが出る。このボリュームの違う燃焼排気が同じ口径の排気管内を通過した場合、排気管内の流速に違いが出来、大気温度の低い機器のほうが排気管内の流速が遅くなる。
【0010】
本発明は、潜熱回収型給湯機において、上記a〜dに記した課題を解消することができる排気手段を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記a〜dに記した問題点を解消する排気手段として、請求項1に記載の発明は、潜熱回収により排気温度が40〜100℃の給湯機において、その給排気トップの排気口から流出する排気の流れに旋回流を発生させて流速を高めるための加速器を取り付けて成ることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、潜熱回収型給湯機における排気手段において、前記加速器を給排気トップの排気口内に取り付けて成ることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、潜熱回収型給湯機における排気手段において、前記加速器は、排気口内にあらかじめ旋回羽根を直接組み付けた構成から成ることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、潜熱回収型給湯機における排気手段において、前記加速器は、ケーシング内に旋回羽根を組み付けた構成から成り、この加速器を排気口内に後付けで挿入することにより、既設の潜熱回収型給湯機に適用して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のとおり、潜熱回収型給湯機の排気口内に排気の流速を高める加速器を取り付けたことにより、排気口から流出する排気速度が高まる。この結果、給排気トップにおいて、排気が給気口に引き込まれること(排気のリサイクル)がなくなり、酸素濃度を薄めて燃焼悪化を招くと云った従来の潜熱回収型給湯機の問題点を解消できる。
【0016】
また、上記排気のリサイクルを防止したことにより、前記した霜、氷柱の問題及び圧損の問題を解消することができると共に排気の流速を高めたことにより、排気管の口径を縮径できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】潜熱回収型給湯機と給排気トップの説明図。
【図2】給排気トップの排気口内に加速器を取り付けた状態の説明図。
【図3】(A)、(B) 1枚羽根で形成した加速器であって、(A)は側面図、(B)は斜視図。
【図4】(A)、(B) 4枚羽根で形成した加速器であって、(A)は側面図、(B)は斜視図。
【図5】(A)、(B) 8枚羽根で形成した加速器であって、(A)は側面図、(B)は斜視図。
【図6】既設の給排気トップの排気口内に加速器を後付けした例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、主熱交換器で熱交換した燃焼排ガス中に潜熱交換器を挿入し、排気熱で予備加熱した給水を主熱交換器に送って所定の温度まで加熱し、これを給湯あるいは暖房用に供給すると共に前記潜熱回収により40〜100℃に低下した排気を給排気トップを経由して大気中に放出する排気手段に適用される。
【0019】
給排気トップは、給気管が外側で排気管が内側の二重管構造となっていて、排気口は給気口より前方に位置し、排気口と給気口との間にはリサイクルを防ぐために皿状の邪魔板が位置している。
【0020】
潜熱回収型給湯機は、排気温が40〜100℃と従来の約200℃よりも大幅に低い構造のものが対象となる。
【実施例】
【0021】
図1〜図6に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。図1は潜熱回収型給湯機とこの給排気構造を示し、図2は給排気トップ、図3〜図5は加速器の形態、図6は後付けタイプの加速器の説明図である。
【0022】
各図において、符号の1は潜熱回収型給湯機(以下単に「給湯機」という。)であって、2はガスバーナ、3は主熱交換器、4は主熱交換器3で熱交換した燃焼排ガス中に置かれた潜熱交換器、5は給気管6が継がれた給気管接続口、7は排気管8が継がれた排気管接続口である。
【0023】
9は給排気トップであって、この給排気トップ9の後部には前記給気管6及び排気管8がそれぞれ接続口10、11に継がれたチャンバー9aが形成され、このチャンバー9aの前方は給気外管12と排気内管13の二重管構造となっていて、外壁aを貫通し、給気外管12の先端には給気口15が形成され、排気内管13の先端には前記給気口15の先端から更に突出した排気口14が形成されている。16は給気口15と排気口14間に取り付けられたショートパス防止用の皿状の邪魔板である。
【0024】
17は排気口14内に取り付けられたケーシング18と旋回羽根19からなる加速器であって、排気はこの加速器17内を流動するときに旋回羽根19の作用で旋回流となり、流速が速まる。
【0025】
以上に説明した給湯機1の場合、給排気トップ9の給気口15から吸引された燃焼用の空気は、給気外管12からチャンバー9a及び給気管8を経由して給湯機1内のバーナ2に供給される。
【0026】
一方、バーナ2の燃焼ガスは、主熱交換器3を加熱し、次に潜熱交換器4を加熱して排気管6を経由し、給排気トップ9のチャンバー9aから排気内管13を通って排気口14から大気中に排出される。
【0027】
この排出に際し、排気口14内には旋回羽根19を組み付けた加速器17が挿入されているため、この加速器17の旋回羽根19の作用で旋回流となって流速を高めて排気口14から排出される。つまり、排気口14から流出する排気は、旋回羽根19によって引き起されるサイクロンの作用で流速を高めることにより、給気口15から吸入される給気に巻き込まれることがなくなり、また流速が高まったことにより排出方向も定まる。
【0028】
この結果、前記したa〜dの課題はすべて解消する。
【0029】
本発明において、加速器17が奏する旋回流の発生手段としての旋回羽根19の構成には限定がなく、例えば図3に示すような1枚の旋回羽根19を螺旋状にひねってケーシング18内に溶接して組み付けても良く、あるいは図4に示すように4枚の旋回羽根19をひねってケーシング18内に組み付けても良く、あるいは図5に示すように8枚の旋回羽根19をひねってケーシング18内に組み付けて構成し、このケーシング18を排気口14内に外から挿入して取り付けるようにしても良い。
【0030】
あるいは、給排気トップ9の排気内管13の排気口14内に旋回羽根19を直接組み付けるようにしても良い。
【0031】
上記は、あらかじめ給排気トップ9の排気口14内に加速器17を取り付ける例であるが、既に設置して使用されている潜熱回収型給湯機も多数あり、この給湯機においては前記したa〜dの課題を保有していることから、加速器17を既設の給湯機の給排気トップにおいて、その排気口14内に図6に示すように後付けしてa〜dに記した課題を解消するようにしても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 給湯機
2 ガスバーナ
3 主熱交換器
4 潜熱回収熱交換器
9 給排気トップ
14 排気口
15 給気口
17 加速器
18 ケーシング
19 旋回羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱回収により排気温度が40〜100℃の給湯器・給湯暖房機等において、その給排気トップの排気口先端部から流出する排気の流れに旋回流を発生させて流速を高めるための加速器を取り付けて成る潜熱回収型の給湯器・給湯暖房機等における排気手段。
【請求項2】
前記加速器を給排気トップの排気口内に取り付けて成る請求項1に記載の潜熱回収型の給湯器・給湯暖房機等における排気手段。
【請求項3】
前記加速器は、排気口内にあらかじめ旋回羽根を直接組み付けた構成から成る請求項1に記載の潜熱回収型の給湯器・給湯暖房機等における排気手段。
【請求項4】
前記加速器は、ケーシング内に旋回羽根を組み付けた構成から成り、この加速器を排気口内に後付けで挿入することにより、既設の潜熱回収型の給湯器・給湯暖房機等に適用して成る請求項1に記載の潜熱回収型の給湯器・給湯暖房機等における排気手段。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−154545(P2012−154545A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13198(P2011−13198)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(390024877)トーセツ株式会社 (28)
【出願人】(000241902)北海道瓦斯株式会社 (11)
【Fターム(参考)】