説明

潜熱蓄冷熱材組成物

【構成】
主材の硫酸ナトリウム10水和物100重量部に対して温度降下剤の多価アルコ−ル及び/アンモニウム塩10〜30重量部と相分離抑制剤に多糖類の(C10)nで表されるスタ−チ類及び/セピオライトを単独または混合して0.1〜20重量部を含有する潜熱蓄熱材組成物。
【解決手段】一般式NaSO・nHO(ここにnは8.5〜10.5}の組成を有する硫酸ナトリウム水和合物100重量物に対し、多価アルコ−ル、特にエチレングリコ−ル10〜35重量部と、凝固促進に作用する塩化ストロンチウム0.1〜20重量部、相分離抑制に多糖類がスタ−チより選ばれる単独又はセピオライトと併用を0.1〜2.0重量部を混合を特徴としする冷房システムに適用の潜熱蓄熱組成物である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【産業上の技術分野】
【0001】
本発明は潜熱蓄冷熱材に関するものである。更に詳しくは、道路融雪凍結防止設備や住宅、ビル、施設、特に空調用冷暖房システムに適した循環水温度域(5〜10℃)で使用に有用な潜熱蓄冷熱材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
融解と凝固の過程で、一定の温度に大量の潜熱を吸熱/放熱する物質は、温度変化を伴わずにこの潜熱を蓄熱させ、これを必要時に温度変化を伴わずに熱を放出または吸収させて有効に利用できるので、潜熱蓄冷熱材として、冷暖房、廃熱の利用、太陽熱の蓄熱、定廉な夜間電力の利用等のシステムに用いられるが、常低温域での使用には相分離や過冷却のない技術的に容易なパラフィン系化合物が知られている、詳しくは5℃から9.8℃に融点を有するテトラデカンやペンタデカンであるが可燃性物質であり、火災に対するプロテクトが必要な事や、当該物質は水和物に比べて密度が小さく、熱伝導率に至っては一けた小さい事など、これらの短所により実用化を難しいものにしていた。
【0003】
又、各種の無機系水和塩が優れた蓄熱材として知られているが、一般的に無機系水和塩は融解する際に無機塩固体とその飽和水溶液に相が解離、また非一致溶融性の挙動が知られている。これを冷却しても固相水和塩の減少、また包晶が生成しなかったり、隆温させて凝固点を過ぎても固化せず、潜熱を放熱しない過冷却現象が起こり易い。また潜熱蓄熱材が使用されるためには、その凝固点及び融解点が使用温度域(有効蓄熱温度域)内に入るよう調節する必要があった。
【0004】
硫酸ナトリウム10水和物は融点32℃、潜熱55cal/gで暖房装置の蓄熱材として使用されてきた。無機水和塩としては、比較的凝固点の低い潜熱蓄熱材であるが、融解/凝固点に温度差が存在して、非一致融解性相変化物質である事が知られている。一般的に空調冷房に採用の水蓄熱槽の循環水温は出口温度が5℃から10℃の範囲、戻り温度が15℃以内の水温が適用されるので、この範囲内で作用する相変化組成物を採用するのが効果的である。下限温度が5℃以下ではヒ−トポンプの冷却効率が低下、また上限温度が10℃以上では除湿効果が低下する難点があった。冷房に使用するには該相変化物質の凝固点及び融解点を降温しなければ、そのままでは使用に適さなかった。また硫酸ナトリウム10水和物は過冷却現象と履歴を繰り返すと相分離現象を起こしやすい欠点があった。
【0005】
かかる物質の硫酸ナトリウム水和物のような電解質水和物は相分離現象と過冷却の抑制に加えて、凝固点や融解点の温度を低温用の潜熱蓄熱材として使用するには、グリコ−ル類等の多価アルコ−ルや尿素等のアンモニア類を凝固点降下剤として添加することが知られている(例えば特開昭56−95981号公報、特公平1−40077号公報等)。しかし、エチレングリコ−ル添加による凝固点降下には限界があるとされていた。
【0006】
すなわちエチレングリコ−ルの添加量が比較的少量の場合は、添加量に応じて凝固点降下が見られるが、添加量が多くなると発核を困難にして、凝固しなくなる。また硫酸ナトリウム10水和物に対して、エチレングリコ−ルが10重量%を超えて、更に添加量を増やしても、凝固点と融解点の降下に拘わる転移点は緩慢となり実用的でなかった。また硫酸ナトリウム10水和物は無機系水和塩の一般的性質として、過冷却されやすいが、エチレングリコ−ルの大量添加の場合、これが促進される。また大量に添加することで蓄熱密度が低下し、潜熱蓄熱材としての効果を下げる事になる。これらの理由から添加量の範囲はせいぜい1〜10重量%が限界とされていた。
【0007】
従って、本発明の目的とするような低常温で使用できる潜熱蓄熱材はエチレングリコ−ルを含む多価アルコ−ル類の添加だけでは達成することができず、冷暖房用システムに最適な温度域で、潜熱を有効に適応できる潜熱蓄熱材組成物は得られていなかった。
【0008】
これらの課題について、発明者らは既に特開平10−237433号で低常温潜熱蓄熱材組成物を提案している。ここでは主剤に塩化カルシウム水和物100重量部を用いる方法において、エチレングリコ−ルの多量添加を可能とすることで、凝固点/融点降下に有効な手段を提示している。この前案は融点降下、特に安定して凝固点降下に顕著な効果が認められるが融解点はとの温度差が大きく、初頭の目的を達成した蓄熱材として、効果を挙げるには、前述の理由から融解点と凝固点の温度差を更に縮めて、融解温度を10℃以下に降下しなければ、空調用蓄冷熱材としての効果用は期待できない。しかるに前案では融解点降下について、満足するには十分ではなかった。すなわち一般的に冷房に採用される蓄熱循環水の水温は出口温度が5℃以上10℃未満、戻水は15℃の範囲で循環している。すなわち、潜熱蓄熱材の適応機能が冷房効果上、冷凍機器機の効率の実態に照らして求望されていた。特に融解温度降下で好ましくは循環システム温度に対応する蓄冷熱剤は6.5〜7.5℃で凝固し、10℃付近で融解する温度対応の機能がヒ−トポンプの冷却運転や関連設備等にかかる負荷を軽減し、経済的効果上好ましい。更に望ましくは融点/凝固点の相移転の一致を見るのが理想であるが、硫酸ナトリウム水和物は前述に示す通り、凝固/融解において、非一致的性状を示す物質であるが故に、組成物変性に関わる何らかの手段を用いなければ、融解点変更にかかる温度降下は解決できていなかった。
【0009】
また相分離は一般的に単一物質では起こらないが、2つ以上で成立する電解水和物では相の解離が発生しやすく硫酸ナトリウム水和物も例外ではない。すなわち該水和物は融解時に密度の違いにより無水固体と水溶液の二相に解離して密度の大きい固体が水溶液中を沈殿して、二層現象が発生する。これらの相分離を防止する手法として、米国特許第3986969号でシリカゲル、アタパルジャイト粘土、特開昭54−16387号でポリアクリル酸の多価イオン結合、特許登録1753195号でオルトホウ酸、アルギン酸ソ−ダ、特許登録1735640号で硫酸カルシウム及び無定型シリカ、いずれもゲル化により沈降を防止する方法が提案されている。しかし、これら提案されている技術も一部の暖房用途を除いて試みられているが、今日に至るも冷房用低常温蓄熱材に限ると、製品化は皆無に等しい実情である。
【発明が解決しょうとする課題】
【0010】
従来から蓄熱材組成物に関しては幾多の方法や手段が提案されているが、結果論として、問題点は次記するように明確であるが未だ満足すべき改良はなされていないに等しい。1.凝固点と融解点の確定と転移点に措ける温度差の解消。2相分離防止技術と長期的性能の確保。3,質量の確保及び経済性向上と効果。4,使用上の安全性。以上を充足して且つ、空調用冷房システムに適用に適った蓄熱組成物が必要である。
【0011】
本発明者は、既に前案で冷房用システムに通した温度域において使用できる塩化カルシウム水和物を主剤とする潜熱蓄熱剤にエチレングリコ−ル及び塩化ストロンチウムを混合して含有した100重量部の組成物が、支障なく、凝固点の調整を前案で実証し可能としたが、融解点の改善に至っていなかった。発明者は更にエチレングリコ−ルを用いて融解点を冷暖房用に適した温度まで降下させる手段を硫酸ナトリウム水和物に試みた研究の結果、多種の塩類から適選する組成物のバランスの安定に良好な適材の選定を幾度となく試みた結果、凝固点(7℃付近)を大幅に変更しないで、任意に融解点を降下させる手段を発明して、10℃付近で融解する潜熱蓄熱材組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明において、化学式NaSO・nHO(nは8,5〜10.5)の組成を有する硫酸ナトリウム水和物100重量部に対し、エチレングリコ−ル1.0〜30重量部と、塩化ストロンチウム0.1〜10重量部を包含するに単一多糖類から選ばれる化学式(C10)nで表すスタ−チは一般的にデキストラン、デンプン粉末とデンプングリコ−ル酸ナトリウム・6HO、デンプンリン酸エステルナトリウムから選ばれるを単独/又はセピオライト0.1〜20重量部を併用して得られる潜熱蓄熱材組成物。
【0013】
本発明は、化学式NaSO・nHO(nは8,5〜10.5)の組成を有する硫酸ナトリウム水和物100重量部の相分離防止抑制に化学式(C10)nのスタ−チから選ばれる0.1〜20重量部を加熱重合して使用するのが好適な実施態様である。
【0014】
更に上記スタ−チに併用する化学式MgSi12(OH)・8HOのセピオライトが0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部を混合して使用するのが好適な実施態様である。
【0015】
更に本発明は上記蓄熱材組成物に、多糖類がら選ばれるスタ−チは加熱重合において、スタ−チと水量の割合により、粘性度の強弱を任意に選定できるので、水との混合割合に応じて適宣増減して調製する。スタ−チは重合により分子間を橋かけして、セファデックス(ゲル状物質)が、当該水溶液に懸燭して膨潤する環状分子の作用や網目状の無定型部により、該水和物を構成する分子レベルで包含して相の解離を抑制する。尚、必要に応じて、セピオライト0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部を混合するれば、分子の抱合効果による相分離抑止力を更に高めて組成物の安定性と蓄熱機能を維持する好適な実施態様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の潜熱蓄熱材の主剤として用いられる硫酸ナトリウム水和物は、化学式NaSO・nHO(nは8,5〜10.5)で表される。いわゆる硫酸ナトリウム10水和物及びそれよりも結晶水の量が若干増減したものを含み、NaSO・nHO(ここにnは8,5〜10.5、好ましくは9.5〜10.5)の組成を有する硫酸ナトリウム水和物である。nは水和物の結晶水モル数に相当する数であり、n=10の場合は硫酸ナトリウム10水和物である。このような硫酸ナトリウム水和物は硫酸ナトリウム無水物に水を添加して調製できる。
【0017】
多価アルコ−ルとしてはエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、1,3プロパンジオ−ル、グリセリン、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ルがあるが、本発明では各種類の調製と実施試験を繰り返して、その効果を比較した結果、塩類を添加した場合、特にエチレングリコ−ルが温度域の凝固点/融解点の調製効果に変化なく作用し、好ましい実施態様である。
【0018】
また多糖類が化学式(C10)nで示すスタ−チを0.1〜20重量部を単独/又はセピオライトと混合して使用することができるが、特にスタ−チとセピオライトをスタ−チとセピオライト混合比(重量比)9/1〜1/9、特に3/1〜1/1の混合物として用いると、より少量の添加量で効果を挙げる事ができるので蓄熱機能にも良好である。
【0019】
本発明において、主剤である硫酸ナトリウム水和物に対するエチレングリコ−ルの添加量は硫酸ナトリウム水和物100重量部に対し、エチレングリコ−ル10〜30重量部である。添加量がこれよりも多いと凝固点が低過ぎ、低温の冷媒が必要となるので、実用的でない。一方添加量がこの範囲より少ないと本発明の目的とするような低凝固点の潜熱蓄熱材が得られない。標記範囲内において、その添加量は、潜熱蓄熱材を使用する温度領域により任意に選択することができる。
【0020】
凝固点及び融点降下にエチレングリコ−ルの添加量を増すことにより、凝固点は、ほぼ直線的に降下を示すが、本発明においては、塩化ストロンチウムを併用添加する事によって、エチレングリコ−ルを任意に調製して添加することができ、これにより凝固点を所望の温度に調節することができる。例えば塩化ストロンチウム1.5重量部、塩化バリウム1.1重量部(いずれも主剤100重量部に対し)添加の場合、エチレングリコ−ルを30重量部を添加することにより、凝固点を平均7.7℃の範囲に固定できる。更に例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等のイオン化合物の単独あるいは複数の復塩促進剤を添加することで融解点を10℃以下に降温するに至った。
【0021】
標記エチレングリコ−ルの添加による凝固点と融解点の降下は、使用する硫酸ナトリウム水和物中の結晶水の量により影響を受ける。純粋な硫酸ナトリウム10水和物よりも、むしろ結晶水の少ない水和物を用いる方が、凝固点と融解点の温度差を短縮する効果も判明した。また同じ凝固点を得るためのエチレングリコ−ルの添加量を少なくすることができる。したがって本発明で用いられる硫酸ナトリウム水和物は10水和物に限定されず、一般式NaSO・nHO(ここにnは8,5〜10.5、好ましくは9.5〜10.5)の組成を有する硫酸ナトリウム水和物が用いられる。このような硫酸ナトリウム水和物は硫酸ナトリウム水和物に対する水の添加量範囲を基調に調節するのが、融点設定において任意のものを調製することができる。
【0022】
塩化ストロンチウム及び/または塩化バリウムの添加量は硫酸ナトリウム水和物100重量部に対し0.1〜20重量部好ましくは1.0〜10重量部である。この範囲より少量の添加量では、エチレングリコ−ルを多量に添加した時に凝固しにくくなるので、低凝固点の潜熱蓄熱材としての効果が低くなり、また経済的にも不利となる。塩化ストロンチウムを使用するのが、効果的であり、例えば塩化ストロンチウム/塩化バリウム0,7〜10重量部の添加が、充分に凝固点/融解点を下げる効果が得られるを特徴としている。
【0023】
潜熱蓄熱材組成物の主剤の硫酸ナトリウム水和物の性状は融点において、非一致現象を示すことが実施値と研究から判明している。凝固点/融解点にエチレングリコ−ルや塩化ストロンチウム/塩化バリウムの調製で凝固点を実用温度まで下げる相乗効果を得るが、融解にかかる温度について、前案では所望の範囲に至ってなかった。これらの問題点に鑑みた研究の結果、所望の融解温度まで降下しても、潜熱量の減少を伴わない潜熱蓄熱材組成物を完成した。すなわち、本発明は選ばれる標記の塩類より1種類以上のイオン化合物を選択して混合して任意に融解点降下を得る実施態様である。
【0024】
また本発明の上記潜熱蓄熱材組成物は無機系水和塩の特徴である、融解する際に無水塩固形が密度のバランスから溶液中を沈降して容器の底に沈殿する相分離現象が起こりやすく、融解と凝固を繰り返すことにより拡大して水和物の構成バランスを崩して、蓄熱機能が低下する傾向がある。相分離抑制手段として、多糖類のスタ−チから選ばれる単独/あるいはセピオライトの併用の混合が0.1〜20重量部を添加する事で、該組成物を包含して潜熱蓄熱材の性状を安定的に保持し持続できる。すなわち本発明のより好ましい実施態様は、主剤の硫酸ナトリウム水和物100重量部に対し、多価アルコ−ル10〜30重量部と塩化ストロンチウム0.1〜20重量部及び選ばれる塩類の1種類以上を0.1〜20重量部とスタ−チから選ばれるを0.1〜20重量部である。更にセピオライトを併用する合計量の範囲が0.1〜20重量部を特徴とする潜熱蓄熱材組成物である。
【0025】
スタ−チと混合して併用するセピアライトは別名を海泡石と呼ぶ、化学式MgSi12(OH)・8HOを有する水和マグネシウムシリケ−ト系の無機物。その構造は極めて細い繊維結晶構造体で、微小孔径のトンネル状細孔が繊維の間に無数にある。このトンネルによる特異な吸着効果が結晶水の解離を防止して相分離防止の作用をする。
【実施例】
【0026】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に例題に基づき説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されない。
[実施例1]
硫酸ナトリウム無水和物に水を添加し、一般式NaSO・9.6HOの組成を有する硫酸ナトリウム水和物を調製した。
硫酸ナトリウム水和物(NaSO・10HO):100.0重量部
エチレングリコ−ル(E G): 18.0重量部
塩化ストロンチウム(SrCL・6HO) 2.0重量部
硼砂(Na・10HO): 3.0重量部
の撹伴混合物に対し、化学式(C10)nスタ−チを表1記載に配合し調製した潜熱蓄熱材組成物を−25℃〜+125℃までプログラム設定できる低温恒温器内(イスズ製)の温度を20℃に設定して、8時間に保って下限温度の5℃に降温した後、6時間保持の熱履歴を連続サイクルして、試料a〜d各5点について、その融解点/凝固点のピ−クを測定したが、凝固促進と相分離抑制の効果を示して、融点/凝固点に変化はなかった。結果の平均値を表1に示す。
【0027】
【表1】
単位:重量部/℃
【0028】

【0029】
[実施例2]
硫酸ナトリウム無水和物に水を添加し、一般式NaSO・10.3HOの組成を有する酸ナトリウム水和物を調製した。
酸ナトリウム水和物(NaSO・10.3HO):100.0重量部
エチレングリコ−ル(CHOH−CHOH): 18.0重量部
塩化ストロンチウム(SrCL・6HO): 1.6重量部
硼砂(Na・10HO): 3.0重量部
試料混合物に対し、塩類を表2記載の各添加量を添加して、潜熱蓄熱材組成物a〜d試料各5点を調製し、これを8時間、20℃に保った後、5℃まで降温し、6時間保持して、その凝固点/融点のピ−クを測定した。塩類を許容される重量部まで随時増量添加して、転移点変更の効果を測定値を表2に示す。
【0030】
【表2】
単位:重量部
【0031】


[比較例]
硫酸ナトリウム水和物に対して、エチレングリコ−ル、塩化ストロンチウムを添加した100重量部の潜熱蓄熱材組成物を調製し、実施例1と同様にして融解温度の測定を試みた。表2に示す通り、表1に比べて融解温度の降下に改善の効果が認められた。尚、13℃以下の水温では固相から液相化に至る融解は得られなかった。また相分離現象の離水が認められた。
【0032】
[実施例3]
実施例1,2で用いたと同じ硫酸ナトリウム水和物を用い、
硫酸ナトリウム水和物(NaSO・9.6HO):100.0重量部
塩化ストロンチウム(SrCLO) : 2.0重量部
エチレングリコ−ル(CHOH−CHOH) : 15.0重量部
尿素(CO(NH) : 6.0重量部
スタ−チ/ セピオライト : 2.5重量部
硼砂(Na・10HO) : 3.0重量部
塩類の量を標記のごとく変化させて、混合撹伴して得られた潜熱蓄熱材(試料5点)を、−25℃〜+125℃までプログラム設定できる低温恒温槽中(イスズ製)で15℃に加熱昇温し、次いで5℃に冷却のサイクルにおいて、融解〜凝固の過程を1000回繰り返し実施したが、蓄熱、放熱の熱履歴において、いずれもその機能に変化はなかった。 結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
単位:重量部


【発明の効果】
【0034】
本発明の潜熱蓄熱材は硫酸ナトリウム水和物に多価アルコ−ル類、特にエチレングリコ−ルと、塩化ストロンチュウム及び/または塩化バリウムを混合した(表−1)に示す凝固点を7℃〜8℃付近に固定して、融点変性に効果的な選ばれる複合の混合物を用いて、調製することにより、潜熱量を減少せずに凝固点、特に融解点の降下に良好な効果が得られるので、比較的低温度域の潜熱蓄熱剤組成物、特に水蓄熱冷房システム用として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主材の化学式NaSO・nHO(nは8,5〜10.5)の組成を有する硫酸ナトリウム水和物100重量部に対し、融点降下剤に多価アルコ−ル及び/又はアンモニウム塩10〜40重量部にと凝固促進材として塩化ストロンチュ−ムと塩化バリウム0.1〜20重量部の混合物である潜熱蓄熱材組成物。
【請求項2】
主材の化学式NaSO・nHO(nは8,5〜10.5)の組成を有する硫酸ナトリウム水和物100重量部に対し、想分離防止材として、化学式(C10)nで示す多糖類及び/またはセピオライト0.1〜20重量部の混合物である事を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
【請求項3】
多価アルコ−ルがエチレングリコ−ル、グリセリン、プロピレングリコ−ルから選ばれる1種と、アンモニウム塩が硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、尿素から選ばれる1種を混合する事を特徴とする請求項1に記載の潜熱蓄熱材組成物。
【請求項4】
化学式(C10)nで表される多糖類がスタ−チ類であり、デキストラン、デキストリン、デンプングリコ−ル酸ナトリウム・6HO、デンプンリン酸エステルナトリウムから選ばれるを0.1〜20重量部であり、スタ−チ類と併用して、混合使用する化学式MgSi12(OH)・8HOのセピオライトが0.1〜20重量部である事を特徴とする請求項1に記載の潜熱蓄熱剤組成物。

【公開番号】特開2006−131856(P2006−131856A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350422(P2004−350422)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(599044847)
【出願人】(596032731)株式会社ファインテック研究所 (1)
【Fターム(参考)】