説明

潤滑剤用添加剤、組成物、潤滑剤

【課題】良好な粘着性、粘着性の持続性、剪断安定性、耐熱性を有し、かつ潤滑剤に適正な粘度特性を付与できる潤滑剤用添加剤を提供すること。
【手段】炭素数6〜20の1−アルケンの重合体であって、極限粘度[η]が3.0〜10.0dl/gの範囲にある1−アルケン重合体(A)からなる潤滑剤用添加剤、炭素数6〜20の1−アルケンの重合体であって、極限粘度[η]が3.0〜10.0dl/gの範囲にある1−アルケン重合体(A)が0.1〜20重量%と基油(B)が99.9重量%〜80重量%とからなる潤滑剤用添加剤組成物、および炭素数6〜20の1−アルケンの重合体であって、極限粘度[η]が3.0〜10.0dl/gの範囲にある1−アルケン重合体(A)を0.1〜50重量%含むことを特徴とする潤滑剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素数が6〜20の1−アルケンの重合体からなる潤滑剤用添加剤、該重合体を含む組成物、該重合体を含む潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の潤滑剤は温度が変わると粘度が大きく変化する、いわゆる粘度の温度依存性を有している。これら潤滑剤は温度依存性が小さいことが好ましく、粘度の温度依存性を小さくする目的で、潤滑剤基油に可溶な、ある種のポリマーが粘度調整剤として用いられている。近年では、このような粘度調整剤として、ポリイソブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、メタクリル酸エステルの重合体等が広く用いられている。粘度調整剤は、一般に潤滑剤が高温時に適正な粘度を保持するために用いられるが、特にチェーンソー油、ギヤ油及びグリースに代表されるように、摺動部材及び摺動部材間の軸受では適正な粘着力が求められるため、粘着性を有するものが有用である。現在ではポリイソブテン系などの組成物が知られており、潤滑油又はグリースに粘着付与剤、垂れ防止剤として使用されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−138288号公報 粘度調整剤は潤滑油の高温時と低温時に適正な粘度を保持するために用いられるが、経済的にはポリマー濃度をできるだけ低く抑えることが有効であり、できるだけ高分子量のポリマーを用いる方法が知られている。しかしながら、例えばポリイソブテン系の組成物では粘着性の持続性、剪断安定性等が不十分であることが本発明者らの検討でわかった。
【0003】
なお潤滑油に添加するポリマーとして、1−オレフィン系重合体が知られている(特許文献2、3参照)。これらのポリマーは少なくとも主鎖に二重結合を有しない点で、耐熱性も優れていると考えられる。
【0004】
USP824460(特許文献2)には、炭素数8から20のアルキル置換基を有する炭素とメチレン炭素を交互に有するポリマーを、潤滑剤の濃厚化剤として用いること、流動点降下剤および粘度指数向上剤として有効であることが記載されている。しかしこのポリマーの側鎖炭素の平均炭素数は10−14個である。また、炭素数6−20の1−アルケン重合体が、粘度指数向上効果を有すると共に、潤滑油、グリースなどの潤滑剤の一成分として使用した場合に、粘着性を付与できることは記載されていない。またせん断安定性についても記載されていない。USP3631008(特許文献3)には、少なくとも3種以上のα−オレフィンであって、炭素数が7−20であるもの共重合体であって、炭素数が奇数であるα−オレフィン由来の残基を33モル%〜67モル%有し、残りが炭素数が偶数であるα−オレフィン由来の残基である共重合体が、潤滑油の流動点降下剤として、また溶媒で希釈して接着剤として用いられることが記載されている。この特許には、炭素数が偶数のものだけからなるα−オレフィン重合体は、ワックス状となってしまうことが記載されているのみで、当該重合体の粘着性付与性能については記載されていない。またせん断安定性についても記載されていない。
【特許文献2】米国特許第824460号明細書
【特許文献3】米国特許第3631008号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況において鋭意研究の結果、特定の1―アルケンの重合体が良好な粘着性、粘着性の持続性、剪断安定性、耐熱性を有し、かつ潤滑剤に適正な粘度特性を付与できる潤滑剤用添加剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、自動車用・産業用の各種潤滑剤の粘着付与剤、垂れ防止剤として有用であり、粘着性、粘着性の持続性、剪断安定性、耐熱性に優れ、かつ潤滑剤に適正な粘度特性を付与できる潤滑剤用添加剤、潤滑剤用添加剤組成物、粘着性、粘着性の持続性、剪断安定性、耐熱性に優れ、かつ適正な粘度特性を有する潤滑剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る潤滑剤用添加剤は、炭素数6〜20の1−アルケンの重合体であって、極限粘度[η]が3.0〜10.0dl/gの範囲にある1−アルケン重合体(A)からなることを特徴としている;
本発明においては1−アルケン重合体(A)において、1−アルケンが、炭素数6,8,10、12,14、16,18,20である1−アルケンから選ばれた1種以上であることが好ましく、1−アルケンが、炭素数6,8,10である1−アルケンから選ばれた1種以上であることがさらに好ましい。
【0008】
本発明の潤滑剤用添加剤組成物は、上記1−アルケンの重合体(A)と油(B)の存在割合が(A)0.1〜20重量%、(B)80〜99.9重量%(AとBの合計は100重量%とする)である。
【0009】
本発明に係る潤滑剤は、炭素数6〜20の1−アルケンの重合体であって、極限粘度[η]が3.0〜10.0dl/gの範囲にある1−アルケン重合体(A)を、0.1〜50重量%含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の潤滑剤用添加剤および潤滑剤用添加剤組成物は、粘着性に優れ、かつ粘着力持続性、せん断安定性にも優れ、潤滑剤に適正な粘度特性を付与できるので、潤滑剤への添加、特にチェーンソー油、ギヤ油及びグリースへの添加に有用である。
【0011】
本発明の潤滑剤は、良好な粘着性、粘着性の持続性、剪断安定性、耐熱性を有し、かつ適正な粘度特性を有するので、特にチェーンソー油、ギヤ油及びグリース用として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0013】
本発明に係る潤滑剤用添加剤は、1−アルケンの重合体(A)からなるものである。
【0014】
1−アルケンの重合体(A)
本発明の潤滑剤用添加剤として用いられる1−アルケン重合体(A)は、炭素数6〜20の1−アルケンの重合体であり、極限粘度[η]が3.0〜10.0dl/gの範囲にある。
【0015】
本発明で用いられる前記重合体(A)において、1−アルケンの炭素数は、6〜20である。(A)は1−アルケンの単独重合体であっても良く、複数の1−アルケンの共重合体であってもよい。炭素数が上記範囲内にあると粘着性、粘着性の持続性、剪断安定性、耐熱性、また良好な粘度特性のバランスのとれた性能が得られる。また、1−アルケンが、炭素数6,8,10、12,14、16,18,20である1−アルケンから選ばれた1種以上であることが好ましく、これらのアルケンのみからなることがより好ましい。
【0016】
本発明においては1−アルケンが、炭素数6〜10である1−アルケンから選ばれた1種以上であることが潤滑剤に(A)を添加した場合のせん断安定性の点からさらに好ましく、これらの1−アルケンのみからなることがより好ましい。さらに炭素数6,8,10の1−アルケンのみからなることがより好ましい。特に1−アルケンが炭素数8〜10である1−アルケンから選ばれた1種以上であることが好ましく、炭素数8,10の1−アルケンのみからなることが特に好ましい。炭素数が上記範囲内にあると特に粘着性、粘着性の持続性、剪断安定性、耐熱性、また良好な粘度特性のバランスのとれた性能が得られる。
【0017】
本発明においては(A)1−アルケン重合体は、前記炭素数6〜20の1−アルケン以外のモノマー、例えばエチレン、プロピレンなどを少量含んでいても良いが、それらを含まない態様もまた好ましい態様である。
【0018】
また1−アルケンの重合体(A)は、極限粘度[η]が3.0〜10.0dl/g、好ましくは3.0〜8.0dl/g、特に好ましくは4.0〜7.0dl/gの範囲にある。
【0019】
1−アルケンの重合体(A)の極限粘度[η]は、135℃、デカリン中で測定される。
【0020】
極限粘度[η]が上記範囲内にある1−アルケン重合体(A)を含有する潤滑剤は、粘着性、粘着性の持続性、剪断安定性、耐熱性、また良好な粘度特性のバランスが特に優れる。
【0021】
本発明で使用される1−アルケンの重合体(A)の製造法には特に制限はないが、例えば、固体チタニウム触媒成分と有機アルミニウム化合物(有機アルミニウムオキシ化合物)および電子供与体触媒成分からなる触媒、あるいはメタロセン触媒を使用して重合することにより製造することができる。
【0022】
上記固体チタン触媒成分は、マグネシウム、チタニウム、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する高活性の触媒成分である。このような固体チタニウム触媒成分は、マグネシウム化合物、チタニウム化合物および電子供与体を接触させることにより調製される。
【0023】
固体チタニウム触媒成分としては、例えば、Ti(OR)g4-g(Rは炭化水素基、Xはハロゲン原子、0≦g≦4)で示される4価のハロゲン含有チタニウム化合物を挙げることができる。
【0024】
有機アルミニウム触媒成分としては、トリエチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウムを挙げることができる。
【0025】
電子供与体触媒成分としては、アルコールなどの含酸素電子供与体を用いることができる。
【0026】
潤滑剤用添加剤組成物
本発明の潤滑剤用添加剤組成物は、炭素数6〜20の1−アルケンの重合体であって、極限粘度[η]が3.0〜10.0dl/gの範囲にある1−アルケン重合体(A)が0.1〜20重量%と基油(B)が99.9重量%〜80重量%(AとBの合計を100重量%とする)とからなるものである。
(油(B))
本発明で使用される油(B)としては、特に制限はないが、動物油、植物油、鉱物油、合成油、またはそれらから選ばれる2種以上の混合物を好ましく挙げることができる。これら油(B)は、潤滑剤の基油として使用できるものであることが好ましい。
【0027】
合成油の例としては、100℃の動粘度が2〜100mm/sであるポリ・α−オレフイン(α−オレフィンの炭素数は通常8〜12である)、ポリオールエステル、ジエステル等が挙げられる。動物油の例としては、動物油として、牛乳脂、牛脂、ラード(豚脂)、羊脂、牛脚油、鯨油、鮭油、かつお油、にしん油、鱈油を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。植物油として、大豆油、菜種油、ひまわり油、サフラワー油、落花生油、とうもろこし油、綿実油、米ぬか油、カポック油、ごま油、オリーブ油、あまに油、ひまし油、カカオ脂、シャー脂、パーム油、パーム核油、ヤシ油、麻実油、米油、茶種油を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
特に100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上の鉱物油またはが2〜100mm2/sであるポリα−オレフィン、が好ましく用いられる。
【0029】
これらの中でも100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上の鉱物油が特に好ましい。
【0030】
ここで動粘度及び粘度指数はASTM D445(JIS K2283)に準じて測定される。
【0031】
(潤滑剤用添加剤組成物)
本発明に係る組成物は、前記1−アルケンの重合体(A)と油(B)とからなり、(A)が0.1〜20重量%と油(B)が99.9重量%〜80重量%(AとBの合計を100重量%とする)、好ましくは(A)が0.2〜15重量%と油(B)が99.8重量%〜85重量%、より好ましくは(A)が0.5〜10重量%と油(B)が99.5重量%〜90重量%とからなるものである。本発明では、(A)(B)成分に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で耐熱安定剤など少量の他の成分が含まれていても良い。
【0032】
本発明の組成物は、(A)成分を上記量で含んだ組成物であるので、例えば、潤滑剤を製造するにあたり、本組成物を潤滑剤の他の成分と混合することで、潤滑剤の粘着性を付与することができる。また潤滑剤の粘度指数調製剤としても機能することから潤滑剤に良好な粘度指数、粘着性を同時に付与することもできる。本発明の組成物は上記のように油(B)との組成物であるので、添加する場合の作業性も良好であり、他成分と容易に混合することができる。
【0033】
潤滑剤
本発明に係る潤滑剤は前記1−アルケンの重合体(A)を含んでなることを特徴としている。本発明に係る潤滑剤は、上記の1−アルケンの重合体(A)が潤滑剤の合計100重量部とした場合に、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.1〜30重量部である。
【0034】
例えば潤滑剤が潤滑油の場合は、さらに好ましくは1−アルケンの重合体が0.2〜20重量部、より好ましくは0.2〜5重量部の割合で含まれる。
また潤滑剤がグリースなどの固体潤滑剤である場合には、さらに好ましくは1−アルケンの重合体が1〜40重量部、特に好ましくは2〜20重量部である。
【0035】
また、本発明にかかる潤滑剤の(A)成分以外の残部は、以下に説明する基油(BB)、および必要に応じて用いられる添加剤である。
【0036】
[基油(BB)]
本発明の潤滑剤で用いられる基油(BB)は、特に制限はないが、動物油、植物油、鉱物油、合成油、またはそれらから選ばれる2種以上の混合物を好ましく挙げることができる。
【0037】
合成油の例としては、100℃の動粘度が2〜100mm/sであるポリ・α−オレフイン(α−オレフィンの炭素数は通常8〜12である)、ポリオールエステル、ジエステル等が挙げられる。動物油の例としては、動物油として、牛乳脂、牛脂、ラード(豚脂)、羊脂、牛脚油、鯨油、鮭油、かつお油、にしん油、鱈油を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。植物油として、大豆油、菜種油、ひまわり油、サフラワー油、落花生油、とうもろこし油、綿実油、米ぬか油、カポック油、ごま油、オリーブ油、あまに油、ひまし油、カカオ脂、シャー脂、パーム油、パーム核油、ヤシ油、麻実油、米油、茶種油を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
特に100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上の鉱物油または100℃の動粘度が2〜100mm/sであるポリα−オレフィン、が好ましく用いられる。
【0039】
これらの中でも100℃における動粘度が1〜50mm2/sで、かつ粘度指数が80以上の鉱物油が特に好ましい。
【0040】
ここで動粘度及び粘度指数はASTM D445(JIS K2283)に準じて測定される。
【0041】
[添加剤]
添加剤の例としては、例えば潤滑剤が、潤滑油である場合には、酸化防止剤、清浄分散剤、極圧剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、錆び止め剤、腐食防止剤等を挙げることができる。ただしこれらに限定されるものではない。また潤滑剤がグリースなどの固体潤滑剤である場合には、増ちょう剤、酸化防止剤、極圧剤等グリースに通常添加される添加剤を限定することなく挙げることができる。
【0042】
ここで、酸化防止剤として具体的には、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4メチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤;ジオクチルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0043】
清浄分散剤としては、例えばカルシウムスルフォネート、メグネシウムスルフォネート等のスルフォネート系;フィネート;サリチレート;コハク酸イミド;ベンジルアミンなどが挙げられる。
【0044】
極圧剤としては、例えば硫化油脂、硫化オレフィン、スルフィド類、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン塩などが挙げられる。
【0045】
粘度指数向上剤としては、例えばエチレン・α−オレフィン共重合体、メタクリル酸エステル重合体、スチレン・マレイン酸エステル共重合体、またはこれら重合体を鉱油で希釈した組成物が挙げられる。
【0046】
流動点降下剤としては、例えば有機酸エステル基を含有する高分子化合物が用いられ、有機酸エステル基を含有するビニル重合体が特に好適に用いられる。有機酸エステル基を含有するビニル重合体としては例えばメタクリル酸アルキルの(共)重合体、アクリル酸アルキルの(共)重合体、フマル酸アルキルの(共)重合体、マレイン酸アルキルの(共)重合体、アルキル化ナフタレン等が挙げられる。
【0047】
消泡剤としては、例えばジメチルシロキサン、シリカゲル分散体等のシリコン系消泡剤;アルコール、エステル系消泡剤などが挙げられる。
【0048】
錆止め剤としては、例えばカルボン酸、カルボン酸塩、エステル、リン酸などが挙げられる。また、腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾールとその誘導体、チアゾール系化合物などが挙げられる。
【0049】
増ちょう剤としては、特に制限はないが例えばリチウム石鹸、ベントナイト、シリカ、ウレア等の一般的に使用される増ちょう剤が制限なく使用できる。

本発明に係る潤滑剤は、上記の(BB)基油と他の添加剤との合計が潤滑剤の合計100重量部とした場合に、通常99.9〜50重量部である。基油と他の添加剤との割合は任意であるが基油(BB)と他の添加剤との割合が100/0〜50/50程度の割合であることが好ましい。
【0050】
例えば潤滑剤が潤滑油の場合は、さらに好ましくは(BB)基油と他の添加剤の合計が99.8〜80重量部、より好ましくは99.8〜95重量部の割合で含まれる。潤滑油の場合、他の添加剤は、基油(BB)と添加剤との重量比が100/0〜70/30の割合で使用することが好ましく、より好ましくは99/1〜70/30である。
【0051】
また潤滑剤がグリースなどの固体潤滑剤である場合には、さらに好ましくは(BB)基油と他の添加剤の合計が99〜60重量部、特に好ましくは80〜98重量部である。グリースの場合、他の添加剤は、基油(BB)と他の添加剤との重量比が100/0〜50/50の割合で使用することが好ましく、より好ましくは99/1〜60/40である。
(調製方法)
本発明に係る組成物は、従来公知の方法で、油(B)に1−アルケンの重合体(A)を溶解することにより調製することができる。又必要に応じて他の添加剤を任意の段階で添加することができる。
【0052】
本発明に係る潤滑剤は、従来公知の方法で、基油(BB)に1−アルケンの重合体(A)を溶解することにより調製することができる。又必要に応じて他の添加剤を任意の段階で添加することができる。また、本発明に係る潤滑剤は、前記潤滑用添加剤組成物を、基油(BB)および必要に応じて他の添加剤と混合することによっても調製することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、実施例における各種物性は以下のようにして測定した。
【0054】
(1)極限粘度[η];
135℃、デカリン中で測定した。
【0055】
(2)100℃での動粘度(K.V.);
ASTM D 445に基づいて測定を行った。尚、本実施例では試料油のK.V.が12〜13mm2/sとなるように調整した。
【0056】
(3)粘度指数(Viscosity Index)
ASTM D 445に基づいて測定を行った。
【0057】
(4)剪断安定性(超音波照射法);
JPI法(ASTM D2603に準拠)に基づき、30分照射前後の粘度低下率を以下の式より算出した。
【0058】
※粘度低下率(%)=(試験前粘度−試験後粘度)/試験前粘度×100
(5)粘着性;
(5−1)糸引き性:室温において、試料油の1滴を親指と人指指の間に挟み、両指を離したり当てたりした時の糸引きの有無を観察評価した。
(5−2)粘着力:低温(5℃)において、試料油中に攪拌器に取り付けた螺旋状溝のある金属棒を浸漬し、300rpmで回転させた時の試料油が金属棒の溝に沿って引き上がる状態(液面からの高さmm)を観察評価した。
(5−3)粘着力の持続性:試料油50mlをガラス製円筒サンプル瓶に入れ、開放系で150℃のエアーオーブン中で10時間加熱後の粘着性を上記(1)の糸引き性で評価した。
(5−4)粘弾性:レオメーター(レオメトリック社ARES)を用いて、コーンプレートに試料油2mlを入れ、0〜−20℃の温度範囲での粘弾性(法線応力の大きさ)を1〜3の評点で評価した。
【0059】
(評点) 1:小 2:中 3:大
1−アルケン重合体の合成例
(固体チタン触媒成分の調製)
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2−エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行ない、無水フタル酸をこの均一溶液に溶解させた。このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、この均一溶液75mlを−20℃に保持した四塩化チタン200ml中に1時間にわたって全量滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでジイソブチルフタレート5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌下保持した。2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンにて再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱反応を行った。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃でデカンおよびヘキサンにて、洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。以上の操作によって調製した固体チタン触媒成分の組成はチタン2.2重量%、塩素58.1重量%、マグネシウム19.2重量%およびジイソブチルフタレート10.7重量%であった。
[重合例1]
充分窒素置換した容量500mlのガラス製攪拌翼付重合反応器に23℃で1−ヘキセンを250ml装入した。次に反応器を攪拌翼を回しながら50℃まで昇温し、水素、窒素をそれぞれ1時間あたり4l、50lの速度で反応器中に連続的に導入した。50℃に昇温後、0.625mmolのトリイソブチルアルミニウムおよびチタン原子に換算して0.0125mmolの固体チタン触媒成分を装入し重合を開始した。50℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを添加して重合を停止した後、重合溶液を大量のメタノール中に投入し、ポリマーを析出させた。次いで、析出したポリマーを回収した後、130℃で一昼夜減圧下にて乾燥して13.5gのポリ1−ヘキセンが得られた。得られたポリマーのデカリン中で135℃で測定した極限粘度[η]は4.26dl/gであった。
【0060】
上記の重合条件を表1に示す。
[重合例2]
1−ヘキセンを1−オクテンに変えて、さらに水素仕込み量を1時間あたり3lの速度に変えたこと以外は、重合例1と同様に行ない、14.7gのポリマーが得られた。得られたポリマーのデカリン中で135℃で測定した極限粘度[η]は5.59dl/gであった。
【0061】
上記の重合条件を表1に示す。
[重合例3]
1−ヘキセンを1−デセンに変えたこと以外は、重合例1と同様に行ない、15.1gのポリマーが得られた。得られたポリマーのデカリン中で135℃で測定した極限粘度[η]は4.45dl/gであった。
【0062】
上記の重合条件を表1に示す。
[重合例4]
1−ヘキセンを1−ドデセンに変えて、さらに水素仕込み量を1時間あたり3lの速度に変えて、さらに重合時間を45分に変えたこと以外は、重合例1と同様に行ない、17.2gのポリマーが得られた。得られたポリマーのデカリン中で135℃で測定した極限粘度度[η]は4.75dl/gであった。
【0063】
上記の重合条件を表1に示す。
[重合例5]
1−ヘキセンを1−テトラデセンに変えて、さらに水素仕込み量を1時間あたり6lの速度に変えて、さらに重合時間を45分に変えたこと以外は、重合例1と同様に行ない、17.9gのポリマーが得られた。得られたポリマーのデカリン中で135℃で測定した極限粘度[η]は4.30dl/gであった。
【0064】
上記の重合条件を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例
[実施例1]
基油(BB)として100℃の動粘度が5.10mm2/s、粘度指数が102の鉱物油150ニュートラル(商標、富士興産製FK−150)を99.12重量%、1−アルカンの重合体(A)として重合例1で得られたヘキセン−1の重合体を0.58重量%、流動点降下剤としてアクルーブ136(商標、三洋化成社製)を0.3重量%用いて試料油を調製し潤滑油性能評価を行った。結果を表2に示す。
[実施例2]
1−アルカンの重合体(A)として重合例2で得られたオクテン−1の重合体を0.42重量%用いる以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
[実施例3]
1−アルカンの重合体(A)として重合例3で得られたデセン−1の重合体を0.50重量%用いる以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
[実施例4]
1−アルカンの重合体(A)として重合例4で得られたドデセン−1の重合体を0.50重量%用いる以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
[実施例5]
1−アルカンの重合体(A)として重合例5で得られたテトラデセン−1の重合体を0.54重量%用いる以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0067】
比較例
[比較例1]
1−アルカンの重合体(A)の代わりにエチレン含量が60.5mol%、[η]が2.94dl/gのエチレン・プロピレン共重合体を0.8重量%用いる以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
[比較例2]
1−アルカンの重合体(A)の代わりにエチレン含量が60.2mol%、[η]が4.12dl/gのエチレン・プロピレン共重合体を0.62重量%用いる以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
[比較例3]
1−アルカンの重合体(A)の代わりに市販の粘着付与剤(Schill Seilacher社製:ストラクトールM)を5.8重量%用い、実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
[比較例4]
1−アルカンの重合体(A)の代わりに市販のポリメタクリレート(PMA)系粘度指数向上剤(三洋化成社製:アクルーブ702)を8.0重量%用い、流動点降下剤(C)を用いない以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数6〜20の1−アルケンの重合体であって、極限粘度[η]が3.0〜10.0dl/gの範囲にある1−アルケン重合体(A)からなる潤滑剤用添加剤。
【請求項2】
前記1−アルケン重合体(A)において、1−アルケンが、炭素数6,8,10、12,14、16,18,20である1−アルケンから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤用添加剤。
【請求項3】
前記1−アルケン重合体(A)において、1−アルケンが、炭素数6,8,10である1−アルケンから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑剤用添加剤。
【請求項4】
炭素数6〜20の1−アルケンの重合体であって、極限粘度[η]が3.0〜10.0dl/gの範囲にある1−アルケン重合体(A)が0.1〜20重量%と基油(B)が99.9重量%〜80重量%とからなる潤滑剤用添加剤組成物。
【請求項5】
炭素数6〜20の1−アルケンの重合体であって、極限粘度[η]が3.0〜10.0dl/gの範囲にある1−アルケン重合体(A)を0.1〜50重量%含むことを特徴とする潤滑剤。
【請求項6】
前記1−アルケン重合体(A)において、1−アルケンが、炭素数6,8,10、12,14、16,18,20である1−アルケンから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤。
【請求項7】
前記1−アルケン重合体(A)において、1−アルケンが、炭素数6,8,10である1−アルケンから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項5または6に記載の潤滑剤。
【請求項8】
潤滑剤が、チェーンソー油またはギア油であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の潤滑剤。
【請求項9】
潤滑剤が、グリースであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の潤滑剤。

【公開番号】特開2007−31629(P2007−31629A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220011(P2005−220011)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】