説明

潤滑油を供給する手段を有するカムシャフトに真空ポンプを接続する装置

本発明は、真空ポンプ(3)を自動車の内燃機関のカムシャフト(1)に接続する装置に関する。本装置は端部片(6)を備え、この端部片には、その中にカムシャフトの一方の端部が取り付けられる環状空間を画定する同軸の第1及び第2部分(7,9)であって、少なくとも一方がトルクをカムシャフトに伝達する第1及び第2部分と、前記トルクをポンプに伝達する手段とが設けられる。前記第2軸方向部分(9)には前記軸に沿って延びる収納部(17)が設けられており、この収納部は、ポンプから引き込みを行なう手段を受けるように設計されており、この引き込み手段は、カムシャフトに向かって流れ込む潤滑油を引き込んで、カムシャフトとポンプの間に流体を連通させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、前記真空ポンプの回転を駆動するために、自動車の内燃機関のカムシャフトに真空ポンプを接続する装置に関する。
【0002】
内燃機関のカムシャフトは、エンジンが作動しているとき、大きい又は小さい抵抗トルクを受ける。一般に、エンジンのクランクシャフトによって供給されるエンジントルクを効率的にカムシャフトに伝達するために継手が必要である。この継手、又は別の継手を使用して、ポンプ、特に真空ポンプを作動させることもできる。
これは、ジーゼル型の内燃機関を備える自動車では、ブレーキの制動力が、例えばエンジンカムシャフトの一端に固定される接続装置を介して、エンジンから離れた位置で駆動される真空ポンプに接続されるサーボブレーキによって増大するためである。
【0003】
この点に関し、国際公開第2004/057163号には、エンジンのカムシャフトから真空ポンプへの、このような接続装置を介したトルクの伝達が記載されている。前記装置は本体を含み、本体の内部には、カムシャフトの端部を収容し、ネジを受け入れる段付き穴が設けられており、前記ネジは前記本体の一部分に接して装置をカムシャフトに固定することができる。本体は更に放射状スロットを含み、これらの放射状スロットは真空ポンプに属するほぞと協働して前記ポンプにトルクを伝達する。
更に、本体の穴は、カムシャフトと真空ポンプの間に流体を連通させることにより、エンジンに使用される潤滑油をポンプに供給することができるような形状を有する。
【0004】
この装置を組み立てることが難しいことを別にしても、当該装置の本体の形状は比較的複雑であり、且つコストが高いので、大量生産には適さないことが判る。
【0005】
従って、本発明は、組立てが特に容易であり、経済性に優れ、且つ信頼性の高い、内燃機関のカムシャフトに真空ポンプを接続する装置を提案することにより、これらの不具合を解決することを目的とする。
本発明の別の目的は、カムシャフトのタイミングが設定された後で前記シャフトに接続することができる、カムシャフトに真空ポンプを接続する装置を提供することである。
【0006】
これらの目的のために、本発明は、自動車の内燃機関の管状カムシャフトに真空ポンプを接続する装置であって、端部片を備え、前記端部片に、カムシャフトの一方の端部が取り付けられる環状空間を画定する同軸の第1及び第2部分であって、少なくとも一方がカムシャフトにトルクを伝達することができる第1及び第2部分と、ポンプに前記トルクを伝達する手段とが設けられる装置を課題とする。
前記第2の軸方向部分には、前記軸に沿って延び、且つポンプのピックアップ手段を収納する収納部が設けられており、前記ピックアップ手段は、カムシャフトの内部に沿って流れる潤滑油を取り出して、カムシャフトとポンプの間に流体を連通させることができる。
【0007】
本装置の利点は、端部片を一つだけ使用して、カムシャフト、及び真空ポンプにトルクを伝達するだけでなく、カムシャフトを介して前記ポンプに流体を供給すること、及び当該装置がこれらの動作を特に簡単且つ経済的な方法で行なうと同時に、コストが高く且つ複雑な組み立てを排除できることである。
【0008】
好適には、第1部分は穴を含み、穴の内部にカムシャフトの端部が押し込まれる。
有利には、第1及び第2部分は半径方向に広がる端部壁によって互いに接合される。
【0009】
このような構成によって漏れのない端部片を得ることができ、この端部片によって、カムシャフト内の潤滑油が外部に漏れ出すあらゆる可能性を制限することができる。
特に有利な一実施形態では、第1及び第2部分、並びに端部壁は一体に作製され、よって経済性が高く、組み立て及び搬送が容易な装置が得られる。
【0010】
環状空間は、カムシャフトの厚さよりも有意に大きい半径方向の寸法を有することができる。
好適には、端部片は更に、第1部分から外側に向かって延びて、カムシャフトの駆動トルクを受けることが可能なフランジを形成する少なくとも一つの放射状部分を含む。
【0011】
有利には、ポンプにトルクを伝達する手段は、端部片に形成された放射状スロットを含む。
本装置は更に、カムシャフトに固定される固定フランジ、前記固定された端部フランジに接続される結合ピニオン、及び前記結合ピニオンに固定されるスプロケットホイールを含み、端部片はスプロケットホイールに直接的に又は間接的に取り付けられる。
【0012】
好適には、第2軸方向部分の収納部は穴から成る。
本発明は、非制限的な実施例として提供され、且つ添付図面によって図解される一実施形態の詳細な説明により一層明らかになる。
【実施例】
【0013】
図1及び2は、全体を参照番号2で示す本発明による装置が装着されたカムシャフト1を示す。本発明の装置は、真空ポンプ3を前記シャフト1に接続している。
カムシャフト1の一部分だけが示されている。しかしながら、カムシャフトは、周知のように、一連のカム5を外周上に支持するチューブ4を構成要件とする。
【0014】
接続装置2は、単一部材として作製され、環状の第1部分7が装着された端部片6を備えており、この端部片は、シャフト1と同軸のスリーブを形成し、チューブ4の一端に固定されている。第1部分7は、軸方向に沿って真空ポンプ3と同じ側で内側に延びて、半径方向に広がる端部壁8に連続し、端部壁自体は、軸方向に沿って前記ポンプ3とは反対側に延びて、ほぼ円筒形の第2軸方向部分9に連続する。この場合、第2部分9は、半径方向に広がる横断表面9aを含み、この表面9aは、第1部分7の半径方向に広がる横断表面7aから、軸方向に沿って半径方向に広がる壁8の方向に有意なずれを有する。
第1部分7及び第2部分9は同軸で、環状空間8aを画定し、この環状空間8aの内部にチューブ4の端部が取り付けられる。環状空間8aはこの場合、カムシャフト1の厚さより有意に大きい半径方向の寸法を有するので、前記シャフトの穴と第2部分9との間に小さな放射状空間が残され、よって端部片6を嵌め込むときに、シャフト1に第1部分7を容易に押し込むことができる。
【0015】
図3及び4に更に分かり易く示すように、端部片6は更に、フランジを形成する放射状部分、この場合参照番号10〜12で示す3つの放射状部分を含み、これらの放射状部分は、第1部分7から外に向かって放射状に延び、エンジントルクを受けることができる。この場合、フランジ10〜12は第1部分7の外周上に均一に分配されており、固定ネジ(図示せず)を通してエンジントルクを伝達する穴10a〜12aをそれぞれ含む。
第1部分7に関する限り、その目的は、フランジ10〜12を介して受ける前記エンジントルクを真空ポンプ3に伝達することである。伝達することができるトルクは、第1部分7の長さ、厚さ、及び破壊強度に応じて決まる。このトルクを真空ポンプ3に伝達するために、端部片6は、放射状スロット13を含み、このスロットは、半径方向に広がる端部壁8に設けられて、ポンプ3に属し、スロットと相補的な形状を有し、且つポンプ3の軸方向の一方の端部に位置するほぞ15及び16と協働する。
【0016】
当然ながら、エンジントルクをポンプ3に伝達する他の手段を設けることを考えることもできる。しかしながら、このようなほぞ15及び16、並びにスロット13の使用は、特に簡単で効果的である。
端部片6は更に収納部17を含み、収納部17はこの場合、第2部分9を真っ直ぐに通過し、半径方向に広がる壁8の横断表に開口する穴の形に作製される。収納部17は、カムシャフト1と同軸である。
【0017】
内部に潤滑油が流れるカムシャフト1と真空ポンプ3の間に流体を連通させるために、前記ポンプのピックアップ手段18が前記収納部17の内部に取り付けられる。
ピックアップ手段18は管状ピペット19を含み、このピペットはシャフト1と同軸で、その一部は真空ポンプ3の穴19aの内部に取り付けられる。ピペット19は前記ポンプ3の端部表面から飛び出し、ポンプの軸方向端部の近傍において、収納部17と接触する環状縁20を有し、よって端部片6と前記ピペット19の間を良好にシールするので、潤滑油が外部に漏れ出す危険を有意に制限する。このように、ピペット19により、ポンプ3の給油通路21に潤滑油を供給してこのポンプに潤滑油を差すことができる。
【0018】
このように、端部片6はエンジントルクを受け、当該トルクをカムシャフト1及びポンプ3に伝達するだけでなく、カムシャフト1を流れる流体から前記ポンプ3に潤滑油を供給することができる。
エンジントルクを受け止めるために、接続装置2は更に駆動部材22を備えており、この場合の駆動部材22には、カムシャフト1の軸方向端部近傍に固定される固定フランジ23と、前記固定フランジ23に配置される結合ピニオン24と、前記結合ピニオンに、軸方向に沿って固定フランジ23とは反対側に取り付けられるスプロケットホイール25と、軸方向に沿ってスプロケットホイール25と端部片6の半径方向に広がる横断表面9aの間に取り付けられる固定スペーサ片26とが設けられる。
【0019】
別の構成として、スプロケットホイール25とスペーサ片26を組み合せた単一部品を設けることも考えられる。しかしながら、スペーサ片26によって、既存のピニオン24とスプロケット25を使用することが可能になる。
【0020】
接続装置2を組み立てる場合、第1ステップでは、固定フランジ23をカムシャフト1に、例えば溶接、焼嵌め、又は接着によって取り付ける。次に、結合ピニオン24、スプロケットホイール25、及びスペーサ片26を、固定ネジ(図示せず)を使用して、前記ネジを締めることなく固定フランジ23に嵌め込む。次に、エンジンクランクシャフト及びカムシャフト1の回転を防止し、スプロケットホイール25に取り付けられたタイミングチェーンを張る。ピニオン24及びスプロケット25は、前記ピニオン及びスプロケットに設けられた縦長穴(図示せず)により、前記チェーンの張力に応じて、カムシャフト1に対し、わずかに回転することができる。次に、固定ネジを使用して、ピニオン24、スプロケット25、及びスペーサ片26を固定フランジ23に固定することにより、クランクシャフトとカムシャフト1間のタイミングを特に正確にする。
このようにして駆動部材22がカムシャフト1に取り付けられた後、端部片6がシャフト1の端部でスペーサ片26に固定されることにより、エンジントルクをカムシャフト1及びポンプ3に伝達すること、及び前記カムシャフトに使用される流体と同じ流体を使用して前記ポンプに潤滑油を供給することが可能になり、しかも特に経済的に行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】カムシャフトに装着されて真空ポンプを駆動する、本発明による接続装置の模式断面図である。
【図2】図1の装置の斜視図である。
【図3】図1の装置の端部片の斜視図である。
【図4】図1の装置の端部片の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の内燃機関のカムシャフトに真空ポンプを接続する装置であって、端部片(6)を備え、前記端部片には、内部にカムシャフトの一方の端部が取り付けられる環状空間(8a)を画定する同軸の第1及び第2部分(7,9)であって、少なくとも一方がカムシャフトにトルクを伝達することができる第1及び第2部分と、前記トルクをポンプに伝達する手段とが設けられており、前記第2軸方向部分には、前記軸に沿って延びてポンプのピックアップ手段を収納する収納部(17)が設けられており、このピックアップ手段が、カムシャフトの内部に沿って流れる潤滑油を取り出してカムシャフトとポンプの間に流体を連通させることができることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記第1部分が穴を含み、この穴の内部にカムシャフトの端部が押し込まれることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
第1及び第2部分が、半径方向に広がる端部壁(8)によって互いに接合されることを特徴とする、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
第1及び第2部分、並びに端部壁が一体に作製されることを特徴とする、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記環状空間が、カムシャフトの厚さよりも有意に大きい半径方向寸法を有することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記端部片が更に、第1部分から外に向かって延びて、カムシャフトの駆動トルクを受け止めることができる、フランジを形成する少なくとも一つの放射状部分(10〜12)を含むことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
ポンプにトルクを伝達する手段が、端部片に形成される放射状スロット(13)を含むことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
更に、カムシャフトに固定される固定フランジ(23)と、前記端部フランジに接続される結合ピニオン(24)と、前記結合ピニオンに固定されるスプロケットホイール(25)とを含み、前記端部片がスプロケットホイールに直接的に又は間接的に取り付けられることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
収納部が穴から成ることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−542615(P2008−542615A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514161(P2008−514161)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050474
【国際公開番号】WO2007/003819
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】