説明

潤滑油組成物にて摩擦緩和剤として使用できるアミノメチル置換イミダゾール化合物

【課題】潤滑油において摩擦緩和剤として使用できる化合物、そして、それらの化合物を製造するための方法の提供する。さらに、それらの化合物を含む潤滑油組成物および潤滑油添加剤濃縮物を提供する。
【解決手段】アミノメチル置換イミダゾール化合物を潤滑油における摩擦緩和剤として使用する。また、当該アミノメチル置換イミダゾール化合物を製造するための方法も開示する。さらに、当該アミノメチル置換イミダゾール化合物を有する潤滑油組成物および潤滑油添加剤濃縮物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に有機摩擦緩和剤化合物に関し、さらに具体的にはアミノメチル置換イミダゾール化合物および潤滑油におけるそれらの摩擦緩和剤としての使用に関する。また、アミノメチル置換イミダゾール化合物を製造するための方法、並びに上記アミノメチル置換イミダゾール化合物を含む潤滑油組成物および本発明のアミノメチル置換イミダゾール化合物と液状有機希釈剤とを含む潤滑油添加剤濃縮物も開示する。
【背景技術】
【0002】
米国では、企業平均燃費(CAFE)規制が、制定された目標期日までに、企業の車の全燃費を規定に従って段階的に増加させることを義務づけている。これに関連して産業界全体として、新型エンジンの設計により、また重要なことには潤滑油の処方への新たな取り組みにより、燃費を改善するための調査および研究も行われている。潤滑剤の最適化は、エンジン機材の変更よりも好ましい。それは、燃料効率においてその単位当たりの費用が比較的低いこと、および旧式のエンジンに対して遡及的に適合できる可能性があるとの理由による。
【0003】
エンジン油は、負荷、速度、および温度に関する様々な条件で、作動しているエンジンの部品の間において潤滑剤として機能する。このため、上記の様々なエンジン部品は、境界層の(弾性)流体力学における混合された潤滑領域の異なる組合せ、そしてベアリングおよびバルブ列によるピストンライナー/ピストンリング界面と小部品における最大摩擦損失にさらされる。様々な部品の摩擦によるエネルギー損失を軽減し、エンジンの摩耗を防止するため、摩擦緩和剤、耐摩耗剤、および酸化防止剤のような添加剤がエンジン油に加えられる。酸化防止剤は、前記の添加剤の効果を延長する傾向がある。ピストン/シリンダーにおける流体力学的な摩擦を軽減するためにも、近年ではエンジン油の粘度を低下させる傾向があり、それにより新たな境界層領域を相殺するため摩擦緩和剤への依存度が増加している。有機摩擦緩和剤は、一般に水素結合能を有する極性の頭部と油溶性のための非極性炭化水素直鎖とからなる。これらの摩擦緩和剤は、一般に境界層の条件で、物理的に吸着した極性の油溶性生成物の薄い単分子層、あるいは容易に剪断され、かつ典型的な耐摩耗もしくは極圧剤と比較して顕著に低い摩擦係数を示す反応層を形成することによって機能する。最も一般に使用される有機摩擦緩和剤は、オレイルアミドのような脂肪酸アミド、オレイルアミンのような脂肪族アミン、およびグリセロールモノオレエートのような脂肪酸エステルである。
【0004】
燃料効率を改良するため、潤滑油組成物の摩擦性を改良する新たな成分を開発することが行われている。
【0005】
特許文献1は、ベンズイミダゾールのアミノメチル誘導体およびベンゾトリアゾールのアミノメチル誘導体;並びに潤滑組成物もしくは機能性液体におけるそれらの金属不活性化剤としての使用を開示および例示している。特許文献2は、置換アミノメチル水素化ベンズイミダゾールおよびベンゾトリアゾールを、機能性液体におけるそれらの金属不動態化剤としての使用を示唆しながら、開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許第1061904号明細書(Elliott外)
【特許文献2】英国特許第1511593号明細書(Phillips外)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アミノメチル置換イミダゾール化合物および潤滑油での当該化合物の摩擦緩和剤としての使用に関する。油溶性アミノメチル置換イミダゾール化合物は、潤滑粘度の油に添加され、改良された摩擦性を有する潤滑油組成物を生成する。また、イミダゾール、ホルムアルデヒド、およびC乃至C28の脂肪族モノアミンのマンニッヒ反応によりアミノメチル置換イミダゾール化合物を製造するための方法も開示する。さらに別の態様は、液状有機希釈剤および本発明のアミノメチル置換イミダゾール化合物を含む潤滑油添加剤濃縮物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、一つの態様は、式Iで表すことができるアミノメチル置換イミダゾール化合物に関する:
【0009】
【化1】

【0010】
式中、R、R、R、Rは独立に、水素原子、C乃至Cのアルキル基、および式−CHNHRの部分構造からなる群より選択されるが、R、R、R、Rの少なくとも一つは式−CHNHRの部分構造であって、RはC乃至C28の脂肪族基である。この点に関して、置換基は化合物全体が油溶性となるように選択される。一般に、これは、脂肪族基における置換の程度、適切な鎖長もしくは鎖の分岐を選択することによる。さらに別の態様では、R、R、Rは水素原子であり、Rは式−CHNHRであって、RはC10乃至C28の脂肪族基である。好ましい脂肪族基は、C乃至C28のアルキルおよびアルケニル基であって、分岐鎖基もしくは直鎖基のいずれでもよい。ある態様において、脂肪族基はアルケニル基である。さらに具体的には、脂肪族基は、飽和脂肪族基である。モノおよびジ置換アミノメチル基が特に好ましく、それゆえ、別の態様は式IIの化合物に関する:
【0011】
【化2】

【0012】
式中、RおよびRは独立に、水素原子、C乃至Cのアルキル基、および式−CHNHRの部分構造からなる群より選択されるが、RおよびRの少なくとも一つは式−CHNHRの部分構造であって、RはC乃至C28の脂肪族基である。別の態様では、RはC10乃至C18の脂肪族基である。好ましい脂肪族基はアルキルおよびアルケニル基であるが、直鎖もしくは分岐鎖のいずれでもよい。さらに好ましくは、飽和脂肪族基である。ある態様において、脂肪族基は直鎖飽和脂肪族基である。上記脂肪族基は、化合物全体が油溶性となるように選択される。モノアミノメチル置換基は、Rが水素原子である場合、もしくはRが水素原子である場合である。式IIの化合物は、その化合物の製造方法に起因して、通常混合物として生成する。そして、潤滑組成物では、一般にこの混合物が用いられる。RがC乃至Cのアルキル基である場合、−CHNHRの基はイミダゾールの炭素原子に結合することができる。この態様では、−CHNHRの基が炭素原子に結合するのは、イミダゾールの4位および5位であることが好ましい。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、下記化合物の反応を含むアミノメチル置換イミダゾールを製造するための方法に関する。
(a)式IIIを有するイミダゾール化合物
【0014】
【化3】

【0015】
式中、R11、R12、R13、R14は独立に、水素原子およびC乃至Cのアルキル基からなる群より選択されるが、R11、R12、R13、R14の少なくとも一つは水素原子であり;
(b)ホルムアルデヒドもしくはホルムアルデヒド生成試薬;および
(c)式HN−R15を有するアミン
式中、R15はC乃至C28の脂肪族基であるが、特に好適な脂肪族基はC10乃至C28の脂肪族基であり、さらに好ましくはC10乃至C18の脂肪族基である。ある態様において、脂肪族基は飽和脂肪族基である。好ましいアミンは、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オレイルアミン、およびオクタデシルアミンである。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、主要量の潤滑粘度の油と0.01乃至5質量%の一種以上の上記本発明のアミノメチル置換イミダゾールとを含む潤滑油組成物に関する。
本発明のさらに別の態様は、10乃至90質量%の液状有機希釈剤と約90乃至10質量%の一種以上の上記本発明のアミノメチル置換イミダゾールとを含む潤滑油添加剤濃縮物に関する。
潤滑油組成物および潤滑油添加剤濃縮物は、いずれも潤滑油の性能を改良することを目的とする他の添加剤を含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される下記の用語は、反対の意味を明記しない限り、下記の意味を有する。
【0018】
本明細書で使用する「脂肪族」との用語は、分岐鎖および直鎖双方の炭化水素基を意味し、それらは飽和もしくは不飽和のいずれであってもよい。言い換えると、脂肪族基は、アルキル、アルケニル、もしくはアルキニルのいずれであってもよい。
【0019】
本明細書で使用する「アルキル」との用語は、分岐鎖および直鎖双方の飽和脂肪族炭化水素基を意味し、特定の炭素原子数を有することが特定されることがある。すなわち、本明細書で使用する「C乃至Cのアルキル」との用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルのような1乃至4の炭素原子を有するアルキル基を示す。
【0020】
本明細書で使用する「アルケニル」との用語は、一つ以上の不飽和炭素間結合を含む分岐鎖もしくは直鎖の炭化水素鎖を意味する。
【0021】
本明細書で使用する「アルキニル」との用語は、一つ以上の三重炭素間結合を含む分岐鎖もしくは直鎖の炭化水素鎖を意味する。
【0022】
(アミノメチル置換イミダゾール化合物を製造するための方法)
本発明のアミノメチル置換イミダゾール化合物は、種々の反応機序により製造することができ、多段工程もしくは一段工程のいずれもが採用される。
【0023】
すなわち、アミノメチル置換イミダゾール化合物を製造するための方法の一つは:
(a)下記の(i)と(ii)の反応を行ない:
(i)少なくとも一種の式IVのイミダゾールカルボキシアルデヒド:
【0024】
【化4】

【0025】
式中、R21、R22、R23、R24は独立に、水素原子、C乃至Cのアルキル基、および式−COHの部分構造からなる群より選択されるが、R21、R22、R23、R24の少なくとも一つは式−COHの部分構造である;および
(ii)式HN−R25を有する一級アミン(式中、R25はC乃至C28の脂肪族基である);そして
(b)(a)の反応生成物を水素供給源を用いて還元する。
【0026】
アミノメチル置換イミダゾールの製造に使用するため検討される式IVのイミダゾールカルボキシアルデヒドの例は、1H−イミダゾール−1−カルボキシアルデヒド、イミダゾール−2−カルボキシアルデヒド、イミダゾール−4−カルボキシアルデヒド、1−メチル−2−イミダゾールカルボキシアルデヒド、および1−メチル−5−イミダゾールカルボキシアルデヒドを含む。イミダゾールジカルボキシアルデヒドおよびイミダゾールトリオキシアルデヒドも使用可能である。この方法に使用するために検討されるアミンは、下記の式を有する:
【0027】
N−R25

式中、R25はC乃至C28の脂肪族基であり、好ましくはC10乃至C28の脂肪族基であり、さらに好ましくはR25はC10乃至C18の脂肪族基である。好ましいアミンは、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オレイルアミン、およびオクタデシルアミンである。水素供給源は、工程(a)の反応生成物を還元するために用いられる。工程(a)にて生成するイミンを還元することができる任意の適切な水素供給源を使用することができる。好ましい水素供給源は、水素化アルミニウムリチウム、ホウ水素化ナトリウム、および炭素上のパラジウムのような触媒と組み合わせて用いる水素ガスを含む。
【0028】
本発明のアミノメチル置換イミダゾール化合物は、マンニッヒ反応生成物を製造するための従来の方法を用いる一段工程によっても製造することができる。イミダゾールのマンニッヒ反応生成物を製造するための方法は、ストッカー、エフ・ビー外、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、1970年、35、883〜887頁に開示されている。本発明の好ましい態様において、アミノメチル置換イミダゾール化合物を製造するための方法は、下記化合物を反応させることを含む:
(a)式IIIを有するイミダゾール化合物:
【0029】
【化5】

【0030】
式中、R11、R12、R13、R14は独立に、水素原子およびC乃至Cのアルキル基からなる群より選択されるが、R11、R12、R13、R14の少なくとも一つは水素原子である;
(b)ホルムアルデヒドもしくはホルムアルデヒド生成試薬;および
(c)式HN−R15を有するアミン(式中、R15はC乃至C28の脂肪族基である)。
【0031】
特に好適な脂肪族基はC10乃至C28の脂肪族基であり、さらに好ましくはC10乃至C18の脂肪族基である。脂肪族基は、成分に油溶性を付与するように選択され、アルキルおよびアルケニル基が好ましく、直鎖および分岐鎖であってよい。ある態様では、脂肪族基は飽和脂肪族基である。好ましいアミンは、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、およびオレイルアミンであり;分岐アミンの例は、2−エチルヘキシルアミン、イソトリデシルアミン、2−ブチルオクチルアミン、2−ヘキシルデシルアミン、2−オクチルドデシルアミンその他を含む。特に好ましい分岐アミンは、2−エチルヘキシルアミンである。特に好ましいアルケニルアミンは、オレイルアミンである。
【0032】
本発明のアミノメチル置換イミダゾールの製造に用いるために検討されるイミダゾール化合物の例は、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、および2−イソプロピルイミダゾールを含む。式IIIのイミダゾールで示されているように、イミダゾールには4箇所の反応可能部位がある。好ましくはR11、R12、R13、R14の少なくとも2箇所が水素原子であり、別の態様ではR11、R12、R13、R14のうち3箇所が選択されて水素原子になる。1位が未置換であるイミダゾールは通常の条件下で容易にマンニッヒ反応が進行することが予想され、炭素置換についてはR12およびR13がより反応性になることが予想されるため、未置換であることが好ましい。
【0033】
(ホルムアルデヒドもしくはホルムアルデヒドを生成する試薬)
ホルムアルデヒドは、気体、液体、および固体を含むすべての状態を意味する。ホルムアルデヒドを生成する試薬の例は、パラホルムアルデヒドおよびホルマリンのような水性ホルムアルデヒド溶液を含む。気体状ホルムアルデヒドの例は、モノマーCHOおよび下記式を有するトリマー(CHO)(トリオキサン)である:
【0034】
【化6】

【0035】
液体ホルムアルデヒドの例は、下記の通りである:
(a)エチルエーテル中のモノマーCHO;
(b)水中のモノマーCHOであって、式CH(HO)(メチレングリコール)およびHO(CHO)Hを有するもの;
(c)メタノール中のモノマーCHOであって、式OHCHOCHおよびCHO(CHO)Hを有するもの。
【0036】
ホルムアルデヒド溶液は、水および様々なアルコールに溶解したものが市販されている。水に溶解したものは、37%乃至50%溶液が市販されている。ホルマリンは37%水溶液である。ホルムアルデヒドは、鎖状および環状(トリオキサン)重合体としても市販されている。鎖状重合体は、低分子量もしくは高分子量の重合体のいずれでもよい。
【0037】
イミダゾール、ホルムアルデヒド、およびアミンの相対的な量は、最終生成物について望まれる性質によって、決定されるであろう。モノ置換マンニッヒ反応生成物が望ましい場合には、イミダゾール出発物質、アミン出発物質、およびホルムアルデヒドは、略等モルの量で使用されるべきである。別の例において、ジ置換マンニッヒ反応生成物が望ましい場合には、約2モル当量のホルムアルデヒドと約2モル当量のアミンとを、イミダゾール出発物質のモル当たりで使用すべきであることなどである。アミンは混合物として使用できる。従来の方法を上記のマンニッヒ反応において用いることができる。ある特定の態様では主にモノ置換マンニッヒ反応生成物に関し、上記の反応体を、それぞれイミダゾール、アミン、およびアルデヒドについて、おおよそ1:0.1〜2:0.1〜2のモル比で使用する。好ましくは、それぞれのモル比は1:0.5〜1.5:0.5〜1.5になるであろう。さらに好ましくは、それぞれのモル比は1:0.8〜1.3:0.8〜1.3になるであろう。多置換のマンニッヒ反応生成物では、アミンとアルデヒドの割合が高くなることは明らかであろう。
【0038】
反応は、好ましくは大気圧下で実施するが、必要ならば大気圧よりも低い圧力および/または大気圧よりも高い圧力を採用してもよい。一般に、反応は約10℃乃至約200℃、好ましくは約20℃乃至約120℃の温度範囲内で実施されるが、多置換のイミダゾールの場合には、より高い温度および/または圧力、例えば、約100℃乃至約150℃の温度範囲内および約1気圧乃至約50気圧の圧力範囲内を採用する必要がある場合もある。
【0039】
本発明はまた、相対的に多量の潤滑粘度の基油および相対的に少量の一種以上の上記本発明のアミノメチル置換イミダゾール誘導体を含む潤滑油組成物にも関する。一般に、アミノメチル置換イミダゾール化合物もしくはその混合物は、全潤滑油組成物に基づき、アミノメチル置換イミダゾールが0.01乃至5質量%、より好ましくは0.1乃至2.5質量%、さらに好ましくは0.25乃至1質量%となる量で、潤滑油組成物中に加えられる。
【0040】
本発明の潤滑油組成物において使用するための潤滑粘度の基油は、一般に主要量、例えば組成物の全質量に基づき、50質量%を超える量、好ましくは約70質量%を超える量、さらに好ましくは約80乃至約99.5質量%の量、最も好ましくは約85乃至約98質量%の量で存在する。本明細書で使用する表現「基油」は、単一の製造者により同一の仕様に(供給源や製造者の所在地とは無関係に)製造され、同じ製造者の仕様を満たし、かつ各々特有の処方、製造物確認番号、もしくはそれらの両方によって識別される潤滑剤成分である、基材油もしくは配合された基材油を意味すると理解されたい。ここで使用される基油は、ありとあらゆる用途(例、エンジン油、舶用シリンダー油、機能液、具体的には油圧作動油、ギヤ油、変速機液等)で潤滑油組成物を処方する際に使用される、今日知られているか、あるいは後日発見されるいかなる潤滑粘度の油であってもよい。
【0041】
当業者であれば容易に理解できるように、基油の粘度は用途に依存する。従って、ここで使用する基油の粘度は、通常、摂氏100度(℃)で約2乃至約2000センチストークス(cSt)の範囲にある。一般にエンジン油として使用される個々の基油は、動粘度範囲が100℃で約2cSt乃至約30cSt、好ましくは約3cSt乃至約16cSt、最も好ましくは約4cSt乃至約12cStであり、そして所望の最終用途および最終油の添加剤に応じて選択または配合されて、所望のグレードのエンジン油、例えばSAE粘度グレードが0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W、15W−20、15W−30、もしくは15W−40の潤滑油組成物を与える。ギア油として使用される油は、100℃において約2cSt乃至約2000cStの範囲の粘度を示すであろう。
【0042】
基材油は様々な種類の方法を用いて製造することができ、その例は、これらに限定されるものではないが、蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化、および再精製を含む。再精製基材油には、製造、汚染もしくは以前の使用において混入した物質が実質的に含まれない。本発明の潤滑油組成物の基油は、いかなる天然もしくは合成潤滑基油であってもよい。適切な炭化水素合成油は、限定されるものではないが、エチレンの重合または1−オレフィン類の重合で重合体にすることにより製造された油、例えばポリアルファオレフィン(PAO)油もしくはフィッシャー・トロプシュ法のような一酸化炭素ガスと水素ガスとを用いた炭化水素合成法により製造された油を含む。例えば適切な基油は、重質留分を含む場合でもその量がわずかであり、例えば100℃で粘度が20cSt以上の潤滑油留分をほとんど含むことのない油である。
【0043】
基油は、天然潤滑油、合成潤滑油、もしくはそれらの混合物から誘導することができる。適切な基油は、合成ろうおよび粗ろうの異性化により得られる基材油、並びに粗原料の芳香族および極性成分を(溶剤抽出というよりはむしろ)水素化分解することにより生成する水素化分解基材油を含む。適切な基油は、API公報1509、第14版、補遺I、1998年12月に規定されたAPI分類I、II、III、IV、およびVに属するものすべてを含む。IV種基油はポリアルファオレフィン(PAO)類である。V種基油には、I、II、III、もしくはIV種に含まれなかったその他すべての基油が含まれる。
【0044】
有用な天然油は、鉱物潤滑油、例えば液体石油、パラフィン系、ナフテン系、もしくは混合パラフィン−ナフテン系の溶剤処理もしくは酸処理鉱物潤滑油、石炭もしくは頁岩から誘導された油、動物油および植物油(例、ナタネ油、ヒマシ油、およびラード油)その他を含む。
【0045】
有用な合成潤滑油は、これらに限定されるものではないが、炭化水素油およびハロゲン置換炭化水素油、例えば重合化および共重合化オレフィン類、具体的にはポリブチレン類、ポリプロピレン類、プロピレン・イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン類、ポリ(1−ヘキセン)類、ポリ(1−オクテン)類、ポリ(1−デセン)類その他およびそれらの混合物;アルキルベンゼン類、例えばドデシルベンゼン類、テトラデシルベンゼン類、ジノニルベンゼン類、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン類その他;ポリフェニル類、例えばビフェニル類、ターフェニル類、アルキル化ポリフェニル類その他;アルキル化ジフェニルエーテル類およびアルキル化ジフェニルスルフィド類、並びにそれらの誘導体、類似物、および同族体その他を含む。
【0046】
他の有用な合成潤滑油は、これらに限定されるものではないが、炭素原子が5未満のオレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン類、イソブテン、ペンテン、およびそれらの混合物を重合することにより製造された油を含む。そのような重合油の製造方法は当業者によく知られている。
【0047】
別の有用な合成炭化水素油は、適正な粘度を有するアルファオレフィン類の液状重合体を含む。特に有用な合成炭化水素油は、C乃至C12アルファオレフィンの水素化液状オリゴマー類、例えば1−デセン三量体である。
【0048】
有用な合成潤滑油の別の類は、これらに限定されるものではないが、アルキレンオキシド重合体、すなわち単独重合体、共重合体、および末端ヒドロキシル基が、例えばエステル化もしくはエーテル化により変性したそれらの誘導体を含む。これらの油の例は、エチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドの重合により製造された油、これらポリオキシアルキレン重合体のアルキルおよびフェニルエーテル類(例、平均分子量1000のメチルポリプロピレングリコールエーテル、分子量500乃至1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量1000乃至1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)、もしくはそれらのモノおよびポリカルボン酸エステル類、例えば酢酸エステル類、C乃至Cの混合脂肪酸エステル類、もしくはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルである。
【0049】
有用な合成潤滑油のさらに別の類は、これらに限定されるものではないが、ジカルボン酸類(例、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸類、アルケニルコハク酸類、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸類、アルケニルマロン酸類等)と各種アルコール類(例、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等)とのエステル類を含む。これらエステル類の具体例は、ジブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−n−ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、セバシン酸1モルをテトラエチレングリコール2モルおよび2−エチルヘキサン酸2モルと反応させて生成した複合エステルその他を含む。
【0050】
合成油として有用なエステル類は、これらに限定されるものではないが、炭素原子が約5乃至約12のカルボン酸類と、アルコール類(例、メタノール、エタノール等、ポリオールおよびポリオールエーテル類、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトールその他)とから製造されたものも含む。
【0051】
ケイ素系の油、例えばポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、もしくはポリアリールオキシ−シロキサン油およびシリケート油は、合成潤滑油の別の有用な分類を構成する。これらの具体例は、これらに限定されるものではないが、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ(4−メチルヘキシル)シリケート、テトラ(p−tert−ブチルフェニル)シリケート、ヘキシル(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン類、およびポリ(メチルフェニル)シロキサン類その他を含む。さらに別の有用な合成潤滑油は、限定されるものではないが、リン含有酸の液状エステル類(例、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デカンホスフィン酸のジエチルエステル等)、および高分子量テトラヒドロフラン類その他を含む。
【0052】
潤滑油は、以上に開示した種類のうち、天然、合成、もしくは任意の二種以上の混合物の未精製、精製、および再精製の油から誘導することができる。未精製油は、天然もしくは合成原料(例、石炭、頁岩、もしくはタール・サンド・ビチューメン)から直接に、それ以上の精製や処理を施すことなく得られた油である。未精製油の例は、限定されるものではないが、レトルト操作により直接得られた頁岩油、蒸留により直接得られた石油、またはエステル化処理により直接得られたエステル油を含み、これらの各々はその後それ以上の処理なしで使用される。精製油は、一つ以上の性状を改善するために一以上の精製工程でさらに処理されたことを除いては、未精製油と同じである。これらの精製技術は、当業者に知られているが、例えば溶剤抽出、二次蒸留、酸もしくは塩基抽出、ろ過、パーコレート、水素処理、脱ろう等が挙げられる。再精製油は、精製油を得るのに用いたのと同様の方法で使用済みの油を処理することにより得られる。そのような再精製油は、再生もしくは再処理油としても知られていて、消費された添加剤や油分解生成物の除去を目的とする技術によりしばしばさらに処理される。
【0053】
ろうの水素異性化から誘導された潤滑油基材油も、単独で、あるいは前記天然および/または合成基材油と組み合わせて使用することができる。そのようなろう異性化油は、天然もしくは合成ろうまたはそれらの混合物を水素異性化触媒により水素異性化することにより生成する。
【0054】
天然ろうは一般に、鉱物油を溶剤脱ろうすることにより回収された粗ろうであり、合成ろうは一般に、フィッシャー・トロプシュ法により生成したろうである。
【0055】
下記の添加剤成分は、本発明に好ましく用いることができるいくつかの成分の例である。これらの添加剤の例は、本発明を説明するために示されるものであって、本発明を制限する意図はない:
【0056】
(A)金属清浄剤:
硫化もしくは未硫化のアルキルもしくはアルケニルフェネート類、アルキルもしくはアルケニル芳香族スルホネート類、カルシウムスルホネート、硫化もしくは未硫化のアルキルもしくはアルケニルヒドロキシベンゾエートの金属塩類、硫化もしくは未硫化の多価ヒドロキシアルキルもしくはアルケニル芳香族化合物の金属塩類、アルキルもしくはアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート類、硫化もしくは未硫化のアルキルもしくはアルケニルナフテネート類、アルカン酸の金属塩類、アルキルもしくはアルケニル多価酸の金属塩類、並びにそれらの化学的および物理的混合物。
【0057】
(B)無灰性分散剤:
アルケニルコハク酸イミド、他の有機化合物により変性されたアルケニルコハク酸イミド、およびホウ酸により変性されたアルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル。
【0058】
(C)酸化防止剤:
(1)フェノール型酸化防止剤:
4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド。
【0059】
(2)ジフェニルアミン型酸化防止剤:
アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびアルキル化α−ナフチルアミン。
【0060】
(3)その他:
金属ジチオカルバメート(例、ジチオカルバミン酸亜鉛)およびメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)。
【0061】
(D)防錆剤:
(1)ノニオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
【0062】
(2)他の化合物:
ステアリン酸および他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0063】
(E)抗乳化剤:
アルキルフェノールおよびエチレンオキシドの付加生成物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0064】
(F)極圧剤(EP剤):
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP、一級アルキル型および二級アルキル型)、硫化油、ジフェニルスルフィド、トリクロロステアリン酸メチル、塩素化ナフタレン、ヨウ化ベンジル、フルオロアルキルポリシロキサン、およびナフテン酸鉛。
【0065】
(G)摩擦調整剤:
脂肪族アルコール、脂肪酸、アミン、ホウ素化エステル、および他のエステル。
【0066】
(H)多機能添加剤:
硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデン有機ホスホロジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン−モリブデン錯体化合物、および硫黄含有モリブデン錯体化合物。
【0067】
(I)粘度指数向上剤:
ポリメタクリレート型重合体、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水和スチレン−イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散剤型粘度指数向上剤。
【0068】
(J)流動点降下剤:
ポリメチルメタクリレート。
【0069】
(K)消泡剤:
アルキルメタクリレート重合体およびジメチルシリコーン重合体。
【0070】
これまでに述べた添加剤をそれぞれ使用する場合は、潤滑剤に望ましい性質を与えるため機能的に有効な量で使用する。すなわち、例えば、添加剤が酸化防止剤である場合、この酸化防止剤の機能的な有効量は、必要とする酸化防止機能を潤滑剤に付与するために充分な量である。一般に、これらの添加剤それぞれを使用する際の濃度は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.001乃至約20質量%、そしてある態様では約0.01乃至約10質量%の範囲である。
【0071】
本発明は潤滑油添加剤濃縮物にも関し、その中で本発明の添加剤は、実質的に不活性な通常は液体の有機希釈剤(その例としては、鉱物油、ナフサ、ベンゼン、トルエン、もしくはキシレン)に加えて、添加剤濃縮物を生成する。通常は100℃において約4乃至約8.5cStの粘度、好ましくは100℃において約4乃至約6cStの粘度を有する中性油を希釈剤として用いるが、添加剤および最終潤滑油と相溶性がある合成油、並びに他の有機液体も用いることができる。一般に、潤滑油添加剤濃縮物は、90乃至10質量%の有機希釈剤と約10乃至90質量%の一種以上の本発明の添加剤とを含む。
【0072】
本発明は以下の実施例においてさらに説明する。これらは、特に有利な方法の態様を示す。これらの実施例は、本発明を説明するために提示されるが、本発明の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0073】
[実施例1]
(デシル(1H−イミダゾール−4−イルメチル)アミンの製造)
【0074】
【化7】

【0075】
500mLのフラスコに、窒素雰囲気下、無水メタノール(150mL)、イミダゾール−4−カルボキシアルデヒド(45.82g、476ミリモル)、およびデシルアミン(74.99g、476ミリモル)を攪拌しながら加えた。数滴の濃塩酸を該混合物に加え、混合物を窒素下で一晩還流した。混合物を酢酸エチル中にて抽出したのち、水および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥したのち、蒸発により乾燥させた。粗製物を、無水THFと無水MeOHとの4:1混合物中に溶解し、水素化反応フラスコに移した。この溶液に5質量%Pd/C(5質量%)を加え、得られた混合物を30psiのHで一晩、水素化した。水素化が完了後、溶液をセライトにて吸引しながら濾過して、Pd/Cを除き、濾液を蒸発させて乾燥した。
H NMR(CDCl)δ:7.5−7.6(1H)、6.8−6.9(1H)、3.6−3.8(2H)、2.6(t,2H)、1.5(t,2H)、1.2−1.4(m,14H)、0.8−0.9(t,3H)。
【0076】
[実施例2]
(ドデシル(1H−イミダゾール−4−イルメチル)アミンの製造)
【0077】
【化8】

【0078】
上記化合物を、アミンとしてドデシルアミンを使用した以外は、実施例1に記載の手順で製造した。
H NMR(CDCl)δ:7.5−7.6(1H)、6.8−6.9(1H)、3.4−3.6(2H)、2.65(t,2H)、1.4−1.6(t,2H)、1.2−1.4(m,18H)、0.8−0.9(t,3H)。
【0079】
[実施例3]
(ヘキサデシル(1H−イミダゾール−4−イルメチル)アミンの製造)
【0080】
【化9】

【0081】
上記化合物を、アミンとしてヘキサデシルアミンを使用した以外は、実施例1に記載の手順で製造した。
H NMR(CDCl)δ:7.5−7.6(1H)、6.8−6.9(1H)、3.4−3.6(2H)、2.65(t,2H)、1.4−1.6(t,2H)、1.2−1.4(m,26H)、0.8−0.9(t,3H)。
【0082】
(摩擦性の評価)
[実施例4]
本発明のアミノメチル置換イミダゾールの摩擦特性を評価するため、下記の基準処方組成物を使用した。基準処方組成物を、以下に示す:
【0083】
(a)4質量%のコハク酸イミド分散剤;
(b)3.5mM/kgの低過塩基度カルシウムスルホネート;
(c)45mM/kgの高過塩基度カルシウムスルホネート;
(d)5mM/kgの二級アルコールの混合物から誘導された二級ジチオリン酸亜鉛;
(e)2.0mM/kgの一級アルコールから誘導されたジチオリン酸亜鉛;
(f)1.2質量%のジアリールアミン酸化防止剤;
(g)0.3質量%の流動点降下剤;
(h)Siが10ppmの消泡剤;
(i)4.8質量%のエチレン−プロピレンVII;および
(j)残部、II種基油。
【0084】
各例で用いられた潤滑油組成物は、5W−20油(SAE粘度グレード)である。
【0085】
[比較例A]
潤滑油組成物は、実施例4の基準となる処方に対して0.5質量%のモリブデン錯体をトップ処理することにより製造した。上記モリブデン錯体は、摩擦調整剤としての機能はない。
【0086】
[比較例B]
潤滑油組成物は、実施例4の基準となる処方に対して0.5質量%のモリブデン錯体および0.5質量%のグリセロールモノオレエートをトップ処理することにより製造した。
【0087】
[実施例5]
潤滑油組成物は、実施例4の基準となる処方に対して0.5質量%のモリブデン錯体および0.5質量%の実施例1のアミノメチル置換イミダゾールをトップ処理することにより製造した。
【0088】
[実施例6]
潤滑油組成物は、実施例4の基準となる処方に対して0.5質量%のモリブデン錯体および0.5質量%の実施例2のアミノメチル置換イミダゾールをトップ処理することにより製造した。
【0089】
[実施例7]
潤滑油組成物は、実施例4の基準となる処方に対して0.5質量%のモリブデン錯体および0.5質量%の実施例3のアミノメチル置換イミダゾールをトップ処理することにより製造した。
【0090】
上記の組成物を、ミニ−トラクションマシン(MTM)ベンチテストにより、それらの摩擦特性について試験した。MTMはPCSインスツルメンツ社が製造し、回転ディスク(32100スチール)に対して負荷をかけたボール(0.75インチの8620スチールのボール)で作動させた。条件としては、おおよそ10〜30ニュートンの負荷、おおよそ10〜2000mm/sの速度、およびおおよそ125〜150℃の温度を採用した。このベンチテストにおいて、摩擦性能は、基準となる処方で生成する第一ストライベック曲線とモリブデン錯体および摩擦調整剤をトップ処理した基準処方組成物で生成する第二ストライベック曲線との間の全領域の比較によって測定した。全領域の値が相対的に低いことは、油の摩擦特性が相対的に良好であることを意味する。この評価結果を以下の表1に示す。
【0091】
表1
────────────────────────────
摩擦緩和剤 ストライベック領域
────────────────────────────
比較例A − 140
比較例B グリセロールモノオレエート 80
実施例5 実施例1のイミダゾール 60
実施例6 実施例2のイミダゾール 73
実施例7 実施例3のイミダゾール 72
────────────────────────────
【0092】
ベンチテストの結果は、本発明のアミノメチル置換イミダゾールが、潤滑油組成物において標準的な有機摩擦緩和剤として使用されているグリセロールモノオレエートに匹敵する摩擦特性を示すことを明らかにしている。
【0093】
(燃費上の利益の評価)
様々な有機摩擦緩和剤(摩擦調整剤)を含む潤滑油組成物の燃費性能を評価した。2.5リットルのV6エンジンを1400回転/分の回転速度および約107乃至約120℃の温度で作動するように調整した。最初に、エンジンを清浄剤を多く含む洗浄油で三回をフラッシュした。フラッシュでは、、それぞれ20分間かけた。次いで、エンジンを2時間作動させ、さらに0.5質量%の有機摩擦緩和剤をトップ処理したエンジン潤滑油組成物を含む30gの混合物を、特別に適合させた油充填用キャップを通して、エンジンに充填した。エンジンは、2時間かけて安定させた。
【0094】
トルク(パワー)は、摩擦緩和剤トップ処理の添加前の1時間におけるトルクを平均化し、さらに摩擦緩和剤トップ処理の添加直後の2時間におけるトルクを平均化することにより評価した。結果は、摩擦緩和剤トップ処理の添加前1時間から摩擦緩和剤の添加後2時間に至るまでのトルクの変化の百分率としてまとめた。その結果を、2回の操作の平均値として記載する。トルクの増加が高い割合であることは、燃費上の利益が大きいことに対応する。この評価の結果を、下記の表2に示す。
【0095】
表2
────────────────────
摩擦緩和剤トップ処理 %トルク増加
────────────────────
実施例1のイミダゾール 1.48
グリセロールモノオレエート 1.18
オレイルアミン 0.94
────────────────────
【0096】
上記結果が示すように、本発明のアミノメチル置換イミダゾールを含む潤滑油組成物は、標準的な有機摩擦緩和剤であるグリセロールモノオレエートもしくはオレイルアミンを含む潤滑油組成物と比較して、燃費について優れた改善効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

式中、R、R、R、Rは独立に、水素原子、C乃至Cのアルキル基、および式−CHNHRの部分構造からなる群より選択されるが、R、R、R、Rの少なくとも一つは式−CHNHRの部分構造であって、RはC乃至C28の脂肪族基である。
【請求項2】
、R、Rが水素原子であり、Rが式−CHNHRの部分構造であって、RがC10乃至C28の脂肪族基である請求項1の化合物。
【請求項3】
がC10乃至C18の脂肪族基である請求項2の化合物。
【請求項4】
式IIを有する請求項1の化合物:
【化2】

式中、RおよびRは独立に、水素原子、C乃至Cのアルキル基、および式−CHNHRの部分構造からなる群より選択されるが、RおよびRの少なくとも一つは式−CHNHRの部分構造であって、RはC乃至C28の脂肪族基である。
【請求項5】
が水素原子である請求項4の化合物。
【請求項6】
が水素原子である請求項4の化合物。
【請求項7】
下記の化合物を反応させることを含むアミノメチル置換イミダゾール化合物を製造するための方法:
(a)式IIIを有するイミダゾール化合物
【化3】

式中、R11、R12、R13、R14は独立に、水素原子およびC乃至Cのアルキル基からなる群より選択されるが、R11、R12、R13、R14の少なくとも一つは水素原子であり;
(b)ホルムアルデヒドもしくはホルムアルデヒドを生成させる試薬;および
(c)式HN−R15を有するアミン、
式中、R15はC乃至C28の脂肪族基である。
【請求項8】
15がC10乃至C18の脂肪族基である請求項7の方法。
【請求項9】
11、R12、R13、R14が水素原子である請求項7の方法。
【請求項10】
請求項7の方法により生成した生成物。
【請求項11】
主要量の潤滑粘度の油と0.01乃至5質量%の下記の式を有する一種以上の化合物とを含む潤滑油組成物:
【化4】

式中、R、R、R、Rは独立に、水素原子、C乃至Cのアルキル基、および式−CHNHRの部分構造からなる群より選択されるが、R、R、R、Rの少なくとも一つは式−CHNHRの部分構造であって、RはC乃至C28の脂肪族基である。
【請求項12】
、R、Rが水素原子であり、Rが式−CHNHRの部分構造であって、RがC10乃至C28の脂肪族基である請求項11の潤滑油組成物。
【請求項13】
がC10乃至C18の脂肪族基である請求項11の潤滑油組成物。
【請求項14】
90乃至10質量%の液状有機希釈剤と10乃至90質量%の下記の式を有する一種以上の化合物とを含む潤滑油添加剤濃縮物:
【化5】

式中、R、R、R、Rは独立に、水素原子、C乃至Cのアルキル基、および式−CHNHRの部分構造からなる群より選択されるが、R、R、R、Rの少なくとも一つは式−CHNHRの部分構造であって、RはC乃至C28の脂肪族基である。
【請求項15】
、R、Rが水素原子であり、Rが式−CHNHRの部分構造であって、RがC10乃至C28の脂肪族基である請求項14の潤滑油添加剤濃縮物。

【公表番号】特表2013−512955(P2013−512955A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543168(P2012−543168)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/058883
【国際公開番号】WO2011/071767
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】