説明

潤滑油組成物

【課題】潤滑油組成物における摩擦調整剤と過塩基性化金属ヒドロカルビル−置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤との間の適合性問題の克服。
【解決手段】潤滑粘度の油と、アミンベース又はエステルベース摩擦調整剤の存在下で製造した過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤とを含んでなる潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ガソリン及びディーゼルエンジンの燃料経済の見地からの動きがあり、結果として潤滑油組成物中で使用する有機摩擦調整剤のレベルが増加し;残念ながら、摩擦調整剤と過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤、例えばサリチレート清浄剤との間の適合性の問題があり、現在はこの問題をトップ処理(top-treat)として摩擦調整剤を加えた二部パッケージの使用で解決している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明は、潤滑油組成物における摩擦調整剤と過塩基性化金属ヒドロカルビル−置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤との間の適合性問題を克服することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明により、潤滑粘度の油と、少なくとも1個の酸素原子を含む少なくとも1個のアミン基;又は少なくとも1個のエステル基を有する摩擦調整剤を含む過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤とを含んでなる潤滑油組成物が提供される。本明細書では以後、「少なくとも1個の酸素原子を含む少なくとも1個のアミン基;又は少なくとも1個のエステル基を有する摩擦調整剤」を「アミンベース又はエステルベース摩擦調整剤」と称する。過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤は、アミンベース又はエステルベース摩擦調整剤の存在下で製造されるので、該摩擦調整剤が清浄剤中に組み込まれる。
摩擦調整剤は、通常、光の表面接触を最小限にする目的で潤滑剤に添加される細長い分子である。摩擦調整剤は極性末端(ヘッド)と油溶性末端(テイル)を有する。テイルは、通常、少なくとも10個の炭素原子、好ましくは10〜40個の炭素原子、さらに好ましくは12〜25個の炭素原子、なおさらに好ましくは15〜22個の炭素原子を含む直線炭化水素鎖である。テイルが長すぎるか又は短すぎると、分子は摩擦調整剤として機能しないだろう。使用中、ヘッドが金属表面に付着し、テイルが隣り合って積み重なる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明では、過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤をアミンベース又はエステルベース摩擦調整剤の存在下で合成して、ハイブリッドシステムを生成する。アミンベース又はエステルベース摩擦調整剤は、好ましくは過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤の製造の開始時に、初期装填の一部として反応成分に添加される。試験結果は、本発明の過塩基性化金属ヒドロカルビル−置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤が清浄剤としても摩擦調整剤としても機能し、かつ驚くべきことに過塩基性化金属ヒドロカルビル−置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤とアミンベース又はエステルベース摩擦調整剤との対応混合物より安定であることを示す。従って、清浄剤としても摩擦調整剤としても本発明の過塩基性化金属ヒドロカルビル−置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤を潤滑油組成物中で使用しうる。これは、別のさらなる摩擦調整剤が必要ないことを意味する。
アミンベース摩擦調整剤は、好ましくはアルコキシル化ヒドロカルビル-置換モノアミン及びジアミン、並びにヒドロカルビルエーテルアミン;好ましくはアルコキシル化獣脂アミン及びアルコキシル化獣脂エーテルアミンから選択され、1モルの窒素当たり約2モルのアルキレンオキシドを含有するアルコキシル化アミンが最も好ましい。エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが特に好ましい。このような摩擦調整剤は、直鎖、分岐鎖若しくは芳香族ヒドロカルビル基又はその混合物から選択されうるヒドロカルビル基を含有し、かつ飽和若しくは不飽和又はその混合物でよい。線形ヒドロカルビル基を有するものがさらに好ましい。ヒドロカルビル基は、主に炭素と水素で構成されるが、イオウ又は酸素などの1個以上のヘテロ原子を含有しうる。好ましいヒドロカルビル基は、12〜25個の炭素原子、好ましくは15〜22個の炭素原子の範囲である。好ましい構造を以下の2つの図(限定するものではないが)で示す。
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、RはC6-C28アルキル基、好ましくはC15-C22アルキル基であり、X及びYは独立にO又はS又はCH2であり、x及びyは独立に1〜6であり、pは2〜4(好ましくは2)であり、かつm及びnは独立に0〜5である。)アルキル基は、摩擦調整剤特性を与える役に合って十分に線形である。
エステルベース摩擦調整剤は好ましくは、2〜30個の炭素原子を有し、かつ2〜6個のヒドロキシル基を含有し、少なくとも1個のフリーなヒドロキシル基が残存している部分的にエステル化した脂肪族多価アルコールから選択される。少なくとも1個のヒドロキシル基が末端炭素原子上にあることが好ましいが、3又は4個の炭素原子ほど末端炭素原子から隔てられていてもよい。部分エステルアルコールは、例えば、アルキレングリコール(特にエチレン及びプロプレングリコール)、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、並びに種々の異性ペンチトール及びヘキシトール、例えばマンニトール、ソルビトール等の誘導体でよい。
該分子の多価アルコール部分には、好ましくは、該分子に約12、好ましくは12〜40個の炭素原子、さらに好ましくは15〜22個の炭素原子という最小の全炭素含量を与えるのに十分な数の炭素原子を含有する主として炭化水素部分が結合している。この炭化水素部分は、通常、エステル結合を通じてアルコール部分に結合し、該エステル結合は、一方の多価アルコールのヒドロキシル基と、他方の炭化水素部分の酸性基との間に形成されうる。エステル結合が転化することも考えられる。すなわち、一方の多価アルコールに結合した酸性基と、他方で炭化水素に結合したヒドロキシル基との間にエステル結合が形成される。
ヒドロキシル基と、エステルの多価アルコール部分のエステル結合とが、できる限り接近していることが望ましく、好ましくは少なくとも2個のヒドロキシル基が、3個を超えない直接結合原子によって相互に離れており、さらに好ましくは隣接炭素原子に結合している。いくつかの極性基が直接結合炭素原子に結合していると有利である。
エステルの炭化水素部分は、好ましくは少なくとも5個、さらに好ましくは約10〜40個の炭素原子、さらに好ましくは15〜22個の炭素原子を有し、分岐鎖若しくは直鎖脂肪族又は脂環式(例えばナフテン)基の形態であり、直鎖脂肪族基が好ましい。炭化水素部分の酸性基(それがある場合)は、好ましくはカルボン酸基である。酸は、例えば、カプリル酸、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、リノール酸、リノレン酸又はリシノール酸などでよい。
特に好ましい部分エステルはモノオレイン酸ソルビタン及びモノラウリン酸ソルビタン、特にモノオレイン酸グリセロール及びジオレイン酸グリセロール、並びにその混合物である。
【0008】
本発明により、少なくとも1個の酸素原子を含む少なくとも1個のアミン基;又は少なくとも1個のエステル基を有する摩擦調節剤を含む、過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤の、潤滑油組成物における清浄剤及び摩擦調整剤としての使用も提供される。
過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤は、好ましくは、少なくとも1種のアミンベース又はエステルベース摩擦調整剤を反応混合物の初期装填に加えることによって調製される。
本発明により、少なくとも1個の酸素原子を含む少なくとも1個のアミン基;又は少なくとも1個のエステル基を有する摩擦調節剤を含む、過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤の調製方法も提供され;本方法は以下の工程を含む:
−ヒドロカルビル-置換ヒドロキシ安息香酸、炭化水素溶媒、アルコール、少なくとも1個の酸素原子を含有する少なくとも1個のアミン基又は少なくとも1個のエステル基を有する少なくとも1種の摩擦調整剤、及び前記ヒドロキシ安息香酸との反応に必要な量を超える化学量論的に過剰なアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基(例えば金属ヒドロキシド、金属オキシド、金属アルコキシド等)の混合物を供給する工程;及び
−前記混合物を過塩基性化剤で過塩基性化する工程。
【0009】
本発明により、エンジンにおける摩擦を低減する方法をも提供される。本方法は、潤滑粘度の油と、少なくとも1個の酸素原子を含有する少なくとも1個のアミン基;又は少なくとも1個のエステル基を有する摩擦調整剤とを含む過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤とを含んでなる潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑にする工程を含む。
エンジンは、好ましくは自動車エンジン、特にガソリンエンジンである。
過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤は、好ましくは過塩基性化金属アルキルサリチレート清浄剤、さらに好ましくは過塩基性化カルシウムアルキルサリチレート清浄剤である。
清浄剤は、エンジンにおいて、ピストン沈着物、例えば高温ワニス及びラッカー沈着物の形成を減らす添加剤であり;一般的に酸-中和特性を有し、かつ懸濁液中で微粉固体を維持することができる。多くの清浄剤は金属「セッケン」;すなわち、時には界面活性剤と呼ばれる、酸性有機化合物の金属塩に基づく。
清浄剤は、通常、長い疎水性テイルを有する極性ヘッドを含み、このヘッドは、酸性有機化合物の金属塩を含んでなる。過剰な金属塩基、例えば酸化物又は水酸化物を、二酸化炭素などの酸性気体と反応させることによって、大量の金属塩基を含めて過塩基性化清浄剤を得ることができ、これが金属塩基(例えば炭酸塩)ミセルの外層として中和清浄剤を構成する。
【0010】
本発明の界面活性剤は、ヒドロカルビル-置換ヒドロキシ安息香酸である。ヒドロカルビルとしてアルキル又はアルケニルが挙げられる。過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエートは、典型的に下記式で示される構造を有する。
【0011】
【化2】

【0012】
式中、Rは線形又は分岐脂肪族基、好ましくはヒドロカルビル基、さらに好ましくはアルキル基(分岐鎖を含むが、さらに好ましくは直鎖アルキル基)である。ベンゼン環に1つより多くのR基が結合しうる。Mはアルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム又はカリウム)又はアルカリ土類金属(例えばカルシウム、マグネシウム、バリウム又はストロンチウム)である。カルシウム又はマグネシウムが好ましく;カルシウムが特に好ましい。COOM基は、ヒドロキシル基に対してオルト、メタ又はパラ位でよく;オルト位が好ましい。R基は、ヒドロキシル基に対してオルト、メタ又はパラ位でよい。
ヒドロキシ安息香酸は、典型的にフェノキシドのカルボキシル化によって、コルベ-シュミット法によって調製され、当該場合、通常、未カルボキシル化フェノールとの混合物(一般的に希釈剤中)で得られるだろう。ヒドロキシ安息香酸は、硫化されていなくても硫化されていてもよく、かつ化学的に改変され、及び/又はさらなる置換基を含んでよい。ヒドロカルビル-置換ヒドロキシ安息香酸の硫化方法は技術上周知である。
ヒドロカルビル-置換ヒドロキシ安息香酸中、ヒドロカルビル基は、好ましくはアルキル(分岐鎖を含むが、さらに好ましくは直鎖アルキル基)であり、アルキル基は、有利には、5〜100、好ましくは9〜30、特に14〜24個の炭素原子を含有する。
【0013】
用語「過塩基性化」を用いて、一般的に、金属部分の当量数の酸性部分の当量数に対する比が1より大きい金属清浄剤を表す。用語「低塩基性化」を用いて、金属部分の酸性部分に対する当量比が1より大きく、かつ約2までの金属清浄剤を表す。用語「過塩基性化」を用いて、金属部分の酸性部分に対する当量比が1より大きい金属清浄剤を表す。
「界面活性剤の過塩基性化カルシウム塩」は、油-不溶性金属塩の金属カチオンが基本的にカルシウムカチオンである過塩基性化清浄剤を意味する。油-不溶性金属塩中に小量の他カチオンが存在してよいが、油-不溶性金属塩中の典型的に少なくとも80、さらに典型的に少なくとも90、例えば少なくとも95モル%のカチオンがカルシウムイオンである。カルシウム以外のカチオンは、例えば、過塩基性化清浄剤の製造において、カチオンがカルシウム以外の金属である界面活性剤塩を使用することに由来しうる。好ましくは、界面活性剤の金属塩もカルシウムである。
炭酸塩化した過塩基性化金属清浄剤は、典型的に非晶質のナノ粒子を含む。さらに、結晶性カルサイト及びバテライト形の炭酸塩を含んでなるナノ粒子物質の開示がある。
清浄剤の塩基度は、好ましくは全塩基数(TBN)として表される。全塩基数は、過塩基性化物質のすべての塩基度を中和するのに必要な酸の量である。ASTM規格D2896又は同等の手順を用いてTBNを測定できる。清浄剤は、低いTBN(すなわち50未満のTBN)、中程度のTBN(すなわち50〜150のTBN)又は高いTBN(すなわち150より高いTBN、例えば150〜500)を有しうる。本発明の好ましい清浄剤は、150より高いTBNを有する。
【0014】
当該分野で利用されるいずれの技術によっても過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエートを調製できる。一般的方法は以下の通りである。
1. 揮発性炭化水素、アルコール及び水から成る溶媒混合物中、ヒドロカルビル-置換ヒドロキシ安息香酸をモル過剰の金属塩基で中和して、わずかに過塩基性化した金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート錯体を生成;
2. カルボニル化してコロイド状に分散した金属炭酸塩を生成後、後反応段階;
3. コロイド状に分散しない残存固体の除去;及び
4. プロセス溶媒を除去するためのストリッピング。
この発明では、摩擦調整剤の装填は上記プロセスのどの時点でも加えうるが、好ましくは初期装填で加える。
バッチ又は連続のどちらの過塩基性化プロセスによっても過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエートを製造できる。
【0015】
金属塩基(例えば金属ヒドロキシド、金属オキシド、金属アルコキシド等)、好ましくは石灰(水酸化カルシウム)を1つ以上の段階で装填しうる。この装填は、後に続く二酸化炭素の装填と同様、同じでも異なってもよい。さらなる水酸化カルシウム装填を加える時、前段階の二酸化炭素処理が完了している必要はない。カルボニル化が進行するにつれ、溶媒混合物に溶解した水酸化物が、溶媒混合物に分散したコロイド状の炭酸塩粒子に変換される。
アルコールプロモーターの還流温度までの範囲の温度にわたって、1つ以上の段階でカルボニル化が果たされうる。添加温度は各添加段階中で同様でよく、異なってよく、或いは変化してよい。温度が上昇し、任意にその後に下がる相が、さらなるカルボニル化工程に先行しうる。
反応混合物の揮発性炭化水素溶媒は、好ましくは約150℃を超えない沸点を有する標準的に液体の芳香族炭化水素である。芳香族炭化水素は、特定の利益、例えば、ろ過速度の改善を与えることが分かった。適切な溶媒の例は、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンである。
アルカノールは、好ましくはメタノールであるが、エタノール等の他のアルコールを使用できる。アルカノールの炭化水素溶媒に対する比は重要である。アルカノールが多すぎると、結果の生成物が脂っこく、一方、炭化水素溶媒が多過ぎると、二酸化炭素及びいずれかの水酸化カルシウムを添加する間に反応混合物の粘度が過剰になる。
初期反応混合物の含水量は、所望生成物を得るために重要である。
反応混合物に油を添加してよく;その場合、好適な油として、炭化水素油、特に鉱物源の当該油が挙げられる。38℃で15〜30cStの粘度を有する油が非常に好適である。
二酸化炭素による最終処理後、典型的に、反応混合物を高温、例えば130℃より高い温度に加熱して揮発性物質(水並びにいずれの残存アルカノール及び炭化水素溶媒も)を除去する。合成が完了したとき、生の生成物は、懸濁した沈降物の存在の結果として曇っている。例えば、ろ過又は遠心分離によって曇りを澄ます。溶媒除去の前、中間点、又は後にこれらの尺度を使用しうる。
一般に、油溶液として生成物を使用する。反応混合物中に、揮発性物質の除去後に油溶液を保持するのに不十分な油が存在する場合、さらに油を添加すべきである。溶媒除去の前、中間点、又は後にこれを行いうる。
さらなる材料が、過塩基性化金属清浄剤の欠くことのできない部分を形成しうる。これには、例えば、長鎖脂肪族モノ-又はジ-カルボン酸が挙げられる。好適なカルボン酸として、ステアリン酸とオレイン酸、及びポリイソブチレン(PIB)コハク酸が挙げられる。
【0016】
清浄剤は、さらに界面活性剤群、例えばフェノール、スルホン酸、カルボン酸及びナフテン酸から選択される界面活性剤群を含んでもよく、過塩基性化プロセス中に2個以上の異なる界面活性剤群が取り込まれるハイブリッド材料の製造によって得られる。
ハイブリッド材料の例は、界面活性剤サリチル酸及びフェノールの過塩基性化カルシウム塩;界面活性剤サリチル酸及びスルホン酸の過塩基性化カルシウム塩;界面活性剤サリチル酸及びカルボン酸の過塩基性化カルシウム塩;及び界面活性剤サリチル酸、フェノール及びスルホン酸の過塩基性化カルシウム塩である。
好ましくは、ハイブリッド清浄剤のTBNは、少なくとも300、例えば少なくとも350、さらに好ましくは少なくとも400、最も好ましくは400〜600の範囲、例えば500まである。
少なくとも2種の過塩基性化金属化合物が存在する場合、いずれの適切な質量比によっても使用でき、好ましくはいずれか1つの過塩基性化金属化合物の、いずれかの他の金属の過塩基性化化合物に対する質量-質量比は、5:95〜95:5;例えば90:10〜10:90;さらに好ましくは20:80〜80:20;特に70:30〜30:70;有利には60:40〜40:60の範囲である。
ハイブリッド材料の特定例として、例えば、WO-A-97/46643;WO-A-97/46644;WO-A-97/46645;WO-A-97/46646;及びWO-A-97/46647に記載されている当該材料が挙げられる。
清浄剤は、例えば、カルシウムアルキルサリチレートとカルシウムアルキルフェネート(phenate)の硫化及び過塩基性化混合物でもよく:例はEP-A-750,659に記載されており、すなわち、
硫化及び超アルカリ性化したアルカリ土類アルキルサリチレート-アルキルフェネート型の潤滑油用の清浄剤-分散剤添加剤であって、
a) 前記アルキルサリチレート-アルキルフェネートのアルキル置換基が少なくとも35wt.%、高くて85wt.%の割合の線形アルキル(炭素原子数が12〜40、好ましくは18〜30個の炭素原子である)と、最大65wt.%の分岐アルキル(炭素原子数が9〜24、好ましくは12個の炭素原子である)であり;
b) 前記アルキルサリチレート-アルキルフェネート混合物中の該アルキルサリチレートの割合が少なくとも22モル%、好ましくは少なくとも25モル%であり、及び
c) 全体としてアルキルサリチレート-アルキルフェネートに対するアルカリ土類塩基のモル比が1.0〜3.5である
ことを特徴とするものでもよい。
【0017】
アミンベース又はエステルベース摩擦調整剤は、好ましくは以下:高級脂肪酸のグリセリルモノエステル、例えばモノオレイン酸グリセリル;長鎖ポリカルボン酸とジオールのエステル、例えば、二量体化不飽和脂肪酸のブタンジオールエステル;及びアルコキシル化アルキル-置換モノアミン、ジアミン及びアルキルエーテルアミン、例えば、エトキシル化獣脂アミン及びエトキシル化獣脂エーテルアミンから選択される。
潤滑油組成物は、少なくとも1つの摩擦調整剤を含んでもよい。摩擦調整剤は、上記摩擦調整剤から選択されうる。例えば、油溶性有機モリブデン化合物のような他の既知摩擦調整剤が潤滑油組成物中に存在してもよい。該有機モリブデン摩擦調整剤は、潤滑油組成物に酸化防止及び摩耗防止功績をも与える。該油溶性有機モリブデン化合物の例として、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、ジチオホスフィネート、キサンテート、チオキサンテート、スルフィド等、及びその混合物が挙げられる。モリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテート及びアルキルチオキサンテートが特に好ましい。
さらに、モリブデン化合物は酸性モリブデン化合物でよい。この化合物は、ASTM試験D-664又はD-2896滴定手順で測定した場合、塩基性窒素化合物と反応し、かつ典型的に六価である。モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、及び他のアルカリ金属のモリブデン酸塩並びに他のモリブデン酸塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン又は同様の酸性モリブデン化合物が挙げられる。
モリブデン化合物は下記式のものでよい。
Mo(ROCS2)4及び
Mo(RSCS2)4
式中、Rは、一般的に1〜30個の炭素原子、好ましくは2〜12個の炭素原子のアルキル、アリール、アラルキル及びアルコキシアルキルから成る群より選択される有機基であり、最も好ましくは2〜12の炭素原子のアルキルである。モリブデンのジアルキルジチオカルバメートが特に好ましい。
別群の有機モリブデン化合物は、三核モリブデン化合物、特に式Mo3SkLnQzの当該化合物及びその混合物である。ここで、Lは、該化合物を油中で可溶性又は分散性にするのに十分な炭素原子数の有機基を有する、独立に選択される配位子であり、nは1〜4であり、kは4〜7で変化し、Qは、中性電子供与化合物の群、例えば水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルから選択され、かつzは0〜5の範囲であり、非化学量論値を含む。すべての配位子の有機基中には、少なくとも21の全炭素原子、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35個の炭素原子が存在すべきである。
配位子は、下記群及びその混合物から独立に選択される。
【0018】
【化3】

【0019】
ここで、X、X1、X2、及びYは、酸素及びイオウの群から独立に選択され、R1、R2、及びRは、水素及び有機基から独立に選択され、同一でも異なってもよい。好ましくは、有機基はヒドロカルビル基、例えばアルキル(例えば、該配位子の残部に結合している炭素原子が一級又は二級であるアルキル)、アリール、置換アリール及びエーテル基である。さらに好ましくは、各配位子が同じヒドロカルビル基を有する。
用語「ヒドロカルビル」は、該配位子の残部に直接結合している炭素原子を有する置換基を意味し、主に、この発明の文脈内で役にはまったヒドロカルビルである。該置換基として以下のものが挙げられる。
1. 炭化水素置換基、すなわち脂肪族(例えばアルキル又はアルケニル)、脂環式(例えばシクロアルキル又はシクロアルケニル)置換基、芳香族-、脂肪族-及び脂環式-置換芳香核等、並びに環が該配位子の別の部分によって完成している環式置換基(すなわち、いずれの2つの指示置換基も一緒に脂環式基を形成しうる)。
2. 置換されている炭化水素置換基、すなわち、この発明の文脈において、該置換基の主なヒドロカルビル特性を変えない非炭化水素基を含有する当該置換基。当業者は、適切な基を知っている(例えば、ハロ、特にクロロ及びフルオロ、アミノ、アルコキシル、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホキシ等)。
3. ヘテロ置換基、すなわち、主にこの発明の文脈内で役にはまった炭化水素でありながら、その他の点で炭素原子で構成された鎖又は環中に炭素以外の原子が存在する置換基。
【0020】
重要なことに、配位子の有機基は、該化合物を油中で可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する。例えば、各基中の炭素原子数は、一般的に約1〜約100、好ましくは約1〜約30、さらに好ましくは約4〜約20の範囲である。好ましい配位子として、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテート、及びジアルキルジチオカルバメートが挙げられ、ジアルキルジチオカルバメートの配位子がさらに好ましい。2つ以上の上記官能性を含有する有機配位子も配位子として役立ち、1つ以上のコアに結合しうる。当業者には、該化合物の形成は、コアの電荷の釣り合いを取るのに適した電荷を有する配位子の選択を必要とすることが分かるだろう。
式Mo3SkLnQzを有する化合物は、アニオン性配位子によって囲まれたカチオン性コアを有し、以下のような構造で表され、かつ+4という正味電荷を有する。
【0021】
【化4】

【0022】
結果として、このコアを可溶化するため、すべての配位子中の全電荷は-4でなければならない。4つのモノアニオン性配位子が好ましい。如何なる理論によっても拘泥されたくないが、1つ以上の配位子によって、2つ以上の三核コアが結合又は相互接続され、かつ該配位子は多座配位子でよいと考えられる。これは、単一コアに対して複数の接続を有する多座配位子の場合を包含する。コア中のイオウを酸素及び/又はセレンと交換できると考えられる。
適切な液体/溶媒中、モリブデン源、例えば(NH4)2Mo3S13・n(H2O)(式中、nは0〜2で変化し、かつ非化学量論値を含む)を適切な配位子源、例えばテトラアルキルチウラムジスルフィドと反応させることによって、油溶性又は油分散性の三核モリブデン化合物を調製することができる。他の油溶性又は油分散性の三核モリブデン化合物は、適切な溶媒中、(NH4)2Mo3S13・n(H2O)等のモリブデン源と、テトラアルキルチウラムジスルフィド、ジアルキルジチオカルバメート、又はジアルキルジチオホスフェート等の配位子源と、シアニドイオン、亜硫酸イオン、又は置換ホスフィン等のイオウ抽出剤との反応中に形成されうる。或いは、適切な液体/溶媒中、三核モリブデン-イオウハライド塩、例えば[M’]2[Mo3S7A6](式中、M’は対イオンであり、AはCl、Br、又はI等のハロゲンである)を、ジアルキルジチオカルバメート又はジアルキルジチオホスフェート等の配位子源と反応させて油溶性又は油分散性の三核モリブデン化合物を形成することができる。適切な液体/溶媒は、例えば、水性又は有機でよい。
【0023】
化合物の油溶解性又は油分散性は、該配位子の有機基中の炭素原子数によって影響を受けうる。すべての配位子の有機基中に少なくとも21個の全炭素原子が存在すべきである。好ましくは、選択される配位子源は、その有機基中に、該化合物を潤滑組成物中で可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する。
本明細書で使用する用語「油溶性」又は「油分散性」は、化合物又は添加剤が、すべての比率の油に可溶性、溶解性、混和性であり、又は懸濁できることを必ずしも示さない。しかし、この用語は、化合物又は添加剤が、例えば、該油を利用する環境でその意図した効果を発揮するのに十分な程度まで油に可溶性又は安定して分散しうることを意味する。さらに、所望により、他の添加剤をさらに組み込むと、より高レベルの特定添加剤の組み込みを可能にすることもある。
モリブデン化合物は、好ましくは有機モリブデン化合物である。さらに、モリブデン化合物は、好ましくはモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィネート、モリブデンキサンテート、モリブデンチオキサンテート、モリブデンスルフィド及びその混合物から成る群より選択される。最も好ましくは、モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメートとして存在する。モリブデン化合物は、三核モリブデン化合物でもよい。
【0024】
潤滑油組成物は、少なくとも1種の摩耗防止剤又は酸化防止剤を含んでよい。ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、しばしば摩耗防止剤又は酸化防止剤として使用される。金属は、アルカリ若しくはアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル若しくは銅でよい。潤滑油中、潤滑油組成物の総質量に対して0.1〜10、好ましくは0.2〜2wt.%の量で亜鉛塩が最も一般的に使用される。亜鉛塩は、通常、1種以上のアルコール又はフェノールとP2S5の反応によって、まずジヒドロカルビルジチオホスホン酸(DDPA)を形成してから、形成されたDDPAを亜鉛化合物で中和することによって、既知の方法で調製される。例えば、一級及び二級アルコールの混合物を反応させることによって、ジチオホスホン酸が調製される。或いは、複数のジチオホスホン酸(1つのジチオホスホン酸上のヒドロカルビル基は全体的に二級の特性であり、他のジチオホスホン酸上のヒドロカルビル基は全体的に一級の特性である)を調製することができる。亜鉛塩を調製するため、いずれの塩基性又は中性亜鉛化合物をも使用できるが、酸化物、水酸化物及び炭酸塩が最も一般的に利用される。中和反応で過剰の塩基性亜鉛化合物を使用するため、市販の添加剤は、しばしば過剰の亜鉛を含有する。
好ましい亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、ジヒドロカルビルジチオホスホン酸の油溶性塩であり、下記式で表される。
【0025】
【化5】

【0026】
式中、R及びR’は、1〜18、好ましくは2〜12個の炭素原子を含有する同一又は異なるヒドロカルビル基でよく、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリール及び脂環式基などが挙げられる。R及びR’として特に好ましくは2〜8個の炭素原子のアルキル基である。従って、R及びR’基は、例えば、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルでよい。油溶性を得るため、ジチオホスホン酸中の炭素原子の総数(すなわちR及びR’)は通常約5以上である。従って、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを構成しうる。本発明は、約0.02〜約0.12wt.%、好ましくは約0.03〜約0.10wt.%のリンレベルを含有する潤滑油組成物と使用する場合に特に有用でありうる。さらに好ましくは、潤滑油組成物のリンレベルは約0.08wt.%未満、例えば約0.05〜約0.08wt.%である。
【0027】
潤滑油組成物は、少なくとも1種の酸化インヒビターを含んでよい。酸化インヒビター又は酸化防止剤は、鉱油の、使用中に劣化する傾向を低減する。酸化的劣化は、潤滑油中のスラッジ、金属表面上のワニス様沈着物、及び粘度増加によって明らかになる。
このような酸化インヒビターとして、ヒンダードフェノール、好ましくはC5-C12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、アルキルフェノールスルフィド、油溶性フェネート及び硫化フェネート、ホスホ硫化若しくは硫化炭化水素又はエステル、亜リン酸エステル、金属チオカルバメート、米国特許第4,867,890号に記載されているような油溶性銅化合物、及びモリブデン含有化合物が挙げられる。
窒素に直接結合している少なくとも2個の芳香族基を有する芳香族アミンは、酸化防止剤として頻繁に使用される別分類の化合物を構成する。それらは、好ましくは小量、すなわち0.4wt.%までの量でのみ使用され、さらに好ましくは全部で該組成物の別成分の不純物と帰するような量以外は避けられる。
1つのアミン窒素に直接結合している少なくとも2個の芳香族基を有する典型的な油溶性芳香族アミンは6〜16個の炭素原子を含む。該アミンは、2個より多くの芳香族基を含有しうる。全部で少なくとも3個の芳香族基を有する化合物(2個の芳香族基が共有結合によって、又は原子若しくは基(例えば、酸素若しくはイオウ原子、又は-CO-、-SO2-若しくはアルキレン基)によって連結され、かつ2個の芳香族基が1つのアミン窒素に直接結合している)も窒素に直接結合している少なくとも2個の芳香族基を有する芳香族アミンとみなされる。芳香環は典型的に、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、アシルアミノ、ヒドロキシ、及びニトロ基から選択される1つ以上の置換基で置換されている。このような1つのアミン窒素に直接結合している少なくとも2個の芳香族基を有するいずれの油溶性芳香族アミンの量も好ましくは0.4wt.%の活性成分を超えない。
【0028】
潤滑油組成物は、少なくとも1種の粘度調整剤を含んでよい。適切な粘度調整剤の代表例は、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルのインターポリマー、並びにスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、及びイソプレン/ブタジエンの部分的に水素化したコポリマー、並びにブタジエン及びイソプレンの部分的に水素化したホモポリマーである。
潤滑油組成物は、少なくとも1種の粘度指数向上剤を含んでよい。粘度指数向上剤分散剤は、粘度指数向上剤としても分散剤としても作用する。粘度指数向上剤分散剤の例として、アミンの反応生成物、例えば、ヒドロカルビル-置換モノ-若しくはジ-カルボン酸を有するポリアミン(該ヒドロカルビル置換基が該化合物に粘度指数向上特性を与えるのに十分な長さの鎖を含む)が挙げられる。一般に、粘度指数向上剤分散剤は、例えば、ビニルアルコールのC4-C24不飽和エステル又はC3-C10不飽和モノ-カルボン酸又はC4-C10ジ-カルボン酸と、4〜20個の炭素原子を有する不飽和窒素含有モノマーとのポリマー;C2-C20オレフィンと、アミン、ヒドロキシアミン又はアルコールで中和した不飽和C3-C10モノ-若しくはジカルボン酸とのポリマー;或いはエチレンとC3-C20オレフィンのポリマーであって、その上のC4-C20不飽和窒素含有モノマーをグラフト化するか又は該ポリマー骨格上に不飽和酸をグラフト化してから該グラフト化酸のカルボン酸基をアミン、ヒドロキシアミン若しくはアルコールと反応させることによって、さらに反応させたポリマーでよい。
【0029】
潤滑油組成物は、少なくとも1種の流動点降下剤を含んでよい。潤滑油流動改良剤(lube oil flow improver)(LOFI)としても知られる流動点降下剤は、流体が流れるか又は流体を注ぐことができる最低温度を下げる。このような添加剤は周知である。流体の低温流動性を改良する典型的な当該添加剤は、C8-C18ジアルキルフマレート/ビニルアセテートコポリマー、及びポリメタクリレートである。ポリシロキサンタイプの消泡剤、例えばシリコーンオイル又はポリジメチルシロキサンによって泡を制御することができる。
上記添加剤のいくつかは複数の効果を与えうるので、例えば、単一の添加剤が分散剤-酸化防止剤として作用しうる。このアプローチは周知であり、本明細書でさらに詳しく述べる必要はない。
潤滑油組成物には、該ブレンドの粘度の安定性を維持する添加剤を含める必要がありうる。そこで、極性基含有添加剤はプレブレンディング段階では適切に低い粘度を達成するが、長期間貯蔵すると、粘度が増加する組成物があることが観察された。この粘度増加を制御するのに有効な添加剤として、本明細書で以前に開示したような無灰分散剤の調製で使用されるモノ-若しくはジカルボン酸又は無水カルボン酸との反応によって官能化された長鎖炭化水素が挙げられる。
潤滑油組成物が1つ以上の上記添加剤を含む場合、各添加剤は、典型的にその所望機能を該添加剤が与えうる量で基油中にブレンドされる。クランクケース潤滑剤で使用する場合の該添加剤の典型的な有効量を下表に示す。列挙したすべての値は質量パーセント活性成分を示す。
【0030】

【0031】
好ましくは、完全に製剤化した潤滑油組成物(潤滑粘度の油プラスすべての添加剤)のノアク(Noack)揮発度は12以下、例えば10以下、好ましくは8以下である。
必須ではないが、添加剤を含んでなる1つ以上の添加剤濃縮物(時に添加剤パッケージと称する濃縮物)を調製することが望ましく、それにより、数種の添加剤を同時に油に添加して潤滑油組成物を形成することができる。
最終組成物は、5〜25質量%、好ましくは5〜18質量%、典型的に10〜15質量%の濃縮物を利用することができ、残りが潤滑粘度の油である。
潤滑油は、軽留分鉱油乃至重潤滑油、例えばガソリンエンジンオイル、鉱物潤滑油及び強力ディーゼルオイルの粘度範囲でよい。通常、油の粘度は、100℃で測定した場合、約2mm2/秒(センチストーク)〜約40mm2/秒、特に約4mm2/秒〜約20mm2/秒の範囲である。
天然油として、動物油及び植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油);液体石油並びにパラフィン、ナフタレン及び混合パラフィン-ナフタレンタイプの水素化精製、溶媒処理又は酸処理鉱油が挙げられる。石炭又はシェール由来の潤滑粘度の油も有用な基油として役に立つ。
合成潤滑油として、炭化水素油及びハロ-置換炭化水素油、例えば重合及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びにアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド及びその誘導体、類似体及び同族体が挙げられる。
【0032】
末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等で修飾されている、アルキレンオキシドのポリマーと共重合体及びその誘導体は、別分類の既知の合成潤滑油を構成する。これらは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合によって調製されるポリオキシアルキレンポリマー、並びにポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、1000の分子量を有するメチル-ポリイソ-プロピレングリコールエーテル又は1000〜1500の分子量を有するポリ-エチレングリコールのジフェニルエーテル);並びにそのモノ-及びポリカルボン酸エステル、例えば、酢酸エステル、混合C3-C8脂肪酸エステル及びテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルによって例示される。
別の好適な分類の合成潤滑油は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロプレングリコール)のエステルを含む。該エステルの具体例として、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸ダイマーの2-エチルヘキシルジエステル、並びに1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸を反応させることによって形成される複合エステルが挙げられる。
また、合成油として有用なエステルとして、C5-C12モノカルボン酸とポリオール及びポリオールエステルから形成される当該エステル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール及びトリペンタエリトリトールが挙げられる。
ポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-又はポリアリールオキシシロキサン油及びシリケート油のようなケイ素ベース油は、別の有用な分類の合成潤滑油を構成し;該油として、ケイ酸テトラエチル、ケイ酸テトライソプロピル、ケイ酸テトラ-(2-エチルヘキシル)、ケイ酸テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)、ケイ酸テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル)、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。他の合成潤滑油として、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デシルホスホン酸のジエチルエステル)及びポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。
【0033】
本発明の潤滑剤では、未精製、精製及び再精製油を使用できる。未精製油は、天然又は合成源からさらに精製処理せずに直接得られる当該油である。例えば、レトルト操作から直接得られるシェール油;蒸留から直接得られる石油;又はエステル化から直接得られるエステル油をさらに処理せずに使用すれば未精製油である。精製油は、1以上の精製工程でさらに処理して1つ以上の特性を改良すること以外、未精製油と同様である。蒸留、溶媒抽出、酸又は塩基抽出、ろ過及び浸出などの多くの精製技術は、技術上周知である。再精製油は、精製油を与えるために使用する当該プロセスと同様のプロセスで得られるが、既に使用された油で始める。このような再精製油は、再生油(reclaimed or reprocessed oil)としても知られ、多くの場合、使用済み添加剤及び油分解生成物を除去するための技術を用いるさらなる加工処理に供される。
潤滑粘度の油は、群I、群II、群III、群IV又は群Vの基本原料(base stock)又は上記基本原料の基油(base oil)ブレンドを含みうる。好ましくは、潤滑粘度の油は、群III、群IV若しくは群Vの基本原料、又はその混合物である。但し、油又は油ブレンドの揮発度が、NOACK試験(ASTM D5880)によって測定した場合、13.5%以下、好ましくは12%以下、さらに好ましくは10%以下、最も好ましくは8%以下であり;かつ少なくとも120、好ましくは少なくとも125、最も好ましくは約130〜140の粘度指数(VI)を条件とする。
【0034】
この発明の基本原料及び基油の定義は、米国石油協会(API)出版物“Engine Oil Licensing and Certification System”, Indsutry Services Department, Fourteenth Edition, December 1996, Addendum 1, December 1998で見つかる定義と同一である。前記出版物は基本原料を以下のように分類している:
a)群Iの基本原料は、90%未満の飽和炭化水素及び/又は0.03%超えのイオウを含み、かつ表E-1で特定される試験法を用いて80以上120未満の粘度指数を有する。
b)群IIの基本原料は、90%以下の飽和炭化水素及び0.03%以下のイオウを含み、かつ表E-1で特定される試験法を用いて80以上120未満の粘度指数を有する。
c)群IIIの基本原料は、90%以下の飽和炭化水素及び0.03%以下のイオウを含み、かつ表E-1で特定される試験法を用いて120以上の粘度指数を有する。
d)群IVの基本原料はポリアルファオレフィン(PAO)である。
e)群Vの基本原料は、群I、II、III、又はIVに含まれないすべての他の基本原料を包む。
【0035】
基本原料の分析法

【実施例】
【0036】
ここで、下記実施例を参照して本発明を説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
アルキルサリチル酸の合成方法、及びそれから誘導される過塩基性化清浄剤の形成は技術上周知である。例えば、該方法はUS 2007/0027043及びその中で引用されている参考文献に記載されている。これらの実施例で使用するアルキルサリチル酸は、C14-C18線形α-オレフィン、例えばShell Chemicalsによって商品名SHOPで市販されているものから調製された。それは約10%モルの未変換アルキルフェノールを含有し、かつ2.62meq./gの酸含量を有した。
下記方法を用いて過塩基性化金属サリチレート清浄剤を調製した。
【0037】
表1
装填(g)

【0038】
(方法)
・キシレンとアルキルサリチル酸(及び本発明に従う場合は摩擦調整剤)を一緒に600rpmで撹拌するフラスコ内で混合し、20分で40℃に加熱した。
・石灰をフラスコに加え、混合物を600rpm及び55℃で60分間撹拌した。
・メタノールと水をフラスコに加え、混合物を600rpm及び55℃で40分間撹拌した。
・二酸化炭素を0.52リットル/分の速度で55℃にて加えた。
・混合物を600rpm及び55℃で20分間撹拌した。
・混合物を室温で5分間放置した。
・混合物を2500rpmで30分間遠心分離した。
・遠心分離後、表面に生じたメタノール/水の曇った層を真空ポンプで除去した。
・基油を添加した。
・135℃で2時間回転式エバポレーターを用いてキシレン、並びにいずれの残存メタノール及び水も放散させて除去した。
以下の過塩基性化カルシウムサリチレート清浄剤を調製した。
【0039】
表2

【0040】
表1の過塩基性化カルシウムサリチレート清浄剤と168 TBNカルシウムサリチレートを下記ブレンド中にブレンドした。
【0041】
表3

【0042】
ブレンドを60℃で12週間貯蔵し、週間隔で該ブレンドを観察することによってその安定性について試験した。結果は、濁り及び/又は沈降物として不安定性が明らかになった週数を表す。結果は、0.15%を超える沈降物レベルで失敗とみなした。結果を以下に示す。
【0043】
表4

【0044】
表4は、ブレンドの成分としての摩擦調整剤の存在が不十分な安定性をもたらすことを示す(摩擦調整剤を含まない比較ブレンド1を摩擦調整剤を含む比較ブレンド3と比較)。しかし、本発明に従い、ブレンド2及び4におけるようにハイブリッドシステムによって摩擦調整剤が供給されると、ハイブリッドシステムは、驚くべきことに過塩基性化金属サリチレート清浄剤とアミンベース又はエステルベース摩擦調整剤の対応混合物より安定である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑粘度の油と、少なくとも1個の酸素原子を含む少なくとも1個のアミン基;又は少なくとも1個のエステル基を有する摩擦調整剤を含む過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤とを含んでなる潤滑油組成物。
【請求項2】
前記ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤がアルキルサリチレートである、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項3】
前記過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤中の金属がカルシウムである、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記摩擦調整剤が、10〜40個の炭素原子、好ましくは12〜25個の炭素原子、さらに好ましくは15〜22個の炭素原子を有する炭化水素直鎖を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記摩擦調整剤が、アルコキシル化ヒドロカルビル-置換モノアミン及びジアミン並びにヒドロカルビルエーテルアミン;好ましくはアルコキシル化獣脂アミン及びアルコキシル化獣脂エーテルアミン;さらに好ましくは1モルの窒素当たり約2モルのアルキレンオキシドを含有するアルコキシル化アミン;最も好ましくはエトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンから選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記摩擦調整剤が、2〜30個の炭素原子を有し、かつ2〜6個のヒドロキシル基を含み、少なくとも1個のフリーなヒドロキシル基が残存している部分エステル化脂肪族多価アルコールから選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記摩擦調整剤が、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、グルセロールモノオレエート及びグルセロールジオレエートの部分エステル、並びにその混合物から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤の調製方法であって、以下の工程を含む方法:
−ヒドロカルビル-置換ヒドロキシ安息香酸、炭化水素溶媒、アルコール、少なくとも1個の酸素原子を含む少なくとも1個のアミン基又は少なくとも1個のエステル基を有する少なくとも1種の摩擦調整剤、及び前記ヒドロキシ安息香酸との反応に必要な量を超える化学量論的に過剰なアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基の混合物を供給する工程;及び
−前記混合物を過塩基性化剤で過塩基性化する工程。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物の調製方法であって、以下の工程を含む方法:
−ヒドロカルビル-置換ヒドロキシ安息香酸、炭化水素溶媒、アルコール、少なくとも1個の酸素原子を含む少なくとも1個のアミン基又は少なくとも1個のエステル基を有する少なくとも1種の摩擦調整剤、及び前記ヒドロキシ安息香酸との反応に必要な量を超える化学量論的に過剰なアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基の混合物を供給する工程;
−前記混合物を過塩基性化剤で過塩基性化する工程;及び
−潤滑粘度の油を添加する工程。
【請求項10】
エンジンにおける摩擦を低減する方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑にする工程を含んでなる方法。
【請求項11】
少なくとも1個の酸素原子を含む少なくとも1個のアミン基;又は少なくとも1個のエステル基を有する摩擦調整剤を含む過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤の、潤滑油組成物における清浄剤及び摩擦調整剤としての使用。
【請求項12】
潤滑粘度の油と、過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート及び少なくとも1個の酸素原子を含む少なくとも1個のアミン基;又は少なくとも1個のエステル基を有する摩擦調整剤を含む清浄剤とを含んでなる潤滑油組成物。
【請求項13】
潤滑粘度の油と、少なくとも1個の酸素原子を含む少なくとも1個のアミン基;又は少なくとも1個のエステル基を有する摩擦調整剤を中に組み込んだ過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤とを含んでなる潤滑油組成物。
【請求項14】
潤滑粘度の油と、
以下の工程:
−ヒドロカルビル-置換ヒドロキシ安息香酸、炭化水素溶媒、アルコール、少なくとも1個の酸素原子を含む少なくとも1個のアミン基又は少なくとも1個のエステル基を有する少なくとも1種の摩擦調整剤、及び前記ヒドロキシ安息香酸との反応に必要な量を超える化学量論的に過剰なアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基の混合物を供給する工程;及び
−前記混合物を過塩基性化剤で過塩基性化する工程
によって得られる過塩基性化金属ヒドロカルビル-置換ヒドロキシベンゾエート清浄剤とを含んでなる潤滑油組成物。

【公開番号】特開2009−91575(P2009−91575A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258127(P2008−258127)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】