説明

潤滑油組成物

【課題】過酷な件下で、優れた極圧性能と防錆性を有する金属を含まない無灰系潤滑油組成物の提供。
【解決手段】潤滑油基油に、アルキルまたはアルケニルこはく酸およびその部分エステル類、炭素数8〜24のサルコシンおよびその誘導体、アルキル化フェノキシ酢酸、N−アシル−N−アルコキシアルキルアスパラギン酸エステル類から選ばれる防錆剤、下式一般式(1)で示されるアルキルアミン類および下記一般式(2)で示されるN−アルキルポリアルキレンジアミン類よりなる群から選ばれた少なくとも1種のアミン類




極圧剤として、下記一般式(4)で示されるトリアリールフォスフォロチオエートおよび/または下記一般式(5)で示される酸性りん酸エステル




を含有させたことを特徴とする潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や海水の混入する過酷な使用環境下で優れた防錆性を有すると共に、各種機器に対して耐腐食性と潤滑性の両面でも優れた特性を示す潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油には水や海水の混入に際し機械部品を錆から守るため防錆剤が添加されている。一般に、防錆剤は金属表面に防錆皮膜を形成して金属と水との直接接触を妨げて錆の発生を抑制するために金属表面への強い吸着性をもっている。一方、機械装置が高速化、高荷重、高効率化されるに伴って装置の摩擦面は過酷な条件に晒されて潤滑油膜の破断による摩擦面の焼き付きが発生しやすくなっている。このため過酷な条件で使用される潤滑油には摩擦面間の凝着を防止するため摩擦面で金属表面と反応して潤滑性を維持する極圧剤が適量添加されている。ところが、防錆剤の配合は摩擦面での極圧剤と金属表面との反応を阻害して極圧剤の効果を大きく損なうことが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の目的は、潤滑油の潤滑性能と防錆性能の両面から、過酷な潤滑条件下でも優れた極圧性能を維持し、且つ優れた防錆性を有する金属を含まない無灰系潤滑油組成物を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明の第1は、
(I)潤滑油基油100重量部に、
(II)アルキルまたはアルケニルこはく酸およびその部分エステル類、炭素数8〜24のサルコシンおよびその誘導体、アルキル化フェノキシ酢酸、N−アシル−N−アルコキシアルキルアスパラギン酸エステル類から選ばれる防錆剤0.001〜0.5重量部、
(III)下式一般式(1)で示されるアルキルアミン類および下記一般式(2)で示されるN−アルキルポリアルキレンジアミン類よりなる群から選ばれた少なくとも1種のアミン類0.001〜0.2重量部、
【化1】

(式中、Rは炭素数12〜30の直鎖の飽和または不飽和のアルキル基であり、nは1または2の整数である。)
【化2】

(式中、Rは炭素数12〜30の直鎖の飽和または不飽和のアルキル基であり、mは2〜5の整数である。)
(IV)極圧剤として、下記一般式(4)で示されるトリアリールフォスフォロチオエート0.05〜5重量部、および/または下記一般式(5)で示される酸性りん酸エステル0.01〜0.5重量部、
【化3】

(式中、phはフェニル基、Rは水素または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基である。)
【化4】

(式中、Rは炭素数3〜13の直鎖または分岐のアルキル基であり、rは1または2の整数である。)
を含有させたことを特徴とする潤滑油組成物に関する。
本発明の第は、前記潤滑油基油が、動粘度2〜680mm/s(40℃)、全硫黄分0〜1重量%、全窒素分0〜100ppm、アニリン点80〜130℃を示す石油系および/または合成炭化水素系である請求項1記載の潤滑油組成物に関する。
【発明の効果】
【0005】
(1)本発明によれば、環境や安全性の面から有害な金属をほとんどあるいは全く含有せず、かつ、近年の産業機械の高速化、高圧化、コンパクト化、耐久性の向上に対応した、良好な防錆性能を維持しつつ極圧性能を有する潤滑油組成物を提供することができる。
また、防錆剤の添加量を低減できるため、優れた性能を有する潤滑油組成物を安価に提供できる。
(2)本発明の潤滑油組成物は、油圧作動油、歯車油、圧縮機油、タービン油、軸受油として要求される防錆性能と極圧性能を満たす潤滑油組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明者は前記従来の防錆剤による極圧剤の効果低減の欠点を解消するため鋭意研究を進めた結果、特定の防錆剤と特定のアミン類と特定の極圧剤を組み合わせることにより、防錆剤の添加量を大幅に低減させることができ、その結果、防錆剤による極圧性能の低下を最小限に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の概要は、(I)潤滑油基油と、(II)特定の防錆剤と、(III)特定のアミン類と(IV)特定の極圧剤からなる潤滑油組成物において、(III)のアミン類が、1級もしくは2級のアルキルアミン類またはN−アルキルポリアルキレンジアミンで構成されてなることを特徴とする潤滑油組成物である。
【0008】
本発明の潤滑油組成物を構成する潤滑油基油成分は、石油系および/または合成炭化水素系を含むものであれば特に制限を受けるものではないが、動粘度が2〜680mm/s(40℃)、好ましくは5〜320mm/s(40℃)、特に好ましくは8〜220mm/s(40℃)、全硫黄分(重量%)が0〜1%、好ましくは0〜0.3%、全窒素分(重量ppm)が0〜100ppm、好ましくは0〜30ppm、アニリン点が80〜130℃、好ましくは100〜125℃の物性値を示すものを用いるとよい
【0009】
本発明で使用される石油系潤滑油基油は、溶剤精製基油、水素化精製基油、高度水素化分解基油などの単独あるいは混合物である。高度水素化分解基油とは、溶剤脱蝋によって分離される素蝋(スラックワックス)を原料として、これを触媒下の水添分解(接触分解)により直鎖パラフィンを分岐パラフィンに異性化することで得られる粘度指数130以上(典型的には145〜155)を有する潤滑油基油、もしくは、天然ガス(メタン等)のガス化プロセス(部分酸化)によって得られる水素と一酸化炭素を原料としてフィッシャートロプシュ重合によって得られる重質直鎖パラフィンを前述と同様の接触分解により異性化することで得られる粘度指数130以上(典型的には145〜155)を有する潤滑油基油である。
【0010】
また、本発明で使用される合成炭化水素系基油としては、炭素数3〜15、好ましくは4〜12の範囲の、直鎖状あるいは分岐のオレフィン系炭化水素から選択されたモノマーを単独重合または共重合して得られるオレフィンオリゴマーが挙げられる
本発明において、石油系潤滑油基油と合成炭化水素系基油はそれぞれ単独で、あるいは混合して使用することができる。
【0011】
本発明で使用される防錆剤は、一般に潤滑油に広く使用される公知のものである。
具体的にはアルキルまたはアルケニルこはく酸およびその部分エステル類炭素数8〜24のサルコシンおよびその誘導体、アルキル化フェノキシ酢酸、N−アシル−N−アルコキシアルキルアスパラギン酸エステル類である。
一層具体的な化合物名を下記に示す。
【0012】
サルコシンの誘導体およびアルキル化フェノキシ酢酸の例
ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、パルミチルサルコシン、ステアリルサルコシン、オレイルサルコシン、アルキル化(C8〜20)フェノキシ酢酸など。
【0013】
アルキルまたはアルケニルこはく酸およびその部分エステル類、ならびに、N−アシル−N−アルコキシアルキルアスパラギン酸エステル類の例
CAS番号27859−58−1で示されるアルケニル(C20〜100)こはく酸およびその部分エステル、下記構造を有するN−アシル−N−アルコキシアルキルアスパラギン酸エステル類(USP 5275749)など。
【化5】

(式中、R、Rは水素、C1〜30のアルキル基、C1〜30のアシル基および酸化アルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、R〜R13は水素、およびC1〜30のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。)
【0014】
前記一般式(1)で示されるアルキルアミン類のうち、1級アミン類の例としては、ラウリルアミン、ココナットアミン、n−トリデシルアミン、ミリスチルアミン、n−ペンタデシルアミン、パルミチルアミン、n−ヘプタデシルアミン、ステアリルアミン、n−ノナデシルアミン、n−エイコシルアミン、n−ヘンエイコシルアミン、n−ドコシルアミン、n−トリコシルアミン、n−ペンタコシルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、水素化牛脂アミン、大豆アミン等が挙げられる。また2級アミン類の例としては、ジラウリルアミン、ジココナットアミン、ジn−トリデシルアミン、ジミリスチルアミン、ジn−ペンタデシルアミン、ジパルミチルアミン、ジn−ヘプタデシルアミン、ジステアリルアミン、ジn−ノナデシルアミン、ジn−エイコシルアミン、ジn−ヘンエイコシルアミン、ジn−ドコシルアミン、ジn−トリコシルアミン、ジn−ペンタコシルアミン、ジオレイルアミン、ジ牛脂アミン、ジ水素化牛脂アミン、ジ大豆アミン等が挙げられる。
【0015】
前記一般式(2)で示されるN−アルキルポリアルキレンジアミンの例としては、ラウリルエチレンジアミン、ココナットエチレンジアミン、n−トリデシルエチレンジアミン、ミリスチルエチレンジアミン、n−ペンタデシルエチレンジアミン、パルミチルエチレンジアミン、n−ヘプタデシルエチレンジアミン、ステアリルエチレンジアミン、n−ノナデシルエチレンジアミン、n−エイコシルエチレンジアミン、n−ヘンエイコシルエチレンジアミン、n−ドコシルエチレンジアミン、n−トリコシルエチレンジアミン、n−ペンタコシルエチレンジアミン、オレイルエチレンジアミン、牛脂エチレンジアミン、水素化牛脂エチレンジアミン、大豆エチレンジアミン等のエチレンジアミン類;ラウリルプロピレンジアミン、ココナットプロピレンジアミン、n−トリデシルプロピレンジアミン、ミリスチルプロピレンジアミン、n−ペンタデシルプロピレンジアミン、パルミチルプロピレンジアミン、n−ヘプタデシルプロピレンジアミン、ステアリルプロピレンジアミン、n−ノナデシルプロピレンジアミン、n−エイコシルプロピレンジアミン、n−ヘンエイコシルプロピレンジアミン、n−ドコシルプロピレンジアミン、n−トリコシルプロピレンジアミン、n−ペンタコシルプロピレンジアミン、オレイルプロピレンジアミン、牛脂プロピレンジアミン、水素化牛脂プロピレンジアミン、大豆プロピレンジミン等のプロピレンジアミン類;ラウリルブチレンジアミン、ココナットブチレンジアミン、n−トリデシルブチレンジアミン、ミリスチルブチレンジアミン、n−ペンタデシルブチレンジアミン、パルミチルブチレンジアミン、n−ヘプタデシルブチレンジアミン、ステアリルブチレンジアミン、n−ノナデシルブチレンジアミン、n−エイコシルブチレンジアミン、n−ヘンエイコシルブチレンジアミン、n−ドコシルブチレンジアミン、n−トリコシルブチレンジアミン、n−ペンタコシルブチレンジアミン、オレイルブチレンジアミン、牛脂ブチレンジアミン、水素化牛脂ブチレンジアミン、大豆ブチレンジアミン等のブチレンジアミン類;ラウリルペンチレンジアミン、ココナットペンチレンジアミン、ミリスチルペンチレンジアミン、パルミチルペンチレンジアミン、ステアリルペンチレンジアミン、オレイルペンチレンジアミン、牛脂ペンチレンジアミン、水素化牛脂ペンチレンジアミン、大豆ペンチレンジアミン等のペンチレンジアミン類などが挙げられる。
【0016】
本発明では、極圧剤として、前記一般式(4)で示されるトリアリールフォスフォロチオエート、一般式(5)で示される酸性りん酸エステルの少なくとも一方を用いる。
これらの極圧剤の配合量は、一般式(4)の場合、0.05〜5重量部、一般式(5)の場合、0.01〜0.5重量部の範囲が好ましい。
本発明では前記の必須成分のほかに更に性能を向上させるため、必要に応じて公知の種々の追加的添加剤が使用できる。その例としては、酸化防止剤、金属不活性剤、極圧剤、消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤、防錆剤、抗乳化剤等が挙げられる
【0017】
アミン系酸化防止剤としては、p,p′−ジオクチル−ジフェニルアミン(精工化学社製:ノンフレックスOD−3)、p,p′−ジ−α−メチルベンジル−ジフェニルアミン、N−p−ブチルフェニル−N−p′−オクチルフェニルアミンなどのジアルキル−ジフェニルアミン類;モノ−t−ブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン類;ジ(2,4−ジエチルフェニル)アミン、ジ(2−エチル−4−ノニルフェニル)アミンなどのビス(ジアルキルフェニル)アミン類;オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、N−t−ドデシルフェニル−1−ナフチルアミンなどのアルキルフェニル−1−ナフチルアミン類;1−ナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N−ヘキシルフェニル−2−ナフチルアミン、N−オクチルフェニル−2−ナフチルアミンなどのアリール−ナフチルアミン類、N,N′−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン類;フェノチアジン(保土谷化学社製:Phenothiazine)、3,7−ジオクチルフェノチアジンなどのフェノチアジン類などが挙げられる。
【0018】
硫黄系酸化防止剤としては、ジドデシルサルファイド、ジオクタデシルサルファイドなどのジアルキルサルファイド類;ジドデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ドデシルオクタデシルチオジプロピオネートなどのチオジプロピオン酸エステル類;2−メルカプトベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0019】
フェノール系酸化防止剤としては、2−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン(川口化学社製:アンテージDBH)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールなどの2,6−ジ−t−ブチル−4−アルキルフェノール類;2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エトキシフェノールなどの2,6−ジ−t−ブチル−4−アルコキシフェノール類;3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプト−オクチルアセテート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(吉富製薬社製:ヨシノックス SS)、n−ドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2′−エチルヘキシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのアルキル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート類;2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−400)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−500)などの2,2′−メチレンビス(4−アルキル−6−t−ブチルフェノール)類;4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−300)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)(シェル・ジャパン社製:Ionox 220AH)、4,4′−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−(ジ−p−ヒドロキシフェニル)プロパン(シェル・ジャパン社製:ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4′−シクロヘキシリデンビス(2,6−t−ブチルフェノール)、ヘキサメチレングリコールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Irganox L109)、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート](吉富製薬社製:トミノックス 917)、2,2′−チオ−[ジエチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Irganox L115)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(住友化学:スミライザーGA80)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージRC)、2,2′−チオビス(4,6−ジ−t−ブチル−レゾルシン)などのビスフェノール類;テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Irganox L101)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(吉富製薬社製:ヨシノックス 930)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(シェル・ジャパン社製:Ionox 330)、ビス−[3,3′−ビス−(4′−ヒドロキシ−3′−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、2−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(2″,4″−ジ−t−ブチル−3″−ヒドロキシフェニル)メチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノールなどのポリフェノール類;p−t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドの縮合体、p−t−ブチルフェノールとアセトアルデヒドの縮合体などのフェノールアルデヒド縮合体などが挙げられる。
【0020】
リン系酸化防止剤として、トリフェニルフォスファイト、トリクレジルフォスファイトなどのトリアリールフォスファイト類、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイトなどのトリアルキルフォスファイト類、トリドデシルトリチオフォスファイトなどが挙げられる。
【0021】
これらの酸化防止剤は、基油100重量部に対して、0.01〜2.0重量部の範囲で、単独で又は複数を組み合わせて使用できる。
【0022】
本発明の組成物と併用できる金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール、4−メチル−ベンゾトリアゾール、4−エチル−ベンゾトリアゾールなどの4−アルキル−ベンゾトリアゾール類;5−メチル−ベンゾトリアゾール、5−エチル−ベンゾトリアゾールなどの5−アルキル−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチル−2,3−ベンゾトリアゾールなどの1−アルキル−ベンゾトリアゾール類;1−ジオクチルアミノメチル−2,3−トルトリアゾールなどの1−アルキル−トルトリアゾール類等のベンゾトリアゾール誘導体;ベンゾイミダゾール、2−(オクチルジチオ)−ベンゾイミダゾール、2−(デシルジチオ)−ベンゾイミダゾール、2−(ドデシルジチオ)−ベンゾイミダゾールなどの2−(アルキルジチオ)−ベンゾイミダゾール類;2−(オクチルジチオ)−トルイミダゾール、2−(デシルジチオ)−トルイミダゾール、2−(ドデシルジチオ)−トルイミダゾールなどの2−(アルキルジチオ)−トルイミダゾール類等のベンゾイミダゾール誘導体;インダゾール、4−アルキル−インダゾール、5−アルキル−インダゾールなどのトルインダゾール類等のインダゾール誘導体;ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール誘導体(千代田化学社製:チオライトB−3100)、2−(ヘキシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(オクチルジチオ)ベンゾチアゾールなどの2−(アルキルジチオ)ベンゾチアゾール類;2−(ヘキシルジチオ)トルチアゾール、2−(オクチルジチオ)トルチアゾールなどの2−(アルキルジチオ)トルチアゾール類;2−(N,N−ジエチルジチオカルバミル)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジブチルジチオカルバミル)−ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジヘキシルジチオカルバミル)−ベンゾチアゾールなど2−(N,N−ジアルキルジチオカルバミル)ベンゾチアゾール類;2−(N,N−ジエチルジチオカルバミル)トルチアゾール、2−(N,N−ジブチルジチオカルバミル)トルチアゾール、2−(N,N−ジヘキシルジチオカルバミル)トルチアゾールなどの2−(N,N−ジアルキルジチオカルバミル)−トルゾチアゾール類等のベンゾチアゾール誘導体;2−(オクチルジチオ)ベンゾオキサゾール、2−(デシルジチオ)ベンゾオキサゾール、2−(ドデシルジチオ)ベンゾオキサゾールなどの2−(アルキルジチオ)−ベンゾオキサゾール類;2−(オクチルジチオ)トルオキサゾール、2−(デシルジチオ)トルオキサゾール、2−(ドデシルジチオ)トルオキサゾールなどの2−(アルキルジチオ)トルオキサゾール類等のベンゾオキサゾール誘導体;2,5−ビス(ヘプチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ドデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(オクタデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールなどの2,5−ビス(アルキルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール類;2,5−ビス(N,N−ジエチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジブチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジオクチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾールなどの2,5−ビス(N,N−ジアルキルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール類;2−N,N−ジブチルジチオカルバミル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−N,N−ジオクチルジチオカルバミル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどの2−N,N−ジアルキルジチオカルバミル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール類等のチアジアゾール誘導体;1−ジ−オクチルアミノメチル−2,4−トリアゾールなどの1−アルキル−2,4−トリアゾール類等のトリアゾール誘導体などが挙げられる。
【0023】
これらの金属不活性剤は、基油100重量部に対して、0.01〜0.5重量部の範囲で、単独で又は複数を組み合わせて使用できる。
【0024】
消泡剤としては、例えばジメチルポリシロキサン、ジエチルシリケート、フルオロシリコーン等のオルガノシリケート類、ポリアルキルアクリレート等の非シリコーン系消泡剤などが挙げられる。
その添加量は、基油100重量部に対して、0.0001〜0.1重量部の範囲であり、単独で又は複数を組み合わせて使用できる。
【0025】
粘度指数向上剤としては、例えばポリメタクリレート類やエチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン共重合体などのオレフィンコポリマー類等の非分散型粘度指数向上剤や、これらに含窒素モノマーを共重合させた分散型粘度指数向上剤等が挙げられる。
その添加量は、基油100重量部に対して、0.05〜20重量部の範囲であり、単独で又は複数を組み合わせて使用できる。
【0026】
流動点降下剤としては、例えばポリメタクリレート系のポリマーなどが挙げられる。
その添加量は、基油100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲である
【0027】
清浄分散剤としては、例えば中性または塩基性のアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート等の金属系清浄剤や、アルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステルもしくはそのホウ素化合物、硫黄化合物等による変性品等の無灰分散剤等が挙げられる。
その添加量は、基油100重量部に対して、0.01〜1重量部の範囲であり、単独で又は複数を組み合わせて使用できる。
【0028】
極圧剤としては、ジアルキルサルファイド、ジベンジルサルファイド、ジアルキルポリサルファイド、ジベンジルジサルファイド、アルキルメルカプタン、ジベンゾチオフェン、2,2′−ジチオビス(ベンゾチアゾール)等の硫黄系極圧剤;トリアルキルフォスフェート、トリアリールフォスフェート、トリアルキルフォスフォネート、トリアルキルフォスファイト、トリアリールフォスファイト、ジアルキルハイドロゼンフォスファイト等のリン系極圧剤;ジアルキルジチオりん酸亜鉛、ジアルキルジチオりん酸、トリアルキルジチオりん酸エステル、酸性チオりん酸エステル、トリアルキルトリチオフォスファイト等のりん・硫黄系極圧剤が使用できる。これらの極圧剤は、基油100重量部に対して、0.1〜2重量部の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
【0029】
抗乳化剤としては、通常潤滑油添加剤として使用される公知のものが挙げられる。
その添加量は、基油100重量部に対して、0.0005〜0.5重量部の範囲である
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0031】
実施例1、比較例1〜2、参考例1〜8、参考比較例1〜7
40℃での動粘度が31mm/s、粘度指数が107、硫黄分が5ppm以下、窒素分が1ppm以下、アニリン点が112℃の水素化精製基油に、表1に示す極圧剤と防錆剤とアミンを各種の濃度で配合して試料油を調製し、効果を防錆剤性能と極圧性能の両面から調べた。各種性能試験方法は下記に示すとおりである。
これらの組成と試験結果を表1〜3に示す。
【0032】
<防錆試験>
試料油の防錆性能を評価するため、ASTM D665に準拠して人工海水の存在下に60℃で24時間の防錆試験を行い、試験後の鋼試験片に錆が発生するか否かを調べた。
【0033】
<FZG歯車試験>
試料油の歯車装置に対する潤滑性能を評価するため、ISO/WD14635−1に準拠して、試験歯車Aを用いて、初期油温90℃、モータ回転数1450rpmの条件で、各荷重段階毎に15分の運転を行い、荷重段階を増加させながら試験歯車の歯面に焼き付きが発生するまでの荷重段階を測定した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

注)
(1)ルーブリゾール社製 ルブリゾール859
(2)チバ ペシャルティ ケミカルズ社製 サルコシルO
(3)チバ スペシャルティ ケミカルズ社製 イルガコア NPA
(4)コロニアル ケミカル社製 コラコア 93
CAS No.68906−34−3、27136−73−8
(5)キング インダストー社製 K−CORR 100
P5275749(Jan.4.1994)記載の防錆剤
【0037】
上記表の結果から分るように、比較例では、防錆剤が最小必要量添加されているため、防錆試験では錆の発生はなものの、防錆剤の添加によりFZG歯車試験で著しい耐荷重能の低下が生じる。また、比較例2では、極圧剤とアミン添加されているが、防錆剤が添加されていないため十分な防錆効果が得られない。
一方、実施例1では、本発明の必須成分である極圧剤と防錆剤とアミンの相乗効果により、大幅に防錆剤の必要添加量を低減でき、防錆剤による極圧性能の低下を大幅に改善できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)潤滑油基油100重量部に、
(II)アルキルまたはアルケニルこはく酸およびその部分エステル類、炭素数8〜24のサルコシンおよびその誘導体、アルキル化フェノキシ酢酸、N−アシル−N−アルコキシアルキルアスパラギン酸エステル類から選ばれる防錆剤0.001〜0.5重量部、
(III)下式一般式(1)で示されるアルキルアミン類および下記一般式(2)で示されるN−アルキルポリアルキレンジアミン類よりなる群から選ばれた少なくとも1種のアミン類0.001〜0.2重量部、
【化6】

(式中、Rは炭素数12〜30の直鎖の飽和または不飽和のアルキル基であり、nは1または2の整数である。)
【化7】

(式中、Rは炭素数12〜30の直鎖の飽和または不飽和のアルキル基であり、mは2〜5の整数である。)
(IV)極圧剤として、下記一般式(4)で示されるトリアリールフォスフォロチオエート0.05〜5重量部、および/または下記一般式(5)で示される酸性りん酸エステル0.01〜0.5重量部、
【化8】

(式中、phはフェニル基、Rは水素または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基である。)
【化9】

(式中、Rは炭素数3〜13の直鎖または分岐のアルキル基であり、rは1または2の整数である。)
を含有させたことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
前記潤滑油基油が、動粘度2〜680mm/s(40℃)、全硫黄分0〜1重量%、全窒素分0〜100ppm、アニリン点80〜130℃を示す石油系および/または合成炭化水素系である請求項1記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2011−6703(P2011−6703A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203567(P2010−203567)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【分割の表示】特願2001−142228(P2001−142228)の分割
【原出願日】平成13年5月11日(2001.5.11)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】