説明

濃度測定装置及び方法

【課題】 固体試料中の測定対象物の濃度を非破壊的かつ容易に精度良く測定することが可能な濃度測定装置を提供する。
【解決手段】 濃度測定装置が、第1及び第2の貫通孔を有する絶縁部材を含むハウジングと、各々が第1及び第2の貫通孔の各々に嵌合し、且つ固体試料に挿入されるように絶縁部材から延伸する第1及び第2の棒状の電極と、第1及び第2の電極の間に電力を供給する電源手段と、第1及び第2の電極の間の電圧と第1及び第2の電極の間を流れる電流のうちの少なくとも一方を検出する検出手段と、第1及び第2の電極と共に固体試料に挿入されるようにハウジングに支持される温度センサと、検出手段により検出された電流値または電圧値と温度センサによって測定された固体試料の温度とに基づいて、固体試料中の測定対象物の濃度を計算する計算手段と、計算した濃度を表示する表示手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば魚肉などの塩分濃度を測定するための濃度測定装置及び濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料の塩分濃度を測定するために使用される塩分濃度計として、液体試料の電気伝導度を測定し、電気伝導度と塩分濃度の相関から塩分濃度を求めるものが知られている(特許文献1)。
【0003】
図9は、従来の塩分濃度測定装置の測定原理を模式的に示す説明図である。同図に示すように、食塩水102が充填された容器101中に2つの電極103,104を挿入し、2つの電極103,104間に電源105より交流電圧を印加する。すると、図中の矢印Y1,Y2に示すような経路で食塩水102中に電流が流れる。この電流を電流計106で測定し、(測定電流)/(印加電圧)を演算することにより、食塩水102の電気伝導度gを求める。そして、電気伝導度と塩分濃度との対応関係(図8)に基づいて、電気伝導度gに対応する塩分濃度を求める。
【特許文献1】特開2002−5862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、肉や魚の塩干、塩蔵品などの固体試料における塩分濃度を調べる場合、上述した従来の塩分濃度計では、電極が太すぎて試料に挿入できないという問題があった。そのため、固体試料の一部を採取し、水を加えてすりつぶし、これをろ過した液体試料を用いて測定を行わなければならなかった。従って、(1)液体試料を作らなければならないため、測定に時間と手間がかかる、(2)固体試料の一部を採取するため、固体試料に損傷を与えてしまう、などの問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、固体試料中の測定対象物の濃度を非破壊的かつ容易に精度良く測定することが可能な濃度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願発明による濃度測定装置は、
固体試料中に含まれる測定対象物の濃度を測定するための濃度測定装置であって、
第1及び第2の貫通孔を有する絶縁部材を含むハウジングと、
各々が第1及び第2の貫通孔の各々に嵌合し、且つ固体試料に挿入されるように絶縁部材から延伸する第1及び第2の棒状の電極と、
第1及び第2の電極の間に電力を供給する電源手段と、
第1及び第2の電極の間の電圧と第1及び第2の電極の間を流れる電流のうちの少なくとも一方を検出する検出手段と、
第1及び第2の電極と共に固体試料に挿入されるようにハウジングに支持される温度センサと、
検出手段により検出された電流値または電圧値と温度センサによって測定された固体試料の温度とに基づいて、固体試料中の測定対象物の濃度を計算する計算手段と、
計算した濃度を表示する表示手段と、
を備える。
【0007】
好ましくは、第1及び第2の電極の直径が、0.5mm〜2.0mmであり、
第1及び第2の電極のハウジングから延伸する部分の長さが、1mm〜15mmであり、
第1及び第2の電極が、1mm〜10mmの間隔で互いに平行に配置され、
温度センサが、第1及び第2の電極から1mm〜10mm離間して配置されている。
【0008】
また、好ましくは、第1及び第2の電極が、第1及び第2の貫通孔に焼き嵌めされるか、又は、インサート成形により絶縁部材と一体化されている。
【0009】
さらに、好ましくは、ハウジングが、電源手段、検出手段、計算手段及び表示手段を含む本体ハウジングと、第1及び第2の電極及び温度センサを支持するプローブハウジングと、を含み、プローブハウジングが、本体ハウジングに着脱可能に接続されている。
【0010】
また、 本願発明による濃度測定方法は、
固体資料用濃度測定装置を用いて固体試料中に含まれる測定対象物の濃度を測定する方法であって、装置は、第1及び第2の貫通孔を有する絶縁部材を含むハウジングと、各々が第1及び第2の貫通孔の各々に嵌合し、且つ固体試料に挿入されるように絶縁部材から延伸する第1及び第2の棒状の電極と、第1及び第2の電極の間に電力を供給する電源手段と、第1及び第2の電極の間の電圧と第1及び第2の電極の間を流れる電流のうちの少なくとも一方を検出する検出手段と、第1及び第2の電極と共に固体試料に挿入されるようにハウジングに支持される温度センサと、検出手段により検出された電流値または電圧値と温度センサによって測定された固体試料の温度とに基づいて、固体試料中の測定対象物の濃度を計算する計算手段と、を備え、方法は、
固体試料に第1及び第2の電極と温度センサを挿入する工程と、
第1及び第2の電極の間に電力を供給する工程と、
第1及び第2の電極の間の電圧と第1及び第2の電極の間を流れる電流のうちの少なくとも一方を検出する工程と、
固体試料の温度を測定する工程と、
検出された電流値または電圧値と測定された温度とに基づいて、固体試料中の測定対象物の濃度を計算する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、細い電極を常に一定の長さ固体試料に挿入することができるため、固体試料中の測定対象物の濃度を非破壊的かつ容易に精度良く測定することが可能な濃度測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態による塩分濃度測定装置10の外観図である。図示のように、塩分濃度測定装置10は、本体12と、本体12に着脱可能に接続されたプローブ14と、を備えている。
【0014】
本体12は、本体ハウジング16により全体が覆われる筐体構造を成しており、測定の開始、ゼロ調整などの操作を行うための操作スイッチ18a,18bと、測定結果である塩分濃度を表示するための液晶表示器等の表示部(表示手段)20と、を備えている。また、本体12の内部には、後述する検出手段、計算手段などの各種電子部品を実装する基板(図示せず)が設けてある。
【0015】
プローブ14は、プローブハウジング22と、プローブハウジング22の一端から互いに平行に延伸する第1の電極24、第2の電極26および温度センサ28と、プローブハウジング22の他端から延伸するケーブル30と、を備えている。
【0016】
図2は、プローブハウジング22の断面図である。図示のように、プローブハウジング22は、測定者が手で持ちやすい寸法及び形状に作られた筒状部32と、筒状部32の一端に支持され、一対の電極24、26及び温度センサ28を支持する絶縁部材34と、筒状部32の他端に支持され、ケーブル30(図1)を支持するブーツ36と、を含む。筒状部32と絶縁部材34は互いに係合しており、筒状部32と絶縁部材34の間にはOリング38が設けてある。同様に、筒状部32とブーツ36は互いに係合し、筒状部32とブーツ36の間にはOリング40が設けてある。
【0017】
図3は、筒状部32から外した状態の絶縁部材34を示す斜視図である。図4は、図3の絶縁部材34の背面図である。図5及び図6は、図4の線V及びVIにおける絶縁部材34の断面図である。
【0018】
図5に示すように、絶縁部材34は、固体試料に接触させる平らな端面42を有し、第1及び第2の電極24、26がそれぞれ嵌合する第1及び第2の貫通孔44、46と、温度センサ28が嵌合する第3の貫通孔48(図6)が形成されている。絶縁部材34は、例えばABS樹脂(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂)などの絶縁材料からなり、第1及び第2の電極24、26の絶縁部材34から延伸する部分の長さL1を画定する。
【0019】
第1及び第2の電極24、26は、例えば真鍮にニッケル下地金メッキを施したものからなり、細長い棒状の形状を有する。より詳細には、第1及び第2の電極24、26の直径D1は0.5mm〜2.0mmであり、第1及び第2の電極24、26の絶縁部材34から延伸する部分の長さ(延伸長さ)L1は1mm〜15mmであり、第1及び第2の電極24、26の間隔D2は、1mm〜10mmであることが好ましい。
【0020】
図6に示すように、温度センサ28は、センサ本体(図示せず)と、センサ本体を覆う、例えばステンレス製の保護部材と、を備えており、細長い棒状の形状を有する。より詳細には、温度センサ28の直径D3は0.5mm〜1.5mmであり、温度センサ28の絶縁部材34から延伸する部分の長さ(延伸長さ)L2は、第1及び第2の電極24、26と同様、1mm〜15mmであることが好ましい。
【0021】
これらの電極24、26及び温度センサ28は、堅固な材料で細長い棒状に作られ、且つ互いに平行に延伸しているので、固体試料に容易に差し込むことができる。また、固体試料に差し込む電極24、26及び温度センサ28の断面寸法が小さいので、固体試料の損傷を少なくすることができる。
【0022】
より詳細には、第1及び第2の電極24、26は、それぞれ第1及び第2の貫通孔44、46の各々に焼き嵌めされている。これにより、電極24、26を繰り返し固体試料に挿入しても、電極24、26と絶縁部材34の間に隙間が生じて固体試料に含まれる液体がこの隙間にしみ込むのを防ぐことができる。また、電極24、26が絶縁部材34に対して相対的に移動して電極24、26の延伸部分の長さL1が変わるのを防ぐことができる。従って、絶縁部材34の端面42が固体試料に接触するまで電極24、26を試料に差し込むことにより、電極24、26の固体試料内に配置される部分の表面積を常に一定とすることができ、塩分濃度を正確に測定することが可能となる。
【0023】
第3の貫通孔48は、第1及び第2の貫通孔44、46の各々から1mm〜10mmの等距離に形成される。温度センサ28は第3の貫通孔48に焼き嵌めされ、好ましくは各電極24、26から1mm〜10mmの位置に固定される。これにより、電極24、26間に形成される電場に影響を与えることなく固体試料の測定部位の温度を測定することができ、この温度に応じて正確な塩分濃度を求めることができる。
【0024】
再び図2を参照すると、プローブハウジング22内には、各電極24、26及び温度センサ28が接続されたプローブ基板50が設けてある。プローブ基板50は、ケーブル30(図1)に接続され(図2には図示せず)、コネクタ52(図1)を介して本体12内部の基板(図示せず)に接続されている。コネクタ52は、好ましくは耐水形コネクタである。このように、プローブ14が本体12に着脱可能に接続されているので、電極24、26又は温度センサ28が破損した場合に、装置全体でなくプローブ14のみを交換することができる、本体12からプローブ14を取り外すことにより装置が携帯し易くなる、等の利点がある。
【0025】
また、以下に説明する本体12の構成は、従来の液体試料用の塩分濃度測定装置と概ね同様である。従って、コネクタ52の本体12側の部分52aを、従来の液体試料用装置におけるサンプルステージと互換可能な形状及び構造とすることにより、本体12を、従来の液体試料用装置と同様に製造することができる。これにより、固体試料用装置を低コストで製造することが可能となる。
【0026】
図7は、本体12内部の基板上に設けられた塩分濃度測定装置10の制御部54を示すブロック図である。同図に示すように、制御部54は、所定の周波数の交流電圧信号を発生する信号発生器(電源手段)56と、信号発生器56より出力される交流信号を増幅する出力増幅回路58と、を備える。出力増幅回路58の出力端子は、シャント抵抗60を介して第2の電極26に接続されている。また、第1の電極24は、グランドに接地されている。
【0027】
更に、第2の電極26は、第2の電極26に印加される電圧を検出する電圧検出回路(検出手段)62に接続されている。また、シャント抵抗60の両端は、電流検出回路(検出手段)64に接続されており、電流検出回路64は、シャント抵抗60に発生する電圧に基づいてシャント抵抗60に流れる電流を求める。
【0028】
電流検出回路64及び電圧検出回路62の各出力端は、各検出回路で検出されたアナログ信号をディジタル信号に変換するためのAD変換回路66に接続され、AD変換回路66の出力端は計算手段(CPU)68に接続されている。計算手段68には、図8に示すような電気伝導度と塩分濃度との関係を示す特性データ(検量線の式)が備えられており、また、温度センサ28が接続されている。
【0029】
計算手段68は、電流検出回路64で検出した電流、及び電圧検出回路62で検出した電圧に基づき、第2の電極26と第1の電極24の間の固体試料の電気伝導度gを求める。計算手段68は更に、特性データに電気伝導度gを代入して得られた値を、温度センサ28で検出した固体材料の温度Tに応じて補正することにより、固体材料の塩分濃度を求める。
【0030】
表示部20は、計算手段68で求めた塩分濃度を表示する。
【0031】
次に、上記のように構成された塩分濃度測定装置10の処理動作について説明する。
【0032】
第1及び第2の電極24、26を固体試料に差し込んだ状態で、計算手段68から信号発生器56に起動信号が送られると、信号発生器56より所定周波数の交流の電圧信号が出力される。
【0033】
出力された電圧信号は、出力増幅回路58により増幅された後、シャント抵抗60を介して第2の電極26に印加される。第1の電極24はグランドに接地されているので、固体試料中において第2の電極26から第1の電極24に向けて電流が流れる。
【0034】
2つの電極24、26間を流れる電流がシャント抵抗60に流れることにより、シャント抵抗60の両端には、この電流に比例した大きさの電圧が発生する。電流検出回路64では、シャント抵抗60に生じる電圧とシャント抵抗60の抵抗値に基づいてシャント抵抗60に流れる電流が検出される。検出された電流データはAD変換回路66でディジタル化され、計算手段68に出力される。
【0035】
また、第2の電極26に生じる電圧は電圧検出回路62で検出される。検出された電圧はAD変換回路66でディジタル化され、計算手段68に出力される。更に、温度センサ28で測定された固体試料の温度Tが計算手段68に送られる。
【0036】
その後、計算手段68では、検出された電圧(V)と電流(I)から、g=I/Vの関係式を用いて電気伝導度gが求められる。この電気伝導度gは、図8に示すような特性データに代入され、得られた値が固体試料の温度Tにより補正されることにより、塩分濃度が求られる。塩分濃度データは表示部20に出力され、表示部20に固体試料の塩分濃度が表示される。
【0037】
このように、本実施形態による塩分濃度測定装置10では、電極24、26及び温度センサ28は、堅固な材料で細長い棒状に作られ、且つ互いに平行に延伸しているので、固体試料に容易に差し込むことができる。従って、従来に比べて測定作業を簡素化することができる。
【0038】
また、固体試料に差し込む電極24、26及び温度センサ28の断面寸法が小さいので、固体試料の損傷を少なくすることができる。従って、測定に使用した固体試料を廃棄しなくてもよくなる。
【0039】
更に、電極24、26が絶縁部材34の貫通孔44、46に焼き嵌めされているので、電極24、26と絶縁部材34の間に隙間が生じること、及び電極24、26が絶縁部材34に対して相対的に移動して電極24、26の延伸長さL1が変わることが防止される。従って、絶縁部材34の端面42が固体試料に接触するまで電極24、26を試料に差し込むことにより、電極24、26の固体試料内に配置される部分の表面積を常に一定とすることができ、塩分濃度を正確に測定することが可能となる。
【0040】
また、温度センサ28が絶縁部材34の貫通孔48に焼き嵌めされ、各電極24、26から所定の距離に配置されるので、電極24、26間に形成される電場に影響を与えることなく固体試料の測定部位の温度を測定することが可能となる。従って、固体試料の温度に応じて正確な塩分濃度を求めることができる。
【0041】
更に、プローブ14が本体12に着脱可能に接続されているので、電極24、26又は温度センサ28が破損した場合に、装置全体でなくプローブ14のみを交換することができる、本体12からプローブ14を取り外すことにより装置が携帯し易くなる、等の利点がある。
【実施例1】
【0042】
固体材料として塩分濃度の異なるサケの切り身を用い、本願発明による固体試料用の塩分濃度測定装置で測定した塩分濃度を、従来の液体試料用の塩分濃度測定装置で測定した塩分濃度と比較した。
【0043】
より詳細には、ロシア産のベニザケのドレスを3枚におろし、背側の中央部分を2cm幅に切り、複数の切り身を用意した。それぞれの切り身を、20%の塩水に5分間、15分間、30分間、1時間、2時間、8時間、16時間浸漬したもの、25%の塩水に2時間、3時間、4時間、5時間、16時間、24時間浸漬したもの、15%の塩水に10分間、8時間、16時間浸漬したものを、それぞれ真空パックにして冷蔵庫に約1日保管した。
【0044】
その後、まず本願発明による固体試料用の装置(第1及び第2電極の直径:0.5mm
第1及び第2電極の長さ:5mm、第1及び第2電極の間隔:2.5mm、第1及び第2電極と温度計との間隔:5mm)を用いて、切り身の温度が5℃、10℃、15℃、20℃の状態で、それぞれの切り身の塩分濃度を計算した。
【0045】
次に、それぞれの切り身から固体試料用装置での測定に使用した部位を含む3cm×3cm×2cm(20g程度)の試料を採取して液体試料を作り、それらの塩分濃度を従来の液体試料用の装置を用いて測定した。
【0046】
表1は、従来の装置で測定した塩分濃度gと、温度が5℃、10℃、15℃、20℃の切り身を用いて本願発明による装置で測定した塩分濃度gと、を示す。
【表1】

【0047】
表1に示されるように、試料がいずれの温度の場合でも、本願発明による装置で測定した塩分濃度gは、従来の装置で測定した塩分濃度gと概ね良く一致している。より詳細には、塩分濃度g、gの相関係数はいずれの温度でも0.96以上であった。また、本願発明による装置で測定した塩分濃度gの従来の装置で測定した塩分濃度gに対する比g/gは、許容範囲は0.7〜1.5であるが、驚くべきことに、0.80〜1.35であった。従って、本願発明による塩分濃度測定装置により、固体試料の温度が異なる場合でも固体試料の塩分濃度を、精度よく検出できることがわかる。
【0048】
要するに、本願発明による濃度測定装置10は以下の特徴を有する。
【0049】
1. 固体試料中に含まれる測定対象物の濃度を測定するための濃度測定装置10であって、
第1及び第2の貫通孔44,46を有する絶縁部材34を含むハウジング22と、
各々が第1及び第2の貫通孔44,46の各々に嵌合し、且つ固体試料に挿入されるように絶縁部材34から延伸する第1及び第2の棒状の電極24,26と、
第1及び第2の電極24,26の間に電力を供給する電源手段56と、
第1及び第2の電極24,26の間の電圧と第1及び第2の電極24,26の間を流れる電流のうちの少なくとも一方を検出する検出手段62,64と、
第1及び第2の電極24,26と共に固体試料に挿入されるようにハウジング22に支持される温度センサ28と、
検出手段62,64により検出された電流値または電圧値と温度センサ28によって測定された固体試料の温度とに基づいて、固体試料中の測定対象物の濃度を計算する計算手段68と、
計算した濃度を表示する表示手段20と、
を備える。
【0050】
2. 第1及び第2の電極24,26の直径D1が、0.5mm〜2.0mmであり、
第1及び第2の電極24,26のハウジング22から延伸する部分の長さL1が、1mm〜15mmであり、
第1及び第2の電極24,26が、1mm〜10mmの間隔D2で互いに平行に配置され、
温度センサ28が、第1及び第2の電極24,26から1mm〜10mm離間して配置されている。
【0051】
3. 第1及び第2の電極24,26が、第1及び第2の貫通孔44,46に焼き嵌めされるか、又は、インサート成形により絶縁部材34と一体化されている。
【0052】
4. ハウジングが、電源手段、検出手段、計算手段及び表示手段を含む本体ハウジング16と、第1及び第2の電極24,26及び温度センサ28を支持するプローブハウジング22と、を含み、プローブハウジング22が、本体ハウジング16に着脱可能に接続されている。
【0053】
また、本願発明による濃度測定方法は以下の特徴を有する。
【0054】
5. 固体資料用濃度測定装置10を用いて固体試料中に含まれる測定対象物の濃度を測定する方法であって、装置は、第1及び第2の貫通孔44,46を有する絶縁部材34を含むハウジング22と、各々が第1及び第2の貫通孔44,46の各々に嵌合し、且つ固体試料に挿入されるように絶縁部材34から延伸する第1及び第2の棒状の電極24,26と、第1及び第2の電極24,26の間に電力を供給する電源手段56と、第1及び第2の電極24,26の間の電圧と第1及び第2の電極24,26の間を流れる電流のうちの少なくとも一方を検出する検出手段62,64と、第1及び第2の電極24,26と共に固体試料に挿入されるようにハウジング22に支持される温度センサ28と、検出手段62,64により検出された電流値または電圧値と温度センサ28によって測定された固体試料の温度とに基づいて、固体試料中の測定対象物の濃度を計算する計算手段68と、を備え、方法は、
固体試料に第1及び第2の電極24,26と温度センサ28を挿入する工程と、
第1及び第2の電極24,26の間に電力を供給する工程と、
第1及び第2の電極24,26の間の電圧と第1及び第2の電極24,26の間を流れる電流のうちの少なくとも一方を検出する工程と、
固体試料の温度を測定する工程と、
検出された電流値または電圧値と測定された温度とに基づいて、固体試料中の測定対象物の濃度を計算する工程と、
を含む。
【0055】
そして、上記特徴により、本願発明による濃度測定装置は以下の効果を奏する。
【0056】
1.測定作業を容易にすることができる。
【0057】
2.固体試料の損傷を少なくすることができる。
【0058】
3.濃度を精度良く測定することができる。
【0059】
4.プローブが交換可能である。
【0060】
5.装置を低コストで製造することができる。
【0061】
6.装置が携帯し易い。
【0062】
以上、本発明の濃度測定装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0063】
例えば、上記した実施形態では、電極及び温度センサが焼き嵌めにより絶縁部材に固定されているが、インサートモールド成形により絶縁部材を電極及び温度センサと一体化させてもよいし、電極及び温度センサを絶縁部材の貫通孔に圧入してもよい。この場合、電極及び温度センサが引っ込まないように、プローブハウジング内にアンカーを設けることが好ましい。
【0064】
また、上記した実施形態では、絶縁部材がABS樹脂製であるが、POM(ポリオキシメチレン)樹脂(アセタール樹脂)などの材料も絶縁部材として使用可能である。
【0065】
更に、上記した実施形態では、電圧検出回路を用いて2つの電極間の電圧を測定する構成としたが、出力増幅回路より出力される電圧を、2つの電極間の電圧であるものとして電気導電率を測定することも可能である。このような構成とすれば、電圧検出回路を省略できるので、回路構成を簡素化することができる。
【0066】
また、上記した実施形態では、信号発生器より一定レベルの交流電圧信号を出力し、このときに流れる電流に基づいて電気導電率を求めるようにしたが、信号発生器より一定レベルの交流電流信号を出力し、このときに2つの電極間に生じる電圧を測定することにより、電気導電率を求めるようにしても良い。
【0067】
更に、上記した実施形態では、食塩水中に含まれる塩分濃度を測定する塩分濃度測定装置を例に挙げて説明したが、本発明に係る濃度測定装置は、これに限定されるものではなく、液体中に溶解した物質でその濃度に応じて電気導電率が変化する他の測定対象物についても採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
固体試料中の塩分濃度を簡単且つ正確に測定する上で極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態による濃度測定装置の外観図である。
【図2】プローブハウジングの断面図である。
【図3】筒状部から外した状態の絶縁部材を示す斜視図である。
【図4】図3の絶縁部材の背面図である。
【図5】図4の線Vにおける絶縁部材の断面図である。
【図6】図4の線VIにおける絶縁部材の断面図である。
【図7】濃度測定装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図8】塩分濃度と電気伝導度との関係を示す特性図である。
【図9】従来の塩分濃度測定装置の測定原理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0070】
10 塩分濃度測定装置(濃度測定装置)
12 本体
14 プローブ
16 本体ハウジング
18a,18b 操作スイッチ
20 表示部(表示手段)
22 プローブハウジング
24 第1の電極
26 第2の電極
28 温度センサ
30 ケーブル
32 筒状部
34 絶縁部材
36 ブーツ
38,40 Oリング
42 端面
44 第1の貫通孔
46 第2の貫通孔
48 第3の貫通孔
50 プローブ基板
52 コネクタ
54 制御部
56 信号発生器(電源手段)
58 出力増幅回路
60 シャント抵抗
62 電圧検出回路
64 電流検出回路
66 AD変換回路
68 計算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体試料中に含まれる測定対象物の濃度を測定するための濃度測定装置であって、
第1及び第2の貫通孔を有する絶縁部材を含むハウジングと、
各々が前記第1及び第2の貫通孔の各々に嵌合し、且つ固体試料に挿入されるように前記絶縁部材から延伸する第1及び第2の棒状の電極と、
前記第1及び第2の電極の間に電力を供給する電源手段と、
前記第1及び第2の電極の間の電圧と前記第1及び第2の電極の間を流れる電流のうちの少なくとも一方を検出する検出手段と、
前記第1及び第2の電極と共に固体試料に挿入されるように前記ハウジングに支持される温度センサと、
前記検出手段により検出された電流値または電圧値と前記温度センサによって測定された固体試料の温度とに基づいて、固体試料中の測定対象物の濃度を計算する計算手段と、
前記計算した濃度を表示する表示手段と、
を備える濃度測定装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の電極の直径が、0.5mm〜2.0mmであり、
前記第1及び第2の電極の前記ハウジングから延伸する部分の長さが、1mm〜15mmであり、
前記第1及び第2の電極が、1mm〜10mmの間隔で互いに平行に配置され、
前記温度センサが、前記第1及び第2の電極から1mm〜10mm離間して配置されている、請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の電極が、前記第1及び第2の貫通孔に焼き嵌めされるか、又は、インサート成形により前記絶縁部材と一体化されている、請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項4】
前記ハウジングが、前記電源手段、検出手段、計算手段及び表示手段を含む本体ハウジングと、前記第1及び第2の電極及び温度センサを支持するプローブハウジングと、を含み、前記プローブハウジングが、前記本体ハウジングに着脱可能に接続されている、請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項5】
固体資料用濃度測定装置を用いて固体試料中に含まれる測定対象物の濃度を測定する方法であって、前記装置は、第1及び第2の貫通孔を有する絶縁部材を含むハウジングと、各々が前記第1及び第2の貫通孔の各々に嵌合し、且つ固体試料に挿入されるように前記絶縁部材から延伸する第1及び第2の棒状の電極と、前記第1及び第2の電極の間に電力を供給する電源手段と、前記第1及び第2の電極の間の電圧と前記第1及び第2の電極の間を流れる電流のうちの少なくとも一方を検出する検出手段と、前記第1及び第2の電極と共に固体試料に挿入されるように前記ハウジングに支持される温度センサと、前記検出手段により検出された電流値または電圧値と前記温度センサによって測定された固体試料の温度とに基づいて、固体試料中の測定対象物の濃度を計算する計算手段と、を備え、前記方法は、
固体試料に第1及び第2の電極と温度センサを挿入する工程と、
前記第1及び第2の電極の間に電力を供給する工程と、
前記第1及び第2の電極の間の電圧と前記第1及び第2の電極の間を流れる電流のうちの少なくとも一方を検出する工程と、
固体試料の温度を測定する工程と、
検出された電流値または電圧値と測定された温度とに基づいて、固体試料中の測定対象物の濃度を計算する工程と、
を含む、濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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