説明

濃染性の改質ポリ乳酸繊維、その構成組成物及びその製造方法

【課題】優れた濃色性を有し、染色後の染色堅牢度や洗濯堅牢度が高い濃染性の改質ポリ乳酸繊維、その構成組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】主成分とするポリ乳酸の中に、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル及び脂肪族-芳香族コポリエステルの群から選ばれた少なくとも1種の改質剤が混合されているポリ乳酸組成物から構成されていて、前記改質剤を含んでいないポリ乳酸組成物からなるポリ乳酸繊維と同じ濃度で染色されると、該ポリ乳酸繊維より低い染色L値を得ることができることを特徴とする濃染性の改質ポリ乳酸繊維、その構成組成物及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸繊維に関し、特に濃染性の改質ポリ乳酸繊維、その構成組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心が高まる中、地球環境に優しい生分解性繊維が求められるようになってきた。そのため、ポリ乳酸繊維は耐熱性、ポリエステル繊維並みの強度などの物理的特性を有すると共に、トウモロコシなどの再生産可能な植物資源を原料とし生産でき、完全資源循環型の素材であるので、注目を集めており様々な加工糸の提案がなされている。
【0003】
従来より、繊維の染色加工では、三つの染料の濃度、即ち、1%以下o.w.f.(on the weight of fabric)と、1〜3%o.w.f.と、3%以上o.w.f.とに分けられている。ポリ乳酸繊維の染色加工方法としては、ポリ乳酸繊維を分散染料で染色するが、ポリ乳酸の分子と分散染料の分子の間に良い結合ができないので、分散染料が十分に染着されず、ポリエステル繊維と同じ濃度で染色される場合、ポリエステル繊維と比べて濃染性が低くなり、染色堅牢度や洗濯堅牢度が劣る、という欠点がある。特に、ポリ乳酸繊維の濃色染色を行うために、染料の濃度を3%以上o.w.f.まで上げないと、ポリ乳酸繊維の濃色染色ができない。そのため、ポリ乳酸繊維の濃染性、染色堅牢度や洗濯堅牢度をさらに向上させることが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前記のような従来技術の問題点を解消することにあり、即ち、優れた濃染性を有し、染色後のいわゆる染色堅牢度や洗濯堅牢度が高い濃染性の改質ポリ乳酸繊維、その構成組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、研究を研究に重ねた結果、ポリ乳酸の中に、分散染料との結合が良く、且つポリ乳酸との融和性が良く加工性に悪影響を与えない改質剤を混合すれば、前記のような従来技術の問題点が解消でき、即ち、染料の濃度を3%以上o.w.f.まで上げなくても、低い染色L値を得ることができ、濃色染色ができるので、分散染料に対し、優れた濃染性および染色堅牢度や洗濯堅牢度を有する濃染性の改質ポリ乳酸繊維を造ることができることを知見して本発明に到達した。
【0006】
前記知見により、本発明は、まず、主成分とするポリ乳酸の中に、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル及び脂肪族-芳香族コポリエステルの群から選ばれた少なくとも1種の改質剤が混合されているポリ乳酸組成物から構成されていて、前記改質剤を含んでいないポリ乳酸組成物からなるポリ乳酸繊維と同じ濃度で染色されると、該ポリ乳酸繊維より低い染色L値を得ることができることを特徴とする濃染性の改質ポリ乳酸繊維を提供し、もっと詳しくは、主成分とするポリ乳酸の中に、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル及び脂肪族-芳香族コポリエステルの群から選ばれた少なくとも1種の改質剤が、組成物の総重量を基準として、1〜15重量%で混合されているポリ乳酸組成物から構成されていて、前記改質剤を含んでいないポリ乳酸組成物からなるポリ乳酸繊維と同じ濃度で染色されると、該ポリ乳酸繊維より低い染色L値を得ることができることを特徴とする濃染性の改質ポリ乳酸繊維を提供する。
【0007】
本発明は、他の側面から言えば、主成分とするポリ乳酸の中に、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル及び脂肪族-芳香族コポリエステルの群から選ばれた少なくとも1種の改質剤が、組成物の総重量を基準として、1〜15重量%で混合されていて、それが繊維に構成されてから前記改質剤を含んでいないポリ乳酸組成物からなるポリ乳酸繊維と同じ染色濃度で染色されると、該ポリ乳酸繊維より低い染色L値を得ることができることを特徴とする濃染性の改質ポリ乳酸繊維構成用の組成物をも提供する。
本発明は、なお、前記組成物を溶融紡糸することにより、その単糸繊度が1〜10デニールの範囲内、且つ断面が丸断面、楕円断面、三葉断面、三角断面、犬骨(dog-boned)断面、扁平断面又は中空断面である部分延伸糸を形成してから繊維数36、48、72、108又は144に集束することを特徴とする濃染性の改質ポリ乳酸繊維の製造方法をも提供する。
【0008】
詳細に説明すると、前記改質剤の量は、ポリ乳酸組成物の総重量を基準として、1〜15重量%が好ましく、より好ましくは1〜10重量%であり、更に好ましくは1〜5重量%である。改質剤の量は、1重量%以下の場合、繊維の濃染性を付与することができず、15重量%以上の場合、加工性が低下するため好ましくない。
本発明に適用する脂肪族ポリエステルは、下記構造:
【化1】

の繰り返し単位を含んでおり、また、式中におけるR、Rが同じ又は異なるC〜C40直鎖又は分枝鎖アルキル基である。具体例としては、ポリブチレン スクシネート(Polybutylene succinate、日本昭和ポリマー株式会社の商品「Bionolle 1020」、「Bionore 1001」、「Bionore 1903」)、ポリブチレン スクシネート/アジペート(Polybutylene succinate/adipate、韓国IRE会社の商品「EnPol G400」)、ポリブチレン アジペート(Polybutylene adipate、台湾遠東紡織会社の商品「FEPOL1000」シリーズ)、ポリエチレン スクシネート/アジペート(Polyethylene succinate/adipate)、ポリブチレン スクシネート/カーボネート(Polybutylene succinate/carbonate)、ポリカロラクトン(Polycarolactone)、及びポリエチレン アジペート(Polyethylene adipate)などが挙げられる。
【0009】
前記脂肪族ポリエステルは、30℃〜140℃の範囲内の融点を有するものが好ましい。
【0010】
本発明に適用する脂肪族-芳香族コポリエステルは、下記構造:
【化2】

の繰り返し単位を含んでおり、また、式中において、1≦m≦40、1≦n≦40、R、R、Rが同じ又は異なるC〜C40直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、ArはC〜C20芳香族基である。具体例としては、ポリブチレン アジペート/テレフタレート(Polybutylene adipate/terephthalate、台湾遠東紡織会社の商品「FEPOL 2000」シリーズ、BASF会社の商品「Ecoflex」または韓国IRE会社の商品「EnPol 8000」)、ポリブチレン スクシネート/テレフタレート(Polybutylene succinate/terephthalate、DuPont会社の商品「Biomax」)、ポリブチレン スクシネート/アジペート(Polybutylene succinate/adipate、日本昭和ポリマー株式会社の商品「Bionore 3003」)及びポリテトラメチレン アジペート/テレフタレート(Polytetramethylene adipate/terephthalate、Eastman Chemicalsの商品「EastarBio」)などが挙げられる。
【0011】
前記脂肪族-芳香族ポリエステルは、50℃〜200℃の範囲内の融点を有するものが好ましい。
【0012】
本発明に適用する芳香族ポリエステルは、下記構造:
【化3】

の繰り返し単位を含んでおり、また、式中において、1≦m≦40、1≦n≦40、RはC〜C40直鎖又は分枝鎖アルキル基、又はC〜C20芳香族基、RはC〜C40直鎖又は分枝鎖アルキル、Ar、Arは同じ又は異なるC〜C20芳香族基である。具体例としては、ポリエチレン テレフタレート/1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン アルコキシレート(Polyethylene terephthalate/1,3-dihydroxy-2-methylpropane alkoxylate)、ポリエチレン テレフタレート/アジペート(Polyethylene terephthalate/adipate、台湾遠東紡織会社の商品「CS-113」)及びポリエチレン テレフタレート/ナトリウム-5-スルフォ-ビス(β-オキシ-エチル)イソフタレート(Polyethylene terephthalate/sodium-5-sulfo-bis(β-hydroxy-ethyl)isophthalate)などが挙げられる。
【0013】
前記芳香族ポリエステルは、110℃〜200℃の範囲内の融点を有するものが好ましい。
【0014】
また、前記改質剤は、さらに、改質剤の総重量を基準として、4〜10重量%の二酸化チタン(TiO)を加えることが好ましい。この二酸化チタンは消光剤としてよく使用されているが、改質剤の一成分としてポリ乳酸と混合することにより、セミダルタイプ(Semi Dull type)繊維を形成することができる。
【0015】
本発明の繊維の製造方法としては、前記ポリ乳酸組成物を溶融紡糸することにより、部分延伸糸(Partially Oriented Yarn、POY)を一旦形成してから、仮撚工程により更に加工して加工糸(Draw Texturized Yarn、DTY)となすものである。
【0016】
前記部分延伸糸と加工糸の単糸は、繊度が1〜10デニールの範囲内であることが好ましく、断面が必要に応じ、丸断面、楕円断面、三葉断面、三角断面、犬骨(dog-boned)断面、扁平断面及び中空断面のいずれかになっても良い。通常、部分延伸糸を形成してから繊維数36、48、72、108又は144に集束することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように組成・製造された本発明の濃染性の改質ポリ乳酸繊維は、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル及び脂肪族-芳香族コポリエステルの群から選ばれた少なくとも1種の改質剤が混合されているので、前記改質剤を含んでいないポリ乳酸組成物からなる従来のポリ乳酸繊維と同じ染色濃度で染色されると、該従来のポリ乳酸繊維より低い染色L値を得る上、濃染性も染色後の染色堅牢度や洗濯堅牢度も該従来のポリ乳酸繊維より遥かに優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述する。
<化学薬品>
1.ポリ乳酸(PLA):米国Cargill-Dow会社の商品「6201D」であり、融点170℃。
2.ポリブチレン スクシネート(PBS):日本昭和ポリマー株式会社の商品「Bionolle 1020」であり、融点114℃。
3.ポリブチレン スクシネート/アジペート(EnPol):韓国IRE会社の商品「EnPol G400」であり、融点60℃。
4.ポリブチレン アジペート/テレフタレート(PBAT-FB):発明者が自ら実験室で重合したものであり、融点140℃。
5.ポリブチレン アジペート/テレフタレート(PBAT-SD):発明者が自ら実験室で重合したものであり、融点140℃。
6.ポリエチレン テレフタレート/アジペート(CS-113):台湾遠東紡織会社の商品「CS-113」であり、融点192℃。
7.ポリエチレン テレフタレート/1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン アルコキシレート(DHMPA):発明者が自ら実験室で重合したものであり、融点186℃。
【実施例】
【0019】
改質剤の量が染色性に与える影響
実施例1〜6はぞれぞれ、表1〜6に示した比例で、ポリ乳酸(PLA)と異なる改質剤(PBS、EnPol、PBAT-FB、PBAT-SD、CS-113、DHMPA)を混合し造粒して、顆粒状のポリ乳酸組成物を形成する。この顆粒状のポリ乳酸組成物に対し青色分散染料を用いて110℃で40分間染色を行なった後、それぞれ染色L値を測定して、結果を各表に示す。ここで、染色濃度は2.5% o.w.f.(on the weight of fabric)である。比較例1は改質剤が加えられていないポリ乳酸繊維である。実施例4の改質剤には二酸化チタンが加えられている。比較例2は改質剤が加えられていないが、二酸化チタンが加えられている。
【0020】
実施例1
本実施例の改質剤はポリブチレン スクシネート(PBS)である。
【0021】
【表1】

【0022】
実施例2
本実施例の改質剤はポリブチレン スクシネート/アジペート(EnPol)である。
【0023】
【表2】

【0024】
実施例3
本実施例の改質剤はポリブチレン アジペート/テレフタレート(PBAT-FB)である。
【0025】
【表3】

【0026】
実施例4
本実施例の改質剤は半光沢ポリブチレン アジペート/テレフタレート(PBAT-SD)であり、改質剤の総重量を基準として、6wt%の二酸化チタンを含んでいる。また、比較例2は98wt%のポリ乳酸と2wt%の親練(マスターバッチ、85wt%のポリ乳酸と15wt%の二酸化チタンとからなり、エステルマン(Easterman)会社製)を混合し造粒して得られたものである。
【0027】
【表4】

【0028】
実施例5
本実施例の改質剤はポリエチレン テレフタレート/アジペート(CS-113)である。
【0029】
【表5】

【0030】
実施例6
本実施例の改質剤はポリエチレン テレフタレート/1,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン アルコキシレート(DHMPA)である。
【0031】
【表6】

【0032】
表1〜6に示したデータから明らかなように、改質剤と混合しているポリ乳酸組成物(実施例1〜6)の染色L値は、改質剤と混合していないポリ乳酸(比較例1〜2)の染色L値より低いので、改質剤と混合しているポリ乳酸組成物の濃染効果が優れていることを意味する。また、改質剤にさらに二酸化チタンが加えられているポリ乳酸組成物(実施例4)は、改質剤が加えられていなく、二酸化チタンだけが加えられているポリ乳酸(比較例2)より、濃染効果が優れている。
【0033】
加工性の試験
実施例7、8
実施例7、8はそれぞれ、ポリ乳酸に2wt%、3wt%の改質剤(PBAT-FB)を加えて、混合した後、溶融紡糸することにより、部分延伸糸を形成する。紡糸過程の乾燥温度105℃、紡糸口(円形)の孔数72孔、紡糸温度220〜230℃、ダウ熱媒温度(Dow temperature)225℃、冷却風速0.55m/min、紡糸油剤濃度(Oil per unit)0.6%、巻取り速度2780m/min、吐出量40.4g/minで、130d/72fの部分延伸糸を得た。この部分延伸糸をMurata仮撚機を用いて、加工速度450m/min、延伸率DR1/DR2=1.75で加工して、75d/72fの加工糸を得た。
【0034】
実施例9
実施例9は4wt%の改質剤(PBAT-SD)とポリ乳酸と混合して、前記溶融紡糸と仮撚工程に従って加工して、部分延伸糸と加工糸を得た。
【0035】
比較例3
比較例3は改質剤が加えられていないポリ乳酸を前記溶融紡糸と仮撚工程に従って加工して、部分延伸糸と加工糸を得た。
【0036】
実施例7、8、9の溶融紡糸と仮撚加工により、正常な外見と機械強度の部分延伸糸と加工糸を得ることができる。また、比較例3と比べて、本発明のポリ乳酸組成物の紡糸性と仮撚加工性が良いので、改質剤の添加がポリ乳酸組成物の紡糸性と仮撚加工性に悪影響を与えていないことが分かる。
【0037】
繊維の染色性と洗濯堅牢度
実施例7、8、9及び比較例3で得られた加工糸を織物を製織してから、分散染料(茶色、青色)を用いて110℃で、浴比1:15、40分間染色を行なった後、それぞれ染色L値を測定する。ここで、染色濃度は2.5%o.w.f.(on the weight of fabric)である。また、実施例8と比較例3の染色力度(color strength)を測定して、結果を表7に示す。
【0038】
そして、実施例7、8及び比較例3の織物を分散染料(茶色、青色)を用いて浴比1:15、110℃の条件で、40分間染色を行なった後、還元洗濯条件70℃、洗濯15分間、且つ130℃で定形1.5分間、ISO-105C06により洗濯堅牢度を測定して、結果を表7に示す。
【0039】
【表7】

【0040】
表7に示したデータから明らかなように、実施例7、8の染色L値は比較例3の染色L値より低くて、濃染効果が優れていることを意味する。また、染色力度については、比較例3の織物の測定値を基準としたら、実施例8の測定値148.70(茶色染料で染色)と150.70(青色染料で染色)は基準100を超えるので、濃色に染色された。即ち、染色L値と染色力度から明らかなように、改質剤が加えられているポリ乳酸組成物から形成された加工糸は濃色に染色されることができ、濃染効果が優れていることを意味する。また、洗濯堅牢度の結果から明らかなように、改質剤が加えられている実施例7、8の洗濯堅牢度は3.0級以上に至って、産業上の応用レベルにも達する。
【0041】
さらに、実施例9で得られた加工糸を織物を製織してから、上述のように、それぞれ青色、茶色分散染料を用いて染色を行なった後、染色力度を測定する。その結果、青色分散染料での測定値は163.03であり、茶色分散染料での測定値は167.24である。なお、青色分散染料で染色された織物の洗濯堅牢度を測定して、実施例9の洗濯堅牢度は比較例3並みのレベルに達することができる。
【0042】
生分解性の試験
CNS 14432(ISO 14855、ASTM D5338)により、実施例7で得られた濃染性の繊維(加工糸)に対し生分解性の試験を行う。生分解性の試験で得られた生分解率データは濃染性の繊維内の有機炭素から二酸化炭素に転化されるパーセンテージを示し、結果を表8に示す。表8に示したデータから明らかなように、本発明の濃染性の繊維は180日内に生分解率が90%の基準に至ることができる。
【0043】
【表8】

【0044】
*:二酸化炭素の排出量から計算するパーセンテージ。
【0045】
上記結果より、本発明のポリ乳酸組成物を紡糸することにより形成され得た繊維が前記のような従来技術の問題点が解消でき、即ち、染料の濃度を3%以上o.w.f.まで上げなくても、低い染色L値を得ることができ、濃色染色ができるので、優れた濃染性および染色堅牢度や洗濯堅牢度を有することが確認され、本発明の目的が達成される。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定して狭義に解釈されるものではなく、即ち本発明の精神の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
叙上のように、本発明の組成物及び製造方法により、濃染性が優れ、且つ工業生産の実用上に問題がない繊維が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分とするポリ乳酸の中に、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル及び脂肪族-芳香族コポリエステルの群から選ばれた少なくとも1種の改質剤が混合されているポリ乳酸組成物から構成されていて、前記改質剤を含んでいないポリ乳酸組成物からなるポリ乳酸繊維と同じ濃度で染色されると、該ポリ乳酸繊維より低い染色L値を得ることができることを特徴とする濃染性の改質ポリ乳酸繊維。
【請求項2】
主成分とするポリ乳酸の中に、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル及び脂肪族-芳香族コポリエステルの群から選ばれた少なくとも1種の改質剤が、組成物の総重量を基準として、1〜15重量%で混合されているポリ乳酸組成物から構成されていて、前記改質剤を含んでいないポリ乳酸組成物からなるポリ乳酸繊維と同じ濃度で染色されると、該ポリ乳酸繊維より低い染色L値を得ることができることを特徴とする濃染性の改質ポリ乳酸繊維。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルは、下記構造:
【化1】

の繰り返し単位を含んでおり、また、式中におけるR、Rが同じ又は異なるC〜C40直鎖又は分枝鎖アルキル基であることを特徴とする請求項2に記載の濃染性の改質ポリ乳酸繊維。
【請求項4】
前記脂肪族-芳香族コポリエステルは、下記構造:
【化2】

の繰り返し単位を含んでおり、また、式中において、1≦m≦40、1≦n≦40、R、R、Rが同じ又は異なるC〜C40直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、ArはC〜C20芳香族基であることを特徴とする請求項2に記載の濃染性の改質ポリ乳酸繊維。
【請求項5】
前記芳香族ポリエステルは、下記構造:
【化3】

の繰り返し単位を含んでおり、また、式中において、1≦m≦40、1≦n≦40、RはC〜C40直鎖又は分枝鎖アルキル基、又はC〜C20芳香族基、RはC〜C40直鎖又は分枝鎖アルキル、Ar、Arは同じ又は異なるC〜C20芳香族基であることを特徴とする請求項2に記載の濃染性の改質ポリ乳酸繊維。
【請求項6】
前記改質剤の量は、組成物の総重量を基準として、1〜10重量%であることを特徴とする請求項2に記載の濃染性の改質ポリ乳酸繊維。
【請求項7】
前記改質剤の量は、組成物の総重量を基準として、1〜5重量%であることを特徴とする請求項6に記載の濃染性の改質ポリ乳酸繊維。
【請求項8】
前記脂肪族ポリエステルは、30℃〜140℃の範囲内の融点を有することを特徴とする請求項3に記載の濃染性の改質ポリ乳酸繊維。
【請求項9】
前記脂肪族-芳香族コポリエステルは、50℃〜200℃の範囲内の融点を有することを特徴とする請求項4に記載の濃染性の改質ポリ乳酸繊維。
【請求項10】
前記芳香族ポリエステルは、110℃〜200℃の範囲内の融点を有することを特徴とする請求項5に記載の濃染性の改質ポリ乳酸繊維。
【請求項11】
改質剤の総重量を基準として、4〜10重量%の二酸化チタンが加えられていることを特徴とする請求項2に記載の濃染性の改質ポリ乳酸繊維。
【請求項12】
主成分とするポリ乳酸の中に、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル及び脂肪族-芳香族コポリエステルの群から選ばれた少なくとも1種の改質剤が、組成物の総重量を基準として、1〜15重量%で混合されていて、それが繊維に構成されてから前記改質剤を含んでいないポリ乳酸組成物からなるポリ乳酸繊維と同じ染色濃度で染色されると、該ポリ乳酸繊維より低い染色L値を得ることができることを特徴とする濃染性の改質ポリ乳酸繊維構成用の組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物を溶融紡糸することにより、その単糸繊度が1〜10デニールの範囲内、且つ断面が丸断面、楕円断面、三葉断面、三角断面、犬骨(dog-boned)断面、扁平断面又は中空断面である部分延伸糸を形成してから繊維数36、48、72、108又は144に集束することを特徴とする濃染性の改質ポリ乳酸繊維の製造方法。
【請求項14】
前記部分延伸糸を更に仮撚工程により加工して加工糸を形成することを特徴とする請求項13に記載の濃染性の改質ポリ乳酸繊維の製造方法。

【公開番号】特開2008−7923(P2008−7923A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344375(P2006−344375)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(505037888)遠東紡織股▲分▼有限公司 (14)
【Fターム(参考)】