濃淡燃焼バーナ
【課題】 たとえ製造ばらつき等が生じたとしても、淡炎孔に淡混合気を供給するための供給通路と、濃炎孔に濃混合気を供給するための供給通路との両者間のシール性を確実に発揮させて、互いに確実に区画し得る濃淡燃焼バーナを提供する。
【解決手段】 中央濃バーナ部を形成するための第3プレート部材6として、一対のプレート部65,65が下端部60を折り曲げ線としてV字状に折り曲げて形成する。中央濃バーナ部の幅方向両側位置で淡炎孔を形成する淡バーナ部を形成するための一対の第1プレート部材4,4の長手方向両側位置の側縁42,42間にスリット部423を区画形成する。V字状の第3プレート部材6を下端部60からスリット部423に押し込むことで、第1プレート部材4,4間に介装させて、復元力を作用させた状態で密着させる。
【解決手段】 中央濃バーナ部を形成するための第3プレート部材6として、一対のプレート部65,65が下端部60を折り曲げ線としてV字状に折り曲げて形成する。中央濃バーナ部の幅方向両側位置で淡炎孔を形成する淡バーナ部を形成するための一対の第1プレート部材4,4の長手方向両側位置の側縁42,42間にスリット部423を区画形成する。V字状の第3プレート部材6を下端部60からスリット部423に押し込むことで、第1プレート部材4,4間に介装させて、復元力を作用させた状態で密着させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃炎孔や淡炎孔を備えた濃淡燃焼バーナに関し、特に、プレス成形等で所定形状に形成した薄板部材を互いに接合したり溶着したりすることにより全体形状が扁平な濃淡燃焼バーナを形成するにあたり、濃炎孔への濃混合気の供給通路と、淡炎孔への淡混合気の供給通路とを互いに確実に区画してリーク発生等のおそれを解消し得る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低NOx化を図るために空気比が1よりも大の淡混合気を淡炎孔にて燃焼させる一方、燃焼火炎の安定化を図るために空気比が1よりも小の濃混合気を燃焼させる濃炎孔を淡炎孔に隣接させるようにするという濃淡燃焼バーナが種々提案されている。そして、このような濃淡燃焼バーナとして、プレス成形等で所定形状に形成した薄板部材を互いに接合したり溶着したりすることにより全体形状が扁平な濃淡燃焼バーナを形成することが提案されている(例えば特許文献1,2参照)。特に、特許文献1では、一枚の薄板素材を複数回に亘り折り曲げ加工することで、個々の部材への切断工程や、それらの接合・溶着工程の工数低減化を図ることが提案され、特許文献2では面同士の接合に代えてリブ同士の凹凸嵌合によりシール性の確実化を図ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−48312号公報
【特許文献2】特開2003−269707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、薄板材料から形成される各部材には製造過程において寸法バラツキが発生するおそれがあり、特に扁平形状の濃淡燃焼バーナを形成するにあたり、厚み方向において、本来は密着する筈の密接部位が単に接触するだけで間に微小な隙間が生じる可能性も想定される。又、特に前記の扁平形状の濃淡燃焼バーナを形成するにあたり、長手方向において、外側部材の内側に内側部材を入れ込むなどの組み付け工程になる場合には、その内側部材の製造過程においてその長手方向寸法が短めにばらつくと、外側部材に対する内側部材の長手方向位置が安定せず、外側部材と内側部材との間の密着接合が本来意図する設計通りにはならない可能性も想定される。万一、このような事態が生じると、本来意図する程度のシール性、あるいは、目指すべき程度のシール性を発揮することができないことになりかねないおそれがある。このような不都合に起因して淡混合気の供給通路と濃混合気の供給通路との間で漏れが生じると、淡混合気への濃混合気の混入、あるいは、濃混合気への淡混合気の混入が生じて、本来意図する燃焼状態を維持し得なくなる。
【0005】
例えば、出願人において開発を進めている濃淡燃焼バーナの組み付け状況の例を図16に示すように、2枚の第3プレート部材600,600を互いに接合して中央濃バーナ部を構成したものを厚み方向の中央位置に配置し、これを厚み方向の両側からそれぞれ第1プレート部材400を被せ、さらに各第1プレート部材400の厚み方向外側から第2プレート部材500を被せ、長手方向両側の接合縁で固定(例えば溶着)するようにした場合、前記の第3プレート部材600,600の長手方向寸法誤差が短い側にばらつくと、一対の第3プレート部材600,600で構成される中央濃バーナ部と、これを囲む一対の第1プレート部材400,400により構成される淡バーナ部との長手方向における相対位置関係が安定せず、これに起因して厚み方向における密接予定部位の品質も安定しないことが想定されることになる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、種々のプレート部材を組み合わせることで全体形状が扁平な濃淡燃焼バーナを形成する場合に、たとえ製造ばらつき等が生じたとしても、淡炎孔に淡混合気を供給するための供給通路と、濃炎孔に濃混合気を供給するための供給通路との両者間のシール性を確実に発揮させて、互いに確実に区画し得る濃淡燃焼バーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、中央のプレート部材を両側から他のプレート部材で覆うように重ね合わせることにより相対向するプレート部材間に濃混合気又は淡混合気の供給通路を区画形成するようにした濃淡燃焼バーナを対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、上端で開口して相対向面間に所定の隙間を区画形成した外側のプレート部材と、この外側のプレート部材の相対向面間に介装された内側のプレート部材とを備えることとし、前記外側のプレート部材には長手方向両側の側縁位置に前記内側のプレート部材の側縁の厚みに相当する内幅を有し上方に開口するスリット部を形成する。そして、前記内側のプレート部材を、一枚物のプレート素材の中央線位置において折り曲げられて一対のプレート部がV字状に相対向するように形成されたものとし、折り曲げ部を下端部にして前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込むことにより、前記内側のプレート部材の側縁が前記スリット部内で挟み付けられて互いに密着した状態に組み付けられる構成とした(請求項1)。
【0008】
本発明の場合、内側のプレート部材を構成する一対のプレート部に対し下端部の折り曲げ部位から元のV字状に開かせようとするスプリングバックが金属薄板素材の復元力に基づき作用し、この復元力を受けて各プレート部の外面が相対向する外側のプレート部材の相対向面に対し押し付けられることになる。このため、前記各プレート部と外側のプレート部材とを互いに確実に密着させてシール性を高めた状態に維持させることが可能となり、これにより、内側のプレート部材の内部に形成される供給通路と、内側のプレート部材と外側のプレート部材との間に形成される供給通路とを互いに区画・遮断した状態に維持させて、両供給通路に濃混合気と淡混合気とを個別に供給したとしてもの相互間の混入の発生を確実に防止することが可能となる。
【0009】
この濃淡燃焼バーナにおいては、中央位置において長手方向に延びるように配列された中央濃炎孔を両側から挟むように2列の淡炎孔が配列され、かつ、両側の淡炎孔をさらに外側から挟むように2列の外側濃炎孔が配列されるように、前記中央濃炎孔を備える中央濃バーナ部を前記内側のプレート部材により形成し、この中央濃バーナの両外側位置で前記外側濃炎孔を形成する淡バーナ部を前記外側のプレート部材により形成し、さらに、前記外側濃炎孔を別のプレート部材により形成することができる。この場合、前記外側のプレート部材の相対向面間に区画形成される淡混合気の供給通路に対し、前記内側のプレート部材の下端部を上下方向途中位置において露出状態で配設し、この内側のプレート部材の下端部によって前記淡混合気の供給通路を前記2列の淡炎孔に個別に延びるように分割することもできる(請求項2)。このようにすることにより、淡混合気の供給通路に露出状態で配設される中央濃バーナ部の下端部が1枚のプレート素材を折り曲げることで形成されているため、継ぎ目や接合面の存在もなく、このため、淡混合気の供給通路と、濃混合気が供給される中央濃バーナ部内とを確実に遮断して高度のシール性を発揮した状態に維持し得ることになる。
【0010】
又、前記濃淡燃焼バーナにおいて、前記内側のプレート部材の一対のプレート部の外面から前記外側のプレート部材の相対向面の側に向けて突出し、前記各プレート部の外面と、これに相対向する前記外側の相対向面との間に区画形成される淡混合気の供給通路の境界に沿って延びる凸リブを形成し、前記内側のプレート部材を前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込むことにより、前記凸リブを前記外側のプレート部材の相対向面に対し当接状態で嵌合させるようにすることができる(請求項3)。このようにすることにより、内側のプレート部材内の濃混合気と、外側のプレート部材内の淡混合気との間を確実に遮断して高度のシール性を発揮した状態に維持させることが可能となる。
【0011】
さらに、前記外側のプレート部材の長手方向他側に位置するスリット部に、このスリット部の端面から突出する微小な突起を形成し、前記突起として、前記内側のプレート部材が前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込まれることにより当たって、前記内側のプレート部材を長手方向他側から一側に向けて微小移動させる構成とすることができる(請求項4)。このようにすることにより、内側のプレート部材の長手方向寸法が製造バラツキにより短めに形成されてしまったとしても、内側のプレート部材の側縁を外側のプレート部材の上端開口からスリット部内に押し入れていけば、内側のプレート部材の側縁が前記突起に当たることで、前記の製造バラツキ分だけ内側のプレート部材が長手方向一側に移動し、これにより、内側のプレート部材を外側のプレート部材に対し設計上の所定位置に位置付けることが可能となる。これにより、製造バラツキがたとえ生じたとしても設計上のシール性を担保することが可能となる。
【0012】
又、前記外側のプレート部材の長手方向他側に位置するスリット部として、このスリット部の端面が上から下に向けて僅かに下り勾配となるスロープ状に延びるように形成し、前記スリット部として、前記内側のプレート部材が前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込まれることにより、前記内側のプレート部材を案内して長手方向他側から一側に向けて微小移動させる構成とすることもできる(請求項5)。このようにすることにより、前記の突起と同様の作用を得ることが可能となる。すなわち、内側のプレート部材の側縁を外側のプレート部材の上端開口からスリット部内に押し入れていけば、内側のプレート部材の側縁がスロープ状のスリット部に案内されて、前記の製造バラツキ分だけ内側のプレート部材が長手方向一側に移動し、これにより、内側のプレート部材を外側のプレート部材に対し設計上の所定位置に位置付けることが可能となる。これにより、製造バラツキがたとえ生じたとしても設計上のシール性を担保することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上、説明したように、本発明の濃淡燃焼バーナによれば、内側のプレート部材を構成する一対のプレート部に対し下端部の折り曲げ部位から元のV字状に開かせようとするスプリングバックを金属薄板素材の復元力に基づき作用させることができ、この復元力を受けて各プレート部の外面を相対向する外側のプレート部材の相対向面に対し押し付けた状態にすることができる。このため、前記各プレート部と外側のプレート部材とを互いに確実に密着させてシール性を高めた状態に維持させることができ、これにより、内側のプレート部材の内部に形成される供給通路と、内側のプレート部材と外側のプレート部材との間に形成される供給通路とを互いに区画・遮断した状態に維持させて、両供給通路に濃混合気と淡混合気とを個別に供給したとしてもの相互間の混入の発生を確実に防止することができるようになる。
【0014】
請求項2によれば、前記外側のプレート部材の相対向面間に区画形成される淡混合気の供給通路に対し、前記内側のプレート部材の下端部を上下方向途中位置において露出状態で配設し、この内側のプレート部材の下端部によって前記淡混合気の供給通路を前記2列の淡炎孔に個別に延びるように分割することで、中央濃バーナ部の下端部を淡混合気の供給通路に露出状態で配設したとしても、その下端部が1枚のプレート素材を折り曲げることで形成されているため、継ぎ目や接合面の存在もなく、このため、淡混合気の供給通路と、濃混合気が供給される中央濃バーナ部内とを確実に遮断して高度のシール性を発揮した状態に維持することができるようになる。
【0015】
又、請求項3によれば、前記内側のプレート部材の一対のプレート部の外面から前記外側のプレート部材の相対向面の側に向けて凸リブを形成することで、内側のプレート部材内の濃混合気と、外側のプレート部材内の淡混合気との間を確実に遮断して高度のシール性を発揮した状態に維持させることができるようになる。
【0016】
さらに、請求項4によれば、前記スリット部に微小な突起を形成することで、内側のプレート部材の長手方向寸法が製造バラツキにより短めに形成されてしまったとしても、内側のプレート部材の側縁を外側のプレート部材の上端開口からスリット部内に押し入れていけば、内側のプレート部材の側縁が前記突起に当たることで、前記の製造バラツキ分だけ内側のプレート部材が長手方向一側に移動し、これにより、内側のプレート部材を外側のプレート部材に対し設計上の所定位置に位置付けることができるようになる。これにより、製造バラツキがたとえ生じたとしても設計上のシール性を担保することができるようになる。
【0017】
又、請求項5によれば、前記スリット部の端面として上から下に向けて僅かに下り勾配となるスロープ状に延びるように形成することで、内側のプレート部材の側縁を外側のプレート部材の上端開口からスリット部内に押し入れていけば、内側のプレート部材の側縁がスロープ状のスリット部に案内されて、前記の製造バラツキ分だけ内側のプレート部材が長手方向一側に移動させて、内側のプレート部材を外側のプレート部材に対し設計上の所定位置に位置付けることができるようになる。これにより、製造バラツキがたとえ生じたとしても設計上のシール性を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の濃淡燃焼バーナを組み込んだ燃焼装置の例を示し、図1(a)は斜視図状態で示す説明図であり、図1(b)は断面図状態で示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態の濃淡燃焼バーナの斜視図である。
【図3】図2のバーナの正面図である。
【図4】図4(a)は図2のバーナの平面図であり、図4(b)は図4(a)のF−F部拡大図である。
【図5】図3のA−A線における断面で切断した状態の部分斜視図である。
【図6】図6(a)は図3のB−B線で切断した状態で示す斜視図であり、図6(b)は図3のC−C線で切断した状態で示す斜視図である。
【図7】図7は図3のA−A線における拡大断面説明図である。
【図8】中央濃バーナ部を構成する1つの第3プレート部材、この第3バーナの両側に配設される淡炎孔列を構成する一対の炎孔部材、一対の第1プレート部材、及び、一対の第2プレート部材の組み付け手順を説明するために、それぞれを分解した状態で示す斜視図である。
【図9】1枚物のプレート部材を折曲することで中央濃バーナ部を構成するための第3プレート部材の展開状態を示す斜視図である。
【図10】図3のD−D矢視部の部分拡大説明図である。
【図11】第3プレート部材を、一対の第1プレート部材により形成されるスリット部に対し押し込むことで組み付ける原理を、図10のG−G線において示す断面説明図である。
【図12】図2のE−E線で分離した状態の正面説明図である。
【図13】図12のH−H線における拡大断面説明図である。
【図14】図2のE−E線で分離した状態で第3プレート部材の組み付け過程を示す分解斜視図である。
【図15】図14のI−I線における拡大断面説明図である。
【図16】本発明が解決すべき課題を説明するための説明図であって、中央濃バーナ部を一対のプレート部材を互いに接合することで形成し、これを他のプレート部材で外側を順次囲むように接合して濃淡燃焼バーナを組み付ける場合の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る濃淡燃焼バーナを適用した燃焼装置2を示す。この燃焼装置2は、缶体21内において、所定数の濃淡燃焼バーナ3,3,…を横に隣接させて並べた状態のバーナセットが固定されたものである。缶体21の上部空間は燃焼空間22とされ、下部空間23に送風ファン24からの燃焼用空気が供給される一方、各濃淡燃焼バーナ3の一側にガスマニホールド25(図1(b)にのみ示す)が配設され、このガスマニホールド25から1つの濃淡燃焼バーナ3に対し2つのガスノズル26,27が突出されている。一方(下段)のガスノズル26は濃淡燃焼バーナ3の第1供給口31に向けて、他方(上段)のガスノズル27は濃淡燃焼バーナ3の第2供給口32に向けて、それぞれ燃料ガスを噴出させ得るようになっている。そして、下部空間23からの空気を各ガスノズル26,27の周囲から送風ファン24の吐出圧により押し込んで、燃料ガス及び空気の双方を第1及び第2供給口31,32に供給し得るようになっている。この際、第1供給口31はかなり大径に設定されて、より多くの空気を押し込むようにされる一方、第2供給口32は比較的小径に設定されて、押し込む空気の量が絞られるようにされている。このようにして、第1供給口31からは供給される燃料ガスに加え、その燃料ガス量に比して1.0倍よりも大きい所定の空気比となる量の空気が内部に供給される一方、第2供給口32からは同様に供給される燃料ガスに加え、その燃料ガス量に比して1.0倍よりも小さい所定の空気比となる量の空気が内部に供給されるようになっている。なお、下部空間23と濃淡燃焼バーナ3,3,…とを仕切るように配設された整流板28(図1(b)参照)には多数の小孔が開けられ、この小孔を通して相隣接する濃淡燃焼バーナ3,3間に二次空気が供給されるようになっている。
【0021】
濃淡燃焼バーナ3は、図2に示すように、金属板素材を用いてプレス加工及び折り曲げ加工を経て所定形状に加工された3種類のプレート部材、すなわち、一対の第1プレート部材4,4、一対の第2プレート部材5,5、1つのプレート部材6と、一対の炎孔形成部材7,7とを用い、厚みを構成する幅方向の中央位置の第3プレート部材3を挟んで第1プレート部材4,4、第2プレート部材5,5が後述の如く重ねられた状態で形成されたものである。このような濃淡燃焼バーナ3は、全体として扁平状に形成されている。図3の左右方向を長手方向(長さ方向)、図3の紙面に直交する方向を短手方向(幅方向)、図3の上下方向を上下方向というとすれば、長手方向一側(図3の左側)において下側位置に第1供給口31が開口し、上側位置に第1供給口31よりも小径の第2供給口32が開口され、上端面に燃焼火炎が形成される炎孔列が長手方向に延びるように形成されている。炎孔列としては、図2又は図4(a),(b)に示すように、短手方向中央位置において狭幅の濃炎孔列33が長手方向全長に延び、この濃炎孔列33の短手方向両側位置のそれぞれにおいて比較的広幅の淡炎孔列34が長手方向全長に延び、両側の淡炎孔列34,34のさらに外側位置においてそれぞれ狭幅の濃炎孔列35が長手方向全長に延びている。そして、淡炎孔列34,34の各淡炎孔341には第1供給口31から供給されて混合された淡混合気が導かれ、この淡混合気により淡火炎が形成され、中心位置の濃炎孔列33の各濃炎孔331と、両外側位置の2列の濃炎孔列35,35の各濃炎孔351とには第2供給口32から供給されて混合された濃混合気が導かれ、この濃混合気により濃火炎が形成されるようになっている。
【0022】
図5に示すように、前記の濃炎孔列33は第3プレート部材6により形成される。すなわち、第3プレート部材6を構成するプレート部65,65が所定の狭い間隔で相対向され、その内面間に濃混合気の供給通路が形成されて上端面の濃炎孔列33に連通される。このようにして第3プレート部材6により中央濃バーナ部3aが形成されることになる。この中央濃バーナ部3aを間に挟み込んだ状態で短手方向両側から一対の第1プレート部材4,4が相対向するように配置され、両側の第1プレート部材4,4と中央濃バーナ部3aとの間の2つの上端開口内にそれぞれ淡炎孔形成部材7が介装されている。これにより、中央濃バーナ部3aを短手方向両側から囲んで上端面の2列の淡炎孔列34に淡火炎を形成する淡バーナ部3bが形成されることになる。そして、淡バーナ部3bの各第1プレート部材4の外側に第2プレート部材5が被せられて、各第2プレート部材5の内面と相対向する第1プレート部材4の外面との間に形成される供給通路を通して外側の濃炎孔列35まで濃混合気が供給される。これにより、外側濃バーナ部3cが形成されることになる。
【0023】
前記の淡バーナ部3bの形成により、淡混合気(図6(a)の点線の矢印を参照)が長手方向一側の第1供給口31から筒部36を通して他側に送られ、他側から上側に向きを変え、一対の第1プレート部材4,4間の空間が第3プレート部材6によって区画形成(分割)されてなる2つの内部空間37,37(図5及び図6(a),(b)参照)を通して、上端の淡炎孔列34,34まで供給されるようになっている。前記の筒部36と内部空間37,37とにより淡混合気を2列の淡炎孔列34,34に供給する淡混合気供給通路が構成される他、筒部36は第1供給口31から供給される燃料ガスと空気との混合室及び導入通路(淡混合気導入通路)の役割をも果たすようになっている。又、第3プレート部材6が後述の第1供給通路を区画形成するための形成部材を構成する。
【0024】
第2供給口32からの濃混合気は、筒部38(図6(a)参照)を通して奥方の閉塞端まで導かれた後、この筒部38の閉塞端側から中央濃バーナ部3a及び左右両側の外側濃バーナ部3cのそれぞれに供給されるようになっている。すなわち、筒部38の閉塞端側には、中央濃バーナ部3aを構成する第3プレート部材6の下端部60(図7参照)が上から差し込まれて筒部38内で宙に浮いた状態に突出した突出部分として形成され、この下端部60で折り曲げられた両プレート部65,65のそれぞれに連通孔61が形成され、この両連通孔61,61により筒部38内と中央濃バーナ部3aの内部空間62とが連通されており、筒部38内の濃混合気が各連通孔61及び内部空間62を通して濃炎孔列33に供給されるようになっている。一方、筒部38を構成する一対の第1プレート部材4,4にも連通孔41,41,…が形成されており、一側(図7の右側)の第1プレート部材4の各連通孔41により筒部38内が一側の第1プレート部材4と同じ側の第2プレート部材5との間の内部空間51と連通され、他側(図7の左側)の第1プレート部材4の各連通孔41により筒部38内が他側の第1プレート部材4と同じ側の第2プレート部材5との間の内部空間52と連通されている。これにより、筒部38内の濃混合気が一側の各連通孔41及び内部空間51を通して一側の濃炎孔列35(図5参照)に供給される一方、筒部38内の濃混合気が他側の各連通孔41及び内部空間52を通して他側の濃炎孔列35に供給されるようになっている。なお、前記の内部空間51,52,62は筒部38と共に濃混合気の供給通路を構成する他、前記の筒部38は第2供給口32から供給される燃料ガスと空気との混合室及び導入通路(濃混合気導入通路)の役割をも果たすようになっている。つまり内部空間51が第2供給通路を構成し、内部空間52が第3供給通路を構成し、内部空間62が第1供給通路を構成する。
【0025】
なお、連通孔61の形成数や開口面積、あるいは、連通孔41の形成数や開口面積は、各濃炎孔列35,33に供給される濃混合気の流量と圧力が、いずれも同じになるように設定すればよい。例えば、一側の濃炎孔列35、他側の濃炎孔列35、及び、濃炎孔列33のそれぞれの開口面積を互いに同じになるように形成する一方、筒部38にそれぞれ連通する一側の連通孔41,41、他側の連通孔41,41、及び、連通孔61,61のそれぞれの合計開口面積を互いに同じになるように形成すればよい。
【0026】
次に、以上の濃淡燃焼バーナの組み付け構造や、シール性確保に係る構造について説明する。組み付け手順について、図8を参照しつつ説明すると、まず、第3プレート部材6と、この第3プレート部材6を組み込むための淡バーナ部3bとを準備する。第3プレート部材6(図9参照)は、薄板素材に対し相対向する一側面になるプレート部65と、他側面になるプレート部65との双方をプレス成形した一枚物のプレート部材6aを用いてV字状に折り曲げることで形成する。すなわち、プレート部材6aは中央を通る折り曲げ線Tを挟んで両側にプレート部65,65が線対称配置に配置された状態に形成され、共に凹形状部分を同じ向き(図9では上向き)に向いた状態になるように形成されている。そして、折り曲げ線Tを中心にして両側のプレート部65,65を共に内向き(一点鎖線の矢印の向き)に相対向させるように折り曲げる。折り曲げ後の解放状態では、折り曲げ部位が下端部60となり、この下端部60から上方に延びる両側のプレート部65,65が完全に接合した状態にはならずに弾性復元力により上端同士が僅かに離れて両プレート部65,65がV字状に開いた状態となる。
【0027】
一方、淡バーナ部3b(図8参照)は、一対の第1プレート部材4,4を相対向させて両側縁42,42、43,43同士及び下端縁44,44同士を溶着接合し、次いで、上向きに開口した濃炎孔列33となる部分に一対の炎孔形成部材7,7を幅方向両側位置に上から嵌め込むことで、第1及び第2の両供給口31,32が側方に開口するのみで、他の両側縁42,42、43,43及び下端縁側44,44が密閉された淡バーナ部3bが形成されることになる。なお、前記の炎孔形成部材7,7はこの工程ではなくて後の工程において嵌め込むようにすることもできる。又、この工程において第2プレート部材5を第1プレート部材4,4の外側に溶着接合しておくようにしてもよいし、後工程で溶着接合させるようにしてもよい。さらに、溶着の代わりに、この段階は取りあえず治具等で仮締めしておき、後の工程で溶着するようにすることもできる。溶着とは点状のスポット溶接や、線状の溶接等を施せばよい。
【0028】
淡バーナ部3bを構成する両第1プレート部材4,4の長手方向の両側縁42,42、43,43は、両側縁42,42について図10に示すように、両者が互いに密着して溶着等の対象となる端縁421,421と、両端縁421,421に隣接して内側に段押しプレス加工により形成された段差部422,422とを備えており、両側縁42,42が互いに接合されることで両段差部422,422の相対向面間に所定の内幅のスリット部423が形成されるようになっている。このスリット部423の内幅は、第3プレート部材6の両プレート部65の長手方向両側縁651,651を幅方向両側から挟み付けて互いに密着させた状態で収容し得るように設定されている。すなわち、スリット部423の内幅は、前記両プレート部65の長手方向両側縁651,651の板厚の和に相当する寸法に設定されている。
【0029】
このため、図8及び図11に示すように、端バーナ部3bの上端開口に対しV字状に折り曲げた状態の第3プレート部材6を下端部60から嵌め込んでいくと、第3プレート部材6の両側縁651,651が前記のスリット部423に入り込み、さらに第3プレート部材6を押し込むことで、両側縁651,651が挟み付けられてV字状から強制的に接触して直線状に互いに接合した状態(図10参照)で第3プレート部材6が組み付けられることになる。以上で濃淡燃焼バーナが完成する。
【0030】
このような組み付け構造の濃淡燃焼バーナの場合、特に中央濃バーナ部3aを構成するプレート部65,65に対し下端部60の折り曲げ部位から元のV字状に開かせようとする復元力(スプリングバック)が作用し、この復元力を受けて各プレート部65の幅方向外面(例えば図5,図7にPで示す部位参照)が相対向する第1プレート部材4の幅方向内面に対し押し付けられることになる。前記の復元力は、たとえ長手方向の両側縁同士が挟み付けられて密着されてはいても、両側縁の間の部位を例えば鼓状に短手方向の両側にはらみ出させるように作用することになる。このため、前記各プレート部65と第1プレート部材4とを互いに確実に密着させてシール性を高めた状態に維持させることができるようになる。これにより、濃混合気が流れる筒部38(例えば図5参照)内と、淡混合気が流れる内部空間37,37とを互いに区画・遮断した状態に維持させることができ、濃混合気と淡混合気との相互間の混入の発生を確実に防止することができるようになる。
【0031】
しかも、中央濃バーナ3aの下端部60が1枚のプレート部材6aを折り曲げることで形成されているため、淡バーナ3bの筒部36(例えば図12参照)により構成される淡混合気の供給通路が前側(図12の右側)の第1供給口31から後側(図12の左側)まで延びた後に上方に屈曲する部位において、前記下端部60が前記淡混合気の供給通路を2つの内部空間37,37(図13参照)に分割するように露出状態で配設されていても、筒部36側の淡バーナ部3bと中央濃バーナ3aとの間を確実に遮断して高度のシール性を発揮した状態に維持することができる。
【0032】
その上に、次のような組み付け構造の採用により、前記のシール性のより一層の向上及び確実化、これに伴う濃混合気と淡混合気との相互間の混入発生防止のより確実化を図ることができるようになる。すなわち、特に長手方向他側(後側;図12の左側)において前記のスリット部423を構成する段差部422,422は、上から下に向けて僅かに下り勾配となる微小角αのスロープ状に延びるように形成される一方、このスリット部423に上から押し入れられることになる第3プレート部材6の各プレート部65の長手方向他側(後側;図12の左側)の側縁651も同様のテーパ角度を有するように形成されている。
【0033】
このため、第3プレート部材6の長手方向寸法が製造バラツキにより短めに形成されてしまったとしても、前記の如く、第3プレート部材6(図8,図11参照)を淡バーナ部3bの上端開口から内部に下向きに嵌め込んでその側縁651,651をスリット部423に押し入れていけば、スロープ状のスリット部423に案内されて第3プレート部材6が前記の製造バラツキ分だけ長手方向他側から一側(図12の左側から右側)に向けて微小量移動し、これにより、長手方向一側(前側;図12の右側)の側縁652,653を第1プレート部材4の側縁43に対し設計上の所定位置に位置付けることができるようになる。その上に、特に側縁653を側縁43の段差部431との関係で本来の設計上の位置に位置付けることでシール性を担保することができ、側縁653と側縁43との接合部位を介しての中央濃バーナ部3a内の濃混合気と淡バーナ部3b内の淡混合気との相互混入の発生を確実に阻止することができるようになる。これにより、中央濃バーナ部3aと淡バーナ部3bとの間のシール性や遮断性能の確実な担保に加えて、中央濃バーナ部3aの濃炎孔列33を淡バーナ部3bの淡炎孔列34との位置関係において確実に設計通りの相対位置に位置付けることができ、濃火炎による淡火炎の燃焼安定性を確実に担保することができるようになる。
【0034】
<第2実施形態>
図14及び図15は第2実施形態の濃淡燃焼バーナについて示すものである。第2実施形態は、第3プレート部材6を構成する両プレート部65,65のそれぞれに凸リブ654を形成して、シール性をより担保したものである。その点を除き、他の構成は第1実施形態と同じであるため、以下の説明では第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0035】
前記の凸リブ654は、第3プレート部材6の両プレート部65にそれぞれ形成されたものであり、淡バーナ部3bの供給通路を構成する内部空間37,37の境界位置に沿って突出するよう形成されたものである。すなわち、淡バーナ3bを構成する各第1プレート部材4には、その筒部36の後側から上方に屈曲して斜め上方に向けて前側に供給通路が延びるように内部空間37が区画形成されるようになっている。そのために筒部38の上側位置に逆三角形状の接合面(図5,図7に符号Pで示す接合面)45が形成され、この接合面45の境界である上辺の上側に当接するように、凸リブ654が各プレート部65において斜め上方に延びるように突出形成されている。
【0036】
このような凸リブ654は、第3プレート部材6を淡バーナ部3bに対し上から下に嵌め込んで組み付けることで(図14に実線と一点鎖線とで示す第3プレート部材6参照)、図15に示す如く接合面45の上辺に沿ってこの上辺を覆って嵌合した状態にされる。このため、第1実施形態で説明した如く各プレート部65の外面が外開き方向の復元力によって前記接合面45に密着した上に、その接合面45の上側境界線である上辺に沿って凸リブ654が嵌合することになり、筒部38側からの濃混合気と、淡バーナ部3b内の淡混合気との間を確実に遮断して高度のシール性を発揮した状態に維持させることができるようになる。
【0037】
<他の実施形態>
第1実施形態における段差部422を微少角度だけ斜めにスロープ状に延びるように形成する代わりに、段差部自体は鉛直に形成する一方、前記の微少角度に相当する微少な突起(例えば図14の符号424で示す突起参照)を段差部の一部に形成し、この突起に第3プレート部材6の側縁651,651が当たることで、第3プレート部材3の長手方向他側から一側(図14の左側から右側)に向けての微小量の移動調整を行い得るようにしてもよい。あるいは、前記の微少角度だけ斜めにスロープ状に延びる段差部422に対し、さらに前記の突起を追加するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
3 濃淡燃焼バーナ
4 外側のプレート部材
6 内側のプレート部材
33 中央の濃炎孔列(中央濃炎孔)
34 淡炎孔列(淡炎孔)
35 外側の濃炎孔列(外側濃炎孔)
37 内部空間(淡混合気の供給通路)
38 筒部(濃混合気の供給通路)
60 下端部
42 側縁
65 プレート部
423 スリット部
651 側縁
654 凸リブ
62 内部空間(濃混合気の供給通路)
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃炎孔や淡炎孔を備えた濃淡燃焼バーナに関し、特に、プレス成形等で所定形状に形成した薄板部材を互いに接合したり溶着したりすることにより全体形状が扁平な濃淡燃焼バーナを形成するにあたり、濃炎孔への濃混合気の供給通路と、淡炎孔への淡混合気の供給通路とを互いに確実に区画してリーク発生等のおそれを解消し得る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低NOx化を図るために空気比が1よりも大の淡混合気を淡炎孔にて燃焼させる一方、燃焼火炎の安定化を図るために空気比が1よりも小の濃混合気を燃焼させる濃炎孔を淡炎孔に隣接させるようにするという濃淡燃焼バーナが種々提案されている。そして、このような濃淡燃焼バーナとして、プレス成形等で所定形状に形成した薄板部材を互いに接合したり溶着したりすることにより全体形状が扁平な濃淡燃焼バーナを形成することが提案されている(例えば特許文献1,2参照)。特に、特許文献1では、一枚の薄板素材を複数回に亘り折り曲げ加工することで、個々の部材への切断工程や、それらの接合・溶着工程の工数低減化を図ることが提案され、特許文献2では面同士の接合に代えてリブ同士の凹凸嵌合によりシール性の確実化を図ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−48312号公報
【特許文献2】特開2003−269707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、薄板材料から形成される各部材には製造過程において寸法バラツキが発生するおそれがあり、特に扁平形状の濃淡燃焼バーナを形成するにあたり、厚み方向において、本来は密着する筈の密接部位が単に接触するだけで間に微小な隙間が生じる可能性も想定される。又、特に前記の扁平形状の濃淡燃焼バーナを形成するにあたり、長手方向において、外側部材の内側に内側部材を入れ込むなどの組み付け工程になる場合には、その内側部材の製造過程においてその長手方向寸法が短めにばらつくと、外側部材に対する内側部材の長手方向位置が安定せず、外側部材と内側部材との間の密着接合が本来意図する設計通りにはならない可能性も想定される。万一、このような事態が生じると、本来意図する程度のシール性、あるいは、目指すべき程度のシール性を発揮することができないことになりかねないおそれがある。このような不都合に起因して淡混合気の供給通路と濃混合気の供給通路との間で漏れが生じると、淡混合気への濃混合気の混入、あるいは、濃混合気への淡混合気の混入が生じて、本来意図する燃焼状態を維持し得なくなる。
【0005】
例えば、出願人において開発を進めている濃淡燃焼バーナの組み付け状況の例を図16に示すように、2枚の第3プレート部材600,600を互いに接合して中央濃バーナ部を構成したものを厚み方向の中央位置に配置し、これを厚み方向の両側からそれぞれ第1プレート部材400を被せ、さらに各第1プレート部材400の厚み方向外側から第2プレート部材500を被せ、長手方向両側の接合縁で固定(例えば溶着)するようにした場合、前記の第3プレート部材600,600の長手方向寸法誤差が短い側にばらつくと、一対の第3プレート部材600,600で構成される中央濃バーナ部と、これを囲む一対の第1プレート部材400,400により構成される淡バーナ部との長手方向における相対位置関係が安定せず、これに起因して厚み方向における密接予定部位の品質も安定しないことが想定されることになる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、種々のプレート部材を組み合わせることで全体形状が扁平な濃淡燃焼バーナを形成する場合に、たとえ製造ばらつき等が生じたとしても、淡炎孔に淡混合気を供給するための供給通路と、濃炎孔に濃混合気を供給するための供給通路との両者間のシール性を確実に発揮させて、互いに確実に区画し得る濃淡燃焼バーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、中央のプレート部材を両側から他のプレート部材で覆うように重ね合わせることにより相対向するプレート部材間に濃混合気又は淡混合気の供給通路を区画形成するようにした濃淡燃焼バーナを対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、上端で開口して相対向面間に所定の隙間を区画形成した外側のプレート部材と、この外側のプレート部材の相対向面間に介装された内側のプレート部材とを備えることとし、前記外側のプレート部材には長手方向両側の側縁位置に前記内側のプレート部材の側縁の厚みに相当する内幅を有し上方に開口するスリット部を形成する。そして、前記内側のプレート部材を、一枚物のプレート素材の中央線位置において折り曲げられて一対のプレート部がV字状に相対向するように形成されたものとし、折り曲げ部を下端部にして前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込むことにより、前記内側のプレート部材の側縁が前記スリット部内で挟み付けられて互いに密着した状態に組み付けられる構成とした(請求項1)。
【0008】
本発明の場合、内側のプレート部材を構成する一対のプレート部に対し下端部の折り曲げ部位から元のV字状に開かせようとするスプリングバックが金属薄板素材の復元力に基づき作用し、この復元力を受けて各プレート部の外面が相対向する外側のプレート部材の相対向面に対し押し付けられることになる。このため、前記各プレート部と外側のプレート部材とを互いに確実に密着させてシール性を高めた状態に維持させることが可能となり、これにより、内側のプレート部材の内部に形成される供給通路と、内側のプレート部材と外側のプレート部材との間に形成される供給通路とを互いに区画・遮断した状態に維持させて、両供給通路に濃混合気と淡混合気とを個別に供給したとしてもの相互間の混入の発生を確実に防止することが可能となる。
【0009】
この濃淡燃焼バーナにおいては、中央位置において長手方向に延びるように配列された中央濃炎孔を両側から挟むように2列の淡炎孔が配列され、かつ、両側の淡炎孔をさらに外側から挟むように2列の外側濃炎孔が配列されるように、前記中央濃炎孔を備える中央濃バーナ部を前記内側のプレート部材により形成し、この中央濃バーナの両外側位置で前記外側濃炎孔を形成する淡バーナ部を前記外側のプレート部材により形成し、さらに、前記外側濃炎孔を別のプレート部材により形成することができる。この場合、前記外側のプレート部材の相対向面間に区画形成される淡混合気の供給通路に対し、前記内側のプレート部材の下端部を上下方向途中位置において露出状態で配設し、この内側のプレート部材の下端部によって前記淡混合気の供給通路を前記2列の淡炎孔に個別に延びるように分割することもできる(請求項2)。このようにすることにより、淡混合気の供給通路に露出状態で配設される中央濃バーナ部の下端部が1枚のプレート素材を折り曲げることで形成されているため、継ぎ目や接合面の存在もなく、このため、淡混合気の供給通路と、濃混合気が供給される中央濃バーナ部内とを確実に遮断して高度のシール性を発揮した状態に維持し得ることになる。
【0010】
又、前記濃淡燃焼バーナにおいて、前記内側のプレート部材の一対のプレート部の外面から前記外側のプレート部材の相対向面の側に向けて突出し、前記各プレート部の外面と、これに相対向する前記外側の相対向面との間に区画形成される淡混合気の供給通路の境界に沿って延びる凸リブを形成し、前記内側のプレート部材を前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込むことにより、前記凸リブを前記外側のプレート部材の相対向面に対し当接状態で嵌合させるようにすることができる(請求項3)。このようにすることにより、内側のプレート部材内の濃混合気と、外側のプレート部材内の淡混合気との間を確実に遮断して高度のシール性を発揮した状態に維持させることが可能となる。
【0011】
さらに、前記外側のプレート部材の長手方向他側に位置するスリット部に、このスリット部の端面から突出する微小な突起を形成し、前記突起として、前記内側のプレート部材が前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込まれることにより当たって、前記内側のプレート部材を長手方向他側から一側に向けて微小移動させる構成とすることができる(請求項4)。このようにすることにより、内側のプレート部材の長手方向寸法が製造バラツキにより短めに形成されてしまったとしても、内側のプレート部材の側縁を外側のプレート部材の上端開口からスリット部内に押し入れていけば、内側のプレート部材の側縁が前記突起に当たることで、前記の製造バラツキ分だけ内側のプレート部材が長手方向一側に移動し、これにより、内側のプレート部材を外側のプレート部材に対し設計上の所定位置に位置付けることが可能となる。これにより、製造バラツキがたとえ生じたとしても設計上のシール性を担保することが可能となる。
【0012】
又、前記外側のプレート部材の長手方向他側に位置するスリット部として、このスリット部の端面が上から下に向けて僅かに下り勾配となるスロープ状に延びるように形成し、前記スリット部として、前記内側のプレート部材が前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込まれることにより、前記内側のプレート部材を案内して長手方向他側から一側に向けて微小移動させる構成とすることもできる(請求項5)。このようにすることにより、前記の突起と同様の作用を得ることが可能となる。すなわち、内側のプレート部材の側縁を外側のプレート部材の上端開口からスリット部内に押し入れていけば、内側のプレート部材の側縁がスロープ状のスリット部に案内されて、前記の製造バラツキ分だけ内側のプレート部材が長手方向一側に移動し、これにより、内側のプレート部材を外側のプレート部材に対し設計上の所定位置に位置付けることが可能となる。これにより、製造バラツキがたとえ生じたとしても設計上のシール性を担保することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上、説明したように、本発明の濃淡燃焼バーナによれば、内側のプレート部材を構成する一対のプレート部に対し下端部の折り曲げ部位から元のV字状に開かせようとするスプリングバックを金属薄板素材の復元力に基づき作用させることができ、この復元力を受けて各プレート部の外面を相対向する外側のプレート部材の相対向面に対し押し付けた状態にすることができる。このため、前記各プレート部と外側のプレート部材とを互いに確実に密着させてシール性を高めた状態に維持させることができ、これにより、内側のプレート部材の内部に形成される供給通路と、内側のプレート部材と外側のプレート部材との間に形成される供給通路とを互いに区画・遮断した状態に維持させて、両供給通路に濃混合気と淡混合気とを個別に供給したとしてもの相互間の混入の発生を確実に防止することができるようになる。
【0014】
請求項2によれば、前記外側のプレート部材の相対向面間に区画形成される淡混合気の供給通路に対し、前記内側のプレート部材の下端部を上下方向途中位置において露出状態で配設し、この内側のプレート部材の下端部によって前記淡混合気の供給通路を前記2列の淡炎孔に個別に延びるように分割することで、中央濃バーナ部の下端部を淡混合気の供給通路に露出状態で配設したとしても、その下端部が1枚のプレート素材を折り曲げることで形成されているため、継ぎ目や接合面の存在もなく、このため、淡混合気の供給通路と、濃混合気が供給される中央濃バーナ部内とを確実に遮断して高度のシール性を発揮した状態に維持することができるようになる。
【0015】
又、請求項3によれば、前記内側のプレート部材の一対のプレート部の外面から前記外側のプレート部材の相対向面の側に向けて凸リブを形成することで、内側のプレート部材内の濃混合気と、外側のプレート部材内の淡混合気との間を確実に遮断して高度のシール性を発揮した状態に維持させることができるようになる。
【0016】
さらに、請求項4によれば、前記スリット部に微小な突起を形成することで、内側のプレート部材の長手方向寸法が製造バラツキにより短めに形成されてしまったとしても、内側のプレート部材の側縁を外側のプレート部材の上端開口からスリット部内に押し入れていけば、内側のプレート部材の側縁が前記突起に当たることで、前記の製造バラツキ分だけ内側のプレート部材が長手方向一側に移動し、これにより、内側のプレート部材を外側のプレート部材に対し設計上の所定位置に位置付けることができるようになる。これにより、製造バラツキがたとえ生じたとしても設計上のシール性を担保することができるようになる。
【0017】
又、請求項5によれば、前記スリット部の端面として上から下に向けて僅かに下り勾配となるスロープ状に延びるように形成することで、内側のプレート部材の側縁を外側のプレート部材の上端開口からスリット部内に押し入れていけば、内側のプレート部材の側縁がスロープ状のスリット部に案内されて、前記の製造バラツキ分だけ内側のプレート部材が長手方向一側に移動させて、内側のプレート部材を外側のプレート部材に対し設計上の所定位置に位置付けることができるようになる。これにより、製造バラツキがたとえ生じたとしても設計上のシール性を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の濃淡燃焼バーナを組み込んだ燃焼装置の例を示し、図1(a)は斜視図状態で示す説明図であり、図1(b)は断面図状態で示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態の濃淡燃焼バーナの斜視図である。
【図3】図2のバーナの正面図である。
【図4】図4(a)は図2のバーナの平面図であり、図4(b)は図4(a)のF−F部拡大図である。
【図5】図3のA−A線における断面で切断した状態の部分斜視図である。
【図6】図6(a)は図3のB−B線で切断した状態で示す斜視図であり、図6(b)は図3のC−C線で切断した状態で示す斜視図である。
【図7】図7は図3のA−A線における拡大断面説明図である。
【図8】中央濃バーナ部を構成する1つの第3プレート部材、この第3バーナの両側に配設される淡炎孔列を構成する一対の炎孔部材、一対の第1プレート部材、及び、一対の第2プレート部材の組み付け手順を説明するために、それぞれを分解した状態で示す斜視図である。
【図9】1枚物のプレート部材を折曲することで中央濃バーナ部を構成するための第3プレート部材の展開状態を示す斜視図である。
【図10】図3のD−D矢視部の部分拡大説明図である。
【図11】第3プレート部材を、一対の第1プレート部材により形成されるスリット部に対し押し込むことで組み付ける原理を、図10のG−G線において示す断面説明図である。
【図12】図2のE−E線で分離した状態の正面説明図である。
【図13】図12のH−H線における拡大断面説明図である。
【図14】図2のE−E線で分離した状態で第3プレート部材の組み付け過程を示す分解斜視図である。
【図15】図14のI−I線における拡大断面説明図である。
【図16】本発明が解決すべき課題を説明するための説明図であって、中央濃バーナ部を一対のプレート部材を互いに接合することで形成し、これを他のプレート部材で外側を順次囲むように接合して濃淡燃焼バーナを組み付ける場合の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る濃淡燃焼バーナを適用した燃焼装置2を示す。この燃焼装置2は、缶体21内において、所定数の濃淡燃焼バーナ3,3,…を横に隣接させて並べた状態のバーナセットが固定されたものである。缶体21の上部空間は燃焼空間22とされ、下部空間23に送風ファン24からの燃焼用空気が供給される一方、各濃淡燃焼バーナ3の一側にガスマニホールド25(図1(b)にのみ示す)が配設され、このガスマニホールド25から1つの濃淡燃焼バーナ3に対し2つのガスノズル26,27が突出されている。一方(下段)のガスノズル26は濃淡燃焼バーナ3の第1供給口31に向けて、他方(上段)のガスノズル27は濃淡燃焼バーナ3の第2供給口32に向けて、それぞれ燃料ガスを噴出させ得るようになっている。そして、下部空間23からの空気を各ガスノズル26,27の周囲から送風ファン24の吐出圧により押し込んで、燃料ガス及び空気の双方を第1及び第2供給口31,32に供給し得るようになっている。この際、第1供給口31はかなり大径に設定されて、より多くの空気を押し込むようにされる一方、第2供給口32は比較的小径に設定されて、押し込む空気の量が絞られるようにされている。このようにして、第1供給口31からは供給される燃料ガスに加え、その燃料ガス量に比して1.0倍よりも大きい所定の空気比となる量の空気が内部に供給される一方、第2供給口32からは同様に供給される燃料ガスに加え、その燃料ガス量に比して1.0倍よりも小さい所定の空気比となる量の空気が内部に供給されるようになっている。なお、下部空間23と濃淡燃焼バーナ3,3,…とを仕切るように配設された整流板28(図1(b)参照)には多数の小孔が開けられ、この小孔を通して相隣接する濃淡燃焼バーナ3,3間に二次空気が供給されるようになっている。
【0021】
濃淡燃焼バーナ3は、図2に示すように、金属板素材を用いてプレス加工及び折り曲げ加工を経て所定形状に加工された3種類のプレート部材、すなわち、一対の第1プレート部材4,4、一対の第2プレート部材5,5、1つのプレート部材6と、一対の炎孔形成部材7,7とを用い、厚みを構成する幅方向の中央位置の第3プレート部材3を挟んで第1プレート部材4,4、第2プレート部材5,5が後述の如く重ねられた状態で形成されたものである。このような濃淡燃焼バーナ3は、全体として扁平状に形成されている。図3の左右方向を長手方向(長さ方向)、図3の紙面に直交する方向を短手方向(幅方向)、図3の上下方向を上下方向というとすれば、長手方向一側(図3の左側)において下側位置に第1供給口31が開口し、上側位置に第1供給口31よりも小径の第2供給口32が開口され、上端面に燃焼火炎が形成される炎孔列が長手方向に延びるように形成されている。炎孔列としては、図2又は図4(a),(b)に示すように、短手方向中央位置において狭幅の濃炎孔列33が長手方向全長に延び、この濃炎孔列33の短手方向両側位置のそれぞれにおいて比較的広幅の淡炎孔列34が長手方向全長に延び、両側の淡炎孔列34,34のさらに外側位置においてそれぞれ狭幅の濃炎孔列35が長手方向全長に延びている。そして、淡炎孔列34,34の各淡炎孔341には第1供給口31から供給されて混合された淡混合気が導かれ、この淡混合気により淡火炎が形成され、中心位置の濃炎孔列33の各濃炎孔331と、両外側位置の2列の濃炎孔列35,35の各濃炎孔351とには第2供給口32から供給されて混合された濃混合気が導かれ、この濃混合気により濃火炎が形成されるようになっている。
【0022】
図5に示すように、前記の濃炎孔列33は第3プレート部材6により形成される。すなわち、第3プレート部材6を構成するプレート部65,65が所定の狭い間隔で相対向され、その内面間に濃混合気の供給通路が形成されて上端面の濃炎孔列33に連通される。このようにして第3プレート部材6により中央濃バーナ部3aが形成されることになる。この中央濃バーナ部3aを間に挟み込んだ状態で短手方向両側から一対の第1プレート部材4,4が相対向するように配置され、両側の第1プレート部材4,4と中央濃バーナ部3aとの間の2つの上端開口内にそれぞれ淡炎孔形成部材7が介装されている。これにより、中央濃バーナ部3aを短手方向両側から囲んで上端面の2列の淡炎孔列34に淡火炎を形成する淡バーナ部3bが形成されることになる。そして、淡バーナ部3bの各第1プレート部材4の外側に第2プレート部材5が被せられて、各第2プレート部材5の内面と相対向する第1プレート部材4の外面との間に形成される供給通路を通して外側の濃炎孔列35まで濃混合気が供給される。これにより、外側濃バーナ部3cが形成されることになる。
【0023】
前記の淡バーナ部3bの形成により、淡混合気(図6(a)の点線の矢印を参照)が長手方向一側の第1供給口31から筒部36を通して他側に送られ、他側から上側に向きを変え、一対の第1プレート部材4,4間の空間が第3プレート部材6によって区画形成(分割)されてなる2つの内部空間37,37(図5及び図6(a),(b)参照)を通して、上端の淡炎孔列34,34まで供給されるようになっている。前記の筒部36と内部空間37,37とにより淡混合気を2列の淡炎孔列34,34に供給する淡混合気供給通路が構成される他、筒部36は第1供給口31から供給される燃料ガスと空気との混合室及び導入通路(淡混合気導入通路)の役割をも果たすようになっている。又、第3プレート部材6が後述の第1供給通路を区画形成するための形成部材を構成する。
【0024】
第2供給口32からの濃混合気は、筒部38(図6(a)参照)を通して奥方の閉塞端まで導かれた後、この筒部38の閉塞端側から中央濃バーナ部3a及び左右両側の外側濃バーナ部3cのそれぞれに供給されるようになっている。すなわち、筒部38の閉塞端側には、中央濃バーナ部3aを構成する第3プレート部材6の下端部60(図7参照)が上から差し込まれて筒部38内で宙に浮いた状態に突出した突出部分として形成され、この下端部60で折り曲げられた両プレート部65,65のそれぞれに連通孔61が形成され、この両連通孔61,61により筒部38内と中央濃バーナ部3aの内部空間62とが連通されており、筒部38内の濃混合気が各連通孔61及び内部空間62を通して濃炎孔列33に供給されるようになっている。一方、筒部38を構成する一対の第1プレート部材4,4にも連通孔41,41,…が形成されており、一側(図7の右側)の第1プレート部材4の各連通孔41により筒部38内が一側の第1プレート部材4と同じ側の第2プレート部材5との間の内部空間51と連通され、他側(図7の左側)の第1プレート部材4の各連通孔41により筒部38内が他側の第1プレート部材4と同じ側の第2プレート部材5との間の内部空間52と連通されている。これにより、筒部38内の濃混合気が一側の各連通孔41及び内部空間51を通して一側の濃炎孔列35(図5参照)に供給される一方、筒部38内の濃混合気が他側の各連通孔41及び内部空間52を通して他側の濃炎孔列35に供給されるようになっている。なお、前記の内部空間51,52,62は筒部38と共に濃混合気の供給通路を構成する他、前記の筒部38は第2供給口32から供給される燃料ガスと空気との混合室及び導入通路(濃混合気導入通路)の役割をも果たすようになっている。つまり内部空間51が第2供給通路を構成し、内部空間52が第3供給通路を構成し、内部空間62が第1供給通路を構成する。
【0025】
なお、連通孔61の形成数や開口面積、あるいは、連通孔41の形成数や開口面積は、各濃炎孔列35,33に供給される濃混合気の流量と圧力が、いずれも同じになるように設定すればよい。例えば、一側の濃炎孔列35、他側の濃炎孔列35、及び、濃炎孔列33のそれぞれの開口面積を互いに同じになるように形成する一方、筒部38にそれぞれ連通する一側の連通孔41,41、他側の連通孔41,41、及び、連通孔61,61のそれぞれの合計開口面積を互いに同じになるように形成すればよい。
【0026】
次に、以上の濃淡燃焼バーナの組み付け構造や、シール性確保に係る構造について説明する。組み付け手順について、図8を参照しつつ説明すると、まず、第3プレート部材6と、この第3プレート部材6を組み込むための淡バーナ部3bとを準備する。第3プレート部材6(図9参照)は、薄板素材に対し相対向する一側面になるプレート部65と、他側面になるプレート部65との双方をプレス成形した一枚物のプレート部材6aを用いてV字状に折り曲げることで形成する。すなわち、プレート部材6aは中央を通る折り曲げ線Tを挟んで両側にプレート部65,65が線対称配置に配置された状態に形成され、共に凹形状部分を同じ向き(図9では上向き)に向いた状態になるように形成されている。そして、折り曲げ線Tを中心にして両側のプレート部65,65を共に内向き(一点鎖線の矢印の向き)に相対向させるように折り曲げる。折り曲げ後の解放状態では、折り曲げ部位が下端部60となり、この下端部60から上方に延びる両側のプレート部65,65が完全に接合した状態にはならずに弾性復元力により上端同士が僅かに離れて両プレート部65,65がV字状に開いた状態となる。
【0027】
一方、淡バーナ部3b(図8参照)は、一対の第1プレート部材4,4を相対向させて両側縁42,42、43,43同士及び下端縁44,44同士を溶着接合し、次いで、上向きに開口した濃炎孔列33となる部分に一対の炎孔形成部材7,7を幅方向両側位置に上から嵌め込むことで、第1及び第2の両供給口31,32が側方に開口するのみで、他の両側縁42,42、43,43及び下端縁側44,44が密閉された淡バーナ部3bが形成されることになる。なお、前記の炎孔形成部材7,7はこの工程ではなくて後の工程において嵌め込むようにすることもできる。又、この工程において第2プレート部材5を第1プレート部材4,4の外側に溶着接合しておくようにしてもよいし、後工程で溶着接合させるようにしてもよい。さらに、溶着の代わりに、この段階は取りあえず治具等で仮締めしておき、後の工程で溶着するようにすることもできる。溶着とは点状のスポット溶接や、線状の溶接等を施せばよい。
【0028】
淡バーナ部3bを構成する両第1プレート部材4,4の長手方向の両側縁42,42、43,43は、両側縁42,42について図10に示すように、両者が互いに密着して溶着等の対象となる端縁421,421と、両端縁421,421に隣接して内側に段押しプレス加工により形成された段差部422,422とを備えており、両側縁42,42が互いに接合されることで両段差部422,422の相対向面間に所定の内幅のスリット部423が形成されるようになっている。このスリット部423の内幅は、第3プレート部材6の両プレート部65の長手方向両側縁651,651を幅方向両側から挟み付けて互いに密着させた状態で収容し得るように設定されている。すなわち、スリット部423の内幅は、前記両プレート部65の長手方向両側縁651,651の板厚の和に相当する寸法に設定されている。
【0029】
このため、図8及び図11に示すように、端バーナ部3bの上端開口に対しV字状に折り曲げた状態の第3プレート部材6を下端部60から嵌め込んでいくと、第3プレート部材6の両側縁651,651が前記のスリット部423に入り込み、さらに第3プレート部材6を押し込むことで、両側縁651,651が挟み付けられてV字状から強制的に接触して直線状に互いに接合した状態(図10参照)で第3プレート部材6が組み付けられることになる。以上で濃淡燃焼バーナが完成する。
【0030】
このような組み付け構造の濃淡燃焼バーナの場合、特に中央濃バーナ部3aを構成するプレート部65,65に対し下端部60の折り曲げ部位から元のV字状に開かせようとする復元力(スプリングバック)が作用し、この復元力を受けて各プレート部65の幅方向外面(例えば図5,図7にPで示す部位参照)が相対向する第1プレート部材4の幅方向内面に対し押し付けられることになる。前記の復元力は、たとえ長手方向の両側縁同士が挟み付けられて密着されてはいても、両側縁の間の部位を例えば鼓状に短手方向の両側にはらみ出させるように作用することになる。このため、前記各プレート部65と第1プレート部材4とを互いに確実に密着させてシール性を高めた状態に維持させることができるようになる。これにより、濃混合気が流れる筒部38(例えば図5参照)内と、淡混合気が流れる内部空間37,37とを互いに区画・遮断した状態に維持させることができ、濃混合気と淡混合気との相互間の混入の発生を確実に防止することができるようになる。
【0031】
しかも、中央濃バーナ3aの下端部60が1枚のプレート部材6aを折り曲げることで形成されているため、淡バーナ3bの筒部36(例えば図12参照)により構成される淡混合気の供給通路が前側(図12の右側)の第1供給口31から後側(図12の左側)まで延びた後に上方に屈曲する部位において、前記下端部60が前記淡混合気の供給通路を2つの内部空間37,37(図13参照)に分割するように露出状態で配設されていても、筒部36側の淡バーナ部3bと中央濃バーナ3aとの間を確実に遮断して高度のシール性を発揮した状態に維持することができる。
【0032】
その上に、次のような組み付け構造の採用により、前記のシール性のより一層の向上及び確実化、これに伴う濃混合気と淡混合気との相互間の混入発生防止のより確実化を図ることができるようになる。すなわち、特に長手方向他側(後側;図12の左側)において前記のスリット部423を構成する段差部422,422は、上から下に向けて僅かに下り勾配となる微小角αのスロープ状に延びるように形成される一方、このスリット部423に上から押し入れられることになる第3プレート部材6の各プレート部65の長手方向他側(後側;図12の左側)の側縁651も同様のテーパ角度を有するように形成されている。
【0033】
このため、第3プレート部材6の長手方向寸法が製造バラツキにより短めに形成されてしまったとしても、前記の如く、第3プレート部材6(図8,図11参照)を淡バーナ部3bの上端開口から内部に下向きに嵌め込んでその側縁651,651をスリット部423に押し入れていけば、スロープ状のスリット部423に案内されて第3プレート部材6が前記の製造バラツキ分だけ長手方向他側から一側(図12の左側から右側)に向けて微小量移動し、これにより、長手方向一側(前側;図12の右側)の側縁652,653を第1プレート部材4の側縁43に対し設計上の所定位置に位置付けることができるようになる。その上に、特に側縁653を側縁43の段差部431との関係で本来の設計上の位置に位置付けることでシール性を担保することができ、側縁653と側縁43との接合部位を介しての中央濃バーナ部3a内の濃混合気と淡バーナ部3b内の淡混合気との相互混入の発生を確実に阻止することができるようになる。これにより、中央濃バーナ部3aと淡バーナ部3bとの間のシール性や遮断性能の確実な担保に加えて、中央濃バーナ部3aの濃炎孔列33を淡バーナ部3bの淡炎孔列34との位置関係において確実に設計通りの相対位置に位置付けることができ、濃火炎による淡火炎の燃焼安定性を確実に担保することができるようになる。
【0034】
<第2実施形態>
図14及び図15は第2実施形態の濃淡燃焼バーナについて示すものである。第2実施形態は、第3プレート部材6を構成する両プレート部65,65のそれぞれに凸リブ654を形成して、シール性をより担保したものである。その点を除き、他の構成は第1実施形態と同じであるため、以下の説明では第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0035】
前記の凸リブ654は、第3プレート部材6の両プレート部65にそれぞれ形成されたものであり、淡バーナ部3bの供給通路を構成する内部空間37,37の境界位置に沿って突出するよう形成されたものである。すなわち、淡バーナ3bを構成する各第1プレート部材4には、その筒部36の後側から上方に屈曲して斜め上方に向けて前側に供給通路が延びるように内部空間37が区画形成されるようになっている。そのために筒部38の上側位置に逆三角形状の接合面(図5,図7に符号Pで示す接合面)45が形成され、この接合面45の境界である上辺の上側に当接するように、凸リブ654が各プレート部65において斜め上方に延びるように突出形成されている。
【0036】
このような凸リブ654は、第3プレート部材6を淡バーナ部3bに対し上から下に嵌め込んで組み付けることで(図14に実線と一点鎖線とで示す第3プレート部材6参照)、図15に示す如く接合面45の上辺に沿ってこの上辺を覆って嵌合した状態にされる。このため、第1実施形態で説明した如く各プレート部65の外面が外開き方向の復元力によって前記接合面45に密着した上に、その接合面45の上側境界線である上辺に沿って凸リブ654が嵌合することになり、筒部38側からの濃混合気と、淡バーナ部3b内の淡混合気との間を確実に遮断して高度のシール性を発揮した状態に維持させることができるようになる。
【0037】
<他の実施形態>
第1実施形態における段差部422を微少角度だけ斜めにスロープ状に延びるように形成する代わりに、段差部自体は鉛直に形成する一方、前記の微少角度に相当する微少な突起(例えば図14の符号424で示す突起参照)を段差部の一部に形成し、この突起に第3プレート部材6の側縁651,651が当たることで、第3プレート部材3の長手方向他側から一側(図14の左側から右側)に向けての微小量の移動調整を行い得るようにしてもよい。あるいは、前記の微少角度だけ斜めにスロープ状に延びる段差部422に対し、さらに前記の突起を追加するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
3 濃淡燃焼バーナ
4 外側のプレート部材
6 内側のプレート部材
33 中央の濃炎孔列(中央濃炎孔)
34 淡炎孔列(淡炎孔)
35 外側の濃炎孔列(外側濃炎孔)
37 内部空間(淡混合気の供給通路)
38 筒部(濃混合気の供給通路)
60 下端部
42 側縁
65 プレート部
423 スリット部
651 側縁
654 凸リブ
62 内部空間(濃混合気の供給通路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央のプレート部材を両側から他のプレート部材で覆うように重ね合わせることにより相対向するプレート部材間に濃混合気又は淡混合気の供給通路を区画形成するようにした濃淡燃焼バーナであって、
上端で開口して相対向面間に所定の隙間を区画形成した外側のプレート部材と、この外側のプレート部材の相対向面間に介装された内側のプレート部材とを備え、
前記外側のプレート部材には長手方向両側の側縁位置に前記内側のプレート部材の側縁の厚みに相当する内幅を有し上方に開口するスリット部が形成され、
前記内側のプレート部材は、一枚物のプレート素材の中央線位置において折り曲げられて一対のプレート部がV字状に相対向するように形成されたものであって、折り曲げ部を下端部にして前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込まれることにより、前記内側のプレート部材の側縁が前記スリット部内で挟み付けられて互いに密着した状態に組み付けられている、
ことを特徴とする濃淡燃焼バーナ。
【請求項2】
請求項1に記載の濃淡燃焼バーナであって、
中央位置において長手方向に延びるように配列された中央濃炎孔を両側から挟むように2列の淡炎孔が配列され、かつ、両側の淡炎孔をさらに外側から挟むように2列の外側濃炎孔が配列されるように、前記中央濃炎孔を備える中央濃バーナ部が前記内側のプレート部材により形成され、この中央濃バーナの両外側位置で前記外側濃炎孔を形成する淡バーナ部が前記外側のプレート部材により形成され、さらに、前記外側濃炎孔が別のプレート部材により形成され、
前記外側のプレート部材の相対向面間に区画形成される淡混合気の供給通路に対し、前記内側のプレート部材の下端部が上下方向途中位置において露出状態で配設され、この内側のプレート部材の下端部によって前記淡混合気の供給通路が前記2列の淡炎孔に個別に延びるように分割されている
ことを特徴とする濃淡燃焼バーナ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の濃淡燃焼バーナであって、
前記内側のプレート部材の一対のプレート部の外面から前記外側のプレート部材の相対向面の側に向けて突出し、前記各プレート部の外面と、これに相対向する前記外側の相対向面との間に区画形成される淡混合気の供給通路の境界に沿って延びる凸リブが形成され、
前記内側のプレート部材が前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込まれることにより、前記凸リブが前記外側のプレート部材の相対向面に対し当接状態で嵌合されている、濃淡燃焼バーナ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の濃淡燃焼バーナであって、
前記外側のプレート部材の長手方向他側に位置するスリット部には、このスリット部の端面から突出する微小な突起が形成され、
前記突起は、前記内側のプレート部材が前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込まれることにより当たって、前記内側のプレート部材を長手方向他側から一側に向けて微小移動させるように構成されている、濃淡燃焼バーナ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の濃淡燃焼バーナであって、
前記外側のプレート部材の長手方向他側に位置するスリット部は、このスリット部の端面が上から下に向けて僅かに下り勾配となるスロープ状に延びるように形成され、
前記スリット部は、前記内側のプレート部材が前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込まれることにより、前記内側のプレート部材を案内して長手方向他側から一側に向けて微小移動させるように構成されている、濃淡燃焼バーナ。
【請求項1】
中央のプレート部材を両側から他のプレート部材で覆うように重ね合わせることにより相対向するプレート部材間に濃混合気又は淡混合気の供給通路を区画形成するようにした濃淡燃焼バーナであって、
上端で開口して相対向面間に所定の隙間を区画形成した外側のプレート部材と、この外側のプレート部材の相対向面間に介装された内側のプレート部材とを備え、
前記外側のプレート部材には長手方向両側の側縁位置に前記内側のプレート部材の側縁の厚みに相当する内幅を有し上方に開口するスリット部が形成され、
前記内側のプレート部材は、一枚物のプレート素材の中央線位置において折り曲げられて一対のプレート部がV字状に相対向するように形成されたものであって、折り曲げ部を下端部にして前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込まれることにより、前記内側のプレート部材の側縁が前記スリット部内で挟み付けられて互いに密着した状態に組み付けられている、
ことを特徴とする濃淡燃焼バーナ。
【請求項2】
請求項1に記載の濃淡燃焼バーナであって、
中央位置において長手方向に延びるように配列された中央濃炎孔を両側から挟むように2列の淡炎孔が配列され、かつ、両側の淡炎孔をさらに外側から挟むように2列の外側濃炎孔が配列されるように、前記中央濃炎孔を備える中央濃バーナ部が前記内側のプレート部材により形成され、この中央濃バーナの両外側位置で前記外側濃炎孔を形成する淡バーナ部が前記外側のプレート部材により形成され、さらに、前記外側濃炎孔が別のプレート部材により形成され、
前記外側のプレート部材の相対向面間に区画形成される淡混合気の供給通路に対し、前記内側のプレート部材の下端部が上下方向途中位置において露出状態で配設され、この内側のプレート部材の下端部によって前記淡混合気の供給通路が前記2列の淡炎孔に個別に延びるように分割されている
ことを特徴とする濃淡燃焼バーナ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の濃淡燃焼バーナであって、
前記内側のプレート部材の一対のプレート部の外面から前記外側のプレート部材の相対向面の側に向けて突出し、前記各プレート部の外面と、これに相対向する前記外側の相対向面との間に区画形成される淡混合気の供給通路の境界に沿って延びる凸リブが形成され、
前記内側のプレート部材が前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込まれることにより、前記凸リブが前記外側のプレート部材の相対向面に対し当接状態で嵌合されている、濃淡燃焼バーナ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の濃淡燃焼バーナであって、
前記外側のプレート部材の長手方向他側に位置するスリット部には、このスリット部の端面から突出する微小な突起が形成され、
前記突起は、前記内側のプレート部材が前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込まれることにより当たって、前記内側のプレート部材を長手方向他側から一側に向けて微小移動させるように構成されている、濃淡燃焼バーナ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の濃淡燃焼バーナであって、
前記外側のプレート部材の長手方向他側に位置するスリット部は、このスリット部の端面が上から下に向けて僅かに下り勾配となるスロープ状に延びるように形成され、
前記スリット部は、前記内側のプレート部材が前記外側のプレート部材の上端開口から内部に押し込まれることにより、前記内側のプレート部材を案内して長手方向他側から一側に向けて微小移動させるように構成されている、濃淡燃焼バーナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−247159(P2012−247159A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121113(P2011−121113)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
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