濃縮分離装置及び方法
【課題】試料に含まれている多種類の化学成分の分離の精度を高める。
【解決手段】濃縮管2の外から濃縮管2に冷却ガスを直接的に噴射する冷却ガス管3と、冷却ガスによって冷却された濃縮管2を輻射加熱する赤外線ランプ4と、分離管7の外から分離管7に冷却ガスを直接的に噴射する冷却ガス管8と、分離管7を輻射加熱する赤外線ランプ9と、赤外線ランプ4の輻射加熱によって脱離された化学成分が導入された分離管7に対しての冷却ガス管8による冷却ガス噴射を制御するとともに赤外線ランプ9による輻射加熱を制御することによって分離管7の温度をステップ状に迅速に変化させる制御装置12とを備えている。
【解決手段】濃縮管2の外から濃縮管2に冷却ガスを直接的に噴射する冷却ガス管3と、冷却ガスによって冷却された濃縮管2を輻射加熱する赤外線ランプ4と、分離管7の外から分離管7に冷却ガスを直接的に噴射する冷却ガス管8と、分離管7を輻射加熱する赤外線ランプ9と、赤外線ランプ4の輻射加熱によって脱離された化学成分が導入された分離管7に対しての冷却ガス管8による冷却ガス噴射を制御するとともに赤外線ランプ9による輻射加熱を制御することによって分離管7の温度をステップ状に迅速に変化させる制御装置12とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮分離装置及び方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、試料を濃縮管に導入し、この濃縮管を冷却することによって試料に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した化学成分を濃縮管を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた化学成分を分離管に導入し、この分離管に充填された吸着剤を利用して化学成分を種類別に分離する濃縮分離装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる多種類の化学成分について各化学成分の僅かな差を利用して分離するクロマトグラフ法において、例えば特許文献1には、試料の特定部位に対してレーザー光を照射し、これによって試料から脱離した化学成分を試料室の壁面に付着させ、試料室全体をヒーターで加熱し、壁面に付着している化学成分をガス化して脱離させた後、その化学成分を冷却濃縮管で冷却濃縮してトラップさせ、その冷却濃縮管を急速加熱して、トラップした化学成分を脱離し検出器に送り込み、試料から脱離した化学成分のガスクロマトグラフ質量スペクトルを得る技術が開示されている。また、特許文献2には、濃縮管に吸着した揮発性有化合物類を加熱して脱離させ、その脱離した化学成分を冷却し再濃縮後にガスクロマトグラフに導入する方法が開示されている。
【0003】
ところで、特許文献1及び2に示されているようなガスクロマトグラフ法によって化学成分の分析を行なう場合、一般的に濃縮管と分離管を用いて化学成分の分離が行なわれるが、濃縮管と分離管には化学成分を吸着させるための吸着剤が充填される。そして、多種類の化学成分を吸着剤との吸着力の差を利用して分離する。化学成分の吸着剤に対しての吸着のし易さは化学成分の化学的特性に依存している。例えば多種類の化学成分が分離管に導入されると、それぞれの化学的特性による吸着剤に対しての吸着力の差に応じて分離管内での通過速度に差が生じ、その速度差に応じて化学成分毎に分かれて検出器に送り込まれる。このように分離管では多種類の化学成分がその速度差を利用して分離が行なわれるが、化学成分と吸着剤との吸着のし易さは温度にも依存しており、例えば分離管に化学成分α〜γが導入され、それぞれ吸着剤から脱離する温度(以下、「脱離温度」と称する)が異なりα<β<γの順に脱離温度が大きくなっている場合、分離管が加熱され化学成分αの脱離温度である第1の温度に達すると、化学成分α〜γのうち、化学成分αのみが吸着剤から脱離し、分離管から取り出され、分離管がさらに加熱され化学成分βの脱離温度である第2の温度に達すると、残りの化学成分のうち、化学成分βのみが吸着剤から脱離し、分離管から取り出され、分離管がさらに加熱されγの脱離温度である第3の温度に達すると、化学成分γが吸着剤から脱離することとなる。つまり、分離管に対して少なくとも多段階的な温度調節を行なうことによって各化学成分の脱離温度の差を利用した分離が可能となる。
【特許文献1】特開平7−318552号
【特許文献2】特開平11−183456号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に示されているような従来のガスクロマトグラフ法による化学成分の分離方法では、濃縮管や分離管に対して単純な加熱や冷却を行なっているだけであり、さらに200℃以上では昇温速度がせいぜい0.1〜0.5℃/s程度であることから、温度を急速に上昇させることができず、化学成分の分離に時間を要するという問題が生じる。また、単調な昇温では化学成分が濃縮管から徐々に脱離して分離管に到達することになる。つまり、多種類の化学成分を分離する場合に化学成分の速度の差が小さくなるため明確に分離することができない。このように多種類の化学成分を明確に分離することができないと、例えばガスクロマトグラフでの分析結果として表示装置の画面に表示される化学成分の濃度の大きさを示すピークの形状が低くて広がった形になり、化学成分が特定し難くなってしまうという問題が生じる。特に特許文献1に示すような試料室全体をヒーターで加熱する所謂オーブン型の加熱方法の場合には熱容量が大きいので温度が所望の温度に定まり難く、仮に温度が上がり過ぎた場合にはそれを素早く所定の温度に戻しその温度を保持することも困難であり、これが原因で精度の高い分析を行なうことができなくなってしまう。多種類の化学成分の脱離温度に応じて温度制御を行って各化学成分の移動速度を制御し、それらを分離管からそれぞれ別個に且つ迅速に抽出する場合には、各化学成分に対して各化学成分特有の脱離温度を与えること即ち分離管を多段階的に且つ急速に昇温させるとともに各化学成分を吸着剤から十分に脱離させるために各温度段階においてある程度の時間その温度を保持することが必要になると考えられるが、このような精密な温度制御は既存の技術では行なうことができなかった。そのため多種類の化学成分を迅速に分離してそれらを独立した状態で分離管から取り出すことができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、試料に含まれている多種類の化学成分の分離の精度を高めるとともに分離に要する時間の短縮を図ることができる濃縮分離装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明にかかる濃縮分離装置は、試料を濃縮管に導入し、この濃縮管を冷却することによって試料に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した化学成分を濃縮管を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた化学成分を分離管に導入し、この分離管に充填された吸着剤を利用して化学成分を種類別に分離する濃縮分離装置において、濃縮管の外から濃縮管に冷媒を直接的に噴射する濃縮管用冷媒噴射手段と、冷媒によって冷却された濃縮管を輻射加熱する濃縮管用輻射加熱手段と、分離管の外から分離管に冷媒を直接的に噴射する分離管用冷媒噴射手段と、分離管を輻射加熱する分離管用輻射加熱手段と、濃縮管用輻射加熱手段の輻射加熱によって脱離された化学成分が導入された分離管に対しての分離管用冷媒噴射手段による冷媒噴射を制御するとともに分離管用輻射加熱手段による輻射加熱を制御することによって分離管の温度をステップ状に変化させる温度制御手段とを備えるようにしている。
【0007】
かかる目的を達成するために、請求項7記載の発明にかかる濃縮分離方法は、試料を濃縮管に導入し、この濃縮管を冷却することによって試料に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した化学成分を濃縮管を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた化学成分を分離管に導入し、この分離管に充填された吸着剤を利用して化学成分を種類別に分離する濃縮分離方法において、濃縮管用冷媒噴射手段を用いて濃縮管の外から濃縮管に冷媒を直接的に噴射する工程と、濃縮管用輻射加熱手段を用いて冷媒によって冷却された濃縮管を輻射加熱する工程と、分離管用冷媒噴射手段を用いて分離管の外から分離管に冷媒を直接的に噴射する工程と、分離管用輻射加熱手段を用いて分離管を輻射加熱する工程と、濃縮管用輻射加熱手段の輻射加熱によって脱離された化学成分が導入された分離管に対しての分離管用冷媒噴射手段による冷媒噴射を制御するとともに分離管用輻射加熱手段による輻射加熱を制御することによって分離管の温度をステップ状に変化させる工程とを備えるようにしている。
【0008】
したがって、濃縮管に試料が導入され、その濃縮管を濃縮管用冷媒噴射手段から噴射される冷媒で冷却することによって濃縮管内で化学成分が濃縮される。次いで濃縮管に対して濃縮管用輻射加熱手段から輻射線を放射すると濃縮管が急速に昇温する。この急速な昇温によって濃縮している化学成分が一斉に脱離する。これにより試料中の化学成分を濃縮管に導入してから極めて短時間で分離管に到達させることが可能となる。濃縮管から分離管に化学成分が導入されると、分離管内ではその化学成分が吸着剤に対して吸着と脱離を繰り返しながら出口に向けて進行していく。ここで分離管を分離管用冷媒噴射手段から噴射される冷媒で冷却すると化学成分が吸着剤に確実に吸着する。また、分離管に対して分離管用輻射加熱手段から輻射線を放射すると分離管が急速に昇温され、化学成分が吸着剤から脱離する。この脱着過程において分離管に対しての冷媒噴射と輻射加熱を制御することによって分離管の温度をステップ状に変化させる。つまり、分離管の温度を予め定められた温度即ちある化学成分の脱離温度まで迅速に上昇させ、その温度を所定時間保持するという一連の動作を繰り返して行なう。換言すると、分離管の温度を多段階的に且つ各段階間において迅速に上昇させ、各温度段階において所定時間その温度が保持されるようにする。すると、この間に化学成分の脱離温度に応じて化学成分の分離が選択的に行なわれる。よって、濃縮管から分離管に導入された化学成分が多種類に及ぶ場合、分離管に対しての冷媒噴射と輻射加熱による温度制御を行なうことによって分離管を速く通過する化学成分、それよりも遅く通過する化学成分、さらに遅く通過する化学成分などのように各化学成分を通過速度毎に分けることが可能となる。つまり、各化学成分を種類別即ち脱離温度別に明確に分離した状態で取り出すことが可能となる。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の濃縮分離装置において、濃縮管用輻射加熱手段を濃縮管の外周において周方向に複数配置するようにしている。また、請求項8記載の発明は、請求項7記載の濃縮分離方法において、濃縮管用輻射加熱手段を濃縮管の外周において周方向に複数配置する工程を備えるようにしている。この場合、濃縮管の外周の多方面から濃縮管に向けて輻射線が放射され、それらの輻射線が濃縮管の一定範囲に収束される。これにより濃縮管の昇温速度を高めることができる。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の濃縮分離装置において、濃縮管の周囲に濃縮管用輻射加熱手段から放射された輻射線を濃縮管に向けて反射させる濃縮管用反射部材を配置するようにしている。また、請求項9記載の発明は、請求項7または8記載の濃縮分離方法において、濃縮管の周囲に濃縮管用輻射加熱手段から放射された輻射線を濃縮管に向けて反射させる濃縮管用反射部材を配置する工程を備えるようにしている。この場合、濃縮管用輻射加熱手段から放射される輻射線が濃縮管用反射部材で反射して濃縮管に当てられる。つまり、濃縮管用輻射加熱手段により濃縮管に対して直接的且つ間接的に輻射加熱することができる。したがって、濃縮管の昇温速度をより一層高めることができる。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の濃縮分離装置において、分離管用輻射加熱手段を分離管の外周において周方向に複数配置するようにしている。また、請求項10記載の発明は、請求項7〜9のいずれか1つに記載の濃縮分離方法において、分離管用輻射加熱手段を前記分離管の外周において周方向に複数配置する工程を備えるようにしている。この場合、分離管の外周の多方面から分離管に向けて輻射線が放射され、それらの輻射線が分離管の一定範囲に収束される。これにより分離管の昇温速度を高めることができる。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の濃縮分離装置において、分離管の周囲に分離管用輻射加熱手段から放射された輻射線を分離管に向けて反射させる分離管用反射部材を配置するようにしている。また、請求項11記載の発明は、請求項7〜10のいずれか1つに記載の濃縮分離方法において、分離管の周囲に分離管用輻射加熱手段から放射された輻射線を分離管に向けて反射させる分離管用反射部材を配置する工程を備えるようにしている。この場合、分離管用輻射加熱手段から放射される輻射線が分離管用反射部材で反射して濃縮管に当てられる。つまり、分離管用輻射加熱手段により分離管に対して直接的且つ間接的に輻射加熱することができる。したがって、分離の昇温速度をより一層高めることができる。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の濃縮分離方法において、分離管をコイル状に形成し、このコイル状部の内部においてその軸方向に沿って分離管用冷媒噴射手段を配置するとともに分離管用冷媒噴射手段から冷媒を放射状に噴射するようにしている。また、請求項12記載の発明は、請求項7〜11のいずれか1つに記載の濃縮分離方法において、分離管をコイル状に形成する工程と、このコイル状部の内部においてその軸方向に沿って分離管用冷媒噴射手段を配置する工程と、この分離管用冷媒噴射手段から冷媒を放射状に噴射する工程とを備えるようにしている。この場合、冷媒がコイル状部の中心部から内周部に向けて放射状に噴射されるので、分離管を急速に冷却させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の濃縮分離装置、請求項7記載の濃縮分離方法によれば、濃縮管を急速に加熱することができるので、濃縮管において化学成分を一斉に脱離させることができ、これを短時間で分離管に到達させることができる。これによって例えば水素炎イオン化検出器で検出される化学成分の濃度の大きさを表示装置の画面で表示した際のピークの形状をシャープにすることができる。また、分離管に対しての冷媒噴射と輻射加熱とを制御することによって多段階的且つ迅速な昇温と、各温度段階において所定時間その温度を保持することができるので、多種類の化学成分を高速且つ高精度で分離することが可能となる。
【0015】
また、請求項2及び請求項8の発明の場合、濃縮管を急速に昇温させることが可能となるので、濃縮されている化学成分を短時間で脱離させることができ、化学成分を濃縮管から分離管に導入する際の時間短縮に寄与することができる。このように化学成分を分離管に短時間で到達させることで例えば水素炎イオン化検出器で検出される化学成分の濃度の大きさを表示装置の画面で表示した際のピークの形状をより一層シャープにすることが可能となる。また、試料を濃縮管に導入してから化学成分の分離が終了するまでに要する時間の短縮を図ることができる。
【0016】
また、請求項3及び請求項9記載の発明の場合、濃縮管用反射部材例えばミラーを用いて濃縮管用輻射加熱手段から放射される輻射線例えば赤外線を濃縮管に向けて反射させるという簡単な構造で赤外線を直接的に且つ間接的に濃縮管に集光させることができるので、濃縮管用輻射加熱手段の個数を増やさずに即ちコストを掛けずに濃縮管の昇温速度を高めることができる。そして、昇温速度を高めることによって化学成分の濃縮管から分離管への移動速度も高めることが可能となる。
【0017】
また、請求項4及び請求項10記載の発明の場合、分離管を急速に昇温させることが可能となるので、化学成分を迅速に分離することが可能となる。また、分離管を急速に昇温させることが可能となるので、例えば化学成分が高温にすると分解してしまう可能性のある多環芳香族成分のような有機物の場合には、短時間で加熱することによってその分解を低減することができる。
【0018】
また、請求項5及び請求項11記載の発明の場合、分離管過熱用反射部材例えばミラーを用いて分離管用輻射加熱手段から放射される輻射線例えば赤外線を分離管に向けて反射させるという簡単な構造で赤外線を直接的に且つ間接的に分離管に集光させることができるので、分離管用輻射加熱手段の個数を増やさずに即ちコストを掛けずに分離管の昇温速度を高めることができる。したがって、多種類の化学成分が分離管に導入されている場合には短時間で分離することが可能となる。
【0019】
また、請求項6及び請求項12記載の発明の場合、分離管を急速に冷却することができるので、多段階的に昇温するにあたって各段階温度を一定に保持することができる。また、急冷することが可能なので、分離管の昇温を迅速に抑えることができる。さらに、分離管をある温度に所定時間留めておきたい場合にはその制御が容易に行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1〜図11に本発明の濃縮分離装置の実施形態の一例を示す。本実施形態の濃縮分離装置1は、試料としての試料ガス14を濃縮管2に導入し、この濃縮管2を冷却することによって試料ガス14に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した化学成分を濃縮管2を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた化学成分を分離管7に導入し、この分離管7に充填された吸着剤13、21を利用して化学成分を種類別に分離するものであり、濃縮管2の外から濃縮管2に冷媒である冷却ガスを直接的に噴射する濃縮管用冷媒噴射手段である冷却ガス管3と、冷却ガスによって冷却された濃縮管2を輻射加熱する濃縮管用輻射加熱手段である赤外線ランプ4と、分離管7の外から分離管7に冷却ガスを直接的に噴射する分離管用冷媒噴射手段である冷却ガス管8と、分離管7を輻射加熱する分離管用輻射加熱手段である赤外線ランプ9と、赤外線ランプ4の輻射加熱によって脱離された化学成分が導入された分離管7に対しての冷却ガス管8による冷却ガス噴射を制御するとともに赤外線ランプ9による輻射加熱を制御することによって分離管7の温度をステップ状に変化させる温度制御手段である制御装置12とを備えている。
【0022】
また、本実施形態の濃縮分離方法は、試料としての試料ガス14を濃縮管2に導入し、この濃縮管2を冷却することによって試料ガス14に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した化学成分を濃縮管2を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた化学成分を分離管7に導入し、この分離管7に充填された吸着剤13、21を利用して化学成分を種類別に分離する方法であり、濃縮管用冷媒噴射手段である冷却ガス管3を用いて濃縮管2の外から濃縮管2に冷媒である冷却ガスを直接的に噴射する工程と、濃縮管用輻射加熱手段である赤外線ランプ4を用いて冷却ガスによって冷却された濃縮管2を輻射加熱する工程と、分離管用冷媒噴射手段である冷却ガス管8を用いて分離管7の外から分離管7に冷媒である冷却ガスを直接的に噴射する工程と、分離管用輻射加熱手段である赤外線ランプ9を用いて分離管7を輻射加熱する工程と、赤外線ランプ4の輻射加熱によって脱離された化学成分が導入された分離管7に対しての冷却ガス管8による冷却ガス噴射を制御するとともに赤外線ランプ9による輻射加熱を制御することによって分離管7の温度をステップ状に変化させる工程とを備えている。
【0023】
図1〜図9に示すように、濃縮分離装置1は、濃縮管2、冷却ガス管3、8、赤外線ランプ4、9、ミラー5、10、第1の炉6、分離管7、第2の炉11および制御装置12を備えている。本実施形態の濃縮分離装置1は試料ガス14に含まれる多種類の化学成分、例えば炭化水素や多環芳香族などを分離するものである。そして濃縮分離装置1で分離された化学成分は例えば水素炎イオン化検出器(図示省略)に送り込まれ、そこで分析される。本実施形態で使用する試料ガス14は窒素や酸素などを主成分とする一般的な空気であり、試料ガス14の化学成分とは、本実施形態では例えば3,4ベンゾピレンの分子のような窒素や酸素などの空気の主成分以外の化学成分のことを示す。なお、本実施形態では試料ガス14として空気を例に挙げて説明するが、濃縮分離装置1に導入される試料ガス14はこれに限定される必要はなく例えばディーゼル排気ガスや工場の煙突から排出されるガスなどを対象にしても良いことは言うまでもない。
【0024】
濃縮管2、冷却ガス管3の一部、赤外線ランプ4およびミラー5は図5及び図6に示すように箱状に形成された第1の炉6に収容されている。この第1の炉6は図6に示すように濃縮管2と冷却ガス管3が配置される本体基部40とこの本体基部40の上面に形成されている開口を塞ぐ蓋体41とから構成されており、蓋体41は本体基部40との間に組み付けられているヒンジ機構42を介して本体基部40の一側縁に開閉自在に取り付けられている。
【0025】
蓋体41によって本体基部40の開口が塞がれると第1の炉6の内部に空間が形成される。この空間を形成している第1の炉6の内周面即ち蓋体の裏面と本体基部40の内面には図6に示すように複数のミラー5が設けられている。また、第1の炉6の内部には複数のミラー5によって取り囲まれるように複数の赤外線ランプ4が設けられている。本体基部40の両端部には半円状の切り欠き40aが形成されており、その切り欠き40a上には濃縮管2の両端部が断熱材で被覆された状態で載置される。また、冷却ガス管3の先端部は濃縮管2の中央部近傍に配置されている(図1参照)。冷却ガス管3の途中は濃縮管2の一方の端部とともに断熱材によって互いに接触しないように被覆されている。蓋体41の両端部には本体基部40の開口を塞いだときに本体基部40の切り欠き40aに対向する半円状の切り欠き41aが形成されている。したがって、蓋体41によって本体基部40の開口が塞がれると濃縮管2の両端部と冷却ガス管3が被覆材を介して本体基部40の切り欠き40aと蓋体41の切り欠き41aとで挟持され、図5及び図6に示すように濃縮管2と冷却ガス管3が赤外線ランプ4及びミラー5によって取り囲まれた状態となる。そして、この状態を保持したまま蓋体41がロック機構43によって本体基部40にロックされる。なお、第1の炉6は内部の空間の空気が第1の炉6の両端部から自然に抜けていくように構成されている。また、本体基部40の壁部と本体基部40に取り付けられているミラー5との間、並びに蓋体41の壁部と蓋体41に取り付けられているミラー5との間には断熱材が充填されている。
【0026】
濃縮管2は導入された試料ガス14に含まれている微量な化学成分を濃縮し、例えば水素炎イオン化検出器で分析できる程度の濃度にまで高めるためのものである。濃縮管2は直線状のステンレス管からなり、管内の中央部には吸着剤13が充填されている。この吸着剤13は試料ガス14中の化学成分を一時的に吸着させた後加熱昇温されることによりその化学成分を脱離させるものであり、本実施形態では吸着剤13として珪藻土系の粉体を採用している。化学成分は温度が低いと吸着しやすく、温度が高いと吸着しにくくなるため、濃縮管2を冷却することで濃縮し、加熱することで脱離させることができる。なお、本実施形態では吸着剤13として珪藻土系の粉体を例に挙げて説明しているが、吸着剤13としてはこれに限定される必要はなく、例えば粒径が0.2〜0.5mm程度の珪藻土系の粉体にメチルシリコン溶液を塗布したものやガラス製ビーズなどであっても良い。
【0027】
濃縮管2の一端には濃縮管2内に試料ガス14を導入するためのパイプ15が接続されている。濃縮管2の他端には濃縮管2と分離管7の一端とを接続して濃縮管2と分離管7とを連通するパイプ17がコネクタ18を介して接続されている。パイプ15、17の近傍にはパイプ15、17の形状に沿ってヒーター24、25が配置されている。このヒーター24、25はパイプ15、17を暖めることにより化学成分がパイプ17の内壁に付着することを防止するためのものである。パイプ15とヒーター24、パイプ17とヒーター25は断熱材によって共に被覆されている。なお、本実施形態では濃縮管2としてステンレス管を用いたが、−40℃〜600℃の範囲の温度耐久性を有し且つ熱伝導性に富んだ素材で構成されていれば良く、例えば銅あるいはチタンなどで構成しても良い。
【0028】
冷却ガス管3は冷却ガスを濃縮管2に向けて搬送し、濃縮管2に直接的に噴射するものである。この冷却ガス管3は直線状に形成されており、濃縮管2に長手方向に沿って並列に配置されている。冷却ガス管3において第1の炉6内の空間に入っている部分以外の部分は断熱材で被覆されている。冷却ガス管3の基端はガス冷却装置28に電磁弁22を介して接続されている。ガス冷却装置28は常温の空気を供給して断熱膨張によって空気を冷却するものである。電磁弁22が開放されると冷却ガス管3を通して冷却ガスが濃縮管2に向けて搬送される。冷却ガス管3の先端面は塞がれており、冷却ガス管3の先端部において濃縮管2に対向する面には冷却ガスが噴き出される噴き出し口3aが濃縮管2の長手方向に沿って一定の間隔を置いて複数配置されている。したがって、電磁弁22が開放され冷却ガス管3に冷却ガスが流れると、噴き出し口3aから冷却ガスが濃縮管2に向けて噴射される。ガス冷却装置28では冷却ガスを冷却ガス管3に送り出す圧力値が予め設定されており、この圧力値に従って冷却ガス管3内に冷却ガスが送り出されると、冷却ガスが噴き出し口3aから勢い良く噴出される。そして、このように冷却ガスが濃縮管2に直接的に噴射されることによって濃縮管2の温度を急速に下げることが可能となる。本実施形態において噴き出し口3aから噴出される冷却ガスの噴出速度は1リットル/分である。なお、この噴出速度は適宜に変更可能である。また、濃縮管2に噴射される冷却ガスの温度条件は常温以下、具体的には−5℃以下にすることであり、−20℃〜−5℃の温度範囲が好ましい。
【0029】
図5に示すように濃縮管2の外周には濃縮管2の外周面から一定の間隔をおいて周方向に沿って即ち図5の2点鎖線で示す円弧状に沿って赤外線ランプ4が4本等間隔に配置されている。これらの赤外線ランプ4は図4に示すようにいずれも直線状に形成されており、濃縮管2の軸を中心にして濃縮管2の長手方向に沿って並列に配置されている。つまり、濃縮管2は四方を赤外線ランプ4によって囲まれている。したがって、赤外線ランプ4が通電されると赤外線ランプ4から濃縮管2に向けて赤外線が照射される。このように濃縮管2を多方面から輻射加熱することによって濃縮管2の温度を急速に上げることが可能となる。なお、本実施形態では4本の赤外線ランプ4を用いているが、赤外線ランプ4の設置数は適宜に変更可能である。また、赤外線ランプ4の設置箇所についても濃縮管2に直接的に且つ効率的に赤外線が照射されるように設置されていれば良く、適宜変更可能である。また、赤外線ランプ4の大きさや形状についても濃縮管2に直接的に且つ効率的に赤外線が照射されるようなものであれば良く、適宜変更可能である。
【0030】
図6に示すように第1の炉6の内側には複数のミラー5が配置されており、第1の炉6の蓋体41が本体基部40に対して閉じられると濃縮管2を中心して濃縮管2と赤外線ランプ4が複数のミラー5によって取り囲まれた状態になる。ミラー5は各赤外線ランプ4に対して1つずつ設けられている。各ミラー5は赤外線ランプ4の長手方向に沿って形成されており、その横断面が半楕円形状に湾曲している。そして、その湾曲部の内面が鏡面になっている。第1の炉6の蓋体41によって本体基部40の開口が閉じられると各ミラー5の鏡面はミラー5に対応している赤外線ランプ4と対向するように配置される。また、各ミラー5は、第1の炉6の蓋体41が閉じられた状態で赤外線ランプ4から赤外線が照射された際に図6中の破線で示すように赤外線ランプ4による反射光が濃縮管2の中心部に収束されるように配置されている。したがって、濃縮管2は赤外線ランプ4からの直接的な赤外線照射と、ミラー5を介した間接的な赤外線照射によって加熱される。つまり、上記のように赤外線ランプ4を配置することで濃縮管2の中心部の一定範囲を均一に加熱することができる。このようにミラー5は赤外線ランプ4から照射された赤外線を濃縮管2に向けて反射させる濃縮管用反射部材として機能する。なお、本実施形態ではミラー5を各赤外線ランプ4に対して1つずつ設ける例を挙げて説明しているが、これに限ることなくミラー5の設置数及び設置箇所などは赤外線ランプ4から照射される赤外線を濃縮管2に向けて効率的に反射させることができるのであれば適宜に変更可能である。
【0031】
分離管7、冷却ガス管8、赤外線ランプ9およびミラー10は図8及び図9に示すように箱状に形成された第2の炉11に収容されている。この第2の炉11の構造は第1の炉6とほぼ同様の構造になっており、分離管7と冷却ガス管8が配置される本体基部44とこの本体基部44の上面に形成されている開口を塞ぐ蓋体45とから構成されている。蓋体45は本体基部44との間に組み付けられているヒンジ機構46を介して本体基部44の一側縁に開閉自在に取り付けられている。
【0032】
蓋体45によって本体基部44の開口が塞がれると第2の炉11の内部に空間が形成される。この空間を形成している第2の炉11の内周面即ち蓋体45の裏面と本体基部44の内面には図9に示すように複数のミラー10が設けられている。また、第2の炉11の内部には複数のミラー10によって取り囲まれるように複数の赤外線ランプ9が設けられている。本体基部44の両端部には半円状の切り欠き44aが形成されており、その切り欠き44a上には分離管7の両端部が断熱材で被覆された状態で載置される。冷却ガス管8の先端部は分離管7の中央部近傍に配置されている(図1参照)。冷却ガス管8の途中は分離管7の一方の端部とともに断熱材によって互いに接触しないように被覆されている。蓋体45の両端部には本体基部44の開口を塞いだときに本体基部44の切り欠き44aに対向する半円状の切り欠き45aが形成されている。したがって、蓋体45によって本体基部44の開口が塞がれると分離管7の両端部と冷却ガス管8が断熱材を介して本体基部44の切り欠き44aと蓋体45の切り欠き45aとで挟持され、図8及び図9に示すように分離管7と冷却ガス管8が赤外線ランプ9及びミラー10によって取り囲まれた状態となる。そして、この状態を保持したまま蓋体45がロック機構47によって本体基部44にロックされる。なお、第2の炉11は内部の空間の空気が第2の炉11の両端部から自然に抜けていくように構成されている。また、本体基部44の壁部と本体基部44に取り付けられているミラー10との間、並びに蓋体45の壁部と蓋体45に取り付けられているミラー10との間には断熱材が充填されている。
【0033】
分離管7は濃縮管2からパイプ17を介して導入された化学成分を種類別に分離するものである。分離管7は折曲形成されたステンレス管からなり、分離管7の一端にはパイプ17がコネクタ19を介して接続されている。分離管7の他端にはパイプ26を介して水素炎イオン化検出器(図示省略)が接続されている。パイプ26の近傍にはパイプ26の形状に沿ってヒーター27が配置されている。このヒーター27はパイプ26を暖めることにより化学成分がパイプ26の内壁に付着することを防止するものである。パイプ26とヒーター27は断熱材によって被覆されている。
【0034】
図1及び図2に示すように、分離管7の中央部はコイル状に形成されており、このコイル状部20の内部には吸着剤21が充填されている。この吸着剤21の素材は吸着剤13と同様の素材からなる。コイル状部20の外壁面には例えば煤あるいは白金黒などの黒体が均一に塗布されており、これによりコイル状部20は赤外線によって均一に加熱される。なお、本実施形態では分離管7としてステンレス管を用いたが、−40℃〜600℃の範囲の温度耐久性を有し且つ熱伝導性に富んだ素材、例えば銅やチタンなどで構成しても良い。
【0035】
冷却ガス管8は冷却ガスを分離管7に向けて搬送し、分離管7に直接的に噴射するものである。図1及び図3に示すように冷却ガス管8は段状に折り曲げられており、その基端はガス冷却装置29に電磁弁23を介して接続されている。ガス冷却装置29は常温の空気を供給して断熱膨張によって空気を冷却するものである。電磁弁23が開放されると冷却ガス管8を通して冷却ガスが分離管7に向けて搬送される。冷却ガス管8の先端部分は直線状に形成されており、その直線状部8aはコイル状部20の内部においてその軸上に配置されている。冷却ガス管8の先端面即ち直線状部8aの先端面は塞がれている。直線状部8aの外周面には冷却ガスが噴き出される噴き出し口8bがその周方向に沿って等間隔に複数の形成されている。また、この周方向に配置された噴き出し口8bは直線状部8aの長手方向に沿って等間隔に複数形成されている。したがって、電磁弁23が開放され冷却ガスが冷却ガス管8に流れると、その冷却ガスは噴き出し口8bからコイル状部20の内周部に向けて放射状に噴射される。ガス冷却装置29では冷却ガスを冷却ガス管8に送り出す圧力値が予め設定されており、この圧力値に従って冷却ガス管9内に冷却ガスが送り出されると、冷却ガスが噴き出し口8bから勢い良く噴出される。このように冷却ガスがコイル状部20の中心部から内周部にかけて放射状に且つ直接的に噴射されることによって分離管7の温度を急速に下げることが可能となる。本実施形態における噴き出し口8bから噴出される冷却ガスの噴出速度は1リットル/分である。なお、この噴出速度は適宜に変更可能である。また、コイル状部20に噴射される冷却ガスの温度条件は常温以下、具体的には10℃以下であり、−20℃〜10℃の温度範囲が好ましい。
【0036】
図8に示すようにコイル状部20の外周にはコイル状部20の外周面から一定の間隔をおいて周方向に沿って即ち図8の2点鎖線で示す円弧状に沿って赤外線ランプ9が6本等間隔に配置されている。これらの赤外線ランプ9は図7に示すようにいずれも直線状に形成されており、コイル状部20の軸を中心にしてその軸方向に沿って並列に配置されている。つまり、分離管7は六方を赤外線ランプ9によって囲まれている。したがって、赤外線ランプ9が通電されると赤外線ランプ9から分離管7に向けて赤外線が照射され、分離管7の一定範囲を均一に加熱することができる。そして、このように分離管7を多方面から輻射加熱することによって分離管7の温度を急速に上げることが可能となる。
【0037】
第2の炉11の内側には複数のミラー10が配置されており、第2の炉11の蓋体45が本体基部44に対して閉じられると分離管7を中心して分離管7と赤外線ランプ9が複数のミラー10によって取り囲まれた状態になる。ミラー10は各赤外線ランプ9に対して1つずつ設けられている。各ミラー10は赤外線ランプ9の長手方向に沿って形成されており、その横断面が円弧状に湾曲している。そして、その湾曲部の内面が鏡面になっている。第2の炉11の蓋体45によって本体基部44の開口が閉じられると各ミラー10の鏡面はミラー10に対応している赤外線ランプ9と対向するように配置される。また、各ミラー10は、第2の炉11の蓋体45が閉じられた状態で赤外線ランプ9から赤外線が照射された際に図9中の破線で示すように赤外線ランプ9による反射光がコイル状部20の中心部に収束されるように配置されている。したがって、分離管7は赤外線ランプ9からの直接的な赤外線照射と、ミラー10を介した間接的な赤外線照射によって加熱される。つまり、上記のように赤外線ランプ4を配置することで分離管7の中心部の一定範囲即ちコイル状部20を均一に且つ急速に加熱することができる。このようにミラー10は赤外線ランプ9から照射された赤外線を分離管7に向けて反射させる分離管用反射部材として機能する。なお、本実施形態ではミラー10を各赤外線ランプ9に対して1つずつ設ける例を挙げて説明しているが、これに限ることなくミラー10の設置数は適宜に変更可能である。また、本実施形態では赤外線ランプ4から照射される赤外線を濃縮管2に向けて反射させるための濃縮管用反射部材としてミラー5を例に挙げて説明し、赤外線ランプ9から照射される赤外線を分離管7に向けて反射させるための濃縮管用反射部材としてミラー10を例に挙げて説明したが、ミラー5、10の代わりに例えば反射型プリズムや薄膜金属層を密着した透明樹脂製の光反射部材などのような赤外線などの輻射線を濃縮管2に向けて反射させることができるような部材であっても良く、適宜に変更可能である。
【0038】
濃縮管2、パイプ15、17、26、冷却ガス管3、8およびコイル状部20のそれぞれの外壁部には熱電対28、29、30、31、32、33、34が1組ずつ例えばスポット溶接で取り付けられている。本実施形態では直径0.3mmのK型の熱電対を採用している。なお、熱電対のタイプはこれに限ることなく適宜に変更可能である。
【0039】
制御装置12は例えばCPUあるいはMPUなどによって構成されており、濃縮分離装置1の全体的な動作例えば赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23、ヒーター24、25、27、ガス冷却装置28、29などの動作を制御するものである。制御装置12には熱電対28〜34に接続されている。また、制御装置12には赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23およびヒーター24、25、27がドライバ4a、9a、22a、23a、24a、25a、27aを介して接続されている。制御装置12のメモリ領域には温度制御プログラムが予め記憶されている。この温度制御プログラムは冷却ガスの噴射や赤外線照射によって濃縮管2や分離管7の温度を予め定められた速度で昇降させたり、あるいは予め定められた温度においてその温度所定時間保持するにあたって赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23、ヒーター24、25、27、ガス冷却装置28、29などの動作を適切に制御するためのプログラムであり、濃縮管2や分離管7の温度は主にこの温度制御プログラムに基づいて制御される。例えば、制御装置12は噴き出し口3a、8bから噴出される冷却ガスの噴出力即ちガス冷却装置28、29の圧力値を主に温度制御プログラムに基づいて制御する。また、制御装置12は冷却ガスの噴出時間即ち電磁弁22、23の開閉時間を主に温度制御プログラムに基づいて制御する。また、制御装置12は赤外線照射の時間即ち赤外線ランプ4、9に対する通電のオン、オフを主に温度制御プログラムに基づいて制御する。
【0040】
赤外線ランプ4、9による赤外線照射あるいはその照射の停止とを行なう場合、制御装置12はドライバ4a、9aに赤外線照射あるいはその照射の停止を示す信号を出力し、ドライバ4a、9aは制御装置12から入力された信号に応答して赤外線の照射あるいはその照射を停止するように赤外線ランプ4、9の動作を制御する。この処理の流れを図10に示すフローチャートに従って説明すると、先ず制御装置12はドライバ4a、9aに赤外線照射あるいはその照射の停止を示す信号を出力する(S1)。ドライバ4a、9aは制御装置12から赤外線照射を示す信号が入力されたことを契機に(S2)、赤外線ランプ4、9から赤外線を照射する(S3)。次いで、ドライバ4a、9aに制御装置12から信号が入力されなかった場合(S4;N)処理が終了する。他方、ドライバ4a、9aに制御装置12から赤外線の照射あるいはその照射を停止することを示す信号が入力され(S4;Y)、それが赤外線照射を停止することを示す信号であった場合(S5;N)、赤外線ランプ4、9による赤外線の照射を停止させ(S6)、赤外線照射を示す信号であった場合(S5;Y)、赤外線ランプ4、9による赤外線の照射を続行する(S3)。
【0041】
また、電磁弁22、23を開閉させる場合、制御装置12はドライバ22a、23aに電磁弁22、23を開状態あるいは閉じ状態にすることを示す信号を出力する。ドライバ22a、23aは制御装置12から入力された信号に応答して電磁弁22、23を開閉させる。この処理の流れを図11に示すフローチャートに従って説明すると、先ず制御装置12はドライバ22a、23aに電磁弁22、23を開状態あるいは閉じ状態にすることを示す信号を出力する(S101)。ドライバ22a、23aは制御装置12から電磁弁22、23を開状態にすることを示す信号が入力されたことを契機に(S102)、電磁弁22、23を開放する(S103)。次いで、ドライバ22a、23aに制御装置12から信号が入力されなかった場合(S104;N)処理が終了する。他方、ドライバ22a、23a制御装置12から電磁弁22、23を開状態あるいは閉じ状態にすることを示す信号が入力され(S104;Y)、それが電磁弁22、23を閉じ状態にすることを示す信号であった場合(S105;N)、電磁弁22、23は閉じられ(S106)、電磁弁22、23を開状態にすることを示す信号であった場合(S105;Y)、電磁弁22、23の開状態を続行する(S103)。
【0042】
因みに、ヒーター24、25、27による加熱あるいはその加熱の停止を行なう場合、制御装置12はドライバ24a、25a、27aによる加熱あるいはその加熱の停止を示す信号を出力する。ドライバ24a、25a、27aは制御装置12から入力された信号に応答してヒーター24、25、27による加熱あるいはその加熱の停止を実行させる。
【0043】
制御装置12は熱電対28〜34で測定される濃縮管2、パイプ15、17、26、冷却ガス管3、8およびコイル状部20のそれぞれの外壁部の温度を常に監視しており、熱電対28〜34での測定結果と温度制御プログラムに基づいて赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23、ヒーター24、25、27の動作を制御する。濃縮管2を例えば炉内の初期設定温度30℃(以下、常温と称する)から350℃に急速に昇温しそこで350℃の温度を所定時間維持する場合、先ず、制御装置12は赤外線ランプ4を作動させ、赤外線の照射を開始させる。制御装置12が熱電対28での測定結果に基づいて濃縮管2の温度が350℃に到達したと判断するとドライバ4aを介して赤外線ランプ4による赤外線照射を停止させる。ここで濃縮管2の温度が余熱で350℃を超えたときにはドライバ22aを介して電磁弁22を開放する。これにより冷却ガスが濃縮管2に噴射され、濃縮管2が迅速に冷却される。冷却され過ぎた場合には再度赤外線ランプ4による赤外線照射を実行する。これらの動作を繰り返すことによって濃縮管2の温度を350℃に所定時間維持することが可能となる。このように350℃にまで急速に昇温させ、その温度を一定時間維持することによって吸着剤13に吸着している化学成分を一斉に脱離させることができる。
【0044】
濃縮管2の温度を例えば350℃から常温まで急速に下げる場合、先ず、赤外線ランプ4による赤外線照射を停止させる。そして、電磁弁22を開放し冷却ガスを濃縮管2に噴射し、熱電対28での測定結果に基づいてその噴射を停止する。なお、本実施形態では多環状芳香族のような有機物を濃縮分離装置1による分離対象物としているため、濃縮管2の最高温度を350℃にしている。つまり、濃縮管2の温度が350℃を超えると、多環状芳香族のような有機物が分解してしまう可能性があるからである。
【0045】
他方、分離管7においてコイル状部20の温度を例えば常温から100℃に昇温し、その温度を所定時間維持する場合、先ず、制御装置12は赤外線ランプ9を作動させ、赤外線の照射を開始させる。制御装置12が熱電対34での測定結果と温度制御プログラムに基づいてコイル状部20の温度が100℃に到達したと判断するとドライバ9aを介して赤外線ランプ9による赤外線照射を停止させる。ここでコイル状部20の温度が余熱で100℃を超えたときには制御装置12はドライバ23aを介して電磁弁23を開放する。これにより冷却ガスがコイル状部20の中心部から内周部に向かって放射状に噴射され、コイル状部20が迅速に冷却される。冷却され過ぎた場合には再度赤外線ランプ9による赤外線照射を実行する。これらの動作を繰り返すことによってコイル状部20の温度を100℃に所定時間維持することが可能となる。以降、制御装置12が上記と同様の制御を行なうこと、即ち制御装置12が熱電対28〜34の測定結果と温度制御プログラムに基づいて赤外線ランプ9及び電磁弁23の動作制御を行なうことによってコイル状部20の温度をステップ状に変化させることが可能となる。例えば、上記のようにコイル状部20を100℃で所定時間維持した後、赤外線照射によって急速に50℃昇温させた後、その温度で制御装置12によって冷却ガスの噴射と赤外線照射を制御することによって150℃で所定時間維持することが可能となり、その後制御装置12によって同様の一連の制御を繰り返し行なっていくことによってコイル状部20の温度を所望の温度にまでステップ状に昇温させていくことが可能となる。
【0046】
コイル状部20の内部の温度を例えば150℃から常温まで急速に下げる場合、赤外線ランプ9による赤外線照射を停止させる。そして、電磁弁23を開放し冷却ガスをコイル状部20の中心部から内周部に向かって放射状に噴射し、熱電対34での測定結果に基づいてその噴射を停止する。因みに、パイプ15、17、26の温度制御についても上記で示した濃縮管2や分離管7に対しての温度制御と同様の方法で制御装置12によってヒーター24、25、27の動作を制御すれば良い。
【0047】
このように制御装置12は熱電対28〜34での測定結果と温度制御プログラムに基づいて赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23およびヒーター24、25、27の動作を制御することで濃縮管2、パイプ15、17、26およびコイル状部20のそれぞれの温度を迅速に且つ容易にコントロールすることが可能となる。
【0048】
以上のように構成された濃縮分離装置1においては、先ず、濃縮管2に試料ガス14が導入される。濃縮管2は冷却ガスによって冷却され吸着剤13に吸着され濃縮される。濃縮管2の内部の温度は赤外線ランプ4によって350℃に迄急速に昇温されるとともに冷却ガスの噴射によって350℃に所定時間維持される。この間に濃縮された化学成分が吸着剤13から一斉に脱離して分離管7に送り込まれる。これにより試料中の化学成分が濃縮管に導入されてから極めて短時間で分離管に到達させることが可能となる。
【0049】
次に濃縮管2から化学成分が導入された分離管7においてコイル状部20に対して赤外線照射と冷却ガスの噴射を繰り返し行うことによって、例えばコイル状部20の温度を100℃〜400℃の範囲で50℃ずつ多段階的に昇温させ、各温度段階において所定時間その温度を維持する。つまり、コイル状部20の温度をステップ状に変化させる。これによって、濃縮管2から分離管7に導入された化学成分が多種類に及ぶ場合、吸着剤21から最も早く脱離して分離管7を通過する化学成分、それに次ぐ速度で分離管7を通過する化学成分、それらよりも遅く分離管7を通過する化学成分などのように各化学成分を分離管7における通過速度毎に分けることが可能となり、各化学成分を種類別、即ち脱離温度別に分離した状態で取り出すことが可能となる。
【0050】
以上のように濃縮分離装置1によれば、多種類の化学成分が導入された分離管7に対しての冷却ガスの噴射と赤外線の照射とを制御し、分離管7の温度を多段階的に昇温するとともに各温度段階でその温度を維持することができるようにしたので、即ち分離管7のコイル状部20における昇温速度をステップ状に変化可能にしたので、分離管7にて化学成分を明確に分離することが可能となり、水素炎イオン化検出器で検出される化学成分の濃度の大きさを表示装置の画面で表示した際には化学成分毎にシャープなピーク形状を得ることが可能となる。また、赤外線ランプ4、9及びミラー5、10によって濃縮管2や分離管7に対して赤外線を直接的且つ間接的に集光させるようにしたので、化学成分の濃縮管2から分離管7への移動速度や分離管7の昇温速度を高めることができ、化学成分の分離に要する時間を大幅に短縮することが可能となる。さらに、コイル状部20の内側に冷却ガス管8を配置し、そこから放射状に冷却ガスを噴射するようにしたので、コイル状部20を急速に冷却することが可能となり、温度調節を迅速に行なうことができるようになる。これにより、温度が一定状態になっている間にその温度が脱離温度である化学成分を選択的に吸着剤から脱離させ分離管7から取り出すことが可能となる。よって、多種類の化学成分の分離を濃縮分離装置1を利用して行なう場合には、各化学成分特有の脱離温度に対応するように温度を迅速に且つ階段状に上昇させ、各温度段階における温度を所定時間一定に保つことにより多種類の化学成分を短時間で明確に分離することが可能となり、従来のガスクロマトグラフによる分析に比してより短時間で正確な分析結果を得ることができるようになる。
【0051】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した実施形態では、ガス冷却装置28、29で常温の空気を冷却し、その冷却ガスを冷却ガス管3、8から噴射する例を挙げて説明したが、例えば液化炭酸ガスから気化するガスを冷却ガスとして使用しても良いし、液体窒素から気化するガスを冷却ガスとして使用しても良く、適宜に変更可能である。
【0052】
また、本実施形態では、冷媒として冷却ガスを用いたが、例えばアルコール液などの液体を冷却液として用いても良い。この場合、冷却液としては、気化熱によって濃縮管2やコイル状部20の温度を常温以下、具体的には濃縮管2については−5℃以下、コイル状部20については10℃以下とすることが可能な液体が好ましい。また、冷媒として冷却液を採用する場合であっても冷却ガス管3、8を利用してその液体を濃縮管2やコイル状部20に向けて勢い良く噴出させることが好ましい。
【0053】
また、本実施形態では、制御装置12の指示に従って赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23およびヒーター24、25、27の動作を制御するようにしたが、熱電対28〜34での測定結果をモニタリングして、その測定結果に基づいて手動操作で赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23およびヒーター24、25、27の動作を制御するようにしても良い。この場合であっても濃縮管2における急速な昇温とその温度の維持、並びに分離管7における昇温速度のステップ状の変化を実現することができる。
【0054】
また、本実施形態では、濃縮分離装置1に導入される試料として試料ガス14を用いたが、ガス分子よりも大きい分子あるいは分子の集合体からなる粒子状物質を試料として用いても良い。つまり、粒子状物質の中に多種類の化学成分が含まれていることを想定した場合、それらの化学成分をガス化してから分離する必要がある。したがって、そのような粒子状物質に含まれる化学成分も濃縮分離装置1を用いて分離することができる。
【実施例】
【0055】
濃縮管2及び分離管7に空気を満たした状態で濃縮分離装置1を用いて昇温実験を行なった。この実験において使用された濃縮管2の材質はステンレス、外径は6mm、全長は240mmである。分離管7の材質はステンレス、外径は4mm、全長は1200mmである。熱電対28〜34は直径0.3mmのK型を使用した。熱電対28、34は濃縮管2、コイル状部20にスポット溶接した。
【0056】
先ず、濃縮管2を冷却ガスで5℃にしてその温度を3分間保持した。これと同時に分離管7を赤外線で加熱するとともに冷却ガスの噴き付けによって100℃で3分間保持した。次に、濃縮管2を赤外線で70秒間加熱し、350℃にしてその温度を2分間保持した。これと同時に分離管7に対して赤外線の照射を行なうことによって10秒間加熱し、50℃昇温させ、分離管7に対して冷却ガスを噴射することによって昇温後の温度を2分間保持した。そして、これを繰り返して50℃ずつ昇温していき最終的に400℃まで昇温した。また、50℃毎の各温度段階においてその温度を2分間保持するようにした。この実験における濃縮管2と分離管7の温度変位を図12に示す。
【0057】
この図12から濃縮分離装置1では濃縮管2の昇温速度を5℃/sにすることができ、従来のオーブン型の加熱方法では200℃以上では昇温速度がせいぜい0.1〜0.5℃/s程度であることを考えると昇温速度が飛躍的に向上していることが分かった。したがって、濃縮管2内の化学成分を濃縮管2から分離管2に迅速に移動させることができることが明らかになった。
【0058】
また、図12から濃縮分離装置1を用いることによって分離管7の温度をステップ状に上げることができ、さらに、各温度段階においてその温度を所定時間保持することが可能であることが確認できた。したがって、多種類の化学成分を明確に分離し、それらを別個に取り出すことができることが明らかになった。また、従来の分離方法で化学成分を分離し、この分離した化学成分を検出器で検出した場合、例えば3,4ベンゾピレンを検出するのに30分程度かかっていた。しかし、濃縮分離装置1を用いることによって検出時間の短縮を図ることができた。その結果を表1及び図13に示す。表1及び図13は濃縮分離装置1で分離された化学成分を水素炎イオン化検出器で検出した結果を示すものである。濃縮分離装置1を用いることによって表1及び図13に示すように3,4ベンゾピレンを約6.5分で検出することができた。また、図13から複数のピークが明確に分離していることが確認できた。これにより多種類の化学成分を濃縮分離装置1で明確に分離することが可能であることが明らかになった。以上のことから、分離管7で分離された化学成分を水素炎イオン化検出器に導入して検出を行なう場合には従来の方法に比べて正確且つ迅速に検出結果の取得ができることが分かった。
【0059】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の濃縮分離装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】分離管と冷却ガス管の配置関係を示す配置図である。
【図3】分離管に対して使用される冷却ガス管の構成を示す概略構成図である。
【図4】濃縮管と赤外線ランプの配置関係を示す概略平面図である。
【図5】濃縮管と冷却ガス管と赤外線ランプとの配置関係を示す概略横断面図である。
【図6】濃縮管の周囲に配置されているミラーと赤外線ランプの配置関係を示す概略横断面図である。
【図7】分離管と赤外線ランプの配置関係を示す概略平面図である。
【図8】分離管と冷却ガス管と赤外線ランプとの配置関係を示す概略横断面図である。
【図9】分離管の周囲に配置されているミラーと赤外線ランプの配置関係を示す概略横断面図である。
【図10】赤外線ランプを作動させるときの処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】電磁弁を作動させるときの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】濃縮管と分離管のそれぞれの温度変位を示す温度グラフである。
【図13】濃縮分離装置で分離された化学成分をガスクロマトグラフで分析した結果を示すグラフであり、各化学成分における濃度の大きさを示すグラフである。
【符号の説明】
【0061】
1 濃縮分離装置
2 濃縮管
3、8 冷却ガス管
3a、8b 噴き出し口
4、9 赤外線ランプ
5、10 ミラー
7 分離管
12 制御装置
13、21 吸着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮分離装置及び方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、試料を濃縮管に導入し、この濃縮管を冷却することによって試料に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した化学成分を濃縮管を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた化学成分を分離管に導入し、この分離管に充填された吸着剤を利用して化学成分を種類別に分離する濃縮分離装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる多種類の化学成分について各化学成分の僅かな差を利用して分離するクロマトグラフ法において、例えば特許文献1には、試料の特定部位に対してレーザー光を照射し、これによって試料から脱離した化学成分を試料室の壁面に付着させ、試料室全体をヒーターで加熱し、壁面に付着している化学成分をガス化して脱離させた後、その化学成分を冷却濃縮管で冷却濃縮してトラップさせ、その冷却濃縮管を急速加熱して、トラップした化学成分を脱離し検出器に送り込み、試料から脱離した化学成分のガスクロマトグラフ質量スペクトルを得る技術が開示されている。また、特許文献2には、濃縮管に吸着した揮発性有化合物類を加熱して脱離させ、その脱離した化学成分を冷却し再濃縮後にガスクロマトグラフに導入する方法が開示されている。
【0003】
ところで、特許文献1及び2に示されているようなガスクロマトグラフ法によって化学成分の分析を行なう場合、一般的に濃縮管と分離管を用いて化学成分の分離が行なわれるが、濃縮管と分離管には化学成分を吸着させるための吸着剤が充填される。そして、多種類の化学成分を吸着剤との吸着力の差を利用して分離する。化学成分の吸着剤に対しての吸着のし易さは化学成分の化学的特性に依存している。例えば多種類の化学成分が分離管に導入されると、それぞれの化学的特性による吸着剤に対しての吸着力の差に応じて分離管内での通過速度に差が生じ、その速度差に応じて化学成分毎に分かれて検出器に送り込まれる。このように分離管では多種類の化学成分がその速度差を利用して分離が行なわれるが、化学成分と吸着剤との吸着のし易さは温度にも依存しており、例えば分離管に化学成分α〜γが導入され、それぞれ吸着剤から脱離する温度(以下、「脱離温度」と称する)が異なりα<β<γの順に脱離温度が大きくなっている場合、分離管が加熱され化学成分αの脱離温度である第1の温度に達すると、化学成分α〜γのうち、化学成分αのみが吸着剤から脱離し、分離管から取り出され、分離管がさらに加熱され化学成分βの脱離温度である第2の温度に達すると、残りの化学成分のうち、化学成分βのみが吸着剤から脱離し、分離管から取り出され、分離管がさらに加熱されγの脱離温度である第3の温度に達すると、化学成分γが吸着剤から脱離することとなる。つまり、分離管に対して少なくとも多段階的な温度調節を行なうことによって各化学成分の脱離温度の差を利用した分離が可能となる。
【特許文献1】特開平7−318552号
【特許文献2】特開平11−183456号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に示されているような従来のガスクロマトグラフ法による化学成分の分離方法では、濃縮管や分離管に対して単純な加熱や冷却を行なっているだけであり、さらに200℃以上では昇温速度がせいぜい0.1〜0.5℃/s程度であることから、温度を急速に上昇させることができず、化学成分の分離に時間を要するという問題が生じる。また、単調な昇温では化学成分が濃縮管から徐々に脱離して分離管に到達することになる。つまり、多種類の化学成分を分離する場合に化学成分の速度の差が小さくなるため明確に分離することができない。このように多種類の化学成分を明確に分離することができないと、例えばガスクロマトグラフでの分析結果として表示装置の画面に表示される化学成分の濃度の大きさを示すピークの形状が低くて広がった形になり、化学成分が特定し難くなってしまうという問題が生じる。特に特許文献1に示すような試料室全体をヒーターで加熱する所謂オーブン型の加熱方法の場合には熱容量が大きいので温度が所望の温度に定まり難く、仮に温度が上がり過ぎた場合にはそれを素早く所定の温度に戻しその温度を保持することも困難であり、これが原因で精度の高い分析を行なうことができなくなってしまう。多種類の化学成分の脱離温度に応じて温度制御を行って各化学成分の移動速度を制御し、それらを分離管からそれぞれ別個に且つ迅速に抽出する場合には、各化学成分に対して各化学成分特有の脱離温度を与えること即ち分離管を多段階的に且つ急速に昇温させるとともに各化学成分を吸着剤から十分に脱離させるために各温度段階においてある程度の時間その温度を保持することが必要になると考えられるが、このような精密な温度制御は既存の技術では行なうことができなかった。そのため多種類の化学成分を迅速に分離してそれらを独立した状態で分離管から取り出すことができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、試料に含まれている多種類の化学成分の分離の精度を高めるとともに分離に要する時間の短縮を図ることができる濃縮分離装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明にかかる濃縮分離装置は、試料を濃縮管に導入し、この濃縮管を冷却することによって試料に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した化学成分を濃縮管を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた化学成分を分離管に導入し、この分離管に充填された吸着剤を利用して化学成分を種類別に分離する濃縮分離装置において、濃縮管の外から濃縮管に冷媒を直接的に噴射する濃縮管用冷媒噴射手段と、冷媒によって冷却された濃縮管を輻射加熱する濃縮管用輻射加熱手段と、分離管の外から分離管に冷媒を直接的に噴射する分離管用冷媒噴射手段と、分離管を輻射加熱する分離管用輻射加熱手段と、濃縮管用輻射加熱手段の輻射加熱によって脱離された化学成分が導入された分離管に対しての分離管用冷媒噴射手段による冷媒噴射を制御するとともに分離管用輻射加熱手段による輻射加熱を制御することによって分離管の温度をステップ状に変化させる温度制御手段とを備えるようにしている。
【0007】
かかる目的を達成するために、請求項7記載の発明にかかる濃縮分離方法は、試料を濃縮管に導入し、この濃縮管を冷却することによって試料に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した化学成分を濃縮管を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた化学成分を分離管に導入し、この分離管に充填された吸着剤を利用して化学成分を種類別に分離する濃縮分離方法において、濃縮管用冷媒噴射手段を用いて濃縮管の外から濃縮管に冷媒を直接的に噴射する工程と、濃縮管用輻射加熱手段を用いて冷媒によって冷却された濃縮管を輻射加熱する工程と、分離管用冷媒噴射手段を用いて分離管の外から分離管に冷媒を直接的に噴射する工程と、分離管用輻射加熱手段を用いて分離管を輻射加熱する工程と、濃縮管用輻射加熱手段の輻射加熱によって脱離された化学成分が導入された分離管に対しての分離管用冷媒噴射手段による冷媒噴射を制御するとともに分離管用輻射加熱手段による輻射加熱を制御することによって分離管の温度をステップ状に変化させる工程とを備えるようにしている。
【0008】
したがって、濃縮管に試料が導入され、その濃縮管を濃縮管用冷媒噴射手段から噴射される冷媒で冷却することによって濃縮管内で化学成分が濃縮される。次いで濃縮管に対して濃縮管用輻射加熱手段から輻射線を放射すると濃縮管が急速に昇温する。この急速な昇温によって濃縮している化学成分が一斉に脱離する。これにより試料中の化学成分を濃縮管に導入してから極めて短時間で分離管に到達させることが可能となる。濃縮管から分離管に化学成分が導入されると、分離管内ではその化学成分が吸着剤に対して吸着と脱離を繰り返しながら出口に向けて進行していく。ここで分離管を分離管用冷媒噴射手段から噴射される冷媒で冷却すると化学成分が吸着剤に確実に吸着する。また、分離管に対して分離管用輻射加熱手段から輻射線を放射すると分離管が急速に昇温され、化学成分が吸着剤から脱離する。この脱着過程において分離管に対しての冷媒噴射と輻射加熱を制御することによって分離管の温度をステップ状に変化させる。つまり、分離管の温度を予め定められた温度即ちある化学成分の脱離温度まで迅速に上昇させ、その温度を所定時間保持するという一連の動作を繰り返して行なう。換言すると、分離管の温度を多段階的に且つ各段階間において迅速に上昇させ、各温度段階において所定時間その温度が保持されるようにする。すると、この間に化学成分の脱離温度に応じて化学成分の分離が選択的に行なわれる。よって、濃縮管から分離管に導入された化学成分が多種類に及ぶ場合、分離管に対しての冷媒噴射と輻射加熱による温度制御を行なうことによって分離管を速く通過する化学成分、それよりも遅く通過する化学成分、さらに遅く通過する化学成分などのように各化学成分を通過速度毎に分けることが可能となる。つまり、各化学成分を種類別即ち脱離温度別に明確に分離した状態で取り出すことが可能となる。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の濃縮分離装置において、濃縮管用輻射加熱手段を濃縮管の外周において周方向に複数配置するようにしている。また、請求項8記載の発明は、請求項7記載の濃縮分離方法において、濃縮管用輻射加熱手段を濃縮管の外周において周方向に複数配置する工程を備えるようにしている。この場合、濃縮管の外周の多方面から濃縮管に向けて輻射線が放射され、それらの輻射線が濃縮管の一定範囲に収束される。これにより濃縮管の昇温速度を高めることができる。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の濃縮分離装置において、濃縮管の周囲に濃縮管用輻射加熱手段から放射された輻射線を濃縮管に向けて反射させる濃縮管用反射部材を配置するようにしている。また、請求項9記載の発明は、請求項7または8記載の濃縮分離方法において、濃縮管の周囲に濃縮管用輻射加熱手段から放射された輻射線を濃縮管に向けて反射させる濃縮管用反射部材を配置する工程を備えるようにしている。この場合、濃縮管用輻射加熱手段から放射される輻射線が濃縮管用反射部材で反射して濃縮管に当てられる。つまり、濃縮管用輻射加熱手段により濃縮管に対して直接的且つ間接的に輻射加熱することができる。したがって、濃縮管の昇温速度をより一層高めることができる。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の濃縮分離装置において、分離管用輻射加熱手段を分離管の外周において周方向に複数配置するようにしている。また、請求項10記載の発明は、請求項7〜9のいずれか1つに記載の濃縮分離方法において、分離管用輻射加熱手段を前記分離管の外周において周方向に複数配置する工程を備えるようにしている。この場合、分離管の外周の多方面から分離管に向けて輻射線が放射され、それらの輻射線が分離管の一定範囲に収束される。これにより分離管の昇温速度を高めることができる。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の濃縮分離装置において、分離管の周囲に分離管用輻射加熱手段から放射された輻射線を分離管に向けて反射させる分離管用反射部材を配置するようにしている。また、請求項11記載の発明は、請求項7〜10のいずれか1つに記載の濃縮分離方法において、分離管の周囲に分離管用輻射加熱手段から放射された輻射線を分離管に向けて反射させる分離管用反射部材を配置する工程を備えるようにしている。この場合、分離管用輻射加熱手段から放射される輻射線が分離管用反射部材で反射して濃縮管に当てられる。つまり、分離管用輻射加熱手段により分離管に対して直接的且つ間接的に輻射加熱することができる。したがって、分離の昇温速度をより一層高めることができる。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の濃縮分離方法において、分離管をコイル状に形成し、このコイル状部の内部においてその軸方向に沿って分離管用冷媒噴射手段を配置するとともに分離管用冷媒噴射手段から冷媒を放射状に噴射するようにしている。また、請求項12記載の発明は、請求項7〜11のいずれか1つに記載の濃縮分離方法において、分離管をコイル状に形成する工程と、このコイル状部の内部においてその軸方向に沿って分離管用冷媒噴射手段を配置する工程と、この分離管用冷媒噴射手段から冷媒を放射状に噴射する工程とを備えるようにしている。この場合、冷媒がコイル状部の中心部から内周部に向けて放射状に噴射されるので、分離管を急速に冷却させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の濃縮分離装置、請求項7記載の濃縮分離方法によれば、濃縮管を急速に加熱することができるので、濃縮管において化学成分を一斉に脱離させることができ、これを短時間で分離管に到達させることができる。これによって例えば水素炎イオン化検出器で検出される化学成分の濃度の大きさを表示装置の画面で表示した際のピークの形状をシャープにすることができる。また、分離管に対しての冷媒噴射と輻射加熱とを制御することによって多段階的且つ迅速な昇温と、各温度段階において所定時間その温度を保持することができるので、多種類の化学成分を高速且つ高精度で分離することが可能となる。
【0015】
また、請求項2及び請求項8の発明の場合、濃縮管を急速に昇温させることが可能となるので、濃縮されている化学成分を短時間で脱離させることができ、化学成分を濃縮管から分離管に導入する際の時間短縮に寄与することができる。このように化学成分を分離管に短時間で到達させることで例えば水素炎イオン化検出器で検出される化学成分の濃度の大きさを表示装置の画面で表示した際のピークの形状をより一層シャープにすることが可能となる。また、試料を濃縮管に導入してから化学成分の分離が終了するまでに要する時間の短縮を図ることができる。
【0016】
また、請求項3及び請求項9記載の発明の場合、濃縮管用反射部材例えばミラーを用いて濃縮管用輻射加熱手段から放射される輻射線例えば赤外線を濃縮管に向けて反射させるという簡単な構造で赤外線を直接的に且つ間接的に濃縮管に集光させることができるので、濃縮管用輻射加熱手段の個数を増やさずに即ちコストを掛けずに濃縮管の昇温速度を高めることができる。そして、昇温速度を高めることによって化学成分の濃縮管から分離管への移動速度も高めることが可能となる。
【0017】
また、請求項4及び請求項10記載の発明の場合、分離管を急速に昇温させることが可能となるので、化学成分を迅速に分離することが可能となる。また、分離管を急速に昇温させることが可能となるので、例えば化学成分が高温にすると分解してしまう可能性のある多環芳香族成分のような有機物の場合には、短時間で加熱することによってその分解を低減することができる。
【0018】
また、請求項5及び請求項11記載の発明の場合、分離管過熱用反射部材例えばミラーを用いて分離管用輻射加熱手段から放射される輻射線例えば赤外線を分離管に向けて反射させるという簡単な構造で赤外線を直接的に且つ間接的に分離管に集光させることができるので、分離管用輻射加熱手段の個数を増やさずに即ちコストを掛けずに分離管の昇温速度を高めることができる。したがって、多種類の化学成分が分離管に導入されている場合には短時間で分離することが可能となる。
【0019】
また、請求項6及び請求項12記載の発明の場合、分離管を急速に冷却することができるので、多段階的に昇温するにあたって各段階温度を一定に保持することができる。また、急冷することが可能なので、分離管の昇温を迅速に抑えることができる。さらに、分離管をある温度に所定時間留めておきたい場合にはその制御が容易に行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1〜図11に本発明の濃縮分離装置の実施形態の一例を示す。本実施形態の濃縮分離装置1は、試料としての試料ガス14を濃縮管2に導入し、この濃縮管2を冷却することによって試料ガス14に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した化学成分を濃縮管2を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた化学成分を分離管7に導入し、この分離管7に充填された吸着剤13、21を利用して化学成分を種類別に分離するものであり、濃縮管2の外から濃縮管2に冷媒である冷却ガスを直接的に噴射する濃縮管用冷媒噴射手段である冷却ガス管3と、冷却ガスによって冷却された濃縮管2を輻射加熱する濃縮管用輻射加熱手段である赤外線ランプ4と、分離管7の外から分離管7に冷却ガスを直接的に噴射する分離管用冷媒噴射手段である冷却ガス管8と、分離管7を輻射加熱する分離管用輻射加熱手段である赤外線ランプ9と、赤外線ランプ4の輻射加熱によって脱離された化学成分が導入された分離管7に対しての冷却ガス管8による冷却ガス噴射を制御するとともに赤外線ランプ9による輻射加熱を制御することによって分離管7の温度をステップ状に変化させる温度制御手段である制御装置12とを備えている。
【0022】
また、本実施形態の濃縮分離方法は、試料としての試料ガス14を濃縮管2に導入し、この濃縮管2を冷却することによって試料ガス14に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した化学成分を濃縮管2を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた化学成分を分離管7に導入し、この分離管7に充填された吸着剤13、21を利用して化学成分を種類別に分離する方法であり、濃縮管用冷媒噴射手段である冷却ガス管3を用いて濃縮管2の外から濃縮管2に冷媒である冷却ガスを直接的に噴射する工程と、濃縮管用輻射加熱手段である赤外線ランプ4を用いて冷却ガスによって冷却された濃縮管2を輻射加熱する工程と、分離管用冷媒噴射手段である冷却ガス管8を用いて分離管7の外から分離管7に冷媒である冷却ガスを直接的に噴射する工程と、分離管用輻射加熱手段である赤外線ランプ9を用いて分離管7を輻射加熱する工程と、赤外線ランプ4の輻射加熱によって脱離された化学成分が導入された分離管7に対しての冷却ガス管8による冷却ガス噴射を制御するとともに赤外線ランプ9による輻射加熱を制御することによって分離管7の温度をステップ状に変化させる工程とを備えている。
【0023】
図1〜図9に示すように、濃縮分離装置1は、濃縮管2、冷却ガス管3、8、赤外線ランプ4、9、ミラー5、10、第1の炉6、分離管7、第2の炉11および制御装置12を備えている。本実施形態の濃縮分離装置1は試料ガス14に含まれる多種類の化学成分、例えば炭化水素や多環芳香族などを分離するものである。そして濃縮分離装置1で分離された化学成分は例えば水素炎イオン化検出器(図示省略)に送り込まれ、そこで分析される。本実施形態で使用する試料ガス14は窒素や酸素などを主成分とする一般的な空気であり、試料ガス14の化学成分とは、本実施形態では例えば3,4ベンゾピレンの分子のような窒素や酸素などの空気の主成分以外の化学成分のことを示す。なお、本実施形態では試料ガス14として空気を例に挙げて説明するが、濃縮分離装置1に導入される試料ガス14はこれに限定される必要はなく例えばディーゼル排気ガスや工場の煙突から排出されるガスなどを対象にしても良いことは言うまでもない。
【0024】
濃縮管2、冷却ガス管3の一部、赤外線ランプ4およびミラー5は図5及び図6に示すように箱状に形成された第1の炉6に収容されている。この第1の炉6は図6に示すように濃縮管2と冷却ガス管3が配置される本体基部40とこの本体基部40の上面に形成されている開口を塞ぐ蓋体41とから構成されており、蓋体41は本体基部40との間に組み付けられているヒンジ機構42を介して本体基部40の一側縁に開閉自在に取り付けられている。
【0025】
蓋体41によって本体基部40の開口が塞がれると第1の炉6の内部に空間が形成される。この空間を形成している第1の炉6の内周面即ち蓋体の裏面と本体基部40の内面には図6に示すように複数のミラー5が設けられている。また、第1の炉6の内部には複数のミラー5によって取り囲まれるように複数の赤外線ランプ4が設けられている。本体基部40の両端部には半円状の切り欠き40aが形成されており、その切り欠き40a上には濃縮管2の両端部が断熱材で被覆された状態で載置される。また、冷却ガス管3の先端部は濃縮管2の中央部近傍に配置されている(図1参照)。冷却ガス管3の途中は濃縮管2の一方の端部とともに断熱材によって互いに接触しないように被覆されている。蓋体41の両端部には本体基部40の開口を塞いだときに本体基部40の切り欠き40aに対向する半円状の切り欠き41aが形成されている。したがって、蓋体41によって本体基部40の開口が塞がれると濃縮管2の両端部と冷却ガス管3が被覆材を介して本体基部40の切り欠き40aと蓋体41の切り欠き41aとで挟持され、図5及び図6に示すように濃縮管2と冷却ガス管3が赤外線ランプ4及びミラー5によって取り囲まれた状態となる。そして、この状態を保持したまま蓋体41がロック機構43によって本体基部40にロックされる。なお、第1の炉6は内部の空間の空気が第1の炉6の両端部から自然に抜けていくように構成されている。また、本体基部40の壁部と本体基部40に取り付けられているミラー5との間、並びに蓋体41の壁部と蓋体41に取り付けられているミラー5との間には断熱材が充填されている。
【0026】
濃縮管2は導入された試料ガス14に含まれている微量な化学成分を濃縮し、例えば水素炎イオン化検出器で分析できる程度の濃度にまで高めるためのものである。濃縮管2は直線状のステンレス管からなり、管内の中央部には吸着剤13が充填されている。この吸着剤13は試料ガス14中の化学成分を一時的に吸着させた後加熱昇温されることによりその化学成分を脱離させるものであり、本実施形態では吸着剤13として珪藻土系の粉体を採用している。化学成分は温度が低いと吸着しやすく、温度が高いと吸着しにくくなるため、濃縮管2を冷却することで濃縮し、加熱することで脱離させることができる。なお、本実施形態では吸着剤13として珪藻土系の粉体を例に挙げて説明しているが、吸着剤13としてはこれに限定される必要はなく、例えば粒径が0.2〜0.5mm程度の珪藻土系の粉体にメチルシリコン溶液を塗布したものやガラス製ビーズなどであっても良い。
【0027】
濃縮管2の一端には濃縮管2内に試料ガス14を導入するためのパイプ15が接続されている。濃縮管2の他端には濃縮管2と分離管7の一端とを接続して濃縮管2と分離管7とを連通するパイプ17がコネクタ18を介して接続されている。パイプ15、17の近傍にはパイプ15、17の形状に沿ってヒーター24、25が配置されている。このヒーター24、25はパイプ15、17を暖めることにより化学成分がパイプ17の内壁に付着することを防止するためのものである。パイプ15とヒーター24、パイプ17とヒーター25は断熱材によって共に被覆されている。なお、本実施形態では濃縮管2としてステンレス管を用いたが、−40℃〜600℃の範囲の温度耐久性を有し且つ熱伝導性に富んだ素材で構成されていれば良く、例えば銅あるいはチタンなどで構成しても良い。
【0028】
冷却ガス管3は冷却ガスを濃縮管2に向けて搬送し、濃縮管2に直接的に噴射するものである。この冷却ガス管3は直線状に形成されており、濃縮管2に長手方向に沿って並列に配置されている。冷却ガス管3において第1の炉6内の空間に入っている部分以外の部分は断熱材で被覆されている。冷却ガス管3の基端はガス冷却装置28に電磁弁22を介して接続されている。ガス冷却装置28は常温の空気を供給して断熱膨張によって空気を冷却するものである。電磁弁22が開放されると冷却ガス管3を通して冷却ガスが濃縮管2に向けて搬送される。冷却ガス管3の先端面は塞がれており、冷却ガス管3の先端部において濃縮管2に対向する面には冷却ガスが噴き出される噴き出し口3aが濃縮管2の長手方向に沿って一定の間隔を置いて複数配置されている。したがって、電磁弁22が開放され冷却ガス管3に冷却ガスが流れると、噴き出し口3aから冷却ガスが濃縮管2に向けて噴射される。ガス冷却装置28では冷却ガスを冷却ガス管3に送り出す圧力値が予め設定されており、この圧力値に従って冷却ガス管3内に冷却ガスが送り出されると、冷却ガスが噴き出し口3aから勢い良く噴出される。そして、このように冷却ガスが濃縮管2に直接的に噴射されることによって濃縮管2の温度を急速に下げることが可能となる。本実施形態において噴き出し口3aから噴出される冷却ガスの噴出速度は1リットル/分である。なお、この噴出速度は適宜に変更可能である。また、濃縮管2に噴射される冷却ガスの温度条件は常温以下、具体的には−5℃以下にすることであり、−20℃〜−5℃の温度範囲が好ましい。
【0029】
図5に示すように濃縮管2の外周には濃縮管2の外周面から一定の間隔をおいて周方向に沿って即ち図5の2点鎖線で示す円弧状に沿って赤外線ランプ4が4本等間隔に配置されている。これらの赤外線ランプ4は図4に示すようにいずれも直線状に形成されており、濃縮管2の軸を中心にして濃縮管2の長手方向に沿って並列に配置されている。つまり、濃縮管2は四方を赤外線ランプ4によって囲まれている。したがって、赤外線ランプ4が通電されると赤外線ランプ4から濃縮管2に向けて赤外線が照射される。このように濃縮管2を多方面から輻射加熱することによって濃縮管2の温度を急速に上げることが可能となる。なお、本実施形態では4本の赤外線ランプ4を用いているが、赤外線ランプ4の設置数は適宜に変更可能である。また、赤外線ランプ4の設置箇所についても濃縮管2に直接的に且つ効率的に赤外線が照射されるように設置されていれば良く、適宜変更可能である。また、赤外線ランプ4の大きさや形状についても濃縮管2に直接的に且つ効率的に赤外線が照射されるようなものであれば良く、適宜変更可能である。
【0030】
図6に示すように第1の炉6の内側には複数のミラー5が配置されており、第1の炉6の蓋体41が本体基部40に対して閉じられると濃縮管2を中心して濃縮管2と赤外線ランプ4が複数のミラー5によって取り囲まれた状態になる。ミラー5は各赤外線ランプ4に対して1つずつ設けられている。各ミラー5は赤外線ランプ4の長手方向に沿って形成されており、その横断面が半楕円形状に湾曲している。そして、その湾曲部の内面が鏡面になっている。第1の炉6の蓋体41によって本体基部40の開口が閉じられると各ミラー5の鏡面はミラー5に対応している赤外線ランプ4と対向するように配置される。また、各ミラー5は、第1の炉6の蓋体41が閉じられた状態で赤外線ランプ4から赤外線が照射された際に図6中の破線で示すように赤外線ランプ4による反射光が濃縮管2の中心部に収束されるように配置されている。したがって、濃縮管2は赤外線ランプ4からの直接的な赤外線照射と、ミラー5を介した間接的な赤外線照射によって加熱される。つまり、上記のように赤外線ランプ4を配置することで濃縮管2の中心部の一定範囲を均一に加熱することができる。このようにミラー5は赤外線ランプ4から照射された赤外線を濃縮管2に向けて反射させる濃縮管用反射部材として機能する。なお、本実施形態ではミラー5を各赤外線ランプ4に対して1つずつ設ける例を挙げて説明しているが、これに限ることなくミラー5の設置数及び設置箇所などは赤外線ランプ4から照射される赤外線を濃縮管2に向けて効率的に反射させることができるのであれば適宜に変更可能である。
【0031】
分離管7、冷却ガス管8、赤外線ランプ9およびミラー10は図8及び図9に示すように箱状に形成された第2の炉11に収容されている。この第2の炉11の構造は第1の炉6とほぼ同様の構造になっており、分離管7と冷却ガス管8が配置される本体基部44とこの本体基部44の上面に形成されている開口を塞ぐ蓋体45とから構成されている。蓋体45は本体基部44との間に組み付けられているヒンジ機構46を介して本体基部44の一側縁に開閉自在に取り付けられている。
【0032】
蓋体45によって本体基部44の開口が塞がれると第2の炉11の内部に空間が形成される。この空間を形成している第2の炉11の内周面即ち蓋体45の裏面と本体基部44の内面には図9に示すように複数のミラー10が設けられている。また、第2の炉11の内部には複数のミラー10によって取り囲まれるように複数の赤外線ランプ9が設けられている。本体基部44の両端部には半円状の切り欠き44aが形成されており、その切り欠き44a上には分離管7の両端部が断熱材で被覆された状態で載置される。冷却ガス管8の先端部は分離管7の中央部近傍に配置されている(図1参照)。冷却ガス管8の途中は分離管7の一方の端部とともに断熱材によって互いに接触しないように被覆されている。蓋体45の両端部には本体基部44の開口を塞いだときに本体基部44の切り欠き44aに対向する半円状の切り欠き45aが形成されている。したがって、蓋体45によって本体基部44の開口が塞がれると分離管7の両端部と冷却ガス管8が断熱材を介して本体基部44の切り欠き44aと蓋体45の切り欠き45aとで挟持され、図8及び図9に示すように分離管7と冷却ガス管8が赤外線ランプ9及びミラー10によって取り囲まれた状態となる。そして、この状態を保持したまま蓋体45がロック機構47によって本体基部44にロックされる。なお、第2の炉11は内部の空間の空気が第2の炉11の両端部から自然に抜けていくように構成されている。また、本体基部44の壁部と本体基部44に取り付けられているミラー10との間、並びに蓋体45の壁部と蓋体45に取り付けられているミラー10との間には断熱材が充填されている。
【0033】
分離管7は濃縮管2からパイプ17を介して導入された化学成分を種類別に分離するものである。分離管7は折曲形成されたステンレス管からなり、分離管7の一端にはパイプ17がコネクタ19を介して接続されている。分離管7の他端にはパイプ26を介して水素炎イオン化検出器(図示省略)が接続されている。パイプ26の近傍にはパイプ26の形状に沿ってヒーター27が配置されている。このヒーター27はパイプ26を暖めることにより化学成分がパイプ26の内壁に付着することを防止するものである。パイプ26とヒーター27は断熱材によって被覆されている。
【0034】
図1及び図2に示すように、分離管7の中央部はコイル状に形成されており、このコイル状部20の内部には吸着剤21が充填されている。この吸着剤21の素材は吸着剤13と同様の素材からなる。コイル状部20の外壁面には例えば煤あるいは白金黒などの黒体が均一に塗布されており、これによりコイル状部20は赤外線によって均一に加熱される。なお、本実施形態では分離管7としてステンレス管を用いたが、−40℃〜600℃の範囲の温度耐久性を有し且つ熱伝導性に富んだ素材、例えば銅やチタンなどで構成しても良い。
【0035】
冷却ガス管8は冷却ガスを分離管7に向けて搬送し、分離管7に直接的に噴射するものである。図1及び図3に示すように冷却ガス管8は段状に折り曲げられており、その基端はガス冷却装置29に電磁弁23を介して接続されている。ガス冷却装置29は常温の空気を供給して断熱膨張によって空気を冷却するものである。電磁弁23が開放されると冷却ガス管8を通して冷却ガスが分離管7に向けて搬送される。冷却ガス管8の先端部分は直線状に形成されており、その直線状部8aはコイル状部20の内部においてその軸上に配置されている。冷却ガス管8の先端面即ち直線状部8aの先端面は塞がれている。直線状部8aの外周面には冷却ガスが噴き出される噴き出し口8bがその周方向に沿って等間隔に複数の形成されている。また、この周方向に配置された噴き出し口8bは直線状部8aの長手方向に沿って等間隔に複数形成されている。したがって、電磁弁23が開放され冷却ガスが冷却ガス管8に流れると、その冷却ガスは噴き出し口8bからコイル状部20の内周部に向けて放射状に噴射される。ガス冷却装置29では冷却ガスを冷却ガス管8に送り出す圧力値が予め設定されており、この圧力値に従って冷却ガス管9内に冷却ガスが送り出されると、冷却ガスが噴き出し口8bから勢い良く噴出される。このように冷却ガスがコイル状部20の中心部から内周部にかけて放射状に且つ直接的に噴射されることによって分離管7の温度を急速に下げることが可能となる。本実施形態における噴き出し口8bから噴出される冷却ガスの噴出速度は1リットル/分である。なお、この噴出速度は適宜に変更可能である。また、コイル状部20に噴射される冷却ガスの温度条件は常温以下、具体的には10℃以下であり、−20℃〜10℃の温度範囲が好ましい。
【0036】
図8に示すようにコイル状部20の外周にはコイル状部20の外周面から一定の間隔をおいて周方向に沿って即ち図8の2点鎖線で示す円弧状に沿って赤外線ランプ9が6本等間隔に配置されている。これらの赤外線ランプ9は図7に示すようにいずれも直線状に形成されており、コイル状部20の軸を中心にしてその軸方向に沿って並列に配置されている。つまり、分離管7は六方を赤外線ランプ9によって囲まれている。したがって、赤外線ランプ9が通電されると赤外線ランプ9から分離管7に向けて赤外線が照射され、分離管7の一定範囲を均一に加熱することができる。そして、このように分離管7を多方面から輻射加熱することによって分離管7の温度を急速に上げることが可能となる。
【0037】
第2の炉11の内側には複数のミラー10が配置されており、第2の炉11の蓋体45が本体基部44に対して閉じられると分離管7を中心して分離管7と赤外線ランプ9が複数のミラー10によって取り囲まれた状態になる。ミラー10は各赤外線ランプ9に対して1つずつ設けられている。各ミラー10は赤外線ランプ9の長手方向に沿って形成されており、その横断面が円弧状に湾曲している。そして、その湾曲部の内面が鏡面になっている。第2の炉11の蓋体45によって本体基部44の開口が閉じられると各ミラー10の鏡面はミラー10に対応している赤外線ランプ9と対向するように配置される。また、各ミラー10は、第2の炉11の蓋体45が閉じられた状態で赤外線ランプ9から赤外線が照射された際に図9中の破線で示すように赤外線ランプ9による反射光がコイル状部20の中心部に収束されるように配置されている。したがって、分離管7は赤外線ランプ9からの直接的な赤外線照射と、ミラー10を介した間接的な赤外線照射によって加熱される。つまり、上記のように赤外線ランプ4を配置することで分離管7の中心部の一定範囲即ちコイル状部20を均一に且つ急速に加熱することができる。このようにミラー10は赤外線ランプ9から照射された赤外線を分離管7に向けて反射させる分離管用反射部材として機能する。なお、本実施形態ではミラー10を各赤外線ランプ9に対して1つずつ設ける例を挙げて説明しているが、これに限ることなくミラー10の設置数は適宜に変更可能である。また、本実施形態では赤外線ランプ4から照射される赤外線を濃縮管2に向けて反射させるための濃縮管用反射部材としてミラー5を例に挙げて説明し、赤外線ランプ9から照射される赤外線を分離管7に向けて反射させるための濃縮管用反射部材としてミラー10を例に挙げて説明したが、ミラー5、10の代わりに例えば反射型プリズムや薄膜金属層を密着した透明樹脂製の光反射部材などのような赤外線などの輻射線を濃縮管2に向けて反射させることができるような部材であっても良く、適宜に変更可能である。
【0038】
濃縮管2、パイプ15、17、26、冷却ガス管3、8およびコイル状部20のそれぞれの外壁部には熱電対28、29、30、31、32、33、34が1組ずつ例えばスポット溶接で取り付けられている。本実施形態では直径0.3mmのK型の熱電対を採用している。なお、熱電対のタイプはこれに限ることなく適宜に変更可能である。
【0039】
制御装置12は例えばCPUあるいはMPUなどによって構成されており、濃縮分離装置1の全体的な動作例えば赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23、ヒーター24、25、27、ガス冷却装置28、29などの動作を制御するものである。制御装置12には熱電対28〜34に接続されている。また、制御装置12には赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23およびヒーター24、25、27がドライバ4a、9a、22a、23a、24a、25a、27aを介して接続されている。制御装置12のメモリ領域には温度制御プログラムが予め記憶されている。この温度制御プログラムは冷却ガスの噴射や赤外線照射によって濃縮管2や分離管7の温度を予め定められた速度で昇降させたり、あるいは予め定められた温度においてその温度所定時間保持するにあたって赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23、ヒーター24、25、27、ガス冷却装置28、29などの動作を適切に制御するためのプログラムであり、濃縮管2や分離管7の温度は主にこの温度制御プログラムに基づいて制御される。例えば、制御装置12は噴き出し口3a、8bから噴出される冷却ガスの噴出力即ちガス冷却装置28、29の圧力値を主に温度制御プログラムに基づいて制御する。また、制御装置12は冷却ガスの噴出時間即ち電磁弁22、23の開閉時間を主に温度制御プログラムに基づいて制御する。また、制御装置12は赤外線照射の時間即ち赤外線ランプ4、9に対する通電のオン、オフを主に温度制御プログラムに基づいて制御する。
【0040】
赤外線ランプ4、9による赤外線照射あるいはその照射の停止とを行なう場合、制御装置12はドライバ4a、9aに赤外線照射あるいはその照射の停止を示す信号を出力し、ドライバ4a、9aは制御装置12から入力された信号に応答して赤外線の照射あるいはその照射を停止するように赤外線ランプ4、9の動作を制御する。この処理の流れを図10に示すフローチャートに従って説明すると、先ず制御装置12はドライバ4a、9aに赤外線照射あるいはその照射の停止を示す信号を出力する(S1)。ドライバ4a、9aは制御装置12から赤外線照射を示す信号が入力されたことを契機に(S2)、赤外線ランプ4、9から赤外線を照射する(S3)。次いで、ドライバ4a、9aに制御装置12から信号が入力されなかった場合(S4;N)処理が終了する。他方、ドライバ4a、9aに制御装置12から赤外線の照射あるいはその照射を停止することを示す信号が入力され(S4;Y)、それが赤外線照射を停止することを示す信号であった場合(S5;N)、赤外線ランプ4、9による赤外線の照射を停止させ(S6)、赤外線照射を示す信号であった場合(S5;Y)、赤外線ランプ4、9による赤外線の照射を続行する(S3)。
【0041】
また、電磁弁22、23を開閉させる場合、制御装置12はドライバ22a、23aに電磁弁22、23を開状態あるいは閉じ状態にすることを示す信号を出力する。ドライバ22a、23aは制御装置12から入力された信号に応答して電磁弁22、23を開閉させる。この処理の流れを図11に示すフローチャートに従って説明すると、先ず制御装置12はドライバ22a、23aに電磁弁22、23を開状態あるいは閉じ状態にすることを示す信号を出力する(S101)。ドライバ22a、23aは制御装置12から電磁弁22、23を開状態にすることを示す信号が入力されたことを契機に(S102)、電磁弁22、23を開放する(S103)。次いで、ドライバ22a、23aに制御装置12から信号が入力されなかった場合(S104;N)処理が終了する。他方、ドライバ22a、23a制御装置12から電磁弁22、23を開状態あるいは閉じ状態にすることを示す信号が入力され(S104;Y)、それが電磁弁22、23を閉じ状態にすることを示す信号であった場合(S105;N)、電磁弁22、23は閉じられ(S106)、電磁弁22、23を開状態にすることを示す信号であった場合(S105;Y)、電磁弁22、23の開状態を続行する(S103)。
【0042】
因みに、ヒーター24、25、27による加熱あるいはその加熱の停止を行なう場合、制御装置12はドライバ24a、25a、27aによる加熱あるいはその加熱の停止を示す信号を出力する。ドライバ24a、25a、27aは制御装置12から入力された信号に応答してヒーター24、25、27による加熱あるいはその加熱の停止を実行させる。
【0043】
制御装置12は熱電対28〜34で測定される濃縮管2、パイプ15、17、26、冷却ガス管3、8およびコイル状部20のそれぞれの外壁部の温度を常に監視しており、熱電対28〜34での測定結果と温度制御プログラムに基づいて赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23、ヒーター24、25、27の動作を制御する。濃縮管2を例えば炉内の初期設定温度30℃(以下、常温と称する)から350℃に急速に昇温しそこで350℃の温度を所定時間維持する場合、先ず、制御装置12は赤外線ランプ4を作動させ、赤外線の照射を開始させる。制御装置12が熱電対28での測定結果に基づいて濃縮管2の温度が350℃に到達したと判断するとドライバ4aを介して赤外線ランプ4による赤外線照射を停止させる。ここで濃縮管2の温度が余熱で350℃を超えたときにはドライバ22aを介して電磁弁22を開放する。これにより冷却ガスが濃縮管2に噴射され、濃縮管2が迅速に冷却される。冷却され過ぎた場合には再度赤外線ランプ4による赤外線照射を実行する。これらの動作を繰り返すことによって濃縮管2の温度を350℃に所定時間維持することが可能となる。このように350℃にまで急速に昇温させ、その温度を一定時間維持することによって吸着剤13に吸着している化学成分を一斉に脱離させることができる。
【0044】
濃縮管2の温度を例えば350℃から常温まで急速に下げる場合、先ず、赤外線ランプ4による赤外線照射を停止させる。そして、電磁弁22を開放し冷却ガスを濃縮管2に噴射し、熱電対28での測定結果に基づいてその噴射を停止する。なお、本実施形態では多環状芳香族のような有機物を濃縮分離装置1による分離対象物としているため、濃縮管2の最高温度を350℃にしている。つまり、濃縮管2の温度が350℃を超えると、多環状芳香族のような有機物が分解してしまう可能性があるからである。
【0045】
他方、分離管7においてコイル状部20の温度を例えば常温から100℃に昇温し、その温度を所定時間維持する場合、先ず、制御装置12は赤外線ランプ9を作動させ、赤外線の照射を開始させる。制御装置12が熱電対34での測定結果と温度制御プログラムに基づいてコイル状部20の温度が100℃に到達したと判断するとドライバ9aを介して赤外線ランプ9による赤外線照射を停止させる。ここでコイル状部20の温度が余熱で100℃を超えたときには制御装置12はドライバ23aを介して電磁弁23を開放する。これにより冷却ガスがコイル状部20の中心部から内周部に向かって放射状に噴射され、コイル状部20が迅速に冷却される。冷却され過ぎた場合には再度赤外線ランプ9による赤外線照射を実行する。これらの動作を繰り返すことによってコイル状部20の温度を100℃に所定時間維持することが可能となる。以降、制御装置12が上記と同様の制御を行なうこと、即ち制御装置12が熱電対28〜34の測定結果と温度制御プログラムに基づいて赤外線ランプ9及び電磁弁23の動作制御を行なうことによってコイル状部20の温度をステップ状に変化させることが可能となる。例えば、上記のようにコイル状部20を100℃で所定時間維持した後、赤外線照射によって急速に50℃昇温させた後、その温度で制御装置12によって冷却ガスの噴射と赤外線照射を制御することによって150℃で所定時間維持することが可能となり、その後制御装置12によって同様の一連の制御を繰り返し行なっていくことによってコイル状部20の温度を所望の温度にまでステップ状に昇温させていくことが可能となる。
【0046】
コイル状部20の内部の温度を例えば150℃から常温まで急速に下げる場合、赤外線ランプ9による赤外線照射を停止させる。そして、電磁弁23を開放し冷却ガスをコイル状部20の中心部から内周部に向かって放射状に噴射し、熱電対34での測定結果に基づいてその噴射を停止する。因みに、パイプ15、17、26の温度制御についても上記で示した濃縮管2や分離管7に対しての温度制御と同様の方法で制御装置12によってヒーター24、25、27の動作を制御すれば良い。
【0047】
このように制御装置12は熱電対28〜34での測定結果と温度制御プログラムに基づいて赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23およびヒーター24、25、27の動作を制御することで濃縮管2、パイプ15、17、26およびコイル状部20のそれぞれの温度を迅速に且つ容易にコントロールすることが可能となる。
【0048】
以上のように構成された濃縮分離装置1においては、先ず、濃縮管2に試料ガス14が導入される。濃縮管2は冷却ガスによって冷却され吸着剤13に吸着され濃縮される。濃縮管2の内部の温度は赤外線ランプ4によって350℃に迄急速に昇温されるとともに冷却ガスの噴射によって350℃に所定時間維持される。この間に濃縮された化学成分が吸着剤13から一斉に脱離して分離管7に送り込まれる。これにより試料中の化学成分が濃縮管に導入されてから極めて短時間で分離管に到達させることが可能となる。
【0049】
次に濃縮管2から化学成分が導入された分離管7においてコイル状部20に対して赤外線照射と冷却ガスの噴射を繰り返し行うことによって、例えばコイル状部20の温度を100℃〜400℃の範囲で50℃ずつ多段階的に昇温させ、各温度段階において所定時間その温度を維持する。つまり、コイル状部20の温度をステップ状に変化させる。これによって、濃縮管2から分離管7に導入された化学成分が多種類に及ぶ場合、吸着剤21から最も早く脱離して分離管7を通過する化学成分、それに次ぐ速度で分離管7を通過する化学成分、それらよりも遅く分離管7を通過する化学成分などのように各化学成分を分離管7における通過速度毎に分けることが可能となり、各化学成分を種類別、即ち脱離温度別に分離した状態で取り出すことが可能となる。
【0050】
以上のように濃縮分離装置1によれば、多種類の化学成分が導入された分離管7に対しての冷却ガスの噴射と赤外線の照射とを制御し、分離管7の温度を多段階的に昇温するとともに各温度段階でその温度を維持することができるようにしたので、即ち分離管7のコイル状部20における昇温速度をステップ状に変化可能にしたので、分離管7にて化学成分を明確に分離することが可能となり、水素炎イオン化検出器で検出される化学成分の濃度の大きさを表示装置の画面で表示した際には化学成分毎にシャープなピーク形状を得ることが可能となる。また、赤外線ランプ4、9及びミラー5、10によって濃縮管2や分離管7に対して赤外線を直接的且つ間接的に集光させるようにしたので、化学成分の濃縮管2から分離管7への移動速度や分離管7の昇温速度を高めることができ、化学成分の分離に要する時間を大幅に短縮することが可能となる。さらに、コイル状部20の内側に冷却ガス管8を配置し、そこから放射状に冷却ガスを噴射するようにしたので、コイル状部20を急速に冷却することが可能となり、温度調節を迅速に行なうことができるようになる。これにより、温度が一定状態になっている間にその温度が脱離温度である化学成分を選択的に吸着剤から脱離させ分離管7から取り出すことが可能となる。よって、多種類の化学成分の分離を濃縮分離装置1を利用して行なう場合には、各化学成分特有の脱離温度に対応するように温度を迅速に且つ階段状に上昇させ、各温度段階における温度を所定時間一定に保つことにより多種類の化学成分を短時間で明確に分離することが可能となり、従来のガスクロマトグラフによる分析に比してより短時間で正確な分析結果を得ることができるようになる。
【0051】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した実施形態では、ガス冷却装置28、29で常温の空気を冷却し、その冷却ガスを冷却ガス管3、8から噴射する例を挙げて説明したが、例えば液化炭酸ガスから気化するガスを冷却ガスとして使用しても良いし、液体窒素から気化するガスを冷却ガスとして使用しても良く、適宜に変更可能である。
【0052】
また、本実施形態では、冷媒として冷却ガスを用いたが、例えばアルコール液などの液体を冷却液として用いても良い。この場合、冷却液としては、気化熱によって濃縮管2やコイル状部20の温度を常温以下、具体的には濃縮管2については−5℃以下、コイル状部20については10℃以下とすることが可能な液体が好ましい。また、冷媒として冷却液を採用する場合であっても冷却ガス管3、8を利用してその液体を濃縮管2やコイル状部20に向けて勢い良く噴出させることが好ましい。
【0053】
また、本実施形態では、制御装置12の指示に従って赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23およびヒーター24、25、27の動作を制御するようにしたが、熱電対28〜34での測定結果をモニタリングして、その測定結果に基づいて手動操作で赤外線ランプ4、9、電磁弁22、23およびヒーター24、25、27の動作を制御するようにしても良い。この場合であっても濃縮管2における急速な昇温とその温度の維持、並びに分離管7における昇温速度のステップ状の変化を実現することができる。
【0054】
また、本実施形態では、濃縮分離装置1に導入される試料として試料ガス14を用いたが、ガス分子よりも大きい分子あるいは分子の集合体からなる粒子状物質を試料として用いても良い。つまり、粒子状物質の中に多種類の化学成分が含まれていることを想定した場合、それらの化学成分をガス化してから分離する必要がある。したがって、そのような粒子状物質に含まれる化学成分も濃縮分離装置1を用いて分離することができる。
【実施例】
【0055】
濃縮管2及び分離管7に空気を満たした状態で濃縮分離装置1を用いて昇温実験を行なった。この実験において使用された濃縮管2の材質はステンレス、外径は6mm、全長は240mmである。分離管7の材質はステンレス、外径は4mm、全長は1200mmである。熱電対28〜34は直径0.3mmのK型を使用した。熱電対28、34は濃縮管2、コイル状部20にスポット溶接した。
【0056】
先ず、濃縮管2を冷却ガスで5℃にしてその温度を3分間保持した。これと同時に分離管7を赤外線で加熱するとともに冷却ガスの噴き付けによって100℃で3分間保持した。次に、濃縮管2を赤外線で70秒間加熱し、350℃にしてその温度を2分間保持した。これと同時に分離管7に対して赤外線の照射を行なうことによって10秒間加熱し、50℃昇温させ、分離管7に対して冷却ガスを噴射することによって昇温後の温度を2分間保持した。そして、これを繰り返して50℃ずつ昇温していき最終的に400℃まで昇温した。また、50℃毎の各温度段階においてその温度を2分間保持するようにした。この実験における濃縮管2と分離管7の温度変位を図12に示す。
【0057】
この図12から濃縮分離装置1では濃縮管2の昇温速度を5℃/sにすることができ、従来のオーブン型の加熱方法では200℃以上では昇温速度がせいぜい0.1〜0.5℃/s程度であることを考えると昇温速度が飛躍的に向上していることが分かった。したがって、濃縮管2内の化学成分を濃縮管2から分離管2に迅速に移動させることができることが明らかになった。
【0058】
また、図12から濃縮分離装置1を用いることによって分離管7の温度をステップ状に上げることができ、さらに、各温度段階においてその温度を所定時間保持することが可能であることが確認できた。したがって、多種類の化学成分を明確に分離し、それらを別個に取り出すことができることが明らかになった。また、従来の分離方法で化学成分を分離し、この分離した化学成分を検出器で検出した場合、例えば3,4ベンゾピレンを検出するのに30分程度かかっていた。しかし、濃縮分離装置1を用いることによって検出時間の短縮を図ることができた。その結果を表1及び図13に示す。表1及び図13は濃縮分離装置1で分離された化学成分を水素炎イオン化検出器で検出した結果を示すものである。濃縮分離装置1を用いることによって表1及び図13に示すように3,4ベンゾピレンを約6.5分で検出することができた。また、図13から複数のピークが明確に分離していることが確認できた。これにより多種類の化学成分を濃縮分離装置1で明確に分離することが可能であることが明らかになった。以上のことから、分離管7で分離された化学成分を水素炎イオン化検出器に導入して検出を行なう場合には従来の方法に比べて正確且つ迅速に検出結果の取得ができることが分かった。
【0059】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の濃縮分離装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】分離管と冷却ガス管の配置関係を示す配置図である。
【図3】分離管に対して使用される冷却ガス管の構成を示す概略構成図である。
【図4】濃縮管と赤外線ランプの配置関係を示す概略平面図である。
【図5】濃縮管と冷却ガス管と赤外線ランプとの配置関係を示す概略横断面図である。
【図6】濃縮管の周囲に配置されているミラーと赤外線ランプの配置関係を示す概略横断面図である。
【図7】分離管と赤外線ランプの配置関係を示す概略平面図である。
【図8】分離管と冷却ガス管と赤外線ランプとの配置関係を示す概略横断面図である。
【図9】分離管の周囲に配置されているミラーと赤外線ランプの配置関係を示す概略横断面図である。
【図10】赤外線ランプを作動させるときの処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】電磁弁を作動させるときの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】濃縮管と分離管のそれぞれの温度変位を示す温度グラフである。
【図13】濃縮分離装置で分離された化学成分をガスクロマトグラフで分析した結果を示すグラフであり、各化学成分における濃度の大きさを示すグラフである。
【符号の説明】
【0061】
1 濃縮分離装置
2 濃縮管
3、8 冷却ガス管
3a、8b 噴き出し口
4、9 赤外線ランプ
5、10 ミラー
7 分離管
12 制御装置
13、21 吸着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を濃縮管に導入し、この濃縮管を冷却することによって前記試料に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した前記化学成分を前記濃縮管を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた前記化学成分を分離管に導入し、この分離管に充填された吸着剤を利用して前記化学成分を種類別に分離する濃縮分離装置において、前記濃縮管の外から前記濃縮管に冷媒を直接的に噴射する濃縮管用冷媒噴射手段と、前記冷媒によって冷却された前記濃縮管を輻射加熱する濃縮管用輻射加熱手段と、前記分離管の外から前記分離管に冷媒を直接的に噴射する分離管用冷媒噴射手段と、前記分離管を輻射加熱する分離管用輻射加熱手段と、前記濃縮管用輻射加熱手段の輻射加熱によって脱離された前記化学成分が導入された前記分離管に対しての前記分離管用冷媒噴射手段による冷媒噴射を制御するとともに前記分離管用輻射加熱手段による輻射加熱を制御することによって前記分離管の温度をステップ状に変化させる温度制御手段とを備えたことを特徴とする濃縮分離装置。
【請求項2】
前記濃縮管用輻射加熱手段を前記濃縮管の外周において周方向に複数配置したことを特徴とする請求項1記載の濃縮分離装置。
【請求項3】
前記濃縮管の周囲に前記濃縮管用輻射加熱手段から放射された輻射線を前記濃縮管に向けて反射させる濃縮管用反射部材を配置したことを特徴とする請求項1または2記載の濃縮分離装置。
【請求項4】
前記分離管用輻射加熱手段を前記分離管の外周において周方向に複数配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の濃縮分離装置。
【請求項5】
前記分離管の周囲に前記分離管用輻射加熱手段から放射された輻射線を前記分離管に向けて反射させる分離管用反射部材を配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の濃縮分離装置。
【請求項6】
前記分離管をコイル状に形成し、このコイル状部の内部においてその軸方向に沿って前記分離管用冷媒噴射手段を配置するとともに前記分離管用冷媒噴射手段から前記冷媒を放射状に噴射することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の濃縮分離装置。
【請求項7】
試料を濃縮管に導入し、この濃縮管を冷却することによって前記試料に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した前記化学成分を前記濃縮管を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた前記化学成分を分離管に導入し、この分離管に充填された吸着剤を利用して前記化学成分を種類別に分離する濃縮分離方法において、濃縮管用冷媒噴射手段を用いて前記濃縮管の外から前記濃縮管に冷媒を直接的に噴射する工程と、濃縮管用輻射加熱手段を用いて前記冷媒によって冷却された前記濃縮管を輻射加熱する工程と、分離管用冷媒噴射手段を用いて前記分離管の外から前記分離管に冷媒を直接的に噴射する工程と、分離管用輻射加熱手段を用いて前記分離管を輻射加熱する工程と、前記濃縮管用輻射加熱手段の輻射加熱によって脱離された前記化学成分が導入された前記分離管に対しての前記分離管用冷媒噴射手段による冷媒噴射を制御するとともに前記分離管用輻射加熱手段による輻射加熱を制御することによって前記分離管の温度をステップ状に変化させる工程とを備えたことを特徴とする濃縮分離方法。
【請求項8】
前記濃縮管用輻射加熱手段を前記濃縮管の外周において周方向に複数配置する工程を備えたことを特徴とする請求項7記載の濃縮分離方法。
【請求項9】
前記濃縮管の周囲に前記濃縮管用輻射加熱手段から放射された輻射線を前記濃縮管に向けて反射させる濃縮管用反射部材を配置する工程を備えたことを特徴とする請求項7または8記載の濃縮分離方法。
【請求項10】
前記分離管用輻射加熱手段を前記分離管の外周において周方向に複数配置する工程を備えたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の濃縮分離方法。
【請求項11】
前記分離管の周囲に前記分離管用輻射加熱手段から放射された輻射線を前記分離管に向けて反射させる分離管用反射部材を配置する工程を備えたことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1つに記載の濃縮分離方法。
【請求項12】
前記分離管をコイル状に形成する工程と、このコイル状部の内部においてその軸方向に沿って分離管用冷媒噴射手段を配置する工程と、この分離管用冷媒噴射手段から前記冷媒を放射状に噴射する工程とを備えたことを特徴とする請求項7〜11のいずれか1つに記載の濃縮分離方法。
【請求項1】
試料を濃縮管に導入し、この濃縮管を冷却することによって前記試料に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した前記化学成分を前記濃縮管を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた前記化学成分を分離管に導入し、この分離管に充填された吸着剤を利用して前記化学成分を種類別に分離する濃縮分離装置において、前記濃縮管の外から前記濃縮管に冷媒を直接的に噴射する濃縮管用冷媒噴射手段と、前記冷媒によって冷却された前記濃縮管を輻射加熱する濃縮管用輻射加熱手段と、前記分離管の外から前記分離管に冷媒を直接的に噴射する分離管用冷媒噴射手段と、前記分離管を輻射加熱する分離管用輻射加熱手段と、前記濃縮管用輻射加熱手段の輻射加熱によって脱離された前記化学成分が導入された前記分離管に対しての前記分離管用冷媒噴射手段による冷媒噴射を制御するとともに前記分離管用輻射加熱手段による輻射加熱を制御することによって前記分離管の温度をステップ状に変化させる温度制御手段とを備えたことを特徴とする濃縮分離装置。
【請求項2】
前記濃縮管用輻射加熱手段を前記濃縮管の外周において周方向に複数配置したことを特徴とする請求項1記載の濃縮分離装置。
【請求項3】
前記濃縮管の周囲に前記濃縮管用輻射加熱手段から放射された輻射線を前記濃縮管に向けて反射させる濃縮管用反射部材を配置したことを特徴とする請求項1または2記載の濃縮分離装置。
【請求項4】
前記分離管用輻射加熱手段を前記分離管の外周において周方向に複数配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の濃縮分離装置。
【請求項5】
前記分離管の周囲に前記分離管用輻射加熱手段から放射された輻射線を前記分離管に向けて反射させる分離管用反射部材を配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の濃縮分離装置。
【請求項6】
前記分離管をコイル状に形成し、このコイル状部の内部においてその軸方向に沿って前記分離管用冷媒噴射手段を配置するとともに前記分離管用冷媒噴射手段から前記冷媒を放射状に噴射することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の濃縮分離装置。
【請求項7】
試料を濃縮管に導入し、この濃縮管を冷却することによって前記試料に含まれる化学成分を濃縮し、その濃縮した前記化学成分を前記濃縮管を加熱することによって脱離させた後、その脱離させた前記化学成分を分離管に導入し、この分離管に充填された吸着剤を利用して前記化学成分を種類別に分離する濃縮分離方法において、濃縮管用冷媒噴射手段を用いて前記濃縮管の外から前記濃縮管に冷媒を直接的に噴射する工程と、濃縮管用輻射加熱手段を用いて前記冷媒によって冷却された前記濃縮管を輻射加熱する工程と、分離管用冷媒噴射手段を用いて前記分離管の外から前記分離管に冷媒を直接的に噴射する工程と、分離管用輻射加熱手段を用いて前記分離管を輻射加熱する工程と、前記濃縮管用輻射加熱手段の輻射加熱によって脱離された前記化学成分が導入された前記分離管に対しての前記分離管用冷媒噴射手段による冷媒噴射を制御するとともに前記分離管用輻射加熱手段による輻射加熱を制御することによって前記分離管の温度をステップ状に変化させる工程とを備えたことを特徴とする濃縮分離方法。
【請求項8】
前記濃縮管用輻射加熱手段を前記濃縮管の外周において周方向に複数配置する工程を備えたことを特徴とする請求項7記載の濃縮分離方法。
【請求項9】
前記濃縮管の周囲に前記濃縮管用輻射加熱手段から放射された輻射線を前記濃縮管に向けて反射させる濃縮管用反射部材を配置する工程を備えたことを特徴とする請求項7または8記載の濃縮分離方法。
【請求項10】
前記分離管用輻射加熱手段を前記分離管の外周において周方向に複数配置する工程を備えたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の濃縮分離方法。
【請求項11】
前記分離管の周囲に前記分離管用輻射加熱手段から放射された輻射線を前記分離管に向けて反射させる分離管用反射部材を配置する工程を備えたことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1つに記載の濃縮分離方法。
【請求項12】
前記分離管をコイル状に形成する工程と、このコイル状部の内部においてその軸方向に沿って分離管用冷媒噴射手段を配置する工程と、この分離管用冷媒噴射手段から前記冷媒を放射状に噴射する工程とを備えたことを特徴とする請求項7〜11のいずれか1つに記載の濃縮分離方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−263670(P2007−263670A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87770(P2006−87770)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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