説明

濃縮装置

【課題】クーラント液などの廃液を低コストで効果的に濃縮可能な濃縮装置を提供する。
【解決手段】濃縮装置では、廃液を貯留する貯留タンク10と、この貯留タンク10から廃液を送給する送給配管20と、この送給配管20を介して送給された廃液を加熱して濃縮する鉛直方向に延伸させた筒状の濃縮器30とを有する濃縮装置であって、濃縮器30は、濃縮した廃液を貯留する貯留部と、廃液が供給される供給部と、供給された廃液を加熱する加熱部とを下から順に備え、供給部には内側に筒状の内管を同軸状に設け、供給部に端部を連通連結した送給配管を介して内管の外側に廃液を送給するとともに、加熱部で濃縮されて沈降する廃液を内管の内側を通して貯留部に導くこととする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削屑あるいは研磨屑を含有したクーラント液などの懸濁液、あるいは油などの液体が混入した排水などの廃液を濃縮する濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の加工品やセラミックス製の加工品などを所用の工具で切削加工あるいは研磨加工する場合には、切削あるいは研磨にともなって加工品や工具が加熱して変性したり、あるいは静電気が発生したりすることを防止するために、クーラント液などの潤滑液をかけ流しながら加工することが多い。
【0003】
加工品や工具にかけ流したクーラント液は、切削屑あるいは研磨屑などを含有しているので、回収した後に濾過などを行って切削屑あるいは研磨屑を除去し、再利用している。
【0004】
しかしながら、クーラント液は使用にともなって劣化していくので、著しく劣化したクーラント液は産業廃棄物として焼却処分としている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、クーラント液だけでなく、洗浄液などのように油などの液体や異物が混入した排水なども産業廃棄物として焼却処分されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−328675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
産業廃棄物として焼却処分されるクーラント液や排水などの廃液は、多くの場合、産業廃棄物の処分施設まで移送する必要があり、移送コストが嵩むという問題があった。
【0008】
そこで、移送コストを抑制するためにクーラント液などの廃液を濃縮することが望ましいが、この濃縮処理に要するコストが移送コストの削減分よりも大きくなるようでは無意味であり、できるだけ低コストで廃液を濃縮する必要があった。
【0009】
そこで、本発明者は、クーラント液などの廃液を低コストで効果的に濃縮可能な濃縮装置を提供すべく研究開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の濃縮装置では、廃液を貯留する貯留タンクと、この貯留タンクから廃液を送給する送給配管と、この送給配管を介して送給された廃液を加熱して濃縮する鉛直方向に延伸させた筒状の濃縮器とを有する濃縮装置であって、濃縮器は、濃縮した廃液を貯留する貯留部と、廃液が供給される供給部と、供給された廃液を加熱する加熱部とを下から順に備え、供給部には内側に筒状の内管を同軸状に設け、供給部に端部を連通連結した送給配管を介して内管の外側に廃液を送給するとともに、加熱部で濃縮されて沈降する廃液を内管の内側を通して貯留部に導くこととした。
【0011】
さらに、本発明の濃縮装置では、以下の点にも特徴を有するものである。
(1)内管の上端に上方に向けて拡開状とした漏斗を設けたこと。
(2)濃縮器の加熱部に一方の端部を連通連結して廃液を加熱部から横溢させる横溢配管と、この横溢配管に流入した廃液を貯留するとともに濃縮する鉛直方向に延伸させた筒状の補助濃縮器と、一方端を濃縮器の供給部に連通連結し、他方端を補助濃縮器に連通連結して補助濃縮器内の未濃縮の廃液を濃縮器に環流させる環流用配管とを有すること。
(3)供給部には、送給配管の端部が連通連結されて廃液が送給される送給口の上側に、供給部内の廃液を加熱する補助加熱器を設けたこと。
(4)補助加熱器は漏斗よりも下側に設けたこと。
(5)加熱部には熱水を熱媒体として前記廃液を加熱する熱交換器を設けるとともに、供給部の補助加熱器では熱交換器から排出された熱水で廃液を加熱すること。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、濃縮装置は、濃縮した廃液を貯留する貯留部と、廃液が供給される供給部と、供給された廃液を加熱する加熱部とを下から順に備えた筒状の濃縮器を備え、供給部には内側に筒状の内管を同軸状に設け、供給部に端部を連通連結した送給配管を介して内管の外側に貯留タンクから廃液を送給するとともに、加熱部で濃縮されて沈降する廃液を内管の内側を通して貯留部に導くことにより、廃液を効果的に濃縮することができ、低コストの濃縮装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の濃縮装置は、図1に示すように、廃液を貯留する貯留タンク10と、この貯留タンク10から廃液を送給する送給配管20と、この送給配管20を介して送給された廃液を加熱して濃縮する鉛直方向に延伸させた筒状の濃縮器30とを有するものである。
【0014】
特に、貯留タンク10は、濃縮器30よりも高い位置に配置して、重力を利用して貯留タンク10から濃縮器30に廃液を送り込んでいる。
【0015】
したがって、貯留タンク10から濃縮器30の間に送給ポンプなどの送給手段を設ける必要がなく、濃縮装置を低コストで構成できるだけでなく、クーラント液などの懸濁液中の懸濁個体が送給ポンプに詰まったりしないことによりメンテナンス性を向上させて、維持管理コストを低減できる。
【0016】
濃縮器30では、後述するように送給配管20を介して供給された廃液を加熱しており、加熱によって濃縮された廃液を下端から取出可能としている。
【0017】
さらに、本実施形態の濃縮装置では、濃縮器30に横溢配管40の一方端を連通連結して、濃縮器30において加熱された廃液を横溢配管40によって横溢させて補助濃縮器50に送給している。
【0018】
補助濃縮器50は濃縮器30と同様の鉛直方向に延伸させた筒状とし、濃縮器30から横溢配管40に流入した廃液を貯留するとともに濃縮している。補助濃縮器50において濃縮された廃液は、補助濃縮器50の下端に設けた合流配管60によって濃縮器30内の濃縮された廃液に合流させて、濃縮器30内の濃縮された廃液の排出時に、一緒に排出可能としている。
【0019】
さらに、補助濃縮器50には、一方端を濃縮器30に連通連結した環流用配管70の他方端を連通連結して、補助濃縮器50内の濃縮されていない未濃縮の廃液を濃縮器30に環流させて濃縮器30で再度濃縮させることにより、濃縮効率を向上させている。
【0020】
濃縮器30の上部には、廃液の加熱によって廃液から蒸発した蒸気を凝縮器80に導く蒸気配管90を設けており、凝縮器80において蒸気から凝縮して生成した凝縮液体を再利用可能としている。
【0021】
以下において、本実施形態の濃縮装置の要部である濃縮器30及び補助濃縮器50について詳説する。
【0022】
濃縮器30は、図2に示すように、下から順に、濃縮した廃液を貯留する貯留部31と、送給配管20を介して廃液が供給される供給部32と、供給された廃液を加熱する加熱部33とで構成している。本実施形態では、貯留部31と、供給部32と、加熱部33は、それぞれ端部に連結用のフランジを設けた筒体としており、適宜のパッキンを介しながら互いのフランジを重ね合わせ、固定用のボルトとナットを用いて連結している。
【0023】
貯留部31は所定の内容量となる長さの筒体としている。貯留部31の下端には第1開閉弁34を設けており、この第1開閉弁34を開状態とすることによって貯留部31内に貯留した廃液を排出可能としている。本実施形態では、貯留部31には分岐路31aを設けており、後述するように、この分岐路31aを介して補助濃縮器50で濃縮された廃液を濃縮器30に合流させている。
【0024】
貯留部31の上部には第2開閉弁35を設けており、この第2開閉弁35を介して貯留部31と供給部32とを連結している。
【0025】
供給部32は、所定長さの筒体であって、特に、本実施形態では、供給部32は、上部筒体32aと下部筒体32bとを上下に連結して構成している。
【0026】
供給部32の内側には、筒状の内管32cを同軸状に設けており、濃縮された廃液の流れと、十分に濃縮されていない未濃縮の廃液の流れとを内管32cで仕切り、各廃液をスムーズに移動可能としている。
【0027】
すなわち、送給配管20を介して供給部32に送給された廃液は、送給配管20の端部が連通連結されている供給部32の送給口32dから内管32cの外側に送給され、内管32cの外側を通って加熱部33に向けて移動することとなっている。
【0028】
一方、後述するように加熱部33で濃縮された廃液は、濃縮にともなって比重が大きくなることにより沈降し、内管32cの内側を通して貯留部31に向けて導いている。特に、廃液がクーラント液などの懸濁液の場合には、廃液の加熱にともなって懸濁個体の凝集が生じやすくなり、凝集した懸濁個体である凝集体は、内管32cの内側を通って貯留部31に向けて沈降する。
【0029】
このように、未濃縮の廃液の流れと、濃縮された廃液の流れまたは凝縮体の流れとを仕切る内管32cを設けたことによって、濃縮された廃液をスムーズに貯留部31に導く一方で、未濃縮の廃液をスムーズに加熱部33に導くことができ、濃縮器30における濃縮効率を向上させることができる。
【0030】
供給部32では、下部筒体32bに送給口32dを設けており、送給口32dの上側の上部筒体32aに、供給部32内の廃液を加熱する補助加熱器32eを設けている。
【0031】
補助加熱器32eは、電気ヒータなどの発熱体で構成することもできるが、本実施形態では、熱水を貯留して廃液を加熱可能とした熱水貯留室としている。すなわち、補助加熱器32eは、上部筒体32aの内側面に沿って円筒状に内部周面壁32fを設けて熱水などの熱媒体を貯留可能とし、熱水で加熱された内部周面壁32fを介して廃液を加熱している。
【0032】
なお、内管32cは、補助加熱器32eの内部周面壁32fに取り付けた図示しないガイド体に装着することにより、円筒状の供給部32の中央に同軸状に設けている。内管32cの下端は、下部筒体32bに設けた送給口32dよりも下方まで延伸させている。
【0033】
供給部32に補助加熱器32eを設けて供給部32内の廃液を加熱することにより、送給口32dから供給部32内に送給された廃液を直ちに加熱して、内管32cの外側の廃液に上昇流を生じさせることができるので、廃液を加熱部33にスムーズに送給できる。
【0034】
内管32cの上端には、上方に向けて拡開状とした漏斗32gを設けている。この漏斗32gによって、加熱部33から沈降してきた濃縮された廃液を内管32c内にスムーズに導くことができるので、内管32cを細径とすることができ、供給部32が太径化することを抑制してコンパクトな供給部32とすることができる。
【0035】
特に、漏斗32gは補助加熱器32eの高さよりも上側となるように、補助加熱器32eを漏斗32gよりも下側に設けていることにより、内側に向けて膨出状に設けた補助加熱器32eと拡開状となった漏斗32gとが互いに干渉することがなく、供給部32が太径化することを抑制できる。
【0036】
しかも、拡開状となった漏斗32gが、内管32cの外側を上昇する廃液の流路を狭めることとなるので、上昇する廃液の液流が、加熱部33から沈降してきた濃縮された廃液の流れを阻害しにくくすることができ、濃縮された廃液を内管32cにスムーズに導くことができる。
【0037】
加熱部33は、所定長さの筒体としており、本実施形態では、筒状とした熱交換器33aと、この熱交換器33aの上部に設けて、熱交換器33aによって加熱された廃液の蒸発を促す筒状の蒸発室33bとで構成している。
【0038】
熱交換器33aは、筒状とした周面壁33a-1と、この周面壁33a-1の上部を閉塞する上面壁33a-2と、周面壁33a-1の下部を閉塞する下面壁33a-3とにより内部に熱水などの熱媒体を貯留可能とした熱浴と、一方端を上面壁33a-2に接続するとともに他方端を下面壁33a-3に接続することにより熱浴を縦断する複数の流通管33a-4を備えている。熱交換器33aには、熱浴内の圧力の異常上昇を防止するためのリリーフ弁33a-5を設けている。
【0039】
この熱交換器33aでは、流通管33a-4を通して廃液を供給部32から蒸発室33bに送給する際に熱浴によって廃液を加熱し、廃液中に蒸発気泡を生じさせて、この蒸発気泡の比重を利用して加熱された廃液をより効果的に上昇させている。特に、熱交換器33aでは、上端側を下端側よりも太径として多くの熱水を貯留させることにより、より多くの熱エネルギーを供給可能として、廃液を効果的に加熱可能としている。
【0040】
さらに、複数設けられる流通管33a-4は、供給部32に設けた漏斗32gの直上方位置に設けて、流通管33a-4を通って供給部32に沈降した濃縮された廃液が確実に漏斗32g内に導かれるようにしている。
【0041】
特に、供給部32の内管32cには上端に上方に向けて拡開状とした漏斗32gを設けたことによって、熱交換器33aにより多くの流通管33a-4を設けることができ、熱交換器33aにおける加熱効率を向上させることができる。
【0042】
熱交換器33aでは、上面壁33a-2寄りの周面壁33a-1に熱水を供給する給湯管100を連通連結し、下面壁33a-3寄りの周面壁33a-1に熱水を排出する第1排水管110を連通連結している。
【0043】
第1排水管110の他方端は供給部32の補助加熱器32eに連通連結して、補助加熱器32eに熱交換器33aから排出された熱水を導き、熱交換器33aから排出された熱水を用いて廃液を加熱することとしている。
【0044】
したがって、熱媒体の熱水の熱エネルギーを有効活用することができるので、熱効率を向上させることができる。特に、廃液は、補助加熱器32eで一旦加熱された後に、熱交換器33aにおいてより大きな熱エネルギーで加熱されることにより、効果的に加熱することができるだけでなく、補助加熱器32eでは、熱交換器33aよりも小さな熱エネルギーで加熱していることとなっているので、廃液の突沸などを生じさせるおそれを解消できる。
【0045】
蒸発室33bは筒状としており、上端部には蒸気配管90を接続している。この蒸気配管90は、他方端を凝縮器80に接続して、凝縮器80において廃液の蒸気を凝縮させている。
【0046】
蒸発室33bには、所定の高さに主横溢配管41の一方端を連通連結し、この主横溢配管41を介して蒸発室33b内の廃液を横溢させている。すなわち、蒸発室33bでは、主横溢配管41を介して廃液を横溢させることにより、蒸発室33b内の廃液の液面を一定に保持している。
【0047】
また、蒸発室33bでは、廃液を横溢させることにより、廃液の蒸発にともなって発生するスラッジなどの固形状の付着物を主横溢配管41に流し込ませることができ、蒸発室33b内の廃液の液面がスラッジなどの固形状の付着物で覆われて蒸発効率が低下することを防止している。
【0048】
さらに、本実施形態の蒸発室33bには、主横溢配管41よりも上側に補助横溢配管42の一方端を連通連結している。この補助横溢配管42では、蒸発室33b内で発生して、主横溢配管41を超えて吹き上がった泡によって押し上げられた廃液を泡とともに横溢させており、廃液や泡が蒸気配管90に流入することを防止している。
【0049】
主横溢配管41及び補助横溢配管42は、他方端側を鉛直方向に延伸させた筒状の補助濃縮器50に接続している。
【0050】
補助濃縮器50では、主横溢配管41及び補助横溢配管42を介して流入してきた廃液を貯留するとともに濃縮している。
【0051】
すなわち、補助濃縮器50は、下から順に、濃縮した廃液を貯留する補助貯留部51と、十分に濃縮されていない未濃縮の廃液を分離するための分離部52と、廃液を冷却する冷却部53とで構成している。本実施形態では、補助貯留部51と、分離部52と、冷却部53は、それぞれ端部に連結用のフランジを設けた筒体としており、適宜のパッキンを介しながら互いのフランジを重ね合わせ、固定用のボルトとナットを用いて連結している。
【0052】
補助貯留部51は所定の内容量となる長さの筒体としている。補助貯留部51の下端には合流配管60の一方端を連通連結し、この合流配管60の他方端を濃縮器30の貯留部31に設けた分岐路31aに連通連結して、補助濃縮器50で濃縮された廃液を濃縮器30の貯留部31に合流させている。
【0053】
補助貯留部51の上部には第3開閉弁54を設けており、この第3開閉弁54を介して補助貯留部51と分離部52とを連結している。
【0054】
分離部52は、所定長さの筒体であって、分離部52の内側には、筒状の分離用内管52aを同軸状に設けている。
【0055】
特に、分離用内管52aの上端には、上方に向けて拡開状とした上部漏斗52bを設け、分離用内管52aの下端には、下方に向けて拡開状とした下部漏斗52cを設けている。
【0056】
冷却部53は、筒状とした熱交換器であって、筒状の周面壁53-1と、この周面壁53-1の上部を閉塞する上面壁53-2と、周面壁53-1の下部を閉塞する下面壁53-3とにより内部に熱媒体を貯留可能とした熱浴と、一方端を上面壁53-2に接続するとともに他方端を下面壁53-3に接続することにより熱浴を縦断する複数の流通管53-4を備えている。
【0057】
冷却部53の熱浴には、一方端を供給部32の補助加熱器32eに連通連結した第2排水管120の他方端を連通連結して、補助加熱器32eから排出された熱水を供給するとともに、補助加熱器32eから排出された熱水よりも低温の冷却水を供給する給水管140を連通連結して、流通管53-4内を通る廃液を冷却可能としている。また、冷却部53の熱浴には第3排水管130を連通連結して、冷却部53の熱浴内の冷却水を排水可能としている。
【0058】
冷却部53の熱浴には、第2排水管120から温度が比較的低下した熱水が送給されるとともに、必要に応じて給水管140から冷却水が供給されるので、主横溢配管41及び補助横溢配管42から補助濃縮器50に横溢して冷却部53の流通管53-4を通る廃液を冷却することができる。
【0059】
ここで、主横溢配管41及び補助横溢配管42から補助濃縮器50に横溢した廃液は、濃縮器30の加熱部33で液体成分の一部が蒸発していることにより濃縮されており、冷却部53で冷却されて比重がより大きくなることによって沈降し、分離部52を通って補助貯留部51に貯留されることとなる。
【0060】
このとき、沈降する廃液は、分離部52に設けた分離用内管52aの上端に設けた上部漏斗52bによって案内されて分離用内管52aの内側を通って沈降する。
【0061】
補助貯留部51に貯留された廃液は、比重によって分離が生じ、十分に濃縮されていない未濃縮の廃液は濃縮された廃液よりも比重が小さいために、濃縮された廃液の上側に溜まることとなる。
【0062】
したがって、分離部52では、分離用内管52aの外側に未濃縮の廃液が溜まることとなっている。特に、分離用内管52aの下端には下部漏斗52cを設けたことにより、分離用内管52aの外側に濃縮された廃液が滲入することを抑制しやすくすることができる。
【0063】
さらに、補助濃縮器50の分離部52には、一方端を濃縮器30の供給部32に連通連結した環流用配管70の他方端を連通連結して、分離用内管52aの外側に溜まっている未濃縮の廃液を供給部32に環流させている。
【0064】
供給部32に環流された廃液は、濃縮器30において再度濃縮されることにより、濃縮効率を向上させることができる。本実施形態では、補助濃縮器50の分離部52から環流させた廃液を供給部32の上部筒体32aに環流させているが、下部筒体32bに環流させてもよい。
【0065】
このように、本実施形態の濃縮装置では、送給配管20を介して貯留タンク10から送給された廃液を筒状の濃縮器30で加熱して濃縮させることにより、効果的に濃縮させることができるとともに、濃縮器30から横溢させた廃液は補助濃縮器50で濃縮させる一方で、補助濃縮器50内の未濃縮の廃液を濃縮器30に環流させることにより、さらに効果的に濃縮させることができる。
【0066】
また、給湯管100を介して加熱部33の熱交換器33aに供給する熱水は、第3排水管130を介して補助濃縮器50の冷却部53の熱浴から排出された冷却水を、太陽熱温水器などの給湯器を用いて加熱して生成した熱水とすることにより、低コストで廃液を加熱することができ、ランニングコストを抑制できる。
【0067】
特に、第3排水管130を介して太陽熱温水器などの給湯器に送給される冷却水の大部分は、第2排水管120を介して供給部32の補助加熱器32eから送給された水であるため、給水管140を介して水の供給があったとしても常温よりも高温の状態となっているので、給湯器において高効率で熱水を生成することができる。
【0068】
なお、熱水は、太陽熱温水器を用いて生成する形態に限定するものではなく、適宜の加熱ヒータを用いて生成してもよい。また、熱水は、加圧状態として使用することにより100℃以上の高温として使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態にかかる濃縮装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる濃縮装置の要部説明図である。
【符号の説明】
【0070】
10 貯留タンク
20 送給配管
30 濃縮器
31 貯留部
32 供給部
32a 上部筒体
32b 下部筒体
32c 内管
32d 送給口
32e 補助加熱器
32f 内部周面壁
32g 漏斗
33 加熱部
33a 熱交換器
33b 蒸発室
40 横溢配管
41 主横溢配管
42 補助横溢配管
50 補助濃縮器
51 補助貯留部
52 分離部
52a 分離用内管
52b 上部漏斗
52c 下部漏斗
53 冷却部
60 合流配管
70 環流用配管
100 給湯管
110 第1排水管
120 第2排水管
130 第3排水管
140 給水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃液を貯留する貯留タンクと、
この貯留タンクから前記廃液を送給する送給配管と、
この送給配管を介して送給された前記廃液を加熱して濃縮する鉛直方向に延伸させた筒状の濃縮器と
を有する濃縮装置であって、
前記濃縮器は、
濃縮した前記廃液を貯留する貯留部と、
前記廃液が供給される供給部と、
供給された前記廃液を加熱する加熱部と
を下から順に備え、
前記供給部には内側に筒状の内管を同軸状に設け、前記供給部に端部を連通連結した前記送給配管を介して前記内管の外側に前記廃液を送給するとともに、前記加熱部で濃縮されて沈降する前記廃液を前記内管の内側を通して前記貯留部に導く濃縮装置。
【請求項2】
前記内管の上端に上方に向けて拡開状とした漏斗を設けた請求項1記載の濃縮装置。
【請求項3】
前記濃縮器の前記加熱部に一方の端部を連通連結して前記廃液を前記加熱部から横溢させる横溢配管と、
この横溢配管に流入した前記廃液を貯留するとともに濃縮する鉛直方向に延伸させた筒状の補助濃縮器と、
一方端を前記濃縮器の前記供給部に連通連結し、他方端を前記補助濃縮器に連通連結して前記補助濃縮器内の未濃縮の前記廃液を前記濃縮器に環流させる環流用配管と
を有する請求項2記載の濃縮装置。
【請求項4】
前記供給部には、前記送給配管の端部が連通連結されて前記廃液が送給される送給口の上側に、前記供給部内の前記廃液を加熱する補助加熱器を設けた請求項1〜3のいずれか1項に記載の濃縮装置。
【請求項5】
前記補助加熱器は、前記漏斗よりも下側に設けた請求項4記載の濃縮装置。
【請求項6】
前記加熱部には熱水を熱媒体として前記廃液を加熱する熱交換器を設けるとともに、
前記供給部の前記補助加熱器では前記熱交換器から排出された前記熱水で前記廃液を加熱する請求項4または請求項5に記載の濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−36096(P2010−36096A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201209(P2008−201209)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(508236376)
【Fターム(参考)】