説明

濡れた疎水性フィルタの吹き飛ばしクリーニング方法およびこの方法を実施する装置

本発明は、濡れた疎水性フィルタの吹き飛ばしクリーニング方法に関するものであり、第1ステップで疎水性フィルタの通気性を測定し、第2ステップで、疎水性フィルタの詰まりを検出した場合、接続した空気ポンプにより疎水性フィルタを吹き飛ばしてクリーニングする。本発明は、さらに、この方法を実施する装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濡れた疎水性フィルタを吹き飛ばしによりクリーニングする方法およびこの方法を実施する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体外血液循環における圧力を測定するために、この血液循環から分岐するチューブ導管を介して、体外血液循環中に圧力センサを接続することは、既に知られている。原理的に、この接続導管は血液循環における任意のポイント、例えば血液循環中に存在する静脈空気分離チャンバから、分岐することができる。
【0003】
圧力センサを接続する分岐チューブには、所定量の空気を含ませ、それにより圧力を圧力センサに伝送する。通常、圧力センサは血液処理装置に組み込まれている。血液処理装置内への好ましくない血液量の増大を防止するため、少なくとも1個の疎水性保護フィルタを導管内に配置する。体外血液循環における血液チューブの残りのセットと共に、この疎水性フィルタは血液処理の完了の際に破棄される。
【0004】
体外血液循環の動作中、疎水性フィルタが血液によって濡れ、これにより、少なくとも部分的な詰まりが片側に生ずる。このことは、圧力測定における操作性阻害を、部分的に漸増させる。この問題は特許文献1(欧州特許出願公開第0330761号)に記載されている。この文献によれば、不具合を検出することができるためには、圧力センサが静圧を検出するだけではなく、体外血液循環中に存在する圧力変動も検出されるべきであると教示している。圧力センサシステムの感度が低下していく限り、正確な静圧を表示しないだけでなく、もはや周期的圧力変動も表示しなくなる。圧力センサによって圧力変動をもはや正常に検出することができない場合、疎水性フィルタがもはや十分正確に圧力測定できない程度にまで詰まりを生じていると結論付けることができる。
【0005】
使用者のこの問題を認識している限り、フィルタは制御した方法で破棄し、第2のフィルタと交換することができる。しかし、一般的には、疎水性フィルタは血液チューブの全体セットに接続されており、したがって、フィルタ交換のみを行うことは相当な労力を伴う。
【0006】
特許文献2(米国特許第3,964,479号)には、体外血液循環中において、圧力センサを血液循環内に設けられた空気分離チャンバの分岐ポイントに接続することが記載されている。この米国特許は、空気分離チャンバ内部における液面を所要高さに調節する問題を取り扱っている。このために、空気ポンプを空気分離チャンバと圧力センサとの間における導管から分岐し、この導管に疎水性フィルタも周知の解決法によって設け、空気ポンプは空気分離チャンバ内の液面レベルを所定レベルにセットするのに供する。このために、空気を空気分離チャンバ内にポンプ送給したり、空気分離チャンバからポンプ吸引したりすることができる。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0330761号明細書
【特許文献2】米国特許第3,964,479号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、もし可能ならば、詰まりが生じたフィルタを検出した際に、自動的にそのような不具合を排除し、少なくとも疎水性フィルタを交換しなければならない頻度を少なくする方法および装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、この目的を請求項1における特徴の組合せによって解決する。本発明によると、体外血液循環中における濡れた疎水性フィルタをクリーニングする方法を創出し、この場合、その体外血液循環は導管を介して圧力検出装置および空気ポンプに接続した空気分離チャンバを有し、疎水性フィルタを前記導管内に配置する。本発明方法は少なくとも以下のステップ、すなわち、
・ 前記疎水性フィルタの通気性をモニタするステップと、
・前記疎水性フィルタの詰まりを検出した場合には、接続した空気ポンプにより前記疎水性フィルタをクリーニングするステップと
を有する。
【0009】
疎水性フィルタにおける通気性のモニタは、例えば特許文献1(欧州特許出願公開第0330761号)に記載されているのと類似の方法で行うことができる。疎水性フィルタに少なくとも部分的な詰まりを検出する場合、対応する制御の下で接続した空気ポンプを作動させ、疎水性フィルタをクリーニングする。
【0010】
本発明のこの方法における好ましい実施形態を、別紙特許請求の範囲の従属項で開示する。
【0011】
したがって、疎水性フィルタにおける通気性を圧力検出装置によってモニタすることができる。
【0012】
疎水性フィルタをクリーニングする間に、一方では空気分離チャンバの下流域で体外血液循環中に配置したクランプを開き、他方では空気ポンプおよび圧力検出装置にいたる接続導管内に設けたバルブが開くことができる。
【0013】
好適には、圧力の経時的変化を、クリーニング中に空気ポンプによって加える。
【0014】
単位時間当たりの圧力変動、すなわち圧力変化率、が特定の制限値を上回る時、疎水性フィルタを交換するための警告信号発生するようにする。この後には、クリーニングをすることは、明らかに容易でなくなる。疎水性フィルタの破裂圧を超過してしまいそうなぎりぎりの場合においては、空気ポンプの吐出率を何ら増加し得ないということをよく考慮すべきである。
【0015】
しかし、単位時間当たりの圧力変動が特定の制限値を上回らない場合、空気ポンプの供給導管におけるバルブは、有利にも、フィルタのクリーニングの際に、再び閉じることができる。
【0016】
本発明における他の有利な態様によれば、空気分離チャンバ内における血液の充填レベルを、クリーニング中に充填レベル検出器によりモニタする。これにより、充填レベルが過度に減少し、極端な場合には、空気がチューブ装置に入り、それゆえに患者に入る、という事態を防ぐことができる。
【0017】
有利には、空気ポンプを、制御およびモニタするプログラムによって作動させ、このプログラムは、経時的に変動する圧力値も記録するものとする。
【0018】
本発明の方法を実施するための装置を請求項9で開示する。この装置は、体外血液循環中に配置した空気分離チャンバを備え、この空気分離チャンバに、導管を介して、圧力検出装置、および空気分離チャンバ内の充填レベルを調整する空気ポンプを接続し、前記導管内に疎水性フィルタを設ける。また上述の方法を実施する、本発明装置は、制御およびモニタユニットを設け、この制御およびモニタユニットによって、空気ポンプを疎水性フィルタのクリーニングのために作動させることができるとともに、単位時間当たりの圧力値を記録およびモニタすることができる。
【0019】
さらに、好適には、本発明の方法を実施する装置に、疎水性フィルタをクリーニングすることができない場合に警告を発生する警告装置を設ける。
【実施例】
【0020】
本発明の他の特徴および利点を、添付図面につき詳細に説明する。
【0021】
図示の実施例では、体外血液循環における血液搬送チューブ10の一部のみを示し、このチューブは頂部から従来設計の空気分離チャンバ12内に突入し、空気分離チャンバの下側端部から導出する。空気分離チャンバは、例えば体外血液循環の血液帰還導管(静脈導管)中に配置することができる。空気分離チャンバ12の下側で、ピンチクランプ14を血液搬送チューブ10内に配置する。空気分離チャンバ12内部における血液の充填レベルを検出するため、充填レベル検出器16を空気分離チャンバ上に取り付ける。
【0022】
空気搬送チューブ18を介して、空気分離チャンバ12を圧力センサ20に接続する。圧力センサ20は、透析装置の内部に配置し、説明を分かり易くするため、透析装置の外壁をここではライン22でのみ示す。空気分離チャンバ12と圧力センサ20との間における導管18内に、疎水性フィルタ24を透析装置の外側に配置する。
【0023】
透析装置内部において、空気ポンプ28にいたる導管26を空気搬送チューブ18から分岐させる。導管26への分岐ポイントと圧力センサ20との間で、導管18に制御可能バルブ30を設ける。空気搬送導管26にも、同様に制御可能バルブ32を設ける。
【0024】
体外血液循環における通常動作中、血液は血液搬送チューブ10から空気分離チャンバ12に滴下する。空気分離チャンバ12中の充填レベルは、充填レベル検知器16によりモニタする。充填レベルが所要レベルを下回った場合、空気ポンプ28またはクランプ14により空気分離チャンバ12内における血液の充填レベルの高さを調節することができる。体外血液循環の動作中、圧力を圧力センサ20で測定する。例えば特許文献1(欧州特許出願公開第0330761号)に記載されている、測定ルーチンにより、疎水性フィルタ24が血液によって濡れることで少なくとも部分的に詰まっているか否かをここで検出することができる。もし、部分的な詰まりを検出した場合、疎水性フィルタを掃除するため、バルブ30および32を開き(バルブ30がまだ開いていなければ)、空気ポンプ28によって過剰圧力を発生させ。このようなクリーニングの間、ピンチクランプ14を同時に開き(まだ開いていなければ)、システム内に過剰圧力が発生するのを回避する。
【0025】
空気を疎水性フィルタ24に供給するとともに、経時的圧力変動を圧力センサによってモニタする。圧力上昇が急激すぎるならば、このことは、空気ポンプ28によるクリーニングでは解決できないほどの根本的な問題がフィルタ内部に生じていること示、す。この場合、制御およびモニタ手段によって警告信号を作動させ、対応する警告装置によって使用者に知らしめる。警告を発生する場合、疎水性フィルタ24を交換しなければならない。
【0026】
圧力の増加が十分に小さければ、クリーニングは可能である。この場合、空気分離チャンバ12内部のチューブシステム10への空気の侵入を確実に阻止するためには、レベル検出器16を用いて、静脈空気分離チャンバ12内部における血液レベルが低下し過ぎることのないようにするだけである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】体外血液循環の一部を線図的に示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管を介して圧力検出装置および空気ポンプに接続した空気分離チャンバを有する体外血液循環における濡れた疎水性フィルタをクリーニングする方法であって、前記疎水性フィルタを前記導管内に配置した、該疎水性フィルタのクリーニング方法において、
前記疎水性フィルタの通気性をモニタするステップと、
前記疎水性フィルタの詰まりを検出した場合には、接続した空気ポンプにより前記疎水性フィルタをクリーニングするステップと
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記疎水性フィルタにおける前記通気性を前記圧力検出装置によってモニタすることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記疎水性フィルタをクリーニングする間に、一方では前記空気分離チャンバの下流域で前記体外血液循環に配置したクランプを開き、他方では前記空気ポンプおよび前記静脈圧検出装置にいたる前記接続導管に設けたバルブが開くことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記圧力の経時的変化を、前記クリーニング中に前記空気ポンプによって加えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、単位時間当たりの圧力変動が特定制限値を上回る場合、前記疎水性フィルタを交換するための警告信号を発生するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、単位時間当たりの圧力変動が特定の制限値を上回らない場合、前記フィルタをクリーニングする際に、前記空気ポンプの前記供給導管に配置した前記バルブを再び閉じることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法において、前記クリーニング処理中、前記空気分離チャンバ内における前記血液の充填レベルを充填レベル検出器によりモニタすることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法において、前記空気ポンプを、制御およびモニタするプログラムによって作動させ、このプログラムは、経時的に変動する前記圧力値も記録するものとしたことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を実施する装置であって、導管を介して圧力検出装置および空気ポンプに接続し、体外血液循環中に配置した、空気分離チャンバを備え、前記導管内に疎水性フィルタを配置した該装置において、
制御およびモニタユニットを設け、この制御およびモニタユニットによって、前記空気ポンプを前記疎水性フィルタのクリーニングのために作動させることができるとともに、単位時間当たりの前記圧力値を記録およびモニタすることができることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、前記疎水性フィルタをクリーニングすることができない場合に警告を発する警告装置を設けたことを特徴とする装置。

【公表番号】特表2009−518086(P2009−518086A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543669(P2008−543669)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006912
【国際公開番号】WO2007/065490
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(501276371)フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (31)
【Fターム(参考)】