説明

濾過システムのためのラジアルスプリットリングシール関連出願の相互参照

環状部材を有する濾過システムで用いるラジアルシールが記載される。リング又は環がシール板の外面の溝に嵌り込む。各環は、濾過システムの円筒ハウジングの内径よりも大きい外径を有する。環の隙間は、円筒ハウジング内への少なくとも1つの環の挿入を許容するように環状部材が十分に変形できるように選択された幅を有する。2つ以上の環が溝内に取り付けられるときには、それらの環の隙間が位置ずれされるように構成することができ、それにより、作動時の漏れが最小限に抑えられる。位置決めシステムは、一対の環の隙間の位置ずれを確保するように他方の環の位置決め要素と協働する位置決め要素を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「Radial Split Ring Seal For Filtration Systems」と題される2009年10月12日に出願された米国仮特許出願第61/250,771号、「Axial Labyrinth Seal for Filtration Systems」と題される2009年10月12日に出願された米国仮特許出願第61/250,765号、及び、「Radial Split Ring Seal For Filtration Systems」と題される2010年10月12日に出願された米国特許出願第12/902,424号の優先権を主張し、これらの出願は全ての目的で参照することにより明確に本願に組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般に膜濾過システムに関し、特に、濾過システムのスパイラル型膜エレメントで使用されるシールに関する。
【背景技術】
【0003】
化学的な汚染物や有機体を水から除去するために使用されるある種の濾過システムは、筐体内にシールされる1つ以上の濾過エレメントから構成される。筐体は、小型缶状容器、ドラム缶状容器、及び/又は、パイプ状容器からなる場合がある。特に、大規模な水処理のために使用される濾過システムは、パイプ状の構造体内で互いに接続され、汚水又は不純水の流入水をフィルタ材料を介して流出パイプ又は流出流路へと流す、直列に配置されたエレメントを含むことがある。図1に示される例では、スパイラル型膜濾過システムの濾過エレメント11は、螺旋状に巻回された膜構造からなる。図1では、透過水流路シート18が封筒状の膜濾過シート19内で積層され、また、隣接する層は、原水スペーサ−101によって分離されるとともに、一般的には、流入水の漏れを防止し且つある程度の機械的な安定性及び強度を濾過エレメント11に与えるために、硬質シェル内に入れられるか包まれる。スパイラル型膜濾過エレメント11などの濾過エレメントは一般的に略円筒形状で供給され、1つ以上の濾過エレメント11をハウジング10内に端と端を接続して組み込まれる(図1Cに示される)。流入流体140は、入口から加圧下でシステムの端部に導入されて濾過エレメント11の一端150に入り、膜19を通過して、一般的には、中心パイプ又はチャンネル13を通じて透過水流143として排出されるか、或いは、膜濾過装置から出る濃縮水流144として排出される。中心パイプ13は、一般に筐体10と同軸であり、透過水143を集めるように膜19と結合され或いはさもなければ接続される。透過物143をシステムから両方向に引き出すことができる。
【0004】
これらの濾過エレメントは膜フィルタとして機能する。従来のバッチ式の濾過システムとは異なり、記載される濾過システムは、連続的な安定状態プロセスとして作用する。したがって、供給水15に入る全ての物質は、2つの流出水143、144として濾過装置から出る全ての物質の総和に実質的に等しい。そのようなシステムは、飲料水を供給する用途、汚水及び/又は雨水を浄化し或いは処理する用途、汚泥から水を抽出する用途、及び/又は、海水などの水を脱塩する用途で使用される場合があり、これらの用途では、希薄透過水143がシステムの主要生成物である。逆に、その目的が貴重な溶質を回収したり濃縮することである場合は、濃縮物流144が主要生成物となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スパイラル型膜エレメント11は、有用な分離用途において平坦なシート状の逆浸透膜19をパッケージングする手段として使用される。これらのエレメントは、一般に、図1Cに示されるように円筒ハウジング10内に端と端を接続して取り込まれる。プロセス供給水140は、ハウジングの一端で導入されて、エレメント11を通り軸方向141に流れる。この場合、その一部142は、フィルタ媒体19を通過して中心収集チャンネル又はパイプシステム13へと向かい、そこから流出水143となる。濃縮残留物144は、第1のエレメント11から第2のエレメント11へ流れ、それが続いていく。システムから引き出された濃縮物144は、システム構成及び作用に基づいたシステムで、外部で処理され及び/又はリサイクルされ得る。第1のエレメント11からの濃縮水144がその後のスパイラル型膜濾過エレメント11へ供給水140として送られることを保証する、連続するスパイラルエレメント11間のシール機構を提供することが必要である。
【0006】
このシール機構は、それぞれのスパイラルエレメント11の各端部に取り付けられるシール板12(図1Bに更に詳しく示される)を使用して達成することができる。従来のシステムでは、エレメント11とハウジング又はベッセル10との間の空間内へ流体が逃げるのを防止するために、エラストマーシールがシール板12の外縁に位置する溝16内に配置される。一連の中心チャンネル13を接続するカップリング130も一般にエラストマーシールを使用してシールされる。
【0007】
フロー140をエレメント11とハウジング10との間の環状空間ではなくエレメント11自体へと方向付けるために、更なるシール120がスパイラルエレメント11と円筒ハウジング10の内壁との間に必要とされる場合がある。フロー140が主としてエレメント構造へと方向付けられなかった場合には、膜シート上を流れる供給水の速度が減少され、それにより、膜シートの分離性能に影響が及ぶ。従来のシステムは、図2Aに示されるように、シール板12の外面上に位置する周溝凹部16内にエラストマーシールを備える。一般に使用されるエラストマーシール25は、図2Bに示されるようにカップ状に形成されて効果的なシールをもたらすが、シールを逆方向に押すことができないため、エレメントを一方向でハウジング内へ挿入する必要がある。図2Cに示されるようにOリング26などの対称なエラストマーシールをエレメントシール板溝内で使用できる。これにより両方向に移動させることができるが、効果的なシールとして機能するためには、エラストマーシールの大きな変形量に頼ることになる。このため、円筒ハウジング内にエレメントを挿入するには大きな力が必要となり、また、このことがカップ形状のエラストマーシールを好む主な理由である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
濾過システムのためのラジアルシールは、外周と、内周と、厚さとを有する1つ以上の環から構成される。各環は、シール板の外面の溝に嵌り込む内周の直径を有し、また、各環は、シール板を受ける円筒ハウジングの内面の直径よりも大きくなるように選択される外周の直径を有する。少なくとも1つの環の半径方向に沿って中心を持つリングの環の隙間は、円筒ハウジング内への少なくとも1つの環の挿入を許容するように十分に環状部材が変形できるように選択される幅を有する。
【0009】
環の内外径及び隙間の幅は、少なくとも1つの環の外周と円筒ハウジングの内面との間で、密接に接触するように選択されてもよい。この密接な接触は、環状部材の圧縮に抗する復元力によって維持され、復元力の大きさは、隙間の幅と、少なくとも1つの環を形成するために使用される材料とに関連付けられる。隙間の幅は、環が溝内に取り付けられてシール板が円筒ハウジング内に挿入されたときにわずかな漏れを許容するように選択できる。
【0010】
幾つかの実施形態において、シールは、環が溝に取り付けられるときに環の隙間が位置ずれするように構成される2つ以上の環を備え、それにより、作動時の漏れが最小限に抑えられる。位置決めシステムとしては、一対の環の隙間の位置ずれを確保するように他方の環の位置決め要素と協働する位置決め要素がある。位置決めシステムは、隣接する環の隙間に嵌り込む、一対の環のうちの一方の表面に設けられる隆起部分、及び/又は、隣接する環の表面に設けられる溝に嵌り込む一対の環のうちの一方の表面に設けられる隆起部分からなることができる。
【0011】
濾過システムの円筒ハウジング内へ挿入されたスパイラル型膜エレメントをシールするための方法が提供される。本発明の特定の態様に係る方法は、スパイラル型膜エレメントのシール板の外面に位置する溝内に少なくとも1つのスプリットリングシールを設けるステップと、シールリングを円筒ハウジング内に挿入するステップとを含み、シールリングの挿入が少なくとも1つのスプリットリングシールを圧縮するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】複数のシールされた濾過エレメントを含む濾過システムを示している。
【図1B】複数のシールされた濾過エレメントを含む濾過システムを示している。
【図1C】複数のシールされた濾過エレメントを含む濾過システムを示している。
【0013】
【図2A】シール板に設けられた溝を示す。
【図2B】図2Aの溝に設けられた従来技術のエラストマーシールを示している。
【図2C】図2Aの溝に設けられた従来技術のエラストマーシールを示している。
【0014】
【図3A】本発明の特定の態様に係るシール部材を示している。
【0015】
【図3B】図3Aのシール部材の断面を示している。
【0016】
【図4A】シール板の溝内に設けられる本発明の特定の態様に係る1つ以上のシール部材を断面で示している。
【図4B】シール板の溝内に設けられる本発明の特定の態様に係る1つ以上のシール部材を断面で示している。
【0017】
【図5A】本発明の特定の態様に係る様々な隙間形状を有するスプリットリングシールの例を示している。
【図5B】本発明の特定の態様に係る様々な隙間形状を有するスプリットリングシールの例を示している。
【図5C】本発明の特定の態様に係る様々な隙間形状を有するスプリットリングシールの例を示している。
【図5D】本発明の特定の態様に係る様々な隙間形状を有するスプリットリングシールの例を示している。
【0018】
【図6】シール板の溝内に取り付けるのに適した環状シールの一実施形態の断面図を示している。
【0019】
【図7A】本発明の特定の態様に係る複合隙間形状を有するシールの例を示している。
【図7B】本発明の特定の態様に係る複合隙間形状を有するシールの例を示している。
【図7C】本発明の特定の態様に係る複合隙間形状を有するシールの例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、当業者が本発明を実施できるように例示として与えられる図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。特に、図及び以下の例は、本発明の範囲を単一の実施形態に限定しようとするものではなく、説明されて図示される要素の一部又は全ての置き換えによって他の実施形態が可能である。都合の良い場合には常に、同じ或いは同様の部分を示すために同じ参照符号が図面の全体にわたって使用される。これらの実施形態の特定の要素を既知の構成要素を使用して部分的に或いは完全に実施できる場合には、本発明の理解のために必要なそのような既知の構成要素の部分のみについて説明し、そのような既知の構成要素の他の部分の詳細な説明は発明を不明瞭にしないように省かれる。本明細書において、単数の構成要素を示す実施形態は限定的に見なされるべきではなく、それどころか、発明は、本明細書中で別のことが明確に述べられていなければ、複数の同じ構成要素を含む他の実施形態を包含することを意図しており、逆もまた同様である。また、出願人は、明細書又は請求項における任意の用語が一般的ではない或いは特別な意味であると明確に記載されていなければそのように見なされることを意図していない。更に、本発明は、例示として本明細書中で言及される構成要素の現在及び将来の既知の等価物を包含する。
【0021】
本発明の特定の実施形態は、濾過システムのためのシール部材を提供する。ここに開示されるシールは、Oリング、山形シール及びUカップシールなどを含む従来のエラストマーシールの代替物としての役目をそれが果たすことができるようにする寸法を伴って構成され得る。再び図1A−1Cを参照すると、本発明の特定の実施形態は、従来のシール板12に嵌め付けられてもよいスプリットリングシールを、圧縮性のエラストマーシールを受ける径方向溝16内に備える。以下で更に詳しく説明されるように、ここに開示されるスプリットリングシールは、一般に、剛性、弾力性、不活性、作動温度範囲に耐えることができる能力、作動圧力に耐えることができる能力、および濾過システムの構造(例えば、ハウジング10の内面)で使用される材料との摩擦係数を考慮して選択される材料を使用して構成される。材料は用途にしたがって選択することができ、また、例えば、本発明の特定の態様にしたがって構成されるシールは、従来のエラストマーシールが作用する水圧に耐えることができない8インチ又は16インチ濾過システムで使用できる。
【0022】
本明細書中に記載される一例では、実質的に圧縮できないポリマーから形成される環状シール30(図3A及び図3B参照)をシール板12の外面の溝16内に配置できる。シール30はその環に隙間32を有しており、隙間32を閉じる力を加えることにより圧力を受けて環形状を変形させることができる。そのような力は、シール30を取り付けたシール板12がハウジング10内に挿入されるときに加えられる。シール30はスプリングとして作用し、それにより、リング30の外面がハウジング10の内面との密接な接触面を形成する。リングシール30の隙間32の一部は、シール板12がハウジング10内に位置するときに開放したままであってもよい。幾つかの実施形態では、そのような隙間が望ましい。適切に寸法付けられれば、隙間32がシール30の両側の圧力差を制限する及び/又は等しくすることができるからである。しかしながら、特定の実施形態では、より水密なシールが望ましく、第2のスプリットリングシール30を溝16内に配置して、これらのシール30の隙間32がオフセットされるようにしてもよい。ここで、後者の主題に関する他の変形例について更に詳しく説明する。
【0023】
図3A−3B及び図4A−4Bは、本発明の特定の態様に係るシールの単なる一例に関する。図3A−3B及び図4A−4Bの環状シールは、シール板12の外側部分40に嵌め付けることができ、及び/又は、同心の構成部材間、一般的には構成部材の略円筒面間にシールを形成するために使用できる。シール30は、従来のエラストマーシールの代替物として使用できる。例えば、硬質リング30の寸法は、スパイラル型膜濾過エレメントのシール板12の径方向溝16に一般に取り付けられる従来のOリング又はUカップシールとリング30が置き換わることができるように設定することができる。リングシール30の幅38は、所望の数のシール30を既存のシール板12の溝16内に配置できるように選択されてもよい。図4Aは、単一のシール420が溝42内に配置される実施形態を示し、一方、図4Bは、2つのリング421、422が溝42内に設けられる実施形態に関する。また、スプリットリングシール30は、例えばシール30が高温及び/又は高圧に晒される、或いは腐食剤の存在が非反応性シール材の使用を求める、更に要求の厳しい用途で使用することもできる。一例では、スパイラル膜濾過システムでの圧力では、ある種の従来のエラストマーシールは使用できない場合がある。4インチ直径のスパイラル膜システムで一般に使用されるエラストマーシールは、一般に、8インチ又は16インチシステムで作用するように拡大することができない。これは、作用圧が増大するからであり、また、従来のエラストマーシールとハウジング10との接触面積の増大に起因して摩擦力が急激に増大することにより、シールされたエレメントの取り付け及び取り外しの困難性が高まるからである。
【0024】
本発明の特定の実施形態は、濾過システムで用いるのに適する硬質なスプリットリングシール30を備える。シール板12は一般的に幾分ホイールに似た円形状を成しており、円筒ハウジング10内へ挿入できるように構成される。シール板12の部分40は、筐体44の内面に近接してこれと接続する外側に面する径方向面46を有する。現在製造されるシール板40は、一般に、シール板40の外側に面する表面46に溝42を含む。本発明の特定の態様にしたがって構成される硬質リング30、420−422は、そのようなシール板の溝42内に取り付けられてもよい。硬質リング30は、挿入前に、一般に、シール板12の軸14を中心に両方向に回転させることができ(図1A−1C参照)、望み通りに、隙間32を方向付けて及び/又はシール板12又はハウジング10の特徴部分と位置合わせすることができる。シール30を伴うシール板12は、円筒ハウジング10のどちらからでも挿入されてよく、円筒ハウジング10の軸に沿って両方向に移動させることができる。言うまでもなく、シール30は、所望の摩擦係数を与えるコーティング又は他の表面処理を有してもよい。シール30は、非円形形状を有するシール板12に嵌め合うように構成することができ、また、幾つかのシール30が例えば円形や楕円形のシール板を含む異なる形状のシール板或いは幾分非対称なシール板と共に使用されてもよい。一例では、シール30が径方向の下り勾配面(図示しない)をもつ溝16内に取り付けられてもよく、また、シールリング30がシール板12及び/又はハウジング10の表面の形状に従う断面を有してもよい。
【0025】
シールリング30は、一般に、加圧下で且つ圧縮力が環30に対して径方向に加えられるときにその断面形状(例えば図3B)をほぼ維持する非エラストマー材料から構成される。圧縮下では、径方向の圧縮力がシールリングに加えられるときにシールリング30の隙間32が減少され、また、シールリング30は、一般に、隙間32の閉塞に抵抗し且つ圧縮力が除去されるときにその当初の無負荷時の環形状を回復するのに十分な弾力性をもった形態を成して構成される。例えば、硬質及び/又は硬化ポリマー、金属、セラミック、及び、他のそのような材料を使用してシールリング30を構成できる。言うまでもなく、従来のエラストマーシールは、エラストマーシールの断面積が変化するように圧縮下で変形することによりシール能力を最大にする。しかしながら、加圧下での従来のエラストマーシールの変形は、ハウジング10内でのシール板12およびシールされたものの動きを一方向に制限し得る。挿入中の従来のエラストマーカップシール24(図2B参照)の変形は、一般に、Uカップ脚の方向性に起因して逆方向の動きに対して非常に高い抵抗をもたらす。従来のエラストマーシールの該抵抗に逆らうために必要とされる力は、しばしば、これらのシールの破壊を引き起こすものである。したがって、複数のエレメントを用いて組み立てられた濾過システムでの濾過エレメント11(図1A−1C参照)は、従来のカップシール24が取り付けられてハウジング10内に一方向で挿入されると、挿入のために使用された方向と同じ方向でエレメントを押し進めてハウジングを完全に貫通させることによってしか実質的に取り外すことができない。Oリングシール26の変形は、一般に、筺体10と接触するシール26の表面積を増大させる。したがって、Oリングシール26が取り付けられてハウジング内へ挿入された、複数のエレメントで組み立てられた構成(図1A−1C参照)では、エレメントをハウジング内に挿入して除去するためにかなりの力を必要とする。
【0026】
一方、本発明の特定の態様にしたがって構成される環状シール30は、一般に、シール板12の軸14と平行な任意の方向で動きを制限しない。また、エレメントの挿入及び除去中に受ける摩擦力を減らすために、シール30を低摩擦材料から構成することができ、及び/又は、シール30の表面をコーティングしたり表面処理することができる。その結果、本発明の特定の態様に係る硬質リングシール30が使用されると、多数のエレメントをハウジングの同じ端部から、非常に簡単に挿入、取り出しができる。また、本発明の特定の態様に係る硬質シールリング30は、どちらの方向からの軸方向圧力下でも変形しない。したがって、本明細書中に開示されるスプリットリングシール30を使用する濾過エレメントは、フラッシングや洗浄及び他の理由のために与えられる逆方向の流れを含む双方向の流れを受けても、これらの流れに抵抗できる。Uカップ及び山形シール(図2B参照)を含む従来のシールは、しばしば、逆方向の流れに抵抗することができず、フラッシングのために交換又は方向変換されなければならない。
【0027】
従来のエラストマーシールを使用するシール板10は、シール板の挿入のためにかなり大きな力を必要とする。これは、シールを形成するために必要とされるシール材料の変形、エラストマーシールの係合の角度、エラストマーシールを使用してシールを維持するために必要とされるかなりの接触圧、及び/又は、エラストマーシールの接触面積の増大に起因する。一例において、従来のUカップブラインシール24(潤滑を伴う)を備える7本エレメント構成では、エレメントをハウジング内に挿入するために45ポンド以上に相当する力を必要とする。これに対し、ここに開示される硬質リングシール30を備える同等の7本エレメント構成は、20ポンド以下の力を使用してハウジング内に挿入することができる。
【0028】
特定の実施形態において、硬質リング30の寸法は、効率的なシールを得るように選択される。硬質リング30の外径34は一般に円筒ハウジング10の内径よりも僅かに大きくなるように選択され、一方、環30の内径36は、シール板40の溝42内に良好に嵌合するように選択される。環30の厚さ38は、用途にしたがって、所望の数のリングシール30を溝42内に嵌め付けて所望レベルのシール耐密性を得るように選択されてもよい。特定の実施形態では、シール板40をシールするために複数のリングシール421、422を溝42内に設けることができる。複数のリング形態(図4B)が使用されてもよく、この場合、シール構造を通じた漏れを最小にするために、リング421、422の隙間が互いにオフセットされる。リング421、422が異なる厚さを有するように複数のリング形態(図4B)が使用されてもよい。ある実施形態では、複数のリング形態が異なる材料から製造される異なるリング421、422を備える。
【0029】
図3から分かるように、環30に隙間32を作るため、環状リング30から僅かな部分が除去される。硬質スプリットリング30の隙間32は、リング30が円筒ハウジング10内に挿入できるように圧縮されると閉じる傾向がある。隙間32のサイズ及び形状は、リングが円筒ハウジング10内に嵌合するように圧縮される際にそのリングの隙間32が最小となるように選択できる。隙間32のサイズの選択に影響を及ぼすファクタは、仕様上の或いは予期される作動温度範囲、及び、リング30を構成するために使用される材料の膨張係数を含む。一般に、リング30の断面300は圧縮下で大きく変形せず、また、圧縮力はリング30の直径の変化によって受け入れられる。特定の実施形態では、少なくとも1つのリング420、421又は422が変形可能な材料の部分を含む材料から構成されるようにすることが望ましいと考えられる。この場合、例えば、温度下又は圧力下での収縮及び拡張を受け入れることが必要であり、また、より柔軟で更に変形できるリング421又は422を、より強力で更に硬質なリング422又は421と結合させて、作動状態下での可鍛性と圧力抵抗とを組み合わせることができる。
【0030】
硬質リング30の圧縮は、円筒ハウジング10の外壁との接触をリング30に維持させる径方向の反力をもたらし、それにより、シールが形成される。この反力は、円筒ハウジング10の軸に沿ったシール板の動きを抑える、抵抗牽引力を形成できる。反力の大きさは、硬質リングを構成するために使用される材料の選択によって、また、硬質リングの寸法によって制御できる。例えば、リング30の厚さ、環30の外径34及び内径36は、所望の反力を得るように選択できる。リング30の材料の反力及び抵抗力は、円筒ハウジング10又はシールされたスパイラルエレメントの拡張及び/又は圧縮を調整するため、シール及び/又はシール板のある程度の動きを許容するように選択できる。

隙間形状
【0031】
隙間32の形状は、リングシール30を越える流体の流れを制御するように選択されてもよい。リングシール30を通じた漏れにより、一般に、濾過されていない或いは汚染された流入流体(プロセス供給)の一部が、連続する濾過エレメント11とシステムハウジング10との間の空間を通過する。あるシステムでは、一連の濾過エレメントのうちの第1の濾過エレメント11のシール板12にだけラジアルシールを取り付け、流入水がこの濾過エレメント11を通るようにする。下流側にある隣接する濾過エレメントのシール板12は、濾過エレメント11からの漏れが、濾過エレメント11とシステムハウジング10との間の空間へ流れるのを防止する。前記空間内の濾過されていない流体は、望み通りに、除去されシステムを通じて濾過される。前記空間と濾過エレメント11の内部との間の圧力差によって引き起こされる濾過エレメントのラッピング又はシェルに作用する応力を減らすことができるため、ラジアルシール30を通じて前記空間内へある程度漏れるようにするのは望ましい。したがって、隙間32の形状は、システム内の圧力を等しくするように作用し漏れのレベルを制御するように選択されてもよい。
【0032】
図5Aに示されるように、ある実施形態では四角形の隙間50を環30に設ける。四角形の隙間50の形状は、環30の四角形状の端部500、501を設けることにより得られる。四角形の隙間50は、濾過システムを通じた流体の流れ方向(矢印58として示される)と配向している。言うまでもなく、四角形の隙間は、シール板の半径に対して垂直であるとともに、シール板12の軸14(図1A−1C)と平行である。図5Bは、環30の端部520、521が該端部を重なり合わせるように選択された角度でカットされた傾斜隙間52を示している。端部520、521のために使用されるカットの角度は、作動温度範囲下でのシールリング30の予期されるレベルの拡張/圧縮を受け入れるように選択されてもよい。図5Cは簡略化された複合隙間54を示している。環30は、環30が圧力を受けているか或いは無負荷であるかどうかにかかわらず一般に重なり合うように構成される重なり階段状の端部540、541を有する。したがって、複合隙間54は、環30の外周に沿ってオフセットされている少なくとも2つの隙間542、544を備える。隙間542、544がチャンネル543により接続されてもよい。典型的な作動圧下では、チャンネル543により与えられる隙間を一般に無視できる。これは、端部540、541が一般に接触し、その結果、端部540、541の表面の質感及び平面性と、その表面上の不連続部、グリース、塵埃、又は、他の粒子の存在とによって、チャンネル543の幅が規定される場合があるからである。
したがって、図5B−5Dに示されるような形態は、作動状態下において隙間がこれらの形態で効果的に閉じられ得るため、環の不連続部と称される。以下で更に詳しく説明する図6は、段形状の複合隙間/不連続部62を有する環状シール60を備える本発明の実施形態を描いている。以下で説明するように、環状シール60の性能は、同等のエラストマーシールの性能を同じ条件下で満たす或いは上回ることが分かっている。図5Dは、漏れを最小限に抑えるために使用できる二重リングシール形態56を示している。図示のように、二重リング形態56の環状シールは傾斜隙間52を有するが、用途により望まれる或いは必要とされるように、四角形隙間50及び階段隙間54の形状を使用することもできる。
【0033】
プロセス供給水フローの観点からすれば、隙間50、52又は54は、漏れを生じる可能性がある不連続部をシールリング30に与え、それにより、プロセス供給水はシールリング30を「通じて」流れることができる。したがって、本発明の特定の実施形態は、図4B(図5Dも参照)に示されるように、より完全なシールを得るために、組み合わせられた複数のシールリング46を使用する。隙間サイズを最小限に抑え及び/又はプロセス供給水フローに対する抵抗を最大にするように、シールリングを重ね合わせる様々な方式が使用されてもよい。例えば、シールリング421、422は、シールリング421、422のそれぞれの隙間32をなくす或いは最小にするように斜めにオフセットされてもよい。複合リングシール形態のオフセットは、隣接するシールリング422の対応する窪みと嵌り合う第1のシールリング421の突出部などの位置決め要素を使用して維持されてもよい。他の位置決め要素は、シールリング421、422の隙間32と係合してもよい。特定の実施形態において、シールシング421、422の隙間32の相対位置のオフセットは、シールリング421、422を取り外せないように或いは一時的に結合することによって維持されてもよい。
【0034】
図6は、スパイラル膜濾過システムで用いるように構成され得る本発明の一実施形態を描いている。実質的に硬質な環状シール60は、4、8又は16インチの濾過エレメントを有する濾過システムと関連付けられる温度及び圧力に耐えるように選択される硬質ポリマーから形成される。シール60の環600は、細部63に描かれるように、環600の2つの重なり階段状の端部64、65の交差部に不連続部62が形成される。環状シール60の圧縮前に端部64、65の段部が部分的に重なり合い、それにより、環61の両側の表面(表面630だけが示されている)に隙間66、67が残る。重なり距離68は、環61の機械的強度を維持しつつ漏れを最小限に抑えるように選択される。圧縮時、隙間66、67が閉じる傾向にあり、それにより、環状シール60の直径が小さくなる。この説明の目的のため、各端部64、65は1つの段部を有して示されている。しかしながら、本発明の特定の実施形態は、多段状の端部64、65を有する環を備える。環状シール60は、シール板12をハウジング10内へ挿入する前にシール板12の溝16内に配置できる。環状シール60の階段形状の不連続部62は、シール板12がハウジング内に挿入された後に環状シール60が圧縮されるときに環状シール60の半径及び周長の変化として測定できる環形状の形態を可能にする。特定の実施形態では、階段形状の不連続部62が作動前に隙間66、67間にチャンネルを有してもよい。シールリング60がシール板10の溝16に嵌め付けられてハウジング10内に挿入されると、隙間66、67のうちの一方又は両方のサイズが減少され、また、加圧流体が濾過エレメントを通じて流れると、加圧時の向上されたシールの実質的な影響を伴って、端部64、65の段部が互いに押圧されて任意のチャンネルを閉じる。
【0035】
また、図7A及び図7Bを参照すると、特定の実施形態はオフセット階段隙間形態を備える。この場合、隙間の両側は、70で全体的に示されるように、複合及び/又は複雑段状形態を有する。階段形態70は、階段隙間54(図5C参照)を有する2つの同一の環状シール72、73を使用して構成することができる。2つの環状リング72のうちの一方が他方のシールリング73に対してひっくり返され、階段隙間54が位置合わせされる。図7Bは、各環状シールの階段隙間54の一方側72、73を詳しく示している。単一の成形品でなければ、複雑階段形態70を得るために2つの環状シールを結合し或いは接着できる。図示のように、2つの異なる垂直立ち上がり部74、75が階段で使用される。したがって、ひっくり返されて結合されると、隙間内で重なり合いが成され、隙間を通じて流れようとする流体に対して曲がりくねった経路が与えられる。この曲がりくねった経路は、隙間を通じた漏れをかなり減少できる。ある実施形態では、図7Aの複雑階段隙間を有する環状シールを、金型成形リングとして作成することができ、或いは、押し出し成形、スタンピング成型、或いは当業者に知られる他の適した手段によって形成される単一リング71を機械加工及び/又は切断することにより作成することができる。
【0036】
図7Cは、径方向及び軸方向の両方に階段を設けることによる段状形態の変形を全体的に76で描いている。図示の例において、一端部761は、第2の端部760の嵌め合い窪み又はトンネル77に嵌合するように構成されるポスト78を有する。一般に、ポスト78はトンネル77内に位置するが、図7Cは端部760、761を引き離された形態で示している。言うまでもなく、そのような「ポスト−穴」及び/又は「ピン−ホール」形態は、スプリットリングシールに対して改善された軸方向・径方向強度を与え得るが、より大きな漏れ又は迂回流を生じ易い。
【0037】
特定の実施形態では、特にシステム始動時に圧力を軽減し及び/又は均一にするために、ある程度の迂回流が望ましい場合がある。言うまでもなく、特定の従来のスパイラルエレメントでは、従来のエラストマーシールに制御された量の流れをもたらすために、シール板内に抜き出し及び/又は流出穴又は溝が設けられていた。本発明の特定の態様により、そのような穴又は溝の必要性がなくなることは言うまでもない。これは、望ましい度合いの漏れをシール自体内で得るように前述した新規なシールを構成できるからである。この目的のために、膜エレメントの分離性能が第1の判断基準として使用される。したがって、2つのラジアルシールがほぼ同じ分離性能を与える場合には、迂回流の量は大したことはないと考えられる。
【0038】
漏れを最小にする或いはなくすために、複数のシールリングが同じ溝42内に取り付けられてもよい。2つの隣接するリング46がシール板40の溝42内に存在する図4Bに詳しく示されるように、シール板40の溝状の凹部42内に複数のスプリットリングシール46を含めることができる。図5Dに示されるように、隣接するリングの隙間54、56を反対方向に向けることができる。複数のリング30と隙間の重なり合い構造との組み合わせは、リング隙間32の組み合わせを通過できる流量の制御の有効な手段を与えることができる。重なり合いは、2つ以上のリング30を互いに対して及び/又はシール板40の溝42に対してロックする役目を果たす位置決め方法を使用して維持することができる。位置決めは、隙間42が、シール全体の深さにわたって一列に並べられないことを確実にするために使用されてもよい。位置決めは、流体力学的な表面、ピン及び穴、隆起及び窪み、摩擦、スロット、溝、及び、他のそのような方法を使用して維持されてもよい。一例では、2つのリングの隙間が位置ずれされて重なり合わないように、一方のリングの表面に、隣り合うリングの隙間と係合できる隆起面、ピン、又は、タブが設けられてもよい。

本発明の特定の態様の更なる説明
【0039】
本発明の先の説明は、例示的なものであり、限定しようとするものではない。例えば、当業者であれば分かるように、本発明は、前述した機能及び能力を様々に組み合わせて実施することができるとともに、前述した構成要素よりも少ない或いは多い構成要素を含むことができる。以下では、本発明の特定の更なる態様及び特徴について更に説明するが、この開示によって教示された後に当業者により分かるように、これらの態様及び特徴は先に詳しく説明した機能及び構成要素を使用して得ることができる。
【0040】
本発明の特定の実施形態は、濾過システムのためのラジアルシールを提供する。これらの実施形態の幾つかは、外周と、内周と、厚さとを有する1つ以上の環を備える。これらの実施形態の幾つかにおいて、各環は、シール板の外面の溝に嵌り込むように選択される内周の直径を有する。これらの実施形態の幾つかにおいて、各環は、シール板を受ける円筒ハウジングの内面の直径よりも大きくなるように選択される外周の直径を有する。これらの実施形態の幾つかにおいて、各環は、少なくとも1つの環の半径方向に沿って中心をもつリングの環に隙間を有する。これらの実施形態の幾つか、この隙間は、円筒ハウジング内への少なくとも1つの環の挿入を許容するように十分に環状部材が変形できるように選択された幅を有する。
【0041】
これらの実施形態の幾つかにおいて、環の内外径及び隙間の幅は、少なくとも1つの環の外周と円筒ハウジングの内面との間に密接な接触を得るように選択される。これらの実施形態の幾つかにおいて、密接な接触は、環状部材の圧縮に抗する復元力によって維持される。これらの実施形態の幾つかにおいて、復元力の大きさは、隙間の幅と、少なくとも1つの環を形成するために使用される材料とに関連付けられる。これらの実施形態の幾つかにおいて、隙間の幅は、環が溝内に取り付けられてシール板が円筒ハウジング内に挿入されるときに最大度合いの漏れでも許容できるように選択される。
【0042】
これらの実施形態の幾つかにおいては、シールが複数の環を備える。これらの実施形態の幾つかにおいて、環は、環が溝に取り付けられるときに環の隙間が位置ずれするように構成され、それにより、作動時の漏れが最小限に抑えられる。これらの実施形態の幾つかは位置決めシステムを備える。これらの実施形態の幾つかにおいて、一対の隣接する環におけるそれぞれの環は、一対の環の隙間の位置ずれを確保するように他方の環の位置決め要素と協働する位置決め要素を含む。これらの実施形態の幾つかにおいて、位置決めシステムは、隣接する環の隙間に嵌り込む一対の環のうちの一方の表面に設けられる隆起部分を備える。これらの実施形態の幾つかにおいて、位置決めシステムは、隣接する環の表面に設けられる溝に嵌り込む一対の環のうちの一方の表面に設けられる隆起部分を備える。これらの実施形態の幾つかにおいては、環が金属から形成される。これらの実施形態の幾つかにおいては、少なくとも1つの環がポリマーから形成される。
【0043】
本発明の特定の実施形態は、濾過システムの円筒ハウジング内へ挿入されるスパイラル型膜エレメントをシールするためのシステム及び方法を提供する。これらの実施形態の幾つかは、スパイラル型膜エレメントのシール板の外面に位置する溝内に少なくとも1つのスプリットリングシールを設けるステップを含む。これらの実施形態の幾つかにおいては、スプリットリングシールが円筒ハウジングの内面の直径を超える外径を有する。これらの実施形態の幾つかは、シールリングを円筒ハウジング内に挿入するステップを含む。これらの実施形態の幾つかにおいては、シールリングの挿入が少なくとも1つのスプリットリングシールを圧縮するステップを含む。
【0044】
これらの実施形態の幾つかにおいて、スプリットリングの隙間は、少なくとも1つのスプリットリングシールが円筒ハウジング内に嵌合できるようにするのに十分な圧縮ステップに応じて環状部材が変形できるように選択される幅を有する。これらの実施形態の幾つかにおいて、隙間の幅は、少なくとも1つの環が溝内に取り付けられてシール板が円筒ハウジング内に挿入されるときに最大度合いの漏れでも許容できるように選択される。これらの実施形態の幾つかにおいては、少なくとも1つのスプリットリングシールが複数のスプリットリングシールからなる。これらの実施形態の幾つかは、複数のスプリットリングシールのそれぞれを位置合わせして、隣接するスプリットリングの隙間の重なり合いを回避し、それにより、作動時の漏れを最小限にするステップを備える。これらの実施形態の幾つかにおいて、位置合わせするステップは、それぞれのスプリットリングシールに設けられる位置決め要素を使用して、隣接する一対のスプリットリングシールの位置合わせを構成することを含む。これらの実施形態の幾つかにおいて、位置決め要素は、溝、ピン、穴、及び、スロットのうちの1つ以上を含む。
【0045】
本発明の特定の実施形態は、濾過エレメントと濾過システムのハウジングとの間のシールを維持するためのスプリットリングシールを提供する。これらの特定の実施形態は、不連続部を有する硬質な環を備える。特定の実施形態において、環は、環が濾過エレメントの外面に設けられる溝に嵌ることができるように選択される内径を有する。特定の実施形態において、環は、ハウジングの内面の直径よりも大きくなるように選択される外面を有する。特定の実施形態において、不連続部は、ハウジング内への濾過エレメントの挿入中に受けられる圧縮力に応じた環の内外径の減少を受け入れる。特定の実施形態において、環は、圧縮力に応じたその断面形状の変化に抵抗するように構成される。特定の実施形態では、不連続部が階段形状チャンネルを環に備え、階段形状チャンネルは、濾過システムを通じた流体の軸方向流れの圧力下でほぼ閉じられる。特定の実施形態において、不連続部は、環に形成される2つの階段状の端部の重なり合いによって形成される。特定の実施形態において、環は、濾過エレメントとハウジングとの間のシールを維持し且つ軸方向流れの方向に関係なく濾過システムを通じた流体の軸方向流れに抵抗するように構成される。特定の実施形態において、シールは、濾過中に、濾過エレメントの周囲及び濾過エレメントとハウジングとの間の空間内への流体の迂回に抵抗するように作用する。特定の実施形態において、シールは、洗浄中、濾過エレメントの周囲及び濾過エレメントとハウジングとの間の空間内へのフラッシング流体の迂回に抵抗するように作用する。
【0046】
本発明の特定の実施形態は、前述した要素の幾つかの組み合わせを有するシールリングを備える。シールリングは、水、廃水、雨水、飲料水及び非飲料水、及び、ジュースを濾過し及び/又は処理するために使用される濾過システムの濾過エレメント内に配置されてもよい。濾過システムは、スパイラル膜濾過システム、家庭用又は商業用の逆浸透システム、及び/又は、パイプ状容器、缶状容器、又は、他の容器或いは導管内に濾過エレメントを収容する他の濾過システムを備えてもよい。幾つかの実施形態において、濾過システムは、化学用途及び工業用途で他の流体を濾過して処理するために使用されてもよい。
【0047】
特定の典型的な実施形態に関連して本発明を説明してきたが、本発明の広い思想及び範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対して様々な改良及び変更がなされてもよいことが当業者には明らかであろう。したがって、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的に見なされるべきである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周と、内周と、厚さとによって規定される少なくとも1つの環から構成され、
シール板の外面の溝に嵌り込むように選択される内周の直径と、
シール板を受ける円筒ハウジングの内面の直径よりも大きくなるように選択される外周の直径と、
少なくとも1つの環に設けられ、少なくとも1つの環の半径に沿って中心をもつとともに、円筒ハウジング内への少なくとも1つの環の挿入を許容するように十分に環状部材が変形できるように選択される幅を有する隙間と、
を有し、
少なくとも1つの環の内外径及び隙間の幅が、少なくとも1つの環の外周と円筒ハウジングの内面との間の密接な接触を得るように選択される、濾過システムのラジアルシール。
【請求項2】
環状部材の圧縮に抗する所望の復元力によって密接な接触が維持され、復元力の大きさが、隙間の幅と、少なくとも1つの環を形成するために使用される材料とに関連付けられる請求項1のシール。
【請求項3】
隙間の幅が、少なくとも1つの環が溝内に取り付けられてシール板が円筒ハウジング内に挿入されるときの最大の漏れを許容できるように選択される請求項2のシール。
【請求項4】
シールが複数の環からなり、環は、環が溝に取り付けられるときに環の隙間が位置ずれするように構成され、それにより、作動時の漏れが最小限に抑えられる請求項3のシール。
【請求項5】
位置決めシステムを更に備え、一対の隣接する環におけるそれぞれの環が、一対の環の隙間の位置ずれを確保するように他方の環の位置決め要素と協働する位置決め要素を含む請求項4のシール。
【請求項6】
位置決めシステムは、隣接する環の隙間に嵌り込む一対の環のうちの一方の表面に設けられた隆起部を備える請求項5のシール。
【請求項7】
位置決めシステムは、隣接する環の表面に設けられた溝に嵌り込む一対の環のうちの一方の表面に設けられた隆起部を備える請求項5のシール。
【請求項8】
隙間は、環の半径に中心があり且つ環の半径に対して角度を成して形成される2つの端部を環に設けることにより、環に形成され、環の両方の端部が半径と交差する請求項1のシール。
【請求項9】
隙間が段付き形状を有する請求項1のシール。
【請求項10】
濾過システムの円筒ハウジング内へ挿入されるように構成されるスパイラル型膜エレメントをシールする方法であって、
円筒ハウジングの内面の直径を超える外径を有する少なくとも1つのスプリットリングシールを、スパイラル型膜エレメントのシール板の外面に位置する溝内に設けること、および、
シールリングを円筒ハウジング内に挿入することからなり、
シールリングの挿入が少なくとも1つのスプリットリングシールを圧縮するステップを含み、スプリットリングの隙間は、少なくとも1つのスプリットリングシールが円筒ハウジング内に密着できるようにする十分な圧縮ステップに応じて環状部材が変形できるように選択される幅を有する、シール方法。
【請求項11】
隙間の幅は、少なくとも1つの環が溝内に取り付けられてシール板が円筒ハウジング内に挿入されるときに、最大度合いの漏れを許容するように選択される請求項10の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのスプリットリングシールが複数のスプリットリングシールを備える請求項10の方法。
【請求項13】
複数のスプリットリングシールのそれぞれを位置合わせして、隣接するスプリットリングの隙間の重なり合いを回避し、それにより、作動時の漏れを最小限に抑えるステップを更に備える請求項12の方法。
【請求項14】
位置合わせするステップは、それぞれのスプリットリングシールに設けられた位置決め要素を使用して、隣接する一対のスプリットリングシールの位置合わせを行うことを含む請求項13の方法。
【請求項15】
位置決め要素は、溝、ピン、穴、及び、スロットのうちの1つ以上を含む請求項14の方法。
【請求項16】
濾過エレメントと濾過システムのハウジングとの間のシールを維持するためのスプリットリングシールであって、不連続部を有する硬質な環からなり、
環は、環が濾過エレメントの外面に設けられる溝に嵌ることができるように選択される内径を有し、
環は、ハウジングの内面の直径よりも大きくなるように選択される外面を有し、
不連続部は、ハウジング内への濾過エレメントの挿入中に受ける圧縮力に応じた環の内外径の減少を受け入れ、
環は、圧縮力に応じたその断面形状の変化に抵抗するように構成される、スプリットリングシール。
【請求項17】
不連続部が環に設けられた階段形状チャンネルから構成され、階段形状チャンネルは、濾過システムを通じた流体の軸方向流れの圧力下で実質的に閉じられる請求項16のスプリットリングシール。
【請求項18】
不連続部は、環に形成された2つの階段状の端部の重なり合いによって形成される請求項16のスプリットリングシール。
【請求項19】
環は、濾過エレメントとハウジングとの間のシールを維持し、軸方向流れの向きに関係なく濾過システムを通じた流体の軸方向流れに抵抗するように構成される請求項16のスプリットリングシール。
【請求項20】
シールは、濾過中に、濾過エレメントの周囲及び濾過エレメントとハウジングとの間の空間内への流体の迂回に抵抗するように作用し、
シールは、洗浄中、濾過エレメントの周囲及び濾過エレメントとハウジングとの間の空間内へのフラッシング流体の迂回に抵抗するように作用する請求項16のスプリットリングシール。

【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−507243(P2013−507243A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533391(P2012−533391)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/052340
【国際公開番号】WO2011/046944
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】