説明

濾過処理方法

【課題】 エネルギー消費量を減少できる濾過処理方法の提供。
【解決手段】 親水性膜を有する膜モジュールで排水を濾過処理する方法であって、
濾過処理時において、膜モジュールの最大透水速度に対して、98kPa膜間差圧時の10%以下の透水速度で、間欠運転にて、かつ逆圧洗浄することなく濾過処理する、濾過処理方法。前記間欠運転は、60〜1200分間濾過運転した後、2〜300分間濾過運転を停止する運転である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コストで濾過運転できる濾過処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜等を用いた膜モジュールにより濾過運転するとき、濾過膜の処理能力内にて最大限の運転をすると、透水速度は大きくできるものの、処理能力を維持するための逆圧洗浄回数が増加してしまう。このため、濾過運転時に要するエネルギー量が増大する。
【特許文献1】特開平8−197053号公報
【特許文献2】特開2002−301339号公報
【特許文献3】特開2007−222740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、低エネルギーにて濾過運転できる濾過処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、課題を解決する手段として、
親水性膜を有する膜モジュールで排水を濾過処理する方法であって、
濾過処理時において、膜モジュールの最大透水速度に対して98kPa膜間差圧時の10%以下の透水速度で、間欠運転にて、かつ逆圧洗浄することなく濾過処理する、濾過処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の濾過処理方法を適用することにより、安定した濾過運転ができると共に、濾過運転に要するエネルギー量を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の濾過処理方法で用いる膜モジュールは、濾過膜として親水性膜を有するものである。
【0007】
親水性膜としては、酢酸セルロース、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、再生セルロース、これらの混合物等のセルロース系材料からなるもののほか、ポリビニルアルコールからなるものも使用できる。
【0008】
濾過膜の形態は特に制限されず、中空糸膜、チューブラー膜、平膜等を用いることができるが、これらの中でも中空糸膜が好ましい。
【0009】
濾過処理時には、膜モジュールの最大透水速度に対して98kPa膜間差圧時の10%以下の透水速度、好ましくは5〜9%、より好ましくは5〜7%の透水速度で濾過運転する。なお、透水速度は実施例に記載の方法により、求められるものである。
【0010】
濾過運転は、間欠運転で行う。間欠運転では、60〜1200分間、好ましくは120〜600分間濾過運転した後、2〜300分間、好ましくは5〜300分間濾過運転を停止する。
【0011】
本発明の濾過処理方法では、膜モジュールとして、上部に透過水ノズルを有し、下部に原水ノズルを有するものを使用し、濾過運転の停止時において、前記透過水ノズルと原水ノズルを開放した状態で、膜モジュール内部の透過水を上部から下部方向に自然逆流させることが好ましい。このような操作をすることにより、エネルギー消費量を増加させることなく、透水速度を高いレベルで維持できる。
【0012】
本発明の濾過処理方法を適用することにより、通常の濾過膜モジュールを用いた濾過運転では必須となる逆圧洗浄が不要となる。逆圧洗浄は、所定時間(通常は30〜120分間)の濾過運転の後、膜モジュールに対して機械的に洗浄水を圧入して、1〜2分間程度濾過膜を洗浄する方法であるが、本発明ではこのような機械的な逆圧洗浄が不要となるため、エネルギー消費量を減少させることができる。なお、本発明の濾過処理方法を適用した場合には、1日に1回程度の手動による濾過膜の洗浄はすることができる。
【0013】
また本発明の濾過処理方法を適用することにより、消費エネルギーを減少させることができるため、膜モジュールの運転時に動力源として100V電源も使用することができるようになる。
【実施例】
【0014】
(透水速度)
膜モジュールを用い、98kPaの圧力下で純水をデッドエンド濾過し、単位時間、単位膜面積(内表面積換算)当たりの透過する純水量を測定した。更に透過水温度を測定し、水温25℃の水の粘度を基準として、測定水量の粘度の比率を測定した純水量にかけた数値を透水速度(L/m・hr)とした。
【0015】
(膜モジュール)
酢酸セルロース中空糸膜(FUS1582;内径0.8mm,外径1.3mm,分画分子量15万ダルトン)を20本束ね、内径20mm、長さ30cmのモジュールケースに収容し、両端をウレタン接着剤で封止して、膜モジュールを作製した。この膜モジュールは、設置したとき、上部に透過水ノズルを有し、下部に原水ノズルを有するものである。この膜モジュールの膜面積は0.0132mであった。この膜モジュールの透水速度は、610L/m・hrである。
【0016】
実施例1
上記の膜モジュールを用い、濁度10NTUに調整した泥水を、最大透水速度(610L/m・hr)の7〜9%の範囲で12時間の濾過運転した。濾過運転は、120分間運転した後、5分間停止する運転を1サイクルとして、それを12時間繰り返した。運転中、逆圧洗浄はしなかった。12時間経過後の透水速度は、523L/m・hrであった。
【0017】
実施例2
実施例1と同様に12時間の濾過運転をした。但し、濾過運転の5分間の停止時ごとに、透過水ノズルと原水ノズルを開放した状態で、膜モジュール内部の透過水を上部から下部方向に自然逆流させる操作をした。12時間経過後の透水速度は、568L/m・hrであった。
【0018】
比較例1
実施例1と同じ膜モジュールと泥水を用い、最大透水速度(610L/m・hr)の15〜20%の範囲で12時間、連続濾過運転した。但し、120分間の濾過運転の後、ポンプを作動させて2分間の逆圧洗浄をする運転を1サイクルとして、それを12時間繰り返した。12時間経過後の透水速度は、580L/m・hrであった。しかし、実施例1、2と比べると、高い透水速度で濾過運転した上、計5回の逆圧洗浄をしたため、エネルギー消費量は大きく増加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性膜を有する膜モジュールで排水を濾過処理する方法であって、
濾過処理時において、膜モジュールの最大透水速度に対して、98kPa膜間差圧時の10%以下の透水速度で、間欠運転にて、かつ逆圧洗浄することなく濾過処理する、濾過処理方法。
【請求項2】
前記膜モジュールとして、上部に透過水ノズルを有し、下部に原水ノズルを有するものを使用し、濾過運転の停止時において、前記透過水ノズルと原水ノズルを開放した状態で、膜モジュール内部の透過水を上部から下部方向に自然逆流させる、請求項1記載の濾過処理方法。
【請求項3】
前記間欠運転が、60〜1200分間濾過運転した後、2〜300分間濾過運転を停止する運転である、請求項1記載の濾過処理方法。





【公開番号】特開2010−29824(P2010−29824A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197282(P2008−197282)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】