説明

濾過助剤の水懸濁液を製造する方法

【課題】発酵飲料の濾過で使用する濾過助剤の水懸濁液を製造する際に用いる脱気ガスの使用量を低減し、前記懸濁液製造に係るコストを低減する。
【解決手段】混合タンク21中の濾過助剤の水懸濁液を酸素を含まないものとするために炭酸ガス、窒素ガス又はヘリウムガス等の脱気ガスを吹き込む工程で、前記脱気ガスの吹き込み量は製造すべき前記懸濁液の量に基づいて決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵飲料の濾過工程で使用する濾過助剤の水懸濁液を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールや麦芽を原料とする発泡酒などの発酵飲料は酵母を使用して製造される。ビールを例にあげると、ビールは、製麦、仕込み、発酵、熟成、濾過、充填の各工程を経て製造される。発酵工程では、麦汁に酵母が加えられ発酵によって若ビールが生成される。熟成工程では、若ビールが貯酒タンク中で熟成される。濾過工程では、熟成工程で得られたビールから酵母や凝固物が濾過される。濾過されたビールはびん、缶、樽に充填されて製品として出荷される。
【0003】
ビールは酸化されると製品の老化が進行し、本来の味覚、香りが損なわれ、品質が低下する。したがって、ビールを製造する各工程においてもビールが酸化されないように十分な配慮がなされている。このようなビールの酸化を抑制する技術は、例えば特許文献1に示される。
【特許文献1】特開2000−4866号公報 濾過工程では例えば珪藻土、二酸化ケイ素といった濾過助剤の水懸濁液を使用してビールが濾過される。濾過助剤の水懸濁液は濾過機に供給され使用されるが、濾過工程におけるビールの酸化を抑制するために、前記水懸濁液は酸素を含まないものが求められる。濾過助剤と水とをタンク内で混合して濾過助剤の水懸濁液を製造する際に空気(酸素)が混ざり込む。そこで、タンク下部から炭酸ガス、窒素ガス又はヘリウムガスのような酸化作用を有しないガスを吹き込んで、水懸濁液中から酸素を追い出す方法が採られうる。水懸濁液中の酸素を追い出すために水懸濁液に吹き込まれる炭酸ガス、窒素ガス又はヘリウムガスのようなガスを「脱気ガス」と呼ぶ。現状では、脱気ガスをタンク内に吹き込み、その状況のもとで濾過助剤と水とを投入しているために、大量の脱気ガスが消費される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、濾過助剤の水懸濁液を製造する際に用いる脱気ガスの消費量を低減し、前記懸濁液製造に係るコストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、発酵飲料の濾過工程で使用する濾過助剤の水懸濁液を製造する方法に関するものであって、タンクに水を供給する第一の工程、前記タンクに濾過助剤を投入する第二の工程、前記タンクに脱気ガスを吹き込む第三の工程を含み、前記脱気ガスは、前記水懸濁液の生成量に基づく量が吹き込まれることを特徴とする。
【0006】
本発明の好適な実施の形態では、前記濾過助剤として珪藻土及びニ酸化ケイ素の少なくとも一種が使用される。また、前記第三の工程は、前記第一の工程及び第二の工程の双方が終了した時点以降に開始される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、濾過助剤の水懸濁液を製造する際に用いる脱気ガスの消費量を低減することができ、したがって前記水懸濁液製造に係るコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は、代表的な発酵飲料であるビールの濾過工程で使用する濾過装置1の全体構成を示すものである。濾過装置1は、濾過助剤の水懸濁液製造装置2、貯酒タンクから供給される未濾過のビールを濾過し酵母や凝固物を除去する濾過機本体3、未濾過のビール及び濾過助剤の水懸濁液を濾過機本体1に供給する供給管4、濾過後のビールを回収し、瓶、缶、樽詰め工程に送る回収管5を含みうる。濾過機本体3は略円筒状の缶体31を備え、缶体31はその上部に隔壁32が設けられ、隔壁32の下方が未濾過側34、上方が濾過側35に構成される。隔壁32には多数の円筒状の濾過担体33が略鉛直に吊り下げられる。供給管4は、濾過機本体1と接続される側と反対側で、貯酒タンクに接続される管路と濾過助剤の水懸濁液製造装置2に接続される管路とに分岐している。供給管4の分岐点と貯酒タンク及び濾過助剤の水懸濁液製造装置2との間には、バルブV1,V2とポンプP1,P2とがそれぞれ設けられる。
【0009】
ビールを濾過する際の手順の一例を示すと、貯酒タンクに接続する管路のバルブV1を閉じ、濾過助剤の水懸濁液製造装置2に接続する管路のバルブV2を開ける。そしてポンプP2を駆動して濾過助剤の水懸濁液をその製造装置2から供給管4を介して濾過機本体3へ供給する。供給された濾過助剤の水懸濁液は濾過担体33に堆積し、濾過助剤の濾過層(プレコート層)を形成する。濾過担体33としては、その表面に濾過助剤の濾過層を形成させることができる濾過層保持体であればなんでもよく、例えば金属製の網、厚手の濾紙、セラミックの筒を使用しうる。また、濾過助剤としては、珪藻土、二酸化ケイ素が使用されうる。
【0010】
次いで、バルブV2を閉じ、バルブV1を開ける。その状態でポンプP1を駆動し、貯酒タンクに貯蔵される未濾過のビールを供給管4を介して濾過機本体3へ供給する。
供給された未濾過のビールは、濾過機本体3の未濾過側34に流入し、濾過担体33に形成された濾過助剤の濾過層で酵母、凝固物等が除去される。濾過によって清澄とされたビールは濾過機本体3の濾過側35から回収管5を介して次工程へ送られる。
【0011】
次に、図2を用いて濾過助剤の水懸濁液の製造について説明する。
【0012】
濾過助剤の水懸濁液製造装置2は、濾過助剤と水とを混合撹拌する混合タンク21、混合タンク21に投入する濾過助剤を計量する濾過助剤計量タンク22、混合タンク21に所定量の水を供給する水供給管23、混合タンク21に炭酸ガス、窒素ガス又はヘリウムガスのような酸化作用を有しない脱気ガスを供給するガス吹き込み管24、混合タンク25から脱気ガスと置換された酸素を含む空気、脱気ガスを放出するガス放出管25を含みうる。また、混合タンク21には、その中で生成された濾過助剤の水懸濁液を排出し、濾過機本体34に供給するための供給管4の分岐管が接続される。
【0013】
濾過助剤の水懸濁液を製造する際、まず供給管4の分岐管に配置されるバルブV2が閉じられる。次いで、第一工程として、所定量の水が水供給管23から混合タンク21内へ供給される。そして、第二工程として濾過助剤計量タンク22で所定量に調整された濾過助剤が混合タンク21に投入される。第一工程における水の供給、第二工程における濾過助剤の投入によって、濾過助剤の水懸濁液中に酸素が混ざり込む。第一工程及び第二工程は、そのいずれかの工程を先に行ってもよい。また、第一、第二工程を同時に行うこともできる。
【0014】
懸濁液中の酸素を除去するために、第三工程で脱気ガスがガス吹き込み管24を介して混合タンク21の懸濁液内に吹き込まれる。脱気ガスは懸濁液内に溶存する酸素を追い出し、追い出される酸素とともにガス放出管25から放出される。第三工程を経ることで、混合タンク21内の濾過助剤の水懸濁液は酸素を含まないものとされる。第三工程で使用する脱気ガスとしては、例えば酸化作用を有さない炭酸ガス、窒素ガス、ヘリウムガスが使用されうる。その中では、醸造の際に副生する炭酸ガスを使用することが、入手の容易性の点から好適である。
【0015】
第三工程において、脱気ガスの無駄な吹き込みを行わないように、脱気ガスの吹き込み量は製造すべき懸濁液の量に基づいて決定される。第一工程で供給される水の量及び第二工程で投入される濾過助剤の量の合計量すなわち製造すべき懸濁液の量が決定されれば、懸濁液中に混ざり込む酸素の量が定まり、その酸素の量に対応して脱気ガスの吹き込み量が決定される。脱気ガスの吹き込み量は、製造すべき濾過助剤の水懸濁液の量に比例する量である。したがって、第三工程における脱気ガスの吹き込みは、吹き込み量が製造すべき懸濁液の量に基づいて決定される所定値に達する時点で停止される。
【0016】
脱気ガスの吹き込み量は脱気ガスの吹き込み時間として表現されうる。例えば脱気ガスの単位時間当たりにガス供給管24を介して吹き込まれる量が一定である場合には、脱気ガスの吹き込み時間は製造すべき懸濁液の量に基づいて定められうる。この場合、脱気ガスの吹き込み時間が製造すべき懸濁液の量に基づいて決定される所定時間に到達すると、脱気ガスの吹き込みは自動的に停止されうる。
【0017】
第一、第二工程が開始されるときから第三工程を開始すると脱気ガスが無駄に消費される。したがって、第三工程は第一工程及び第二工程の双方が終了した時点以降に開始されるのが好ましい。
【0018】
前記の実施の形態では、濾過助剤の水懸濁液に使用する水は脱気されていないものとしたが、脱気された水を使用することもできる。その場合、脱気ガスの吹き込み量に対する製造すべき懸濁液の量の比例定数は変更される必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明で使用しうる濾過装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明で使用しうる濾過助剤の水懸濁液製造装置を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 濾過装置
2 濾過助剤の水懸濁液製造装置
21 混合タンク
22 濾過助剤計量タンク
23 水供給管
24 ガス吹き込み管
25 ガス放出管
3 濾過機本体
31 缶体
32 隔壁
33 濾過担体
34 未濾過側
35 濾過側
4 供給管
5 回収管
V1,V2 バルブ
P1,P2 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵飲料の濾過工程で使用する濾過助剤の水懸濁液を製造する方法であって、
タンクに水を供給する第一工程と、
前記タンクに濾過助剤を投入する第二工程と、
前記タンクに脱気ガスを吹き込む第三工程とを含み、
前記第三工程において前記タンクに吹き込むべき前記脱気ガスの量は、製造すべき前記水懸濁液の量に基づいて決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記濾過助剤は、珪藻土及び二酸化ケイ素の少なくとも一種が使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第三工程は、前記第一工程及び第二工程の双方が終了する時点以降に開始されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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