説明

濾過装置及び筒型エレメントの再生方法

【課題】本発明は、砂等を多く含む汚水の処理に好適なエレメントの再生方法を提供することを課題とする。
【解決手段】異物が混じっている汚水を濾過する濾過装置10において、この濾過装置10は、外周面から内周面へ流される汚水を濾過する筒型エレメント17と、この筒型エレメント17の側方に配置され、再生の第1段階で筒型エレメント17の外周面へ清掃水を噴射する清掃水噴射管21と、再生の第1段階で前記筒型エレメントを回転させる回転機構25と、再生の第2段階で前記筒型エレメントの内部へ逆洗流体を供給する逆洗流体供給管37とを備えていることを特徴とする。
【効果】筒型エレメントの外周面を清掃水で洗う。これで、砂等を含む堆積物の大部分を除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物が混じっている汚水を濾過する筒型エレメントの再生方法及び濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
濾過装置で汚水を処理すると、異物がエレメントに徐々に堆積する。この堆積物が増加すると、流路抵抗が増大して濾過処理能力が低下する。
そこで、一定量汚水を処理したらエレメントの再生操作が施される。
【0003】
従来、エレメントを再生させる方法の一つとして逆洗方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−108790公報(図2)
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図8は従来の技術の基本原理を説明する図であり、(a)において、セラミックフィルタで構成されたエレメント100には、汚水が、エレメント100の外周面101から内周面102に向かって流されて浄化される。103は外周面101に堆積した異物である。
【0005】
一定量を濾過した後に、(b)に示すように内周面102から外周面101に向かって左向きの白抜き矢印で示す水圧P1をかける。一方、外周面101から内周面102に向かっても右向きの白抜き矢印で示す水圧P2をP1≧P2となるようかける。
【0006】
その後、水圧P2を急激に弱めることにより水圧P1により外周面101に付着した異物103が剥がされ、エレメント100が再生される。この状態を示したのが(c)である。
【0007】
異物103の主体が泥である場合、全体として軟らかく異物103の除去に困難性はない。しかし、異物103に砂や細かな金属が多量に混じっている場合には、泥に砂等が骨材のように噛み込んで全体として硬くなり、異物103の除去は難しくなる。
特に、堆積物の厚さが増加すると困難性が増す。砂等を多量に含む汚水には前記方法は適していない。
そこで、砂等を多く含む汚水の処理に好適なエレメントの再生方法が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、異物を多く含む汚水の処理に好適なエレメントの再生方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、筒型エレメントの側方に配置され、筒型エレメントの外周面へ清掃水を噴射する清掃水噴射管と、筒型エレメントを回転させる回転機構と、筒型エレメントの内部へ逆洗流体を供給する逆洗流体供給管とを備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、筒型エレメントは、複数本で構成され、これらの複数本の筒型エレメントが浄水噴射管の周囲に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、筒型エレメントで濾過された浄水を、更に濾過する活性炭フィルタを備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、筒型エレメントの外周面に高圧の浄水を噴射することで、外周面を清掃する浄水清掃工程と、筒型エレメントの内部へ高圧の逆洗流体を供給し、この逆洗流体を筒型エレメントの内周面から外周面へ流すことで、筒型エレメントを清掃する流体清掃工程とからなることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、逆洗流体は、高圧空気であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、筒型エレメントの外周面へ清掃水を噴射する清掃水噴射管と、筒型エレメントの内部へ逆洗流体を供給する逆洗流体供給管とを設置した。第1段階で筒型エレメントの外周面を清掃し大部分の付着物を落とすことにより、第2段階でフィルタに噛み込んだ細かな付着物まで逆洗により清掃することができ高精度の再生が可能であるという利点がある。この結果、砂等を多く含む汚水の処理が可能となる。
【0015】
請求項2に係る発明では、複数本の筒型エレメントが浄水噴射管の周囲に配置されているので、1の浄水噴射管により複数の筒型エレメントの洗浄が可能であり効率的という利点がある。
【0016】
請求項3に係る発明では、濾過された水を活性炭フィルタにより更に濾過する。筒型エレメントにより濾過することができなかった微細な砂等を、確実に濾過することができる。濾過の精度が高まる。
【0017】
請求項4に係る発明では、筒型エレメントの外周面へ清掃水を噴射する清掃水噴射管と、筒型エレメントの内部へ逆洗流体を供給する逆洗流体供給管とを設置した。第1段階で筒型エレメントの外周面を清掃し大部分の付着物を落とすことにより、第2段階でフィルタに噛み込んだ細かな付着物まで逆洗により清掃することができ高精度の再生が可能であるという利点がある。この結果、砂等を多く含む汚水の処理が可能となる。
【0018】
請求項5に係る発明では、逆洗流体は、高圧空気であることとした。清掃の第1段階で大部分の付着物が洗浄されているため、高圧空気による逆洗であっても十分に残りの付着物を落とすことができ、かつ、より少ない浄水でエレメントの再生を行うことができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る濾過装置の全体図であり、濾過装置10は、上面が開口した主容器11と、主容器11の上部に配置された中間板12と、中間板12の上部に重ねられた筒体13と、筒体13の上部に重ねられ筒体13の蓋となる蓋体14と、中間板12に鉛直方向に軸受16を介して回転可能に支持されている複数の筒型エレメント17と、筒型エレメント17の中間に配置された清掃水噴射管21と、筒型エレメント17上部の浄水出口22の外周面に設置されたスプロケット24と、スプロケット24に接するよう設けられ筒型エレメントを回転させるための回転機構25(詳細は後述)と、主容器11下部側面に設けられた汚水を導入するための汚水導入管27及び汚水を排出するための汚水排出管28並びに底面に設けられ清掃によって剥がされた筒型エレメント17の付着物等を送出するための付着物送出管29と、清掃水噴射管21に清掃水導入管31を介して接続されている浄水タンク32と、筒体13外部に設けられ濾過水を更に濾過するための活性炭フィルタ34及び濾過水の流量を測るための流量計35を有する浄水送出管36と、浄水送出管36とは逆側に設けられ筒型エレメント17を逆洗する高圧空気を供給するための逆洗流体供給管37とからなる。
【0020】
図2は図1の2−2線断面図であって、回転機構25は、図面表裏面方向に設けられた回転軸38と、回転軸38の先端に設けられた回転軸スプロケット39と、回転軸スプロケット39及びスプロケット24に接するよう設けられたチェーン41とからなる。
【0021】
図1に戻って、蓋体14上部には回転機構25を駆動するためのモータ43が設けられている。
主容器11の上面、中間板12及び筒体13の下面は長ボルト45により接続されており、また、筒体13及び蓋体14は短ボルト46で接続されている。
47、48、49、51、52、53は管の開閉を行うバルブであり、54はシール材であり、Oリングが好適である。
【0022】
以上の構成からなる濾過装置の作用を次に述べる。
図3は通常の濾過作業を説明する図であり、黒塗り矢印は水の流れを示す。
汚水導入管27から主容器11に導入された汚水は、筒型エレメント17の外周面から内周面に向かって流れ、筒型エレメント17によって濾過される。
濾過された浄水は、浄水出口22から筒体13に流れ、浄水送出管36を通り更に活性炭フィルタ34により濾過される。
【0023】
筒型エレメント17により濾過された水を活性炭フィルタにより更に濾過する。筒型エレメント17により濾過することができなかった微細な砂等を、確実に濾過することができる。濾過の精度が高まる。
【0024】
これで、筒型エレメント17と活性炭フィルタ34とで2段階に浄化された浄水を連続的に得ることができる。ただし、浄化作業を進めると、汚水に含まれていた砂等の異物が筒型エレメント17の外周面に堆積して、濾過能力が低下する。そこで、適宜、次に述べる再生作業を実施する。
【0025】
図4は再生作業の第1段階を説明する図であり、再生の第1段階では、先ず汚水導入バルブ47を閉じ主容器11への汚水の導入を止める。次に、汚水排出バルブ49を開く。
これで、主容器11に溜まっている汚水を図面右下の白抜き矢印で示す通りに、外部へ排出させることができる。
【0026】
汚水の排出が終わったら、汚水排出バルブ49を閉じ、矢印で示すようにモータ43を作動し筒型エレメント17を回転させる。同時に、清掃水導入バルブ51を開く。すると、黒塗り矢印で示すように浄水タンク32から清掃水噴射管21へ清掃水を送り込むことができる。この清掃水は、想像線で示すように、清掃水噴射管21から筒型エレメント17の外周面に向かって噴射され、筒型エレメント17の付着物を清掃する。
【0027】
この清掃水で、筒型エレメント17の外周面に堆積している異物の大部分を除去することができる。特に、砂や細かな金属が泥に混じって硬くなった堆積物は、清掃水の水圧で効果的に落とすことができる。
そして、筒型エレメント17はモータ43で一定の速度で回転させるため、想像線で示した清掃水は、筒型エレメント17の全周に均等に当たり、清掃漏れが発生しない。すなわち、1本の清掃水噴射管21で、複数本(例えば6本)の筒型フィルタ17を一括して清掃することができる。
【0028】
一定の時間清掃水噴射管21による清掃を行ったら、清掃水導入バルブ51を閉じ浄水による清掃を終える。
【0029】
図5は再生作業の第2段階を説明する図であり、再生の第2段階では、先ず、清掃水導入バルブ51を閉じる。次に、逆洗流体導入バルブ52を開け黒塗り矢印で示す通り逆洗流体供給管37から筒体13に高圧空気を送り込む。筒体13に送り込まれた高圧空気は浄水出口22を通り筒型エレメント17の内周面から外周面に向かって流れる。
【0030】
高圧空気で、白抜き矢印で示す通り、筒型エレメント17の外周面に付着している異物は、外側へブローされる。空気は水に比較して密度が小さいために、清掃性能は小さい。
しかし、本発明では再生作業の第1段階で、堆積物の大部分を清掃してあるため、残った付着物の量は少なく、層の厚さも小さい。そのため、第2段階では高圧空気でも清掃が可能となる。
【0031】
第2段階の清掃は清掃水で実施することは差し支えないが、本発明のように、高圧空気を使用すると、使用する清掃水の量を減らすことができる。
一定の時間高圧空気による逆洗を行った後、逆洗流体導入バルブ52を閉じ高圧空気による逆洗を終了する。
【0032】
次に、付着物送出バルブ53を開く。これで、主容器11底部に溜まった異物及び第1段階で使用した清掃水が、図面下部白抜き矢印で示す通り付着物送出管29から外部へ送出され筒型エレメント17の清掃が終了する。
【0033】
図6は本発明に係る濾過装置の使用方法フロー図であり、ステップ(以下STと記す)01で、処理流量Q1を設定する。
汚水を汚水槽に導入し筒型エレメントにより汚水を濾過する(ST02)。
累積流量Q2を測る(ST03)。具体的には図1に示す流量計35により濾過された水の流量を測る。
累積流量Q2が処理流量Q1に達したか否かを調べる(ST04)。Q1未満であれば汚水の濾過(ST02)を続け、Q1に達したら濾過を停止する(ST05)。具体的には図1に示す汚水導入バルブ47を閉じる。
【0034】
汚水槽内の汚水を汚水排出口より排出させる(ST06)。
筒型エレメントを回転させ(ST07)、回転させたまま浄水を筒型エレメント外周面に噴射し筒型エレメントを洗浄する(ST08)。
【0035】
高圧空気により筒型エレメントを逆洗する(ST09)。
汚水槽底部に溜まった付着物及びST08において噴射された浄水を汚水槽外部へ排出する(ST10)。
【0036】
次に、このような濾過装置を備えたワーク洗浄装置について説明する。
図7は本発明に係る濾過装置を備えたワーク洗浄装置の原理図であり、ワーク洗浄装置60には、洗浄されるワーク61が載置される網状のワーク載置板62と、ワーク61を洗浄する際に発生する汚水を受ける汚水槽63とが配置される。
【0037】
流量計35に三方弁55を接続し、三方弁55のうち一方を浄水タンク32へ接続し、他方をワーク洗浄装置60に接続した。
【0038】
濾過装置10により濾過された浄水は、矢印(1)で示されるように、所定の量が溜まるまで浄水タンク32に流入される。浄水タンク32に所定の量の浄水が溜められたら、三方弁55を切り替える。三方弁55を切り替えると、浄水は、矢印(2)で示されるようにワーク洗浄装置60へ送られる。
【0039】
ワーク洗浄装置60へ送られた浄水及び矢印(3)で示されるワーク洗浄水導入管64から導入される浄水により、ワーク61を矢印(4)で示されるように洗浄する。ワーク61を洗浄することにより、ワーク61に付着した砂等が水と共に矢印(5)で示すように汚水槽63へ落とされる。
【0040】
汚水槽63に溜まった汚水は、矢印(6)で示すように汚水導入管27を通り、濾過装置10に導入される。導入された汚水は濾過装置10内で濾過され、(1)から(6)を繰り返す。
【0041】
濾過された浄水をワーク61の洗浄に使用するため、汚水を廃棄する必要がなく、環境の保全に資する。ワーク洗浄水導入管64から導入される浄水の量を減らすことができる。加えて、濾過して得られた浄水を浄水タンクに流入させ、この浄水により筒型エレメントの再生を行う。外部から導入する浄水の量を減らすことができ、濾過装置を使用するランニングコストを抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の濾過装置は、異物が混じっている水の再生に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る濾過装置の全体図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】通常の濾過作業を説明する図である。
【図4】再生作業の第1段階を説明する図である。
【図5】再生作業の第2段階を説明する図である。
【図6】本発明に係る濾過装置の使用方法フロー図である。
【図7】本発明に係る濾過装置を備えたワーク洗浄装置の原理図である。
【図8】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【符号の説明】
【0044】
10…濾過装置、11…主容器、12…中間板、13…筒体、14…蓋体、17…筒型エレメント、21…浄水噴射管、25…回転機構、37…逆洗流体供給管、52…逆洗流体導入バルブ、60…ワーク洗浄機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物が混じっている汚水を濾過する濾過装置において、この濾過装置は、外周面から内周面へ流される汚水を濾過する筒型エレメントと、この筒型エレメントの側方に配置され、前記筒型エレメントの外周面へ清掃水を噴射する清掃水噴射管と、前記筒型エレメントを回転させる回転機構と、前記筒型エレメントの内部へ逆洗流体を供給する逆洗流体供給管とを備えていることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記筒型エレメントは、複数本で構成され、これらの複数本の筒型エレメントが前記浄水噴射管の周囲に配置されていることを特徴とする請求項1記載の濾過装置。
【請求項3】
前記筒型エレメントで濾過された浄水を、更に濾過する活性炭フィルタを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の濾過装置。
【請求項4】
外周面から内周面へ流される汚水を濾過する筒型エレメントの再生方法であって、
筒型エレメントの外周面に高圧の浄水を噴射することで、前記外周面を清掃する浄水清掃工程と、
筒型エレメントの内部へ高圧の逆洗流体を供給し、この逆洗流体を筒型エレメントの内周面から外周面へ流すことで、筒型エレメントを清掃する流体清掃工程と、
からなることを特徴とする筒型エレメントの再生方法。
【請求項5】
前記逆洗流体は、高圧空気であることを特徴とする請求項4記載の筒型エレメントの再生方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−272735(P2008−272735A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22946(P2008−22946)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(504006984)GEテクノ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】