説明

濾過部材洗浄システム

【課題】濾過部材に対して閉塞の発生を抑制しながら、処理水の水質の悪化を抑制可能な濾過部材洗浄システムを提供する。
【解決手段】原水W1の濾過を行う濾過部材23と、一次側領域21から二次側領域22に向かって原水W1を濾過部材23に通過させて原水W1の濾過処理を行う濾過処理装置2と、一次側領域21から二次側領域22に向かって原水W1を流通させる原水流通手段3と、濾過部材23に二次側から一次側に向けて洗浄液W3を供給する洗浄液供給手段4と、一次側領域21と二次側領域22との圧力差の測定を行う圧力差測定手段8と、圧力差測定手段8により測定された圧力差測定値が圧力差閾値以上となった場合に、洗浄液W3の供給終了から時間閾値を経過した後に、洗浄液供給手段4の起動の決定を行う判定手段91と、判定手段91による判定結果に基づいて洗浄液供給手段4の起動を制御する制御手段92と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムを構成する濾過処理装置における濾過膜モジュール等の濾過部材を洗浄する濾過部材洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場排水や生活排水などの原水から高純度の処理水(浄化水)を生産し、処理水を各種プロセス水、中水、雑用水等に使用可能とする水処理システムが知られている。このような排水処理を行う水処理システムにおいては、原水に対して、例えば、膜分離活性汚泥法による水浄化技術が利用されている。膜分離活性汚泥法では、活性汚泥と処理水とを分離するため、濾過処理装置により濾過処理が行われる。
【0003】
濾過処理装置は、濾過部材として、曝気槽を兼ねる濾過処理水槽の内部に浸漬配置され、一次側から二次側に向かって原水(微生物の作用により有機物等が分解された原水)を通過させて活性汚泥と処理水との分離を行う濾過膜モジュールを有している。濾過処理装置によれば、一次側から二次側に向かって原水を濾過膜モジュールに通過させることにより原水の濾過処理を行うことができる。
【0004】
一方、濾過処理装置は、濾過処理を繰り返すと、濾過膜モジュールに捕捉された活性汚泥等の不純物により濾過膜モジュールが閉塞する。そのため、閉塞した濾過膜モジュールに対して逆洗浄を行い、濾過膜モジュールに付着した不純物を除去する必要がある。濾過膜モジュールの逆洗浄では、濾過膜モジュールを濾過処理水槽の内部に配置した状態のままで二次側から一次側に向けて濾過膜モジュールに洗浄液等を供給し、濾過膜モジュールの洗浄を行う。
【0005】
ここで、逆洗浄は、定期的(例えば、1ヶ月毎)に行われるが、例えば、有機物濃度の高い原水が導入され、活性汚泥濃度が急激に増加したときは、定期的な逆洗浄が行われる前に濾過膜モジュールが閉塞する場合がある。そのため、濾過処理装置は、定期的な逆洗浄の他に、濾過膜モジュールの膜差圧を監視し、濾過膜モジュールの膜差圧に基づいて逆洗浄を行う場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−300969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、濾過膜モジュールの膜差圧に基づいて逆洗浄を行う場合には、濾過膜モジュールが閉塞しやすい状態(例えば、活性汚泥濃度が増加した状態等)にあると、すぐに濾過膜モジュールの膜差圧が上昇してしまうため、所定時間が経過することなく次の逆洗浄を行う場合がある。
また、濾過膜モジュールの逆洗浄には、高濃度の酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液)が使用される。濾過処理水槽内に流入した酸化剤は、濾過処理中に曝気を行うことにより大気中に放出されるため、通常は微生物の成長に影響はないとされている。しかしながら、逆洗浄を行った後、所定時間が経過することなく次の逆洗浄を行うと、濾過処理水槽内の微生物の多くが酸化剤の頻繁な流入により死滅してしまう。これにより、原水の十分な活性汚泥処理ができなくなり、処理水の水質が悪化するおそれがある。
【0008】
本発明は、濾過処理装置における濾過部材に対して閉塞の発生を抑制しながら、処理水の水質の悪化を抑制可能な濾過部材洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一次側から二次側に向かって原水を通過させ原水の濾過を行う濾過部材と、該濾過部材により区画される一次側領域及び二次側領域とを有し、一次側領域から二次側領域に向かって原水を前記濾過部材に通過させることにより原水の濾過処理を行う濾過処理装置と、一次側領域から二次側領域に向かって原水を流通させる原水流通手段と、前記濾過部材に二次側から一次側に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、濾過処理中の一次側領域と二次側領域との圧力差の測定を行う圧力差測定手段と、所定の圧力差閾値及び所定の時間閾値を設定可能で、設定された該圧力差閾値及び該時間閾値に基づいて前記洗浄液供給手段の起動の判定を行う判定手段であって、前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給終了後において、前記圧力差測定手段により測定された圧力差測定値が前記圧力差閾値以上となった場合に、前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給終了から前記時間閾値を経過した後に、前記洗浄液供給手段の起動の決定を行う判定手段と、前記判定手段による判定結果に基づいて、前記洗浄液供給手段の起動の制御を行う制御手段と、を備える濾過部材洗浄システムに関する。
【0010】
また、前記制御手段は、前記判定手段による判定結果にかかわらず、前記洗浄液供給手段の起動の制御が可能な強制洗浄部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、濾過処理装置における濾過部材に対して閉塞の発生を抑制しながら、処理水の水質の悪化を抑制可能な濾過部材洗浄システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る濾過部材洗浄システムを示す構成図である。
【図2】図1に示す濾過部材洗浄システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る濾過部材洗浄システム1を示す構成図である。
図1に示す濾過部材洗浄システム1は、水処理システムの一部を構成している。水処理システムは、例えば、工場排水や生活排水などの原水W1から懸濁物質などの不純物を除去し、各種プロセス水、中水、雑用水等として再利用可能な処理水(浄化水)W2を生成する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る濾過部材洗浄システム1は、濾過処理を行う濾過処理装置2と、原水流通手段としての濾過用ポンプ3と、洗浄液供給手段としての洗浄用ポンプ4と、処理水W2が貯留される処理水タンク6と、洗浄液W3が貯留される洗浄液タンク7と、圧力差測定手段としての圧力センサ8と、判定手段としての判定部91及び制御手段としての制御部92を有するシステム制御装置9とを主体として構成されている。
【0015】
また、本実施形態に係る濾過部材洗浄システム1は、更に、原水ラインL1、第1処理水ライン(第2洗浄液ライン)L2、第2処理水ラインL3、第1洗浄液ラインL4、処理水バルブ31、処理水逆止弁32、洗浄液バルブ41、洗浄液逆止弁42などを備える。
【0016】
本実施形態に係る濾過部材洗浄システム1において、原水W1は、濾過処理装置2による濾過処理の前に、必要に応じて前処理が行われ、その後、原水ラインL1を介して、濾過処理装置2に供給される。
濾過処理装置2により濾過処理が行われた処理水(透過水)W2は、第1処理水ラインL2及び第2処理水ラインL3(以下、第1処理水ラインL2及び第2処理水ラインL3を併せて「処理水ラインL23」ともいう)を介して、処理水タンク6へ供給される。
【0017】
また、洗浄液タンク7に貯留される洗浄液W3は、第1洗浄液ラインL4及び第2洗浄液ラインL2(以下、第1洗浄液ラインL4及び第2洗浄液ラインL2を併せて「洗浄液ラインL42」ともいう)を介して、濾過処理装置2へ供給される。
なお、第1処理水ラインL2及び第2洗浄液ラインL2は、原水W1及び洗浄液W3の供給に兼用されるラインであり、使用態様に応じて言い分けることにする。また、「ライン」とは、流路、経路、管路などの物体の流通が可能なラインの総称をいう。
【0018】
以下、本実施形態に係る濾過部材洗浄システム1について詳述する。
濾過処理装置2による濾過処理の前には、所要の前処理が行われる。前処理が行われた原水W1は、図1に示すように、原水ラインL1を介して、濾過処理装置2に供給される。
【0019】
濾過処理装置2は、原水W1に対して濾過処理を行う装置である。図1に示すように、濾過処理装置2は、濾過部材としての濾過膜モジュール23と、濾過処理水槽24とを備える。
【0020】
濾過膜モジュール23は、多数の濾過膜(図示せず)を備えており、濾過膜により懸濁物質などの不純物を除去する。
濾過膜としては、例えば、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)及びナノ濾過膜(NF膜)が挙げられる。濾過膜の形状としては、平膜型、中空糸膜型、管状型及びノモリス型が挙げられる。これらの濾過膜は、処理水の用途、例えば、蒸気ボイラ、温水ボイラ、クーリングタワー、給湯器などの熱機器への給水や、半導体製造、電子部品、医療器具などの洗浄など、処理水に求められる用途に応じて適宜選択されて使用される。
【0021】
濾過処理水槽24は、その内部に、原水W1を貯留可能であると共に、濾過膜モジュール23を配置可能となっている。濾過処理水槽24の内部には、原水ラインL1を介して原水W1が供給されて、貯留される。
【0022】
本実施形態における濾過処理装置2は、膜分離活性汚泥法(MBR;メンブレン・バイオ・リアクター)により濾過処理を行う。なお、MBRによる濾過処理の場合には、通常、中空糸膜型のUF膜又はMF膜が濾過処理水槽24に浸漬された状態で配置され、使用される。
なお、MBRにおいては、濾過膜モジュール23の下方には、外部のブロアに接続された散気管が配置され、濾過処理中に曝気が可能に構成されている(図示せず)。
【0023】
濾過処理装置2は、濾過処理水槽24の内部で且つ濾過膜モジュール23の外側の領域である一次側領域21と、濾過膜モジュール23の内側の領域である二次側領域22と、を有する。つまり、一次側領域21と二次側領域22とは、濾過膜モジュール23により区画される。
濾過膜モジュール23は、一次側から二次側に向かって原水W1を流通させることにより、原水W1の濾過を行う。濾過処理装置2によれば、一次側領域21から二次側領域22に向かって原水W1を濾過膜モジュール23に流通させることにより、原水W1の濾過処理を行い、処理水(透過水)W2を得ることができる。
また、濾過膜モジュール23は、二次側から一次側に向かって洗浄液W3が供給されることにより、逆洗浄が行われる。
【0024】
濾過処理装置2の濾過膜モジュール23の二次側領域22には、処理水ラインL23(第1処理水ラインL2)が接続されている。この処理水ラインL23(第2処理水ラインL3)の下流側の端部は、処理水タンク6に接続されている。
原水W1が濾過処理されて得られる処理水W2は、処理水ラインL23を介して処理水タンク6に供給されて、貯留される。
【0025】
処理水タンク6は、処理水W2を貯留するタンクである。処理水タンク6は、処理水ラインL23(第2処理水ラインL3)の下流側の端部に接続されている。
【0026】
処理水ラインL23は、濾過処理装置2により得られた処理水W2を処理水タンク6に供給するラインである。
処理水ラインL23は、第1処理水ラインL2と、第1接続部J1と、第2処理水ラインL3とを有する。第1処理水ラインL2と第2処理水ラインL3とは、第1接続部J1において接続されている。第1処理水ラインL2は、濾過処理装置2の濾過膜モジュール23の二次側領域22と第1接続部J1とを接続するラインである。第2処理水ラインL3は、第1接続部J1と処理水タンク6とを接続するラインである。
【0027】
濾過用ポンプ3は、第2処理水ラインL3の途中に接続されている。濾過用ポンプ3によれば、その吸引力により、処理水ラインL23(第2処理水ラインL3及び第1処理水ラインL2)を介して濾過処理装置2の二次側領域22を負圧にすることができる。これにより、濾過用ポンプ3は、一次側領域21から二次側領域22に向かって原水W1を流通させることができる。
【0028】
処理水バルブ31は、第2処理水ラインL3における第1接続部J1と濾過用ポンプ3との間に設けられている。処理水バルブ31によれば、第1接続部J1と濾過用ポンプ3との間において、第2処理水ラインL3を開閉することができる。
【0029】
処理水逆止弁32は、第2処理水ラインL3における濾過用ポンプ3と処理水タンク6側の端部との間に設けられている。処理水逆止弁32は、濾過用ポンプ3から第2処理水ラインL3の処理水タンク6側の端部に向かう方向のみ、流体の流通を許容する弁である。
【0030】
洗浄液ラインL42は、洗浄液タンク7に貯留された洗浄液W3を濾過処理装置2の二次側領域22に供給するラインである。洗浄液ラインL42は、第1洗浄液ラインL4と、第1接続部J1と、第1処理水ラインL2とを有する。第1洗浄液ラインL4と第1処理水ラインL2とは、第1接続部J1を介して接続されている。
【0031】
第1洗浄液ラインL4は、洗浄液タンク7と第1接続部J1とを接続するラインである。第1洗浄液ラインL4は、処理水ラインL23の第1接続部J1において、処理水ラインL23に接続されている。第1洗浄液ラインL4の上流側の端部は、洗浄液タンク7に接続されている。
【0032】
第2洗浄液ラインL2は、第1接続部J1と濾過処理装置2の二次側領域22とを接続するラインである。なお、第1処理水ラインL2は、処理水ラインL23の一部を構成すると共に、洗浄液ラインL42の一部を構成する。洗浄液ラインL42の一部を構成する第1処理水ラインL2を「第2洗浄液ラインL2」ともいう。
【0033】
洗浄液タンク7は、洗浄液W3を貯留するタンクである。洗浄液タンク7は、洗浄液ラインL42(第1洗浄液ラインL4)の上流側の端部に接続されている。洗浄液W3としては、酸化剤、界面活性剤、キレート剤等を含む周知の洗浄液を使用でき、MBRによる濾過処理の場合には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が好ましく使用される。
【0034】
洗浄用ポンプ4は、第1洗浄液ラインL4の途中に接続されている。洗浄用ポンプ4は、二次側から一次側に向けて濾過膜モジュール23に洗浄液W3を供給する。洗浄用ポンプ4によれば、洗浄液ラインL42(第1洗浄液ラインL4及び第2洗浄液ラインL2)を介して、洗浄液タンク7に貯留される洗浄液W3を濾過処理装置2の二次側領域22に供給することができる。
【0035】
洗浄液バルブ41は、第1洗浄液ラインL4における洗浄用ポンプ4よりも下流(第1接続部J1)側に接続されている。詳細には、後述の洗浄液逆止弁42と第1接続部J1との間に設けられている。洗浄液バルブ41によれば、第1接続部J1と洗浄用ポンプ4との間において、第1洗浄液ラインL4を開閉することができる。
【0036】
洗浄液逆止弁42は、第1洗浄液ラインL4における洗浄液バルブ41と洗浄用ポンプ4との間に設けられている。洗浄液逆止弁42は、第1洗浄液ラインL4における洗浄液タンク7側の端部から第1接続部J1に向かう方向のみ、流体の流通を許容する弁である。
【0037】
圧力センサ8は、第1処理水ラインL2の途中に接続されている。圧力センサ8は、一次側領域21と二次側領域22との圧力差の測定を行うセンサである。詳述すると、圧力センサ8は、濾過用ポンプ3の吸引力により負圧となった第1処理水ラインL2の圧力を測定するセンサである。濾過処理装置2の一次側領域21には大気圧が作用しているため、圧力センサ8は、第1処理水ラインL2の圧力を測定することにより、濾過処理装置2の一次側領域21と二次側領域22との膜間差圧(濾過膜モジュール23を挟んで一次側と二次側との間の膜間差圧)を測定することができる。
【0038】
システム制御装置9は、本実施形態の濾過部材洗浄システム1の全体を制御する。システム制御装置9は、濾過部材洗浄システム1を構成する各要素のうち、制御が行われる要素に電気的に接続される。詳細には、システム制御装置9は、濾過用ポンプ3、処理水バルブ31、洗浄用ポンプ4及び洗浄液バルブ41に電気的に接続され、濾過用ポンプ3、処理水バルブ31、洗浄用ポンプ4及び洗浄液バルブ41を制御する。
また、システム制御装置9は、圧力センサ8に電気的に接続され、圧力センサ8により測定された圧力差値情報を受信する。
【0039】
システム制御装置9は、判定部91と、制御部92とを備える。
判定部91は、圧力センサ8に電気的に接続される。判定部91は、時間閾値及び圧力差閾値を設定可能であり、設定された時間閾値及び圧力差閾値に基づいて、洗浄用ポンプ4の起動の判定を行う。例えば、判定部91は、洗浄用ポンプ4による洗浄液の供給終了後において、圧力センサ8により測定された圧力差測定値が圧力差閾値以上となった場合に、洗浄用ポンプ4による洗浄液の供給終了から時間閾値を経過した後に、洗浄用ポンプ4の起動の決定を行う。なお、時間閾値及び圧力差閾値は、例えば、作業者による入力操作によって適宜設定される。
【0040】
制御部92は、濾過用ポンプ3、処理水バルブ31、洗浄用ポンプ4及び洗浄液バルブ41に電気的に接続される。制御部92は、所定の定期洗浄のタイミング又は判定部91による判定結果に基づいて、処理水バルブ31の開閉の制御、濾過用ポンプ3の起動及び停止の制御、洗浄液バルブ41の開閉の制御、洗浄用ポンプ4の起動及び停止の制御などを行う。
なお、定期洗浄とは、濾過膜モジュール23の閉塞の程度に拘わらず、所定の頻度で定期的に行われる洗浄のことである。定期洗浄は、例えば、所定時間おきに行われる。
【0041】
また、制御部92は、強制洗浄部93を有する。強制洗浄部93は、所定の定期洗浄のタイミング及び判定部91に基づく判定結果にかかわらず、処理水バルブ31の開閉の制御、濾過用ポンプ3の起動及び停止の制御、洗浄液バルブ41の開閉の制御、洗浄用ポンプ4の起動及び停止の制御などを行う。強制洗浄部93による制御は、例えば、作業者による入力操作に基づいて適宜行われる。
【0042】
次に、本実施形態の濾過部材洗浄システム1の動作の一実施例について、図2を参照しながら説明する。図2は、図1に示す濾過部材洗浄システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0043】
本実施例においては、濾過部材洗浄システム1において、濾過膜モジュール23の洗浄処理(所定の定期洗浄又は判定部91による判定結果に基づく洗浄処理)が行われた後、原水W1の濾過処理が行われる中での次の洗浄処理(所定の定期洗浄又は判定部91による判定結果に基づく洗浄処理)が行われる迄の1サイクルの例について説明する。
【0044】
図2に示すように、ステップST1において、圧力センサ8は、洗浄処理(所定の定期洗浄又は判定部91による判定結果に基づく洗浄処理)が行われた後、濾過処理中の濾過処理装置2の一次側領域21と二次側領域22との圧力差を測定する。つまり、圧力センサ8は、濾過処理装置2の一次側領域21と二次側領域22との膜間差圧(濾過膜モジュール23を挟んで一次側と二次側との間の膜間差圧)を測定する。圧力センサ8により測定された圧力差測定値は、システム制御装置9の判定部91に入力される。
【0045】
ステップST2において、判定部91は、入力された圧力差測定値に基づいて、濾過処理装置2の一次側領域21と二次側領域22との圧力差が所定の圧力差閾値以上であるか又は所定の圧力差閾値よりも低いかについて判定する。濾過処理装置2の一次側領域21と二次側領域22との圧力差が所定の圧力差閾値以上である場合(YES)には、ステップST3に進む。濾過処理装置2の一次側領域21と二次側領域22との圧力差が所定の圧力差閾値よりも低い場合(NO)には、ステップST7に進む。
【0046】
濾過処理装置2の一次側領域21と二次側領域22との圧力差が所定の圧力差閾値以上である場合には、濾過膜モジュール23に活性汚泥等の不純物が付着して堆積傾向の状態にある。つまり、濾過膜モジュール23がいずれ閉塞するおそれがある。そのため、濾過膜モジュールの洗浄処理(逆洗浄)を行う必要がある。
【0047】
ここで、前回の洗浄液W3の供給の終了(洗浄処理の終了)時点では、濾過処理水槽24内に流入した洗浄液W3が残留した状態にある。この洗浄液W3は、例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の場合には、濾過処理中に曝気を行うことにより大気中に放出される。しかし、前回の洗浄液W3の供給の終了(洗浄処理の終了)から所定時間が経過していない場合には、再び洗浄液W3が流入すると、高濃度の洗浄液W3が残留した状態が継続するため、濾過処理水槽24内において、微生物の成長速度よりも死滅速度の方が上回ることがある。そのため、頻繁に洗浄処理が繰り返されると、濾過処理水槽24内の活性汚泥濃度が次第に減少し、生物処理能力が低下した状態となる。その結果、処理水の水質を悪化させるおそれがある。これにより、ステップST3において、前回の洗浄液W3の供給の終了(洗浄処理の終了)から所定の時間閾値を経過しているか否かについて判定する。
【0048】
ステップST3において、前回の洗浄液W3の供給の終了(洗浄処理の終了)から所定の時間閾値が経過している場合(YES)には、ステップST4に進む。前回の洗浄液W3の供給の終了(洗浄処理の終了)から所定の時間閾値が経過していない場合(NO)には、ステップST7に進む。
【0049】
前回の洗浄処理から所定の時間閾値を経過している場合には、ステップST4において、システム制御装置9の制御部92は、第2処理水ラインL3の濾過用ポンプ3を停止して処理水バルブ31を閉じる制御を行う。これにより、処理水ラインL23における処理水W2の流通が停止される。
【0050】
また、制御部92は、第1洗浄液ラインL4の洗浄液バルブ41を開き、洗浄用ポンプ4を起動する制御を行う。これにより、洗浄液ラインL42における洗浄液W3の供給が開始され、濾過膜モジュール23の洗浄処理(逆洗浄)が行われる。
【0051】
その後、ステップST5において、所定時間が経過するまで(NO)、ステップST4が繰り返される。そして、ステップST5において、所定時間が経過すると(YES)、ステップST6に進む。
【0052】
ステップST6において、制御部92は、第1洗浄液ラインL4の洗浄用ポンプ4を停止し、洗浄液バルブ41を閉じる制御を行う。これにより、洗浄液ラインL42における洗浄液W3の供給が停止され、濾過膜モジュール23の洗浄処理(逆洗浄)が終了する。
また、制御部92は、第2処理水ラインL3の処理水バルブ31を開き、濾過用ポンプ3を起動する制御を行う。これにより、処理水ラインL23における処理水W2の流通が再開される。
【0053】
ステップST2において、圧力差測定値が圧力差閾値よりも低い場合(NO)には、まず、所定の定期洗浄のタイミングであるか否かを判定する。前回の定期洗浄から所定の時間が経過しており、次の定期洗浄のタイミングである場合(YES)には、ステップST8に進む。一方、次の定期洗浄のタイミングでない場合には、ステップST4に進み、上述の動作を行う。
【0054】
ステップST8において、システム制御装置9における制御部92の強制洗浄部93は、濾過膜モジュール23の強制洗浄を行うか否かを判定する。強制洗浄を行うか否かの判定は、作業者による入力操作があるか否かにより判定される。作業者による強制洗浄を行う旨の入力操作があった場合には、ステップST4に進み、上述の動作を行う。一方、作業者による強制洗浄を行う旨の入力操作がなかった場合には、ステップST1へ戻る。
【0055】
また、ステップST3において、前回の洗浄液W3の供給の終了(洗浄処理の終了)から所定の時間閾値が経過していない場合(NO)には、ステップST7に進み、上述の判定を行う。
【0056】
本実施形態に係る濾過部材洗浄システム1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態においては、濾過部材洗浄システム1は、所定の圧力差閾値及び時間閾値を設定可能であり、設定された圧力差閾値及び時間閾値に基づいて濾過膜モジュール23の洗浄の判定を行う判定部91と、判定部91の判定結果に基づいて洗浄用ポンプ4の起動等の制御を行う制御部92と、を備える。つまり、濾過部材洗浄システム1は、設定された圧力差閾値を超えた場合であっても、設定された時間閾値を経過しなければ次の濾過膜モジュール23の洗浄処理を行わない。その後、設定された時間閾値を経過した後に次の濾過膜モジュール23の洗浄処理を行う。これにより、過度の濾過膜モジュール23の洗浄を抑制することが可能となり、微生物の多くが死滅したままの状態になることを抑制することができる。つまり、残留する洗浄液W3の影響により、活性汚泥濃度の減少が引き起こされることを抑制することができる。その結果、濾過膜モジュール23の閉塞の発生を抑制しながら、微生物による十分な活生汚泥処理が可能となり、処理水W2の水質を安定させることができる。
【0057】
また、過度の濾過膜モジュール23の洗浄処理を抑制することにより、濾過膜モジュール23の劣化(例えば、酸化劣化)を抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態においては、濾過部材洗浄システム1は、所定の定期洗浄及び判定部91に基づく判定結果にかかわらず、洗浄用ポンプ4の起動等の制御を行う強制洗浄部93を備える。そのため、例えば、所定の定期洗浄又は判定部91に基づく判定結果にかかわらず、作業者による濾過膜モジュール23の洗浄処理を行うことができる。これにより、濾過処理装置2のメンテナンスを行った後等においても濾過膜モジュール23の洗浄を行うことができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、濾過処理装置2は、濾過部材としての浸漬型の濾過膜モジュール23を備えているが、これに制限されない。濾過処理装置2は、外圧型の濾過膜モジュールを備える装置であってもよく、あるいは、粒状濾材を使用する活性炭濾過装置や砂濾過装置であってもよい。本発明の主旨は、インターロックにより過度の洗浄処理を抑制する点にあるので、逆洗浄を必要とするいかなるタイプの濾過処理装置にも適用することができる。
【0060】
また、本実施形態においては、原水流通手段は、吸引ポンプとしての濾過用ポンプ3から構成されているが、濾過処理装置が外圧型の濾過膜モジュールを備える場合には、吐出ポンプから構成することもできる。この場合、圧力センサ8により測定される圧力差は、正圧として測定される。
【0061】
また、本実施形態においては、制御手段としての制御部92は、濾過用ポンプ3の起動のON/OFFを制御しているが、これに制限されない。制御部92は、更に洗浄液W3の量、濃度などの制御を行うこともできる。
【0062】
また、圧力センサ8による圧力差の測定は、洗浄用ポンプ4による洗浄液の供給終了と同時に又は直後に行うこともできる。
【0063】
また、制御部92は、濾過膜モジュール23の洗浄処理において、所定時間の経過に基づいて洗浄用ポンプ4の起動等を制御しているが、洗浄液W3の流量に基づいて制御してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 濾過部材洗浄システム
2 濾過処理装置
3 濾過用ポンプ(原水流通手段)
4 洗浄用ポンプ(洗浄液供給手段)
8 圧力センサ(圧力差測定手段)
9 システム制御装置
21 一次側領域
22 二次側領域
23 濾過膜モジュール(濾過部材)
91 判定部(判定手段)
92 制御部(制御手段)
93 強制洗浄部
W1 原水
W2 処理水
W3 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側から二次側に向かって原水を通過させ原水の濾過を行う濾過部材と、該濾過部材により区画される一次側領域及び二次側領域とを有し、一次側領域から二次側領域に向かって原水を前記濾過部材に通過させることにより原水の濾過処理を行う濾過処理装置と、
一次側領域から二次側領域に向かって原水を流通させる原水流通手段と、
前記濾過部材に二次側から一次側に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
濾過処理中の一次側領域と二次側領域との圧力差の測定を行う圧力差測定手段と、
所定の圧力差閾値及び所定の時間閾値を設定可能で、設定された該圧力差閾値及び該時間閾値に基づいて前記洗浄液供給手段の起動の判定を行う判定手段であって、前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給終了後において、前記圧力差測定手段により測定された圧力差測定値が前記圧力差閾値以上となった場合に、前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給終了から前記時間閾値を経過した後に、前記洗浄液供給手段の起動の決定を行う判定手段と、
前記判定手段による判定結果に基づいて、前記洗浄液供給手段の起動の制御を行う制御手段と、
を備える濾過部材洗浄システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記判定手段による判定結果にかかわらず、前記洗浄液供給手段の起動の制御が可能な強制洗浄部を備える請求項1に記載の濾過部材洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−78889(P2011−78889A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232146(P2009−232146)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】