説明

火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムとそのプログラム

【課題】自然災害に対して、RBFN値と火山活動度を用いた回帰分析により、土砂災害発生の危険性を一般的に理解しやすい確率として評価し、降灰量に応じて機敏に土砂災害発生危険基準線を変更、設定できる火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムとそのプログラムを提供する。
【解決手段】RBFN値学習データ12と火山活動度データ13、災害発生学習データ14とを用いて、これらの値に対する災害の発生確率を演算するための災害発生確率関数19を回帰分析する関数分析部3と、関数分析部3で得られた災害発生確率関数19と、災害の発生要因毎に観測される観測データ18とを読み出して、災害発生確率20を演算する災害発生確率演算部5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨と火山活動に伴う降灰や地震、噴火回数などを誘因として斜面あるいは渓流で発生する土砂災害、あるいは河川災害、道路災害など自然災害の発生に関する確率評価を行うための火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムとそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
わが国では、毎年のように土砂災害が多発しており、災害件数ならびに死傷者数は増加傾向にある。そのため、ソフト対策が急務となっており、平成13年度から土砂災害防止法による危険区域の設定等により、宅地開発の規制や住民への周知など警戒避難体制の整備が着実に進められてきた。
一方、土砂災害の予測手法についても研究が進められており、降雨量に着目した統計的手法、土中の水分量に着目した水文学的手法、斜面安定解析に基づいた力学的手法等、これまで様々な手法が提案されている。その中でも、住民の早期避難を目的とした分野においては、降雨量と過去の災害事例に基づいて、放射状基底関数ネットワーク手法(Radial Basis Function Network:以下、RBFNという場合がある)による統計解析を行い、非線形の土砂災害発生危険基準線(Critical Line:以下,CLという場合もある)を設定し、当該CLと降雨の軌跡を示すスネークラインを用いて災害の危険性を判断する方法が広く一般的に用いられている。
しかしながら、桜島のような火山地域においては、火山活動に伴う降灰が山腹斜面を被覆することにより、少量の降雨によっても土石流が発生しやすくなることが知られている。
また、桜島では長期的には火山活動が継続しているものの、短期的には比較的活発な時期と不活発な時期が交互に繰り返されていることにより、表面流出特性が変化することも確認されている。そのため、桜島のように短期的な盛衰を繰り返す火山地域において適切に防災情報の提供を行うためには、火山活動を踏まえ、適宜変更可能な非線形CLを設定することが必要であると考えられる。
そこで従来、例えば、防災・補修事業計画の立案支援などのために実際の災害・事故・補修の発生あるいは非発生に関するデータをコンピュータ処理することで精度の高い情報を得る研究を実施して、本発明者らは既に、がけ崩れの発生予測に用いられる発生降雨、非発生降雨の判別境界線であるがけ崩れの発生限界線や、避難基準線、警戒基準線を設定する方法について非特許文献1に示されるように発表している。
非特許文献1では、複雑な自然現象を直線近似せず、高精度の発生限界線等を設定することを目的として、RBFNを用い、地域毎の非線形がけ崩れ発生限界雨量線を設定する方法を提案している。本非特許文献1に開示される技術では、RBFNを用いて、その学習機能を利用して最適な中間層と出力層の重みを決定することによって非線形がけ崩れ発生限界雨量線を設定しているが、この手法は降雨のみを対象としており、火山活動に伴う降灰や地震、噴火回数などは考慮に入れられていない。
【0003】
また、特許文献1においては、「災害対策支援システム」として、災害発生時に実行すべき災害対策を自動的に選択して表示し、その進捗状況を併せて示す手段を備えたシステムが開示されている。
本特許文献1に開示される災害対策支援システムは、基本的にはif−then形式で、予め発生する事象とそれに対応する対策を関連付けて格納された対策リストを読み出して、対応するものである。災害時に精神的、時間的、人的に余裕のない状況で、的確な判断を可能とすべくなされたものである。また、標準的な作業時間と実働時に要した作業時間及び対策可能な残り時間を表示することで、対策進捗状況をリアルタイムに把握することが可能であると同時に、重要度の高い対策と低い対策を取捨選択するためにも用いることができる。
【0004】
さらに、特許文献2においては、非特許文献1に開示される技術を警戒避難システムに応用した発明が開示されている。本特許文献2に開示された発明では、災害に影響を及ぼす地形要因、地質・土質要因、環境要因及び地震要因を踏まえた上で、短期降雨指標として、例えば発生時刻から3時間以内の最大時間雨量を、また、長期降雨指標として、例えばその時刻における半減期を72時間とした実効雨量を用いて、CLを演算するものである。
このようにして得られたCLを用いることで、信頼性の高い警戒避難支援システムを提供することが可能であるが、火山活動に伴う降灰や地震、噴火回数などによりCLが変化することは考えられていない。
また、土砂災害の予測手法についても約30年前から研究が進められており、平成17年度に「国土交通省と気象庁の連携による土砂災害警戒避難基準雨量の設定手法(案)」(以下、連携案という場合もある)が取りまとめられた。これに伴い、土砂災害警戒情報の提供が全国的に展開され、本格運用を始めた地方自治体も増加し、検証事例が蓄積され始めている。
現在、先の土砂災害警戒避難基準雨量の設定手法(案)では、過去の非発生降雨を基本にRBFネットワーク手法による統計解析を行い、客観的かつ予測精度の高い非線形のCLが設定されている。また、避難勧告等の発令の判断に利用される予測雨量についても、気象庁を中心に日々精度を高めるための研究開発が行われている。
さらに、特許文献3には、特許文献2に開示される技術にロジスティック回帰分析を用いて災害発生確率に変換する発明が開示されている。本特許文献3に開示された発明ではRBFN値ピークを用いて、災害発生確率を演算しているが、火山活動に伴い、地表面の状況が変化することによるCLの変化については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−230235号公報
【特許文献2】特開2003−184098号公報
【特許文献3】特開2010−271877号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】倉本和正 他5名:RBFネットワークを用いた非線形がけ崩れ発生限界雨量線の設定に関する研究、土木学会論文集No.672/VI−50,pp.117−132,2001.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、先の土砂災害警戒避難基準雨量の設定手法(案)は降雨のみを対象としており、火山活動に伴う降灰や地震、噴火活動などによりCLが変化することは考慮に入れられていない。最近では、桜島や新燃岳のように火山活動によって多くの降灰があり、そのため少量の降雨で土砂災害が頻発する地域が出現している。
このような火山活動を踏まえたCLの設定に関する既往の取り組みとしては、重判別分析を用いた手法に降灰量を加味した線形CLの設定手法が提案されており、降灰量を加味することによって降雨のみを用いた場合に比べて精度良く土石流の発生・非発生の判別が可能となることが示されている。また、降灰量の多い時期と少ない時期の2つにデータを分類した後、それぞれの期間ごとに線形のCLを設定し、降灰量に応じてCLを適宜切り替える運用方法も提案されているが、その時々の火山活動に関するデータを用いてCLを適宜変更していくことは全く試みられていない。
このような課題は、すでに公開されている非特許文献1及び特許文献2においても同様である。これらに開示された発明でも、災害の発生限界線や、避難基準線、警戒基準線を設定することに主眼を置いており、ある特定の地域あるいは一定の条件毎にまとめられた地域グループにおいて、短期降雨指標や長期降雨指標等の自然災害発生要因における指標がどの程度に至れば災害の発生の危険性があるのかを客観的に評価することに留まっていた。
これでは、客観的、定量的な評価であっても地表面の状況が変化しない状態での災害の発生限界線や、避難基準線、警戒基準線に関するものとなり、これらでは火山活動のように時々刻々地表面の状況が変化する事象に機敏に対応することができず、この定量的な評価の経時変化の信頼性を担保することが困難であるという課題があった。
【0008】
また、特許文献3においては、降雨の状況に応じて土砂災害の発生確率を求めているのみで火山活動のように降雨とは別種の経時的に地表面の状況が変化するという要因を含めて解析することが難しいという課題が残されている。このことは、非特許文献1及び特許文献1、2においても同様であった。
【0009】
本発明は、かかる従来の事情に対処してなされたものであり、降雨と火山活動に伴う降灰や地震、噴火回数などを誘因として斜面あるいは渓流で発生する土砂災害、河川災害あるいは道路災害など自然災害に対して、RBFN値と火山活動度を用いた回帰分析により、時々刻々変化する災害発生の危険性を一般的に理解しやすい確率として評価し、火山活動に伴う地表面の変化による土砂災害発生危険基準線の経時的な変化についても評価が可能な火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムとそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムは、入力部と、この入力部から入力されるデータを格納するデータベースとを有し、前記入力部から入力されるか又は前記データベースに前記入力部を介して格納される,災害発生の観測対象箇所において災害の発生要因毎に予め観測された観測学習データと,前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する災害の発生・非発生に関する学習データとを災害発生学習データとし、災害の発生・非発生に対して放射状基底関数ネットワーク手法(以下、RBFNという。)を用いて,前記災害の発生要因毎に観測された前記観測学習データ及び災害の発生・非発生に関する前記学習データによって予め解析されて,前記入力部から入力されるか又は前記データベースに前記入力部を介して格納される,前記観測学習データに対応した災害の発生・非発生に関するRBFN値をRBFN値学習データとし、前記入力部から入力されるか又は前記データベースに前記入力部を介して格納される,回帰関数データを読み出しつつ、この回帰関数データに,前記災害の発生・非発生に関する前記学習データと前記RBFN値学習データのピーク値と火山活動度を前記入力部又は前記データベースから読み出して代入し、式[4]で示される災害発生確率関数(P)を回帰分析するための式[1]〜[4]を設定する解析条件設定部と、
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

(但し、x=(x1,x2,・・・xr)は発生確率をその現象の生起を説明するために観測された変数群であり、具体的には災害の発生・非発生に対して,前記観測学習データ及び災害の発生・非発生に関する学習データを用いて解析された前記RBFN値と火山活動度のピーク値を意味し、β0,β1,・・・,βrは係数である)
前記解析条件設定部において設定された前記式[1]〜[4]を用いて、前記RBFN値に対する災害発生確率を演算するための前記災害発生確率関数(P)を回帰分析する関数分析部と、この関数分析部で得られた前記災害発生確率関数(P)に、前記データベースから読み出される前記災害の発生要因毎に観測される観測データに対応するRBFN値のピーク値と火山活動度を入力して災害発生確率を演算する災害発生確率演算部と、を有することを特徴とするものである。
なお、本願発明において「災害の発生・非発生」は、いずれか一方のみの場合も含む概念である。すなわち、災害の発生・非発生に関する学習データには、災害の非発生のみに関する学習データや災害の発生のみに関する学習データも含まれる。請求項1に記載される発明のみならず、この後の請求項に記載される発明及びそれらに対する実施例においても同様である。
また、本願発明において「火山活動度」は、火山活動の状況を示す指標を意味し、例えば、降灰量や爆発回数、噴火回数、地震回数など、火山活動にともなって生じる現象をその量や回数で指標化したものが該当するが、特にこれらの指標に限定するものではなく、火山活動に関係する指標であればよい。請求項1に記載される発明のみならず、この後の請求項に記載される発明及びそれらに対する実施例においても同様である。
【0011】
請求項2記載の発明である火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムは、請求項1記載の火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムにおいて、前記災害発生確率と、前記データベースに格納された,予め定めた少なくとも1つの評価用しきい値を読み出し比較して、前記評価用しきい値に対応させた評価を前記災害発生確率に対応する評価として選択抽出する評価部を有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項3記載の発明である火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価プログラムは、入力部と、この入力部から入力されるデータを格納するデータベースとを有するコンピュータによって、災害発生確率を演算するために実行されるプログラムであって、コンピュータに、前記入力部から入力されるか又は前記データベースに前記入力部を介して格納される,災害発生の観測対象箇所において災害の発生要因毎に予め観測された観測学習データと,前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する災害の発生・非発生に関する学習データとを災害発生学習データとし、災害の発生・非発生に対してRBFNを用いて,前記災害の発生要因毎に観測された前記観測学習データ及び災害の発生・非発生に関する前記学習データによって予め解析されて,前記入力部から入力されるか又は前記データベースに前記入力部を介して格納される,前記観測学習データに対応した災害の発生・非発生に関するRBFN値をRBFN値学習データとし、前記入力部から入力されるか又は前記データベースに前記入力部を介して格納される,回帰関数データを読み出しつつ、この回帰関数データに,前記災害の発生・非発生に関する前記学習データと前記RBFN値学習データのピーク値と火山活動度を前記入力部又は前記データベースから読み出して代入し、式[4]で示される災害発生確率関数(P)を回帰分析するための式[1]〜[4]を設定し、これらを用いて、前記RBFN値に対する災害発生確率を演算するための前記災害発生確率関数(P)を回帰分析する関数モデル分析工程と、
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

(但し、x=(x1,x2,・・・xr)は発生確率をその現象の生起を説明するために観測された変数群であり、具体的には災害の発生・非発生に対して,前記観測学習データ及び災害の発生・非発生に関する学習データを用いて解析された前記RBFN値のピーク値と火山活動度を意味し、β0,β1,・・・,βrは係数である)

この関数モデル分析工程で得られた前記災害発生確率関数(P)に、前記データベースから読み出される前記災害の発生要因毎に観測される観測データに対応するRBFN値のピーク値と火山活動度を入力して災害発生確率を演算する災害発生確率演算工程とを実行させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、降雨と火山活動に伴う降灰や地震、噴火回数などを誘因として斜面あるいは渓流で発生する土砂災害、河川災害あるいは道路災害など自然災害に対して、RBFN値と火山活動度を用いた分析を行うが、従来の時間軸に対して固定したCLでなく火山活動度に応じて柔軟にかつ自動的にCLを作成・変更することが可能であり、火山活動という突発的な災害による地表面変化を考慮した上で、その時々のデータを用いて最適なCLを決定し運用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る土砂災害発生危険度評価システムの構成図である。
【図2】土砂災害発生危険度評価システムにおいて実行される演算の工程を示すフローチャートである。
【図3】RBFNを用いた統計解析の結果の一例を示す概念図である。
【図4】ロジスティック関数を表す曲線を示す概念図である。
【図5】野尻川における年別の土石流発生回数を示すグラフである。
【図6】(a)は一連降雨のピークで災害が発生する場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図であり、(b)は一連降雨のピーク後に災害が発生する場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図である。
【図7】(a)は一連降雨のピーク後に災害が発生する場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図であり、(b)は一連降雨のピーク前に災害が発生する場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図である。
【図8】(a)は一連降雨のピーク前に災害が発生する場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図であり、(b)は一連の降雨で災害が発生しない場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図である。
【図9】(a)、(b)いずれも一連の降雨で災害が発生しない場合の災害発生確率モデルの構築に用いるRBFN値のピーク値を説明するための概念図である。
【図10】連携案パラメータによるRBFN値と発生降雨の分布状況を示すグラフである。
【図11】連携案パラメータによるRBFN値と非発生降雨の分布状況を示すグラフである。
【図12】パラメータを変更した場合のRBFN値と非発生降雨の分布状況(λmax=2,500、r=7.5、dx=2.5)を示すグラフである。
【図13】パラメータを変更した場合のRBFN値と非発生降雨の分布状況(λmax=5,000、r=7.5、dx=2.5)を示すグラフである。
【図14】λmax=2,500、r=7.5、dx=2.5の場合のRBFN値の分布状況を示すグラフである。
【図15】λmax=5,000、r=7.5、dx=2.5の場合のRBFN値の分布状況を示すグラフである。
【図16】新しく設定したパラメータに基づくRBFN値と発生降雨の分布状況を示すグラフである。
【図17】RBFN値ピークと降灰量を用いた災害発生確率と災害発生率の関係を示すグラフである。
【図18】降灰量ごとの災害発生確率の分布を示すグラフである。
【図19】RBFN値ピークと降灰量を用いた災害発生確率と災害捕捉率、空振り率、超過頻度の推移を示すグラフである。
【図20】RBFN出力値ピークのみを用いた災害発生確率と災害発生率の関係を示すグラフである。
【図21】RBFN値ピークと降灰量を用いた対象期間内でのCLの変化を示すグラフである。(a)は1972年2月の運用CLである。(b)は1988年7月の運用CLである。(c)は1992年3月の運用CLである。(d)は2000年6月の運用CLである。(e)は2007年2月の運用CLである。(f)は2009年12月の運用CLである。
【図22】(a)は6月25日6時〜6月27日24時の降雨(降雨番号11)と実施例1で設定したCLの関係を示すグラフであり、(b)は6月25日6時〜6月27日24時の降雨(降雨番号11)とRBFN値ピークと降灰量を用いた災害発生確率の推移を示すグラフである。
【図23】爆発回数の分布を示すグラフである。(a)は爆発回数の少ない時期、(b)は爆発回数が中程度の時期、(c)は爆発回数が多い時期である。
【図24】噴火回数の分布を示すグラフである。(a)は噴火回数の少ない時期、(b)は噴火回数が中程度の時期、(c)は噴火回数が多い時期である。
【図25】地震回数の分布を示すグラフである。(a)は地震回数の少ない時期、(b)は地震回数が中程度の時期、(c)は地震回数が多い時期である。
【図26】地震回数による災害発生確率の変化を示すグラフであり、(a)は地震回数0回の場合、(b)は地震回数1,000回の場合、(c)は地震回数5,000回の場合、(d)は地震回数7,500回の場合である。
【図27】RBFN出力値ピークと降灰量、地震回数を用いた災害発生確率と災害発生率の関係を示すグラフである。
【図28】RBFN値ピークと降灰量、地震回数を用いた災害発生確率と災害捕捉率、空振り率、超過頻度の推移を示すグラフである。
【図29】RBFN値ピークと降灰量、地震回数を用いた対象期間内でのCLの変化を示すグラフである。(a)は1978年2月の運用CLである。(b)は1988年7月の運用CLである。(c)は1992年3月の運用CLである。(d)は2000年6月の運用CLである。(e)は2007年2月の運用CLである。(f)は2009年12月の運用CLである。
【図30】(a)は6月25日6時〜6月27日24時の降雨(降雨番号11)と実施例2で設定したCLの関係を示すグラフであり、(b)6月25日6時〜6月27日24時の降雨(降雨番号11)とRBFN値ピークと降灰量、地震回数を用いた災害発生確率の推移を示すグラフである。
【図31】実施例2で構築した回帰モデルを黒神川に適用させた際の災害発生確率と災害捕捉率、空振り率、超過頻度の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システム及び火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価プログラムについて図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムの構成図であり、図2は火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムにおいて実行される演算の工程を示すフローチャートである。
図1において、火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システム1は、大きくいうと、入力部2、関数分析部3、第1データベース4、解析部5、第2データベース6、評価部7及び出力部8から構成されている。
入力部2は、第1データベース4や第2データベース6に格納されるRBFN値学習データ12や火山活動度データ13、災害発生学習データ14あるいは回帰関数データ15、観測・点検データ18等、第1データベース4及び第2データベース6内に示される各データを予め入力して読み出し可能に格納しておくために用いられる。この入力部2から入力されるそれぞれのデータは、図1には矢印として示されていないものの直接第1データベース4や第2データベース6へ入力が可能となっている。また、関数分析部3に対して、RBFN値学習データ12、火山活動度データ13、災害発生学習データ14あるいは回帰関数データ15を直接入力するためにも用いられる。入力部2としての具体例には、キーボード、マウス、ペンタブレット、光学式の読み取り装置あるいは、コンピュータ等の解析装置や計測機器等から通信回線を介してデータを受信する受信装置など複数種類の装置からなり目的に応じた使い分け可能な装置が考えられる。
また、出力部8としては、具体的にはCRT、液晶、プラズマあるいは有機ELなどによるディスプレイ装置、あるいはプリンタ装置などの表示装置、さらには外部装置への伝送を行うためのトランスミッタなどの発信装置などが考えられる。
関数分析部3は、解析条件設定部10及び回帰分析部11から構成されるものである。
この関数分析部3は、解析部5において実行される災害発生確率を演算するためのロジスティック回帰分析関数を求めるために設けられるものであり、解析条件設定部10でロジスティック回帰分析関数を求めるための解析条件を設定し、回帰分析部11では解析条件設定部10で設定された解析条件に基づいてロジスティック回帰分析を実施して関数を求める。
実施例においては、基準線の代表例として、災害発生危険基準線(CL)を用いて説明しているが、CLに限定するものではなく、避難基準線(EL)や警戒基準線(WL)でもよく、あるいはその他の基準線でもよい。
実施例ではそれぞれの基準線についての実施例は説明しないものの、それぞれの基準が異なるだけで解析の手法などは共通しているため、CLを解析することでその他の基準線については容易に類推することが可能である。
【0016】
ここで本願発明の実施の形態において採用されているRBFN手法による統計解析によって求められるRBFN値と観測データから求められる火山活動度及びこれを用いるロジスティック回帰分析について説明する。
現行手法によるRBFN値は非発生降雨の発現確率を表し、図3のように設定される。また、RBFN値は災害発生の危険性を直接に表しているものではない。そこで、本願発明においては、土砂災害発生の危険性を表す指標としては確率値による表現が有効であると考え、ロジスティック回帰分析を用いることとしたのである。また、火山活動度は火山地域において観測されるいくつかのデータの中から土砂災害と関連性の大きいものを抽出して用いる。
ロジスティック回帰分析とはベルヌーイ分布に従う変数の統計的回帰モデルの一種で、独立変数が量的、従属変数が質的な変数の場合に用いられる二値変数に対する回帰分析である。一般にある現象の発生する確率Pをその現象の生起を説明するために観測された変数群(式(1))で説明しようとする場合、この変数群(式(1))という状態のもとで、現象が発生するという条件付き確率をP(x)で表し、これを多くの場合、式(2)で表すような関数Fを用いてモデル化する。
【0017】
【数9】

【0018】
【数10】

【0019】
ここで、r個の変数の影響を線形な合成関数をZ(式(3))とし、さらに、関数FにZのロジスティック関数(式(4))を代入して得られた式が、次のロジスティック回帰分析を用いた関数(式(5))である。
【0020】
【数11】

【0021】
【数12】

【0022】
【数13】

【0023】
ロジスティック関数を表す曲線は図4に示す通りであり、確率P(x)は0と1の間(0%〜100%)の値をとる。この図4に示される形態の関数P(x)が回帰関数データ15となる。本実施の形態においては、式(3)で表現される合成関数Zの変数xにRBFN値と火山活動度を採用して、P(x)として災害発生確率を求めている。本実施の形態に係る火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システム及び火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価プログラムでは、これらの災害発生確率の評価が高い精度で成立することを見出し、この確率演算を通じて、災害発生確率の評価を可能とするシステムとプログラムを発明したのである。なお、本実施の形態においては、災害の発生確率を演算するための災害発生確率関数をロジスティック回帰分析によって得たが、独立変数が量的、従属変数が質的な変数の場合に用いられる二値変数に対する回帰分析で災害発生確率関数を得ることが可能であれば、特にロジスティック回帰分析に限定するものではなく、他の回帰分析を用いてもよい。
関数分析部3の解析条件設定部10では、予め入力部2を用いて第1データベース4に格納された回帰関数データ15を第1データベース4から読み出し、あるいは入力部2を介して直接読み込み、解析条件を設定する。解析条件の具体例としては、第1データベース4から選択されるRBFN値学習データ12、火山活動度データ13、災害発生学習データ14の決定がある。すなわち、いずれの地域及び時期におけるRBFN値学習データ12、火山活動度データ13、災害発生学習データ14を選択、決定するかを解析条件設定部10において設定するものである。
これらのRBFN値学習データ12、火山活動度データ13、災害発生学習データ14についても予め入力部2を介して第1データベース4に入力されるが、関数分析部3の解析時に入力部2から直接関数分析部3へ入力されてもよい。その際には解析条件設定部10では、その入力されたRBFN値学習データ12、火山活動度データ13及び災害発生学習データ14が解析条件として設定されることになる。
回帰分析部11では、解析条件設定部10で設定された解析条件に基づいて回帰分析を実施して、災害発生確率関数を求める。具体的には式(5)を求めるが、その中の合成関数Zの式(3)に示される係数(β)を求める。
関数分析部3の回帰分析部11で解析された災害発生確率関数は、合成関数の係数、すなわち災害発生確率関数係数データ19として第2データベース6に格納される。
【0024】
次に、図1に戻り、第1データベース4について説明する。この第1データベース4は、すでに述べたとおり、関数分析部3に読みだされる解析条件や関数に関するデータを格納するものであり、具体的にはRBFN値学習データ12、火山活動度データ13、災害発生学習データ14及び回帰関数データ15が格納されている。前述のとおり、これらのデータは入力部2を介して格納される。
【0025】
次に、解析部5について説明する。
解析部5は、解析関数設定部16及び災害発生確率演算部17から構成されるものであり、ある地域における災害発生確率を演算するものである。
解析関数設定部16は、関数分析部3によって解析された災害発生確率関数を設定するものであり、具体的には、第2データベース6に格納された災害発生確率関数係数データ19を読み出して解析に用いる関数を選択・決定する。また、解析関数設定部16は災害発生確率を演算する地域を特定して、その地域における観測・点検データ18を第2データベース6から読み出して、解析に用いる関数を選択・決定する。
次に、災害発生確率演算部17では、解析関数設定部16で設定された災害発生確率関数と解析地域における観測・点検データ18を用いて災害発生確率を演算するものである。
災害発生確率演算部17で解析された災害発生確率については、災害発生確率演算部17が災害発生確率データ20として、第2データベース6に読み出し可能に格納される。
【0026】
次に、評価部7について説明する。
評価部7は、解析部5で解析された災害発生確率に対して、評価用しきい値と比較することで、評価を実施するものである。災害発生確率はそれ自体定量値であることから、本実施の形態に係る火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムのユーザーに対してある程度量的な判断が可能となっているが、さらに、それらの確率に対する評価を実施することでより客観的で量的な判断を可能とするものである。
評価用しきい値は、第2データベース6に評価用しきい値データ21として格納されているので、評価部7はこれを読み出して、災害発生確率演算部17で演算された確率値と比較し、比較の結果に対応させて評価を出力するものである。
具体的には、評価部7は、災害発生確率データ20を第2データベース6から読み出して、同じく読み出した評価用しきい値データ21と比較する。比較によって災害発生確率データ20が評価用しきい値データ21よりも大きい場合と小さい場合において、それぞれ対応する評価を予め評価部7に含めておくことで、その結果を出力部8へ送信することが可能である。
また、評価用しきい値データ21は、1つの値である必要はなく、レンジを持たせたデータとして、そのレンジに含まれる場合に所望の評価を該当させて災害発生に関する利用者の量的な判断・理解を容易としてもよい。
なお、評価部7は必ずしも設ける必要はなく、解析部5の災害発生確率演算部17で演算された結果である災害発生確率を出力部8を介して表示したり、あるいは他の外部装置あるいは他所のシステムにデータを転送するものでもよい。
【0027】
以上説明したとおり、本実施の形態に係る火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムにおいては、降雨と火山活動に伴う降灰や地震、噴火回数などを誘因として斜面あるいは渓流で発生する土砂災害、河川災害あるいは道路災害など自然災害に対して、RBFN値に関する分析をベースにRBFN値に加えて火山活動度をも加えて、火山活動度に応じて変化する地表面の状況を的確にとらえ、それらも加味して災害発生の危険性を確率という定量的な尺度で表現することで、ユーザーに対して現在の降雨や火山活動度に応じた土砂災害の発生危険度の理解の促進を図ることが可能である。
また、現時点での土砂災害の危険性のみならず、過去の災害発生基準線と比較することにより、土砂災害の発生要因が火山活動により時々刻々と変化していることの理解が得られやすい。また、時間と共に変化する火山活動を加味した土砂災害の危険性を経時的かつ定量的に示すことが可能である。従って、災害発生による犠牲者の発生防止をより精度高く実行することが可能である。また、避難勧告などの意思決定を適切なタイミングで精度よく実施することができる。
【0028】
次に、図2を参照しながら、本願発明の形態に係る火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価プログラムについて説明する。
これまで図1を参照しながら説明した火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムはシステム発明であるが、図1に示されるシステムを汎用のコンピュータと捉え、これを動作させるプログラムとして、図2に示すフローチャートの工程を実行させることを考えるものである。
図2において、点線で囲んだ部分はそれぞれ図1の火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムの構成要素を示すものであり、図1に示す構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付している。
最初の工程は、ステップS0として示される入力工程である。前述のとおり、第1データベース4にはRBFN値学習データ12、火山活動度データ13、災害発生学習データ14、回帰関数データ15、第2データベース6には観測・点検データ18が格納されるが、この工程を示すものである。ステップS0としているのは、特にこの工程を含まないものであってもよいことを意味するものである。入力工程は必要であるものの、火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価プログラムという発明の本質としては、入力工程を含まないものとしてステップS1から開始することも可能であるという意味である。
【0029】
ステップS1は第1の関数モデル分析工程である。この工程で実行されるのは、火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムにおける関数分析部3が発揮する機能である。前述のロジスティック回帰分析を用いて災害発生確率演算を実行可能な関数モデルを分析するのが関数モデル分析工程である。これらの工程を実行するためには第1データベース4から分析に必要なデータを読み出す。また、これらの工程の実行には、得られる関数モデル、すなわち災害発生確率関数(係数)の第2データベース6への格納も含まれる。これらの点の具体的、詳細な内容については火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムの関数分析部3について説明した際に述べたとおりである。
【0030】
次に、ステップS2ではステップS1で得られた災害発生確率関数(係数)と、評価を実施する地域の観測・点検データをそれぞれ第2データベース6から読み出して、災害発生確率を演算する。
これらの工程は図2に示されるとおり、火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムの解析部5で発揮される機能を実行するものである。ステップS2の実行には、演算で得られた災害発生確率を第2データベース6に読み出し可能に格納することも含まれる。これらの点の具体的、詳細な内容については火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムの解析部5を説明した際に述べたとおりである。
【0031】
ステップS3はステップS2で得られた災害発生確率に基づいて災害発生の評価を実行する工程である。この工程は、図2に示されるとおり、火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムの評価部7で発揮される機能を実行するものである。これらの工程では、火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムで説明したとおり、第2データベース6から評価用しきい値データ21を読み出して災害発生確率と比較を行い、その結果に基づいて評価を実施するものである。具体的、詳細な内容については火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムの評価部7を説明する際に述べたとおりである。
最後にステップS4で、ステップS2の実行によって得られた災害発生確率、ステップS3の実行によって得られた災害発生に関する評価を表示あるいは出力する。この工程は火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムにおける出力部8で発揮される機能の実行に他ならず、具体的、詳細な内容については出力部8の説明時に述べたとおりである。
このように構成される火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価プログラムにおける作用、効果については、先に説明した火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムの作用、効果と同様である。
なお、本実施の形態においては、災害の発生・非発生に対して放射状基底関数ネットワーク手法を用いて解析されたRBFN値を用い、また、RBFN値を災害発生基準線として用いているが、解析に用いられる計算手法としてこのRBFNを用いることなく、たとえばサポートベクターマシン(SVM)を用いて解析を行い、得られた値を災害発生基準線として用いるようにしてもよい。
【実施例1】
【0032】
以下、具体的なデータを用いた火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システムあるいは火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価プログラムの実施例について説明する。
まず、ロジスティック回帰分析を用いた関数を構築するにあたり、解析に用いる地域としては火山活動の影響が大きい鹿児島県桜島の野尻川流域とし、野尻川における1978年1月〜2009年12月の観測データを学習データとした。また、構築した回帰モデルの妥当性の検証にあたり、野尻川の2010年1月〜7月の観測データをテストデータとした。
学習データとは、ロジスティック回帰分析によって得られる関数を設定するために用いるRBFN値学習データ12及び火山活動度データ13、災害発生学習データ14を意味し、テストデータとは学習データのRBFN値学習データ12及び火山活動度データ13、災害発生学習データ14を用いて得られた回帰関数の有効性を検証するためのデータを意味している。本実施例では本願発明の成立性を実証するために解析を実施しているので、テストデータという言い方をしているが、実際の発明の実施ではこのテストデータが、災害発生確率について演算を行うための観測・点検データ18に相当するものである。
本実施例においては、自然災害のうち、土砂災害についてのケースを示し、災害発生要因としては、降雨と降灰を用いて土砂災害の災害発生確率を演算するが、土砂災害における災害発生要因としては他の要因、たとえば傾斜角度等の地形要因、あるいは地質要因などでもよい。
さらに、自然災害であれば土砂災害に限定するものではなく、河川災害あるいは道路災害などであってもよい。
【0033】
本実施例における対象災害は土石流であり、野尻川で発生した367件を使用した。図5に年別の土石流発生回数を示す。なお、土石流の発生は、主要河川ごとに設置されたワイヤーセンサーの切断情報によりデータが整理されており、野尻川では6号、7号えん堤に設置されている。
【0034】
本実施例では、土砂災害の災害発生確率を算出するための降雨データとしては、野尻テレメータのデータとし、CLの降雨指標としては時間雨量と土壌雨量指数を用いた。また、24時間無降雨期間で区切られたひとまとまりの降雨を一連降雨とし、総雨量10mm以上の降雨を抽出した。この一連降雨のうち、災害発生を伴った降雨を発生降雨とし、それ以外の降雨を非発生降雨として分類した。
【0035】
本実施例では、火山活動を表すデータとしては、降灰量を用いた。これらのデータはいずれも月別観測データである。
降灰量データについては、雨量観測所近傍に位置する野尻川13番降灰量計において観測されたデータである。
【0036】
本実施例では、まず、災害発生確率関数の構築を実施した。従来の災害発生予測手法として、背景技術のところで紹介した土砂災害警戒避難基準雨量の設定手法(案)によるCLが利用されており、これは毎時の降雨の軌跡であるいわゆるスネークラインがCLを超過すると、その降雨はいつ災害が起こってもおかしくない危険な状況であるといった判断をする。言い換えると、CLは、RBFN値のピーク値がCLを超過しているかどうかで、その後が安全なのか、危険なのかを精度よく判定していることになる。しかし、火山活動等により地表面の状況が変化するとそれに伴って土砂災害が発生する危険性は変化しているものであり、先の土砂災害警戒避難基準雨量の設定手法(案)のCLでは時系列的に危険性の変化を表現できていないという課題があったことは既に説明のとおりである。
そこで、本実施例では回帰分析部11においてロジスティック回帰分析を実施することで、その時々の火山活動と降雨の毎時の動きに対して確率値を算出することができる災害発生確率関数を構築している。
なお、本実施例及び本実施の形態におけるRBFN値あるいはRBFN値のピーク値とは、災害が発生した場合には、一連降雨において、その発生した時点と同時にピークとなっている値、あるいはそれよりも前にピークとなっている値を意味しており、災害が発生しない場合には、一連降雨においてピークとなっている値を意味している。
具体的に図6乃至図9を参照しながら説明する。これらの図では、縦軸に解析雨量(mm/hr)を示し、横軸に土壌雨量指数(mm)を示している。また、図中にはRBFN値を図示しており、三角印が災害発生時刻を示し、丸印が災害発生確率モデルの構築に用いる降雨ピークを示している。従って、この丸印のピークにおけるRBFN値がRBFN値のピーク値となる。
図6(a)には、一連降雨のピークで災害が発生した場合を示しており、その災害が発生した際のRBFN値を採用する。図6(b)、図7(a),(b)及び図8(a)では、災害発生時刻と降雨ピークがずれている場合である。災害発生時刻よりも前の降雨ピークにおけるRBFN値が小さい場合には、そのRBFN値がピーク値となる。
一方、図7(b)や図8(a)に示されるように、災害発生時刻以降に降雨ピークが生じる場合もあるが、その場合には災害発生時刻前のRBFN値のピーク値が災害発生時刻以降のピーク値よりも大きくとも災害発生時刻前のRBFN値のピーク値を採用する。
さらに、図8(b)から図9(b)に示されるように災害非発生の場合には、複数のRBFN値のピークがあれば、その中で最小のRBFN値を与えるものを採用する。
【0037】
しかし、火山活動が活発な地域では降灰等の影響により土砂災害が発生しやすくなり、図10に示すように連携案で求めたRBFN値0.9のラインの内側で多くの土砂災害が発生していることが確認された。この領域に分布する降雨は、降雨量に係わらずRBFN値が一定値となる。このような場合、連携案によるRBFN値を用いて原点付近に分布する降雨とRBFN値0.9のライン付近に分布する降雨の違いを表現することはできず、結果として算出される土砂災害発生確率が同じ値を示すこととなる。
【0038】
そのため、本実施例ではRBFNを用いた解析におけるパラメータを変更し、より多くの災害事例について降雨量の違いを表現することを試みた。
RBFNのパラメータの中で、ここではRBFN値を内側に分布させることを目的とし、データの影響範囲を決めるパラメータであるdx(格子間隔)と(基底関数の半径)、データの信頼度を決めるパラメータであるλmaxとλminの変更を試みた。
本実施例では、表1に示す12ケースについて検討を行った。なお、表1の評価については連携案パラメータを用いた際のRBFN値0.9の内側を表現することができていれば○とし、できていなければ×としている。また、パラメータを変更した際のRBFN値の分布を表中の連携案と○印のある2ケースについて図11乃至図13にそれぞれ示す。ここで、図中の点は非発生降雨を示している。
【0039】
【表1】

【0040】
ここで、○をつけた2つのケース(λmax=2,500、r=7.5、dx=2.5とλmax=5,000、r=7.5、dx=2.5)に着目し、それぞれのパラメータを用いた際のRBFN値の分布を図14、15に示す。図より、どちらのケースにおいても点線で示す連携案パラメータを用いた際のRBFN値0.9のラインの内側を表現できていることが確認できる。
そこで、RBFN値が一定値となる領域を少なくし、より多くの降雨量の違いを表現するため、それぞれのケースにおいてRBFN値0.1のライン(最も外側のライン)とRBFN値0.9のライン(最も内側のライン)の幅の比較を行った。その結果、図15のパラメータを用いた方が図14のパラメータを用いた場合よりもラインの幅が広くなるため、より多くの降雨量の違いを表現できるものと考えられる。
そのため,RBFNを用いた解析におけるパラメータとしてλmax=5,000 、 r=7.5 、dx=2.5を用いることとした。
新しく設定したパラメータに基づいて設定したRBFN値と発生降雨の分布を図16に示す。図10と比較すると、RBFN値が内側に分布しており、より多くの災害事例について降雨量の差を表現することができていると考えられる。
【0041】
ロジスティック回帰分析を用いた関数の構築を行うにあたり、RBFN値ピークと降灰量の2指標を説明変数として用いる。
ここで、降雨に関する説明変数であるRBFN値ピークについては、図6乃至図9に述べた考え方で抽出した。まず、発生降雨については災害発生に最も起因したと考えられる降雨を用いて評価を行うことが望ましいため、災害発生時刻以前で最も小さくなるRBFN値(最小値は0.0)を学習データとして用い、「発生」という従属変数を与えた。一方、非発生降雨についてはこのような降雨を経験しても災害が発生しなかったことを評価するため、一連降雨のピーク時刻におけるRBFN値を学習データとして用い、「非発生」という従属変数を与えた。
なお、降灰量については月別観測データであるため、実際の運用を考えると、災害発生確率の算出を行う時点において得ることが可能なデータは先月の値となる。そのことを踏まえ、本実施例では降灰量データは先月の値を用いることとした。
例)1992年6月23日〜25日の降雨 → 1992年5月の降灰量
2000年1月23日〜24日の降雨 → 1999年12月の降灰量
【0042】
ロジスティック回帰分析を用いた関数の構築にあたっては、RBFN値のピーク値から危険度を判定するCLの考え方に基づく。ここでは、RBFN値のピーク値を説明変数xとし、火山活動を降灰のみと考えその説明変数をxとし、ピーク以降に災害が発生した確率を目的変数P(x)として、関数分析部3の回帰分析部11において構築した回帰関数を式(6)に示す。
この回帰分析部11では、第1データベース4から回帰関数データ15を読み出すが、この回帰関数データ15が先の式(4)なる関数をあらわすデータであり、これに対して、第1データベース4から読み出したRBFN値学習データ12からRBFN値のピーク値と火山活動度データ13から降灰量を、災害発生学習データ14から災害の発生の有無をそれぞれ読み出してロジスティック回帰分析を実施するのである。
【0043】
【数14】

【0044】
式(6)では、ある降雨の任意の時刻に着目したときに、その降雨の経験したRBFN値のピーク値と降灰量を与えることで、今後の災害発生確率P(x)を算出することができる。
このことにより、連携案によるCLでは、降灰の変化による危険度の変化を示すことができなかったが、ロジスティック回帰分析を用いた関数では、降灰の変化に対応した災害発生の確率値を算出することができようになった。この式(6)で示される関数は、回帰分析部11から第2データベース6に災害発生確率関数係数データ19として読み出し可能に格納される。そして、解析部5の解析関数設定部16で読み出されて、災害発生確率を評価する地域における観測・点検データ18を用いて、災害発生確率の演算を災害発生確率演算部17において実施するのである。災害発生確率演算部17で得られた災害発生確率は、災害発生確率演算部17によって、災害発生確率データ20として第2データベース6に読み出し可能に格納される。
【0045】
このように構築されたロジスティック回帰分析を用いた関数(式(6))は、降灰量を加味した災害の発生確率を算出することができるが、実際の災害発生降雨とどのくらい整合しているかを確認し、関数としての妥当性を確認する必要がある。そこで、学習データのすべての降雨(1140降雨:発生353,非発生787)に対する災害発生確率P(x)を求め、表2のように10%毎に区切って降雨件数をまとめた。また、各区間に対しての実際の発生降雨の件数、ならびに発生率も表記した。なお、各区間の発生率は式(7)より算出する。発生率の単位は%である。
【0046】
【数15】

【0047】
【表2】

【0048】
各区間のP(x)と、発生率について表2を参照しながら説明する。例えばP(x)が10%〜20%のとき、実際の発生率は10.8%と算出されている。また、P(x)が80%〜90%の区間に注目すると、その区間での発生率は81.6%となっている。このように、ロジスティック回帰分析を用いて得られた関数により算出された災害発生確率P(x)は実際の発生率によく整合していることが理解される。
ここで、各区間における災害発生確率P(x)と実際の発生率の相関を近似直線も併せて図17に示す。図17の縦軸は実際の災害発生確率を示し、横軸はロジスティック回帰による求めた災害発生確率P(x)である。この図17において災害発生確率P(x)が増加するほど、実現象としての災害発生率も増加し、全体としての整合が確認できた。
このように、ロジスティック回帰分析を用いた関数により算出された災害発生確率P(x)は降雨の強さに応じた災害発生の実現象をよく捉えており、降雨による災害発生の危険性を確率値という連続値によって客観的かつ定量的に表現できたと言える。
【0049】
式(6)に基づいて求めた降灰量ごとの災害発生確率の分布を図18に示す。図18より、降雨と災害の発生の関係性に着目すると、RBFN値が小さくなるほど災害発生確率が高くなっている。また、降灰と災害の発生の関係性に着目すると、降灰量が多くなるほど災害発生確率が高くなっている。そのため、図からもRBFN値と降灰量の変化による災害発生確率の変化に関して論理的矛盾が生じていないことが確認できる。
【0050】
このように構築した回帰モデルはRBFN値と降灰量に基づいた災害発生確率を算出するためのモデルとして妥当なモデルである。そのため、当該回帰モデルを用いることにより土砂災害の危険性を適切に表現することが可能であると考えられるが、災害の危険性に基づいて防災情報等の発表を行う上では、その基準となるCLを設定することが必要となる。
そこで、構築した回帰モデルを用いて算出される災害発生確率10%〜90%(10%刻み)のラインの中より、防災情報等の発表に用いる最適なCLの選定を行うこととした。ここで、防災情報は早期避難による減災を目的とした情報であることを勘案すると、その発表基準となるCLは、過去の災害事例の多くを捕捉しながらも、できるだけ空振りを抑えることが必要となる。そこで本実施例では、それらを網羅する指標として式(8)乃至式(10)に示す災害捕捉率、空振り率、超過頻度を用い、各確率ラインの精度を算出し、発表基準として用いるCLの選定を行った。その結果を表3、4と図19に示す。なお、表4は一連降雨中に5件以上災害が発生した降雨のみを対象とした結果である。
【0051】
【数16】

【0052】
【数17】

【0053】
【数18】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
精度を算出した結果、本実施例では、空振り率を抑えつつ、全体の災害の半数を捕捉できるラインとして災害発生確率50%のラインをCLとして選定した。
設定したCLの精度を表5に示す。なお、表には比較のため、RBFN値ピークのみを用いて構築した回帰モデル(降灰量の影響を考慮しない場合、式(11)参照)に基づいた場合のCLの精度を併記する。
【0057】
【表5】

【0058】
【数19】

【0059】
表5より、空振り率と超過頻度に関しては明確な差はないものの、災害捕捉率は降灰量の影響を考慮しない場合は43.3%であることに対し、降灰量の影響を考慮した場合は50.7%と高い精度を示していることが確認できる。これは、RBFN値のみを用いた場合、火山活動が活発な時期に見られる少雨で発生する災害発生降雨と火山活動が不活発な時期の非発生降雨とが同等の確率で表現されていることに対し、降灰量の影響を考慮することで両者の違いが明確化されたことに起因するものと考えられる。
また、5件以上のもの(一連降雨中に5件以上災害が発生した降雨のみ)を対象とした場合の災害捕捉率に着目すると、降灰量の影響を考慮しない場合は59.1%であることに対し、それらを考慮した場合は90.9%と精度が大きく上昇していることが確認できる。このように、一連降雨中に災害が多発する時期は表6に示すように降灰量も多く、火山活動も活発な時期であると考えられる。本実施例で構築したモデルはそれらの要因についても評価することができているため、精度が向上したものと考えられる。
【0060】
【表6】

【0061】
また、RBFN出力値ピークのみを用いて構築した回帰モデルの妥当性評価結果を表7と図20に示す。
【0062】
【表7】

【0063】
図17に示した降灰量の影響を考慮した結果と比較すると、図17では10%〜100%の範囲で確率値を評価できているのに対し、図20(RBFN出力値ピークのみを用いた結果)では10%〜90%の間でしか確率値を評価できていないことが分かる。このことからも、降灰量の影響を考慮することで精度が向上していることを確認することができる。
これらのことから、降灰量の影響を考慮することで火山地域における土砂災害の発生予測精度の向上を図ることができたと考えられる。
【0064】
今までの検討により、降灰量の影響を考慮することにより火山地域における土砂災害の発生予測精度が向上することが確認できた。ここでは、降灰量の影響を確認するため、学習期間である1978年1月〜2009年12月までの期間においていくつか代表的な時期に着目し、CLがどのように変化しているのか確認を行った。それぞれの時期の詳細を表8に、CLの変化状況を図21に示す。
【0065】
【表8】

【0066】
図21より、降灰量が非常に少なかった1978年2月の運用CL(図21(a))と降灰量が非常に多かった1988年7月の運用CL(図21(b))に着目すると、1988年7月の運用CLはどのような雨でも土砂災害が発生すると予測されており、実際少量の雨で土砂災害が起こっている。また、1988年7月の運用CL以外(図21(a)、(c)〜(f))に着目すると、降灰量が特に少ない1978年2月の運用CL(図21(a))および2007年2月の運用CL(図21(e))ではCLの外側に60%と70%の2本の確率ラインしか存在しないことに対し、降灰量が比較的多い1992年3月の運用CL(図21(c))、2000年6月の運用CL(図21(d))および2009年12月の運用CL(図21(f))ではCLの外側に80%の確率ラインが追加されている。その中でも、2009年12月の運用CL(図21(f))では80%の確率ラインがCLにより近接していることが確認できる。そのため、同じ降雨量であっても降灰量の影響により災害の危険性が異なることが評価されている。
これらのことから、本実施例で設定したCLは降灰量に応じて土砂災害の危険性が異なる状況を適切に表現しているものと考えられる。
【0067】
本実施例では、これまで鹿児島県野尻川における1978年1月〜2009年12月の観測データを学習データとして用い、災害発生確率モデルの構築を行ってきた。しかしながら、構築した回帰モデルは学習データに対して構築した回帰モデルであるため、未学習データに対してどの程度適用性を有しているか定かではない。そこで、ここでは未学習データに対する適用性の確認のため、野尻川の2010年1月〜7月までの降雨を用い運用検討を行った。
【0068】
表9に野尻川の2010年1月〜7月までの発生事例14件を示す。なお、降雨番号14については、データが7月末までのため31日の時点で終了とした。また、降雨番号11についての検証結果を図22に示す.
【0069】
【表9】

【0070】
表9に示すように、野尻川の2010年の発生事例14件について評価を行ったところ、図22に示したような災害発生確率50%を超えた後に災害が発生した7件の災害(全災害の50%に該当)を捕捉することができた。本実施例では、CLを設定する際に全体の災害の半数を捕捉できるラインとして災害発生確率50%のラインを選択している。そのため、構築したモデルは未学習データに対しても十分適用性があるものと考えられる。表10に野尻川の2010年1月〜7月までの非発生降雨19件を示す。
【0071】
【表10】

【0072】
表10より、CL(災害発生確率50%のライン)を超過している降雨は1件もないことが確認できる。ここで、空振り率は式(9)により算出されるため、野尻川の2010年の非発生降雨19件についての空振り率は0%となる。
【0073】
上での検討により、構築した回帰モデルは未学習データに対しても十分適用性があることが確認された。
【実施例2】
【0074】
実施例1の検討により構築した回帰モデルは、RBFN出力値と降灰量に基づいて災害発生確率を算出することが可能な回帰モデルである。しかしながら、桜島においては火山活動状況によって災害の発生傾向が異なることから、実施例1の検討により構築した回帰モデルは桜島の特性を十分反映したモデルであるとは言い難い。
そこで、実施例2では火山活動の状況を説明変数として追加することにより、桜島の特性を十分に反映した回帰モデルの構築を行うこととした。
火山活動状況を示す説明変数は、火山活動によって生じる現象である爆発回数、噴火回数、地震回数のうち、火山活動が活発な時期と不活発な時期を区分する上で最も適した指標を用いることとした。
各指標(爆発回数、噴火回数、地震回数)について回数と活発な時期と不活発な時期の占めるデータの割合の関係を整理した結果を図23(爆発回数)、図24(噴火回数)及び図25(地震回数)に示す。図より、いずれの要因も回数の少ない時には不活発な時期の占めるデータの割合が高く、回数が多くなるにつれて活発な時期の占めるデータの割合が高くなっていることが確認できる。そのため、どの要因も火山活動状況に関係のある指標であると考えられる。そこで、本願発明ではこれらの要因の中で最も活発な時期と不活発な時期のデータの分離性の高い要因を選定することとした。
まず、回数の少ない時(図中の(a))に着目すると、爆発回数の分布のみ他の要因と比べて活発な時期の占めるデータの割合が高いことが分かる。そのため次に、爆発回数を外した2要因(噴火回数、地震回数)において回数の多い時(図中の(c))に着目すると、噴火回数に比べて地震回数の方が活発な時期の占めるデータの割合が高いことが分かる。そのため、活発な時期と不活発な時期のデータを分離するにあたり、地震回数が最も適切であると考えられる。
以上のことから実施例2では、火山活動に関する説明変数として地震回数を用いることとした。
【0075】
火山活動状況の活発な時期と不活発な時期の違いを表現する指標として地震回数を採用した。そこで、地震回数を説明変数として追加し、降灰量と地震回数の変化により災害発生確率の変化する回帰モデルの構築を行った。なお、地震回数として用いるデータは月別観測データであることから、実際の運用を考え、降灰量と同様に先月のデータを用いることとした。構築した回帰式を式(12)に示す。
【0076】
【数20】

【0077】
式(12)より、RBFN出力値ピークと降灰量に関する係数に着目すると、実施例1の検討結果と同様に論理的矛盾は生じていないことが確認できる。また、説明変数として追加した地震回数に関する係数に着目すると、1.706×10-4と正の値となっていることから、地震回数が多くなるほど災害発生確率が高くなる回帰モデルとなっている。そのため、火山活動と災害の発生の関係性についても論理的矛盾は生じていないことが確認できる。
回帰式に基づいた災害発生確率の分布を図26(a)乃至(d)に示す。(a)乃至(d)は、それぞれ地震発生回数が、0回、1,000回、5,000回、7,500回の場合である。RBFN出力値と降灰量の変化による災害発生確率の変化に関して論理的矛盾は生じていないことが確認できる。また、説明変数として追加した地震回数についても、回数が多くなるほど災害発生確率が高くなっている。そのため、図からもRBFN出力値と降灰量の変化に加え、火山活動状況の変化による災害発生確率の変化に関して論理的矛盾が生じていないことが確認できる。
これらのことから、構築した回帰モデルはRBFN出力値と降灰量の変化に加え、火山活動状況に基づいた災害発生確率の変化を算出するためのモデルとして妥当なモデルであると考えられる。
【0078】
本実施例で構築した回帰モデルは、RBFN出力値と降灰量に加え、火山活動状況の変化による災害発生確率の変化を明瞭に表現することできていると考えられる。ここでは、構築した回帰モデルの妥当性の検証を目的に、当該回帰モデルにより算出される災害発生確率P(x)と実際の災害発生率の比較を行った。
検討方法として、実施例1の回帰モデルの構築に用いた全降雨(1140降雨)について式(12)を用いて災害発生確率P(x)を求め、確率値10%ごとに区切ったそれぞれの範囲に該当する降雨数を集計する(表11の1)。その後,各範囲の実際の発生率を該当発生降雨件数(表11の2)を基に式(7)によって算出した。
【0079】
【表11】

【0080】
また、表11を用い、災害発生確率P(x)と実際の災害発生率の相関を図に表し、近似曲線を表示させたものを図27に示す。
図27より、災害発生確率P(x)が増加するに従って、実際の災害発生率も増加していることが分かる。そのため、構築した回帰モデルは実現象に対する整合性を有しているモデルであると考えられる。
【0081】
実施例2において構築した回帰モデルは桜島における災害特性に一致した妥当なモデルである。そのため、当該回帰モデルを用いることにより土砂災害の危険性を適切に表現することが可能であると考えられるが、災害の危険性に基づいて防災情報等の発表を行う上では、その基準となるCLを設定することが必要となる。
そこで、構築した回帰モデルを用いて算出される災害発生確率10%〜90%(10%刻み)のラインの中より、防災情報等の発表に用いる最適なCLの選定を行うこととした。ここで、防災情報は早期避難による減災を目的とした情報であることを勘案すると、その発表基準となるCLは、過去の災害事例の多くを捕捉しながらも、できるだけ空振りを抑えることが必要となる。そこで本実施例では、それらを網羅する指標として、実施例1でも用いた式(8)乃至式(10)に示す災害捕捉率、空振り率、超過頻度を用い、各確率ラインの精度を算出し、発表基準として用いるCLの選定を行った。その結果を表12、13と図28に示す。なお、表13は一連降雨中に5件以上災害が発生した降雨のみを対象とした結果である。
【0082】
【表12】

【0083】
【表13】

【0084】
精度を算出した結果、本実施例では、空振り率を抑えつつ、全体の災害の半数を捕捉できるラインとして実施例1と同じく災害発生確率50%のラインをCLとして選定した。
設定したCLの精度を表14に示す。なお、表には比較のため、RBFN出力値ピークのみを用いて構築した回帰モデル(降灰量、火山活動の影響を考慮しない場合、式(11)参照)に基づいた場合のCLの精度を併記する。
【0085】
【表14】

【0086】
表14より、空振り率と超過頻度に関しては明確な差はないものの、災害捕捉率は降灰量および火山活動の影響を考慮しない場合は43.3%であることに対し、それらを考慮した場合は51.6%と高い精度を示していることが確認できる。これは、RBFN出力値のみを用いた場合、火山活動が活発な時期に見られる少雨で発生する災害発生降雨と火山活動が不活発な時期の非発生降雨とが同等の確率で表現されていることに対し、降灰量および火山活動の影響を考慮することで両者の違いが明確化されたことに起因するものと考えられる。
また、5件以上のもの(一連降雨中に5件以上災害が発生した降雨のみ)を対象とした場合の災害捕捉率に着目すると、降灰量および火山活動の影響を考慮しない場合は59.1%であることに対し、それらを考慮した場合は90.9%と精度が大きく上昇していることが確認できる。このように、一連降雨中に災害が多発する時期は表15に示すように降灰量も多く、火山活動も活発な時期であると考えられる。本願発明で構築したモデルはそれらの要因についても評価することができているため、精度が向上したものと考えられる。
【0087】
【表15】

【0088】
実際に、RBFN出力値ピークのみを考慮した回帰モデル(式(11))と降灰量と火山活動の影響を考慮した回帰モデル(式(12))により算出される災害発生確率と災害発生率の関係に着目すると、図27(降灰量と火山活動の影響を考慮した結果)では0%〜100%の全ての範囲で確率値を評価できているのに対し、図20(RBFN出力値ピークのみを用いた結果)では10%〜90%の間でしか確率値を評価できていないことが分かる。このことからも、降灰量と火山活動の影響を考慮することで精度が向上していることを確認することができる。
これらのことから、降灰量と火山活動の影響を考慮することで火山地域における土砂災害の発生予測精度の向上を図ることができたと考えられる。
【0089】
今までの検討により、降灰量と火山活動の影響を考慮することにより火山地域における土砂災害の発生予測精度が向上することが確認できた。ここでは、降灰量および火山活動の影響を確認するため、学習期間である1978年1月〜2009年12月までの期間においていくつか代表的な時期に着目し、CLがどのように変化しているのか確認を行った。それぞれの時期の詳細を表16に、CLの変化状況を図29に示す。
【0090】
【表16】

【0091】
まず、図29中の(a)と(b)に着目する。(a)は1978年2月の運用CL(降灰量20 g/m2/月、地震回数7,888回)であり、(b)は1988年7月の運用CL(降灰量38,944 g/m2/月、地震回数2,148回)である。(b)は(a)と比較すると、地震回数は少なくなっているものの、降灰量が非常に多くなっている。そのため、CLが内側へと小さくなっており、少雨でも災害発生確率が80%と非常に危険な状態であることが示されている。次に、(c)は1992年3月の運用CL(降灰量1,296 g/m2/月、地震回数11,744回)である。(b)と比較すると、地震回数は多くなっているものの、それ以上に降灰量が少なくなっているためCLは外側に大きくなっている。しかし、(a)と比較すると降灰量、地震回数ともに多くなっているためCLが内側に小さくなっていることが確認できる。次に、(d)は2000年6月の運用CL(降灰量824 g/m2/月、地震回数1,786回)である。(c)と比較すると降灰量、地震回数ともに少なくなっているためCLは外側に大きくなっている。さらに(e)は2007年2月の運用CL(降灰量16 g/m2/月、地震回数1,590回)であり、降灰量、地震回数ともに非常に少なくなっている。そのため、CLはさらに外側に大きくなっており、少雨では災害発生確率が10%〜20%と災害の危険性が低い状態であることが示されている。次に、(f)は2009年12月の運用CL(降灰量3,241 g/m2/月、地震回数348回)である。(e)と比較すると降灰量が多くなっているため、CLが内側へと小さくなっていることが確認できる。
このように、降灰量が多く火山活動が活発な時期は、少雨でも災害が発生しやすいためCLが内側に小さく設定されている(例えば、図29(b)、(c)).一方、降灰量が少なく火山活動が不活発な時期は、少雨では災害がほとんど発生しないため、CLは外側に大きく設定されている(例えば、図29(e)、(f))。
これらのことから、本実施例で設定したCLは降灰量や火山活動の状況に応じて土砂災害の危険性が異なることを適切に表現できているものと考えられる。
【0092】
本実施例では、これまで鹿児島県野尻川における1978年1月〜2009年12月の観測データを学習データとして用い、災害発生確率モデルの構築を行ってきた。しかしながら、構築した回帰モデルは学習データに対して構築した回帰モデルであるため、未学習データに対してどの程度適用性を有しているか定かではない。そこで、ここでは未学習データに対する適用性の確認のため、野尻川の2010年1月〜7月までの降雨を用い運用検討を行った。また、他河川への適用性検証として黒神川の1983年1月〜2010年7月までの降雨を用い、同様に運用検討を行った。
【0093】
表17に野尻川の2010年1月〜7月までの発生事例14件を示す。なお、降雨番号14については、データが7月末までのため31日の時点で終了とした。また、降雨番号11についての検証結果を図30に示す.
【0094】
【表17】

【0095】
以上のように、野尻川の2010年の発生事例14件について評価を行ったところ、図30に示したような災害発生確率50%を超えた後に災害が発生した7件の災害(全災害の50%に該当)を捕捉することができた。本実施例では、CLを設定する際に全体の災害の半数を捕捉できるラインとして災害発生確率50%のラインを選択している。そのため、構築したモデルは未学習データに対しても十分適用性があるものと考えられる。表18に野尻川の2010年1月〜7月までの非発生降雨19件を示す。
【0096】
【表18】

【0097】
表18より、CL(災害発生確率50%のライン)を超過している降雨は1件もないことが確認できる。ここで、空振り率は式(9)により算出されるため、野尻川の2010年の非発生降雨19件についての空振り率は0%となる。
【0098】
上での検討により、構築した回帰モデルは未学習データに対しても十分適用性があることが確認された。そこで、ここでは他河川への適用性検証として黒神川の1983年1月〜2010年7月までの降雨を用い、同様に運用検討を行った。その結果を表19、20と図31に示す。なお、表20は一連降雨中に3件以上災害が発生した降雨のみを対象とした結果である。
【0099】
【表19】

【0100】
【表20】

【0101】
CLとするラインは学習データを用いた際と同様、災害発生確率50%のラインとし精度比較を行った。その結果を表21に示す。
【0102】
【表21】

【0103】
表21より、空振り率は高くなるものの、災害捕捉率は46.7%と野尻川におけるCLの精度(50%)に近い数値を示している。そのため、構築した回帰モデルは別の河川においても十分な適用性を有した汎用的なモデルであると考えられる。
ここで、黒神川にモデルを適用させた際に空振り率が上昇したことに関して考察を行う。まず、空振り率は式(9)によって算出される。そのため、非発生降雨数が増えることにより空振り率は上昇する。野尻川(学習データ)と黒神川(未学習データ)のデータの概要を表22に示す。
【0104】
【表22】

【0105】
表より、黒神川のデータは野尻川のデータと比較して期間が短いにも関わらず非発生降雨数が多くなっていることが確認できる。これはそれぞれの河川流域の地形状況に起因するものと考えられる。ここで、それぞれの河川流域の地形状況を以下に示す。
・野尻川
野尻川は、主渓流および支渓が本川に合流する地点に多くの土砂が堆積している。また、土砂堆積区間より下流は侵食区間が見られるなど、土砂の堆積と侵食が交互に繰り返されている。また、本川の渓岸侵食も土砂供給源の一つとなっている。
山腹からの生産土砂は、複数の谷が合流する所までは直接流下しており、山腹斜面途中に土砂堆積等はあまり見られない。また、山腹斜面の侵食形態は、侵食の進んだ大規模崩壊を形成している。
・黒神川
黒神川は、主渓流上流にある支渓1、支渓2・昭和2、昭和1の上流部が、昭和火口の影響を受けており、リルないしガリー状の侵食を受けている箇所も多い。
また、支渓2・昭和2、昭和1の渓流の下流部では、土砂の堆積が顕著に進んでいる箇所がある。
黒神川の主渓流下流部(地獄河原入口部)において、土砂の堆積が顕著に進んでいる箇所がある。
山腹斜面の侵食形態は、噴火に伴う火山灰等がリルないしガリー侵食をうけおり、土砂生産が全体的に進んでいる。さらには、縦・横侵食の進行している箇所、複数のガリーが束状となった箇所が混在している。
このように野尻川流域と黒神川流域の地形状況を比較すると、黒神川流域もリル・ガリー侵食などは進んでいるものの、野尻川流域に比べると程度は軽いことが分かる。そのため、黒神川は野尻川に比べると災害のあまり発生しない河川であると考えられる。
また、黒神川に見られるリル・ガリー侵食は2006年6月に新しく開いた昭和火口の影響を受けている。そのため、昭和火口が開く以前は今よりも侵食が少なく、災害数も少なかったと考えられる。
本実施例では、未学習データとして黒神川の1983年1月〜2010年7月までのデータを用いている。つまり、侵食が少なく、災害の少なかった時期のデータも多く含んでいるため、非発生降雨数が多くなり、空振り率が上昇しているものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
自治体や防災センターなど公的な機関における防災計画や災害予防、特に火山活動に影響されている地区における防災計画の立案業務や避難警報を発令する部門など幅広い用途がある。また、教育機関などにおいて災害の未然防止や避難訓練用の教材としても活用が見込まれ、さらに、建設・土木事業を営む私企業においても、防災事業や維持管理事業のニーズ掘り起こしや事業提案のためのツール、あるいは公的機関との連携を図るための共有ツールとして活用が可能であり、企業の防災技術や維持管理技術に関する研究開発や設計事業などの用途にも適用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1…土砂災害発生危険度評価システム 2…入力部 3…関数分析部 4…第1データベース 5…解析部 6…第2データベース 7…評価部 8…出力部 10…解析条件設定部 11…回帰分析部 12…RBFN値学習データ 13…火山活動度データ 14…災害発生学習データ 15…回帰関数データ 16…解析関数設定部 17…災害発生確率演算部 18…観測・点検データ 19…災害発生確率関数係数データ 20…災害発生確率データ 21…評価用しきい値データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部と、この入力部から入力されるデータを格納するデータベースとを有し、
前記入力部から入力されるか又は前記データベースに前記入力部を介して格納される,災害発生の観測対象箇所において災害の発生要因毎に予め観測された観測学習データと,前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する災害の発生・非発生に関する学習データとを災害発生学習データとし、
災害の発生・非発生に対して放射状基底関数ネットワーク手法(以下、RBFNという。)を用いて,前記災害の発生要因毎に観測された前記観測学習データ及び災害の発生・非発生に関する前記学習データによって予め解析されて,前記入力部から入力されるか又は前記データベースに前記入力部を介して格納される,前記観測学習データに対応した災害の発生・非発生に関するRBFN値をRBFN値学習データとし、
前記入力部から入力されるか又は前記データベースに前記入力部を介して格納される,回帰関数データを読み出しつつ、この回帰関数データに,前記災害の発生・非発生に関する前記学習データと前記RBFN値学習データのピーク値と火山活動度とを前記入力部又は前記データベースから読み出して代入し、式[4]で示される災害発生確率関数(P)を回帰分析するための式[1]〜[4]を設定する解析条件設定部と、
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

(但し、x=(x1,x2,・・・xr)は発生確率をその現象の生起を説明するために観測された変数群であり、具体的には災害の発生・非発生に対して,前記観測学習データ及び災害の発生・非発生に関する学習データを用いて解析された前記RBFN値のピーク値と火山活動度を意味し、β0,β1,・・・,βrは係数である)

前記解析条件設定部において設定された前記式[1]〜[4]を用いて、前記RBFN値に対する災害発生確率を演算するための前記災害発生確率関数(P)を回帰分析する関数分析部と、
この関数分析部で得られた前記災害発生確率関数(P)に、前記データベースから読み出される前記災害の発生要因毎に観測される観測データに対応するRBFN値のピーク値と火山活動度を入力して災害発生確率を演算する災害発生確率演算部と、
を有することを特徴とする火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システム。
【請求項2】
前記災害発生確率と、前記データベースに格納された,予め定めた少なくとも1つの評価用しきい値を読み出し比較して、前記評価用しきい値に対応させた評価を前記災害発生確率に対応する評価として選択抽出する評価部を有することを特徴とする請求項1記載の火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価システム。
【請求項3】
入力部と、この入力部から入力されるデータを格納するデータベースとを有するコンピュータによって、災害発生確率を演算するために実行されるプログラムであって、
コンピュータに、前記入力部から入力されるか又は前記データベースに前記入力部を介して格納される,災害発生の観測対象箇所において災害の発生要因毎に予め観測された観測学習データと,前記観測対象箇所における前記予め観測された観測学習データに対応する災害の発生・非発生に関する学習データとを災害発生学習データとし、
災害の発生・非発生に対してRBFNを用いて,前記災害の発生要因毎に観測された前記観測学習データ及び災害の発生・非発生に関する前記学習データによって予め解析されて,前記入力部から入力されるか又は前記データベースに前記入力部を介して格納される,前記観測学習データに対応した災害の発生・非発生に関するRBFN値をRBFN値学習データとし、
前記入力部から入力されるか又は前記データベースに前記入力部を介して格納される,回帰関数データを読み出しつつ、この回帰関数データに,前記災害の発生・非発生に関する前記学習データと前記RBFN値学習データのピーク値と火山活動度を前記入力部又は前記データベースから読み出して代入し、式[4]で示される災害発生確率関数(P)を回帰分析するための式[1]〜[4]を設定し、これらを用いて、前記RBFN値に対する災害発生確率を演算するための前記災害発生確率関数(P)を回帰分析する関数モデル分析工程と、
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

(但し、x=(x1,x2,・・・xr)は発生確率をその現象の生起を説明するために観測された変数群であり、具体的には災害の発生・非発生に対して,前記観測学習データ及び災害の発生・非発生に関する学習データを用いて解析された前記RBFN値のピーク値と火山活動度を意味し、β0,β1,・・・,βrは係数である)

この関数モデル分析工程で得られた前記災害発生確率関数(P)に、前記データベースから読み出される前記災害の発生要因毎に観測される観測データに対応するRBFN値のピーク値と火山活動度を入力して災害発生確率を演算する災害発生確率演算工程と
を実行させることを特徴とする火山活動度に応じた土砂災害発生危険度評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図3】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−198886(P2012−198886A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−53620(P2012−53620)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】