説明

火災受信機

【課題】音声出力手段が異常になったときにその異常を音により報知する火災受信機を提供する。
【解決手段】火災受信機は、火災の発生が検出されたときに音響部を介して警報メッセージとしての音声出力を報知する音声出力機能を有する音声制御装置が備えられている火災受信機において、音声制御装置は、音声制御装置の動作状態を現す動作出力を出力する動作状態出力部を有し、動作出力から音声制御装置の異常を検出したとき出力を異常側に変化する異常検出回路と、所定の周波数のパルスを発振する発振回路と、異常検出回路の出力が異常側に変化されたときパルスを音響部に入力する切換回路と、が備えられ、音響部は、異常検出回路の出力が異常側に変化されたときにパルスに従った音響を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音声による警報メッセージが発せられる火災受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の火災受信機は、例えば、台所、居間等の建物内の異なる部屋の呼称内容を含む警報メッセージの音声信号によって、火災警報を発する音声出力手段を有する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−67858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、音声出力手段としての音声出力用ICやその音声出力用ICの機能を内蔵しているマイクロコンピュータが異常になってしまった場合、音声による火災警報が発せられなくなる。このようなとき、ユーザに音声出力手段の異常を盤面に備えられているLEDなどの表示灯を点灯することにより報知している。
しかし、火災受信機が配置されている位置によっては表示灯が見づらいなどの理由でユーザが音声出力手段の異常を見逃すことがある。この状態で火災が発生しても火災警報は発せられず、火災が発生していることに未警戒であることに気が付かないまま放置される可能性があるため、大事故につながる恐れがある。
【0005】
この発明の目的は、音声出力手段が異常になったときにその異常を音により報知する火災受信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる火災受信機は、火災の発生が検出されたときに音響部を介して警報メッセージとしての音声出力を報知する音声出力機能を有する音声制御装置が備えられている火災受信機において、上記音声制御装置は、上記音声制御装置の動作状態を現す動作出力を出力する動作状態出力部を有し、出力が上記音響部に接続され、上記動作出力から上記音声制御装置の異常を検出したとき出力を異常側に変化する異常検出回路と、所定の周波数のパルスを発振する発振回路と、上記異常検出回路の出力が異常側に変化されたとき上記パルスを上記音響部に入力する切換回路と、が備えられ、上記音響部は、上記異常検出回路の出力が異常側に変化されたときに上記パルスに従った音響を出力する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係わる火災受信機の効果は、音声出力機能を有する音声制御装置の異常を検出できる異常検出回路、所定の周波数のパルス信号を発振する発振回路および異常検出回路からの信号に従って発振回路からのパルス信号を音響部に供給する切換回路が備えられているので、音響部から当該音声制御装置が異常になったことを報知する音響が出力され、保守担当者がそれを確認することにより、当該音声制御装置の異常をそのままに放置することが防げる。
そして、当該音声制御装置が常に正常な状態に維持され、常に火災の発生が警戒されているので、火災の発生をそのまま放置することなく、直ちに消火などの処置を施すことができ、大事故につながる恐れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる火災受信機の構成を示すブロック図である。
この発明の実施の形態1に係わる火災受信機1は、火災感知器2からの火災信号を検出して火災発生信号をマイクロコンピュータ3に入力する火災検出回路4、火災発生信号を受信したマイクロコンピュータ3からの地区音響警報信号に基づき火災の発生している地区音響装置5に鳴動信号を送信する地区音響回路6、火災発生信号を受信したマイクロコンピュータ3からの防排煙指令信号に基づき該当する防排煙設備7に制御信号を送信する制御回路8が備えられている。
【0009】
さらに、火災受信機1は、火災発生信号が入力されたとき、火災が発生している地区を特定し、当該地区の地区音響装置5に係わる地区音響警報信号、該当する防排煙設備に係わる防排煙指令信号、地区呼称内容を含む音声警報指令信号を発するマイクロコンピュータ3、マイクロコンピュータ3からの音声警報指令信号に基づき音声出力信号を出力する音声出力用IC9(音声制御装置の一例)、音声出力信号により駆動されて音声を発する音響部10が備えられている。
【0010】
なお、火災検出回路4、地区音響回路6、制御回路8およびマイクロコンピュータ3は、一般的な火災受信機1に備わっているものを説明するために例として挙げているだけで、これに限るものではない。
【0011】
この発明の火災受信機1の特徴は、音声出力用IC9と音響部10とが備えられている火災受信機1において、音声出力用IC9から自身の動作状態を現す動作出力としてのウオッチドッグ出力が出力されており、このウオッチドッグ出力から音声出力用IC9の動作の異常を検出して出力を正常側としての「Low」レベルから異常側としての「Hi」レベルに切り換える異常検出回路11、所定の周波数のパルスを発振する発振回路12および異常検出回路11の出力と発振回路12の出力が入力に接続され、出力が音響部10の入力に接続され、異常検出回路11の出力が「Hi」レベルになったとき発振回路12からのパルスを音響部10に入力する切換回路13が備えられている。
また、異常検出回路11の出力が「Hi」レベルに達したときに音声出力用IC9の動作が異常であること報知するために異常灯14を点灯する異常点灯回路15が備えられている。
【0012】
そして、音声出力用IC9は、音響部10をオンオフするオンオフ出力と警報メッセージからなる音声出力とを出力する。また、音声出力用IC9は、動作状態出力部としてのウオッチドッグ(WD)出力部16からウオッチドッグ出力を出力する。このウオッチドッグ出力は、音声出力用IC9の動作が正常なとき所定の間隔で所定のパルス幅のパルス列からなり、音声出力用IC9の動作が異常なとき間隔やパルス幅が所定の値と異なったパルス列またはパルス列が出力されなくなる。
【0013】
音響部10は、音声出力用IC9から出力されるオンオフ出力と音声出力が入力される。そして、音響部10は、入力された音声出力を増幅してスピーカ駆動出力を出力する増幅回路17、スピーカ駆動出力が入力されると警報メッセージの音声を発声するスピーカ18、オンオフ出力に基づいて増幅回路17をオンオフするオンオフ回路19が備えられている。
この音声出力が音声出力用IC9から音響部10に伝えられる経路を音声出力ライン20と称す。また、オンオフ出力が音声出力用IC9から音響部10に伝えられる経路をオンオフ出力ライン21と称す。
【0014】
次に、音声出力用IC9の動作が正常のときの火災受信機1の動作について説明する。
ある地区で火災が発生したとき、マイクロコンピュータ3から音声出力用IC9に地区呼称内容を含む音声警報指令信号が入力される。そして、音声出力用IC9は、警報メッセージを作成し、それを音声出力に変換して出力する。同時に、オンオフ出力のレベルを通常時の「Low」レベルから「Hi」レベルに切り換える。すると、オンオフ回路19によって増幅回路17がONされて、音声出力が増幅されてスピーカ18から、例えば火災の発生している地区を1階とすると「1階から火事です。」という警報メッセージの音声が発声される。
【0015】
次に、音声出力用IC9の動作が異常になったときに係わる異常検出回路11、発振回路12、切換回路13および音響部10の動作について説明する。
異常検出回路11は、入力されているウオッチドッグ出力が所定の間隔で所定のパルス幅のパルス列であるとき、音声出力用IC9が正常であることを意味する「Low」レベルの出力が出力され、ウオッチドッグ出力が所定の間隔または所定のパルス幅と異なったパルス列であるとき、音声出力用IC9が異常であることを意味する「Hi」レベルの出力が出力される。そして、異常検出回路11の出力はオンオフ出力ライン21に接続されている。そこで、異常検出回路11の出力が「Hi」レベルに変化すると、オンオフ回路19が増幅回路17をONする。また、同時に異常点灯回路15のトランジスタをONして、異常灯14を点灯させる。
【0016】
発振回路12は、可聴域の周波数、例えば1kHz〜4kHzの間の適切な周波数のパルスを発振して発振回路出力ライン22に出力している。なお、発振回路12は、例えば、図2に示すような、オペアンプの2段接続の低周波発振回路により構成されるが、特に発振の方式を限定するものではない。
【0017】
切換回路13は、コレクタ接地のNPNトランジスタから構成されており、エミッタに異常検出回路11の出力が接続され、コレクタが音声出力ライン20に接続され、ベースに発振回路出力ライン22が接続されている。そして、通常は、エミッタが「Low」レベルであるため、ベースとコレクタは非導通であるが、エミッタが「Hi」レベルに変化すると、ベースとコレクタは導通し、ベースに入力されているパルスによりコレクタの電圧が切り換えられる。この信号が音声出力ライン20を介して増幅回路17に入力される。
【0018】
次に、音声出力用IC9が異常になったときの火災受信機1の動作について説明する。
音声出力用IC9が異常になると、ウオッチドッグ出力が所定の間隔または所定のパルス幅と異なったパルス列となるので、異常検出回路11の出力が「Hi」レベルに変化する。
そして、異常検出回路11の出力が「Hi」レベルに変化すると、オンオフ回路19によって音響部10の増幅回路17がONされると共に切換回路13のエミッタが「Hi」に引き上げられ、切換回路13のコレクタに周波数が可聴域のパルス信号が出力される。
すると、増幅回路17は、ONされているので、可聴域のパルス信号が増幅されて、スピーカ18から可聴域の音響が鳴動する。
火災受信機1の保守担当者は、可聴域の音響の鳴動を聞くことにより、火災受信機1に音声出力用IC9の異常が発生していることが分かるので、火災受信機1の調査に進む。このとき、音声出力用IC異常灯14も点灯しており、その音声出力用IC9を調べて交換することができる。
【0019】
このような火災受信機1は、音声出力用IC9の異常を検出できる異常検出回路11、可聴域のパルス信号を発振する発振回路12および異常検出回路11からの信号に従って発振回路12からのパルス信号を音響部10に供給する切換回路13が備えられているので、音響部10から音声出力用IC9が異常になったことを報知する音響が出力され、保守担当者がそれを確認することにより、音声出力用IC9の異常をそのままに放置することが防げる。
そして、音声出力用IC9が常に正常な状態に維持され、常に火災の発生が警戒されているので、火災の発生をそのまま放置することなく、直ちに消火などの処置を施すことができ、大事故につながる恐れがない。
【0020】
なお、上述の実施の形態1において、音声出力用IC9は、音声出力用IC9の動作状態を現す動作出力を出力する動作状態出力部として、WD出力部16を備えた構成としたが、異常検出回路11が上記動作出力から音声出力用IC9の異常を検出することができればよく、通信などの他の手法も採用することができる。
【0021】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2に係わる火災受信機の構成を示すブロック図である。
実施の形態2に係わる火災受信機1Bは、実施の形態1に係わる火災受信機1と異なり、実施の形態1の音声出力用IC9の機能がマイクロコンピュータ3B(音声制御装置の一例)の中に取り込まれている。その他は、実施の形態1の火災受信機1と同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0022】
実施の形態2に係わるマイクロコンピュータ3Bは、実施の形態1のマイクロコンピュータ3と同様に火災受信機1B全体を制御するものであり、さらに、音声出力部24を有し、音声出力部24は、音声出力とオンオフ出力を出力する。この音声出力とオンオフ出力は、実施の形態1に係わる音声出力用IC9から出力されているものと同様であるので説明は省略する。
また、マイクロコンピュータ3Bは、ウオッチドッグ(WD)出力部16Bを有し、ウオッチドッグ出力を出力する。このウオッチドッグ出力は、マイクロコンピュータ3Bの動作が正常なとき所定の間隔で所定のパルス幅のパルス列であり、マイクロコンピュータ3Bの動作が異常なとき間隔やパルス幅が所定の値と異なったパルス列またはパルスは出力されない。
【0023】
このような火災受信機1Bは、実施の形態1の火災受信機1と同様に、警報メッセージの音声出力に係わる信号を出力する機能を有するマイクロコンピュータ3Bが異常になってもマイクロコンピュータ3Bから出力されるウオッチドッグ出力に基づいて異常が検出され、それに連動してマイクロコンピュータ3Bが異常になったことを音響により報知されるので、マイクロコンピュータ3Bの異常をそのままに放置されることを防げる。
【0024】
なお、上述の実施の形態2において、マイクロコンピュータ3Bは、マイクロコンピュータ3Bの動作状態を現す動作出力を出力する動作状態出力部として、WD出力部16Bを備えた構成としたが、異常検出回路11が上記動作出力からマイクロコンピュータ3Bの異常を検出することができればよく、通信などの他の手法も採用することができる。
【0025】
また、上述の実施の形態1、2において、本発明を火災受信機を用いて説明したが、例えば火災感知器などの他の火災報知設備用機器にも適用することができる。つまり、実施の形態1における音声出力用IC9、実施の形態2におけるマイクロコンピュータ3Bを備えた機器であれば、本発明を適用することによって、それらが異常になったことを音響により報知することができ、それらの異常がそのままに放置されることを防げる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる火災受信機の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係わる発振回路の例である。
【図3】この発明の実施の形態2に係わる火災受信機の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0027】
1 火災受信機、2 火災感知器、3 マイクロコンピュータ、4 火災検出回路、5 地区音響装置、6 地区音響回路、7 防排煙設備、8 制御回路、9 音声出力用IC、10 音響部、11 異常検出回路、12 発振回路、13 切換回路、14 異常灯、15 異常点灯回路、16 動作状態出力部、17 増幅回路、18 スピーカ、19 オンオフ回路、20 音声出力ライン、21 オンオフ出力ライン、22 発振回路出力ライン、24 音声出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災の発生が検出されたときに音響部を介して警報メッセージとしての音声出力を報知する音声出力機能を有する音声制御装置が備えられている火災受信機において、
上記音声制御装置は、上記音声制御装置の動作状態を現す動作出力を出力する動作状態出力部を有し、
上記動作出力から上記音声制御装置の異常を検出したとき出力を異常側に変化する異常検出回路と、
所定の周波数のパルスを発振する発振回路と、
上記異常検出回路の出力が異常側に変化されたとき上記パルスを上記音響部に入力する切換回路と、
が備えられ、
上記音響部は、上記異常検出回路の出力が異常側に変化されたときに上記パルスに従った音響を出力することを特徴とする火災受信機。
【請求項2】
上記音声制御装置は、音声出力用ICまたは音声出力用ICの機能を内蔵しているマイクロコンピュータからなることを特徴とする請求項1に記載する火災受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−268670(P2006−268670A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88635(P2005−88635)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】