火炎センサ
【課題】UVチューブの性能の劣化に応じてアノード電極とカソード電極の間に印加する電圧の大きさを調節することができる火炎センサを提供する。
【解決手段】向かい合う面電極を備えたUVチューブを用いた火炎センサにおいて、向かい合う面電極のうち一方が少なくとも1枚のアノード電極であり、もう一方が第1カソード電極及び第2カソード電極の2枚のカソード電極であるようにしたので、炎検出に使用するアノード電極を放電が開始される電圧の測定にも兼用して使用することができるので、部品点数も少なくて済み、簡単な構成で火炎センサの小型化を実現しつつ、性能の劣化や故障まで検出し、適当な電圧に調整することができる。
【解決手段】向かい合う面電極を備えたUVチューブを用いた火炎センサにおいて、向かい合う面電極のうち一方が少なくとも1枚のアノード電極であり、もう一方が第1カソード電極及び第2カソード電極の2枚のカソード電極であるようにしたので、炎検出に使用するアノード電極を放電が開始される電圧の測定にも兼用して使用することができるので、部品点数も少なくて済み、簡単な構成で火炎センサの小型化を実現しつつ、性能の劣化や故障まで検出し、適当な電圧に調整することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火炎中に含まれる紫外線を検出する火炎センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火炎センサの一種として、ユニット化した紫外線検出用放電管(UVチューブ)を用いて火炎中に含まれる紫外線を検出する火炎センサがある。このUVチューブは、紫外線を受けて放電を生起する一対の放電電極を円筒形のガラス管内に封止し、上記一対の放電電極それぞれのリード線をガラス管の一端部から導出したものである。
このような構造のUVチューブは、火がついていることを確実に検知するための安全確保の役割を担っており、例えばボイラ内の燃焼状態をモニタするための火炎センサとして用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、図1は、従来のUVチューブの構造を示す構成図である。ガラス管5の中に、網目状のアノード電極1と、カソード電極2とが、リード線3,4によってそれぞれ支持されており、ガラス管5には例えば水素とネオンを成分とする混合ガスが封入されている。このアノード電極1とカソード電極2とは、平行平面構造であり、両電極間は約0.5mmの距離を保って配置されている。そして、ガラス管5の端部(図1の上部)及び側部から入射した紫外線が、アノード電極1の網目を抜けてカソード電極2に当たることにより放電する(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ここで、UVチューブには、前述のとおり、ガラス管5の中に水素とネオン等を成分とする混合ガスが封入されている。そして、UVチューブの経年変化により、すなわち、ガラス管5の中に封入される混合ガスの一成分である水素が徐々に漏れていくこと(水素成分のスローリーク)により、実際には火が消えており、紫外線の照射が終わっているにもかかわらず、アノード電極1とカソード電極2間での放電が起こりやすくなり、いわゆる偽放電が発生してしまうという問題があった。この結果、火炎がないにもかかわらず火炎を検出してしまい、非常に危険であった。
【0005】
この問題に対し、UVチューブに補助電極ユニットとその中に補助電極を設け、補助電極に規定の大きさの電圧をかけ、補助電極においてブレークダウンが生じた場合に、UVチューブの寿命であると判断してUVチューブの故障を検出する火炎センサが提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−12581号公報
【特許文献2】特公昭44−1039号公報
【特許文献3】特開2009−109485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献3のような従来の火炎センサは、UVチューブの経年変化による故障を検出するだけのものであり、故障が検出されるまでの間のUVチューブの性能の劣化については何の考慮もなされていないという課題があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、UVチューブの性能の劣化に応じてアノード電極とカソード電極の間に印加する電圧の大きさを調節することができる火炎センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明に係る火炎センサは、向かい合う面電極を備えたUVチューブを用いた火炎センサにおいて、向かい合う面電極のうち一方が少なくとも1枚のアノード電極であり、もう一方が第1カソード電極及び第2カソード電極の2枚のカソード電極である。
【0010】
また、この発明に係る火炎センサは、アノード電極と第2カソード電極の間に可変な電圧を印加し、アノード電極と第2カソード電極の間で放電が開始する瞬間の放電開始電圧の大きさを測定する。
【0011】
また、この発明に係る火炎センサは、測定された放電開始電圧の大きさに基づいて、アノード電極と第1カソード電極の間に印加する電圧の大きさを変更する。
【0012】
また、この発明に係る火炎センサは、測定された放電開始電圧の大きさが所定の電圧値よりも小さい場合は、UVチューブが故障したと判断する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る火炎センサによれば、1枚のアノード電極と2枚のカソード電極により通常の火炎検出と、性能の劣化や故障の検出と、を行うことができるので、すなわち、火炎検出に使用するアノード電極を放電が開始される電圧の測定にも兼用して使用することができるので、部品点数も少なくて済み、簡単な構成で火炎センサの小型化を実現しつつ、性能の劣化や故障まで検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のUVチューブの構造を示す模式図である。
【図2】従来のUVチューブと、この発明におけるUVチューブとの外観を比較する模式図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る火炎センサのUVチューブの構成を示す。
【図4】この発明の実施の形態1に係る火炎センサの構成を示す。
【図5】この発明の実施の形態1に係る火炎センサの処理手順のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図2は、従来のUVチューブ(図2左側)と、この発明におけるUVチューブ(図2右側)との外観を比較する模式図である。
従来の火炎センサに用いられるUVチューブは、図1のガラス管5の上下方向の長さが4.3cm前後の比較的大きなものであるため、振動に弱く、ガスタービンや発電所等の特殊な市場では使えないという問題があった。
そこで、UVチューブを小型化することが考えられる。この発明におけるUVチューブは、大幅な小型化を図ったものであり、ガラス管10の上下方向の長さは1.7cm前後である。このように小型化されたUVチューブは、耐振動性、耐衝撃性を向上できるため、このUVチューブを用いた火炎センサは、ガスタービンの燃焼検出など、従来では安定した火炎検出が困難であった過酷な環境での使用が可能となる。
【0016】
ここで、UVチューブは真空管の一種であり、使用時間の経過に伴って性能が劣化することは否めず、UVチューブの性能の劣化はそのまま火炎センサの火炎検出性能の低下の要因となるため、UVチューブの性能の劣化状況を監視することが重要となる。このUVチューブの性能の劣化の主な原因としては、背景技術においても説明したとおり、ガラス管10に封入されている混合ガス中の水素のスローリークまたは水素吸蔵がある。これは、混合ガス中の水素が電極ないしリード線によって吸収されたり、ガス漏れなどが生じることによるものである。そして、混合ガス中の水素濃度が低下すると、電極間の放電が起こりやすくなり、紫外線の存在を伴わずに放電が起こり、誤検出を生じてしまう。特にこの発明のように小型化されたUVチューブは、封入される混合ガスの量が少ないため、水素濃度が低下しやすく、その影響を受けやすい。そこで、この発明は、UVチューブを小型化しつつ、かつ、経年変化による性能の劣化の影響を受けにくい火炎センサを実現するものである。
【0017】
図3は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサのUVチューブの外観構成を示す図であり、図3(a)はこのUVチューブ全体の構成を、図3(b)は図3(a)の構成からガラス管10とアノード電極11を外した構成を、図3(c)は図3(b)の構成から第1カソード電極12及び第2カソード電極16を外した構成を、それぞれ示している。
【0018】
ここで、この発明における火炎センサのUVチューブの製造工程について、図3を参照しながら詳細に説明する。まず初めに、図3(c)に示すように、排気管19、ボタンガラス17、各3本のコバール線13,14及び1本のコバール線15を同時に封着して、ボタンステム18を形成する。
【0019】
次に、図3(b)に示すように、第1カソード電極12用の3本のコバール線(リード線)14に第1カソード電極12を配置して溶接する。また、第2カソード電極(副カソード電極)16用の1本のコバール線(リード線)15に第2カソード電極16を配置して溶接する。なお、第1カソード電極12及び第2カソード電極16は、アノード電極11用の3本のコバール線13に接触しないように配置されるとともに、第1カソード電極12には、アノード電極用の3本のコバール線13に対応する箇所にそれぞれ切欠きが設けられている。
【0020】
その後、網目状の面電極であるアノード電極11と、それに向かい合う面電極である第1カソード電極12及び第2カソード電極16との間の距離が所定の距離(ここでは、0.4mm)保たれるようにするために、スペーサ(図示せず)を一時的に配置する。なお、スペーサは必須ではなく、アノード電極11と第1カソード電極12,第2カソード電極16との間の距離を所定の距離に保つことができるものであれば、他の代替方法を用いても構わない。
【0021】
そして、アノード電極11を3本のコバール線(リード線)13に溶接する。なお、網目状のアノード電極11には、3本のコバール線13を接続するための穴が、その3本のコバール線13に対応する箇所にそれぞれ設けられている。また、3本のコバール線13は、第1カソード電極12用の3本のコバール線14及び第2カソード電極16用の1本のコバール線15よりも長くボタンステムから上方向に突き出されており、アノード電極11をコバール線13と溶接した際に、アノード電極11と第1カソード電極12,第2カソード電極16とが接触しないように設定されている。
【0022】
その後、前記スペーサを取り除き、最後に、図3(a)に示すように、ガラス管10をかぶせてボタンステム18と溶接し、内部に例えば水素とネオンを成分とする混合ガスを封入してから密閉する。
【0023】
図4は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサの概略回路構成を示す図である。この火炎センサは、上述のようにUVチューブを構成する1枚のアノード電極11と、それに向かい合う第1カソード電極12及び第2カソード電極16の2枚のカソード電極を備え、それぞれの向かい合う電極間に加える電圧を制御するものである。ここで、アノード電極11と第1カソード電極間には、直流電圧を印加して、この電極間に流れる電流を検出することにより、紫外線の有無(火炎の有無)を検出する。一方、アノード電極11と第2カソード電極16間には、可変交流電圧を印加して、何V(ボルト)で放電が起き始めるのか(放電開始電圧)を測定する。
【0024】
このアノード電極11と第2カソード電極16間の電圧を測定する処理は、ある一定期間ごとに行えばよいものであるが、経年変化によりUVチューブ内の混合ガスの水素濃度が減少するにしたがって、放電開始電圧は低下していく。これにより、火炎センサとしての性能が徐々に低下してきていることを認識することができる。また、この電圧がある所定値以下になったときに、火炎センサの寿命(または故障)であると判断することができる。
【0025】
一方、上記経年変化により放電開始電圧が低下していくということは、UVチューブ内の混合ガスの水素濃度が低下しているということであるから、火炎の有無を検出するアノード電極11と第1カソード電極12間においても、低い電圧で放電しやすくなる。この結果、実際には火が消えており、紫外線照射が終わっているにもかかわらず、アノード電極11と第1カソード電極12間において放電が起こりやすくなり、火炎がないにもかかわらず火炎検出してしまう(偽放電が発生してしまう)おそれがあるため、大変危険であった。
【0026】
そこで、上記経年変化により放電開始電圧が低下していくにしたがって、火炎検出のために電圧源23から印加する電圧値も低下させれば、偽放電は起こりにくくなることから、この発明では、アノード電極11と第2カソード電極16間で測定された放電開始電圧の値に基づいてアノード電極11と第1カソード電極12間に電圧源23から印加する電圧の値を制御するようにした。
【0027】
図5は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサの処理手順を示すフローチャートである。ここで、図5の処理は、この瞬間に火炎センサが紫外線を検出していて、アノード電極11と第1カソード電極12の間で放電が起きていることが前提となっており、火炎センサが紫外線を検出していないときは、図5の処理は行わない。
【0028】
まず最初に、放電開始電圧を測定する。放電開始電圧はアノード電極11と第2カソード電極16間に電圧をかけたときに放電が起こり始める電圧値であり、混合ガスの水素濃度によって変化する値であるため、電極間にかける電圧を、電極間に放電が起きない大きさから少しずつ変化させていくことで、放電が起こり始める瞬間の電圧を測定する。
そこで、補助電圧制御部21が補助電圧の大きさをアノード電極11と第2カソード電極16間で放電が起きない程度に小さい値に設定する(ステップST1)。次に、補助電圧の大きさを補助電圧制御部21が変化させる(ステップST2)。具体的には、補助電圧制御部21が補助電圧を徐々に大きくしていき、アノード電極11と第2カソード電極16の間で放電が起きる瞬間の補助電圧の値を測定し、測定した補助電圧の値を放電開始電圧として電圧源制御部22に出力する(ステップST3)。
【0029】
ここで、放電開始電圧はUVチューブの経年変化により混合ガスの水素濃度が減少するにしたがって低下するものであり、放電開始電圧の低下は火炎センサとしての性能の低下を示している。よって、ステップST3において測定した放電開始電圧から、そのUVチューブがまだ使用可能か否かを判定する。
そこで、補助電圧制御部21によって測定された放電開始電圧が予め決められた所定の電圧値よりも小さいか否かを、電圧源制御部22が判定する(ステップST4)。放電開始電圧が予め決められた所定の電圧値よりも小さい場合(ステップST4のYESの場合)は、UVチューブが故障したものと判定し(ステップST5)、UVチューブの故障を通知して(ステップST6)、処理を終了する。
【0030】
一方、放電開始電圧が予め決められた所定の電圧値以上である場合(ステップST4のNOの場合)には、UVチューブはまだ使用できるものと判定し、ステップST3において測定した放電開始電圧に基づいてアノード電極11と第1カソード電極12間の電圧の大きさを変更する。
そこで、電圧源23の電圧の大きさを放電開始電圧の値に変更して(ステップST7)、処理を終了する。
【0031】
なお、ここでは、電圧源23の電圧の大きさを放電開始電圧の値に変更しているが、放電開始電圧の値にするのではなく、放電開始電圧の値に基づいて大きさを変更するようにしてもよい。
【0032】
このように、アノード電極11と第2カソード電極16間で測定された放電開始電圧の値に基づいてアノード電極11と第1カソード電極12間に電圧源23から印加する電圧の値を制御するようにしたので、アノード電極11と第1カソード電極12間に印加する電圧を適当な大きさに調整することができる。
【0033】
以上のように、この発明の火炎センサによれば、1枚のアノード電極と2枚のカソード電極により通常の火炎検出と、性能の劣化や故障の検出と、を行うことができるので、すなわち、火炎検出に使用するアノード電極を放電開始電圧の測定にも兼用して使用することができるので、部品点数も少なくて済み、簡単な構成で火炎センサの小型化を実現しつつ、性能の劣化や故障まで検出することができる。
【0034】
また、測定するアノード電極11と第2カソード電極16の間で放電が開始する瞬間の放電開始電圧の大きさに基づいて、アノード電極11と第1カソード電極12の間に印加する電圧の大きさを調節する電圧源制御部22を備えることにより、混合ガスの水素濃度が減少しても紫外線の存在を伴わない放電が起こるのを防ぐことができ、正しくUV光を検出することができるため、製品寿命を長く保つことが可能となり、ユーザからの返品の数を少なくすることができる。
【0035】
なお、この実施の形態では、カソード電極のみが2枚であり、アノード電極は1枚の構成として記載しているが、アノード電極とカソード電極の両方ともが2枚の構成であってもよい。
【0036】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1,11 アノード電極
2 カソード電極
3,4,13,14,15 コバール線(リード線)
5,10 ガラス管
12 第1カソード電極
16 第2カソード電極
17 ボタンガラス
18 ボタンステム
19 排気管
21 補助電圧制御部
22 電圧源制御部(制御部)
23 電圧源
24 第1アノード電極
25 第2アノード電極
【技術分野】
【0001】
この発明は、火炎中に含まれる紫外線を検出する火炎センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火炎センサの一種として、ユニット化した紫外線検出用放電管(UVチューブ)を用いて火炎中に含まれる紫外線を検出する火炎センサがある。このUVチューブは、紫外線を受けて放電を生起する一対の放電電極を円筒形のガラス管内に封止し、上記一対の放電電極それぞれのリード線をガラス管の一端部から導出したものである。
このような構造のUVチューブは、火がついていることを確実に検知するための安全確保の役割を担っており、例えばボイラ内の燃焼状態をモニタするための火炎センサとして用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、図1は、従来のUVチューブの構造を示す構成図である。ガラス管5の中に、網目状のアノード電極1と、カソード電極2とが、リード線3,4によってそれぞれ支持されており、ガラス管5には例えば水素とネオンを成分とする混合ガスが封入されている。このアノード電極1とカソード電極2とは、平行平面構造であり、両電極間は約0.5mmの距離を保って配置されている。そして、ガラス管5の端部(図1の上部)及び側部から入射した紫外線が、アノード電極1の網目を抜けてカソード電極2に当たることにより放電する(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ここで、UVチューブには、前述のとおり、ガラス管5の中に水素とネオン等を成分とする混合ガスが封入されている。そして、UVチューブの経年変化により、すなわち、ガラス管5の中に封入される混合ガスの一成分である水素が徐々に漏れていくこと(水素成分のスローリーク)により、実際には火が消えており、紫外線の照射が終わっているにもかかわらず、アノード電極1とカソード電極2間での放電が起こりやすくなり、いわゆる偽放電が発生してしまうという問題があった。この結果、火炎がないにもかかわらず火炎を検出してしまい、非常に危険であった。
【0005】
この問題に対し、UVチューブに補助電極ユニットとその中に補助電極を設け、補助電極に規定の大きさの電圧をかけ、補助電極においてブレークダウンが生じた場合に、UVチューブの寿命であると判断してUVチューブの故障を検出する火炎センサが提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−12581号公報
【特許文献2】特公昭44−1039号公報
【特許文献3】特開2009−109485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献3のような従来の火炎センサは、UVチューブの経年変化による故障を検出するだけのものであり、故障が検出されるまでの間のUVチューブの性能の劣化については何の考慮もなされていないという課題があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、UVチューブの性能の劣化に応じてアノード電極とカソード電極の間に印加する電圧の大きさを調節することができる火炎センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明に係る火炎センサは、向かい合う面電極を備えたUVチューブを用いた火炎センサにおいて、向かい合う面電極のうち一方が少なくとも1枚のアノード電極であり、もう一方が第1カソード電極及び第2カソード電極の2枚のカソード電極である。
【0010】
また、この発明に係る火炎センサは、アノード電極と第2カソード電極の間に可変な電圧を印加し、アノード電極と第2カソード電極の間で放電が開始する瞬間の放電開始電圧の大きさを測定する。
【0011】
また、この発明に係る火炎センサは、測定された放電開始電圧の大きさに基づいて、アノード電極と第1カソード電極の間に印加する電圧の大きさを変更する。
【0012】
また、この発明に係る火炎センサは、測定された放電開始電圧の大きさが所定の電圧値よりも小さい場合は、UVチューブが故障したと判断する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る火炎センサによれば、1枚のアノード電極と2枚のカソード電極により通常の火炎検出と、性能の劣化や故障の検出と、を行うことができるので、すなわち、火炎検出に使用するアノード電極を放電が開始される電圧の測定にも兼用して使用することができるので、部品点数も少なくて済み、簡単な構成で火炎センサの小型化を実現しつつ、性能の劣化や故障まで検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のUVチューブの構造を示す模式図である。
【図2】従来のUVチューブと、この発明におけるUVチューブとの外観を比較する模式図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る火炎センサのUVチューブの構成を示す。
【図4】この発明の実施の形態1に係る火炎センサの構成を示す。
【図5】この発明の実施の形態1に係る火炎センサの処理手順のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図2は、従来のUVチューブ(図2左側)と、この発明におけるUVチューブ(図2右側)との外観を比較する模式図である。
従来の火炎センサに用いられるUVチューブは、図1のガラス管5の上下方向の長さが4.3cm前後の比較的大きなものであるため、振動に弱く、ガスタービンや発電所等の特殊な市場では使えないという問題があった。
そこで、UVチューブを小型化することが考えられる。この発明におけるUVチューブは、大幅な小型化を図ったものであり、ガラス管10の上下方向の長さは1.7cm前後である。このように小型化されたUVチューブは、耐振動性、耐衝撃性を向上できるため、このUVチューブを用いた火炎センサは、ガスタービンの燃焼検出など、従来では安定した火炎検出が困難であった過酷な環境での使用が可能となる。
【0016】
ここで、UVチューブは真空管の一種であり、使用時間の経過に伴って性能が劣化することは否めず、UVチューブの性能の劣化はそのまま火炎センサの火炎検出性能の低下の要因となるため、UVチューブの性能の劣化状況を監視することが重要となる。このUVチューブの性能の劣化の主な原因としては、背景技術においても説明したとおり、ガラス管10に封入されている混合ガス中の水素のスローリークまたは水素吸蔵がある。これは、混合ガス中の水素が電極ないしリード線によって吸収されたり、ガス漏れなどが生じることによるものである。そして、混合ガス中の水素濃度が低下すると、電極間の放電が起こりやすくなり、紫外線の存在を伴わずに放電が起こり、誤検出を生じてしまう。特にこの発明のように小型化されたUVチューブは、封入される混合ガスの量が少ないため、水素濃度が低下しやすく、その影響を受けやすい。そこで、この発明は、UVチューブを小型化しつつ、かつ、経年変化による性能の劣化の影響を受けにくい火炎センサを実現するものである。
【0017】
図3は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサのUVチューブの外観構成を示す図であり、図3(a)はこのUVチューブ全体の構成を、図3(b)は図3(a)の構成からガラス管10とアノード電極11を外した構成を、図3(c)は図3(b)の構成から第1カソード電極12及び第2カソード電極16を外した構成を、それぞれ示している。
【0018】
ここで、この発明における火炎センサのUVチューブの製造工程について、図3を参照しながら詳細に説明する。まず初めに、図3(c)に示すように、排気管19、ボタンガラス17、各3本のコバール線13,14及び1本のコバール線15を同時に封着して、ボタンステム18を形成する。
【0019】
次に、図3(b)に示すように、第1カソード電極12用の3本のコバール線(リード線)14に第1カソード電極12を配置して溶接する。また、第2カソード電極(副カソード電極)16用の1本のコバール線(リード線)15に第2カソード電極16を配置して溶接する。なお、第1カソード電極12及び第2カソード電極16は、アノード電極11用の3本のコバール線13に接触しないように配置されるとともに、第1カソード電極12には、アノード電極用の3本のコバール線13に対応する箇所にそれぞれ切欠きが設けられている。
【0020】
その後、網目状の面電極であるアノード電極11と、それに向かい合う面電極である第1カソード電極12及び第2カソード電極16との間の距離が所定の距離(ここでは、0.4mm)保たれるようにするために、スペーサ(図示せず)を一時的に配置する。なお、スペーサは必須ではなく、アノード電極11と第1カソード電極12,第2カソード電極16との間の距離を所定の距離に保つことができるものであれば、他の代替方法を用いても構わない。
【0021】
そして、アノード電極11を3本のコバール線(リード線)13に溶接する。なお、網目状のアノード電極11には、3本のコバール線13を接続するための穴が、その3本のコバール線13に対応する箇所にそれぞれ設けられている。また、3本のコバール線13は、第1カソード電極12用の3本のコバール線14及び第2カソード電極16用の1本のコバール線15よりも長くボタンステムから上方向に突き出されており、アノード電極11をコバール線13と溶接した際に、アノード電極11と第1カソード電極12,第2カソード電極16とが接触しないように設定されている。
【0022】
その後、前記スペーサを取り除き、最後に、図3(a)に示すように、ガラス管10をかぶせてボタンステム18と溶接し、内部に例えば水素とネオンを成分とする混合ガスを封入してから密閉する。
【0023】
図4は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサの概略回路構成を示す図である。この火炎センサは、上述のようにUVチューブを構成する1枚のアノード電極11と、それに向かい合う第1カソード電極12及び第2カソード電極16の2枚のカソード電極を備え、それぞれの向かい合う電極間に加える電圧を制御するものである。ここで、アノード電極11と第1カソード電極間には、直流電圧を印加して、この電極間に流れる電流を検出することにより、紫外線の有無(火炎の有無)を検出する。一方、アノード電極11と第2カソード電極16間には、可変交流電圧を印加して、何V(ボルト)で放電が起き始めるのか(放電開始電圧)を測定する。
【0024】
このアノード電極11と第2カソード電極16間の電圧を測定する処理は、ある一定期間ごとに行えばよいものであるが、経年変化によりUVチューブ内の混合ガスの水素濃度が減少するにしたがって、放電開始電圧は低下していく。これにより、火炎センサとしての性能が徐々に低下してきていることを認識することができる。また、この電圧がある所定値以下になったときに、火炎センサの寿命(または故障)であると判断することができる。
【0025】
一方、上記経年変化により放電開始電圧が低下していくということは、UVチューブ内の混合ガスの水素濃度が低下しているということであるから、火炎の有無を検出するアノード電極11と第1カソード電極12間においても、低い電圧で放電しやすくなる。この結果、実際には火が消えており、紫外線照射が終わっているにもかかわらず、アノード電極11と第1カソード電極12間において放電が起こりやすくなり、火炎がないにもかかわらず火炎検出してしまう(偽放電が発生してしまう)おそれがあるため、大変危険であった。
【0026】
そこで、上記経年変化により放電開始電圧が低下していくにしたがって、火炎検出のために電圧源23から印加する電圧値も低下させれば、偽放電は起こりにくくなることから、この発明では、アノード電極11と第2カソード電極16間で測定された放電開始電圧の値に基づいてアノード電極11と第1カソード電極12間に電圧源23から印加する電圧の値を制御するようにした。
【0027】
図5は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサの処理手順を示すフローチャートである。ここで、図5の処理は、この瞬間に火炎センサが紫外線を検出していて、アノード電極11と第1カソード電極12の間で放電が起きていることが前提となっており、火炎センサが紫外線を検出していないときは、図5の処理は行わない。
【0028】
まず最初に、放電開始電圧を測定する。放電開始電圧はアノード電極11と第2カソード電極16間に電圧をかけたときに放電が起こり始める電圧値であり、混合ガスの水素濃度によって変化する値であるため、電極間にかける電圧を、電極間に放電が起きない大きさから少しずつ変化させていくことで、放電が起こり始める瞬間の電圧を測定する。
そこで、補助電圧制御部21が補助電圧の大きさをアノード電極11と第2カソード電極16間で放電が起きない程度に小さい値に設定する(ステップST1)。次に、補助電圧の大きさを補助電圧制御部21が変化させる(ステップST2)。具体的には、補助電圧制御部21が補助電圧を徐々に大きくしていき、アノード電極11と第2カソード電極16の間で放電が起きる瞬間の補助電圧の値を測定し、測定した補助電圧の値を放電開始電圧として電圧源制御部22に出力する(ステップST3)。
【0029】
ここで、放電開始電圧はUVチューブの経年変化により混合ガスの水素濃度が減少するにしたがって低下するものであり、放電開始電圧の低下は火炎センサとしての性能の低下を示している。よって、ステップST3において測定した放電開始電圧から、そのUVチューブがまだ使用可能か否かを判定する。
そこで、補助電圧制御部21によって測定された放電開始電圧が予め決められた所定の電圧値よりも小さいか否かを、電圧源制御部22が判定する(ステップST4)。放電開始電圧が予め決められた所定の電圧値よりも小さい場合(ステップST4のYESの場合)は、UVチューブが故障したものと判定し(ステップST5)、UVチューブの故障を通知して(ステップST6)、処理を終了する。
【0030】
一方、放電開始電圧が予め決められた所定の電圧値以上である場合(ステップST4のNOの場合)には、UVチューブはまだ使用できるものと判定し、ステップST3において測定した放電開始電圧に基づいてアノード電極11と第1カソード電極12間の電圧の大きさを変更する。
そこで、電圧源23の電圧の大きさを放電開始電圧の値に変更して(ステップST7)、処理を終了する。
【0031】
なお、ここでは、電圧源23の電圧の大きさを放電開始電圧の値に変更しているが、放電開始電圧の値にするのではなく、放電開始電圧の値に基づいて大きさを変更するようにしてもよい。
【0032】
このように、アノード電極11と第2カソード電極16間で測定された放電開始電圧の値に基づいてアノード電極11と第1カソード電極12間に電圧源23から印加する電圧の値を制御するようにしたので、アノード電極11と第1カソード電極12間に印加する電圧を適当な大きさに調整することができる。
【0033】
以上のように、この発明の火炎センサによれば、1枚のアノード電極と2枚のカソード電極により通常の火炎検出と、性能の劣化や故障の検出と、を行うことができるので、すなわち、火炎検出に使用するアノード電極を放電開始電圧の測定にも兼用して使用することができるので、部品点数も少なくて済み、簡単な構成で火炎センサの小型化を実現しつつ、性能の劣化や故障まで検出することができる。
【0034】
また、測定するアノード電極11と第2カソード電極16の間で放電が開始する瞬間の放電開始電圧の大きさに基づいて、アノード電極11と第1カソード電極12の間に印加する電圧の大きさを調節する電圧源制御部22を備えることにより、混合ガスの水素濃度が減少しても紫外線の存在を伴わない放電が起こるのを防ぐことができ、正しくUV光を検出することができるため、製品寿命を長く保つことが可能となり、ユーザからの返品の数を少なくすることができる。
【0035】
なお、この実施の形態では、カソード電極のみが2枚であり、アノード電極は1枚の構成として記載しているが、アノード電極とカソード電極の両方ともが2枚の構成であってもよい。
【0036】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1,11 アノード電極
2 カソード電極
3,4,13,14,15 コバール線(リード線)
5,10 ガラス管
12 第1カソード電極
16 第2カソード電極
17 ボタンガラス
18 ボタンステム
19 排気管
21 補助電圧制御部
22 電圧源制御部(制御部)
23 電圧源
24 第1アノード電極
25 第2アノード電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
向かい合う面電極を備えたUVチューブを用いた火炎センサにおいて、
前記向かい合う面電極のうち一方が少なくとも1枚のアノード電極であり、もう一方が第1カソード電極及び第2カソード電極の2枚のカソード電極であることを特徴とする火炎センサ。
【請求項2】
前記アノード電極と前記第2カソード電極の間に可変な電圧を印加し、前記アノード電極と前記第2カソード電極の間で放電が開始する瞬間の放電開始電圧の大きさを測定することを特徴とする請求項1記載の火炎センサ。
【請求項3】
前記測定された放電開始電圧の大きさに基づいて、前記アノード電極と前記第1カソード電極の間に印加する電圧の大きさを変更することを特徴とする請求項2記載の火炎センサ。
【請求項4】
前記測定された放電開始電圧の大きさが所定の電圧値よりも小さい場合は、前記UVチューブが故障したと判断することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の火炎センサ。
【請求項1】
向かい合う面電極を備えたUVチューブを用いた火炎センサにおいて、
前記向かい合う面電極のうち一方が少なくとも1枚のアノード電極であり、もう一方が第1カソード電極及び第2カソード電極の2枚のカソード電極であることを特徴とする火炎センサ。
【請求項2】
前記アノード電極と前記第2カソード電極の間に可変な電圧を印加し、前記アノード電極と前記第2カソード電極の間で放電が開始する瞬間の放電開始電圧の大きさを測定することを特徴とする請求項1記載の火炎センサ。
【請求項3】
前記測定された放電開始電圧の大きさに基づいて、前記アノード電極と前記第1カソード電極の間に印加する電圧の大きさを変更することを特徴とする請求項2記載の火炎センサ。
【請求項4】
前記測定された放電開始電圧の大きさが所定の電圧値よりも小さい場合は、前記UVチューブが故障したと判断することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の火炎センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−255729(P2012−255729A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129392(P2011−129392)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
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