火炎センサ
【課題】UVチューブのガラス管内の放電によって発生する熱の影響を抑え、感度良く紫外線を検出することが可能な火炎センサを提供する。
【解決手段】一対の電極(11,12)を有するガラス管10を備えたUVチューブを用いた火炎センサにおいて、ガラス管の外側の表面にペルチェ素子15を備えるようにしたので、火炎センサ自身が温調機能を備えるようになるため、ガラス管内のガス圧の大幅な上昇を防ぐことができ、放電開始電圧も設計通りの範囲の値とすることができるので、感度良く紫外線を検出することができる。
【解決手段】一対の電極(11,12)を有するガラス管10を備えたUVチューブを用いた火炎センサにおいて、ガラス管の外側の表面にペルチェ素子15を備えるようにしたので、火炎センサ自身が温調機能を備えるようになるため、ガラス管内のガス圧の大幅な上昇を防ぐことができ、放電開始電圧も設計通りの範囲の値とすることができるので、感度良く紫外線を検出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火炎中に含まれる紫外線を検出する火炎センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火炎センサの一種として、ユニット化した紫外線検出用放電管(UVチューブ)を用いて火炎中に含まれる紫外線を検出する火炎センサがある。このUVチューブは、紫外線を受けて放電を生起する一対の放電電極を円筒形のガラス管内に封止し、上記一対の放電電極それぞれのリード線をガラス管の一端部から導出したものである。
このような構造のUVチューブは、火がついていることを確実に検知するための安全確保の役割を担っており、例えばボイラ内の燃焼状態をモニタするための火炎センサとして用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、図1は、従来のUVチューブの構造を示す構成図である。ガラス管5の中に、網目状のアノード電極1と、カソード電極2とが、リード線3,4によってそれぞれ支持されており、ガラス管5には例えば水素とネオンを成分とする混合ガスが封入されている。このアノード電極1とカソード電極2とは、平行平面構造であり、両電極間は約0.5mmの距離を保って配置されている。そして、ガラス管5の端部(図1の上部)及び側部から入射した紫外線が、アノード電極1の網目を抜けてカソード電極2に当たることにより放電する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−12581号公報
【特許文献2】特公昭44−1039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、UVチューブが継続して紫外線を検出する場合、継続する放電に伴って発生する熱によってガラス管5内の温度が大幅に上昇し、それに伴って封入された混合ガスのガス圧もまた大幅に上昇する。パッシェンの法則によれば、平行な電極間で放電の生じる放電開始電圧は、ガス圧と電極間隔の積の関数(V=ρd、ρ:ガス圧、d:電極間隔)であるとされている。すなわち、ガス圧の大幅な上昇に伴って放電開始電圧も大幅に上昇するため、紫外線がカソード電極2にぶつかってもアノード電極1とカソード電極2の間において放電が起こりにくくなり、故障していない正常なUVセンサでありながら、設計通りに紫外線を検出することができなくなるという課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、UVチューブのガラス管内の放電によって発生する熱の影響を抑え、感度良く紫外線を検出することが可能な火炎センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明に係る火炎センサは、一対の電極を有するガラス管を備えたUVチューブを用いた火炎センサにおいて、ガラス管の外側の表面にペルチェ素子を備える。
【0008】
また、この発明に係る火炎センサは、温度センサを備え、温度センサで測定した温度に基づいてペルチェ素子に流す電流を制御する。
【0009】
また、この発明に係る火炎センサは、一対の電極間で起こる放電によって発生した放電電流によってペルチェ素子が動作する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、火炎センサがペルチェ素子を備えることにより、火炎センサ自身が温調機能を備えるようになるため、ガラス管内のガス圧の大幅な上昇を防ぐことができ、放電開始電圧も設計通りの範囲の値とすることができるので、感度良く紫外線を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のUVチューブの構造を示す模式図である。
【図2】従来のUVチューブと、この発明におけるUVチューブとの外観を比較する模式図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る火炎センサのUVチューブの外観構成を示す。
【図4】この発明の実施の形態1に係る火炎センサの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図2は、従来のUVチューブ(図2左側)と、この発明におけるUVチューブ(図2右側)との概観を比較する模式図である。
従来の火炎センサに用いられるUVチューブは、図1のガラス管5の上下方向の長さが4.3cm前後の比較的大きなものであるため、振動に弱く、ガスタービンや発電所等の特殊な市場では使えないという問題があった。
そこで、UVチューブを小型化することが考えられる。この発明におけるUVチューブは、大幅な小型化を図ったものであり、ガラス管10の上下方向の長さは1.7cm前後である。このように小型化されたUVチューブは、対振動性、耐衝撃性を向上できるため、このUVチューブを用いた火炎センサは、ガスタービンの燃焼検出など、従来では安定した火炎検出が困難であった過酷な環境での使用が可能となる。
【0013】
図3は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサのUVチューブの外観構成を示す図であり、図3(c)はこのUVチューブ全体の構成を、図3(b)は図3(c)の構成からガラス管10とアノード電極11を外した構成を、図3(a)は図3(b)の構成からカソード電極12を外した構成を、それぞれ示している。
【0014】
ここで、この発明における火炎センサのUVチューブの製造工程について、図3を参照しながら詳細に説明する。まず初めに、図3(a)に示すように、排気管16、ボタンガラス17、各3本のコバール線13,14を同時に封着して、ボタンステム18を形成する。
【0015】
次に、図3(b)に示すように、カソード電極12用の3本のコバール線(リード線)14にカソード電極12を配置して溶接する。なお、カソード電極12は、アノード電極11用の3本のコバール線13に接触しないように配置されるとともに、カソード電極12には、アノード電極用の3本のコバール線13に対応する箇所にそれぞれ切欠きが設けられている。
【0016】
その後、網目状の面電極であるアノード電極11と、それに向かい合う面電極であるカソード電極12との間の距離が所定の距離(ここでは、0.4mm)保たれるようにするために、スペーサ(図示せず)を一時的に配置する。なお、スペーサは必須ではなく、アノード電極11とカソード電極12との間の距離を所定の距離に保つことができるものであれば、他の代替方法を用いても構わない。
【0017】
そして、アノード電極11を3本のコバール線(リード線)13に溶接する。なお、網目状のアノード電極11には、3本のコバール線13を接続するための穴が、その3本のコバール線13に対応する箇所にそれぞれ設けられている。また、3本のコバール線13は、カソード電極12用の3本のコバール線14よりも長くボタンステムから上方向に突き出されており、アノード電極11をコバール線13と溶接した際に、アノード電極11とカソード電極12とが接触しないように設定されている。
【0018】
その後、前記スペーサを取り除き、最後に、図3(c)に示すように、ガラス管10をかぶせてボタンステム18と溶接し、内部に例えば水素とネオンを成分とする混合ガスを封入してから密閉する。
【0019】
図4は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサの断面図であり、図4(a)は本発明の火炎センサのUVチューブ(図3(c))の断面図を示しており、上述したようにガラス管10内において、アノード電極11とカソード電極12が向かい合っている。
【0020】
この火炎センサは、このガラス管10内のアノード電極11とカソード電極12の間に直流電圧を印加し、紫外線がカソード電極12にぶつかることでアノード電極11とカソード電極12の間で起きる放電を検出することにより紫外線の有無(火炎の有無)を検出する。
【0021】
ここで、背景技術においても説明したように、UVチューブのアノード電極11とカソード電極12間において継続して放電が起こる場合、放電に伴って発生する熱によってガラス管10内の温度が大幅に上昇してしまうと、ガラス管10内に封入された混合ガスのガス圧が大幅に上昇する。パッシェンの法則によると、平行な電極間において放電の生じる放電開始電圧は、ガス圧と電極間隔の積の関数であるとされており、この発明の火炎センサにおいて電極間隔に相当する、アノード電極11とカソード電極12間の距離は一定であるため、ガス圧が大幅に上昇すると放電開始電圧もまた大幅に上昇することが分かる。そして、放電開始電圧が大幅に上昇して設計の範囲外の値となると、紫外線がカソード電極12にぶつかってもアノード電極11とカソード電極12の間において放電が起こりにくくなり、紫外線を検出できなくなってしまうという課題があった。
そこで、この発明は、放電に伴ってUVチューブのガラス管10内に発生する熱の影響を抑えるために、火炎センサ自身が温調機能を備えるようにする。
【0022】
この温調機能について詳細に説明する。まず、UVチューブのガラス管10内に発生する熱の影響を抑えるために、図4(b)に示すように、ガラス管10内の温度を調節する(冷却する)手段として、ガラス管10の外側の表面にペルチェ素子15を貼り付ける。
【0023】
この際、放電が起きて発熱するのはアノード電極11とカソード電極12間であるため、ペルチェ素子15はこれらの電極の高さ付近に配置するとよい。また、図4(b)では2箇所にペルチェ素子15を貼り付けているが、ペルチェ素子15を貼り付ける数は1箇所であっても4箇所であっても良いことは言うまでもない。
【0024】
さらに、図4(c)に示すように、ペルチェ素子15が貼り付けられたUVチューブがケース19に収められて、火炎センサを構成する。この際、ペルチェ素子15は両面がガラス管10とケース19に接触する大きさ(厚み)とし、ガラス管10とケース19の両方に接着剤で貼り付ければよい。
【0025】
ペルチェ素子15は、直流電流を流されると一方の面で吸熱を生じさせ、他方の面で発熱を生じさせる、異種金属の接続により形成される半導体素子である。この発明では、ペルチェ素子15を用いて、放電によって発生する熱をUVチューブのガラス管10内から外へ移動させることによってガラス管10内の温度が上昇することを防ぐ。
【0026】
ペルチェ素子15を図4に示すようにガラス管10とケース19の間に設置し、継続した放電が起こることによりUVチューブのガラス管10内の温度が上昇し始めると、ペルチェ素子15の両面間に温度差が生じる。このようにペルチェ素子15の両面間に温度差が生じた状態において、このペルチェ素子15に直流電流が流れると、ペルチェ素子15は高温なガラス管10側のペルチェ素子15の吸熱面Aの熱を低温なケース19側のペルチェ素子15の放熱面Bに移動させる。なお、ペルチェ素子15による熱の移動は、ペルチェ素子15の両面間の温度差がなくなるか、ペルチェ素子15に電流が流れなくなるまで続く。また、ペルチェ素子15に電流を流すには、図示していない電源及び配線を別途設けるものとする。
【0027】
この際、さらに温度センサを設け、その温度センサの値に応じて、ペルチェ素子15に印加する電圧を可変にすることにより、ペルチェ素子15に流す電流を制御するようにしてもよい。具体的には、ガラス管10内部の温度は約400度くらいまで上昇することがあり、その際にはガラス管10外部の温度も100度くらいまで上昇するため、ガラス管10外部の温度が100度近くまで上昇している場合には電流を流し、例えば20度付近の常温である場合には、電圧を印加させないようにする等の制御を行うことにより、省エネルギーでの動作を実現することが可能となる。
【0028】
また、ケース19は、アルミニウムや銅など放熱しやすい素材にしておく。なお、ケース19の外側の表面に冷却フィンなどのヒートシンク機能を付加することによって、ペルチェ素子15によってガラス管10内から移動された熱をケース19が放熱しやすくなるため、ペルチェ素子15の両面に温度差が生じやすくなり、熱の移動の効果を高めることができる。
【0029】
このように、ペルチェ素子15をガラス管10の表面に設置することにより、ガラス管10内の熱をケース19に移動させることができるので、ガラス管10内の温度が大幅に上昇することを防ぐことができる。そして、ガラス管10内の温度が大幅に上昇しなければ、ガラス管10内の混合ガスのガス圧も大幅には上昇しない。したがって、放電開始電圧が大幅に上昇することはなく、放電開始電圧が大幅に上昇して放電が起こりにくくなることで紫外線を検出できなくなることを防ぐことができる。
【0030】
以上のように、この発明の火炎センサによれば、ガラス管10の外側の表面にペルチェ素子15を備えるようにしたので、放電が継続している状況において、ガラス管10内の温度が大幅に上昇するのを防ぐことができるため、ガラス管10内の混合ガスのガス圧が大幅に上昇することを防ぐことができ、放電開始電圧を設計通りの値とすることができるため、放電によって発生する熱の影響を抑え、感度よく紫外線を検出することができる。
【0031】
実施の形態2.
実施の形態1では、ペルチェ素子15に電流を流すために、別途電源及び配線を設けるものとしたが、この実施の形態2では、UVチューブの放電電流を測定する接続端子に、ペルチェ素子15への配線を接続するものとする。
【0032】
この場合、UVチューブの一対の電極アノード電極11とカソード電極12間において放電が起こると、放電によって発生した放電電流がペルチェ素子15に流れ、ペルチェ素子が動作してガラス管10内の熱を放熱する。すなわち、放電が起きてガラス管10内において発熱しているときはペルチェ素子15に電流が流れて動作するので、ペルチェ素子15に電源及び配線を別途設ける必要がない。また、放電が起きておらず発熱していないときはペルチェ素子15に電流は流れず、無駄な電流を流すことがなく、省エネルギーである。
【0033】
以上のように、この発明の実施の形態2に係る火炎センサによれば、一対の電極(11,12)間で起こる放電によって発生した放電電流によってペルチェ素子15が動作するようにしたので、放電が起こっているときだけ、すなわち、温調機能が必要な時にのみペルチェ素子15が動作するため省エネルギーで実現することができる。また、ペルチェ素子15は放電電流によって動作するため、別途電源を設けなくてもよいので、部品点数も少なくてすみ、電源を配置するスペースも確保しなくてよいので非常に小型にすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1,11 アノード電極
2,12 カソード電極
3,4,13,14 コバール線(リード線)
5,10 ガラス管
15 ペルチェ素子
16 排気管
17 ボタンガラス
18 ボタンステム
19 ケース
A 高温なガラス管側のペルチェ素子の吸熱面
B 低温なケース側のペルチェ素子の放熱面
【技術分野】
【0001】
この発明は、火炎中に含まれる紫外線を検出する火炎センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火炎センサの一種として、ユニット化した紫外線検出用放電管(UVチューブ)を用いて火炎中に含まれる紫外線を検出する火炎センサがある。このUVチューブは、紫外線を受けて放電を生起する一対の放電電極を円筒形のガラス管内に封止し、上記一対の放電電極それぞれのリード線をガラス管の一端部から導出したものである。
このような構造のUVチューブは、火がついていることを確実に検知するための安全確保の役割を担っており、例えばボイラ内の燃焼状態をモニタするための火炎センサとして用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、図1は、従来のUVチューブの構造を示す構成図である。ガラス管5の中に、網目状のアノード電極1と、カソード電極2とが、リード線3,4によってそれぞれ支持されており、ガラス管5には例えば水素とネオンを成分とする混合ガスが封入されている。このアノード電極1とカソード電極2とは、平行平面構造であり、両電極間は約0.5mmの距離を保って配置されている。そして、ガラス管5の端部(図1の上部)及び側部から入射した紫外線が、アノード電極1の網目を抜けてカソード電極2に当たることにより放電する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−12581号公報
【特許文献2】特公昭44−1039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、UVチューブが継続して紫外線を検出する場合、継続する放電に伴って発生する熱によってガラス管5内の温度が大幅に上昇し、それに伴って封入された混合ガスのガス圧もまた大幅に上昇する。パッシェンの法則によれば、平行な電極間で放電の生じる放電開始電圧は、ガス圧と電極間隔の積の関数(V=ρd、ρ:ガス圧、d:電極間隔)であるとされている。すなわち、ガス圧の大幅な上昇に伴って放電開始電圧も大幅に上昇するため、紫外線がカソード電極2にぶつかってもアノード電極1とカソード電極2の間において放電が起こりにくくなり、故障していない正常なUVセンサでありながら、設計通りに紫外線を検出することができなくなるという課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、UVチューブのガラス管内の放電によって発生する熱の影響を抑え、感度良く紫外線を検出することが可能な火炎センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明に係る火炎センサは、一対の電極を有するガラス管を備えたUVチューブを用いた火炎センサにおいて、ガラス管の外側の表面にペルチェ素子を備える。
【0008】
また、この発明に係る火炎センサは、温度センサを備え、温度センサで測定した温度に基づいてペルチェ素子に流す電流を制御する。
【0009】
また、この発明に係る火炎センサは、一対の電極間で起こる放電によって発生した放電電流によってペルチェ素子が動作する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、火炎センサがペルチェ素子を備えることにより、火炎センサ自身が温調機能を備えるようになるため、ガラス管内のガス圧の大幅な上昇を防ぐことができ、放電開始電圧も設計通りの範囲の値とすることができるので、感度良く紫外線を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のUVチューブの構造を示す模式図である。
【図2】従来のUVチューブと、この発明におけるUVチューブとの外観を比較する模式図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る火炎センサのUVチューブの外観構成を示す。
【図4】この発明の実施の形態1に係る火炎センサの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図2は、従来のUVチューブ(図2左側)と、この発明におけるUVチューブ(図2右側)との概観を比較する模式図である。
従来の火炎センサに用いられるUVチューブは、図1のガラス管5の上下方向の長さが4.3cm前後の比較的大きなものであるため、振動に弱く、ガスタービンや発電所等の特殊な市場では使えないという問題があった。
そこで、UVチューブを小型化することが考えられる。この発明におけるUVチューブは、大幅な小型化を図ったものであり、ガラス管10の上下方向の長さは1.7cm前後である。このように小型化されたUVチューブは、対振動性、耐衝撃性を向上できるため、このUVチューブを用いた火炎センサは、ガスタービンの燃焼検出など、従来では安定した火炎検出が困難であった過酷な環境での使用が可能となる。
【0013】
図3は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサのUVチューブの外観構成を示す図であり、図3(c)はこのUVチューブ全体の構成を、図3(b)は図3(c)の構成からガラス管10とアノード電極11を外した構成を、図3(a)は図3(b)の構成からカソード電極12を外した構成を、それぞれ示している。
【0014】
ここで、この発明における火炎センサのUVチューブの製造工程について、図3を参照しながら詳細に説明する。まず初めに、図3(a)に示すように、排気管16、ボタンガラス17、各3本のコバール線13,14を同時に封着して、ボタンステム18を形成する。
【0015】
次に、図3(b)に示すように、カソード電極12用の3本のコバール線(リード線)14にカソード電極12を配置して溶接する。なお、カソード電極12は、アノード電極11用の3本のコバール線13に接触しないように配置されるとともに、カソード電極12には、アノード電極用の3本のコバール線13に対応する箇所にそれぞれ切欠きが設けられている。
【0016】
その後、網目状の面電極であるアノード電極11と、それに向かい合う面電極であるカソード電極12との間の距離が所定の距離(ここでは、0.4mm)保たれるようにするために、スペーサ(図示せず)を一時的に配置する。なお、スペーサは必須ではなく、アノード電極11とカソード電極12との間の距離を所定の距離に保つことができるものであれば、他の代替方法を用いても構わない。
【0017】
そして、アノード電極11を3本のコバール線(リード線)13に溶接する。なお、網目状のアノード電極11には、3本のコバール線13を接続するための穴が、その3本のコバール線13に対応する箇所にそれぞれ設けられている。また、3本のコバール線13は、カソード電極12用の3本のコバール線14よりも長くボタンステムから上方向に突き出されており、アノード電極11をコバール線13と溶接した際に、アノード電極11とカソード電極12とが接触しないように設定されている。
【0018】
その後、前記スペーサを取り除き、最後に、図3(c)に示すように、ガラス管10をかぶせてボタンステム18と溶接し、内部に例えば水素とネオンを成分とする混合ガスを封入してから密閉する。
【0019】
図4は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサの断面図であり、図4(a)は本発明の火炎センサのUVチューブ(図3(c))の断面図を示しており、上述したようにガラス管10内において、アノード電極11とカソード電極12が向かい合っている。
【0020】
この火炎センサは、このガラス管10内のアノード電極11とカソード電極12の間に直流電圧を印加し、紫外線がカソード電極12にぶつかることでアノード電極11とカソード電極12の間で起きる放電を検出することにより紫外線の有無(火炎の有無)を検出する。
【0021】
ここで、背景技術においても説明したように、UVチューブのアノード電極11とカソード電極12間において継続して放電が起こる場合、放電に伴って発生する熱によってガラス管10内の温度が大幅に上昇してしまうと、ガラス管10内に封入された混合ガスのガス圧が大幅に上昇する。パッシェンの法則によると、平行な電極間において放電の生じる放電開始電圧は、ガス圧と電極間隔の積の関数であるとされており、この発明の火炎センサにおいて電極間隔に相当する、アノード電極11とカソード電極12間の距離は一定であるため、ガス圧が大幅に上昇すると放電開始電圧もまた大幅に上昇することが分かる。そして、放電開始電圧が大幅に上昇して設計の範囲外の値となると、紫外線がカソード電極12にぶつかってもアノード電極11とカソード電極12の間において放電が起こりにくくなり、紫外線を検出できなくなってしまうという課題があった。
そこで、この発明は、放電に伴ってUVチューブのガラス管10内に発生する熱の影響を抑えるために、火炎センサ自身が温調機能を備えるようにする。
【0022】
この温調機能について詳細に説明する。まず、UVチューブのガラス管10内に発生する熱の影響を抑えるために、図4(b)に示すように、ガラス管10内の温度を調節する(冷却する)手段として、ガラス管10の外側の表面にペルチェ素子15を貼り付ける。
【0023】
この際、放電が起きて発熱するのはアノード電極11とカソード電極12間であるため、ペルチェ素子15はこれらの電極の高さ付近に配置するとよい。また、図4(b)では2箇所にペルチェ素子15を貼り付けているが、ペルチェ素子15を貼り付ける数は1箇所であっても4箇所であっても良いことは言うまでもない。
【0024】
さらに、図4(c)に示すように、ペルチェ素子15が貼り付けられたUVチューブがケース19に収められて、火炎センサを構成する。この際、ペルチェ素子15は両面がガラス管10とケース19に接触する大きさ(厚み)とし、ガラス管10とケース19の両方に接着剤で貼り付ければよい。
【0025】
ペルチェ素子15は、直流電流を流されると一方の面で吸熱を生じさせ、他方の面で発熱を生じさせる、異種金属の接続により形成される半導体素子である。この発明では、ペルチェ素子15を用いて、放電によって発生する熱をUVチューブのガラス管10内から外へ移動させることによってガラス管10内の温度が上昇することを防ぐ。
【0026】
ペルチェ素子15を図4に示すようにガラス管10とケース19の間に設置し、継続した放電が起こることによりUVチューブのガラス管10内の温度が上昇し始めると、ペルチェ素子15の両面間に温度差が生じる。このようにペルチェ素子15の両面間に温度差が生じた状態において、このペルチェ素子15に直流電流が流れると、ペルチェ素子15は高温なガラス管10側のペルチェ素子15の吸熱面Aの熱を低温なケース19側のペルチェ素子15の放熱面Bに移動させる。なお、ペルチェ素子15による熱の移動は、ペルチェ素子15の両面間の温度差がなくなるか、ペルチェ素子15に電流が流れなくなるまで続く。また、ペルチェ素子15に電流を流すには、図示していない電源及び配線を別途設けるものとする。
【0027】
この際、さらに温度センサを設け、その温度センサの値に応じて、ペルチェ素子15に印加する電圧を可変にすることにより、ペルチェ素子15に流す電流を制御するようにしてもよい。具体的には、ガラス管10内部の温度は約400度くらいまで上昇することがあり、その際にはガラス管10外部の温度も100度くらいまで上昇するため、ガラス管10外部の温度が100度近くまで上昇している場合には電流を流し、例えば20度付近の常温である場合には、電圧を印加させないようにする等の制御を行うことにより、省エネルギーでの動作を実現することが可能となる。
【0028】
また、ケース19は、アルミニウムや銅など放熱しやすい素材にしておく。なお、ケース19の外側の表面に冷却フィンなどのヒートシンク機能を付加することによって、ペルチェ素子15によってガラス管10内から移動された熱をケース19が放熱しやすくなるため、ペルチェ素子15の両面に温度差が生じやすくなり、熱の移動の効果を高めることができる。
【0029】
このように、ペルチェ素子15をガラス管10の表面に設置することにより、ガラス管10内の熱をケース19に移動させることができるので、ガラス管10内の温度が大幅に上昇することを防ぐことができる。そして、ガラス管10内の温度が大幅に上昇しなければ、ガラス管10内の混合ガスのガス圧も大幅には上昇しない。したがって、放電開始電圧が大幅に上昇することはなく、放電開始電圧が大幅に上昇して放電が起こりにくくなることで紫外線を検出できなくなることを防ぐことができる。
【0030】
以上のように、この発明の火炎センサによれば、ガラス管10の外側の表面にペルチェ素子15を備えるようにしたので、放電が継続している状況において、ガラス管10内の温度が大幅に上昇するのを防ぐことができるため、ガラス管10内の混合ガスのガス圧が大幅に上昇することを防ぐことができ、放電開始電圧を設計通りの値とすることができるため、放電によって発生する熱の影響を抑え、感度よく紫外線を検出することができる。
【0031】
実施の形態2.
実施の形態1では、ペルチェ素子15に電流を流すために、別途電源及び配線を設けるものとしたが、この実施の形態2では、UVチューブの放電電流を測定する接続端子に、ペルチェ素子15への配線を接続するものとする。
【0032】
この場合、UVチューブの一対の電極アノード電極11とカソード電極12間において放電が起こると、放電によって発生した放電電流がペルチェ素子15に流れ、ペルチェ素子が動作してガラス管10内の熱を放熱する。すなわち、放電が起きてガラス管10内において発熱しているときはペルチェ素子15に電流が流れて動作するので、ペルチェ素子15に電源及び配線を別途設ける必要がない。また、放電が起きておらず発熱していないときはペルチェ素子15に電流は流れず、無駄な電流を流すことがなく、省エネルギーである。
【0033】
以上のように、この発明の実施の形態2に係る火炎センサによれば、一対の電極(11,12)間で起こる放電によって発生した放電電流によってペルチェ素子15が動作するようにしたので、放電が起こっているときだけ、すなわち、温調機能が必要な時にのみペルチェ素子15が動作するため省エネルギーで実現することができる。また、ペルチェ素子15は放電電流によって動作するため、別途電源を設けなくてもよいので、部品点数も少なくてすみ、電源を配置するスペースも確保しなくてよいので非常に小型にすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1,11 アノード電極
2,12 カソード電極
3,4,13,14 コバール線(リード線)
5,10 ガラス管
15 ペルチェ素子
16 排気管
17 ボタンガラス
18 ボタンステム
19 ケース
A 高温なガラス管側のペルチェ素子の吸熱面
B 低温なケース側のペルチェ素子の放熱面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を有するガラス管を備えたUVチューブを用いた火炎センサにおいて、
前記ガラス管の外側の表面にペルチェ素子を備える
ことを特徴とする火炎センサ。
【請求項2】
前記火炎センサは温度センサを備え、
前記温度センサで測定した温度に基づいて前記ペルチェ素子に流す電流を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の火炎センサ。
【請求項3】
前記ペルチェ素子が前記一対の電極間で起こる放電によって発生した放電電流によって動作する
ことを特徴とする請求項1記載の火炎センサ。
【請求項1】
一対の電極を有するガラス管を備えたUVチューブを用いた火炎センサにおいて、
前記ガラス管の外側の表面にペルチェ素子を備える
ことを特徴とする火炎センサ。
【請求項2】
前記火炎センサは温度センサを備え、
前記温度センサで測定した温度に基づいて前記ペルチェ素子に流す電流を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の火炎センサ。
【請求項3】
前記ペルチェ素子が前記一対の電極間で起こる放電によって発生した放電電流によって動作する
ことを特徴とする請求項1記載の火炎センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−255730(P2012−255730A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129400(P2011−129400)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
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