説明

火炎センサ

【課題】小型化を実現し、かつ、設計通りの寸法や位置に収めて製作することが容易に可能な火炎センサを提供する。
【解決手段】紫外線を検出するUVセンサを用いた火炎センサにおいて、UVセンサが、紫外線を照射される金属体13と、電圧を振動に変換する第1の圧電素子11と、振動を電圧に変換し金属体13を帯電させる第2の圧電素子12と、金属体13の上部にある誘電体の電圧変化を計測する測定部18と、第1の圧電素子11に電圧をかけるのか、第1の圧電素子11、第2の圧電素子12及び金属体13を接地するのかを切り替えるスイッチ部19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火炎中に含まれる紫外線を検出する火炎センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火炎センサの一種として、ユニット化した紫外線検出用放電管(UVチューブ)を用いて火炎中に含まれる紫外線を検出する火炎センサがある。このUVチューブは、紫外線を受けて放電を生起する一対の放電電極を円筒形のガラス管内に封止し、上記一対の放電電極それぞれのリード線をガラス管の一端部から導出したものである。
このような構造のUVチューブは、火がついていることを確実に検知するための安全確保の役割を担っており、例えばボイラ内の燃焼状態をモニタするための火炎センサとして用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、図1は、従来のUVチューブの構造を示す模式図である。ガラス管5の中に、網目状のアノード電極1と、カソード電極2とが、リード線3,4によってそれぞれ支持されており、ガラス管5内にはガスが封入されている。このアノード電極1とカソード電極2とは、平行平面構造であり、両電極間は約0.5mmの距離を保って配置されている。そして、ガラス管5の端部(図1の上端部)から入射した紫外線が、アノード電極1の網目を抜けてカソード電極2に当たることにより、放電する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−12581号公報
【特許文献2】特公昭44−1039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の火炎センサに用いられるUVチューブは、図1のガラス管10の上下方向の長さが4.3cm前後の比較的大きなものであるため、振動に弱く、ガスタービンや発電所等の特殊な市場では使えないという問題があった。
そこで、UVチューブを小型化することが考えられる。図2は、従来のUVチューブ(図2左側)と、小型化したUVチューブ(図2右側)との外観を比較する模式図である。図2右側のUVチューブは、大幅な小型化を図ったものであり、ガラス管10の上下方向の長さは1.7cm前後である。このように小型化されたUVチューブは、耐振動性、耐衝撃性を向上できるため、このUVチューブを用いた火炎センサは、ガスタービンの燃焼検出など、従来では安定した火炎検出が困難であった過酷な環境での使用が可能となる。
【0006】
しかしながら、UVチューブを小型化したことにより、アノード電極6とカソード電極7とを支えるコバール線(リード線)8及びコバール線(リード線)9と、ガラスシール部(ガラス管10の溶接部)とが近距離に配置されるため、ガラスシール時の熱影響でコバール線8,9が変動し、ゆがみの生じていないアノード電極6及びカソード電極7を得ることは容易ではなく、設計通りの寸法、位置に収めて製作することが非常に困難であるという課題が発生した。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、小型化を実現し、かつ、設計通りの寸法や位置に収めて製作することが容易に可能な火炎センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明に係る火炎センサは、UVセンサを用いたものであり、前記UVセンサが、紫外線を照射される金属体と、電圧を振動に変換する第1の圧電素子と、前記振動を電圧に変換し前記金属体を帯電させる第2の圧電素子と、前記金属体上部にある誘電体の電圧変化を計測する測定部と、前記第1の圧電素子に電圧をかけるのか、前記第1の圧電素子、前記第2の圧電素子及び前記金属体を接地するのかを切り替えるスイッチ部とを備えたことを特徴とする火炎センサ。
【0009】
また、この発明に係る火炎センサは、前記金属体の形状が上面の方が下面よりも面積が小さいことを特徴とする。
【0010】
また、この発明に係る火炎センサは、金属体、前記第1の圧電素子及び前記第2の圧電素子をMEMS加工技術によって加工することを特徴とする。
【0011】
また、この発明に係る火炎センサは、前記金属体の上面の上方にレンズ状の部品を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明における火炎センサによれば、圧電素子(ピエゾ素子)を用いて金属体を帯電させることで生じる金属体の上面と誘電体上部間の電位差の光電効果による減少を測定することにより紫外線を検出する構成であるので、小型化を実現でき、かつ、容易に設計通りの寸法、位置に収めて製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の紫外線検出用放電管(UVチューブ)の構造を示す模式図を示す。
【図2】従来のUVチューブと、小型化したUVチューブとの外観を比較する模式図を示す。
【図3】この発明の実施の形態1に係る火炎センサのUVセンサの構成図を示す。
【図4】この発明の実施の形態1に係る火炎センサの動作についての説明図を示す。
【図5】この発明の実施の形態1に係る火炎センサのUVセンサの測定電圧の例を示す。
【図6】この発明の実施の形態1に係る火炎センサの金属板の特徴的な形状による効果について説明する図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る火炎センサのUVセンサの構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図3は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサにおけるUVセンサの構成図であり、下から順番に、電圧を振動に変換する第1のピエゾ素子(第1の圧電素子)11、振動を電圧に変換する第2のピエゾ素子(第2の圧電素子)12、金属体13、誘電体14を重ねたものを遮光板15によって覆ったセンサ部16に電源17、電圧計(測定部)18及びスイッチ(スイッチ部)19が接続されて構成されている。
【0015】
センサ部16は、第1のピエゾ素子11、第2のピエゾ素子12、金属体13、誘電体14が縦に重ねられたものであり、このうち誘電体14は、金属体13の上面の全体ではなく一部に載せられているため、金属体13の上面には誘電体14が載せられていない箇所がある。また、遮光板15には、この金属体13の上面の誘電体14が載せられていない箇所に紫外線が照射されることが可能なように穴が開いている。
【0016】
電源17は第1のピエゾ素子11に接続されており、電圧計18は誘電体14に接続されている。なお、電源17は、第1のピエゾ素子11に直流電圧を与えることができるものであればどのような構成でもよく、例えば、商用電源に、コンバータ、コンデンサを接続した構成などであってもよい。また、図3において、電圧計18が接続された誘電体14はひとつのみであるが、実際は各誘電体14にそれぞれ電圧計18が接続される。
【0017】
スイッチ19は第1のピエゾ素子11に電圧をかける側(C1側)と、第1のピエゾ素子11、第2のピエゾ素子12及び金属体13を接地する側(C2側)とを切り替えるものであり、スイッチ19の切り替えはマイコン等の制御部(図示せず)によって制御される。
【0018】
ピエゾ素子(11,12)は、圧電体に加えられた力を電圧に変換する、あるいは電圧を力に変換する、圧電効果を利用した受動素子である。
【0019】
次に、このUVセンサの動作について説明する。図4は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサにおけるUVセンサの動作についての説明図である。
まず、スイッチ19がC1側に接続されると、図4(a)に示すように、電源17によって、第1のピエゾ素子11に電圧が印加される。第1のピエゾ素子11が印加された電圧を振動に変えて、第2のピエゾ素子12に振動を加える。第2のピエゾ素子12が第1のピエゾ素子11によって加えられた振動を電圧に変換すると、第2のピエゾ素子12の上面に電子を、下面に陽子を、それぞれ帯電する。
【0020】
第2のピエゾ素子12の上面に接している金属体13は、仕事関数が第2のピエゾ素子12よりも大きいものを用いており、接触帯電現象により、第2のピエゾ素子12の上面に帯電した電子が金属体13の上面へ移動する。
【0021】
さらに、金属体13の上面に電子が帯電したことにより、金属体13の上に重ねられた誘電体14についても、下面に陽子、上面に電子をそれぞれ帯電し、上面と下面の間に電位差が生じる。
【0022】
ここで、図4(a)の金属体13の周辺Aの拡大図である図4(b)に示すように、金属体13の上面において誘電体14が設置されていない箇所に紫外線が照射されると、光電効果が起きて、金属体13の上面に帯電している電子の一部が失われ、金属体13及び誘電体14に帯電している電荷の量が減少し、金属体13及び誘電体14の上・下面間の帯電によって生じた電位差は小さくなる。
【0023】
つまり、電圧計18によって、誘電体14の上・下面の帯電によって生じる電圧の変化を測定することにより、金属体13の上面に紫外線が照射することによって起こる光電効果から電子の損失分を計測することができる。
【0024】
スイッチ19がC2側に接続されると、第1のピエゾ素子11、第2のピエゾ素子12及び金属体13が接地されるため、分極化が無くなり、誘電体14の上下間の電圧はなくなる。その後、スイッチ19は再度C1側に切り替えられる。
【0025】
図5は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサのUVセンサの測定結果の例を示しており、上のグラフはスイッチ19の状態を、中央のグラフは「火炎無しの場合」の電圧計18の測定結果を、下のグラフは「火炎有りの場合」の電圧計18の測定結果を、それぞれ示している。
【0026】
図5に示されているように、スイッチ19がC1側に接続されているとき、中央のグラフでは電圧値はFULLを示しているのに対し、下のグラフでは電圧値はFULLよりも小さな値を示している。これは、上述したように、紫外線が金属体13の上面に照射することにより光電効果が生じ、誘電体14の上・下面間の電位差が減少するためであり、火炎の強さによって電位差の減少の幅は異なる。この電位差の減少の幅が所定の第2の閾値を超え、第1の閾値以下の場合、火炎を検出したと判断する。なお、あまりにも電位差の減少の幅が大きく、所定の第1の閾値を超える場合には、装置の故障か或いは火炎不安定と判断する。このように、スイッチ19がC1側に接続されているときの誘電体14の上・下面間の電位差を測定することにより紫外線を検出することができる。
【0027】
なお、金属体13の形状は、図3に示されているように、上面よりも下面の方が面積が大きくなっている。図6は、この発明の実施の形態1に係る火炎センサの金属体13の特徴的な形状による効果について説明する図である。図6に示すように、金属体13の上面の面積を下面よりも小さくすることにより、上面に、より集中的に電子を集めることができ、単位面積当たりの電荷量が大きくなるため、省力による帯電が可能となる。第2のペルチェ素子12についても金属体13と同様に、上面の面積を下面よりも小さくすることにより、上面に、より集中的に電子を集めることができる。
【0028】
また、第1のピエゾ素子11、第2のピエゾ素子12及び金属体13の加工はMEMS加工技術によって行われる。MEMS加工技術を採用することにより、設計通りの寸法、位置に加工することができるので、製造過程での細かな調整、修正は必要なくなる。なお、MEMSとは、微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical System)のことである。
【0029】
なお、この実施の形態では、圧電素子としてピエゾ素子を用いているが、例えば、水晶などのピエゾ素子以外の圧電素子を用いてもよい。
【0030】
以上のように、この発明の実施の形態1に係る火炎センサによれば、第1のピエゾ素子11及び第2のピエゾ素子12を用いて金属体13を帯電させることで生じる誘電体14の上面と下面間の電位差について、光電効果による電圧の変化を測定することにより紫外線を検出する構成のUVセンサであるので、小型化を実現でき、かつ、容易に設計通りの寸法、位置に収めて製作することができ、製造過程での細かな調整及び修正が必要なくなる。
【0031】
また、この発明の実施の形態1に係る火炎センサによれば、UVセンサ自体を大量に生産することが可能であり、さらに小型であるため材料費及び製造費用を低減することができる。
【0032】
また、この発明の実施の形態1に係る火炎センサによれば、UVチューブのようにガスを封入する必要がない構成のUVセンサであるので、UVチューブの課題である、電極やリード線にガスが吸着することや、ガスのスローリークによる影響を受け、性能が低下するなどの問題も生じない。
【0033】
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2に係る火炎センサにおけるUVセンサの構成図であり、実施の形態1の図3に示すUVセンサとの違いは、遮光板15の上面の穴の部分にレンズ状部20を備える点のみであり、その他の構成については実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0034】
この発明のUVセンサは従来のUVセンサと比べて非常に小型であるため、UVセンサに入射する光量が少なくなり、紫外線が金属体13の上面に照射しにくいので、紫外線検出(火炎検出)の精度を上げるために、遮光板15の上面にレンズ状部20を備えることが望ましい。なお、図7においては、遮光板15の上面に大きなレンズ状部20を設置する構成について示しているが、遮光板15の各穴に小さなレンズ状部20を設置する構成とする等、紫外線を金属体13の上面に効率良く集光できるものであれば、どのように設置してもよい。
【0035】
そして、遮光板15の上面の穴の部分にレンズ状部20を備えることにより、UVセンサ自身が集光機能を備えるようになり、これにより、金属体13の上面を照射する光量が増加し、非常に小型なUVセンサであっても紫外線の検出(火炎の検出)精度が低下することを防ぐことができる。
【0036】
以上のように、この発明の実施の形態2に係る火炎センサによれば、遮光板15の上面の穴にレンズ状部20を備えるようにしたので、火炎センサ自身が集光機能を備え、金属体13の上面を照射する光量が増加し、非常に小型な火炎センサであっても紫外線の検出(火炎の検出)精度が低下することを防ぐことができる。
【0037】
なお、本発明の実施の形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、上述した実施の形態の構成に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1,6 アノード電極
2,7 カソード電極
3,4,8,9 コバール線(リード線)
5,10 ガラス管
11 第1のピエゾ素子(第1の圧電素子)
12 第2のピエゾ素子(第2の圧電素子)
13 金属体
14 誘電体
15 遮光板
16 センサ部
17 電源
18 電圧計(測定部)
19 スイッチ(スイッチ部)
20 レンズ状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を検出するUVセンサを用いた火炎センサにおいて、
前記UVセンサが、
紫外線を照射される金属体と、
電圧を振動に変換する第1の圧電素子と、
前記振動を電圧に変換し前記金属体を帯電させる第2の圧電素子と、
前記金属体上部にある誘電体の電圧変化を計測する測定部と、
前記第1の圧電素子に電圧をかけるのか、前記第1の圧電素子、前記第2の圧電素子及び前記金属体を接地するのかを切り替えるスイッチ部
とを備えたことを特徴とする火炎センサ。
【請求項2】
前記金属体の形状が上面の方が下面よりも面積が小さい
ことを特徴とする請求項1記載の火炎センサ。
【請求項3】
前記金属体、前記第1の圧電素子及び前記第2の圧電素子をMEMS加工技術によって加工する
ことを特徴とする請求項2記載の火炎センサ。
【請求項4】
前記金属体の上面の上方にレンズ状の部品を備える
ことを特徴とする請求項1記載の火炎センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−79866(P2013−79866A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220083(P2011−220083)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】