説明

灯具

【課題】互いに視認性の異なる複数種類の光を発生させることが可能な灯具を提供する。
【解決手段】車両用ランプ1は、光源部10としてレーザ111AおよびLED111Bを有すると共に、レーザ111Aからのレーザ光LAを拡散反射させる第1リフレクタ11を有する。テールランプ機能時には、光源部10からLED光LBを取り出し、このLED光LBに基づいた点灯を行う。一方、ストップランプ機能時には、レーザ111Aからレーザ光LAを取り出し、このレーザ光LAを第1リフレクタ11において拡散反射させることで、スペックルを発生させつつ点灯を行う。スペックルは、ぎらついた斑点状の模様として視認されると共に、人間の網膜上に焦点を結ばないという性質を有しているため、LED光LBよりも視認性が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテールランプやストップランプ等の車両用として好適に利用される灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電球や蛍光管に代わる照明用光源として、半導体発光素子を用いた光源が多く製品化されている。半導体発光素子は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)と半導体レーザに大別されるが、照明用途や表示用途に利用されているのは主に発光ダイオードである。発光ダイオードが用いられるアプリケーションとしては、例えば、車両用灯具、駅のホーム等に使用される電光表示装置、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)のバックライト、信号機に使用される表示灯等が挙げられる。一方、半導体レーザは、光ディスク、レーザビームプリンタおよびレーザポインタ等、主に測定用途として用いられている。また最近では、半導体レーザの高出力化が進み、レーザマーカーや溶接等の加工用途や、半導体レーザを光源として用いたプロジェクタ等、高出力半導体レーザを利用したアプリケーションが発表されている。
【0003】
ところが、半導体レーザから発振するレーザ光には、スペックルと呼ばれる特有の斑点模様が発生することが知られている。レーザ光は、物体面上に照射されると、その面の各点において拡散反射することにより不規則な位相関係で干渉し合う。この現象は、人間の眼にぎらついた斑点状の模様、即ちスペックルとして認識され、絵や文字を視認する際に不快な印象を与えてしまう。このため、半導体レーザについては、照明用途や表示用途として積極的に使用されていないのが実状である。
【0004】
他方、発光ダイオードは、上述のように照明用や表示用の光源として好適に用いられ、これまでにも様々な提案がなされている。例えば、発光ダイオードを、自動車のテールランプやストップランプ(ブレーキランプ)等の車両用灯具に利用した手法が提案されている(例えば、特許文献1,2)。テールランプは、夜間、追尾のために常時点灯するものであり、ストップランプは、ブレーキを踏んだ際に一時的に点灯するものである。これらのランプにはいずれも、赤色の発光ダイオードが用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−215710号公報
【特許文献2】特開2007−48470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなストップランプは、後続車への警告を促すべく、テールランプよりも目立つように点灯させる必要がある。このためには、例えばテールランプよりもストップランプを高出力とすればよいが、赤色光は視感度が低く、出力の変化を明るさによって認識することが困難である。そのため、赤色光は一般的に視認度が低い。
【0007】
加えて、ストップランプのような警告用ランプの点灯は、テールランプのような常時灯と異なり、安全上の観点から、遠方であっても、またいずれの角度方向からでも視認し易いことが望ましい。
【0008】
即ち、例えば通常表示と、何らかの警告や通知等の周囲に対して特に目立たせたい表示とを両立させる光源として、互いに視認性の異なる複数種類の光を発生させることが可能な灯具の実現が望まれている。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、互いに視認性の異なる複数種類の光を発生させることが可能な灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の灯具は、第1の光を発生するレーザダイオードおよび第2の光を発生する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を有する光源部と、光出射面となる開口部を有すると共に、光源部から発生した第1の光および第2の光のうちの少なくとも第1の光を拡散反射させるリフレクタとを備えたものである。
【0011】
本発明の灯具では、光源部としてのレーザダイオードおよび発光ダイオードと、レーザダイオードからの第1の光を拡散反射させるリフレクタとを備えることにより、発光ダイオードからは第2の光、レーザダイオードからは第1の光がそれぞれ取り出される。これらのうち、レーザダイオードからの第1の光が、リフレクタにおいて拡散反射されることにより、第1の光はコヒーレント光であるため、干渉によりスペックルを発生する。このスペックルは、ぎらついた斑点状の模様として視認されると共に、人間の網膜上に焦点を結ばないという性質を有するため、レーザダイオードからの第1の光は、発光ダイオードからの第2の光に比べ視認性が高くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の灯具によれば、光源部としてレーザダイオードおよび発光ダイオードを設け、リフレクタによりレーザダイオードからの第1の光を拡散反射させるようにしたので、第1の光特有の性質を利用して、互いに視認性の異なる複数種類の光を発生させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用ランプの概略構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した車両用ランプの上面図である。
【図3】レーザおよびLEDにおけるL−I特性を表すものである。
【図4】レーザ光およびLED光の発光スペクトルを表すものである。
【図5】拡散反射により視認されるスペックルの一例を表す写真である。
【図6】変形例1に係る車両用ランプの概略構成を表す断面図である。
【図7】図6に示した車両用ランプの上面図である。
【図8】変形例2に係る車両用ランプの概略構成を表す断面図である。
【図9】図8に示した車両用ランプの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態:ベース上にレーザダイオードおよび発光ダイオードを配置し、リフレクタ開口部の平面形状を円形とした例
2.変形例1:ベースの側面にレーザダイオード、上面に発光ダイオードをそれぞれ配置し、リフレクタ開口部の平面形状を円形とした例
3.変形例2:レーザダイオードおよび発光ダイオードを所定の方向に並べ、リフレクタ開口部の平面形状を矩形とした例

【0015】
<実施の形態>
[車両用ランプ1の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用ランプ(車両用ランプ1)の断面構造を表すものである。図2は、車両用ランプ1を上面の側(光出射側)からみたものである。車両用ランプ1は、自動車のテールランプとして機能すると共に、ストップランプとしても機能する車両用の灯具である。
【0016】
車両用ランプ1は、光源部10と、第1リフレクタ11(リフレクタ)および第2リフレクタ12(他のリフレクタ)とを備えたものである。第1リフレクタ11は、光出射面となる開口部11Sを有している。車両用ランプ1の光出射側には、開口部11Sを覆うようにレンズカバー13が設けられている。
【0017】
光源部10は、ベース110上にレーザ111AおよびLED111Bを実装したものである。これらのレーザ111AおよびLED111Bは、図示しない回路基板に接続されており、この回路基板により発光駆動制御がなされるようになっている。
【0018】
レーザ111Aは、コヒーレントな誘導放出光(以下、単にレーザ光という)(LA)を放出するレーザダイオード、例えば赤色レーザダイオードである。LED111Bは、インコヒーレントな自然放出光(以下、単にLED光という)(LB)を放出する発光ダイオード、例えば赤色発光ダイオードである。詳細は後述するが、本実施の形態では、レーザ111Aは主にストップランプ用光源、LED111Bは、テールランプ用光源としてそれぞれ機能するようになっている。
【0019】
第1リフレクタ11は、光源部10からの光、レーザ光LAおよびLED光LBを拡散反射させるために設けられ、例えば逆円錐台形状の基体11Aの内側の面に、拡散反射膜11Bが形成されたものである。拡散反射膜11Bは、金属により構成されると共に、その表面形状に依存して、拡散反射膜11Bへの入射光が干渉効果を生じるようになっている。このような拡散反射膜11Bは、例えばアルミニウム(Al)の蒸着膜により構成されることが望ましい。レーザ111Aから放出されるコヒーレントな光が干渉し合い、スペックルがより発生し易くなるためである。この第1リフレクタ11の開口部11Sの平面形状は、例えば円形や楕円形(ここでは、円形)となっている。
【0020】
第2リフレクタ12は、光源部10と第1リフレクタ11の開口部11Sとの間に設けられると共に、レーザ光LAおよびLED光LBを第1リフレクタ11の拡散反射膜11Bに向けて反射させるためのものである。この第2リフレクタ12は、基体12Aが第1リフレクタ11の開口部11Sの縁部分に固定(ここでは、図2に示したように4箇所で固定)されると共に、光源部10に対面して、反射膜12Bを有するものである。基体12Aのうちの光源部10に対面する部分は、レーザ光LAおよびLED光LBがそれぞれ均等に拡散反射膜11Bへ向けて反射されるような面形状に成形され、この成形された面形状に沿って反射膜11Bが形成されている。
【0021】
レンズカバー13は、第1リフレクタ11において拡散反射されたレーザ光LAおよびLED光LBを、所望の方向へ屈折させるものである。このレンズカバー13により、所望の配光特性を形成することができる。
【0022】
[車両用ランプ1の作用]
車両用ランプ1は、上記のように、テールランプとして機能すると共にストップランプとして機能する。以下、車両用ランプ1が、テールランプ機能を発揮する際と、ストップランプ機能を発揮する際における各作用について説明する。
【0023】
(1.テールランプ機能)
車両用ランプ1がテールランプとして機能する際には、図示しない回路基板の制御により、光源部10において、LED111Bのみを駆動するか、あるいはLED111Bの駆動と同時に、レーザ111Aをレーザ発振に至らない低電流レベルで駆動する。但し、ここでは、LED111Bと同時にレーザ111Aを駆動する場合を例に挙げる。
【0024】
(1−1.LED111Bの発光作用)
LED111Bでは、図示しない一対の電極からキャリアが注入されると、素子内部においてキャリアは活性層(図示せず)に到達し、バンドギャップエネルギーに基づいた波長で再結合して発光する。このようにして活性層で発生した光は、活性層内を伝播したのち、速やかに素子外へ取り出される。なお、LED111Bは、素子外部との界面における反射率が低いため、内部に反射されて戻る光はごく僅かである。そのため、ほとんどの光は自然放出によるLED光LBとして素子外部へ放出される。このLED光は、干渉性の低いインコヒーレント光である。即ち、LED111Bは、テールランプ機能における主光源となる。
【0025】
(1−2.レーザ111Aの発光作用)
レーザ111Aでは、図示しない一対の電極からキャリアが注入されると、素子内部においてキャリアは活性層(図示せず)に到達し、バンドギャップエネルギーに基づいた波長で再結合して発光する。ここで、レーザ111Aには、図示しない一対の端面(フロント端面およびリヤ端面)が形成されており、例えばフロント端面に低反射率コート、リヤ端面に高反射率コートがそれぞれ施されている。これにより、活性層で発生した光は、一対の端面同士の間において活性層内を伝播する。このとき、フロント端面に到達した光は、速やかに素子外へ取り出されるが、一部の光は反射されてリヤ端面側へと進行する。一方、リヤ端面に到達した光は、その大部分が反射され、その結果、フロント端面とリヤ端面の間では、幾度もの反射を繰り返すことになる。
【0026】
このとき、注入される電流量が少ない状態では、活性層内の光密度が低いために、誘導放出には至らず、フロント端面からLED光LBが素子外部へ放出される。即ち、レーザ111Aを低電流レベルで駆動することにより、低出力ではあるものの、インコヒーレント光を放出するため、テールランプの副光源として機能することとなる。
【0027】
上述のようにして、LED111Bおよびレーザ111AのそれぞれからLED光LBが放出されると、このLED光LBは、まず、第2リフレクタ12に入射し、第2リフレクタ12の反射膜12Bにより、第1リフレクタ11に向けて反射される。これにより、LED光LBが、第1リフレクタ11へ入射し、拡散反射膜11Bによって拡散反射される。この後、拡散反射されたLED光LBが、レンズカバー13を通過することにより、所望の配光分布が形成され、上方へ向けて出射される。以上の作用により、車両用ランプ1は、テールランプとして点灯する。
【0028】
(2.ストップランプ機能)
車両用ランプ1がストップランプとして機能する際には、図示しない回路基板の制御により、光源部10において、レーザ111Aをレーザ発振に至る定格電流レベルで駆動する。
【0029】
レーザ111Aでは、図示しない一対の電極からキャリアが注入されると、上述のテールランプ機能時と同様、活性層において発生した光が、一対の端面間において幾度もの反射を繰り返すことになる。このとき、電流量が一定の値を超えると、注入キャリアが多くなり、伝導体の電子、価電子体のホールが増す。すると、当然再結合発光が多くなり、自然放出光も増えていく。そのため、注入電流が増加するに従って、光密度が高くなり、その光子エネルギーによる伝導体の電子の強制的な遷移、いわゆる誘導放出遷移が始まる。言い換えると、注入キャリアが増大し、伝導体の電子、価電子体のホールが反転分布を形成すると、より誘導放出過程の遷移が多くなり、光の増幅現象を生じる。このとき、一対の端面間で幾度もの反射を繰り返すことによって活性層内の光密度が上昇すると、光の増幅が自然放出に打ち勝ち、誘導放出によるレーザ光LAを放出する。即ち、レーザ111Aは、ストップランプの光源となる。
【0030】
上述のようにして、レーザ111Aからレーザ光LAが放出されると、このレーザ光LAは、まず、第2リフレクタ12に入射し、第2リフレクタ12の反射膜12Bにより、第1リフレクタ11に向けて反射される。これにより、レーザ光LAが、第1リフレクタ11へ入射し、拡散反射膜11Bによって拡散反射される。この後、拡散反射されたレーザ光LAが、レンズカバー13を通過することにより、所望の配光分布が形成され、上方へ向けて出射される。以上の作用により、車両用ランプ1は、ストップランプとして点灯する。
【0031】
ここで、レーザ光LAは、LED光と異なり、干渉し易いコヒーレント光である。このようなコヒーレント光は、拡散反射膜11B上で拡散反射されると、スペックルと呼ばれる斑点模様を生じる。特に、拡散反射膜11Bがアルミニウム蒸着膜である場合には、入射したレーザ光LAは、その表面形状に依存する干渉効果で特に目立つスペックルパターンを発生する。その一例として、アルミニウム蒸着膜上に投影させた像をCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)カメラで撮影したものを図3に示す。このスペックルは、人間の眼には、ぎらついた斑点状の模様として認識される。
【0032】
また、このようなスペックルは、一点に焦点を結びにくいという性質を有している。即ち、スペックルは、人間の網膜上に焦点を結ぶことができず、近視や遠視等の個人の視力によらず、また遠方や様々な角度方向においても視認され易い。このため、スペックルを生じないLED光LBに比べ、スペックルを生じるレーザ光LAの視認性は極めて高くなる。
【0033】
なお、図4に、レーザ111AおよびLED111Bにおける電流に対する光出力の関係(L−I特性)を示す。図4に示したように、LED111Bでは、電流の増加に伴い、LED光LBの出力がほぼリニアに増加する。これに対し、レーザ111Aでは、電流値が低い状態(ここでは、200mA程度以下の状態)では、若干の光出力が見られるだけで、ほとんど光が放出されないことがわかる。この段階では、レーザ111Aから放出される光はLED光LBである。ところが、レーザ111Aでは、ある電流値(ここでは、250mA付近)を超えると、急激に光出力が増加する。この段階で放出される光がレーザ光LAである。
【0034】
図6には、LED光およびレーザ光LAの発光スペクトルを示す。図6に示したように、LED光LBのスペクトルは半値幅(FWHM:full width half maximum)の広いガウシアン状のプロファイル(例えば、FWHM=30nm)となる。これに対し、レーザ光LAのスペクトルは半値幅の狭いデルタ関数状のプロファイル(例えば、FWHM=2nm)となっている。このようなプロファイルの違いが、レーザ光LAが拡散反射膜11Bにおいて干渉し、スペックルを生じる要因の一つである。なお、図6では、LED光LBおよびレーザ光LAのそれぞれのスペクトルピークにずれがあるが、これに限らず、スペクトルピークが互いに同じであってもよい。
【0035】
以上のように、本実施の形態では、光源としてレーザ111AおよびLED111Bを設けると共に、レーザ111Aからのレーザ光LAを拡散反射させる第1リフレクタ11を設置する。このような構成において、テールランプ機能時には、光源部10からLED光LBを取り出し、このLED光LBに基づいた点灯を行う。一方、ストップランプ機能時には、レーザ111Aからレーザ光LAを取り出し、このレーザ光LAを第1リフレクタ11において拡散反射させることで、スペックルを発生させつつ点灯を行う。このスペックルは、LED光LBに比べ、視認性の高いものであるため、レーザ光特有の性質を利用して、テールランプよりもストップランプの視認性を高めることができる。即ち、互いに視認性の異なる複数種類の光を発生させることが可能となる。
【0036】
また、本実施の形態では、光源部10の上方に第2リフレクタ12を設置し、一旦この第2リフレクタ12においてレーザ光LAあるいはLED光を反射させた後、第1リフレクタ11で拡散反射させるようにしている。これにより、ランプ内での光路長が長くなり、ランプ全体としての発光面積を拡げることができる。
【0037】
ちなみに、夜間は、テールランプの点灯とストップランプの点灯を同時に行う必要があるが、この場合には、LED111Bを駆動させると共に、レーザ111Aをレーザ発振に至る電流値以上で駆動させればよい。
【0038】
次に、上記実施の形態の変形例(変形例1,2)について説明する。以下では、上記実施の形態の車両用ランプ1と同一の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0039】
<変形例1>
[車両用ランプ2の構成]
図6は、変形例1に係る車両用ランプ2の断面構造を表すものである。図7は、車両用ランプ2を上面の側(光出射側)からみたものである。車両用ランプ2は、上記実施の形態の車両用ランプ1と同様、テールランプ機能とストップランプ機能とを両立させると共に、レーザ111AおよびLED111Bを有する光源部20と、光源部20からの光を拡散反射させる第1リフレクタ11を備えている。
【0040】
但し、本変形例では、上記実施の形態の車両用ランプ1と異なり、光源部20において、レーザ111AおよびLED111Bがそれぞれ複数設けられている。これら複数レーザ111AおよびLED111Bは、円柱形状のベース210に実装されているが、本変形例では、ベース210における円柱の側面に複数のレーザ111Aが設置されている。具体的には、図7に示したように、ベース210の側面のうち、円周を均等分割する計4つの箇所にそれぞれレーザ111Aが設けられている。この一方、LED111Bは、ベース210の上面に計4つ設けられている。ここで、上記実施の形態では、第2リフレクタ12を設けることにより、ランプ全体の発光面積を拡大し得る。このため、上記実施の形態では、LED111Bの個数は一つでもよいが、本変形例では、第2リフレクタ12を設けていない分、LED111BからのLED光LBは、第1リフレクタ11で反射されることなく、ほぼそのままの放射角で外部へ取り出される。従って、本変形例では、LED光LBの発光面積を拡大すべく、LED111Bを複数設けることが望ましい。
【0041】
このような車両用ランプ2の光出射側には、第1リフレクタ11の開口部11Sを覆うように、レンズカバー21が設けられている。レンズカバー21は、上記実施の形態のレンズカバー13と同様、所望の配光特性を形成するものであるが、本変形例では、その中央領域21Bと周縁領域21Aとにおいて、面形状(屈折角)が互いに異なっている。レンズカバー21において、周縁領域21Aは、主にレーザ光LAの配光分布、中央領域21Bは、主にLED光LBの配光分布をそれぞれ制御するようになっている。
【0042】
[車両用ランプ2の作用]
車両用ランプ2は、上記実施の形態の車両用ランプ1と同様、テールランプとして機能すると共にストップランプとして機能する。即ち、テールランプ機能時には、上記実施の形態の車両用ランプ1と同様のLED111Bおよびレーザ111Aの発光作用により、LED光LBが放出される。ストップランプ機能時には、上記実施の形態の車両用ランプ1と同様のレーザ111Aの発光作用により、レーザ光LAが放出される。
【0043】
但し、本変形例では、テールランプ機能時において、LED111Bから放出されたLED光LBは、そのままレンズカバー21の中央領域21Bを通過する。一方、レーザ111Aから放出されたLED光LBは、第1リフレクタ11により拡散反射された後、レンズカバー21の周縁領域21Aを通過する。このようにして、所望の配光分布が形成され、LED光によるテールランプの点灯がなされる。
【0044】
また、ストップランプ機能時では、レーザ111Aがベース210の側面に設けられていることにより、レーザ光LAは、横方向に放出される。このため、放出されたレーザ光LAは、上記実施の形態における第2リフレクタ12のような他のリフレクタを介することなく、第1リフレクタ11へ入射する。第1リフレクタ11へ入射したレーザ光LAは、上記実施の形態と同様、拡散反射膜11Bによって拡散反射され、これによりスペックルを発生する。この後、レーザ光LAは、レンズカバー21の周縁領域21Aに通過して、所望の配光分布が形成される。このようにして、レーザ光によるストップランプの点灯がなされる。
【0045】
本変形例のように、光源部20において、複数のLED111Bをベース210の上面、複数のレーザ111Aをベース210の側面にそれぞれ設けるようにしてもよく、このようにした場合であっても、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。レーザ111AとLED111Bとを複数設けることにより、ランプ全体を明るくすることができる。また、レーザ111Aをベース210の側面に設けることにより、レーザ光LAを横方向に取り出すことができ、これにより、拡散反射膜11Bを有する第1リフレクタ11に直接入射させ、上記実施の形態における第2リフレクタ12のような他のリフレクタが不要となる。
【0046】
また、レーザ光LAは、LED光LBに比べ放射角が狭いものの、角度強度分布はガウシアンライクに広がる。従って、上記のように、レーザ光LAを横方向に出射させることにより、上記実施の形態の車両用ランプ1に比べ、拡散反射膜11Bに対し、より大きい面積でレーザ光を照射することができる。これにより、スペックルが広い面積で均等に発生し易くなる。
【0047】
更に、レーザ111Aをベース210の側面に円周を均等分割するように複数配置させることにより、上記実施の形態の車両用ランプ1に比べ、ストップランプ点灯時の輝度むらを低減することができる。
【0048】
なお、上記変形例1では、レーザおよびLED毎の配光制御を行うために、レンズカバー21の周辺領域21Aおよび中央領域21Bの面形状(屈折角)が互いに異なるようにしたが、これに限らず、例えば上記2つの領域で屈折率が互いに異なるようにしてもよい。
【0049】
<変形例2>
[車両用ランプ3の構成]
図8は、変形例2に係る車両用ランプ3の車体Aに実装された状態での断面構造を表すものである。図9は、車両用ランプ3を上面の側(光出射側)からみたものである。車両用ランプ3は、上記実施の形態の車両用ランプ1と同様、テールランプ機能とストップランプ機能とを両立させると共に、レーザ111AおよびLED111Bを有する光源部30と、光源部30からの光を拡散反射させる第1リフレクタ31を備えている。
【0050】
但し、本変形例では、第1リフレクタ31の開口部31Sの平面形状が矩形となっている。また、光源部30が、ベース310上に複数のレーザ111AおよびLED111Bを一方向に交互に配列したものとなっている。具体的には、図8に示したように、レーザ111AとLED111Bとが、車体Aの奥行き方向に沿って交互に配列すると共に、図9に示したように、開口部31Sの矩形状の一辺に沿って交互に配列している。
【0051】
第1リフレクタ31は、基体31Aの面形状に沿って、拡散反射膜31Bが形成されたものである。基体31Aの面形状は、レーザ111Aからのレーザ光LAおよびLED111BからのLED光LBのそれぞれを、開口部31Sへ向けて反射させることができるように成形されている。具体的には、第1リフレクタ31の面形状は、主にレーザ光LAを拡散反射させる領域310Aと、主にLED光LBを拡散反射させる領域310Bとに分割された形状となっている。拡散反射膜31Bは、上記実施の形態における拡散反射膜11Bと同様、例えばアルミニウム蒸着膜により構成されていることが望ましい。レンズカバー32は、上記実施の形態のレンズカバー13と同様、所望の配光特性を形成するものである。
【0052】
本変形例のように、第1リフレクタ31の開口部31Sは矩形であってもよく、光源部30において、レーザ111AとLED111Bとを一方向に交互に配列していてもよい。このようにした場合であっても、上記実施の形態と同等の効果を得ることができる。また、レーザ111AとLED111Bとを開口部31Sの矩形状の一辺に沿って交互に配置することにより、ランプ全体を明るくすると共に、見かけ上の輝度むらを低減することが可能となる。
【0053】
また、本変形例においても、上記変形例1と同様、レーザ光LAを、拡散反射膜31Bを有する第1リフレクタ31に直接入射させることができるため、上記実施の形態における第2リフレクタ12のような他のリフレクタが不要となる。更に、レーザ光LAは、LED光LBに比べ放射角が狭いものの、角度強度分布はガウシアンライクに広がる。従って、上記変形例1と同様、拡散反射膜31Bに対し、より大きい面積でレーザ光LAを照射することができる。
【0054】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、テールランプ機能時において、LEDおよびレーザの双方を駆動してLED光を取り出す場合を例に挙げて説明したが、LEDのみを駆動するようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態等では、光源部において、レーザとLEDとを同一のベースに実装した構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば、レーザをLEDから離れた別の場所に配置し、レーザ光を光ファイバや導光板等を用いて導くようにしてもよい。一般に、レーザとLEDとが近接していると、互いに熱の影響を受けるが、上記のように、レーザをLEDから離れた場所に配置することにより、この熱の影響を回避することができる。また、レーザは、LEDに比べ、光ファイバや導光板等の光学素子とのカップリングが極めて良いため、効率良くレーザ光を利用することが可能となる。
【0056】
更に、これらのレーザおよびLEDは、上記実施の形態等のように、互いに別々のチップとして設けられていても良いが、同一の基板上に同一のエピタキシャル成長工程を経て形成されたものでもよい。即ち、レーザおよびLEDが、基板および半導体層を互いに共通の層として一体的に形成されていてもよい。この場合、レーザに対応する領域とLEDに対応する領域とのそれぞれにおいて、端面における反射率を制御すればよい。
【0057】
加えて、上記実施の形態等では、レーザ光およびLED光の双方が、第1リフレクタに入射して拡散反射されるような構成を例に挙げて説明したが、少なくともレーザ光が第1リフレクタに入射して拡散反射されるような構造となっていればよい。上述のように、レーザ光を拡散反射させることにより、スペックルが生じ、これによりLED光よりもレーザ光の視認性を高めることができるためである。
【0058】
また、上記実施の形態等では、本発明の灯具として、テールランプ機能とストップランプ機能との双方を兼ね備えた車両用ランプを例に挙げて説明したが、本発明の灯具はこれに限定されず、例えば工事現場で使用される表示灯等にも適用可能である。すなわち、通常表示(LED光を用いた表示)と、何らかの警告や通知等の周囲に対して特に目立たせたい表示(レーザ光を用いた表示)とを、同時にあるいは切り替えて表示させることが必要とされる照明装置や表示装置に好適に用いることができる。
【0059】
更に、上記実施の形態等では、レーザとして、端面(フロント端面)から発光がなされる端面発光型のレーザダイオードを例に挙げて説明したが、これに限定されず、上面発光型のレーザダイオード(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)あるいは固体レーザ等を使用してもよい。いずれの場合であっても、放出されるレーザ光はコヒーレントな光であるため、拡散反射されることにより、スペックルを生じ、これにより本発明と同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1,2,3…車両用ランプ、10,20,30…光源部、11,31…第1リフレクタ、12…第2リフレクタ、13,21,32…レンズカバー、110,210,310…ベース、111A…レーザ、111B…LED、11A,12A…基体、11B,31B…拡散反射膜、12B…反射膜、11S,31S…開口部、LA…レーザ光、LB…LED光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を発生するレーザダイオードおよび第2の光を発生する発光ダイオードを有する光源部と、
光出射面となる開口部を有すると共に、前記光源部から発生した第1の光および第2の光のうちの少なくとも第1の光を拡散反射させるリフレクタと
を備えた灯具。
【請求項2】
前記開口部の平面形状は円形または楕円形である
請求項1に記載の灯具。
【請求項3】
前記レーザダイオードは前記第1の光、前記発光ダイオードは前記第2の光をそれぞれ、前記開口部に向けて発し、
前記光源部と前記開口部との間に、前記第1の光および前記第2の光を前記リフレクタへ向けて反射させる他のリフレクタが設けられている
請求項2に記載の灯具。
【請求項4】
前記リフレクタの開口部を覆って保護部材が設けられている
請求項2に記載の灯具。
【請求項5】
前記保護部材は、前記光源部からの光を所定の方向へ屈折させるレンズにより構成されている
請求項2に記載の灯具。
【請求項6】
前記光源部は、前記レーザダイオードを複数有し、
複数のレーザダイオードはそれぞれ、前記リフレクタの光反射面に向けて前記第1の光を出射するように配置されている
請求項2に記載の灯具。
【請求項7】
前記光源部において、前記発光ダイオードは、前記開口部に向けて光を発するように配置されている
請求項6に記載の灯具。
【請求項8】
前記リフレクタの開口部を覆って、前記開口部の中央領域と周縁領域との間において苦節率が異なるレンズが設けられている
請求項6に記載の灯具。
【請求項9】
前記開口部の平面形状は矩形である
請求項1に記載の灯具。
【請求項10】
前記光源部において、前記レーザダイオードおよび前記発光ダイオードは、前記矩形の一辺に沿って配置されている
請求項9に記載の灯具。
【請求項11】
前記第1の光はコヒーレント光であり、前記第2の光はインコヒーレント光である
請求項1に記載の灯具。
【請求項12】
前記ダイオードレーザおよび前記発光ダイオードは、互いに同一の基板上に、互いに同一の組成および厚みにより形成された半導体層を有する
請求項1に記載の灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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