灯器及び交通信号灯器
【課題】アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことのない新たな技術的手段として、アンテナを組み込んだ信号灯器を提供する。
【解決手段】信号灯器1は、LED7を有する光学ユニット2と、光学ユニット2の周囲からLED7の投光方向へ延びる庇50と、光学ユニット2に組み込まれたアンテナ4とを備える。庇50は、非導電体からなる主庇部51と、導電体からなり前記アンテナの指向性を設定する設定部52を含む。主庇部51は、長さの異なる複数種類の設定部52、52’を選択して取り付けることができるように構成される。
【解決手段】信号灯器1は、LED7を有する光学ユニット2と、光学ユニット2の周囲からLED7の投光方向へ延びる庇50と、光学ユニット2に組み込まれたアンテナ4とを備える。庇50は、非導電体からなる主庇部51と、導電体からなり前記アンテナの指向性を設定する設定部52を含む。主庇部51は、長さの異なる複数種類の設定部52、52’を選択して取り付けることができるように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は灯器、主として道路に設置される交通信号灯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が提案されている。このITSでは、道路に通信装置(インフラ装置)が設置されており、この通信装置のアンテナから発せられた情報を、道路を走行する車両の車載機が受信し、この情報を活用することにより、車両の走行についての安全性を向上させることができる(特許文献1参照)。
このような路車間通信を無線によって行う場合、無線通信の見通しを確保する観点から、歩道等に設置した支柱から車道側にアームを張り出し、このアーム上に通信装置のアンテナを取り付けている。また、前記アームを設けなくても見通しが確保できる場合、前記支柱にアンテナを取り付けることが可能となる。
【0003】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記通信装置のアンテナを道路に設置するために、アンテナ専用の支柱を新たに設けることは経済的でなく、また、道路の美観の点でも好ましくない。
そこで、道路には車両感知器や光ビーコンのヘッド等が設置されているため、これらを取り付けている支柱やアームにアンテナを併設することが考えられる。しかし、この場合においても、美観の点で好ましくない。
【0005】
そこで、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことのない新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の灯器は、発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットの周囲から前記発光体の投光方向へ延びる庇と、前記光学ユニットに組み込まれたアンテナと、を備え、前記庇が、前記アンテナの指向性を設定するための導電体からなる設定部を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、灯器の光学ユニットにアンテナが組み込まれているので、当該アンテナを目立たなくすることができるとともに、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。
また、灯器の庇が、アンテナの指向性を設定するための導電体からなる設定部を含むので、当該庇を利用してアンテナの指向性を設定することができる。光学ユニット内にアンテナを組み込む場合、光学ユニット内のスペースの制約によってアンテナの向きを自由に設定することが困難な場合があり、また、灯器とは別に、アンテナの指向性を設定するための構造を備えた場合、外観を損なったり大幅なコスト増を伴ったりするおそれがある。本発明では、灯器に備わった庇を利用することによってアンテナの指向性を設定しているので、これらの問題を解消することができる。
【0008】
前記庇は、非導電体からなる主庇部と、この主庇部に取り付けられる前記設定部とを有していることが好ましい。この構成によって、アンテナの指向性に影響を与えない非導電体からなる主庇部によって、庇としての本来の機能(太陽光を遮る機能)を担わせ、導電体からなる設定部によって、アンテナの指向性を設定することが可能となる。
【0009】
前記主庇部は、前記投光方向に関する長さの異なる複数種類の前記設定部を選択して取り付け可能に構成されていることが好ましい。これによって、アンテナの指向性を複数段階に調整することが可能である。
【0010】
前記主庇部は、複数の前記設定部を前記投光方向に並べた状態で取り付け可能に構成されていてもよい。これによって、主庇部に取り付ける設定部の数を変えることによって、アンテナの指向性を複数段階に調整することが可能である。
【0011】
前記設定部は、前記投光方向に関して伸縮可能に構成されていてもよい。これによって、アンテナ指向性を無段階又は複数段階に調整することが可能である。
【0012】
本発明の灯器は、発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットの周囲から前記発光体の投光方向へ延びる庇と、前記光学ユニットに組み込まれたアンテナと、を備え、前記庇は、前記アンテナの指向性を設定可能な導電体からなり、前記投光方向に関する長さが変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、アンテナが灯器の光学ユニットに組み込まれているので、当該アンテナを目立たなくすることができるとともに、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、灯器の庇が、アンテナの指向性を設定可能な導電体からなり、投光方向に関する長さが変更可能に構成されているので、庇全体の長さを変えることによってアンテナの指向性を調整することができる。
【0014】
本発明の交通信号灯器は、発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットの周囲から前記発光体の投光方向へ延びる庇と、前記光学ユニットに組み込まれたアンテナと、を備え、前記庇が、前記アンテナの指向性を設定するための導電体からなる設定部を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、アンテナが交通信号灯器の光学ユニットに組み込まれているので、当該アンテナを目立たなくすることができるとともに、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、交通信号灯器は、車両のドライバによる視認性を考慮して道路に設置される。このため、この信号灯器を道路の所定の位置に設置すれば、前記アンテナと車両の車載機との間で無線通信を行う上で、見通しが良好な状態が得られる。
【0016】
また、交通信号灯器の庇が、アンテナの指向性を設定する導電体からなる設定部を含むので、当該庇を利用してアンテナの指向性を設定することができる。光学ユニット内にアンテナを組み込む場合、光学ユニット内のスペースの制約によってアンテナの向きを自由に設定することが困難な場合があり、また、灯器とは別に、アンテナの指向性を設定するための構造を備えた場合、外観を損なったり大幅なコスト増を伴ったりするおそれがある。本発明では、交通信号灯器に備わった庇を利用することによってアンテナの指向性を設定しているので、これらの問題を解消することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、アンテナは灯器の光学ユニットに組み込まれるため、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る灯器の正面図である。図1の灯器は道路に設置される交通信号灯器1(以下、単に「信号灯器」という)であり、車両用のものである。
歩道等の路側には支柱40が設置され、この支柱40から車道側にアーム41が張り出されて設けられており、このアーム41に信号灯器1が取り付けられている。
【0019】
信号灯器1は、複数(図例では三つ)の光学ユニット2と、これら光学ユニット2を組み込んでいる筐体3とを有している。三つの光学ユニット2は、赤、黄、青の灯光色を有している。各筐体3の光学ユニット2の周囲には庇50が取り付けられている。
また、支柱40には、信号灯器1を制御する制御装置5が取り付けられている。なお、信号灯器1の設置構造は図示しているもの以外であってもよく、図示しないが前記支柱40及び前記アーム41の形態が異なっていてもよく、また、信号灯器1が歩道橋に架設されたものであってもよい。また、制御装置5は、信号灯器1の筐体3内に設けられたものであってもよい。
なお、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置5が、後述するアンテナ4を介した無線通信制御を行うように構成することができるが(あるいは無線通信制御を行う装置を同一筐体内に内蔵させることができるが)、別々の装置としても良い。別々とする場合、前記無線通信制御を行う装置は、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置の近傍(同一の支柱40)に設置することが好ましい。
【0020】
〔光学ユニット2の構成〕
図2、図3及び図4は、1つの光学ユニット2の斜視図、正面図及び断面図である。光学ユニット2は、発光体としての発光ダイオード7(以下LEDという)と、複数のLED7が前面8aに実装された基板8と、収容部材6と、カバー部材9とを有している。
【0021】
基板8は円形の板状に形成されている。基板8の裏面には配線パターンが形成されており、配線パターンはLED7の端子37と繋がっている。基板8上には複数のLED7が面状に広がって配設されている。LED7はレンズ部38を有し、このレンズ部38内にLED素子(図示略)が設けられている。
【0022】
収容部材6は、鋼板、アルミ又は合成樹脂材により形成され、底部(底壁)6aと、この底部6aの周縁から立設した側部(側壁)6bとを有している皿形状であり、前方に開口している。開口側である収容部材6の前部にカバー部材9が取り付けられている。これにより、収容部材6とカバー部材9との間に収容空間部Sが形成されており、この収容空間部SにLED7及び基板8が収容されている。そして、基板8は収容部材6に固定されている。収容空間部Sのうち、基板8よりも前方が前空間部S1とされ、基板8よりも後方が後空間部S2とされている。
【0023】
カバー部材9は、ガラス又は合成樹脂製のレンズで可視光透過性を有しており(可視光に対して透明であり)、複数のLED7を前方から覆っている。カバー部材9の後面(背面)9aは凹曲面であり、前面9bは凸曲面である。ただし、信号灯器1が本実施形態のようなLED灯器であれば、カバー部材9の後面9a及び前面9bは平面とすることもできる。なお、この光学ユニット2において、前方とは光の投光方向であり(カバー部材9側であり)、後方とは収容部材6の底部6a側である。
【0024】
〔アンテナ4の構成〕
図2〜図4に示すように、光学ユニット2には、アンテナ4が組み込まれている。アンテナ4はパッチアンテナであり、パッチ素子11とグランド素子12とを有している。すなわち、図4において、パッチ素子11とグランド素子12とが、前記光学ユニット2内に、つまり前記収容空間部Sに格納(収容)されている。
【0025】
パッチ素子11は、円形の平面状に形成されている。パッチ素子11は、基板8から前方へ立設した支持部材13によって支持されかつ固定されている。支持部材13は絶縁部材からなる。パッチ素子11は、カバー部材9からLED7の前端39までの範囲Aに設けられている。また、図4において、パッチ素子11はカバー部材9の後面9aから後方に離れて設けられている。なお、パッチ素子11の輪郭は円形以外の多角形(四角形等)であってもよい(図5参照)。
【0026】
グランド素子12は、円形の平面状(平板状)に形成されており、基板8の前面8a側で基板8に取り付けられている。例えば、グランド素子12は、収容部材6に基板8と共にネジによって共締めされる。またはグランド素子12は、基板8に立設された支持部材13によって支持されかつ固定されていてもよい。
グランド素子12の輪郭形状は、パッチ素子11の輪郭形状よりも大きくなっている。グランド素子12は、円形に限らず多角形(四角形等)でもよく、灯器内に収納できる形状であればどういうかたちであってもよい。
【0027】
図4に示すように、グランド素子12は、パッチ素子11の後方であって、前後方向について基板8とLED7の前端39との間に設けられている。グランド素子12には、LED7(LED7のリード線)を挿通させる開口部として複数の孔14が形成されている。この孔14の配置は、LED7の配置と一致させてあり、グランド素子12は網目構造となっている。つまり、ここでいう網目構造には、例えば練炭のように平板に孔がいくつか空けられた構造も含まれる。
【0028】
収容部材6(底部6a)には、アンテナ4用の同軸ケーブル15を接続させる端子部19が取り付けられており、この端子部19に、図1の制御装置5から延びる同軸ケーブル15を接続することができる。そして、この端子部19から後空間部S2へ延びる同軸ケーブル15aが、アンテナ4と接続されている。同軸ケーブル15aは、内導体15b、絶縁体15c、外導体15d及び被覆部15eを有しており、この同軸ケーブル15aの内導体15bがパッチ素子11に接続されており、外導体15dがグランド素子12に接続されている。基板8には、同軸ケーブル15aを貫通させる孔が形成されており、この孔によりグランド素子12やパッチ素子11への同軸ケーブル15aの接続を可能にしている。
【0029】
図1の制御装置5から延びるLED7用の電源ケーブル(図示せず)が、収容部材6の底部6aに取り付けた端子部(図示せず)を介して、LED用基板8と接続されている。
なお、内、外導体15b,15dと各素子11,12(各素子の導電体部分)とを半田によって接続し固定することができるが、半田以外の方法であってもよい。
【0030】
以上の構成により、グランド素子12とパッチ素子11とが、前空間部S1内に設けられ、パッチ素子11は、基板8の前面8aからLED7の前端39までの範囲Aに設けられ、グランド素子12はパッチ素子11の後方に設けられた状態となる。そして、グランド素子12とパッチ素子11とが、前後方向に対向した配置となり、このアンテナ4の指向性は信号灯器1から前方へ向かう方向となる。すなわち、光学ユニット2による投光方向と、アンテナ4の指向性とが略一致され、信号灯器1は車両に対して見通しが良い位置に設置されることから、このアンテナ4の指向性によって、車両の車載機(図示せず)との間で、良好な通信状態を得ることが可能となる。さらに、本実施形態では、アンテナ4の指向性は、庇50(図1参照)によっても所定に調整される。庇50の詳細な構成及びアンテナ4の指向性の調整については後述する。
【0031】
図5は、アンテナを内蔵した光学ユニットの斜視図である。なお、図5は、説明を容易とするためにLED7を省略して示してある。このアンテナ4のパッチ素子11は、輪郭形状が矩形状(正方形状)とされている。
LED7の前端39よりも前方にあるパッチ素子11は、このLED7の前方への投光を阻害しないように、パッチ素子11の厚さ方向(前後方向)に、可視光透過性を有している(可視光に対して透明である)。具体的に説明すると、パッチ素子11は、可視光透過用の開口を有する導電体からなる。つまり、図5に示しているように、パッチ素子11をメッシュ構造による導電体とすることにより、パッチ素子11は可視光透過性を有している。このように、パッチ素子11をメッシュ構造とするために、導線によって(導線を編んで)形成することができる。
【0032】
このパッチ素子11を、例えば、径(幅)が1mmである導線によってメッシュ構造とする場合、この導線のピッチ(メッシュの間隔)を所定の値として(例えば20mmとして)上下方向及び左右方向に編み、網目状金属素子とすることができる。このピッチが20mmである場合、そのピッチは約1/20波長となり、使用する周波数を約720MHz、波長を約420mmとすることができる。
また、パッチ素子11のメッシュ数(メッシュ粗さ)は変更自在であり、粗くすることができる。例えば、一面を四分割した網目状金属素子から構成したり、一面を二分割又は三分割した網目状金属素子から構成したりすることができる。また、パッチ素子11を輪郭部分(外形枠)のみからなる枠構造(フレーム構造)とすることもできる。
【0033】
メッシュの間隔は、特に限定されないが、1/5波長以下とするのが好ましく、特に1/10波長以下が好ましい。メッシュの間隔が小さい程高い周波数まで対応することができる。なお、導線の強度を確保するため、導線の径(幅)は0.5mm以上が好ましく、一方で光の透過率を高めるために、2mm以下とすることが好ましい。ただし、導線を樹脂板の上に蒸着させる方法などによって製造する場合には、強度について考慮する必要性が乏しいため、その導線の幅は0.5mm以下であっても良い。
【0034】
また、パッチ素子11をメッシュ構造乃至外形枠構造とする場合、前記のような導線を利用する以外に、板部材の表面に金属膜(金属薄膜)による網目を形成してもよい。この場合、図4の二点鎖線で示しているように、可視光透過性のある板部材16が、カバー部材9とLED7の前端39との間に設けられており、この板部材16の表面又は裏面(図例では表面)にメッシュ構造乃至外形枠構造であるパッチ素子11を形成してもよい。そして、この板部材16が前記支持部材13に取り付けられている。
【0035】
板部材16としては、例えば透明の樹脂板とすることができる。板部材16は可視光を充分に透過する材料であるのが好ましく、例えば、ポリカードネート、アクリル、ポリエチレンテレフタラート、ガラスなどによれば薄くても強度の面で優れ、また、安価で好ましい。
板部材16を利用する場合の具体例としては、板部材16の面に、例えば線幅10μmであってピッチ(メッシュの間隔)を100μmとする導線部からなる微細なメッシュを形成すればよい。このように板部材16に微細なメッシュを形成する場合、線幅が1μm以上で50μm以下であり、ピッチが50μm以上で1000μm以下とするのが好ましい。
なお、メッシュ形状は、図示したような四角形状に限らず、三角形状、ハニカム形状とすることができ、また、全体として放射形状(蜘蛛の巣形状)等とすることができる。
【0036】
また、パッチ素子11が可視光透過性を有しているものとするために、パッチ素子11を可視光透過性を有する薄膜導電体(薄膜金属)から形成することができる。そして、この薄膜導電体を前記板部材16に形成することでパッチ素子11を薄く、所定の形状に形成することができる。この場合、薄膜導電体の厚さを1μm以上であり100μm以下とするのが好ましく、これにより、可視光透過性を有するものとなる。
【0037】
パッチ素子11を板部材16に形成する方法として、以下のものがある。パッチ素子11を単独で形成し、これを板部材16に貼り付ける。この場合、パッチ素子11を板部材16に粘着部材(粘着テープ)によって接着する。または、板部材16に対して金属蒸着を行なうことでパッチ素子11を形成してもよい。または、板部材16に対して印刷によってパッチ素子11を形成してもよい。または、板部材16に対して金属メッキを施してパッチ素子11を形成してもよい。
また、パッチ素子11は、金属等の導電体からなる板材にプレスによる打ち抜き加工を行ったり、孔あけ加工を行ったりすることによってメッシュ構造とすることもできる。
【0038】
アンテナ4が格納された信号灯器1を、路車間で無線通信を行う高度道路交通システム(ITS)に利用するために、使用周波数を715MHz〜725MHzと設定する場合、グランド素子12とパッチ素子11との前後方向の間隔を10〜40mmに設定することができる。なお、これはグランド素子12とパッチ素子11との間に、空気が介在している場合である。
【0039】
なお、グランド素子12とパッチ素子11との前後方向の間隔は、パッチ素子11の外周の直径が170mm〜230mm程度で、孔の大きさが10mm〜25mm程度である場合には、20〜30mm程度が好ましい。また、孔の大きさが25〜35mm程度であれば、10〜25mm程度が好ましい。すなわち、パッチ素子11の表面の面積が小さいほどグランド素子12との前後方向の間隔は狭くする方が良く、表面積が大きいほどグランド素子12との間隔を広げると良い。なお、孔の大きさはそれぞれ異なる大きさであってもよい。
【0040】
また、図4の実施形態では、基板8の前面8aからLED7の前端39までの距離が小さくても、パッチ素子11をこの前端39よりも前方に配置することができるため、グランド素子12とパッチ素子11との前後方向の間隔を所望の値に設定しやすい。また、グランド素子12は、LED7の前端39よりも後方に配置されているので、パッチ素子11との間隔を取り易い構造となっている。
【0041】
グランド素子12とパッチ素子11との間が空気のみによって絶縁されている場合、両者の間隔は20〜30mm程度であるが、グランド素子12とパッチ素子11との間に、絶縁部材としての樹脂板が設けられている場合、両者間の誘電率が変化するため両者の間隔を前記値よりも小さくすることも可能である。この絶縁部材としては、例えば、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、フッ素樹脂板、ガラスエポキシ、FRP又はポリアセタール板がある。
【0042】
また、グランド素子12とLED7とは前後方向の位置について重複しているが、グランド素子12には、LED7(LED7のリード線)を挿通させる開口部として複数の孔14が形成されているので、グランド素子12がLED7に干渉することがないように、グランド素子12の孔14にLED7を挿し入れ、グランド素子12を所定の位置に設置することができる。そして、この形態によれば、グランド素子12はLED7の前端39よりも後方となるため、グランド素子12がLED7による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
【0043】
なお、グランド素子12に形成している前記開口部の構成としては、図示しているように、グランド素子12に孔14をあけて素子と干渉しないようにLED7を配置するに限らず、図示しないが、孔14を設けずに、例えばグランド素子12の導電体部分(導体部分)を蛇行状に配置して(導電体部分を一筆書きになるように配置して)、グランド素子12と干渉しないようにLED7を配置することもできる。
【0044】
アンテナ4は、信号灯器1の光学ユニット2に組み込まれているので、アンテナ4を目立たなくして信号灯器1に設置することができ、道路の美観を損なうことがない。そして、アンテナ4は、信号灯器1の光学ユニット2に組み込まれているので、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、パッチ素子11はLED7の前端39よりも前方に設けられているが、パッチ素子11は可視光透過性を有しているため、LED7による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
さらに、アンテナ4が露出した状態(突出した状態)にないため、信号灯器1を取り付けるための支柱40及びアーム41(図1)の設計において、アンテナ4が受ける風荷重を追加的に考慮する必要がない。また、アンテナ4に対する防錆、防塵についても追加的に考慮する必要がない。
【0045】
グランド素子12は金属板から形成されている。そして、パッチ素子11及びグランド素子12の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミが好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属とすることもできる。また、高周波は表面に電流が流れることから、板部材16に金属蒸着したものや、金属メッキ(金や銀のメッキ)を施したものでもよい(図示せず)。
【0046】
また、グランド素子12とパッチ素子11とは平行に配置されていてもよいが、アンテナ4の指向性を調整するために、パッチ素子11及びグランド素子12の一方又は双方が、基板8に対して傾いて配置されていてもよい。
なお、信号灯器1はドライバへの視認性に鑑みて、通常、基板8自体を少し下方に傾けて設置してある。そのため、パッチ素子11及びグランド素子12を基板8に平行に取り付けることによって、アンテナ4の指向性も下方に向くが、路車間での無線通信領域を限定的としたり確実性を増したりすることを目的として、基板8よりもさらに下方に傾けるようにしても良い。
ただし、光学ユニット2内の収容空間部Sには限りがあるため、パッチ素子11及びグランド素子12を下方に傾けることによって、アンテナ4の指向性を下方に傾けるにも限界が生じる。そのため、本実施形態では、信号灯器1の設置場所等に応じて所望の指向性が得られるように、庇50によってアンテナ4の指向性を調整している。以下、この詳細について説明する。
【0047】
〔庇50の構成〕
図6(a)に示すように、筐体3の前面開口部3aの周囲には、前方に立ち上がる取付部3bが形成され、この取付部3bに庇50がネジ等によって取り付けられている。庇50は、光学ユニット2の略上半分の範囲を覆うように正面視で円弧状に形成され、筐体3から前方に延伸している。
庇50は、非導電体(絶縁体)からなる主庇部51と、この主庇部51に取り付けられる導電体からなる設定部52とを備えている。主庇部51は、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン等の合成樹脂材や、エポキシ樹脂・ポリエステル樹脂等をガラスや炭素などの強化繊維で強化したFRP等によって形成され、光学ユニット2に対する太陽光の入射を制限するための主たる庇として機能する。設定部52は、アルミニウムや鉄などの金属によって形成され、主としてアンテナ4の指向性を設定するために機能する。すなわち、設定部52は、アンテナ4から放射される電波を反射させることによって、アンテナ4の指向性を下方へ傾けるために用いられる。
【0048】
主庇部51の前後方向の長さは、所定の規格に応じた長さ、例えば340mm以上とされている。設定部52の前後方向の長さL1は主庇部51よりも短く、例えば180mmとされている。設定部52は、主庇部51の内面(下面)に沿うように設けられている。なお、設定部52は、主庇部51の外面(上面)に沿うように設けられていてもよく、この場合もアンテナ4の指向性を設定する機能に関して同等の性能を発揮する。
【0049】
主庇部51は、前後方向の長さが異なる複数種類の設定部52を選択して取り付けることができるように構成されている。図6(a)に示す設定部52は、前後方向の長さがL1とされ、図6(b)に示す他の設定部52’は、前後方向の長さがL1よりも長いL2とされている。図7は、主庇部51に長さL1の設定部52を取り付けた状態を示しており、主庇部51と設定部52とには貫通孔51a、52aが形成され、各貫通孔51a,52aに挿通したネジ53にナット54を締結することによって、設定部52が主庇部51に取り付けられている。
【0050】
この設定部52は、1列に配置された貫通孔52aを備えているが、図6(b)に示す設定部52’は、2列に配置された貫通孔52a,52bを備えている。主庇部51には、長さL1の設定部52に代えて長さL2の設定部52’を取り付けることができるように、2列の孔51a,51b(図7参照)が形成されている。
このように長さL1,L2の異なる設定部52,52’のいずれかを選択して取り付けることによって、アンテナ4の指向性を調整することが可能である。具体的には、設定部52の長さを長くするほどアンテナ4の指向性をより下方に向けることができ、設定部52の長さを短くするほどアンテナ4の指向性を水平に近づけることができる。
【0051】
アンテナ4の指向性は、信号灯器1の設置場所に応じて調整することができる。例えば坂道において、上りの自動車に対して設置される信号灯器1の場合、坂を上ってくる自動車との通信を可能にするため、より長い設定部52’を用いることによってアンテナ4の指向性を下げることができる。また、都市部など信号灯器1の設置間隔が狭い状況下において、あるアンテナ4から放射された電波が、他のアンテナ4の電波放射領域に届かないようにしたい場合も、より長い設定部52’を用いることによってアンテナ4の指向性を下げ、電波の到達距離を短くすることができる。逆に、信号灯器1の設置間隔が広く、アンテナ4の電波をより遠くに飛ばしたい場合には、より短い設定部52を用いることによってアンテナ4の指向性をより高く(水平に近く)することができる。
【0052】
主庇部51は、アンテナ4の指向性の調整度合いに応じて、長さの異なる3種類以上の設定部52を選択して取り付けることができるように構成されていてもよい。
また、主庇部51は、図7に示すように、長さL1の設定部52に加え、長さL3の設定部を前側に並べて取り付けることができるように構成されていてもよい。つまり、主庇部51は、複数の設定部52を前後方向に並べて取り付け可能に構成され、主庇部51に取り付けた設定部52の数によって設定部52全体の長さが変更可能に構成されていてもよい。
【0053】
本願出願人は、庇50の設定部52がアンテナ4の指向性に与える影響を検証するためにシミュレーションを行った。その結果を図12〜図14に示す。なお、シミュレーションのモデルは、光学ユニット2として図2〜4に示す構造のものを用い、アンテナ4のパッチ素子11として図5に示すメッシュ構造のものを用いた。ただし、基板8はLED7が設けられていないものとし、グランド素子12は孔14が形成されていないものとした。LED7及び孔14を省くことによるアンテナ4の指向性への影響は少なく、得られる結果は同等である。
【0054】
図12は、設定部52を備えていない庇50、すなわち、主庇部51のみからなる庇50の水平面指向性と垂直面指向性とを示すグラフである。主庇部51の材質はPC(ポリカーボネート)としている。
図12(a)に示すように、アンテナ4の水平面指向性(左右方向の指向性)は、水平角度0°で最大点となり、ゲインは約9.3dBiである。最大点からゲインが3dBi低下する点(2)−(3)の範囲(ビーム幅)は約60°である。また、図12(b)に示すように、アンテナ4の垂直面指向性(上下方向の指向性)は、垂直角度0°で最大点となり、ゲインは約9.3dBiである。最大点からゲインが3dBi低下する点(2)−(3)の範囲(ビーム幅)は約60°である。
図12に示す結果から、庇50が非導電体の主庇部51のみからなる場合は、アンテナ4の指向性は下方へ傾くことなく前方へ向けられる。したがって、主庇部51は、アンテナ4の指向性にほとんど影響を与えないことが解る。
【0055】
図13は、前後方向の長さが短い設定部52(長さL=180mm)を用いた場合の水平面指向性と垂直面指向性とを示すグラフである。設定部52の材質はアルミニウムとしている。
図13(a)に示すように、アンテナ4の水平面指向性は、水平角度0°で最大点となり、ゲインは約7dBiである。最大点からゲインが3dBi低下する点(2)−(3)の範囲は約80°である。したがって、図12(a)に示す結果と比較して、水平方向の指向性に変化はなく、ビーム幅がやや拡がっている。
【0056】
図13(b)に示すように、アンテナ4の垂直面指向性は、垂直角度約−26°で最大点となり、ゲインは約7dBiである。最大点からゲインが3dBi低下する点(2)−(3)の範囲は、約80°である。したがって、図12(b)の結果と比較して、アンテナ4の垂直面指向性が約26°下方へ傾けられ、ビーム幅がやや拡がっていることが解る。
【0057】
図14は、前後方向の長さが長い設定部52(長さL=340mm)を用いた場合の水平面指向性と垂直面指向性とを示すグラフである。設定部52の材質はアルミニウムとしている。
図14(a)に示すように、アンテナ4の水平面指向性は、水平角度0°で最大点となり、ゲインは約8.2dBiである。最大点からゲインが3dBi低下する点(2)−(3)の範囲は約67°である。したがって、図12(a)に示す結果と比較して、水平面指向性に変化はなく、ビーム幅もさほど変化はない。
【0058】
図14(b)に示すように、アンテナ4の垂直面指向性は、垂直角度約−40°で最大点となり、ゲインは約8.2dBiである。最大点からゲインが3dBi低下する点(2)−(3)の範囲は、約52°である。したがって、図12(b)の結果と比較して、アンテナ4の垂直面指向性が約40°下方へ傾けられ、ビーム幅がやや狭くなっていることが解る。
図12〜図14の結果から、設定部52が長いほど、アンテナ4の垂直面指向性が下方へ傾き、設定部52が短いほど、アンテナの垂直面指向性が上方へ向けられる(水平に近づく)ことが確認された。
【0059】
〔庇50の他の実施形態〕
庇50の設定部52は、図8に示すように、それ自体が長さ変更可能(伸縮可能)に構成されていてもよい。この設定部52は、前後方向に複数の分割体521,522,523,524から構成され、これら分割体521〜524が所謂テレスコピック構造を呈するように連結されている。そして、これら分割体521〜524を前後方向に伸張した状態と、各分割体521〜524を互いに重ね合わせるように収縮した状態との間で設定部52の長さが変更可能とされている。主庇部51には、前後方向に延びるスリット51cが形成され、前端の分割体521の上面にはスリット51cを貫通するネジ55が突設され、このネジ55にナット56が締結されている。したがって、ナット56を緩めると共に、スリット51c内でネジ55を前後に移動させることで、設定部52の長さを変更することができる。なお、図8の例では、設定部52を最も収縮した状態で、設定部52は少なくとも後端の分割体524の長さを有することになるが、当該分割体524を筐体3内に内蔵することによって、最も収縮したときの設定部52が筐体3から突出しないように構成することも可能である。
【0060】
さらに他の実施形態として、庇50は、長さ変更可能な設定部52のみからなる構成、すなわち、庇50全体を導電体により形成して長さ変更可能に構成することもできる。例えば、図8において、非導電体の主庇部51を省略し、伸縮可能な設定部52のみを独立した庇50として筐体3に取り付ける。そして、設定部52を伸縮させることによって庇50全体の長さを変更し、アンテナ4の指向性を調整することができる。同時に、光学ユニット2に対する太陽光の入射を制限する機能も調整することができる。または、複数の設定部52を前後方向に並べた状態で連結することによって、設定部52のみからなる庇50を長さ変更可能に構成することもできる。
【0061】
さらに他の実施形態として、庇50の設定部52を可撓性を有する導電体シートとし、これを蛇腹構造によって伸縮可能に構成したり、巻取構造によって伸縮可能に構成したりすることも可能である。
さらに他の実施形態として、庇50の後部側(基端側)を導電体からなる設定部52により構成し、庇50の前部側(先端側)を非導電体からなる主庇部51により構成し、設定部52と主庇部51とを前後方向に並べて連結することによって庇50を構成することも可能である。
【0062】
〔アンテナ4の他の実施形態〕
以下、アンテナ4の他の実施形態について説明する。
図4に示す光学ユニット2において、パッチ素子11の後方でかつLED7の前端39よりも前方にグランド素子12を配置するように、構成を変更することができる。この場合、グランド素子12は、LED7の前方への投光を妨げないように可視光透過性を有する構成とされる。例えば、グランド素子12を、パッチ素子11と同様にメッシュ構造としたり枠構造としたりすることができる。また、グランド素子12を可視光透過性を有する薄膜導電体(薄膜金属)によって形成することもできる。
また、グランド素子12は、基板8の後方に配置することも可能である。この場合、パッチ素子11とグランド素子12との間隔をより取りやすくなる。
【0063】
図9に示すように、パッチ素子11は、LED7の前端39と基板8の前面8aとの間に配置することもできる。この場合、パッチ素子11には、LED7が挿通される孔(開口部)が設けられる。この開口部は、パッチ素子11を図5に示す如くメッシュ構造としたり、枠構造としたりすることによって形成することができる。図9の実施形態では、パッチ素子11及びグランド素子12がLED7の前端39よりも後方に設けられているため、パッチ素子11及びグランド素子12が、LED7の前方へ投光の妨げになることを防止することができる。さらに、パッチ素子11及びグランド素子12は基板8の前方に設けられていることから、基板8がアンテナ4による電波の送受信の妨げになるのを防止することができる。
【0064】
図10に示すように、アンテナ4は平衡型のアンテナとすることができる。このアンテナ4は、平衡二線で給電されるダイポールアンテナであり、アンテナ用基板76の後面に薄膜導電体としてパターン形成されている。アンテナ4は、ダイポール部26と、平衡給電線部27と、平衡給電線部を短絡する部分28とを有し、ダイポール部26は、左右一対のアンテナ素子26a,26bからなる。平衡給電線部27a,27bと部分28とは、ストリップ線路31のグランドを兼ねている。
【0065】
ストリップ線路31は、アンテナ用基板76の前面に薄膜導電体としてパターン形成されている。ストリップ線路31は、一方の給電線部27bの裏側に相当する位置で直線的に延びて形成され、ダイポール部26のアンテナ素子26a,26bの間でU字状に反転し、他方の給電線部27aの裏側に相当する位置で直線的に延びている。ストリップ線路31と平衡給電線部27と部分28とによってバルン(平衡不平衡変換部)が構成されている。
【0066】
ストリップ線路31には、同軸ケーブル15aの中心導体15bが接続されており、平衡給電線部27bには、同軸ケーブル15aの外導体15dが接続されている。アンテナ用基板76は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル等の可視光透過性を有する絶縁部材からなる。アンテナ4及びストリップ線路31は、LED7の前端よりも前方に配置されているので、これらも可視光透過性を有している。例えば、アンテナ4及びストリップ線路31はメッシュ構造としたり、それ自体を可視光透過性を有する薄膜導電体(薄膜金属)により構成したりすることができる。
【0067】
図11に示すように、アンテナ用基板76、ダイポール部26、平衡給電線部27a,27b、及びストリップ線路31は、前後方向に沿った面と平行に(基板8に対して略垂直に)配置することもできる。この場合、アンテナ用基板76、ダイポール部26、平衡給電線部27a,27b、及びストリップ線路31は、可視光透過性を有していなくても、LED7の前方への投光を妨げることはほとんどない。
【0068】
なお、図11に示す実施形態の平衡型のアンテナ4は、ダイポール部26と、一対の平衡給電線部27a,27bと、グランド素子12とを備えている。そして、図10に示すような「部分28」がアンテナ用基板76に形成されておらず、その代わりに一対の平衡給電線部27a,27bがグランド素子12に接続されている。ストリップ線路31には同軸ケーブル15aの内導体15bが接続され、グランド素子12には、同軸ケーブル15aの外導体15dが接続されている。
【0069】
グランド素子12は、図4に示したものと略同様の構成であるが、基板8に固定されるのではなく、反射防止部材(マスクパネル)10後面のボス部10fにビス66により取り付けられている。反射防止部材10は、太陽光が基板8によって反射されることにより信号灯器1が見づらくなることを防止するため、基板8全体を前方から覆うものである。反射防止部材10は、LED7の前端39よりも後側に配置された板状部10aを備え、板状部10aにはLED7を挿通させるための孔10bが形成されている。孔10bの周囲には、太陽光がLED7内の反射鏡(図示略)に入射するのを防止する庇部10hが形成されている。また、反射防止部材10には、アンテナ用基板76を挿通させるための開口部(スリット)67が形成されている。
【0070】
反射防止部材10後面のボス部10cには基板8がビス65によって固定されている。したがって、本実施形態では、基板8にアンテナ4が取り付けられるのではなく、反射防止部材10に基板8とアンテナ4とがそれぞれ個別に取り付けられている。そして、反射防止部材10が収納容器6の側壁6bに固定されることによって、アンテナ4及び基板8が、収納容器6内に配置されている。
したがって、基板8には、アンテナ4を取り付けるためのネジ穴等を形成しなくてもよく、当該ネジ穴を避けるために基板8の配線が複雑になったり、ネジ穴を避けるためのジャンパケーブルが必要になったりすることもなく、部品数や製造工程が増えたり、製造コストが増大することもない。もっとも、本実施形態において、反射防止部材10を省略し、収納容器6に基板8を固定するとともに基板8にグランド素子12を直接取り付けることも可能である。
【0071】
本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、信号灯器は車両用以外にも、歩行者用のものであってもよい。また、信号灯器が有する発光体はLED以外に電球であってもよい。また、この発明は、信号灯器以外に道路の照明用の照明灯器であってもよい。この場合、発光体として水銀灯やナトリウムランプがある。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施の形態に係る灯器の正面図である。
【図2】光学ユニット及びアンテナの斜視図である。
【図3】光学ユニット及びアンテナの正面図である。
【図4】光学ユニット及びアンテナの断面図である。
【図5】アンテナを内蔵している光学ユニットの斜視図である。
【図6】(a)は信号灯器の斜視図であり、(b)は庇の設定部の斜視図である。
【図7】庇の断面図である。
【図8】庇の他の実施形態を示す断面図である。
【図9】アンテナのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図10】アンテナのさらに他の実施形態を示す正面図である。
【図11】アンテナのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図12】主庇部のみからなる庇の水平面指向性と垂直面指向性を示すグラフである。
【図13】設定部を備えた庇の水平面指向性と垂直面指向性を示すグラフである。
【図14】設定部を備えた庇の水平面指向性と垂直面指向性とを示すグラフである。
【符号の説明】
【0073】
1 信号灯器(灯器)
2 光学ユニット
3 筐体
4 アンテナ
7 LED(発光体)
50 庇
51 主庇部
52 設定部
【技術分野】
【0001】
この発明は灯器、主として道路に設置される交通信号灯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が提案されている。このITSでは、道路に通信装置(インフラ装置)が設置されており、この通信装置のアンテナから発せられた情報を、道路を走行する車両の車載機が受信し、この情報を活用することにより、車両の走行についての安全性を向上させることができる(特許文献1参照)。
このような路車間通信を無線によって行う場合、無線通信の見通しを確保する観点から、歩道等に設置した支柱から車道側にアームを張り出し、このアーム上に通信装置のアンテナを取り付けている。また、前記アームを設けなくても見通しが確保できる場合、前記支柱にアンテナを取り付けることが可能となる。
【0003】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記通信装置のアンテナを道路に設置するために、アンテナ専用の支柱を新たに設けることは経済的でなく、また、道路の美観の点でも好ましくない。
そこで、道路には車両感知器や光ビーコンのヘッド等が設置されているため、これらを取り付けている支柱やアームにアンテナを併設することが考えられる。しかし、この場合においても、美観の点で好ましくない。
【0005】
そこで、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことのない新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の灯器は、発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットの周囲から前記発光体の投光方向へ延びる庇と、前記光学ユニットに組み込まれたアンテナと、を備え、前記庇が、前記アンテナの指向性を設定するための導電体からなる設定部を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、灯器の光学ユニットにアンテナが組み込まれているので、当該アンテナを目立たなくすることができるとともに、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。
また、灯器の庇が、アンテナの指向性を設定するための導電体からなる設定部を含むので、当該庇を利用してアンテナの指向性を設定することができる。光学ユニット内にアンテナを組み込む場合、光学ユニット内のスペースの制約によってアンテナの向きを自由に設定することが困難な場合があり、また、灯器とは別に、アンテナの指向性を設定するための構造を備えた場合、外観を損なったり大幅なコスト増を伴ったりするおそれがある。本発明では、灯器に備わった庇を利用することによってアンテナの指向性を設定しているので、これらの問題を解消することができる。
【0008】
前記庇は、非導電体からなる主庇部と、この主庇部に取り付けられる前記設定部とを有していることが好ましい。この構成によって、アンテナの指向性に影響を与えない非導電体からなる主庇部によって、庇としての本来の機能(太陽光を遮る機能)を担わせ、導電体からなる設定部によって、アンテナの指向性を設定することが可能となる。
【0009】
前記主庇部は、前記投光方向に関する長さの異なる複数種類の前記設定部を選択して取り付け可能に構成されていることが好ましい。これによって、アンテナの指向性を複数段階に調整することが可能である。
【0010】
前記主庇部は、複数の前記設定部を前記投光方向に並べた状態で取り付け可能に構成されていてもよい。これによって、主庇部に取り付ける設定部の数を変えることによって、アンテナの指向性を複数段階に調整することが可能である。
【0011】
前記設定部は、前記投光方向に関して伸縮可能に構成されていてもよい。これによって、アンテナ指向性を無段階又は複数段階に調整することが可能である。
【0012】
本発明の灯器は、発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットの周囲から前記発光体の投光方向へ延びる庇と、前記光学ユニットに組み込まれたアンテナと、を備え、前記庇は、前記アンテナの指向性を設定可能な導電体からなり、前記投光方向に関する長さが変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、アンテナが灯器の光学ユニットに組み込まれているので、当該アンテナを目立たなくすることができるとともに、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、灯器の庇が、アンテナの指向性を設定可能な導電体からなり、投光方向に関する長さが変更可能に構成されているので、庇全体の長さを変えることによってアンテナの指向性を調整することができる。
【0014】
本発明の交通信号灯器は、発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットの周囲から前記発光体の投光方向へ延びる庇と、前記光学ユニットに組み込まれたアンテナと、を備え、前記庇が、前記アンテナの指向性を設定するための導電体からなる設定部を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、アンテナが交通信号灯器の光学ユニットに組み込まれているので、当該アンテナを目立たなくすることができるとともに、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、交通信号灯器は、車両のドライバによる視認性を考慮して道路に設置される。このため、この信号灯器を道路の所定の位置に設置すれば、前記アンテナと車両の車載機との間で無線通信を行う上で、見通しが良好な状態が得られる。
【0016】
また、交通信号灯器の庇が、アンテナの指向性を設定する導電体からなる設定部を含むので、当該庇を利用してアンテナの指向性を設定することができる。光学ユニット内にアンテナを組み込む場合、光学ユニット内のスペースの制約によってアンテナの向きを自由に設定することが困難な場合があり、また、灯器とは別に、アンテナの指向性を設定するための構造を備えた場合、外観を損なったり大幅なコスト増を伴ったりするおそれがある。本発明では、交通信号灯器に備わった庇を利用することによってアンテナの指向性を設定しているので、これらの問題を解消することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、アンテナは灯器の光学ユニットに組み込まれるため、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る灯器の正面図である。図1の灯器は道路に設置される交通信号灯器1(以下、単に「信号灯器」という)であり、車両用のものである。
歩道等の路側には支柱40が設置され、この支柱40から車道側にアーム41が張り出されて設けられており、このアーム41に信号灯器1が取り付けられている。
【0019】
信号灯器1は、複数(図例では三つ)の光学ユニット2と、これら光学ユニット2を組み込んでいる筐体3とを有している。三つの光学ユニット2は、赤、黄、青の灯光色を有している。各筐体3の光学ユニット2の周囲には庇50が取り付けられている。
また、支柱40には、信号灯器1を制御する制御装置5が取り付けられている。なお、信号灯器1の設置構造は図示しているもの以外であってもよく、図示しないが前記支柱40及び前記アーム41の形態が異なっていてもよく、また、信号灯器1が歩道橋に架設されたものであってもよい。また、制御装置5は、信号灯器1の筐体3内に設けられたものであってもよい。
なお、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置5が、後述するアンテナ4を介した無線通信制御を行うように構成することができるが(あるいは無線通信制御を行う装置を同一筐体内に内蔵させることができるが)、別々の装置としても良い。別々とする場合、前記無線通信制御を行う装置は、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置の近傍(同一の支柱40)に設置することが好ましい。
【0020】
〔光学ユニット2の構成〕
図2、図3及び図4は、1つの光学ユニット2の斜視図、正面図及び断面図である。光学ユニット2は、発光体としての発光ダイオード7(以下LEDという)と、複数のLED7が前面8aに実装された基板8と、収容部材6と、カバー部材9とを有している。
【0021】
基板8は円形の板状に形成されている。基板8の裏面には配線パターンが形成されており、配線パターンはLED7の端子37と繋がっている。基板8上には複数のLED7が面状に広がって配設されている。LED7はレンズ部38を有し、このレンズ部38内にLED素子(図示略)が設けられている。
【0022】
収容部材6は、鋼板、アルミ又は合成樹脂材により形成され、底部(底壁)6aと、この底部6aの周縁から立設した側部(側壁)6bとを有している皿形状であり、前方に開口している。開口側である収容部材6の前部にカバー部材9が取り付けられている。これにより、収容部材6とカバー部材9との間に収容空間部Sが形成されており、この収容空間部SにLED7及び基板8が収容されている。そして、基板8は収容部材6に固定されている。収容空間部Sのうち、基板8よりも前方が前空間部S1とされ、基板8よりも後方が後空間部S2とされている。
【0023】
カバー部材9は、ガラス又は合成樹脂製のレンズで可視光透過性を有しており(可視光に対して透明であり)、複数のLED7を前方から覆っている。カバー部材9の後面(背面)9aは凹曲面であり、前面9bは凸曲面である。ただし、信号灯器1が本実施形態のようなLED灯器であれば、カバー部材9の後面9a及び前面9bは平面とすることもできる。なお、この光学ユニット2において、前方とは光の投光方向であり(カバー部材9側であり)、後方とは収容部材6の底部6a側である。
【0024】
〔アンテナ4の構成〕
図2〜図4に示すように、光学ユニット2には、アンテナ4が組み込まれている。アンテナ4はパッチアンテナであり、パッチ素子11とグランド素子12とを有している。すなわち、図4において、パッチ素子11とグランド素子12とが、前記光学ユニット2内に、つまり前記収容空間部Sに格納(収容)されている。
【0025】
パッチ素子11は、円形の平面状に形成されている。パッチ素子11は、基板8から前方へ立設した支持部材13によって支持されかつ固定されている。支持部材13は絶縁部材からなる。パッチ素子11は、カバー部材9からLED7の前端39までの範囲Aに設けられている。また、図4において、パッチ素子11はカバー部材9の後面9aから後方に離れて設けられている。なお、パッチ素子11の輪郭は円形以外の多角形(四角形等)であってもよい(図5参照)。
【0026】
グランド素子12は、円形の平面状(平板状)に形成されており、基板8の前面8a側で基板8に取り付けられている。例えば、グランド素子12は、収容部材6に基板8と共にネジによって共締めされる。またはグランド素子12は、基板8に立設された支持部材13によって支持されかつ固定されていてもよい。
グランド素子12の輪郭形状は、パッチ素子11の輪郭形状よりも大きくなっている。グランド素子12は、円形に限らず多角形(四角形等)でもよく、灯器内に収納できる形状であればどういうかたちであってもよい。
【0027】
図4に示すように、グランド素子12は、パッチ素子11の後方であって、前後方向について基板8とLED7の前端39との間に設けられている。グランド素子12には、LED7(LED7のリード線)を挿通させる開口部として複数の孔14が形成されている。この孔14の配置は、LED7の配置と一致させてあり、グランド素子12は網目構造となっている。つまり、ここでいう網目構造には、例えば練炭のように平板に孔がいくつか空けられた構造も含まれる。
【0028】
収容部材6(底部6a)には、アンテナ4用の同軸ケーブル15を接続させる端子部19が取り付けられており、この端子部19に、図1の制御装置5から延びる同軸ケーブル15を接続することができる。そして、この端子部19から後空間部S2へ延びる同軸ケーブル15aが、アンテナ4と接続されている。同軸ケーブル15aは、内導体15b、絶縁体15c、外導体15d及び被覆部15eを有しており、この同軸ケーブル15aの内導体15bがパッチ素子11に接続されており、外導体15dがグランド素子12に接続されている。基板8には、同軸ケーブル15aを貫通させる孔が形成されており、この孔によりグランド素子12やパッチ素子11への同軸ケーブル15aの接続を可能にしている。
【0029】
図1の制御装置5から延びるLED7用の電源ケーブル(図示せず)が、収容部材6の底部6aに取り付けた端子部(図示せず)を介して、LED用基板8と接続されている。
なお、内、外導体15b,15dと各素子11,12(各素子の導電体部分)とを半田によって接続し固定することができるが、半田以外の方法であってもよい。
【0030】
以上の構成により、グランド素子12とパッチ素子11とが、前空間部S1内に設けられ、パッチ素子11は、基板8の前面8aからLED7の前端39までの範囲Aに設けられ、グランド素子12はパッチ素子11の後方に設けられた状態となる。そして、グランド素子12とパッチ素子11とが、前後方向に対向した配置となり、このアンテナ4の指向性は信号灯器1から前方へ向かう方向となる。すなわち、光学ユニット2による投光方向と、アンテナ4の指向性とが略一致され、信号灯器1は車両に対して見通しが良い位置に設置されることから、このアンテナ4の指向性によって、車両の車載機(図示せず)との間で、良好な通信状態を得ることが可能となる。さらに、本実施形態では、アンテナ4の指向性は、庇50(図1参照)によっても所定に調整される。庇50の詳細な構成及びアンテナ4の指向性の調整については後述する。
【0031】
図5は、アンテナを内蔵した光学ユニットの斜視図である。なお、図5は、説明を容易とするためにLED7を省略して示してある。このアンテナ4のパッチ素子11は、輪郭形状が矩形状(正方形状)とされている。
LED7の前端39よりも前方にあるパッチ素子11は、このLED7の前方への投光を阻害しないように、パッチ素子11の厚さ方向(前後方向)に、可視光透過性を有している(可視光に対して透明である)。具体的に説明すると、パッチ素子11は、可視光透過用の開口を有する導電体からなる。つまり、図5に示しているように、パッチ素子11をメッシュ構造による導電体とすることにより、パッチ素子11は可視光透過性を有している。このように、パッチ素子11をメッシュ構造とするために、導線によって(導線を編んで)形成することができる。
【0032】
このパッチ素子11を、例えば、径(幅)が1mmである導線によってメッシュ構造とする場合、この導線のピッチ(メッシュの間隔)を所定の値として(例えば20mmとして)上下方向及び左右方向に編み、網目状金属素子とすることができる。このピッチが20mmである場合、そのピッチは約1/20波長となり、使用する周波数を約720MHz、波長を約420mmとすることができる。
また、パッチ素子11のメッシュ数(メッシュ粗さ)は変更自在であり、粗くすることができる。例えば、一面を四分割した網目状金属素子から構成したり、一面を二分割又は三分割した網目状金属素子から構成したりすることができる。また、パッチ素子11を輪郭部分(外形枠)のみからなる枠構造(フレーム構造)とすることもできる。
【0033】
メッシュの間隔は、特に限定されないが、1/5波長以下とするのが好ましく、特に1/10波長以下が好ましい。メッシュの間隔が小さい程高い周波数まで対応することができる。なお、導線の強度を確保するため、導線の径(幅)は0.5mm以上が好ましく、一方で光の透過率を高めるために、2mm以下とすることが好ましい。ただし、導線を樹脂板の上に蒸着させる方法などによって製造する場合には、強度について考慮する必要性が乏しいため、その導線の幅は0.5mm以下であっても良い。
【0034】
また、パッチ素子11をメッシュ構造乃至外形枠構造とする場合、前記のような導線を利用する以外に、板部材の表面に金属膜(金属薄膜)による網目を形成してもよい。この場合、図4の二点鎖線で示しているように、可視光透過性のある板部材16が、カバー部材9とLED7の前端39との間に設けられており、この板部材16の表面又は裏面(図例では表面)にメッシュ構造乃至外形枠構造であるパッチ素子11を形成してもよい。そして、この板部材16が前記支持部材13に取り付けられている。
【0035】
板部材16としては、例えば透明の樹脂板とすることができる。板部材16は可視光を充分に透過する材料であるのが好ましく、例えば、ポリカードネート、アクリル、ポリエチレンテレフタラート、ガラスなどによれば薄くても強度の面で優れ、また、安価で好ましい。
板部材16を利用する場合の具体例としては、板部材16の面に、例えば線幅10μmであってピッチ(メッシュの間隔)を100μmとする導線部からなる微細なメッシュを形成すればよい。このように板部材16に微細なメッシュを形成する場合、線幅が1μm以上で50μm以下であり、ピッチが50μm以上で1000μm以下とするのが好ましい。
なお、メッシュ形状は、図示したような四角形状に限らず、三角形状、ハニカム形状とすることができ、また、全体として放射形状(蜘蛛の巣形状)等とすることができる。
【0036】
また、パッチ素子11が可視光透過性を有しているものとするために、パッチ素子11を可視光透過性を有する薄膜導電体(薄膜金属)から形成することができる。そして、この薄膜導電体を前記板部材16に形成することでパッチ素子11を薄く、所定の形状に形成することができる。この場合、薄膜導電体の厚さを1μm以上であり100μm以下とするのが好ましく、これにより、可視光透過性を有するものとなる。
【0037】
パッチ素子11を板部材16に形成する方法として、以下のものがある。パッチ素子11を単独で形成し、これを板部材16に貼り付ける。この場合、パッチ素子11を板部材16に粘着部材(粘着テープ)によって接着する。または、板部材16に対して金属蒸着を行なうことでパッチ素子11を形成してもよい。または、板部材16に対して印刷によってパッチ素子11を形成してもよい。または、板部材16に対して金属メッキを施してパッチ素子11を形成してもよい。
また、パッチ素子11は、金属等の導電体からなる板材にプレスによる打ち抜き加工を行ったり、孔あけ加工を行ったりすることによってメッシュ構造とすることもできる。
【0038】
アンテナ4が格納された信号灯器1を、路車間で無線通信を行う高度道路交通システム(ITS)に利用するために、使用周波数を715MHz〜725MHzと設定する場合、グランド素子12とパッチ素子11との前後方向の間隔を10〜40mmに設定することができる。なお、これはグランド素子12とパッチ素子11との間に、空気が介在している場合である。
【0039】
なお、グランド素子12とパッチ素子11との前後方向の間隔は、パッチ素子11の外周の直径が170mm〜230mm程度で、孔の大きさが10mm〜25mm程度である場合には、20〜30mm程度が好ましい。また、孔の大きさが25〜35mm程度であれば、10〜25mm程度が好ましい。すなわち、パッチ素子11の表面の面積が小さいほどグランド素子12との前後方向の間隔は狭くする方が良く、表面積が大きいほどグランド素子12との間隔を広げると良い。なお、孔の大きさはそれぞれ異なる大きさであってもよい。
【0040】
また、図4の実施形態では、基板8の前面8aからLED7の前端39までの距離が小さくても、パッチ素子11をこの前端39よりも前方に配置することができるため、グランド素子12とパッチ素子11との前後方向の間隔を所望の値に設定しやすい。また、グランド素子12は、LED7の前端39よりも後方に配置されているので、パッチ素子11との間隔を取り易い構造となっている。
【0041】
グランド素子12とパッチ素子11との間が空気のみによって絶縁されている場合、両者の間隔は20〜30mm程度であるが、グランド素子12とパッチ素子11との間に、絶縁部材としての樹脂板が設けられている場合、両者間の誘電率が変化するため両者の間隔を前記値よりも小さくすることも可能である。この絶縁部材としては、例えば、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、フッ素樹脂板、ガラスエポキシ、FRP又はポリアセタール板がある。
【0042】
また、グランド素子12とLED7とは前後方向の位置について重複しているが、グランド素子12には、LED7(LED7のリード線)を挿通させる開口部として複数の孔14が形成されているので、グランド素子12がLED7に干渉することがないように、グランド素子12の孔14にLED7を挿し入れ、グランド素子12を所定の位置に設置することができる。そして、この形態によれば、グランド素子12はLED7の前端39よりも後方となるため、グランド素子12がLED7による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
【0043】
なお、グランド素子12に形成している前記開口部の構成としては、図示しているように、グランド素子12に孔14をあけて素子と干渉しないようにLED7を配置するに限らず、図示しないが、孔14を設けずに、例えばグランド素子12の導電体部分(導体部分)を蛇行状に配置して(導電体部分を一筆書きになるように配置して)、グランド素子12と干渉しないようにLED7を配置することもできる。
【0044】
アンテナ4は、信号灯器1の光学ユニット2に組み込まれているので、アンテナ4を目立たなくして信号灯器1に設置することができ、道路の美観を損なうことがない。そして、アンテナ4は、信号灯器1の光学ユニット2に組み込まれているので、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、パッチ素子11はLED7の前端39よりも前方に設けられているが、パッチ素子11は可視光透過性を有しているため、LED7による前方への発光(灯光)の妨げになることを防止することができる。
さらに、アンテナ4が露出した状態(突出した状態)にないため、信号灯器1を取り付けるための支柱40及びアーム41(図1)の設計において、アンテナ4が受ける風荷重を追加的に考慮する必要がない。また、アンテナ4に対する防錆、防塵についても追加的に考慮する必要がない。
【0045】
グランド素子12は金属板から形成されている。そして、パッチ素子11及びグランド素子12の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミが好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属とすることもできる。また、高周波は表面に電流が流れることから、板部材16に金属蒸着したものや、金属メッキ(金や銀のメッキ)を施したものでもよい(図示せず)。
【0046】
また、グランド素子12とパッチ素子11とは平行に配置されていてもよいが、アンテナ4の指向性を調整するために、パッチ素子11及びグランド素子12の一方又は双方が、基板8に対して傾いて配置されていてもよい。
なお、信号灯器1はドライバへの視認性に鑑みて、通常、基板8自体を少し下方に傾けて設置してある。そのため、パッチ素子11及びグランド素子12を基板8に平行に取り付けることによって、アンテナ4の指向性も下方に向くが、路車間での無線通信領域を限定的としたり確実性を増したりすることを目的として、基板8よりもさらに下方に傾けるようにしても良い。
ただし、光学ユニット2内の収容空間部Sには限りがあるため、パッチ素子11及びグランド素子12を下方に傾けることによって、アンテナ4の指向性を下方に傾けるにも限界が生じる。そのため、本実施形態では、信号灯器1の設置場所等に応じて所望の指向性が得られるように、庇50によってアンテナ4の指向性を調整している。以下、この詳細について説明する。
【0047】
〔庇50の構成〕
図6(a)に示すように、筐体3の前面開口部3aの周囲には、前方に立ち上がる取付部3bが形成され、この取付部3bに庇50がネジ等によって取り付けられている。庇50は、光学ユニット2の略上半分の範囲を覆うように正面視で円弧状に形成され、筐体3から前方に延伸している。
庇50は、非導電体(絶縁体)からなる主庇部51と、この主庇部51に取り付けられる導電体からなる設定部52とを備えている。主庇部51は、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン等の合成樹脂材や、エポキシ樹脂・ポリエステル樹脂等をガラスや炭素などの強化繊維で強化したFRP等によって形成され、光学ユニット2に対する太陽光の入射を制限するための主たる庇として機能する。設定部52は、アルミニウムや鉄などの金属によって形成され、主としてアンテナ4の指向性を設定するために機能する。すなわち、設定部52は、アンテナ4から放射される電波を反射させることによって、アンテナ4の指向性を下方へ傾けるために用いられる。
【0048】
主庇部51の前後方向の長さは、所定の規格に応じた長さ、例えば340mm以上とされている。設定部52の前後方向の長さL1は主庇部51よりも短く、例えば180mmとされている。設定部52は、主庇部51の内面(下面)に沿うように設けられている。なお、設定部52は、主庇部51の外面(上面)に沿うように設けられていてもよく、この場合もアンテナ4の指向性を設定する機能に関して同等の性能を発揮する。
【0049】
主庇部51は、前後方向の長さが異なる複数種類の設定部52を選択して取り付けることができるように構成されている。図6(a)に示す設定部52は、前後方向の長さがL1とされ、図6(b)に示す他の設定部52’は、前後方向の長さがL1よりも長いL2とされている。図7は、主庇部51に長さL1の設定部52を取り付けた状態を示しており、主庇部51と設定部52とには貫通孔51a、52aが形成され、各貫通孔51a,52aに挿通したネジ53にナット54を締結することによって、設定部52が主庇部51に取り付けられている。
【0050】
この設定部52は、1列に配置された貫通孔52aを備えているが、図6(b)に示す設定部52’は、2列に配置された貫通孔52a,52bを備えている。主庇部51には、長さL1の設定部52に代えて長さL2の設定部52’を取り付けることができるように、2列の孔51a,51b(図7参照)が形成されている。
このように長さL1,L2の異なる設定部52,52’のいずれかを選択して取り付けることによって、アンテナ4の指向性を調整することが可能である。具体的には、設定部52の長さを長くするほどアンテナ4の指向性をより下方に向けることができ、設定部52の長さを短くするほどアンテナ4の指向性を水平に近づけることができる。
【0051】
アンテナ4の指向性は、信号灯器1の設置場所に応じて調整することができる。例えば坂道において、上りの自動車に対して設置される信号灯器1の場合、坂を上ってくる自動車との通信を可能にするため、より長い設定部52’を用いることによってアンテナ4の指向性を下げることができる。また、都市部など信号灯器1の設置間隔が狭い状況下において、あるアンテナ4から放射された電波が、他のアンテナ4の電波放射領域に届かないようにしたい場合も、より長い設定部52’を用いることによってアンテナ4の指向性を下げ、電波の到達距離を短くすることができる。逆に、信号灯器1の設置間隔が広く、アンテナ4の電波をより遠くに飛ばしたい場合には、より短い設定部52を用いることによってアンテナ4の指向性をより高く(水平に近く)することができる。
【0052】
主庇部51は、アンテナ4の指向性の調整度合いに応じて、長さの異なる3種類以上の設定部52を選択して取り付けることができるように構成されていてもよい。
また、主庇部51は、図7に示すように、長さL1の設定部52に加え、長さL3の設定部を前側に並べて取り付けることができるように構成されていてもよい。つまり、主庇部51は、複数の設定部52を前後方向に並べて取り付け可能に構成され、主庇部51に取り付けた設定部52の数によって設定部52全体の長さが変更可能に構成されていてもよい。
【0053】
本願出願人は、庇50の設定部52がアンテナ4の指向性に与える影響を検証するためにシミュレーションを行った。その結果を図12〜図14に示す。なお、シミュレーションのモデルは、光学ユニット2として図2〜4に示す構造のものを用い、アンテナ4のパッチ素子11として図5に示すメッシュ構造のものを用いた。ただし、基板8はLED7が設けられていないものとし、グランド素子12は孔14が形成されていないものとした。LED7及び孔14を省くことによるアンテナ4の指向性への影響は少なく、得られる結果は同等である。
【0054】
図12は、設定部52を備えていない庇50、すなわち、主庇部51のみからなる庇50の水平面指向性と垂直面指向性とを示すグラフである。主庇部51の材質はPC(ポリカーボネート)としている。
図12(a)に示すように、アンテナ4の水平面指向性(左右方向の指向性)は、水平角度0°で最大点となり、ゲインは約9.3dBiである。最大点からゲインが3dBi低下する点(2)−(3)の範囲(ビーム幅)は約60°である。また、図12(b)に示すように、アンテナ4の垂直面指向性(上下方向の指向性)は、垂直角度0°で最大点となり、ゲインは約9.3dBiである。最大点からゲインが3dBi低下する点(2)−(3)の範囲(ビーム幅)は約60°である。
図12に示す結果から、庇50が非導電体の主庇部51のみからなる場合は、アンテナ4の指向性は下方へ傾くことなく前方へ向けられる。したがって、主庇部51は、アンテナ4の指向性にほとんど影響を与えないことが解る。
【0055】
図13は、前後方向の長さが短い設定部52(長さL=180mm)を用いた場合の水平面指向性と垂直面指向性とを示すグラフである。設定部52の材質はアルミニウムとしている。
図13(a)に示すように、アンテナ4の水平面指向性は、水平角度0°で最大点となり、ゲインは約7dBiである。最大点からゲインが3dBi低下する点(2)−(3)の範囲は約80°である。したがって、図12(a)に示す結果と比較して、水平方向の指向性に変化はなく、ビーム幅がやや拡がっている。
【0056】
図13(b)に示すように、アンテナ4の垂直面指向性は、垂直角度約−26°で最大点となり、ゲインは約7dBiである。最大点からゲインが3dBi低下する点(2)−(3)の範囲は、約80°である。したがって、図12(b)の結果と比較して、アンテナ4の垂直面指向性が約26°下方へ傾けられ、ビーム幅がやや拡がっていることが解る。
【0057】
図14は、前後方向の長さが長い設定部52(長さL=340mm)を用いた場合の水平面指向性と垂直面指向性とを示すグラフである。設定部52の材質はアルミニウムとしている。
図14(a)に示すように、アンテナ4の水平面指向性は、水平角度0°で最大点となり、ゲインは約8.2dBiである。最大点からゲインが3dBi低下する点(2)−(3)の範囲は約67°である。したがって、図12(a)に示す結果と比較して、水平面指向性に変化はなく、ビーム幅もさほど変化はない。
【0058】
図14(b)に示すように、アンテナ4の垂直面指向性は、垂直角度約−40°で最大点となり、ゲインは約8.2dBiである。最大点からゲインが3dBi低下する点(2)−(3)の範囲は、約52°である。したがって、図12(b)の結果と比較して、アンテナ4の垂直面指向性が約40°下方へ傾けられ、ビーム幅がやや狭くなっていることが解る。
図12〜図14の結果から、設定部52が長いほど、アンテナ4の垂直面指向性が下方へ傾き、設定部52が短いほど、アンテナの垂直面指向性が上方へ向けられる(水平に近づく)ことが確認された。
【0059】
〔庇50の他の実施形態〕
庇50の設定部52は、図8に示すように、それ自体が長さ変更可能(伸縮可能)に構成されていてもよい。この設定部52は、前後方向に複数の分割体521,522,523,524から構成され、これら分割体521〜524が所謂テレスコピック構造を呈するように連結されている。そして、これら分割体521〜524を前後方向に伸張した状態と、各分割体521〜524を互いに重ね合わせるように収縮した状態との間で設定部52の長さが変更可能とされている。主庇部51には、前後方向に延びるスリット51cが形成され、前端の分割体521の上面にはスリット51cを貫通するネジ55が突設され、このネジ55にナット56が締結されている。したがって、ナット56を緩めると共に、スリット51c内でネジ55を前後に移動させることで、設定部52の長さを変更することができる。なお、図8の例では、設定部52を最も収縮した状態で、設定部52は少なくとも後端の分割体524の長さを有することになるが、当該分割体524を筐体3内に内蔵することによって、最も収縮したときの設定部52が筐体3から突出しないように構成することも可能である。
【0060】
さらに他の実施形態として、庇50は、長さ変更可能な設定部52のみからなる構成、すなわち、庇50全体を導電体により形成して長さ変更可能に構成することもできる。例えば、図8において、非導電体の主庇部51を省略し、伸縮可能な設定部52のみを独立した庇50として筐体3に取り付ける。そして、設定部52を伸縮させることによって庇50全体の長さを変更し、アンテナ4の指向性を調整することができる。同時に、光学ユニット2に対する太陽光の入射を制限する機能も調整することができる。または、複数の設定部52を前後方向に並べた状態で連結することによって、設定部52のみからなる庇50を長さ変更可能に構成することもできる。
【0061】
さらに他の実施形態として、庇50の設定部52を可撓性を有する導電体シートとし、これを蛇腹構造によって伸縮可能に構成したり、巻取構造によって伸縮可能に構成したりすることも可能である。
さらに他の実施形態として、庇50の後部側(基端側)を導電体からなる設定部52により構成し、庇50の前部側(先端側)を非導電体からなる主庇部51により構成し、設定部52と主庇部51とを前後方向に並べて連結することによって庇50を構成することも可能である。
【0062】
〔アンテナ4の他の実施形態〕
以下、アンテナ4の他の実施形態について説明する。
図4に示す光学ユニット2において、パッチ素子11の後方でかつLED7の前端39よりも前方にグランド素子12を配置するように、構成を変更することができる。この場合、グランド素子12は、LED7の前方への投光を妨げないように可視光透過性を有する構成とされる。例えば、グランド素子12を、パッチ素子11と同様にメッシュ構造としたり枠構造としたりすることができる。また、グランド素子12を可視光透過性を有する薄膜導電体(薄膜金属)によって形成することもできる。
また、グランド素子12は、基板8の後方に配置することも可能である。この場合、パッチ素子11とグランド素子12との間隔をより取りやすくなる。
【0063】
図9に示すように、パッチ素子11は、LED7の前端39と基板8の前面8aとの間に配置することもできる。この場合、パッチ素子11には、LED7が挿通される孔(開口部)が設けられる。この開口部は、パッチ素子11を図5に示す如くメッシュ構造としたり、枠構造としたりすることによって形成することができる。図9の実施形態では、パッチ素子11及びグランド素子12がLED7の前端39よりも後方に設けられているため、パッチ素子11及びグランド素子12が、LED7の前方へ投光の妨げになることを防止することができる。さらに、パッチ素子11及びグランド素子12は基板8の前方に設けられていることから、基板8がアンテナ4による電波の送受信の妨げになるのを防止することができる。
【0064】
図10に示すように、アンテナ4は平衡型のアンテナとすることができる。このアンテナ4は、平衡二線で給電されるダイポールアンテナであり、アンテナ用基板76の後面に薄膜導電体としてパターン形成されている。アンテナ4は、ダイポール部26と、平衡給電線部27と、平衡給電線部を短絡する部分28とを有し、ダイポール部26は、左右一対のアンテナ素子26a,26bからなる。平衡給電線部27a,27bと部分28とは、ストリップ線路31のグランドを兼ねている。
【0065】
ストリップ線路31は、アンテナ用基板76の前面に薄膜導電体としてパターン形成されている。ストリップ線路31は、一方の給電線部27bの裏側に相当する位置で直線的に延びて形成され、ダイポール部26のアンテナ素子26a,26bの間でU字状に反転し、他方の給電線部27aの裏側に相当する位置で直線的に延びている。ストリップ線路31と平衡給電線部27と部分28とによってバルン(平衡不平衡変換部)が構成されている。
【0066】
ストリップ線路31には、同軸ケーブル15aの中心導体15bが接続されており、平衡給電線部27bには、同軸ケーブル15aの外導体15dが接続されている。アンテナ用基板76は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル等の可視光透過性を有する絶縁部材からなる。アンテナ4及びストリップ線路31は、LED7の前端よりも前方に配置されているので、これらも可視光透過性を有している。例えば、アンテナ4及びストリップ線路31はメッシュ構造としたり、それ自体を可視光透過性を有する薄膜導電体(薄膜金属)により構成したりすることができる。
【0067】
図11に示すように、アンテナ用基板76、ダイポール部26、平衡給電線部27a,27b、及びストリップ線路31は、前後方向に沿った面と平行に(基板8に対して略垂直に)配置することもできる。この場合、アンテナ用基板76、ダイポール部26、平衡給電線部27a,27b、及びストリップ線路31は、可視光透過性を有していなくても、LED7の前方への投光を妨げることはほとんどない。
【0068】
なお、図11に示す実施形態の平衡型のアンテナ4は、ダイポール部26と、一対の平衡給電線部27a,27bと、グランド素子12とを備えている。そして、図10に示すような「部分28」がアンテナ用基板76に形成されておらず、その代わりに一対の平衡給電線部27a,27bがグランド素子12に接続されている。ストリップ線路31には同軸ケーブル15aの内導体15bが接続され、グランド素子12には、同軸ケーブル15aの外導体15dが接続されている。
【0069】
グランド素子12は、図4に示したものと略同様の構成であるが、基板8に固定されるのではなく、反射防止部材(マスクパネル)10後面のボス部10fにビス66により取り付けられている。反射防止部材10は、太陽光が基板8によって反射されることにより信号灯器1が見づらくなることを防止するため、基板8全体を前方から覆うものである。反射防止部材10は、LED7の前端39よりも後側に配置された板状部10aを備え、板状部10aにはLED7を挿通させるための孔10bが形成されている。孔10bの周囲には、太陽光がLED7内の反射鏡(図示略)に入射するのを防止する庇部10hが形成されている。また、反射防止部材10には、アンテナ用基板76を挿通させるための開口部(スリット)67が形成されている。
【0070】
反射防止部材10後面のボス部10cには基板8がビス65によって固定されている。したがって、本実施形態では、基板8にアンテナ4が取り付けられるのではなく、反射防止部材10に基板8とアンテナ4とがそれぞれ個別に取り付けられている。そして、反射防止部材10が収納容器6の側壁6bに固定されることによって、アンテナ4及び基板8が、収納容器6内に配置されている。
したがって、基板8には、アンテナ4を取り付けるためのネジ穴等を形成しなくてもよく、当該ネジ穴を避けるために基板8の配線が複雑になったり、ネジ穴を避けるためのジャンパケーブルが必要になったりすることもなく、部品数や製造工程が増えたり、製造コストが増大することもない。もっとも、本実施形態において、反射防止部材10を省略し、収納容器6に基板8を固定するとともに基板8にグランド素子12を直接取り付けることも可能である。
【0071】
本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、信号灯器は車両用以外にも、歩行者用のものであってもよい。また、信号灯器が有する発光体はLED以外に電球であってもよい。また、この発明は、信号灯器以外に道路の照明用の照明灯器であってもよい。この場合、発光体として水銀灯やナトリウムランプがある。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施の形態に係る灯器の正面図である。
【図2】光学ユニット及びアンテナの斜視図である。
【図3】光学ユニット及びアンテナの正面図である。
【図4】光学ユニット及びアンテナの断面図である。
【図5】アンテナを内蔵している光学ユニットの斜視図である。
【図6】(a)は信号灯器の斜視図であり、(b)は庇の設定部の斜視図である。
【図7】庇の断面図である。
【図8】庇の他の実施形態を示す断面図である。
【図9】アンテナのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図10】アンテナのさらに他の実施形態を示す正面図である。
【図11】アンテナのさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図12】主庇部のみからなる庇の水平面指向性と垂直面指向性を示すグラフである。
【図13】設定部を備えた庇の水平面指向性と垂直面指向性を示すグラフである。
【図14】設定部を備えた庇の水平面指向性と垂直面指向性とを示すグラフである。
【符号の説明】
【0073】
1 信号灯器(灯器)
2 光学ユニット
3 筐体
4 アンテナ
7 LED(発光体)
50 庇
51 主庇部
52 設定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体を有する光学ユニットと、
前記光学ユニットの周囲から前記発光体の投光方向へ延びる庇と、
前記光学ユニットに組み込まれたアンテナと、を備え、
前記庇が、前記アンテナの指向性を設定するための導電体からなる設定部を含むことを特徴とする灯器。
【請求項2】
前記庇が、非導電体からなる主庇部と、この主庇部に取り付けられる前記設定部とを有している請求項1に記載の灯器。
【請求項3】
前記主庇部は、前記投光方向に関する長さが異なる複数種類の前記設定部を選択して取り付け可能に構成されている請求項2に記載の灯器。
【請求項4】
前記主庇部は、複数の前記設定部を前記投光方向に並べた状態で取り付け可能に構成されている請求項2に記載の灯器。
【請求項5】
前記設定部は、前記投光方向に関して伸縮可能に形成されている請求項2に記載の灯器。
【請求項6】
発光体を有する光学ユニットと、
前記光学ユニットの周囲から前記発光体の投光方向へ延びる庇と、
前記光学ユニットに組み込まれたアンテナと、を備え、
前記庇が、前記アンテナの指向性を設定可能な導電体からなり、かつ、前記投光方向に関する長さが変更可能に構成されていることを特徴とする灯器。
【請求項7】
発光体を有する光学ユニットと、
前記光学ユニットの周囲から前記発光体の投光方向へ延びる庇と、
前記光学ユニットに組み込まれたアンテナと、を備え、
前記庇が、前記アンテナの指向性を設定するための導電体からなる設定部を含むことを特徴とする交通信号灯器。
【請求項1】
発光体を有する光学ユニットと、
前記光学ユニットの周囲から前記発光体の投光方向へ延びる庇と、
前記光学ユニットに組み込まれたアンテナと、を備え、
前記庇が、前記アンテナの指向性を設定するための導電体からなる設定部を含むことを特徴とする灯器。
【請求項2】
前記庇が、非導電体からなる主庇部と、この主庇部に取り付けられる前記設定部とを有している請求項1に記載の灯器。
【請求項3】
前記主庇部は、前記投光方向に関する長さが異なる複数種類の前記設定部を選択して取り付け可能に構成されている請求項2に記載の灯器。
【請求項4】
前記主庇部は、複数の前記設定部を前記投光方向に並べた状態で取り付け可能に構成されている請求項2に記載の灯器。
【請求項5】
前記設定部は、前記投光方向に関して伸縮可能に形成されている請求項2に記載の灯器。
【請求項6】
発光体を有する光学ユニットと、
前記光学ユニットの周囲から前記発光体の投光方向へ延びる庇と、
前記光学ユニットに組み込まれたアンテナと、を備え、
前記庇が、前記アンテナの指向性を設定可能な導電体からなり、かつ、前記投光方向に関する長さが変更可能に構成されていることを特徴とする灯器。
【請求項7】
発光体を有する光学ユニットと、
前記光学ユニットの周囲から前記発光体の投光方向へ延びる庇と、
前記光学ユニットに組み込まれたアンテナと、を備え、
前記庇が、前記アンテナの指向性を設定するための導電体からなる設定部を含むことを特徴とする交通信号灯器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−217659(P2009−217659A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62012(P2008−62012)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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