説明

灯火器の取付構造

【課題】灯火器を車体カバーに対して一層安定して取り付けることができる灯火器の取付構造を提供する。
【解決手段】灯火器の取付構造10は、ウインカバルブ93が装着されるウインカ25と、少なくとも車体の一部を覆うと共に、ウインカ25の周囲を覆う複数の車体カバーであるレッグシールド66及びレッグサイドカバー67と、ウインカ25に複数設けられ、ウインカ25を前記レッグシールド66に対して取り付けるための締結部である締結座94、96及び締結ボス部98とを備えて構成されており、ウインカ25は、レッグシールド66及びレッグサイドカバー67の合わせ面に渡って設けられると共に、締結座94、96及び締結ボス部98は、面形状の大きいレッグシールド66側に全て設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体カバーに対して灯火器を取り付ける灯火器の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動二輪車等の鞍乗り型車両において、ウインカ等の灯火器を車体カバーに取り付ける構造が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ハンドルパイプを覆うハンドルカバーの前面両側にウインカを組み込んだ二輪車等の車両において、ハンドルカバーに設けた凹部にウインカを固定する構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭62−30847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように車体カバーに対してウインカ等の灯火器を取り付ける構造の場合においても、当然ながらより安定した状態で灯火器が固定されることが望まれる。さらに、例えば、灯火器が複数の車体カバーの合わせ面に配置される場合には、カバー側の形状等を考慮しながら灯火器をより安定して固定することが望まれる。
【0006】
本発明はこのような従来技術に関連してなされたものであり、灯火器を車体カバーに対して安定して取り付けることができる灯火器の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の灯火器の取付構造は、灯火バルブが装着される灯火器と、少なくとも車体の一部を覆うと共に、前記灯火器の周囲を覆う複数の車体カバーと、前記灯火器に複数設けられ、前記灯火器を前記車体カバーに対して取り付けるための締結部とを備える灯火器の取付構造であって、前記灯火器は、前記複数の車体カバーの合わせ面に渡って設けられると共に、前記複数の締結部は、前記複数の車体カバーのうち、面形状の大きい車体カバー側に全て設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の灯火器の取付構造において、前記車体カバーは、車体前部のヘッドパイプを前方から覆うフロントカバー部材と、該フロントカバー部材の側方に設けられるレッグサイドカバーとから構成され、前記締結部は、前記フロントカバー部材に設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の灯火器の取付構造において、前記フロントカバー部材は、その両側の前記レッグサイドカバー側に前記灯火器を収納する切欠部を備えると共に、該切欠部に前記灯火器としてのフロントウインカが配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の灯火器の取付構造において、前記締結部は、前記フロントカバー部材の車体中心側と、前記切欠部を上下方向に延在する橋渡し部に各々設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の灯火器の取付構造は、請求項4記載の灯火器の取付構造において、前記橋渡し部は、前記フロントカバー部材の背面部に設けられ、前記灯火バルブの側部に該灯火バルブの抜き差しを確保するバルブ回避部が形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項2記載の灯火器の取付構造において、前記複数の車体カバーは、樹脂材にて型成形され、前記フロントカバー部材の型抜き方向と、前記レッグサイドカバーの型抜き方向が、当該2つの車体カバーが車体に組みつけられた際に、異なるように成形されることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項4記載の灯火器の取付構造において、前記橋渡し部には、該橋渡し部が設けられる前記車体カバーの奥に向かう湾曲部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、複数の車体カバーの合わせ面に渡って設けられる灯火器を締結するための締結部を、面形状の大きい車体カバー側に全て設けるように構成する。これにより、当該灯火器を剛性の大きい部材に取り付けられるため、安定した取り付けが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、締結部がフロントカバー部材に設けられるように構成することにより、灯火器をより面形状の大きな車体カバーに安定して取り付けることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、フロントカバー部材の両側に形成した切欠部にフロントウインカを配置することにより、当該フロントウインカを外観よく且つ安定して取り付けることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、前記締結部がフロントカバー部材の車体中心側と、前記切欠部を上下方向に延在する橋渡し部に各々設けられることにより、灯火器の締結位置がバランスよく配置されるため、その安定性が一層向上する。しかも、前記切欠部が橋渡し部によって補強され、その剛性が向上されるため、灯火器の安定性が一層高くなる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、前記橋渡し部は、前記フロントカバー部材の背面部に設けられ、前記灯火バルブの側部に該灯火バルブの抜き差しを確保するバルブ回避部が形成されていると、前記橋渡し部を設けていても、灯火バルブの交換等のメンテナンス性を確保することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、前記複数の車体カバーは、樹脂材にて型成形され、前記フロントカバー部材の型抜き方向と、前記レッグサイドカバーの型抜き方向が、当該2つの車体カバーが車体に組みつけられた際に、異なるように成形されていると、その型抜き成形時に締結ボスを形成し易い前記フロントカバー部材に締結部を設けることから、当該車体カバーの製造効率も向上させることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、前記橋渡し部には、該橋渡し部が設けられる前記車体カバーの奥に向かう湾曲部が設けられていると、例えば、背面形状が膨出した立体的な形状からなる灯火器であっても容易に且つ安定して取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る灯火器の取付構造が組み込まれた鞍乗り型車両である自動二輪車の側面図である。
【図2】図1に示す自動二輪車の正面図である。
【図3】車体右側のウインカ及びその周辺部を拡大した一部省略斜視図である。
【図4】図3に示すウインカ及びその周辺部の背面側を示す一部省略斜視図である。
【図5】図4に示すレッグシールドからウインカ及びレッグサイドカバーを取り外した状態を示す一部省略斜視図である。
【図6】ウインカが締結された状態でのレッグシールドを示す一部省略背面図である。
【図7】ウインカの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る灯火器の取付構造について、この構造を適用した鞍乗り型車両である自動二輪車との関係で実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る灯火器の取付構造10(以下、「取付構造10」ともいう)が組み込まれた鞍乗り型車両である自動二輪車12の側面図であり、図2は、図1に示す自動二輪車12の正面図である。本実施形態では、自動二輪車12への適用例により本発明を説明するが、本発明はこれに限られるものではなく、各種の鞍乗り型車両等(オンロード型、オフロード型や自動四輪車等を含み、さらにスクータ型等も含む)に適用可能である。なお、理解を容易にするため、各図面において、着座した運転者から見た方向に従って、車体の左を示す矢印に「L」、車体の右を示す矢印に「R」を付すと共に、車体の前方を示す矢印に「Fr」、車体の後方を示す矢印に「Rr」を付して説明する。
【0024】
図1及び図2に示すように、自動二輪車12は、車体フレーム14と、操舵輪である前輪16と、駆動輪である後輪18と、前輪16を操舵するハンドル20と、乗員が着座するシート22と、エンジン24とを備え、車体フレーム14に取り付けられ、車両前方両側から運転者の脚部までを覆う左右レッグシールド(車体カバー)66の上部に左右一対のウインカ(灯火器、フロントウインカ)25が取り付けられている。
【0025】
車体フレーム14の前端部に固着されたヘッドパイプ26には、前輪16を軸支する左右一対のフロントフォーク32がステアリングステム34を介して枢支される。ハンドル20は、ステアリングステム34の上部に一体的に設けられたハンドルパイプ28に取り付けられ、これにより前輪16を操向可能である。車体フレーム14の下部後方側に位置する左右ピボットフレーム36には、後輪18を軸支するスイングアーム37が上下方向に揺動可能に枢支される。ハンドル20とシート22との間は、側面視で谷状に車高が低く、運転者が跨ぎ易いように構成されている。
【0026】
車体フレーム14は、例えば、複数種の鋼材を溶接等により一体に接合して構成されている。車体フレーム14は、前端部に位置する前記ヘッドパイプ26と、ヘッドパイプ26から車体後方に向かって斜め下方へと延びたメインフレーム38と、メインフレーム38の後部から下方へと延びた前記ピボットフレーム36と、メインフレーム38の後端部から斜め上方に延びると共に屈曲した左右リヤフレーム40と、左右リヤフレーム40及びメインフレーム38の間に架橋された左右ガセットパイプ42とを有する。
【0027】
メインフレーム38の前後中間部には、側面視で三角形状の左右エンジンハンガ44が垂下されている。前記エンジン24は、クランクケース46の後端部上下側が左右ピボットフレーム36に支持されると共に、クランクケース46の上端部が左右エンジンハンガ44に支持され、これにより車体フレーム14に固定される。エンジン24としては、例えば、空冷単気筒型が搭載される。クランクケース46の左右両側には、シート22に着座した運転者が足を載せる左右ステップ41が突設されている。
【0028】
エンジン24の回転駆動力は、例えば、クランクケース46右側に設けられたベルト式無断変速機(図示せず)等を介して、クランクケース46後部左側のドライブスプロケット43へと出力されると共に、ドライブチェーン45及びドリブンスプロケット47を介して後輪18に伝達される。
【0029】
車体後方側において、左右ピボットフレーム36の上下中間部には、スイングアーム37の前端部がピボット軸36aを介して上下方向に揺動可能に枢支される。スイングアーム37を構成する左右アームの後端部と左右リヤフレーム40の前後中間部との間には、それぞれリヤクッションユニット48が設けられる。
【0030】
エンジン24の前方側において、シリンダ本体50の前端部にはシリンダヘッド52が取り付けられる。シリンダヘッド52の上部(吸気側)には、上下に延びる吸気通路を形成するスロットルボディ54の下端(下流側)が接続されると共に、スロットルボディ54の上端(上流側)が、その上方のエアクリーナボックス56の下部に接続される。シリンダヘッド52の下部(排気側)には排気管58の基端が接続され、該排気管58が適宜後方に湾曲しながら延びて後輪18右側のサイレンサ60に接続される。
【0031】
さらに、自動二輪車12には、車体フレーム14側に固定されたヘッドライトユニット30の後方側からハンドル20周辺までを覆うハンドルカバー62と、ヘッドパイプ26周りを前方から覆うフロントカバー(車体カバー)64と、フロントカバー64の左右両側に張り出して運転者の脚部を前方から覆う前記左右レッグシールド(車体カバー)66と、左右レッグシールド66の外縁を縁取る左右レッグサイドカバー(車体カバー)67と、フロントカバー64の後方に連なり上方に凸の山形の断面形状をなして斜め下後方に延びるセンタトンネルカバー68と、センタトンネルカバー68の左右両側の後方に連なる左右リヤサイドカバー70と、前輪16を上方から覆うフロントフェンダ71が取り付けられている。これらのカバーは、例えば型成形による樹脂材で構成される。
【0032】
左右リヤサイドカバー70の上方に支持されるシート22は、その前半部の運転者用シートと後半部の同乗者用シートとが一体に構成されている。シート22の前半部の下方であって左右リヤサイドカバー70に囲まれた部位には、ヘルメット等の物品を収納可能な収納ボックス72が配設される。収納ボックス72は、シート22が前端ヒンジ軸回りに回動することで開閉される。一方、シート22の後半部の下方であって左右リヤサイドカバー70の間には、エンジン24の燃料を貯留する燃料タンク74が配設される。燃料タンク74は、シート22が開かれた状態で、その給油口が露呈する。また、前記収納ボックス72の底部後側には、車載電源であるバッテリ76が前傾姿勢で配置されている。
【0033】
次に、基本的には以上のように構成される自動二輪車12に組み込まれる本実施形態に係る灯火器の取付構造10について、図3〜図7を参照して説明する。
【0034】
図3は、車体右側のウインカ25及びその周辺部を拡大した一部省略斜視図であり、シート22に着座した運転者から見て車体右斜め前方側からウインカ25周辺を視認した状態を示している。図4は、図3に示すウインカ25及びその周辺部の背面側を示す一部省略斜視図であり、シート22に着座した運転者側から車体右側のウインカ25周辺を視認した状態を示している。
【0035】
図3及び図4に示すように、ウインカ25は、2つの車体カバー、つまりヘッドパイプ26を前方から覆うフロントカバー部材(フロントカバー64及びレッグシールド66)とレッグサイドカバー67との合わせ面に渡って配置され、一方の車体カバーである前記フロントカバー部材を構成するレッグシールド66に締結される(図6参照)。
【0036】
レッグシールド66には、その外縁(レッグサイドカバー67側)の一部を内側へと切欠いた形状からなり、ウインカ25が配置される切欠部(配置部)80が形成される。このようなレッグシールド66の背面側(裏面側)には、背面から突出する締結ボス部(締結部)82、84と、切欠部80を上下方向に跨ぐように延在して架橋された橋渡し部86と、橋渡し部86の一端側(下端側)に形成された締結孔(締結部)88(図5参照)と、レッグサイドカバー67を締結するための締結ボス部90、92とが設けられる(図4及び図5参照)。
【0037】
前記切欠部80は、ウインカ25が配置されると、該ウインカ25がレッグシールド66の外縁及び表面を滑らかに補完するように形成されている(図3及び図6参照)。すなわち、ウインカ25は、切欠部80とレッグサイドカバー67との間に当接するように配設され、レッグシールド66及びレッグサイドカバー67に対して略面一となるように締結される。
【0038】
図3及び図7に示すように、ウインカ25は、所定のワイヤハーネス(図示せず)が接続されるウインカバルブ(灯火バルブ)93が装着されるウインカハウジング25aと、ウインカハウジング25aの前面側に固定されてウインカバルブ93等を収納する半透明のウインカレンズ25bとから構成される。ウインカレンズ25bは、例えば、橙色からなる半透明の合成樹脂で形成される。
【0039】
ウインカハウジング25aには、切欠部80の奥側(図6で左側)に形成された締結ボス部82、84に対応するように、その片面側から外方へと突出した板状の締結座94、96と、前記橋渡し部86の下端側の締結孔88に対応する締結ボス部98とが設けられる(図6及び図7参照)。2つの締結座94、96は、ウインカ25がレッグシールド66の切欠部80に配置された際、該レッグシールド66の背面側へと延び、前記締結ボス部82、84へとスクリューねじ100、102によって締結される。締結ボス部98は、ウインカ25が切欠部80に配置された際、橋渡し部86の前面側に当接され、前記締結孔88に挿通されたスクリューねじ104によって締結される。
【0040】
本実施形態に係る取付構造10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
【0041】
図6に示すように、本実施形態に係る取付構造10では、ウインカ25に設けられた3つの締結部について、所定の2つの締結部、つまりウインカ25の片側を締結する締結座94及び締結座96を結ぶ直線Lの延長線上から、残りの1つの締結部、つまりウインカ25の下方を固定する締結ボス部98が、外れた位置(直線L及びその延長線上ではない位置)に設定されている。
【0042】
より具体的には、ウインカ25の3つの締結部が同一直線上に配置されず、このうち2つの締結部(締結座94、96)がフロントカバー部材であるレッグシールド66の車体中心側(フロントカバー64側)に、残りの締結部(締結ボス部98)が前記橋渡し部86に各々設けられている。従って、これら全ての締結部は、当該ウインカ25が配置される合わせ面を構成する車体カバーのうち、その面形状の大きい車体カバー側、つまりフロントカバー部材(レッグシールド66)側に設けられている。
【0043】
このように、ウインカ25は複数の車体カバーのうち、面形状の大きい車体カバー側に取り付けられることから、つまり剛性の大きい部材にウインカ25を取り付けることができ、当該ウインカ25を安定して固定することができる。
【0044】
さらに、レッグシールド66に対するウインカ25の締結が一直線となることがないため、車両の振動を有効に低減できるバランスのよい配置でウインカ25を前記剛性の大きな車体カバーに対して安定して締結することができる。特に、本実施形態のように、所定の車体カバー(レッグシールド66)の外縁部に対して、上下に長尺な灯火器であるウインカ25を締結したい場合であっても、前記直線Lを構成する2つの締結部(締結座94、96)に対して、残りの1つの締結部(締結ボス部98)を車体カバーの外縁部に近い位置に外れて設置することにより、高い安定性でウインカ25を締結することができる。すなわち、上記したように、ウインカ25の3つの締結部のうち2つの締結部がフロントカバー部材であるレッグシールド66の車体中心側に、残りの締結部が橋渡し部86に各々設けられることから、ウインカ25を安定して固定することができる。
【0045】
複数の車体カバー(レッグシールド66及びレッグサイドカバー67)に隣接する合わせ面にウインカ25を配置する場合には、カバー側の形状等を考慮しながら配置する必要があるが、上記した配置関係からなる複数の締結部(締結座94、96及び締結ボス部98)を設けることにより、所定の1つの締結部(締結ボス部98)を前記合わせ面に近接した位置に設定可能である。これにより、ウインカ25を車体カバーへと一層安定して締結することができる。しかも、ウインカ25の振動を可及的に抑えることができることから、2つの車体カバーとウインカ25との間のクリアランスを必要最小限まで狭くすることができ、自動二輪車12の外観を向上させることができる。
【0046】
この際、ウインカ25を一方の車体カバーであるレッグシールド66に形成した切欠部80に配置することにより、該切欠部80の奥側で直線上に並ぶ締結部(締結座94、96)と、車体カバーの合わせ部に近接した位置の締結部(締結ボス部98)とを容易に設定することができる。このため、ウインカ25を一層容易にバランスのよい配置で締結することができ、しかもウインカ25を含めた自動二輪車12の外観を一層向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、ウインカ25が締結される一方の車体カバーであるレッグシールド66には、前記切欠部80を跨ぐ橋渡し部86が設けられている。これにより、橋渡し部86が、切欠部80周辺のレッグシールド66の剛性を高める補強部材として機能するため、そこに配置されるウインカ25の振動を一層有効に抑えることができる。すなわち、ウインカ25が配置される切欠部80とその剛性を補強する橋渡し部86とを用いてウインカ25を取り付けることにより、ウインカ25を外観よく、しかも強固に取り付けることができる。
【0048】
図4〜図6から諒解されるように、橋渡し部86は、ウインカ25が切欠部80に取り付けられた状態で該ウインカ25の背面側を跨ぐ形状、つまり、背面側に膨出した形状からなるウインカ25に対応するように、車体カバーであるレッグシールド66の奥(車体後方側)に向かって湾曲した湾曲部86bを有する立体的な形状である。これにより、背面形状が膨出した立体的な形状からなるウインカ25を容易に且つ安定して切欠部80へと取り付けることができる。
【0049】
さらに、橋渡し部86には、ウインカ25の背面側の中央やや下から膨出したウインカバルブ93及びその周辺部(ウインカハウジング25aの膨出部)を避けるように湾曲したバルブ回避部86aが形成されている。該バルブ回避部86aを設けたことにより、ウインカ25をレッグシールド66に締結した状態のまま、橋渡し部86が邪魔になることなく、ウインカバルブ93の抜き差し(交換)や配線の接続等を行うことができる。
【0050】
また、前記橋渡し部86を設けることにより、レッグシールド66をその外縁から切欠いた形状からなる切欠部80に、上下方向に長尺なウインカ25に配置する場合であっても、前記直線L上から外れた締結部(締結ボス部98)を当該橋渡し部86側の締結孔88へと容易に締結することができる。換言すれば、橋渡し部86を設けたことにより、前記直線L上から外れた締結部をウインカ25の形状に応じたバランスのよい位置に容易に配置することができ、つまりウインカ25の締結部の設置自由度を向上させることができる。この場合、橋渡し部86には、同一直線上にある2つの締結部ではなく、残りの1つの締結部のみが設けられる構造とすることにより、該橋渡し部86の形状の自由度が高くなり、ウインカ25及びウインカバルブ93を回避するバルブ回避部86aを容易に設けることが可能となる。
【0051】
ところで、上記したように、フロントカバー64、レッグシールド66及びレッグサイドカバー67等の車体カバーは、樹脂材を型抜きして成形されている。この場合、レッグサイドカバー67の型抜きは車幅方向となる一方、フロントカバー部材を構成するフロントカバー64やレッグシールド66の型抜きは車体前後方向となる。これら車体カバーの機能上の違いとして、レッグシールド66等は、そのカバー面を前に向け、レッグサイドカバー67は、そのカバー面を側方に向けており、この点で型抜き方向は上記のようにするのが自然だからである。
【0052】
そして、このようにフロントカバー部材(フロントカバー64やレッグシールド66)の型抜き方向と、レッグサイドカバー67の型抜き方向とが、これら各車体カバーが車体に組みつけられた際に異なるように成形される場合、ウインカ25の締結ボス(締結ボス部82、84や、締結孔88)は、型抜き方向が前後方向となるフロントカバー部材側に形成することは容易である反面、型抜き方向が車幅方向となるレッグサイドカバー67側には形成し難い。つまり、本実施形態では、フロントカバー部材側に前記締結ボスを設けるように構成したことにより、当該車体カバーの製造工程についての効率も向上させることができる。
【0053】
本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【0054】
上記実施形態では、ウインカ25の締結部が3つの場合を例示して説明したが、該締結部は3つ以上であればよい。例えば、ウインカ25に締結部を4つ設けた場合には、そのうち、少なくとも2つの締結部を結ぶ直線の延長線上から、少なくとも他の1つの締結部が外れた位置に設置されていればよい。当然、前記橋渡し部86に、締結部を2つ以上設けるように構成することも可能である。
【0055】
本発明は2つの車体カバーの合わせ部以外、例えば、3つ以上の車体カバーの合わせ部近傍に灯火器を取り付ける場合等であっても有効に適用することができ、このような場合にも、所定の1つの車体カバーに対して、3つ以上の締結部を持って灯火器を取り付ければよい。勿論、当該取付構造は、単一の車体カバーに対して灯火器を取り付ける場合であっても適用可能である。
【0056】
上記実施形態では、灯火器の取付構造として、ウインカ25の取付構造を例示して本発明を説明したが、灯火器としては車両前方のウインカ(方向指示器)以外にも、車両後方のウインカや尾灯、制動灯、後退灯等を適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10…灯火器の取付構造 12…自動二輪車
14…車体フレーム 25…ウインカ
25a…ウインカハウジング 66…レッグシールド
67…レッグサイドカバー 80…切欠部
82、84、90、92、98…締結ボス部
86…橋渡し部 86a…バルブ回避部
86b…湾曲部 88…締結孔
93…ウインカバルブ 94、96…締結座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯火バルブが装着される灯火器と、
少なくとも車体の一部を覆うと共に、前記灯火器の周囲を覆う複数の車体カバーと、
前記灯火器に複数設けられ、前記灯火器を前記車体カバーに対して取り付けるための締結部と、
を備える灯火器の取付構造であって、
前記灯火器は、前記複数の車体カバーの合わせ面に渡って設けられると共に、
前記複数の締結部は、前記複数の車体カバーのうち、面形状の大きい車体カバー側に全て設けられることを特徴とする灯火器の取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の灯火器の取付構造において、
前記車体カバーは、車体前部のヘッドパイプを前方から覆うフロントカバー部材と、該フロントカバー部材の側方に設けられるレッグサイドカバーとから構成され、
前記締結部は、前記フロントカバー部材に設けられることを特徴とする灯火器の取付構造。
【請求項3】
請求項2記載の灯火器の取付構造において、
前記フロントカバー部材は、その両側の前記レッグサイドカバー側に前記灯火器を収納する切欠部を備えると共に、該切欠部に前記灯火器としてのフロントウインカが配置されることを特徴とする灯火器の取付構造。
【請求項4】
請求項3記載の灯火器の取付構造において、
前記締結部は、前記フロントカバー部材の車体中心側と、前記切欠部を上下方向に延在する橋渡し部に各々設けられることを特徴とする灯火器の取付構造。
【請求項5】
請求項4記載の灯火器の取付構造において、
前記橋渡し部は、前記フロントカバー部材の背面部に設けられ、前記灯火バルブの側部に該灯火バルブの抜き差しを確保するバルブ回避部が形成されることを特徴とする灯火器の取付構造。
【請求項6】
請求項2記載の灯火器の取付構造において、
前記複数の車体カバーは、樹脂材にて型成形され、
前記フロントカバー部材の型抜き方向と、前記レッグサイドカバーの型抜き方向が、当該2つの車体カバーが車体に組みつけられた際に、異なるように成形されることを特徴とする灯火器の取付構造。
【請求項7】
請求項4記載の灯火器の取付構造において、
前記橋渡し部には、該橋渡し部が設けられる前記車体カバーの奥に向かう湾曲部が設けられていることを特徴とする灯火器の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−201950(P2010−201950A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46377(P2009−46377)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】