説明

災害情報通信システム及びアタッチメント

【課題】地域住民の被災状況を地域行政機関が的確に把握できる災害情報通信システム及びアタッチメントを提供すること。
【解決手段】民生委員用通信端末(110〜1n0)及び住民用通信端末(111〜1nm)は、行政機関から割り当てられた共通の録音番号WN及び共通の再生番号RNを有する。住民用通信端末(111〜1nm)、民生委員用通信端末(110〜1n0)又は行政機関用通信端末100において、録音番号WNが指定されたとき、少なくとも災害時には使用可能となる通信回路4を介して、通信回路4に接続されたメモリ3にアクセスされ、通報内容がメモリ3に録音され、再生番号RNが指定されたときは、メモリ3に録音された通報内容が再生される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害情報通信システム及びこのシステムに用いられるアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
地震、津波、台風等の災害が発生した場合、災害救助法に基づく国又は地方公共団体による大規模、広範囲、かつ、高度の救助活動が待たれる。災害救助法は、災害に際して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に、必要な救助を行い、災害にかかつた者の保護と社会の秩序の保全を図ることを目的とする(第1条)ものである。救助は、都道府県知事が、政令で定める程度の災害が発生した市町村(特別区を含む。)の区域内において当該災害にかかり、現に救助を必要とする者に対して、これを行なう(第2条)。
【0003】
また、同法は、救助の種類として、災害収容施設(応急仮設住宅を含む。)の供与、炊出しその他による食品の給与及び飲料水の供給、被服、寝具その他生活必需品の給与又は貸与、医療及び助産、災害者の救出、災害住宅の応急修理、生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は貸与、学用品の給与、を列挙している。
【0004】
従って、災害発生時には、当該地域の行政機関は、災害救助法に基づき、迅速な救助活動を行う義務を負うから、その前提として、地域住民の被害の状況を把握しなければならない。
【0005】
しかし、地域行政機関は、地域住民の実態、特に、災害弱者となる高齢者や心身不自由者等の実態等を殆ど把握していないのが実情であるから、地域住民や町内会から上がってくる情報から、例えば、緊急度の高い順にランク付けする等、情報をフィルタリングすることなどは殆ど不可能である。災害用伝言サービス等も知られている(非特許文献1〜3)が、このサービスを、地域住民及び行政機関の間で有効に活用するシステムも、未だ構築されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】災害用伝言ダイヤル(171)、NTT東日本 http://wwWNtt-east.co.jp/saigai/voice171/index.html
【非特許文献2】iモード災害用伝言板サービス、NTTドコモ http://wwWNttdocomo.co.jp/info/disaster/index.html
【非特許文献3】モバイル安否確認/一斉通報サービス、NTTコミュニケーションズ http://wwWNtt.com/anpi/index.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、被災状況を行政機関が的確に把握できる災害情報通信システム及びアタッチメントを提供することである。
【0008】
本発明のもう一つの課題は、双方向通話のための電話番号とは異なる番号で、被災情報を録音し、再生し得る災害情報通信システム及びアタッチメントを提供することである。
【0009】
本発明の更にもう一つの課題は、狭域被災情報のみならず、狭域被災情報を積み上げて広域情報化し得る災害情報通信システム及びアタッチメントを提供することである。
【0010】
本発明の更にもう一つの課題は、全国規模で緊急要請の情報を共有し、同時に莫大な緊急要請があっても対応できる災害情報通信システム及びアタッチメントを提供することである。
【0011】
本発明の更にもう一つの課題は、実用化コストの安価な災害情報通信システム及びアタッチメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため、本発明に係る災害情報通信システムは、住民用通信端末と、民生委員用通信端末と、行政機関用通信端末とを含む。前記住民用通信端末は、住民によって管理され、前記民生委員用通信端末は、民生委員によって管理され、前記行政機関用通信端末は、行政事務を担当する地域行政機関によって管理される。
【0013】
前記民生委員用通信端末及び前記住民用通信端末は、前記行政機関から割り当てられた共通の録音番号及び共通の再生番号を有している。
【0014】
前記住民用通信端末、前記民生委員用通信端末又は前記行政機関用通信端末において、前記録音番号が指定されたとき、少なくとも災害時には使用可能となる通信回路を介して、前記通信回路に接続されたメモリにアクセスされ、通報内容が前記メモリに録音され、前記再生番号が指定されたときは、前記メモリに録音された前記通報内容が再生される。
【0015】
地域の住民は、自己の管理下にある住民用通信端末、具体的には電話機で、地域行政機関によって割り当てられた録音番号をダイヤルし、自己の被災状況を通報することができる。この通報内容は、通信回路を通して、通信回路に接続されたメモリに録音される。
【0016】
民生委員も、自己の管理下にある民生委員用通信端末、典型的には電話機を用いて、地域行政機関によって割り当てられた録音番号をダイヤルし、自己の担当する地域及び住民の被災状況を通報することができる。この通報内容も、通信回路を通して、通信回路に接続されたメモリに録音される。
【0017】
ある地域に属する住民によって管理される住民用通信端末は、全て、当該地域の行政機関から割り当てられた共通の録音番号を有しているから、当該地域住民の通報は、メモリの同一アドレスに録音される。
【0018】
住民用通信端末で用いられる録音番号は、当該地域の行政機関が割り当てたものであるので、当該行政機関が当然に把握している。当該地域の行政機関は、特定の地域の被災状況を取得するに当たり、行政機関用通信端末を用いて、その地域に自己が割り当てた再生番号をダイヤルする。
【0019】
これにより、特定の地域住民の通報を録音しているメモリのアドレスが指定され、その通報内容が再生される。したがって、行政機関は、行政機関用通信端末を用いて、メモリに録音されている地域住民の通報内容から、特定地域の被災状況を知ることができる。
【0020】
住民用通信端末による住民の通報は、被災者の生の情報という意味で貴重である反面、今、正に地震、津波、台風、洪水等の身の危険に曝されているのであるから、気が動転していて通報内容が理解できないこともある。しかも元々、地域行政機関は、地域住民の実態、特に、災害弱者となる高齢者や心身不自由者等の実態等を殆ど把握していないのが実情であるから、地域住民から上がってくる情報から、例えば、緊急度の高い順にランク付けする等、情報をフィルタリングすることなどは殆ど不可能である。
【0021】
この問題点を解決するため、本願発明に係る災害情報通信システムでは、情報発信源として、住民用通信端末の他に、民生委員用端末を有する。この民生委員用通信端末は、地域を担当する民生委員によって管理されるもので、当該民生委員の担当する地域に属する住民用通信端末と同様に、行政機関から割り当てられた共通の録音番号及び共通の再生番号を有している。
【0022】
したがって、行政機関は、行政機関用通信端末を介して、自己が割り当てた同一再生番号を用い、地域住民の通報とともに、当該地域を担当する民生委員から、その地域の被災状況を知ることができる。
【0023】
民生委員は、その職務上、住民の生活状態や要援助者の実態を正確に把握していると推定されるから、行政機関は、民生委員からの通報から、当該民生委員の担当する地域の住民の被害状況を的確に把握することができる。また、民生委員からの通報をもとにして、地域住民から上がってくる情報を、例えば、緊急度の高い順にランク付けする等、情報のフィルタリングを実行することが可能になる。民生委員は、住民と共通の録音番号を用いて自己の把握している地域の被災状況等を通報することになるので、民生委員からの通報であることを、通報内容に含ませる。行政機関は、特定地域から通報され、録音されている情報から、民生委員の情報を抽出(フィルタリング)することができる。
【0024】
録音番号及び再生番号は、双方向通話のための電話番号とは異なり、災害時に使用可能となる通信回線を通して、被災情報を録音し、再生し得るので、災害時には不通となることの多い一般電話回線とは異なり、不通となることがない。
【0025】
また、村、町、市、区等の狭域の被災情報のみならず、狭域の被災情報を積み上げて、情報を広域化し得る。情報の広域化により、全国規模で緊急要請の情報を共有し、同時に莫大な緊急要請があっても対応できる災害情報通信システムの構築が可能になる。
【0026】
本発明に係る災害情報通信システムは、住民用通信端末に、アタッチメントを含んでいることが好ましい。前記アタッチメントは、前記録音番号及び前記再生番号を格納し、前記録音番号を指定する録音スイッチと、再生番号を指定する再生スイッチとを有し、前記録音スイッチが操作されたときは、前記住民用通信端末を経由して前記通信回路に録音番号が送信され、前記再生スイッチが操作されたときは、前記住民用通信端末を経由して前記通信回路に再生番号が送信される。
【0027】
この構成によれば、録音スイッチ又は再生スイッチのON、OFF操作という簡単な操作で、録音番号を送信し、再生番号を送信することができ、長い数字列となる録音番号及び再生番号をダイヤルする必要がない。従って、災害発生時の緊迫した状態、動転した状態でも、ダイヤルミスを生じることなく、確実に災害情報通信システムにアクセスし得る。また、高齢者や、身体的なハンディキャップを持つ人や、病気のために動けない人、更には子供などであっても、災害情報通信システムを利用することができる。
【0028】
しかも、このアタッチメントを付設するだけでよいので、実用化コストが安価であるし、より良いシステムの開発にあたっては、主として、アタッチメントの研究開発に焦点を合わせればよい。民生委員用通信端末にも、同様のアタッチメントを組み合わせることができる。
【0029】
本発明において、行政機関から地域住民にあてられた通報内容も、メモリ上、住民からの通報と同じアドレスに録音されるから、メモリの同一アドレスに、住民の通報及び民生委員からの通報に、行政機関が住民に向けて発信した通報が紛れ込んでしまい、住民がこれを再生するのに時間がかかる。
【0030】
この問題を解決するのに有効な一つの態様として、上記アタッチメントは、第1通信回路部と、第2通信回路部とを含むことができる。前記第1通信回路部は、前記録音番号及び前記再生番号を格納する部分と、前記録音番号を指定する第1録音スイッチと、前記再生番号を指定する第1再生スイッチとを有している。前記第2通信回路部は、前記再生番号とは異なる第2再生番号と、前記第2再生番号を指定する第2再生スイッチとを有している。
【0031】
前記第2再生スイッチが操作されたときは、前記行政機関用通信端末から送信され、前記メモリに録音された情報が、通信回路及び住民用通信端末を経由して、住民用通信端末によって再生される。
【0032】
このアタッチメントにおいて、第1通信回路部は、既に説明したアタッチメントに含まれていたもので、特に説明を要しない。このアタッチメントの特徴は、第1通信回路部の他に、第2通信回路部を有することである。第2通信回路部において、住民は、第2再生番号に対応する第2再生スイッチを操作することにより、行政機関用通信端末から送信されメモリに録音されている情報を再生することができる。この場合のメモリの録音アドレスは、住民用通信端末及び民生委員用通信端末から送信され情報を録音するアドレスとは異なっている。したがって、行政機関用通信端末から送信されメモリに録音された情報を、住民用通信端末及び民生委員用通信端末から送信され、メモリに録音されている情報から区別して、通信回路を経由して、住民用通信端末によって再生することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)地域住民の被害の状況を地域行政機関が的確に把握できる災害情報通信システム及びアタッチメントを提供することができる。
(b)双方向通話のための電話番号とは異なる番号で、被災情報を録音し、再生し得る災害情報通信システム及びアタッチメントを提供することができる。
(c)狭域被災情報のみならず、狭域被災情報を積み上げて広域化し得る災害情報通信システム及びアタッチメントを提供することができる。
(d)全国規模で緊急要請の情報を共有し、同時に莫大な緊急要請があっても対応できる災害情報通信システム及びアタッチメントを提供することができる。
(e)実用化コストの安価な災害情報通信システム及びアタッチメントを提供することができる。
【0034】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る災害情報通信システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明に係る災害情報通信システムに用いられる通信端末の一例を示す図である。
【図3】図2に示した通信端末のブロック図である。
【図4】本発明に係るアタッチメントのブロック図である。
【図5】本発明に係るアタッチメントの別の形態を示すブロック図である。
【図6】本発明に係るアタッチメントの更に別の形態を示すブロック図である。
【図7】本発明に係るアタッチメントの更に別の形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1を参照すると、本発明に係る災害情報通信システムは、住民用通信端末(111〜1nm)と、民生委員用通信端末(110〜1n0)と、行政機関用通信端末100とを含む。住民用通信端末(111〜1nm)は、住民によって管理され、民生委員用通信端末(110〜1n0)は、民生委員によって管理され、行政機関用通信端末100は、地域の行政事務を担当する地域行政機関によって管理される。
【0037】
一人の民生委員の担当する住民は、n組のグループG1〜Gnに分けられる。そして、そのグループ分けに応じて、住民用通信端末(111〜1nm)と、民生委員用通信端末(110〜1n0)も、n個のグループG1〜Gnに分けられる。このグループ分けにより、例えば、グループG1には、民生委員用通信端末110と、住民用通信端末(111〜11m)が含まれ、グループG2には、民生委員用通信端末120と、住民用通信端末(121〜12m)が含まれ、グループGnには、民生委員用通信端末1n0と、住民用通信端末(1n1〜1nm)が含まれることになる。即ち、グループG1〜Gnのそれぞれには、一個の民生委員用通信端末(一人の民生委員)と、m個の住民用通信端末が属している。住民用通信端末の個数mは、ループG1〜Gnのそれぞれにおいて同じである必要はない。また、住民用通信端末は、原則的には、1個/世帯として与えられる。
【0038】
民生委員用通信端末(110〜1n0)及び当該民生委員の担当する地域に属する住民の通信端末(111〜1nm)は、行政機関から割り当てられた共通の録音番号WN及び共通の再生番号RNを有している。住民用通信端末(111〜1nm)、民生委員用通信端末(110〜1n0)又は行政機関用通信端末100において、録音番号WNが指定されたとき、少なくとも災害時には使用可能となる通信回路4を介して、通信回路4に接続されたメモリ3にアクセスされ、通報内容がメモリ3に録音される。そして、再生番号RNが指定されたときは、メモリ3に録音された通報内容が再生される。
【0039】
録音番号WNは、例えば、グループG1に対してはXYZ−1−G1のような番号で与えられる。録音番号WNにおいて、X、Y、Zは10より小さい数であって、災害時に使用可能となる災害用ダイヤルを指定するものであり、例えば、災害用伝言ダイヤル(171)がその代表例である。以下、災害用伝言ダイヤル(171)を用いる場合を例にとって説明する。もっとも、災害伝言データベースとしては、災害用伝言ダイヤル(171)の他、iモード災害用伝言板サービス(NTTドコモ提供)や、モバイル安否確認/一斉通報サービス(NTTコミュニケーションズ)なども知られており、本発明においても、これらのシステムを利用することができる。または、地域毎に、特定の番号を持っていてもよい。
【0040】
「171」の次の「1」は、録音モードを示し、その後の「G1」は、グループG1に与えられた番号である。グループ番号G1は、例えば、「−市街局番−3000−0001」のようになる。グループG2に与えられるグループ番号G2は、「−市街局番−3000−0002」、グループGnに与えられるグループ番号Gnは、「−市街局番−3000−000n」(n<1の場合)のようになる。
【0041】
再生番号RNは、例えば、グループG1に対しては、XYZ−2−G1のような番号で与えられる。即ち、録音番号WNにおける録音モード「1」が、再生モード「2」に代わる他は、録音番号WNと同じ数字配列となる。災害用伝言ダイヤルにおいて、録音番号WN及び再生番号RNは、双方向通話を可能にする電話番号ではなく、メモリ3のアドレスを指定する数字列である。録音番号WNが同じであれば、通報内容がメモリ3の同一アドレスに逐次に蓄積されて行く。このように、双方向通話のための電話番号とは異なる録音番号(WN)及び再生番号RNで、被災情報を録音し、再生し得るので、災害時には不通となることの多い双方向通話の一般電話回線とは異なり、不通となることがない。
【0042】
地域の住民は、自己の管理下にある住民用通信端末(111〜1nm)、具体的には電話機で、地域行政機関によって割り当てられた録音番号WNをダイヤルし、自己の被災状況を通報する。この通報内容は、通信回路4を通して、メモリ3に逐次録音される。
【0043】
民生委員も、自己の管理下にある民生委員用通信端末(110〜1n0)、典型的には電話機を用いて、地域行政機関によって割り当てられた録音番号WNをダイヤルし、自己の担当する地域及び住民の被災状況を通報する。この通報内容も、通信回路4を通して、メモリ3に逐次録音される。
【0044】
ある地域に属する住民によって管理される住民用通信端末(111〜1nm)は、全て、地域の行政機関から割り当てられた共通の録音番号WNを有しているから、地域住民の通報は、メモリ3の同一アドレス31〜3nに録音される。例えば、グループG1に属する住民用通信端末(111〜11m)を用いた通報は、全て、メモリ3の同一アドレス31に逐次的に録音され、グループG2に属する住民用通信端末(121〜12m)を用いた通報は、全て、メモリ3の同一アドレス32に逐次録音され、グループGnに属する住民用通信端末(1n1〜1nm)を用いた通報は、全て、メモリ3の同一アドレス3nに逐次録音される。
【0045】
住民用通信端末(111〜1nm)で用いられる録音番号WNは、地域の行政機関が当然に把握している。地域の行政機関は、特定の地域の被災状況に関わる情報を取得するに当たり、行政機関用通信端末100を用いて、その地域に自己が割り当てた再生番号RNをダイヤルする。
【0046】
これにより、特定の地域住民からの通報を録音しているメモリ3のアドレスが指定され、その通報内容が再生される。したがって、行政機関は、行政機関用通信端末100を用いて、メモリ3に録音されている地域住民の通報から、特定地域の被災状況を知ることができる。
【0047】
住民用通信端末(111〜1nm)による住民の通報は、被災者の生の情報という意味で貴重である反面、今、正に地震、津波、台風、洪水等の身の危険に曝されているのであるから、正常な精神状態でいられるはずはないし、気が動転していて通報内容が理解困難なこともある。しかも、元々、地域行政機関は、地域住民の実態、特に、災害弱者となる高齢者や心身不自由者等の実態等を把握していないとみるべきであるから、地域住民から上がってくる情報から、例えば、緊急度の高い順にランク付けする等、情報をフィルタリングすることなどは殆ど不可能である。
【0048】
この問題点を解決するため、本願発明に係る災害情報システムでは、情報発信源として、住民用通信端末(111〜1nm)の他に、民生委員用通信端末(110〜1n0)を有するのである。この民生委員用通信端末(110〜1n0)は、地域を担当する民生委員によって管理されるもので、当該民生委員の担当する地域に属する住民の通信端末(111〜1nm)と同様に、行政機関から割り当てられた共通の録音番号WN及び共通の再生番号RNを有している。
【0049】
したがって、行政機関は、行政機関用通信端末100を介して、自己が割り当てた同一再生番号RNを用い、地域住民からの通報とともに、当該地域を担当する民生委員からの通報とにより、特定地域の被災状況を知ることができる。
【0050】
民生委員の職務は、住民の生活状態を必要に応じて適切に把握しておくこと、援助を必要とする者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと、援助を必要とする者が福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供その他の援助を行うこと、社会福祉を目的とする事業を経営する者又は社会福祉に関する活動を行う者と密接に連携し、その事業又は活動を支援すること、福祉事務所その他の関係行政機関の業務に協力することである(民生委員法第14条第1項)。
【0051】
このように、民生委員は、住民の生活状態や要援助者の実態を正確に把握しているから、行政機関は、民生委員からの通報から、地域住民の被害の状況を的確に把握することができる。また、民生委員からの通報をもとにして、地域住民から上がってくる情報を、例えば、緊急度の高い順にランク付けする等、情報のフィルタリンをグ実行することが可能になる。民生委員は、住民と共通の録音番号WNを用いて、自己の把握している地域の被災状況等を通報することになるので、民生委員からの通報であることを、通報内容に含ませる。例えば、「こちらは、民生委員の○○です」というようなステートメントを通報内容に入れるのである。これにより、行政機関は、特定地域から通報され録音されている情報から、民生委員の情報を抽出(フィルタリング)することができる。
【0052】
上記説明では、主として、村、町、市、区等の狭域における被災情報の録音、再生を念頭において説明したが、この狭域被災情報を積み上げることにより、例えば、都道府県、地方または国のレベルまで広域化し得る。このような情報の広域化により、全国規模で緊急要請の情報を共有し、同時に莫大な緊急要請があっても、全国規模で対応することが可能になる。
【0053】
録音番号WN及び再生番号RNは長い数字列であり、身命の危機に曝され、緊迫した状態にある被災時に、この長い数字列を正確にダイヤルすることは難しく、ダイヤル入力ミスを招き易い。録音番号WN及び再生番号RNを、予め、通信端末に登録しておき、短縮ダイヤルによって迅速にダイヤルできるようにすることもできるが、少なくとも一回は、長い数字列の録音番号WN及び再生番号RNを入力しなければならず、入力誤りを生じやすい。
【0054】
しかも、高齢者や、身体的なハンディキャップを持つ人や、病気のために動けない人などは、録音番号WN及び再生番号RNを、通信端末に登録する操作ができないこともある。このような事態を回避する手段として、アタッチメントを準備することが有効である。
【0055】
その一例を図2及び図3に図示してある。まず、図2を参照すると、アタッチメント7は、録音番号WN及び再生番号RNを記憶(格納)したものであって、通信端末111〜1nmに、例えばコネクタ71によって着脱される。
【0056】
次に、図3を参照すると、通信端末111〜1nmは、ボタン操作部52、送受信部53、表示部54、全体を統括制御する制御部55、ダイヤル記憶部56及びインターフェース部57を含んでおり、インターフェース部57を通して、外部の通信回路4(図1参照)に接続される。
【0057】
アタッチメントは、図4に図示するように、録音番号WN及び再生番号RNを格納し、録音番号WNを指定する録音スイッチSwと、再生番号RNを指定する再生スイッチSrとを有する。これらは、何れも、アタッチメント7のケース外部から操作できるようになっている。録音スイッチSwが操作されたときは、住民用通信端末111〜1nmを経由して通信回路4に録音番号WNが送信され、再生スイッチSrが操作されたときは、住民用通信端末111〜1nmを経由して通信回路4に再生番号RNが送信される。
【0058】
アタッチメントは、より詳しくは、制御部72、番号記憶部73及び送受信部74等を有している。各部72〜74は、コネクタ7に備えられた端子712から、動作電源Vccが供給される。
【0059】
上記構成のアタッチメントにおいて、録音スイッチSwがONとされたときは、制御部72の働きにより、番号記憶部73から録音番号WNが読みだされ、読みだされた録音番号WNが、送受信部74及びコネクタ71の端子711を経由して、通信端末111〜1nmの何れかに送信される。これにより、通信端末111〜1nmの何れかが通信回路4に接続され、メモリ3において、通報録音が可能になる。
【0060】
再生スイッチSrがONになった時は、制御部72の働きにより、番号記憶部73から再生番号RNが読みだされ、読みだされた再生番号RNが、送受信部74及びコネクタ71の端子711を経由して、通信端末111〜1nmに送信される。これにより、通信端末111〜1nmの何れかが通信回路4に接続され、メモリ3に録音された通報内容が再生される。
【0061】
上述したように、録音スイッチSw又は再生スイッチSrのON、OFF操作という簡単な操作で、録音番号WN又は再生番号RNを送信することができ、長い数字列となる録音番号WN及び再生番号RNをダイヤルする必要がない。従って、災害発生時の緊迫した状態、動転した状態でも、ダイヤルミスを生じることなく、確実に災害情報通信システムにアクセスし得る。また、高齢者や、身体的なハンディキャップを持つ人や、病気のために動けない人、更には子供などであっても、災害情報通信システムを利用することができる。民生委員用通信端末(110〜1n0)にも、同様のアタッチメントを組み合わせることができる。しかも、このアタッチメントを付設するだけでよいので、実用化コストが安価であるし、より良いシステムの開発にあたっては、アタッチメントの研究開発に焦点を合わせればよい。
【0062】
図4の実施の形態では、動作用電源Vccを、外部から供給するようになっているが、図5に図示するように、動作用電源Vccを供給するバッテリ75を内蔵していてもよい。また、図6に図示するように、アンテナ76を有し、録音番号WN及び再生番号RNを無線通信によって通信端末111〜1nmに送信する構成であってもよい。無線の代わりに、超音波、赤外線等を用いてもよい。
【0063】
ところで、本発明において、行政機関から地域住民にあてられた通報内容も、メモリ3上は、住民からの通報と同じアドレスに録音されるから、メモリ3の同一アドレスにおいて、住民の通報及び民生委員からの通報に、行政機関が住民に向けて発信した通報が紛れ込んでしまい、住民がこれを再生するのに時間がかかる。この時間遅延は、「巨大津波発生、直ちに避難せよ」などの高度緊急情報の場合には、致命的な欠陥になりかねない。
【0064】
図7は、この問題を解決するのに有効な一つの形態を示している。図示のアタッチメントは、第1通信回路部7Aと、第2通信回路部7Bとを含む。第1通信回路部7Aは、録音番号WN及び再生番号RNを格納する部分と、録音番号WNを指定する第1録音スイッチSwAと、再生番号RNを指定する第1再生スイッチSrAとを有している。第2通信回路部7Bは、再生番号RNとは異なる第2再生番号RN2と、第2再生番号RN2を指定する第2再生スイッチSrBとを有している。
【0065】
第2再生スイッチSrBが操作されたときは、行政機関用通信端末100から送信され、メモリ3に録音されている情報が、通信回路4及び住民用通信端末(111〜1nm)を経由して、住民用通信端末(111〜1nm)によって再生される。
【0066】
このアタッチメントにおいて、第1通信回路部7Aは、既に説明したアタッチメントに含まれていたもので、特に説明を要しない。このアタッチメントの特徴は、第1通信回路部7Aの他に、第2通信回路部7Bを有することである。第2通信回路部7Bは、制御部72B、番号記憶部73B及び送受信部74B等を有している。
【0067】
上記構成のアタッチメントにおいて、住民が、第2再生番号RNに対応する第2再生スイッチSrBを操作すると、行政機関用通信端末100から送信され、通信回路4を経由して、メモリ3に録音(図1参照)されていた情報が再生される。この場合のメモリ3の録音アドレスは、図4〜図6に図示されたアタッチメントを使用して住民用通信端末(111〜1nm)又は民生委員用通信端末(110〜1n0)から送信された情報を録音するアドレス31〜3n(図1参照)とは異なっている。したがって、第2通信回路部7Bの第2再生スイッチSrBをONにすることにより、行政機関用通信端末100から送信されメモリ3に録音された情報を、住民用通信端末(111〜1nm)又は民生委員用通信端末(110〜1n0)から送信され、メモリ3に録音されている情報から区別して、住民用通信端末(111〜1nm)によって、迅速に再生することができる。よって、住民は、「巨大津波発生、直ちに避難せよ」などの高度緊急情報を、僅かな時間遅れをもって、迅速に知ることができる。図7のアタッチメントにおける第2通信回路部7Bを、行政側から住民側への通報だけに利用するのであれば、第2録音スイッチSwBは、これを省略することもできる。
【0068】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0069】
111〜1nm 住民用通信端末
110〜1nm 民生委員用通信端末
100 行政機関用通信端末
3 メモリ
7 アタッチメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住民用通信端末と、民生委員用通信端末と、行政機関用通信端末とを含む災害情報通信システムであって、
前記住民用通信端末は、住民によって管理されるものであり、
前記民生委員用通信端末は、民生委員によって管理されるものであり、
前記行政機関用通信端末は、行政機関によって管理されるものであり、
前記民生委員用通信端末及び当該民生委員の担当する地域に属する前記住民用通信端末は、前記行政機関から割り当てられた共通の録音番号及び共通の再生番号を有しており、
前記住民用通信端末、前記民生委員用通信端末又は前記行政機関用通信端末において、前記録音番号が指定されたとき、少なくとも災害時には使用可能となる通信回路を介して、前記通信回路に接続されたメモリにアクセスされ、通報内容が前記メモリに録音され、前記再生番号が指定されたときは、前記メモリに録音された前記通報内容が再生される、
災害情報通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載された災害情報通信システムであって、前記住民用通信端末は、アタッチメントを含んでおり、
前記アタッチメントは、前記録音番号及び前記再生番号を格納し、前記録音番号を指定する録音スイッチと、再生番号を指定する再生スイッチとを有し、前記録音スイッチが操作されたときは、前記住民用通信端末を経由して前記通信回路に録音番号が送信され、前記再生スイッチが操作されたときは、前記住民用通信端末を経由して前記通信回路に再生番号が送信される、
災害情報通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載された災害情報通信システムに用いられるアタッチメントであって、前記録音番号及び前記再生番号を格納する部分と、前記録音番号を指定する録音スイッチと、前記再生番号を指定する再生スイッチとを有する、アタッチメント。
【請求項4】
請求項1に記載された災害情報通信システムに用いられるアタッチメントであって、第1通信回路部と、第2通信回路部とを含み、
前記第1通信回路部は、前記録音番号及び前記再生番号を格納する部分と、前記録音番号を指定する第1録音スイッチと、前記再生番号を指定する第1再生スイッチとを有しており、
前記第2通信回路部は、前記再生番号とは異なる第2再生番号と、前記第2再生番号を指定する第2再生スイッチとを有しており、
前記第2再生スイッチが操作されたときは、前記行政機関用通信端末から送信され、前記メモリに録音された情報が、通信回路及び住民用通信端末を経由して、住民用通信端末によって読みだされる、
アタッチメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−45403(P2013−45403A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184789(P2011−184789)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.iモード
【出願人】(511209044)有限会社美濃彦 (1)
【Fターム(参考)】