説明

災害検出画像処理システム

【課題】航空機等により収集された画像を用いて広域災害の検出を効率的且つ高速に行う災害検出画像処理システムを提供する。
【解決手段】飛しょう体に搭載され、上空から地上を撮像するカメラ1と、飛しょう体に搭載され、カメラ1により撮像された画像データに基づいてサムネイル画像を作成するサムネイル作成部22と、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像に基づいて災害発生箇所を検出する高温部抽出部32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、航空機等により収集された画像を用いて広域災害の検出を行う災害検出画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、広域における災害発生箇所を検出するために、航空機等にカメラを搭載し、高所から撮影した地上の画像を目視することにより災害場所を特定するといった方法が採用されている。航空機等から撮影した画像を地上に持ち帰って現像し、目視により災害場所の特定を行うとすると、特に広範囲をカバーする必要がある場合において長時間を要してしまい、迅速な災害箇所の特定が困難になるという問題点がある。
【0003】
そこで、近年においては、ディジタル化された画像をモニターに写して確認することにより、現像に要する時間を短縮する手法が採られている。この場合においては、電子データによる画像を航空機から無線で地上に送信することにより、さらに時間の短縮を図ることができる。
【0004】
また、赤外線センサを用いた場合には、非接触温度測定を行うことができるため、赤外線画像中の各部における温度を数値化して高温部を容易に検出することができ、航空機による収集画像から即座に火災を検出する方法として有効である。このような温度測定を利用する検出方法は、必ずしも火災検出のみならず、例えば地すべり等が発生した結果、森林の中の一部の地域における木々が不自然に失われることで発生する温度差を検出することも可能である。
【0005】
さらに、災害等の発生確率が高いと予想される地域の画像を通常のカメラで予め撮影しておき、災害発生後に撮影した光学画像を災害前の画像と比較することにより災害発生箇所の検出を行う方法も知られている。災害発生前後の画像を比較することにより、火災のみならず地すべり等も視覚的に容易且つ適切に認識することができ、有効な方法であると言える。ただし、通常のカメラによる光学画像は、煙の出ていない火災や夜間における災害検出が困難であるという問題点を有するため、状況に応じて上述した赤外線センサによる温度測定を併用する方法を採用する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−61398号公報
【特許文献2】特開平10−285583号公報
【特許文献3】特開2003−115091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
広域災害においては、災害発生場所は複数に渡り、それを素早く見つけることは非常に重要である。しかしながら、広域災害では必然的に広範囲での画像収集を行うことになるため、画像処理に時間がかかり、上述した手段を用いても検出までに時間がかかってしまう。さらに、航空機からの無線通信で画像を伝送するようなシステムの場合、伝送路の容量が不十分で収集した画像をリアルタイムに伝送することができないため、伝送機能を有していたとしても処理が航空機の帰投後となってしまい、結局時間がかかるという問題点がある。
【0008】
特に、高画質化を目的とした技術の発達により、近年におけるディジタル画像は画素数が飛躍的に増大しており、広範囲の画像を収集する必要があることも考え合わせると、データ容量は膨大なものとなるため、無線通信による伝送や画像処理に長時間を要してしまい、迅速な災害検出に支障をきたす結果となる。仮に、膨大なデータ量を処理することができる高機能な専用装置を用意したとしても、装置が大掛かりになるとともに高コスト化するという問題点がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、航空機等により収集された画像を用いて広域災害の検出を効率的且つ高速に行う災害検出画像処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の災害検出画像処理システムは、上記課題を解決するために、飛しょう体に搭載され、上空から地上を撮像する撮像部と、前記飛しょう体に搭載され、前記撮像部により撮像された画像データに基づいてサムネイル画像を作成するサムネイル画像作成部と、前記サムネイル画像作成部により作成されたサムネイル画像に基づいて災害発生箇所を検出する検出部とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の形態の災害検出画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1の形態の災害検出画像処理システムの全体像を説明する図である。
【図3】実施例2の形態の災害検出画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図4】実施例2の形態の災害検出画像処理システムの別の構成例を示すブロック図である。
【図5】実施例3の形態の災害検出画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、災害検出画像処理システムの実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
以下、実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、実施例1の災害検出画像処理システムの構成を示すブロック図である。本実施例の災害検出画像処理システムは、図1に示すように、カメラ1、画像収集センサ部2、画像処理部3a、及び表示部4により構成される。また、画像収集センサ部2は、画像収集部21、サムネイル作成部22、画像蓄積部23、サムネイル送信部24、元画像伝送部25、及び元画像送信部26により構成される。また、画像処理部3aは、サムネイル受信部31、高温部抽出部32、元画像要求部33、及び元画像受信部34により構成される。
【0014】
ここで、カメラ1と画像収集センサ部2とは、飛しょう体(本実施例においては航空機)に搭載されている。一方、画像処理部3aと表示部4とは、地上に設置されている。
【0015】
図2は、実施例1の災害検出画像処理システムの全体像を説明する図である。図2に示すように、カメラ1と画像収集センサ部2とは航空機に搭載されており、航空機と地上との間で無線通信により必要な画像の伝送等が行われるすなわち、サムネイル送信部24とサムネイル受信部31との間の情報の授受、元画像要求部33と元画像伝送部25との間の情報の授受、及び元画像送信部26と元画像受信部34との間の情報の授受は、全て無線通信により行われる。
【0016】
カメラ1は、本発明の撮像部に対応し、飛しょう体に搭載され、上空から地上を撮像する。ただし、本実施例におけるカメラ1は、赤外線センサを利用して、上空から地上の赤外線画像を撮像する。すなわち、カメラ1は、非接触温度測定を行い、撮像した地上の温度分布を画像表示するための画像データを取得することができる。
【0017】
画像収集センサ部2は、カメラ1により撮像された画像を収集し、必要な処理を行う。具体的には、画像収集部21は、カメラ1により撮像された赤外線画像を収集する。
【0018】
サムネイル作成部22は、本発明のサムネイル画像作成部に対応し、飛しょう体に搭載され、カメラ1により撮像された画像データに基づいてサムネイル画像を作成する。ただし、サムネイル画像の作成方法はいくつか存在するが、本実施例のサムネイル作成部22は、少なくとも処理の高速化を実現するため、元の画像データよりもデータサイズを小さくしたサムネイル画像を作成するものとする。
【0019】
また、サムネイル作成部22は、例えば周囲の画素を平均化してサムネイル画像を作成する方法を採用してもよい。特に本実施例におけるサムネイル作成部22は、カメラ1により撮像された赤外線画像の画像データに基づいてサムネイル画像を作成するので、温度情報を含む周囲の画素を平均化してサムネイル画像を作成する方法を採用することにより、重要な温度情報を失わずにすむという利点を有する。
【0020】
画像蓄積部23は、カメラ1により撮像された画像データを蓄積する。具体的には、画像蓄積部23は、画像収集部21に接続されており、画像収集部21により収集された赤外線画像を蓄積する。
【0021】
サムネイル送信部24は、本発明の送信部に対応し、飛しょう体に搭載され、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像の画像データを無線通信により地上側に送信する。具体的には、サムネイル送信部24は、地上に設置された画像処理部3a内のサムネイル受信部31に対して、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像を無線通信によりリアルタイムに送信する。
【0022】
サムネイル受信部31は、本発明の受信部に対応し、地上側に設置され、サムネイル送信部24により送信されたサムネイル画像の画像データを受信し、受信したサムネイル画像を高温部抽出部32に出力する。
【0023】
高温部抽出部32は、本発明の検出部に対応し、地上側に設置され、サムネイル受信部31により受信された画像データを受け取ることにより、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像に基づいて災害発生箇所を検出する。具体的には、高温部抽出部32は、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像に基づいて、所定の温度条件を満たす箇所を災害発生箇所として検出する。
【0024】
ここで、所定の温度条件とは、災害の種類に応じて設定することができる。例えば、高温部抽出部32は、火災の発生箇所を検出するため、80℃以上の箇所を災害発生箇所として検出することができる。この場合に、高温部抽出部32は、災害発生箇所として検出したサムネイル画像の画像データを表示部4に出力する。
【0025】
なお、赤外線画像を用いた高温部の検出を行う場合には、火災等が発生していれば非常に高温となるため、サムネイル作成部22によりサムネイル画像作成の際に情報の間引きが行われたとしても周囲と比較して十分に突出しているため、高温部抽出部32は、しきい値による火災発生箇所の検出が可能である。
【0026】
表示部4は、例えばディスプレイであり、高温部抽出部32により出力されたサムネイル画像を表示する。その際に、表示部4は、サムネイル画像を温度に応じて色分け表示してもよい。
【0027】
元画像要求部33、元画像伝送部25、元画像送信部26、及び元画像受信部34は、本発明の元画像出力部に対応し、画像蓄積部23に蓄積された画像データの中から、高温部抽出部32により検出された災害発生箇所に対応する画像データを選択して出力する。
【0028】
元画像要求部33は、高温部抽出部32により検出された災害発生箇所が含まれるサムネイル画像を指定し、無線通信により画像収集センサ部2内の元画像伝送部25に対して、当該サムネイル画像の元画像を要求する。
【0029】
元画像伝送部25は、元画像要求部33によるサムネイル画像の元画像要求を受信し、元画像要求部33により指定されたサムネイル画像の情報を元画像送信部26に出力する。
【0030】
元画像送信部26は、元画像伝送部25により出力されたサムネイル画像の情報に基づいて、当該サムネイル画像を作成するための元となった画像の画像データを画像蓄積部23から受信し、受信した画像データを無線通信により画像処理部3a内の元画像受信部34に送信する。
【0031】
元画像受信部34は、元画像送信部26により送信された画像データを受信し、受信した画像データを表示部4に出力する。表示部4は、元画像受信部34により出力された元画像を表示する。
【0032】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。最初に、航空機に搭載されたカメラ1は、赤外線センサを利用して、上空から地上の赤外線画像を撮像する。この際に、画像収集部21は、カメラ1により撮像された赤外線画像を収集し、サムネイル作成部22と画像蓄積部23とに出力する。画像蓄積部23は、画像収集部21により収集された赤外線画像を蓄積する。
【0033】
一方、サムネイル作成部22は、画像収集部21により収集された赤外線画像に基づいてサムネイル画像を作成し、サムネイル送信部24に出力する。サムネイル送信部24は、地上に設置された画像処理部3a内のサムネイル受信部31に対して、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像を無線通信によりリアルタイムに送信する。
【0034】
サムネイル受信部31は、サムネイル送信部24により送信されたサムネイル画像の画像データを受信し、受信したサムネイル画像を高温部抽出部32に出力する。高温部抽出部32は、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像に基づいて、所定の温度条件を満たす箇所を災害発生箇所として検出する。すなわち、高温部抽出部32は、サムネイル画像内に所定のしきい値以上の高い値のスペクトルを1以上検出した場合に、当該検出箇所を災害発生箇所として検出し、検出情報を元画像要求部33に出力するとともに、災害発生箇所として検出したサムネイル画像の画像データを表示部4に出力する。表示部4は、高温部抽出部32により出力されたサムネイル画像を表示する。
【0035】
元画像要求部33は、高温部抽出部32により検出された災害発生箇所が含まれるサムネイル画像を指定し、無線通信により航空機側に設けられた画像収集センサ部2内の元画像伝送部25に対して、当該サムネイル画像の元画像を要求する。
【0036】
元画像伝送部25は、元画像要求部33によるサムネイル画像の元画像要求を受信し、元画像要求部33により指定されたサムネイル画像の情報を元画像送信部26に出力する。元画像送信部26は、元画像伝送部25により出力されたサムネイル画像の情報に基づいて、当該サムネイル画像を作成するための元となった画像の画像データを画像蓄積部23からダウンロードし、ダウンロードした画像データを無線通信により画像処理部3a内の元画像受信部34に送信する。
【0037】
元画像受信部34は、元画像送信部26により送信された画像データを受信し、受信した画像データを表示部4に出力する。表示部4は、元画像受信部34により出力された元画像を表示する。
【0038】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る災害検出画像処理システムによれば、航空機等により収集された画像を用いて広域災害の検出を効率的且つ高速に行うことができる。
【0039】
すなわち、本実施例の災害検出画像処理システムは、カメラ1により撮像された画像をサムネイル作成部22において収集した画像を間引きしてサムネイル画像化することで、災害地域の検出処理を高速化し、広範囲における災害検出を行うことができる。特に、本実施例の災害検出画像処理システムは、カメラ1が赤外線画像を撮像して温度情報を取得することができるため、赤外線画像をサムネイル化して温度をしきい値として判断することにより、より高速に災害検出を行うことができる。
【0040】
また、本実施例の災害検出画像処理システムは、小容量のサムネイル画像を利用するため、限られた伝送容量であってもニア・リアルタイムでの伝送を可能とし、航空機の帰投を待つまでもなく、地上側において迅速に広域における災害検出を行うことができる。
【0041】
さらに、本実施例の災害検出画像処理システムは、災害が発生したと考えられる箇所に対応するサムネイル化前の元画像を表示部4に出力することにより、実際に災害が発生したか否かの判断を適切且つ迅速に行うことができるため、仮にサムネイル化の際に情報量が一部失われたとしても、元画像を確認することにより誤った判断を回避することができる。
【実施例2】
【0042】
図3は、実施例2の災害検出画像処理システムの構成を示すブロック図である。実施例1の災害検出画像処理システムと異なる点は、新たに災害前の写真データベース5を備えている点と、画像処理部3b内に高温部抽出部32の代わりに災害前サムネイル作成部35と比較抽出部36とを備えている点である。
【0043】
災害前の写真データベース5は、地上側に設置されており、様々な地域の災害発生前の写真(画像データ)を蓄積したデータベースである。この災害前の写真データベース5は、可能であれば日本全国全ての地域の写真を網羅していることが望ましいが、災害が発生しやすいと考えられる地域に絞って写真を蓄積していてもよい。
【0044】
カメラ1は、実施例1と同様に飛しょう体に搭載され、上空から地上を撮像する。本実施例の災害検出画像処理システムは、高温部を抽出して災害検出を行うわけではないので、カメラ1により撮像された画像は、必ずしも赤外線画像である必要はなく、普通の光学画像でよい。また、当然のことながら、カメラ1は、赤外線画像を撮像してもよい。
【0045】
災害前サムネイル作成部35は、災害前の写真データベース5に蓄積された写真に基づいて、サムネイル画像を作成する。すなわち、災害前サムネイル作成部35は、対象地域における災害前の写真の画像データに基づいてサムネイル画像を作成する。
【0046】
なお、災害前の写真データベースが予めサムネイル画像として画像データを蓄積している場合には、災害前サムネイル作成部35は必ずしも必要無い。しかしながら、災害前の写真のサムネイル画像は、後述する比較抽出部36において災害発生後のサムネイル画像と比較する都合上、サムネイル作成部22によるサムネイル作成方法と同じ方法で作成されている必要がある。したがって、災害前サムネイル作成部35を備えている場合には、当該システムのユーザは、ボタン操作等により災害前サムネイル作成部35におけるサムネイル作成方法を指定することができるという利点を有する。
【0047】
比較抽出部36は、本発明の検出部に対応し、サムネイル受信部31を介してサムネイル画像を受け取ることにより、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像に基づいて災害発生箇所を検出する。具体的には、比較抽出部36は、災害前サムネイル作成部35により予め作成された災害前における地上のサムネイル画像と、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像とを比較し、それらの差異に基づいて災害発生箇所を検出する。
【0048】
なお、サムネイル画像の比較による差異の検出方法は、様々な方法が考えられ、例えば色のスペクトルを比較する方法や、道路や川、山の稜線等の形を比較する方法等が考えられる。この検出方法自体は、従来技術として存在する画像比較の方法を利用してもよい。
【0049】
その他の構成は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0050】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。最初に、航空機に搭載されたカメラ1は、上空から地上の光学画像(あるいは赤外線画像)を撮像する。この際に、画像収集部21は、カメラ1により撮像された画像を収集し、サムネイル作成部22と画像蓄積部23とに出力する。画像蓄積部23は、画像収集部21により収集された画像を蓄積する。
【0051】
一方、サムネイル作成部22は、画像収集部21により収集された画像に基づいてサムネイル画像を作成し、サムネイル送信部24に出力する。サムネイル送信部24は、地上に設置された画像処理部3b内のサムネイル受信部31に対して、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像を無線通信によりリアルタイムに送信する。
【0052】
サムネイル受信部31は、サムネイル送信部24により送信されたサムネイル画像の画像データを受信し、受信したサムネイル画像を比較抽出部36に出力する。
【0053】
比較抽出部36は、災害前サムネイル作成部35により予め作成された災害前における地上のサムネイル画像と、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像とを比較し、それらの差異に基づいて災害発生箇所を検出する。この場合に、比較抽出部36は、検出情報を元画像要求部33に出力するとともに、災害発生箇所として検出したサムネイル画像の画像データを表示部4に出力する。表示部4は、比較抽出部36により出力されたサムネイル画像を表示する。
【0054】
元画像要求部33以降における動作は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0055】
上述のとおり、実施例2の形態に係る災害検出画像処理システムによれば、実施例1と同様の効果を得ることができるのみならず、予めサムネイル化した災害前の同一地域の画像と、収集したサムネイル画像とを比較することにより、地すべり等の大規模な災害の高速検出を行うことができる。すなわち、本実施例の災害検出画像処理システムは、実施例1の場合と異なり、温度条件によらずに災害検出を行うため、火災等のように温度の変化を伴う災害のみならず、地形の変化等をもたらす災害を迅速に検出することができる。
【0056】
なお、図4は、本実施例の災害検出画像処理システムの別の構成例を示すブロック図であり、図2と図3とを組み合わせた構成となっている。すなわち、図4に示す災害検出画像処理システムにおける画像処理部3cは、高温部抽出部32と比較抽出部36との両方を備えているため、温度条件に基づいて災害検出を行うことができるとともに、災害発生前後のサムネイル画像を比較して災害検出を行うこともできる。
【実施例3】
【0057】
図5は、実施例3の災害検出画像処理システムの構成を示すブロック図である。本実施例の災害検出画像処理システムは、図1に示すように、カメラ1、画像処理システム6、及び表示部4により構成される。また、画像処理システム6は、画像収集部21、サムネイル作成部22、画像蓄積部23、元画像伝送部25、元画像送信部26、及び高温部抽出部32により構成される。
【0058】
ここで、カメラ1と画像処理システム6とは、飛しょう体(本実施例においては航空機)に搭載されている。一方、表示部4は地上に設置されている。すなわち、実施例1の災害検出画像処理システムと異なる点は、高温部抽出部32を飛しょう体に搭載することにより、地上側における画像処理部3aが不要になった点である。
【0059】
本実施例において、カメラ1は、飛しょう体に搭載され、上空から地上を撮像する。ただし、本実施例におけるカメラ1は、赤外線センサを利用して、上空から地上の赤外線画像を撮像する。また、高温部抽出部32は、本発明の検出部に対応し、飛しょう体に搭載され、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像に基づいて、所定の温度条件を満たす箇所を災害発生箇所として検出する。
【0060】
その他の構成は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0061】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。最初に、航空機に搭載されたカメラ1は、赤外線センサを利用して、上空から地上の赤外線画像を撮像する。この際に、画像収集部21は、カメラ1により撮像された赤外線画像を収集し、サムネイル作成部22と画像蓄積部23とに出力する。画像蓄積部23は、画像収集部21により収集された赤外線画像を蓄積する。
【0062】
一方、サムネイル作成部22は、画像収集部21により収集された赤外線画像に基づいてサムネイル画像を作成し、高温部抽出部32に出力する。高温部抽出部32は、サムネイル作成部22により作成されたサムネイル画像に基づいて、所定の温度条件を満たす箇所を災害発生箇所として検出し、検出情報を元画像伝送部25に出力するとともに、災害発生箇所として検出したサムネイル画像の画像データを無線通信により表示部4に送信する。表示部4は、高温部抽出部32により送信されたサムネイル画像を受信し、表示する。
【0063】
元画像伝送部25は、高温部抽出部32により検出された災害発生箇所が含まれるサムネイル画像の情報を元画像送信部26に出力する。元画像送信部26は、元画像伝送部25により出力されたサムネイル画像の情報に基づいて、当該サムネイル画像を作成するための元となった画像の画像データを画像蓄積部23からダウンロードし、ダウンロードした画像データを無線通信により表示部4に送信する。表示部4は、元画像送信部26により送信された画像データを受信し、受信した画像データに基づく元画像を表示する。
【0064】
上述のとおり、実施例3の形態に係る災害検出画像処理システムによれば、実施例1と同様の効果を得ることができるのみならず、画像処理を航空機内で行うことができるため、地上側とのやり取りを経る必要が無く、迅速に災害発生箇所を検出し、直接的に地上側に設置された表示部4に検出結果を表示させることができる。
【0065】
単純に広域の画像データを処理する必要があるとすると、膨大な量のデータを扱うために装置が大掛かりなものとなり、地上に設置せざるを得ないと考えられるが、本発明の災害検出画像処理システムは、サムネイル画像を処理するものであるため、大掛かりな装置が必要でなく、装置の小型化が可能であり、高温部抽出部32を航空機に搭載でき、図5に示すような構成を実現することができる。
【0066】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 カメラ
2 画像収集センサ部
3a,3b,3c 画像処理部
4 表示部
5 災害前の写真データベース
6 画像処理システム
21 画像収集部
22 サムネイル作成部
23 画像蓄積部
24 サムネイル送信部
25 元画像伝送部
26 元画像送信部
31 サムネイル受信部
32 高温部抽出部
33 元画像要求部
34 元画像受信部
35 災害前サムネイル作成部
36 比較抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛しょう体に搭載され、上空から地上を撮像する撮像部と、
前記飛しょう体に搭載され、前記撮像部により撮像された画像データに基づいてサムネイル画像を作成するサムネイル画像作成部と、
前記サムネイル画像作成部により作成されたサムネイル画像に基づいて災害発生箇所を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする災害検出画像処理システム。
【請求項2】
前記検出部は、前記飛しょう体に搭載されていることを特徴とする請求項1記載の災害検出画像処理システム。
【請求項3】
前記飛しょう体に搭載され、前記サムネイル画像作成部により作成されたサムネイル画像の画像データを無線通信により地上側に送信する送信部と、
地上側に設置され、前記送信部により送信されたサムネイル画像の画像データを受信する受信部とを備え、
前記検出部は、地上側に設置され、前記受信部により受信された画像データを受け取ることにより、前記サムネイル画像作成部により作成されたサムネイル画像に基づいて災害発生箇所を検出することを特徴とする請求項1記載の災害検出画像処理システム。
【請求項4】
前記検出部は、予め作成された災害前における地上のサムネイル画像と、前記サムネイル画像作成部により作成されたサムネイル画像とを比較し、それらの差異に基づいて災害発生箇所を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の災害検出画像処理システム。
【請求項5】
前記撮像部は、上空から地上の赤外線画像を撮像し、
前記サムネイル画像作成部は、前記撮像部により撮像された赤外線画像の画像データに基づいてサムネイル画像を作成し、
前記検出部は、前記サムネイル画像作成部により作成されたサムネイル画像に基づいて、所定の温度条件を満たす箇所を災害発生箇所として検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の災害検出画像処理システム。
【請求項6】
前記撮像部により撮像された画像データを蓄積する画像蓄積部と、
前記画像蓄積部に蓄積された画像データの中から、前記検出部により検出された災害発生箇所に対応する画像データを選択して出力する元画像出力部と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の災害検出画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−124655(P2012−124655A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272579(P2010−272579)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】