説明

炉心シュラウド溶接検査システム及び方法

【課題】炉心シュラウドに対してROVを保持するためのスラストファンによって装置の寸法が大きくなるという課題を解決する。
【解決手段】検査範囲の拡大及び検査時間の短縮に寄与する断面形状、スキャン機能、及び信頼性を有する遠隔作業機110を備える。前記遠隔作業機110の断面形状は、前記炉心シュラウドの表面に適合するよう湾曲してもよい。前記遠隔作業機110は、前記炉心シュラウドの円周の周囲で前記遠隔作業機110を移動させるように構成された一組の水平車輪と、前記炉心シュラウドの軸に沿って前記遠隔作業機110を移動させるように構成された一組の垂直車輪とを備えることができる。また遠隔作業機110を炉心シュラウドに押し付ける真空システムを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、水中構造物を検査するシステム及び方法に関し、より詳細には、沸騰水型原子炉の炉心シュラウドの溶接部を検査するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉(BWR)は、安全及び保全のために検査する必要がある。特に、BWRの炉心シュラウドの溶接部は、粒間応力腐食割れ(IGSCC)を確認するために検査する必要がある。検査は、通常、目視検査方法及び超音波プローブを用いて原子炉の運転休止中に実行される。超音波プローブは、溶接部の割れの長さ及び深さを測定する。
【0003】
ほとんどのBWRは、現在利用できる検査装置が炉心シュラウドの特定の溶接位置にアクセスするのを困難にするジェットポンプ等の様々な構造物を備えている。また、全てのBWRは独特であり、単一のツールで実働全BWRを検査することをできにくくする。BWR炉心シュラウドは、深さが増加するにつれて減少する異径バレルを収容している。その結果として生じる出っ張り及び直径変動は、アクセスのしやすさを課題にしている。
【0004】
検査ツールは、一般的に、破片が原子炉内で落下又は紛失する可能性を最小限にするように精密に設計されている。ほとんどの検査ツールは、アクセスのしやすさを最大限にすると同時に、材料の損失を防ぎ、故障を最小限にするように特注される。ツールの故障は、BWRを検査する時間が増加するという点で費用がかかる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠隔作業機(ROV)は、主に100フィートまで水に沈めることができなければならないということもあって、一般的に大きすぎて炉心シュラウドを検査するために用いることができない。スラストファンは、炉心シュラウドに対してROVを保持するためにROV上で通常用いられる。必要な推力を発生させるために必要であるスラストファンはROVの寸法を増大させ、それによってそのアクセスのしやすさを制限する。スラストファンはまた、故障リスク及び原子炉内で部品の潜在的な損失リスクがある可動部品の数を増加させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
様々な実施形態は、原子炉の炉心シュラウドを検査するシステム及び方法を提供する。例示的実施形態によれば、検査用遠隔作業機(ROV)は、沸騰水型原子炉(BWR)の炉心シュラウドの外径に隣接する構造物の後ろを移動するように、且つ可動部品を用いずにBWRの炉心シュラウドに取り付けられるように構成される。ROVは、炉心シュラウドの溶接部を効率的に検査するように構成されており、それはROVが、炉心シュラウドの様々な位置をカバーするためのテレスコープ装置によって、頻繁に炉心シュラウドの表面から取り外す必要がなく、配向の異なる溶接部を検査するために取り外して再構成する必要がなく、且つ可動部品が少ないので頻繁に取り外してメンテナンスする必要がないからである。従って、ROVは、検査をより費用効果が高く効率的にする。低い断面形状、スキャン機能、及び信頼性の増大が、検査範囲の拡大及び検査時間の短縮に寄与する。
【0007】
例示的実施形態によれば、炉心シュラウドを検査する検査システムは、炉心シュラウドの表面から測定したときの高さを最小限にするために炉心シュラウドの表面に適合するように構成された遠隔作業機を備える。ある実施形態では、遠隔作業機の断面形状が炉心シュラウドの表面に適合するように湾曲しており、またある実施形態では、遠隔作業機がばね荷重ヒンジによって翼に接続された腹部を備える。例示的実施形態の遠隔作業機は、ある実施形態では、超音波プローブ及び超音波プローブを平行移動及び回転させるように構成されたプローブ位置決めシステムの1つ以上と、炉心シュラウドの円周の周囲で遠隔作業機を移動させるように構成された一組の水平車輪及び炉心シュラウドの軸に沿って遠隔作業機を移動させるように構成された一組の垂直車輪と、取り付けアームをその平坦な中間部分に案内するように構成されたハンドルと、遠隔作業機を炉心シュラウドの表面に固着するように構成された真空システムとを更に備える。真空システムは、遠隔作業機内の空隙から水を吸い上げるように構成されたベンチュリ弁と、ベンチュリ弁に水圧を供給するように構成されたポンプとを備える。
【0008】
上述の内容は様々な実施形態の幾つかの態様及び特徴を大まかに概説したが、様々な潜在用途の単なる例示として解釈すべきである。異なる様式で開示情報を適用することによって、又は開示される実施形態の様々な態様を組み合わせることによって、その他の有益な結果も得ることができる。特許請求の範囲によって定義される技術的範囲に加えて、添付図面に関連してなされる例示的実施形態の詳細な説明を参照することによって、その他の態様及びより包括的な解釈も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】沸騰水型反応炉(BWR)と、例示的実施形態に従った、BWRの炉心シュラウドの外側に遠隔作業機(ROV)を備えた検査システムとの部分斜視図である。
【図2】図1のROVの平面図である。
【図3】図2のROVの端面図である。
【図4】図2のROVの真空システムの部分斜視図である。
【図5】図2のROVのナビゲーションシステムの部分概略端面図である。
【図6】図2のROVのナビゲーションシステムの部分概略端面図である。
【図7】図2のROVの溶接スキャニングシステムの部分斜視図である。
【図8】図4の真空システムの部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
必要に応じて、詳細な実施形態が本明細書において開示される。開示される実施形態は単なる例示であって、様々な代替形態及びそれらの組み合わせで実施できることを理解されたい。本明細書において使用される場合、「例示」という単語は、実例、見本、モデル、又はパターンとして役立つ実施形態に言及するために拡張的に用いられる。図面は必ずしも正確な縮尺ではなく、特定の構成要素の詳細を示すために幾つかの特徴が誇張又は最小化されることがある。他の例では、当業者に公知の構成要素、システム、材料、又は方法は、本発明を不明瞭にするのを避けるために詳細には説明していない。従って、本明細書に開示される特定の構造的且つ機能的詳細は、限定的であると解釈すべきではなく、単なる特許請求の範囲の基礎及び当業者に教示するための典型的基礎として解釈すべきである。
【0011】
例示的実施形態は、沸騰水型反応炉(BWR)の炉心シュラウドという状況において本明細書で説明されている。しかしながら、例示的実施形態がその他の水中構造物を含むその他の状況において適用できることは当業者にとって明らかであろう。本明細書の教示は構造物の内面又は内径に適用することもできるが、本明細書に記載の実施形態は構造物の外面又は外径に対して構成されている。
【0012】
図1を参照すると、BWRの原子炉圧力容器(RPV)10は炉心シュラウド20を備える。炉心シュラウド20は、原子炉心22を囲む、RPV10の内側の多径段付きシリンダである。一般的に言えば、炉心シュラウド20は、原子炉炉心22を通って上方へ冷却剤流を案内し、上部格子板、蒸気乾燥器、及び炉心スプレーアセンブリの支持を行なう。RPV10は、アニュラス(環状部)にジェットポンプ等の様々な炉心シュラウド構造物24を備える。炉心シュラウド20は、例えば、垂直及び水平溶接部によってステンレス鋼から製造できる。
【0013】
図1〜3を参照すると、検査システム100は、遠隔作業機(ROV)110と、ROV110を制御する制御装置112とを備える。ROV110は、炉心シュラウド20の外面の断面形状に適合し、炉心シュラウド20の外面に取り付けられ、炉心シュラウド20の外面に沿って進み、且つ炉心シュラウド20の溶接部を検査するように構成される。そうするために、ROV110は、下記に詳述する真空システム、ナビゲーションシステム、及び検査システムを備える。制御装置112は、モータ、ポンプ、及びピストンを制御し、且つモータ及びその他のセンサからのフィードバックを受信してROV110及び超音波プローブを溶接部又はその他の位置の割れに対して位置決めするように構成される。更に、制御装置112は、超音波プローブを制御して、例えば、割れの長さ及び幅の測定を行なうように構成される。制御装置112とこれらの要素の各々との間の接続は、ケーブル114で表される。
【0014】
制御装置112は、プロセッサと、ソフトウェアモジュールを格納するメモリ又はその他のコンピュータ記憶媒体とを備える。ソフトウェアモジュールは、本明細書に記載のシステムを制御して本明細書に記載の方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を備える。本明細書に記載の方法は、折に触れて、コンピュータ実行可能命令という一般的状況において説明することがあるが、本発明の方法はその他のプログラムモジュールと組み合わせて、且つ/又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせとして実施することもできる。モジュールという用語、又はその変形語は、本明細書においてルーチン、プログラムアプリケーション、プログラム、コンポーネント、データ構造、アルゴリズムなどを含むように拡張的に用いられる。モジュールは、サーバ、ネットワークシステム、シングルプロセッサ又はマルチプロセッサシステム、マイクロコンピュータ、メインフレームコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ハンドヘルドコンピューティングデバイス、モバイル装置、マイクロプロセッサベースのプログラマブルコンシューマエレクトロニクス、それらの組み合わせなどを含む様々なシステム構成上で実施できる。
【0015】
コンピュータ可読媒体には、例えば、揮発性メディア、不揮発性メディア、リムーバブルメディア、及びノンリムーバブルメディアが含まれる。コンピュータ可読媒体という用語とその変形語は、本明細書及び特許請求の範囲で用いられているように、記憶媒体に言及するものである。一部の実施形態では、記憶媒体には、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、固体メモリ又はその他のメモリ技術、CD−ROM、DVD、ブルーレイ、或いはその他の光学ディスク記憶装置、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又はその他の磁気記憶装置等の、揮発性及び/又は不揮発性、リムーバブル及び/又はノンリムーバブルメディアが含まれる。
【0016】
ROV110は、腹部120と、腹部120の対向側面に位置決めされた翼122とを備える。図3を参照すると、腹部120及び翼122は、ROV110の断面形状が炉心シュラウド20の外面の湾曲に適合するような湾曲断面形状を有している。一般的に、腹部120及び翼122の各々の湾曲は、炉心シュラウドの外半径に依存する。
【0017】
ROV110は、様々な炉心シュラウド20の表面に適合するように構成される。例えば、ROV110は、60インチ半径の炉心シュラウド及び110インチ半径の炉心シュラウドの両方に適合するように構成される。異なる直径の炉心シュラウド20に適合するために、翼122は、各々がばね荷重ヒンジ124によって腹部120に取り付けられている。炉心シュラウド20に取り付けられる場合、ROV110は、各ヒンジ124の軸が炉心シュラウド20の縦軸に対して実質的に垂直又は平行であるように炉心シュラウド20に対して配向される。ばね荷重ヒンジ124は、炉心シュラウド20の表面に向かって翼122を付勢する。ばね荷重ヒンジ124は、トーションばねを備える。翼122の移動の範囲は、翼122が開放したままで、ROV110が炉心シュラウド20に容易に取り付けることができるように一定範囲に限られている。トーションばねの強度は大きすぎないように選択されていて、トーションばねが以下に詳述する取り付けシステムの機能を台無しにしないようになっている。例えば、トーションばねの強度は、ROV110の腹部120を実質的に炉心シュラウド20から遠ざけることがないように選択される。トーションばねの強度はまた、以下に詳述するように、検査システムの要素を炉心シュラウド20に対して十分に保持するように選択される。
【0018】
ROV110は炉心シュラウド20の外面に適合するので、ROV110は、炉心シュラウド20の近くに位置決めされて低い断面形状を維持するように構成される。例えば、断面形状高さは、炉心シュラウド20の表面からの半径方向の距離として測定できる。図1を参照すると、ROV110の低い断面形状は、ROV110がアニュラス内のジェットポンプ及びその他の障害物等の様々な炉心シュラウド構造物24の下を移動できるようになっている。例えば、ROV110は1.7インチの最大断面形状高さを有する。この高さで、ROV110はアニュラス内のほとんどの障害物の後ろを動くことができる。更に、炉心シュラウド20は湾曲断面形状を有しているので、ROV110の湾曲形状は、翼122の外縁部であっても1.7インチ未満の高さを維持する。
【0019】
図1、2、4、及び8を参照すると、ROV110は、ROV110を炉心シュラウド20の表面に制御可能に固着させる又は押し付けるように構成された真空システム130の要素を備える。真空システム130は、腹部120の空隙126内に低圧又は真空空間を形成する。空隙126は、密封リング132によって画定される。密封リング132は、空隙126内の圧力を低下させるか、又は別の方法で制御して、ROV110を炉心シュラウド20の表面に固着させることができるように、炉心シュラウド20の表面に対して密封して空隙126をアニュラスから隔離するように構成される。密封リング132は、炉心シュラウド20の表面上の障害物の上を移動するように構成される。一般に、密封リング132は丸い断面形状を有し、ROV110が様々な表面変化、例えば溶接部クラウンの上を移動できるように可撓性材料から製造される。例示的な密封リング132には、j字型ポリウレタン、フォームなどが含まれる。フォーム密封リング132をより詳細に説明する。
【0020】
図8を参照すると、密封リング132は、ネオプレン被覆ナイロンカバー232で覆われた独立気泡フォームリング230又はスカートを備える。内輪及び外輪状プレート234,236は、腹部にボルト留めされて、ナイロンカバー232の内縁及び外縁を腹部に対して保持し、且つナイロンカバー232をフォームリング230の上に保持する。フォームリング230は、真空シールを依然として維持しながら、圧縮及び膨張して障害物の上を移動できる。フォームリングは、その他のシール設計に関連する問題である、折り曲げや吸引力の損失を伴わずに障害物の上を移動することがわかった。ネオプレン被覆ナイロンカバー232は、密封リング132が耐久性があって堅牢であるようにフォームリング230を保護する。
【0021】
ある実施形態では、1つの密封リングが障害又は障害物の上を移動している間に吸引力を失った場合にROVが表面に取り付けられたままであるように、複数の密封リング132が使用される。
【0022】
図2及び4を参照すると、真空システム130は、ベンチュリ弁134又は制量穴(ジェット)と、ポンプ136又はその他の加圧水供給装置と、ポンプ136をベンチュリ弁134に接続するホース138とを更に備える。制御装置112は、ポンプ136を制御するように構成される。ポンプ136は、アニュラスから水を吸い上げ、水をベンチュリ弁134に供給する。ポンプ136は、例えば、燃料補給フロアの水位より上の炉心シュラウド20の頂部に位置付けることができる。ポンプ136は、既にRPV10内にある水を再循環させるように構成される。
【0023】
ベンチュリ弁134は、ポンプ136によって供給される水圧に応じて空隙126から水を移動させるように構成される。チャンネル140は、空隙126を流路142に接続する。ベンチュリ弁134の流路142は狭くなってから、ポンプ136によってベンチュリ弁134に供給された加圧水がベンチュリ弁134の低圧位置144で低圧を発生させるように流れ方向に広がる。チャンネル140は、低圧位置144において流路142に接続する。そのようにして、ベンチュリ弁134を通ってポンプ136によって供給された加圧水は、空隙126からベンチュリ弁134の流路142へと水を吸い上げて、空隙126内の圧力を低下させる。ベンチュリ弁134は、空隙126内の圧力を低下させるために可動部品を必要としない。従って、ベンチュリ弁134は、真空システム130の故障のリスクを減らし、RPV10への破片の入り込みを減少させる。ベンチュリ弁134は、空隙から水を直接吸い上げるポンプを用いた場合と比較して、真空力のより優れた制御を可能にする。ベンチュリ弁134によってもたらされる真空力は、ポンプ136からの加圧水又はポンプ流に応じて制御される。
【0024】
図2を参照すると、ROV110は、以下で詳述するように、ROV110を炉心シュラウド20の表面に沿って移動させて超音波プローブを包括的に位置決めするように構成されるナビゲーションシステム150を更に備える。移動しているとき、ROV110は、ROV110の断面形状を炉心シュラウド20の表面の断面形状に適合させるように、炉心シュラウド20に対してその配向を維持する。ROV110は、モータ駆動車輪を用いて水平方向及び垂直方向の両方に動くように構成される。一般的に、ROV110は平行移動はするが回転はしない。
【0025】
ナビゲーションシステム150は、ROV110を水平方向に又は炉心シュラウド20の円周の周囲で移動させるように構成された一組の水平車輪152を備える。ナビゲーションシステム150はまた、ROV110を垂直方向に又は炉心シュラウド20の縦軸に沿って移動させるように構成された一組の垂直車輪154を備える。図5及び6を参照すると、水平車輪152は適切な位置に固定され、垂直車輪154は格納及び伸長するように構成される。図5に示す水平移動動作モード中、水平車輪152は炉心シュラウド20の表面に接触し、垂直車輪154は炉心シュラウド20の表面と接触しないように格納される。図6に示す垂直移動動作モード中、垂直車輪154は、炉心シュラウド20の表面に接触し、且つ水平車輪154が炉心シュラウド20の表面と接触しないように水平車輪154を解放するように伸長する。垂直車輪154は、制御装置112による空気圧ピストン155(図2、5、及び6に概略的に示す)の作動によって伸長する。例えば、そのような空気圧ピストン155は、四角形(クワド)リングシール及びシリンダ用の青銅インサートを備えて特注される。垂直車輪154は、深さでの水圧、真空付着力、及び/又は引張ばね(図示せず)によって格納される。
【0026】
図2を再び参照すると、各組の車輪152,154は、各組の車輪152,154を駆動するモータ156,158が制御装置112によって制御されるので、制御装置112によって駆動されるように構成される。車輪152,154は、モータ156,158によって独立して作動させられて、必要に応じて移動方向を円滑に修正するように構成される。各組の車輪152,154は、制御装置112に位置フィードバックを提供する独立型非駆動車輪162,166を有する。被駆動車輪162,166は、受動的であってエンコーダ160,164に連結される。エンコーダ160,164は、炉心シュラウド20の表面上のROV110の位置、特に超音波プローブの位置を測定するために、例えば、放射線硬化型傾斜計、ジャイロスコープセンサ、深度センサなどのその他のセンサ(図示せず)と共に使用される。車輪の材料は、原子力発電所で用いるための要件に適合し、且つ水中の場合、炉心シュラウド20の表面に対して最適摩擦係数を有するように選択される。更に、ナビゲーションシステム150は、翼122を支持するボールローラ168を備える。
【0027】
図2及び7を参照し続けると、ROV110は、炉心シュラウド20の溶接部を検査するように構成された溶接スキャニングシステム170を備える。溶接スキャニングシステム170は、超音波プローブ172と、様々な溶接部を検査するために超音波プローブ172を局所的に位置決めするように構成されたプローブ位置決めシステム174とを備える。プローブ位置決めシステム174は、水平溶接部、垂直溶接部、及び水平と垂直との間の角度にある溶接部を含む様々な配向の溶接部を検査するために超音波プローブ172を位置決めするように構成される。プローブ位置決めシステム174は、翼122の外縁にスキャンアーム176を備える。一般に、スキャンアーム176は実質的に同様で対称的に配向される。教示のために、スキャンアーム176の1つをより詳細に説明するが、その説明はスキャンアーム176の各々に適用できる。
【0028】
スキャンアーム176は、レール178と、リニア軸受182によってレール178に取り付けられたジンバル180とを備える。例えば、レール180によって2フィートのスキャン長が与えられる。リニア軸受182は、信頼性及び最小異物(FM)の可能性に基づいて選択される。モーション駆動機構は、レール178に沿ってジンバル180を移動すべく作動するように構成される。例えば、モーション駆動機構は、親ねじ186を駆動するモータ184を備える。モータ184は、親ねじ186にトルクを伝達するようにベルト又は歯車列を用いて親ねじ186に連結される。親ねじ186は、リニア軸受182に連結される。モータ184は、レール178に沿ってジンバル180の移動を最小限に制限するように親ねじ186からオフセットされる。
【0029】
各超音波プローブ172はジンバル180の1つに取り付けられ、各ジンバル180は作動接合部190を備える。作動モータ192は、ジンバル180の近位部分181に対してジンバル180の遠位部分181を接合部190の周りで回転させるように構成される。確実な力強い回転を達成するために、ウォーム歯車が使用される。これは、機構が低い断面形状を維持するだけでなく、高い歯車比を達成することを可能にするため、小型モータを使用できる。動作中、接合部190は、回転方向が炉心シュラウド20の表面に対して実質的に垂直になるように配向される。ジンバル180は、超音波プローブ172を炉心シュラウド20の表面に対して付勢するように構成されたトーションばね194を備える。異物排除(FME)ガード(図示せず)を使用して、トーションばねが覆われる。超音波プローブ172は、回転して炉心シュラウド20の表面と実質的に平面接触するようにジンバル180に取り付けられる。
【0030】
各超音波プローブ172は、関連レール178の長さに沿って位置決めされ、且つ溶接部を検査するために180度の範囲の角度で位置決めされるように構成される。超音波プローブ172は、ROV110の側面に沿って、並びにROV110の上下で水平溶接部及び垂直溶接部を検査するように位置決めできる。超音波プローブ172は、互いに独立して移動及び位置決めできる。制御装置112は、モータ184,192の作動を制御して超音波プローブ172を位置決めする。
【0031】
図1及び2を参照すると、ROV110は、アーム202によるROV110の取り付けを円滑にするためにベールハンドル200を更に備える。一般的に、アーム202は、ポール204と、ポール204の端のグラバー206とを備えており、例えば、水中30〜70フィートでROV110を取り付けるように構成される。ベールハンドル200は、グラバー206に係合し、且つROV110を実質的にまっすぐな垂直位置にセンタリング及び位置合わせしてROV110の炉心シュラウド20への取り付けを円滑にするように構成される。ポール204は、炉心スプレー管路を回避し、且つ下部のバレル又はその他の炉心シュラウド構造物24にアクセスするように構成されたオフセットハンドリングポールである。グラバー206は、閉位置に向かって付勢される。グラバー206の開放動作は、空気ポンプ(図示せず)によって空気が供給されるピストンによって駆動される。そのため、供給空気の減量時も、グラバー206は閉位置にとどまってベールハンドル200に係合したままである。
【0032】
ベールハンドル200は、平坦な中間部分212に向かって傾斜する、隆起した外縁部210を備える。平坦な中間部分212の幅Wは、グラバー206の幅と実質的に等しい。グラバー206が中間部分212に係合すると、ROV110はアーム202にセンタリングされ、適切に配向されて取り付けられる。隆起した外縁部210は、ベールハンドル200が係合するようにグラバー206を中間部分212に向かって案内する。そのようにして、ベールハンドル200は、ベールハンドル200の正確な中心に係合するようにグラバー206を位置決めすることが難しい場合であっても、一貫して適切にグラバー206に係合するように構成される。
【0033】
次に、溶接部を検査する方法を大まかに説明する。各ステップは、制御装置112によるコンピュータ実行可能命令のソフトウェアモジュールの実行に従って行なわれる。取り付けアーム202は、ROV110を炉心シュラウド20上の位置に移動させる。真空システム130がROV110を炉心シュラウド20に取り付け、アーム202がROV110を解放する。ナビゲーションシステム150は、炉心シュラウド20の表面に沿ってROV110を移動させて、ROV110を包括的に位置決めする。プローブ位置決めシステム174は、溶接部の割れ又は測定すべき別の特徴に対して超音波プローブ172を局所的に位置決めして配向する。プローブ172は割れの長さ及び幅を測定し、測定値は制御装置112のメモリに記憶される。選択されたステップは、更なる測定を行なうために必要に応じて繰り返される。
【0034】
上記の実施形態は、本発明の原理を明確に理解するために記載される実施態様の例示的な説明にすぎない。特許請求の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に関する変形、変更及び組み合わせを行なうことができる。全てのそのような変形、変更及び組み合わせは、本開示内容及び特許請求の範囲の技術的範囲によって本明細書に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
10 原子炉圧力容器(RPV)
20 炉心シュラウド
22 原子炉炉心
24 炉心シュラウド構造物
100 検査システム
110 遠隔作業機(ROV)
112 制御装置
114 ケーブル
120 腹部
122 翼
124 ばね荷重ヒンジ
126 空隙
130 真空システム
132 密封リング
134 ベンチュリ弁
136 ポンプ
138 ホース
140 チャンネル
142 流路
144 低圧位置
150 ナビゲーションシステム
152 水平車輪
154 垂直車輪
155 空気圧ピストン
156 モータ
158 モータ
160 エンコーダ
162 非駆動車輪
164 エンコーダ
166 非駆動車輪
168 ボールローラ
170 溶接スキャニングシステム
172 超音波プローブ
174 位置決めシステム
176 スキャンアーム
178 レール
180 ジンバル
181 ジンバルの遠位部分
182 リニア軸受
184 モータ
186 親ねじ
190 作動接合部
192 作動モータ
194 トーションばね
200 ベールハンドル
202 アーム
204 ポール
230 独立気泡フォームリング
232 ナイロンカバー
234 内輪プレート
236 外輪プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心シュラウドを検査する検査システムであって、
前記炉心シュラウドの表面から測定したときの高さを最小限にするために前記炉心シュラウドの表面に適合するように構成された遠隔作業機を備える、検査システム。
【請求項2】
前記遠隔作業機の断面形状が前記炉心シュラウドの表面に適合するよう湾曲している、請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記遠隔作業機は、
前記炉心シュラウドの円周の周囲で前記遠隔作業機を移動させるように構成された一組の水平車輪と、
前記炉心シュラウドの軸に沿って前記遠隔作業機を移動させるように構成された一組の垂直車輪とを備える、請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記遠隔作業機は、
超音波プローブと、
前記超音波プローブを平行移動及び回転させるように構成されたプローブ位置決めシステムとを備える、請求項3に記載の検査システム。
【請求項5】
前記遠隔作業機はばね荷重ヒンジによって翼に接続された腹部を備える、請求項1に記載の検査システム。
【請求項6】
前記遠隔作業機の断面形状が前記炉心シュラウドの表面に適合するよう湾曲している、請求項5に記載の検査システム。
【請求項7】
前記遠隔作業機は、
超音波プローブと、
前記超音波プローブを平行移動及び回転させるように構成されたプローブ位置決めシステムとを備える、請求項5に記載の検査システム。
【請求項8】
前記遠隔作業機は、
前記炉心シュラウドの円周の周囲で前記遠隔作業機を移動させるように構成された一組の水平車輪と、
前記炉心シュラウドの軸に沿って前記遠隔作業機を移動させるように構成された一組の垂直車輪とを備える、請求項7に記載の検査システム。
【請求項9】
前記遠隔作業機は、
超音波プローブと、
前記超音波プローブを平行移動及び回転させるように構成されたプローブ位置決めシステムとを備える、請求項1に記載の検査システム。
【請求項10】
前記遠隔作業機は、
前記炉心シュラウドの円周の周囲で前記遠隔作業機を移動させるように構成された一組の水平車輪と、
前記炉心シュラウドの軸に沿って前記遠隔作業機を移動させるように構成された一組の垂直車輪とを備える、請求項1に記載の検査システム。
【請求項11】
前記組の車輪の少なくとも一方は伸長及び格納するように構成される、請求項10に記載の検査システム。
【請求項12】
前記遠隔作業機は、
超音波プローブと、
前記超音波プローブを平行移動及び回転させるように構成されたプローブ位置決めシステムとを備える、請求項10に記載の検査システム。
【請求項13】
前記遠隔作業機は、
取り付けアームをその平坦な中間部分に案内するように構成されたハンドルを備える、請求項1に記載の検査システム。
【請求項14】
前記ハンドルは、前記中間部分に向かって傾斜する、隆起した外縁部を備える、請求項13に記載の検査システム。
【請求項15】
前記遠隔作業機は、
前記遠隔作業機を前記炉心シュラウドの表面に固着するように構成された真空システムであって、
前記遠隔作業機内の空隙から水を吸い上げるように構成されたベンチュリ弁と、
前記ベンチュリ弁に水圧を供給するように構成されたポンプとを含む前記真空システムを備える、請求項1に記載の検査システム。
【請求項16】
前記真空システムは、前記空隙を画定する密封リングを備える、請求項15に記載の検査システム。
【請求項17】
前記密封リングは、フォームリング及び前記フォームリング上のカバーを備える、請求項16に記載の検査システム。
【請求項18】
炉心シュラウドを検査する検査システムであって、
遠隔作業機を備えており、前記遠隔作業機は、
前記遠隔作業機を前記炉心シュラウドの表面に固着するように構成された真空システムであって、
前記遠隔作業機内の空隙から水を吸い上げるように構成されたベンチュリ弁と、
前記ベンチュリ弁に水圧を供給するように構成されたポンプとを含む前記真空システムを備える、検査システム。
【請求項19】
前記真空システムは、前記空隙を画定する密封リングを備える、請求項18に記載の検査システム。
【請求項20】
前記密封リングは、フォームリング及び前記フォームリング上のカバーを備える、請求項19に記載の検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−118069(P2012−118069A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−258403(P2011−258403)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
【Fターム(参考)】