説明

炉組立部品搬送装置を有する連続焼成炉

【課題】 炉組立部品を、誰にでも安全に効率良く搬送する。
【解決手段】 炉組立部品搬送装置を有する連続焼成炉は、炉11、12または炉を形成するためのスペースの上方レベルにおいて炉長さ方向にのびた水平状レール42、43、45、46と、レール42、43、45、46にそって走行しうるように配置されているキャリヤ44、47、48と、キャリヤ44、47、48に装備されている巻上機61、91とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、連続焼成炉の組立時において、上方開放横断面略コ字状炉本体の左右両側壁の上端に、トップヒータをまたがらせるように載せる際に、そのトップヒータを垂直および/または水平方向に搬送したり、また、組立後、連続焼成炉のメンテナンス時において、トップヒータを交換したり、その他の部品、カバー、カバー用補強レール、サイドヒータ、マッフルガラス等を搬送するために用いられる炉組立部品搬送装置を有する連続焼成炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記炉組立部品の搬送は、もっぱら作業者の人手によって行っており、効率的でなかった。とくに、トップヒータは重量物であるため、これを人手によって搬送することは危険であり、また、限られた腕力以上の作業者だけしか行うことができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の目的は、上記問題点を解決し、炉組立部品を、誰にでも安全に効率良く搬送することのできる炉組立部品搬送装置を有する連続焼成炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明による炉組立部品搬送装置を有する連続焼成炉は、炉または炉を形成するためのスペースの上方レベルにおいて炉長さ方向にのびた水平状レールと、レールにそって走行しうるように配置されているキャリヤと、キャリヤに装備されている巻上機とを備えているものである。
【0005】
この発明による炉組立部品搬送装置を有する連続焼成炉では、炉組立部品を、巻上機によって上下方向に搬送しうるとともに、キャリヤを走行させることによって水平方向に搬送することができる。したがって、炉組立部品を、誰にでも安全に効率良く搬送することができる。
【0006】
さらに、キャリヤが、左レールおよび右レールに、これらにまたがって載せられており、巻上機が、キャリヤの左右両縁部にそれぞれ対応させられている左巻上機および右巻上機を有していると、炉組立部品を、左右の側から吊下げた状態で搬送できるため、搬送時の炉組立部品の姿勢が安定させられる。しかも、1つのキャリヤによって炉組立部品を搬送することができるから、炉組立部品の水平方向の移動を容易かつスムースに行うことができる。
【0007】
また、キャリヤが、左レール上に載せられている前後2つの左走行輪と、これらの左走行輪を連結している左キャリヤ本体と、右レール上に載せられている前後2つの右走行輪と、これらの右走行輪を連結している右キャリヤ本体と、左キャリヤ本体および右キャリヤ本体にこれらにまたがるように設けられている連結フレームと、連結フレームに炉の幅以上の間隔をおいて左右方向に相対するように立てられている左右一対の門型フレームとを有しており、各巻上機が、巻き胴を門形フレームの頂部から吊下げたレバーホイストであると、キャリヤをスムースに走行させることができるとともに、レバーホイストによって炉組立部品を簡単に上げ下げすることができる。
【0008】
さらに、上記キャリヤに代わり、キャリヤが、左レールおよび右レールにそれぞれ載せられている左キャリヤおよび右キャリヤよりなり、巻上機が、左キャリヤおよび右キャリヤにそれぞれ対応されられている左巻上機および右巻上機を有していると、キャリヤ移動経路が嵩張らないため、組立作業を楽に行うことができる。
【0009】
また、各レールが、リップ溝形鋼よりなるものであって、垂直ウェッブおよびこれの上下端にそれぞれ連なる上下フランジを有しており、各キャリヤが、下フランジを上下から挟んでいる上下走行輪と、これらの走行輪を連結しているキャリヤ本体とを有しており、各巻上機が、巻き胴をキャリヤ本体から吊下げたレバーホイストであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、炉組立部品を、誰にでも安全に効率良く搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施の形態を図面を参照しながらつぎに説明する。
【0012】
以下の説明において、図1の紙面と直交する方向を前後といい、図1の左右の側を左右というものとする。
【0013】
図1を参照すると、連続焼成炉は、上段炉11および下段炉12を備えている。上段炉11および下段炉12の幅は、互いに等しい。
【0014】
上段炉11は、前後方向にのびた上方開放横断面略コ字状上段炉本体21と、上段炉本体21の左右側壁上端にまたがりかつ前後方向に隣接するように載せられている複数の上段トップヒータ22と、炉11内を左右方向に横断するようにのびて上段炉本体21の左右側壁に貫通状に支持されている前後並列状複数の上段搬送ローラ23とを備えている。
【0015】
上段トップヒータ22は、左右方向に長い方形平板状のものである。上段トップヒータ22の左右両端面には上段吊り具24がそれぞれ取付られている。吊り具24は、図3および図4に詳しく示すように、略垂直板状のものである。上段吊り具24の頂部は、上段トップヒータ22の上面よりも上方に突出させられている。その頂部には上段フック孔25があけられている。
【0016】
下段炉12は、上段炉11と同一構造のものであって、下段炉本体31、下段トップヒータ32および下段搬送ローラ33を備えている。
【0017】
下段トップヒータ32の左右両端面には下段吊り具34がそれぞれ取付られている。下段吊り具34は、図5および図6に示すように、L字片よりなる。下段吊り具34の水平部の前後方向中央には、下段フック孔35が設けられている。下段フック孔35の前後方向一方の側には逃げ36が形成されている。
【0018】
上段炉本体21および下段炉本体31の底壁左右両縁部の前後方向複数か所には垂直状支持バー41が渡し止められている。左右両側の支持バー41の間隔は、炉11、12の幅よりも大きくなっている。
【0019】
左側の複数の支持バー41の上端には、これらを連絡するように前後方向にのびた水平状上段左レール42が設けられている。上段左レール42と同じように、右側の複数の支持バー41の上端には上段右レール43が設けられている。上段左レール42および上段右レール43には、これらにまたがって上段キャリヤ44が載せられている。
【0020】
上段炉本体21の底壁下面左縁部には下段左レール45が設けられるとともに、その右縁部に下段右レール46が設けられている。下段左レール45および下段右レール46は、下段炉12の幅よりも若干大きい間隔をおいて互いに平行に前後方向にのびている。下段左レール45には下段左キャリヤ47が載せられている。下段右レール46には下段右キャリヤ48が載せられている。
【0021】
上段左レール42および上段右レール43は、左右の向きは逆であるが、同一構造のもので、互いに平行に前後方向にのびた横断面L字状上段レール部材よりなる。左右の上段レール部材の間隔は、左右の支持バー41の間隔とほぼ等しくなっている。
【0022】
上段キャリヤ44は、左レール部材上で前後に間隔をおいて受けられている左走行輪51と、これらの走行輪51を連結している上段左キャリヤ本体52と、右レール部材上で前後に間隔をおいて受けられている右走行輪53と、これらの走行輪53を連結している上段右キャリヤ本体54と、上段左キャリヤ本体52および上段右キャリヤ本体54にこれらにまたがるように設けられている左右に長い水平方形枠状連結フレーム55と、連結フレーム55に立てられている左右一対の門型フレーム56とを備えている。左右の門型フレーム56は、炉11、12の幅とほぼ等しい間隔をおいて左右方向に相対させられている。
【0023】
両門型フレームには、巻き上げ機である上段レバーホイスト61がそれぞれ装備されている。上段レバーホイスト61は、先端にフック62を有するロードチェーン63と、門型フレーム56の頂部左右方向中央から吊下げられかつレバー64の操作によってロードチェーン63を巻き取る巻き胴65とを備えている。
【0024】
下段左レール45および下段右レール46は、左右の向きは逆であるが、同一構造のものである。下段左レール45は、開口を右に向けたリップ溝形鋼よりなる下段左レール部材よりなる。下段右レール46は、開口を左に向けたリップ溝形鋼よりなる下段右レール部材よりなる。図5に示す下段右レール部材は、垂直ウェッブ71と、これの上下端より左方に突出させられている先端リップ付上下フランジ72、73とよりなる。
【0025】
下段左キャリヤ47および下段右キャリヤ48は、左右の向きは逆であるが、同一構造のものである。図5および図6に示す下段右キャリヤ48は、下フランジ73を前後方向に間隔をおいて2か所で上下から挟んでいる2対の上下走行輪81、82と、これらの走行輪81、82を連結している下段キャリヤ本体83とを備えている。下段キャリヤ本体83の前後方向中程にはこれと一体的に垂下状ブラケット84が設けられている。ブラケット84の下端部には下チェーンガイドローラ85が取付られている。さらに、上走行輪81間に位置するように下段キャリヤ本体83に上チェーンガイドローラ86が取付られている。
【0026】
下段右キャリヤ48には下段レバーホイスト91が装備されている。下段レバーホイスト91は、上段レバーホイスト61と同一構造のもので、フック92付ロードチェーン93と、レバー94および巻き胴95を備えている。ロードチェーン93は、下チェーンガイドローラ85および上チェーンガイドローラ86に順に巻き掛けられている。
【0027】
つぎに、トップヒータ22、32の組立作業について説明する。炉本体21、31は、図1に示すように、断面略コ字をなすように組立てられている。
【0028】
まず、上段トップヒータ22から組立てるものとする。これから組み立てる上段トップヒータ22の組立位置の近くに、図示しないフリーローラコンベヤを上段炉本体21の左右側壁上端にこれらにまたがるようにのせておく。図示しないパワーリフタによって、フリーローラコンベヤ上にこれから組み立てる上段トップヒータ22をのせる。こうしておいて、その上段トップヒータ22の上方まで上段キャリヤ44を移動させてくる。上段レバーホイスト61を操作して、フック62を上段フック孔25に引っ掛け、ロードチェーン63を巻き上げることにより、上段トップヒータ22をフリーローラコンベヤ上から持ち上げる。この後、上段トップヒータ22の組立位置まで上段キャリヤ44を移動させ、上段トップヒータ22が然るべき組立位置の真上に位置させられると、その位置へ、上段レバーホイスト61を操作して、上段トップヒータ22を降ろせばよい。
【0029】
以上は、上段トップヒータ22の組立作業であるが、下段トップヒータ32についても同じ手順によって行うことができる。但し、この場合、左右の下段キャリヤ47、48の前後方向の位置が同じになるように両下段キャリヤ47、48を一緒に移動させる必要がある。勿論、左右の下段キャリヤ47、48は連結されていてもよい。その場合、一体で移動可能となる。 下段トップヒータ32を持ち上げる際、下段レバーホイスト91のロードチェーン93がチェーンガイドローラ85、86に巻き掛けられているとともに、逃げ36によって下段吊り具34と下段レバーホイスト91の巻き胴95等との干渉が避けられるため、図6中鎖線で示すように、同巻き胴95等とほぼ同レベルまで下段トップヒータ32を持ち上げることが可能となっている。
【0030】
図7に、連続焼成炉の他の例が示されている。この例による連続焼成炉の特徴は、トップヒータ112に排気管121を備えていることである。そのために、例え上段であっても、図1に示す上段キャリヤ44のような一体型のキャリヤは使用することができない場合がある。例えば、炉の上方空間の利用ができる高さが制限される場合である。
【0031】
炉本体111の底壁左右両縁部複数か所からそれぞれ上向きにのびた左右複数対の垂直状支持バー131の対をなすもの同士上端には、左右方向にのびた水平レールフレーム132がそれぞれ渡し止められている。
【0032】
複数のレールフレーム132の下面には、互いに平行に前後方向にのびた左右一対の水平左レール133および右レール134が渡されている。両レール133、134には左キャリヤ135および右キャリヤ136が載せられている。各キャリヤ135、136にはレバーホイスト137が装備されている。
【0033】
これらのレール133、134、キャリヤ135、136およびレバーホイスト137は、それぞれに、上記した下段レール45、46、下段キャリヤ47、48および下段レバーホイスト61と対応するものである。
【0034】
上記において、本発明は2段炉に限らず、任意の組合せで適用される。また、トップヒータに限らず、サイドヒータ、その他の部材の搬送に用いられる。組立、修理、交換、解体を問わない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明による連続焼成炉の横断面図である。
【図2】同搬送装置のキャリヤの平面図である。
【図3】図1の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】図3のIV−IV線にそう断面図である。
【図5】図1の一図3とは別の部分を拡大して示す断面図である。
【図6】図5のVI−VI線にそう断面図である。
【図7】変形例を示す炉の図1相当の断面図である。
【符号の説明】
【0036】
11 上段炉
12 下段炉
42 上段左レール
43 上段右レール
44 上段キャリヤ
45 下段左レール
46 下段右レール
47 下段左キャリヤ
48 下段右キャリヤ
61 上段レバーホイスト
91 下段レバーホイスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉または炉を形成するためのスペースの上方レベルにおいて炉長さ方向にのびた水平状レールと、レールにそって走行しうるように配置されているキャリヤと、キャリヤに装備されている巻上機とを備えている炉組立部品搬送装置を有する連続焼成炉。
【請求項2】
レールが、炉の幅以上の間隔をおいて互いに平行にのびた左レールおよび右レールよりなり、
キャリヤが、左レールおよび右レールに、これらにまたがって載せられており、
巻上機が、キャリヤの左右両縁部にそれぞれ対応させられている左巻上機および右巻上機を有している、
請求項1に記載の炉組立部品搬送装置を有する連続焼成炉。
【請求項3】
キャリヤが、左レール上に載せられている前後2つの左走行輪と、これらの左走行輪を連結している左キャリヤ本体と、右レール上に載せられている前後2つの右走行輪と、これらの右走行輪を連結している右キャリヤ本体と、左キャリヤ本体および右キャリヤ本体にこれらにまたがるように設けられている連結フレームと、連結フレームに炉の幅以上の間隔をおいて左右方向に相対するように立てられている左右一対の門型フレームとを有しており、
各巻上機が、巻き胴を門形フレームの頂部から吊下げたレバーホイストである、
請求項2に記載の炉組立部品搬送装置を有する連続焼成炉。
【請求項4】
レールが、炉の幅以上の間隔をおいて互いに平行にのびた左レールおよび右レールよりなり、
キャリヤが、左レールおよび右レールにそれぞれ載せられている左キャリヤおよび右キャリヤよりなり、
巻上機が、左キャリヤおよび右キャリヤにそれぞれ対応されられている左巻上機および右巻上機を有している、
請求項1に記載の炉組立部品搬送装置を有する連続焼成炉。
【請求項5】
各レールが、リップ溝形鋼よりなるものであって、垂直ウェッブおよびこれの上下端にそれぞれ連なる上下フランジを有しており、
各キャリヤが、下フランジを上下から挟んでいる上下走行輪と、これらの走行輪を連結しているキャリヤ本体とを有しており、
各巻上機が、巻き胴をキャリヤ本体から吊下げたレバーホイストである、
請求項4に記載の炉組立部品搬送装置を有する連続焼成炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−220352(P2006−220352A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33769(P2005−33769)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】