説明

炊飯器

【課題】冷却ファンを大型化することなく、加熱コイルの巻線の温度グレードを上げることなく、加熱コイルを十分に冷却することができる炊飯器を提供する。
【解決手段】外ケース4と、外ケース4内に設けられ、内釜2が着脱自在に収容される内ケース5と、内ケース5の底部に設けられた加熱コイル6と、少なくとも整流回路およびインバーター回路が実装された電源基板20と、電源基板20が収納された基板ケース32と、加熱コイル6および電源基板20を冷却するための冷却ファン29とを備え、冷却ファン29を、冷却ファン29の中心軸が電源基板20の基板面より加熱コイル6側に位置するように外ケース4の底部上に配置し、冷却ファン29によって供給される冷却風のうち少なくとも半分の冷却風が加熱コイル6に流れるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理物の加熱調理中に発熱する部品を冷却する冷却ファンを備えた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器は、加熱調理中に発熱量の大きい部品、例えば電源基板に実装された半導体スイッチング素子やダイオードブリッジ、内釜を誘導加熱する加熱コイルなどを備えている。半導体スイッチング素子やダイオードブリッジには、冷却ファンの冷却風による冷却効果を高めるための放熱フィンが設けられている。半導体スイッチング素子やダイオードブリッジなどの部品の温度限度は、加熱コイルよりも低いため、電源基板側に多くの冷却風を供給するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−297260号公報(第8−9頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の炊飯器では、電源基板側に多くの冷却風を供給するようにしているので、加熱コイルの冷却が十分にできない。そのため、加熱コイルに温度グレードの高い巻線を使用したり、冷却ファンを大型化して風量を増やさなければならなかった。
【0005】
本発明は、前述のような課題を解決するためになされたもので、冷却ファンを大型化することなく、加熱コイルの巻線の温度グレードを上げることなく、加熱コイルを十分に冷却することができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炊飯器は、上部に開口部を有する外ケースと、外ケース内に設けられ、調理容器が着脱自在に収容される内ケースと、外ケースの上部に開閉自在に設けられた蓋体と、内ケースの底部に設けられ、調理物が収納された調理容器を加熱する誘導加熱手段と、外ケースと前記内ケースの間に上下方向に延びて設けられ、少なくとも商用電源の交流電力を整流する整流回路および整流回路の出力を所定周波数の交流電力に変換して誘導加熱手段に供給するインバーター回路が実装された電源基板と、誘導加熱手段および電源基板を冷却するための冷却ファンとを備え、冷却ファンによって供給される冷却風のうち少なくとも半分の冷却風が誘導加熱手段に流れるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷却ファンによって供給される冷却風のうち少なくとも半分の冷却風を誘導加熱手段に流れるようにしたので、冷却ファンを大型化して風量を増やすことなく、誘導加熱手段の温度グレードを上げることなく、誘導加熱手段を十分に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1における炊飯器の断面図である。
【図2】実施の形態1における炊飯器の回路構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態2における炊飯器の断面図である。
【図4】実施の形態2の変形例を示す炊飯器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における炊飯器の断面図、図2は実施の形態1における炊飯器の回路構成を示すブロック図である。
実施の形態1の炊飯器は、炊飯器本体1と、調理容器である内釜2と、炊飯器本体1の外ケース4の上部に開閉自在に設けられた蓋体3とを備えている。
【0010】
炊飯器本体1は、上部に開口部を有する外ケース4と、外ケース4内に設けられ、内釜2が着脱自在に収容される内ケース5と、内ケース5の底部を構成する底枠5bの下面部およびコーナー部に設けられた加熱コイル6(誘導加熱手段)と、底枠5bの略中央に設けられ、内釜2の底面に接触して内釜2の温度を検出する温度センサー7と、外ケース4の底部4a上に設置されたコードリール8と、冷却ファン29と、電源基板20が収納された基板ケース32とを備えている。
【0011】
外ケース4の底部4aのうち外ケース4の背面近傍の部分に吸気口11が設けられ、外ケース4の前面の下部に排気口12が設けられている。内ケース5は、外面に胴ヒーターが張り付けられた略円筒形状の金属製の側枠5aと、側枠5aの下方に設置された前述の底枠5bとで構成されている。前述の吸気口11の上方には、外ケース4の背面とで基板ケース32の側板を間隙を有して囲む上下に開口部を有するケース収容部13が設けられている。炊飯器本体1を前方(図1においては左側)から見て外ケース4の両側板と内ケース5との間には、後述する冷却風が通る隙間が設けられている。
【0012】
前述した吸気口11の中心軸の位置は、基板ケース32内に収納された電源基板20の基板面より加熱コイル6側に配置されている。冷却ファン29は、吸気口11の中心軸を中心として吸気口11を覆うように底部4aの上に固定されている。その冷却ファン29の配置により、冷却ファン29によって供給される冷却風のうち半分以上の冷却風が加熱コイル6側に流れる。
【0013】
基板ケース32は、例えば、外ケース4の底部4aと対向する下部に四辺形状の開口部が形成されるように板金を折り曲げて略矩形箱状に構成され、その矩形箱状の接合は、図1に示すように板金の重ね合わせだけで行われている。この構成により、開口部から基板ケース32内に流入した冷却風は、接合部分の隙間から流出してケース収容部13の上部開口から放出される。
【0014】
電源基板20は、基板ケース32の加熱コイル6側の側板に取り付けられた基板ホルダー30に固定されている。電源基板20には、図2に示すように、ダイオードブリッジからなる整流回路21、平滑回路を構成するチョークコイル22および平滑コンデンサ23、加熱コイル6に並列に接続された共振コンデンサ24、例えばIGBTなどの1つの半導体スイッチング素子25aおよび半導体スイッチング素子25aに逆方向に並列に接続されたダイオード25b、制御用の電源回路26、半導体スイッチング素子25aをオン・オフする駆動回路27、冷却ファン29を駆動する冷却ファン駆動回路28などが実装されている。前述の基板ホルダー30は、耐熱性を有する樹脂部材によって構成されている。なお、半導体スイッチング素子25aには、ダイオード25bを内蔵していないものとして説明をするが、半導体スイッチング素子25aとダイオード25bとをワンパッケージにした半導体スイッチング素子25を用いても良い。
【0015】
電源基板20に実装された部品のうち整流回路21および半導体スイッチング素子25aには、放熱フィンを有する放熱部材31が取り付けられている。放熱部材31は、電源基板20の長手方向から見て門型形状に形成され、その両側がネジによって電源基板20に固定されている。放熱部材31は、整流回路21および半導体スイッチング素子25aの取付面の反対側の面が基板ケース32の側板に接触している。これにより、整流回路21および半導体スイッチング素子25aから発せられた熱が放熱部材31を介して基板ケース32に伝達される。
【0016】
また、整流回路21および半導体スイッチング素子25aは、熱伝導性の高いシリコン製の絶縁シート(図示せず)を介して放熱部材31に取り付けられている。放熱部材31を半導体スイッチング素子25aと絶縁することで、内部配線や他の活電部との間で必要な絶縁距離が小さくなり、炊飯器本体1の構成を容易にすることができる。
【0017】
整流回路21および半導体スイッチング素子25aは、放熱部材31が電源基板20に固定された後に電源基板20に半田付けされて固定されている。これにより、整流回路21および半導体スイッチング素子25aを固定するときや電源基板20の取り扱い時に整流回路21および半導体スイッチング素子25aの半田付部分にストレスがかからず、電源基板20との接続の信頼性が向上する。
【0018】
本実施の形態においては、整流回路21および半導体スイッチング素子25a、ダイオード25bは、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドからなるワイドバンドギャップ半導体で構成されている。ワイドバンドギャップ半導体によって、発熱量が少なく、耐熱温度が高く、しかも熱による損失を従来よりも70%低減できる整流回路21や半導体スイッチング素子25aを用いることができる。
【0019】
前述の蓋体3は、外ケース4の背面側上部に設けられたヒンジ部9に開閉自在に取り付けられた外蓋3aと、外蓋3aの裏面に着脱自在に装着され、内釜2の開口を密閉する内蓋3bとで構成されている。外蓋3aと内蓋3bには、内釜2内の調理物の加熱中に発生する蒸気を外部に排出するカートリッジ10が着脱自在に装着されている。
【0020】
外蓋3aの手前側の表面には例えば操作パネル(図示せず)が設けられ、その裏面には制御基板40が設けられている。制御基板40には、図2に示すように、制御部41、操作パネルからの操作に応じて制御部41に信号を出力する入力部42、制御部41からの信号に基づいて時刻や動作状態を操作パネルの液晶画面に表示する表示部43などが実装されている。
【0021】
前記のように構成された炊飯器においては、冷却ファン29の駆動によって発生する冷却風のうち半分以上の冷却風が加熱コイル6側に流れ、残りの冷却風が基板ケース32内に流入する。基板ケース32内に流入した冷却風は、放熱部材31を冷却しながら基板ケース32の接合部分の隙間から流出しケース収容部13の上部開口から放出される。
【0022】
加熱コイル6側に流れた冷却風のうち一方の冷却風は、内ケース5とケース収容部13の間の空間を風路として上昇し蓋体3に当たる。その時、その冷却風は、基板ケース32から流出した冷却風と共に外ケース4と内ケース5の間の隙間に流入し、その隙間に入り込む加熱コイル6からの熱を吸収しながら排気口12から外部へ排出される。また、もう一方の冷却風は、内ケース5の底枠5bと外ケース4の底部4aとの間の空間および内ケース5の底枠5b周辺に流れ、加熱コイル6およびコードリール8を冷却しながら排気口12から外部へ排出される。
【0023】
以上のように実施の形態1によれば、整流回路21と半導体スイッチング素子25aに発熱量が少なく耐熱温度の高いワイドバンドギャップ半導体を用いているので、冷却ファン29によって供給される冷却風のうち半分以上の冷却風を加熱コイル6側に供給しても整流回路21や半導体スイッチング素子25aの温度上昇を低減できる。そのため、冷却ファン29の風量を増やすことなく、加熱コイル6の巻線の温度グレードを上げることなく、加熱コイル6を十分に冷却することができる。これにより、冷却ファン29の小型化や静穏化を図ることができ、炊飯器本体1を小型化でき、コストダウンを図ることができる。
【0024】
実施の形態2.
図3は実施の形態2における炊飯器の断面図である。なお、実施の形態2においては、実施の形態1と同様の部分に同じ符号を付し、実施の形態1と異なる部分だけを説明する。
【0025】
実施の形態2における炊飯器は、図3に示すように、ケース収容部13の内ケース5と対向する面の下部側に、加熱コイル6側に斜め下方に突出する冷却風誘導板14(冷却風誘導手段)が設けられている。その冷却風誘導板14は、外ケース4の幅方向に延びていて長方形状に形成されている。また、炊飯器本体1を前方(図3においては左側)から見て外ケース4の両側板と内ケース5との間の隙間には、上下方向に延びる板状の仕切板(図示せず)が設けられている。つまり、本実施の形態では、外ケース4の両側板と内ケース5との間の隙間に冷却風が流れないようにしている。
【0026】
前記のように構成された炊飯器においては、冷却ファン29の駆動によって発生する冷却風のうち半分以上の冷却風が加熱コイル6側に流れ、残りの冷却風が基板ケース32内に流入する。基板ケース32内に流入した冷却風は、放熱部材31を冷却しながら基板ケース32の接合部分の隙間から流出し、ケース収容部13の上部開口から放出されて蓋体3に当たり、内ケース5とケース収容部13の間の空間を風路として下方に向かう。
【0027】
一方、加熱コイル6側に流れた冷却風は、冷却風誘導板14の下面に当たって、内ケース5の底枠5bと外ケース4の底部4aとの間の空間に流れ込み、加熱コイル6およびコードリール8を冷却しながら排気口12から外部へ排出される。その時、ケース収容部13の上部開口から下方へ向かう冷却風は、冷却風誘導板14によって加熱コイル6側へと向きが誘導され、冷却ファン29から加熱コイル6側へ送り込まれる冷却風によって誘引され、冷却ファン29からの冷却風と共に加熱コイル6およびコードリール8を冷却しながら排気口12から外部へ排出される。
【0028】
以上のように実施の形態2によれば、整流回路21と半導体スイッチング素子25aに発熱量が少なく耐熱温度の高いワイドバンドギャップ半導体を用いているので、冷却ファン29によって供給される冷却風のうち半分以上の冷却風を加熱コイル6側に供給しても整流回路21や半導体スイッチング素子25aの温度上昇を低減できる。そのため、冷却ファン29の風量を増やすことなく、加熱コイル6の巻線の温度グレードを上げることなく、加熱コイル6を十分に冷却することができる。これにより、冷却ファン29の小型化や静穏化を図ることができ、炊飯器本体1を小型化でき、コストダウンを図ることができる。
【0029】
また、前述したように、整流回路21や半導体スイッチング素子25aにワイドバンドギャップ半導体を用いていることで電源基板20を冷却した後の冷却風の温度上昇を抑えることが可能になり、そのため、その冷却風を加熱コイル6やコードリール8などの冷却用として無駄なく使用でき、より冷却効果が向上する。
【0030】
なお、実施の形態1、2では、整流回路21および半導体スイッチング素子25aをワイドバンドギャップ半導体で構成したことを述べたが、何れか一方をワイドバンドギャップ半導体で構成しても良い。
【0031】
また、実施の形態1、2では、放熱部材31が加熱コイル6から遠ざかる位置に配置されるように外ケース4の背面近傍に配置しているが(図1、図3参照)、これに限定されるものではない。例えば図4に示すように、放熱部材31が冷却ファン29の中心軸近傍に配置されるように基板ケース32の向きを反転させても良い。その場合、実施の形態1、2と比べ多くの冷却風を放熱部材31に送り込むことができる。また、冷却ファン29の配置は水平に限ることなく、加熱コイル6側に傾けて配置し、冷却風の半分以上を加熱コイル6側に供給するようにしても良い。
【0032】
また、実施の形態1、2では、基板ケース32内に流入した冷却風を基板ケース32の接合部分の隙間から流出させるようにしたが、その隙間に加えて基板ケース32の上部に複数の穴を設けても良い。その複数の穴を設けることにより、基板ケース32内に流入した冷却風をより多く流出させることができ、放熱部材31の冷却効果が向上する。
【符号の説明】
【0033】
1 炊飯器本体、2 内釜、3 蓋体、3a 外蓋、3b 内蓋、4 外ケース、4a 外ケースの底部、5 内ケース、5a 側枠、5b 底枠、6 加熱コイル、7 温度センサー、8 コードリール、9 ヒンジ部、10 カートリッジ、11 吸気口、12 排気口、13 ケース収容部、14 冷却風誘導板、20 電源基板、21 整流回路、22 チョークコイル、23 平滑コンデンサ、24 共振コンデンサ、25 インバーター回路、25a 半導体スイッチング素子、25b ダイオード、26 電源回路、27 駆動回路、28 冷却ファン駆動回路、29 冷却ファン、30 基板ホルダー、31 放熱部材、32 基板ケース、40 制御基板、41 制御部、42 入力部、43 表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有する外ケースと、
前記外ケース内に設けられ、調理容器が着脱自在に収容される内ケースと、
前記外ケースの上部に開閉自在に設けられた蓋体と、
前記内ケースの底部に設けられ、調理物が収納された調理容器を加熱する誘導加熱手段と、
前記外ケースと前記内ケースの間に設けられ、少なくとも商用電源の交流電力を整流する整流回路および該整流回路の出力を所定周波数の交流電力に変換して前記誘導加熱手段に供給するインバーター回路が実装された電源基板と、
前記誘導加熱手段および前記電源基板を冷却するための冷却ファンとを備え、
前記冷却ファンによって供給される冷却風のうち少なくとも半分の冷却風が前記誘導加熱手段に流れるようにしたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記冷却ファンは、該冷却ファンの中心軸が前記電源基板の基板面より前記誘導加熱手段側に位置するように前記外ケースの底部上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記インバーター回路は、少なくとも1つの半導体スイッチング素子により構成され、
前記整流回路及び前記半導体スイッチング素子の何れか一方あるいは両方をワイドバンドギャップ半導体で構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料あるいはダイヤモンドであることを特徴とする請求項3記載の炊飯器。
【請求項5】
前記整流回路および前記半導体スイッチング素子に取り付けられ、該整流回路及び半導体スイッチング素子から発せられる熱を放熱するための放熱部材と、
前記外ケースの底部と対向する下部に前記冷却ファンからの冷却風が流入する開口部を有し、その開口部から流入する冷却風を流出可能に略矩形箱状に構成され、その側板に前記放熱部材が接触するように前記電源基板が収納された基板ケースと
を備えたことを特徴とする請求項3又は4記載の炊飯器。
【請求項6】
前記外ケースの側板とで前記基板ケースを間隙を有して囲むように構成され、上下に開口部を有するケース収容部を備えたことを特徴とする請求項5記載の炊飯器。
【請求項7】
前記ケース収容部の前記内ケースと対向する面の下部側に、前記ケース収容部の上部から流出して下方に向かう冷却風を前記誘導加熱手段側に誘導する冷却風誘導手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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