説明

炊飯用油脂組成物及びこれを用いて得られる炒飯並びに炒飯の製造方法

【課題】炒飯用米飯を製造するための米飯を炊飯する際に用いられる、炒め工程時の作業性を飛躍的に向上させることのできる炊飯用油脂組成物及びこれを用いて得られる炒飯、並びに炒飯の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の炊飯用油脂組成物は、炒飯用米飯を製造するための米飯の炊飯工程で用いられる炊飯用油脂組成物であって、該油脂組成物中に、HLB値が3.0以上8.0未満であり、かつ1.0質量%を超え18.0質量%以下の量のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び2.0〜15.0質量%の量のレシチンを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炒飯を製造するにあたり、炒め油に含まれる乳化剤特有の匂いや食味を有効に低減しつつ、炒め工程時における作業性を向上させる炊飯用油脂組成物及びこれを用いて得られる炒飯、並びに炒飯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯加工業者が行う大量炊飯は、生米と水に炊飯油と呼ばれる油脂組成物を添加して加熱炊飯することが多い。炊飯油が加えられた米飯は、適度な粘りとふっくらした食感を残しつつ、米飯のべたつきを抑えて米飯の捌きを良くし、おにぎりやすし飯などへの加工、容器への充填といった工程での作業性を向上させることができる。しかし、その米粒一つ一つがパラパラにほぐれるような食感が好ましいとされている炒飯については、従来の炊飯油で炊いた米飯では、米飯粒同士がくっついてしまいがちなため、炒める際に油や具材等を均一に混ぜ合わせるのには高度な技術を要する。特に炒飯を大量に調理する場合、例えば冷凍食品や店頭で販売される弁当等に含まれる炒飯を製造する場合には、炊飯した米飯も大量に取り扱う必要があるため、この米飯のべたつきに起因する炒め工程時における作業性の低下が顕在化し、食感や味付けが満遍なく行き渡らないなど仕上がりが不充分となるおそれがある。
【0003】
炒飯のパラパラ感は、米粒の表面に油がコーティングされることで付与され、粘りやふっくらとした食感が少ない米飯の方が炒飯の製造には適している。炒飯を製造するための米飯と白米を食するいわゆる銀しゃりと呼ばれる米飯とは、求められる米飯の物性が異なるものであり、米飯の捌きを良くするための炊飯油も、炒飯の製造用としては不充分なものである。
【0004】
一般に、炒飯の製造には米飯のべたつきをカバーするため、炒め油に乳化剤を含む油脂組成物が用いられている。乳化剤を含む炒め油を用いると焦げ付きが少なくなることから炒め時の作業性が改善されるが、一方で炒め油に含まれる乳化剤特有の匂いが必要以上に炒飯に付着するおそれがあり、場合によっては食味の低下を招きかねない。
【0005】
こうした中、特許文献1には、米飯を炊飯する際に用いる炊飯油と、米飯を炒める際に用いる炒め油に、レシチンやポリグリセリン脂肪酸エステルのような乳化剤と風味油脂とを添加した調理用油脂組成物が開示されている。かかる油脂組成物を用いれば、米飯にある程度のパラパラ感を付与しつつ、乳化剤に由来する独特の匂いや食味に誘発される風味の低下を風味油脂によって抑制した炒飯類を得ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−92987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような技術であると、風味の低下を抑制することに特化するあまり、炊飯後の米飯に付与されるパラパラ感が不充分となってほぐれ性が悪化する傾向にあるため、炒め工程時における米飯の作業性を充分に向上させることができず、依然として改善の余地が残されている。
【0008】
そこで、本発明は、炒飯用米飯を製造するための米飯を炊飯する際に用いられる炊飯用油脂組成物であって、炒め工程時の作業性を飛躍的に向上させることができ、特に炒め油に乳化剤を含ませることなく、炒飯を製造することが可能な炊飯用油脂組成物、及びこれを用いて得られる炒飯、並びに炒飯の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、特定の乳化剤を特定量含む炊飯用油脂組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の炊飯用油脂組成物は、
炒飯用米飯を製造するための米飯の炊飯工程で用いられる炊飯用油脂組成物であって、該油脂組成物中に、HLB値が3.0以上8.0未満であり、かつ1.0質量%を超え18.0質量%以下の量のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び2.0〜15.0質量%の量のレシチンを含むことを特徴とする。
また、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が、30〜90%であるのが望ましい。
【0010】
本発明の炒飯用米飯は、上記炊飯用油脂組成物を用いて米飯を炊飯することにより得られることを特徴とする。
さらに、本発明の炒飯は、上記炒飯用米飯を用いて得られることを特徴とする。
本発明の炒飯の製造方法は、
(A)油脂組成物中に、HLB値が3.0以上8.0未満であり、かつ1.0質量%を超え18.0質量%以下の量のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び2.0〜15.0質量%の量のレシチンを含む炊飯用油脂組成物を用いて、米飯を炊飯することにより炒飯用米飯を得る工程、及び
(B)得られた炒飯用米飯を炒め油で加工することにより、炒飯を得る工程
を含むことを特徴とする。
また、前記炒め油が、乳化剤を含まないものであるのが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炊飯用油脂組成物によれば、炊飯された米飯の一粒一粒に対してパラツキ感を充分に付与することができ、炒め工程時において飛躍的な作業性の向上を図ることができる。また、炒め工程時において用いられる炒飯特有の具材や香辛料等を充分に拡散させることができるとともに、これら具材や香辛料等の効果により、香ばしい香りと良好な食味とを兼ね備えた炒飯を得ることが可能である。
【0012】
さらに、かかる炊飯用油脂組成物を用いて得られた炒飯用米飯であれば、米飯の一粒一粒の表面に均一に油脂が被覆されてなるため、ツヤのある仕上がりを実現できるとともに、炒め工程時における焦げ付きを有効に抑制することができる。また、特に炒め油に乳化剤を含ませることなく良好な作業性を保持することができるので、通常の油脂を炒め油として簡便に利用でき、乳化剤特有の匂いや食味をさらに効果的に抑制することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の炊飯用油脂組成物は、
炒飯用米飯を製造するための米飯の炊飯工程で用いられる炊飯用油脂組成物であって、該油脂組成物中に、HLB値が3.0以上8.0未満であり、かつ1.0質量%を超え18.0質量%以下の量のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び2.0〜15.0質量%の量のレシチンを含むことを特徴としている。
【0014】
本発明の炊飯用油脂組成物は、炒飯用米飯を製造する際、すなわち主材料である米飯を炊飯する工程で用いる油脂組成物である。生米及び規定の量の炊飯用水に上記炊飯用油脂組成物を添加し、常法により加熱して炊飯することにより炒飯用米飯を得る。
【0015】
本発明の炊飯用油脂組成物には、ポリグリセリン脂肪酸エステルが含まれる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、乳化剤の一種であり、グリセリンやグリシドール、エピクロロヒドリン等の縮合で得られたポリグリセリンと脂肪酸とを、水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒下でエステル化させて製造する。かかる脂肪酸としては、具体的には、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等の飽和又は不飽和の脂肪酸が挙げられる。
【0016】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、一般にポリグリセリンの縮合度とエステル化率、脂肪酸の種類に応じて幅広いHLB値を有し得るが、本発明ではHLB値が3.0以上8.0未満、好ましくは3.0〜7.5、より好ましくは3.0〜6.5のものを用いる。HLB値は親水性と疎水性のバランスの指標として有用なものであるが、かかる値が上記範囲内であると、米飯を炊飯する際に用いる水が炊飯時に加温されるにつれ、炊飯用油脂組成物の油脂中だけでなく水中にもポリグリセリン脂肪酸エステルが均一に溶解又は分散するとともに、水と油脂との接触面における界面張力を適度に低下させることができる。後述するレシチンとの相乗作用により、炊飯油が水中で良好に乳化又は分散した状態を安定に保持することができ、米飯一粒一粒の表面により満遍なく油脂を被覆させることができる。したがって、炊飯後の米飯に必要以上に水分が偏在することなく、米飯粒間のべたつきを有効に抑制して、優れたパラツキ感を付与することが可能となる。さらに、米飯粒の各表面に均一に被覆された油脂の作用により、良好なツヤ感が付与された仕上がりを実現できるとともに、炒め時における焦げ付きを有効に抑制することも可能となる。
【0017】
なお、HLB値は、乳化剤の親水性と新油性の強度比を数値化して表した指標であり、平成2年2月28日発行された「改定三版 油脂化学便覧」(7・4・4HLB値)(日本油化学協会編、丸善株式会社発行)の方法により算出することができる。
【0018】
さらに、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、30〜90%であるのが望ましく、さらに好ましくは40〜85%、最も好ましくは42〜83%である。エステル化率が上記範囲内であると、より好適なHLB値を有することとなり、さらに優れた分散性や安定性を発揮することが可能となる。なお、エステル化率とは、下記式(I)によって算出される値を意味する。
エステル化率=ポリグリセリンに結合している平均脂肪酸数/(ポリグリセリンの平均重合度+2)×100(%)・・・(I)
【0019】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、本発明の炊飯用油脂組成物100質量%中、1.0質量%を超え18.0質量%以下、好ましくは1.0質量%を超え15.0質量%以下、より好ましくは1.2〜8.0質量%、最も好ましくは1.2〜4.0質量%の量で含まれる。上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量がかかる範囲内の量であれば、必要以上に炒飯の風味を阻害するおそれがなく、油脂やレシチンとともに米飯粒の各表面に有効に拡散して、得られる炒飯用米飯に良好なパラツキ感を付与することが可能となる。
【0020】
本発明の炊飯用油脂組成物には、さらにレシチンが含まれる。レシチンもポリグリセリン脂肪酸エステルと同様、乳化剤の一種である。レシチンは化学名称であるホスファチジルコリンを指すが、工業的にはホスファチジルコリンのほか、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトールなどのリン脂質と油脂などの混合物の総称を指す。本発明に用いるレシチンは、前述のような混合物の総称であり、食品添加物の分野において、通常乳化剤として市販、使用されるものをいう。本発明に用いるレシチンの原料としては、植物油精製時に発生する油滓(大豆油滓、なたね油滓、とうもろこし油滓、綿実油滓等)、あるいは卵黄などがあり、またこれらから得られたペースト状レシチン、溶剤分別で得られた分画レシチン、又は酵素処理により得られた酵素処理レシチン等のいずれも採用することができる。
【0021】
上記レシチンは、本発明の炊飯用油脂組成物100質量%中、2.0〜15.0質量%、好ましくは3.0〜12.0質量%、より好ましくは5.0〜10.0質量%の量で含まれる。上記レシチンの含有量がかかる範囲内の量であると、油脂中に沈殿することなく良好に分散し、前述したポリグリセリン脂肪酸エステルの相する効果とも相まって、油脂中だけでなく水中にも良好に乳化又は分散するため、炊飯後の米飯が有する粘りを有効に抑制して非常に良好なパラパラ感を付与することができる。また、炊飯後の米飯が極めて優れたほぐれ易さを発揮するので、かかる米飯を用いれば、炒め工程時における作業性を向上させることができる。したがって、炒め工程時に用いる炒め油の中に必ずしも乳化剤を添加する必要がなく、通常の油脂を炒め油として簡便に利用でき、乳化剤を含まない一般的な油脂組成物を炒め油として好適に用いることができるので、炒め工程時での加温によって乳化剤から発生する特有の匂いや食味を極力低減することが容易となり、得られる炒飯の風味や食味の阻害要因を排除することも可能となる。
【0022】
本発明の炊飯用油脂組成物には、上記ポリグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンのほか、食用油脂が含まれる。かかる食用油脂としては、20℃で液状の態様のものが好ましい。原料油脂そのものが20℃で固体であっても、他の原料油脂と併用して用いることによって、食用油脂全体として液状であればよい。具体的には、例えば、オリーブ油、ヤシ油、なたね油、コーン油、大豆油、米糠油、米油、サフラワー油、綿実油、ひまわり油、小麦胚芽油、パーム油、パーム分別軟質部、落花生油、ごま油、あまに油等の食用植物油の一種、又は2種以上ブレンドしたもの、あるいは牛脂、豚脂、魚油等の動物油脂を一種、又は2種以上ブレンドしたもの、さらには前述の植物油と動物油脂とを2種以上ブレンドしたもの等が挙げられる。
【0023】
本発明の炊飯用油脂組成物は、食用油脂にポリグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンを加え、混合攪拌させることによって製造することができる。食用油脂に添加したポリグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンの乳化剤が均一に食用油脂中に分散された状態となればよい。
【0024】
本発明の炊飯用油脂組成物には、上記のポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチンの他にも、油脂に溶解又は分散するものであれば、上記の乳化剤の働きを損なわない範囲で他の成分を添加することができる。例えば、トコフェロールなどの酸化防止剤、βカロテンなどの着色料、香料、調味料、香辛料などが挙げられる。
【0025】
かかる炊飯用油脂組成物は、具体的には、例えば食用油脂を30〜70℃に加温し、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、他の成分を加えて5〜30分間混合攪拌することにより、製造することができる。
【0026】
本発明の炒飯用米飯は、生米及び規定の量の炊飯用水に、上記炊飯用油脂組成物を添加して適宜攪拌し、炊飯器等を用いて、常法により加熱して炊飯することにより得られる。米飯に対する炊飯用油脂組成物の添加量は、通常、生米100gに対し、1.0〜10.0g、好ましくは1.5〜3.0gの量である。かかる量であれば、得られる炒飯の風味を阻害することなく、炊飯後の米飯に良好なパラパラ感を付与し、ほぐれ性に優れるため、炒め工程時においても優れた作業性を発揮することが可能となる。
【0027】
本発明の炒飯は、上記炒飯用米飯を用いることにより得られるものであり、通常フライパン、中華なべ又は炒め釜、回転釜等を用い、炒飯特有の具材や香辛料等とともに炒め油を添加して炊飯用米飯を加工することにより得られる。かかる炒飯の製造方法としては、すなわち、
(A)油脂組成物中に、HLB値が3.0以上8.0未満であり、かつ1.0質量%を超え18.0質量%以下の量のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び2.0〜15.0質量%の量のレシチンを含む炊飯用油脂組成物を用いて、米飯を炊飯することにより炒飯用米飯を得る工程、及び
(B)得られた炒飯用米飯を炒め油で加工することにより、炒飯を得る工程
を含むことを特徴としている。
【0028】
上記(A)工程は、油脂組成物中に、HLB値が3.0以上8.0未満であって1.0質量%を超え18.0質量%以下の量のポリグリセリン脂肪酸エステルと、2.0〜15.0質量%の量のレシチンとを含む本発明の炊飯用油脂組成物を用いて、米飯を炊飯することにより炒飯用米飯を得る工程であり、かかる炊飯用油脂組成物、炊飯の方法等の詳細については上述のとおりである。
【0029】
上記(B)工程は、(A)工程により得られた炒飯用米飯を炒め油で加工することにより、炒飯を得る工程であり、炒め油で加工するとは、通常、加熱した調理鍋やフライパン等に炒め油を敷き、これに炒飯用米飯を加えて具材や香辛料等とともに炒める工程を意味する。炒飯用米飯に対する炒め油の使用量は、特に制限されないが、炒飯用米飯100gに対し、通常4〜15g、好ましくは5〜10gの量である。
【0030】
ここで、上記炒飯用米飯には充分な量のポリグリセリン脂肪酸エステルとレシチンが含まれているため、すでに優れたパラツキ感が付与されていて良好なほぐれ性を有するので、敢えて炒め油に乳化剤を添加して炒め時における作業性を向上させる必要がない。したがって、乳化剤を含まない炒め油、例えば、なたね油(日清菜種サラダ油(S)、日清オイリオグループ(株)製)、サラダ油(日清サラダ油(S)、日清オイリオグループ(株)製)等の通常の汎用性食用油脂組成物を用いて簡便に炒められると同時に、炒め時に乳化剤特有の匂いや食味の発生を極力低減することが可能となり、炒飯の風味を損なうおそれがないという極めて優れた効果を有する。また、炒め時に適宜、溶き卵、ねぎ、チャーシュー、レタス、もやし等の具材、又は醤油、酒、塩、化学調味料、胡椒、ガーリック、ジンジャー等の調味料や香辛料を加えて、これらが醸し出す風味や食味を際立たせることにより、炊飯用油脂組成物に含まれていたポリグリセリン脂肪酸やレシチンに起因する特有の匂いや食味を有効に抑制することも可能である。
【実施例】
【0031】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0032】
[乳化剤A(ポリグリセリン脂肪酸エステル)の調整]
グリセリンと水酸化ナトリウムとを混合し、90℃に加熱した後、減圧乾燥した。次いで、200〜270℃に加熱し、攪拌して反応させた後に濾過して、ポリグリセリンを得た。かかるポリグリセリンと脂肪酸(オレイン酸)とを混合し、触媒として水酸化ナトリウムを添加して、窒素ガス気流下、200℃で反応させて乳化剤Aを得た。得られた乳化剤AのHLB値は6.5、ポリグリセリンに結合している平均脂肪酸数:12、エステル化率:71%であった。
【0033】
[試作品X(炊飯用油脂組成物)の調製]
なたね油(日清菜種サラダ油(S)、日清オイリオグループ(株)製)98.5質量%中に、レシチン(レシチンDX、日清オイリオグループ(株)製大豆レシチン)1.5質量%を均一に分散させ、試作品Xを調製した。
【0034】
[試作品Y(炒め油)の調製]
なたね油(日清菜種サラダ油(S)、日清オイリオグループ(株)製)96.5質量%中に、レシチン(レシチンDX、日清オイリオグループ(株)製大豆レシチン)3.0質量%、エマルジーMO(理研ビタミン(株)製グリセリン脂肪酸エステル)0.5質量%を均一に分散させ、試作品Yを調製した。
【0035】
[実施例1〜9、比較例1〜7]
表1に示す配合処方により、各成分を60℃で5分間攪拌混合して炊飯用油脂組成物を得た。
次いで、生米480gに水を670gを加え、さらに上記炊飯用油脂組成物を生米100gに対して2gの量で添加し、常法に従って炊飯器を用いて炊飯することにより、炒飯用米飯を得た。
得られた炒飯用米飯を用い、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0036】
《炊飯後の米飯の捌き》
上記の方法により得られた炒飯用米飯をしゃもじで捌いた際の状態について、下記の基準に従って評価した。
5:非常にパラパラしている
4:パラパラしている
3:ダマにならず、ほぐれ易い
2:ややダマになり、粘りつく
1:ダマになり粘りつく
【0037】
[炒飯の製造]
得られた炒飯用米飯を200gずつラップに包み、50℃の温度に保持された状態の米飯(200g)と、下記に示す具材、調味料及び香辛料と、各々表1に示す炒め油とを材料として用いた。
材料:
卵 Lサイズ1個
長ねぎ 15g
醤油 小さじ2(10g)
塩 2g
うまみ調味料 1g
こしょう 少々(0.1g)
炒め油 大さじ1(14g)
【0038】
上記各材料を、24cmの鉄製フライパンを強火にかけて温め、炒め油を入れた。次に溶いた卵を注いで箸で混ぜ、卵が半熟状態になったら炒飯用米飯を加え、木べらで米飯をほぐすように強火で加熱を続けた。米飯がほぐれた後、長ねぎを加え、予め合わせておいた塩・うまみ調味料・こしょうで味をつけた。最後に鍋肌から醤油を入れて、香りをつけた。
上記炒飯の調理中、及び調理後に得られた炒飯について、下記に示す方法又は基準に従って各評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
《炒め作業性》
炒飯の製造中において、炒飯用米飯を入れた後の炒め作業性につき、混ぜ易さや焦げ付きの有無等を総合的に判断し、評価した。
○:良好
△:普通
×:不良
【0040】
《炒飯の食感》
上記の方法により得られた炒飯の食感及び状態を下記の基準に従って評価した。
5:非常にパラパラしている
4:パラパラしている
3:ダマにならず、ほぐれ易い
2:ややダマになり、粘りつく
1:ダマになり粘りつく
【0041】
《炒飯の風味》
製造後の各炒飯の風味を評価した。
○:良好
△:普通
×:不良
【0042】
《炒飯の外観》
調理後の炒飯の外観を観察し、下記の基準に従って目視により評価した。
A:炒飯はツヤがあり、米飯粒はパラパラしている。
B:炒飯はツヤが少なく、米飯粒はパラパラしている。
C:炒飯はツヤがなく、米飯粒は部分的にダマがみられ、一部がつぶれている。
D:炒飯は乾いてツヤがなく、米飯粒の随所にダマがみられ、全体的につぶれが多い。
【0043】
[冷凍保存用炒飯の評価]
上記得られた炒飯を200gずつラップに包み、−20℃の冷凍庫で一週間保存した。得られた冷凍保存用炒飯を皿に載せ、ラップをして電子レンジでレンジ500W、3分40秒間加熱することにより解凍した。解凍後の炒飯を用いて、下記に示す方法又は基準に従って各評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
《冷凍品の食感》
上記の方法により得られた冷凍保存用炒飯の解凍後の食感を下記の基準に従って評価した。
5:非常にパラパラしている
4:パラパラしている
3:ダマにならず、ほぐれ易い
2:ややダマになり、粘りつく
1:ダマになり粘りつく
【0045】
《冷凍品の風味》
解凍後の各炒飯の風味を評価した。
○:良好
△:普通
×:不良
【0046】
《冷凍品の外観》
解凍後の炒飯の外観を観察し、下記の基準に従って目視により評価した。
A:炒飯はツヤがあり、米飯粒はパラパラしている。
B:炒飯はツヤが少なく、米飯粒はパラパラしている。
C:炒飯はツヤがなく、米飯粒は部分的にダマがみられ、一部がつぶれている。
D:炒飯は乾いてツヤがなく、米飯粒の随所にダマがみられ、全体的につぶれが多い。
【0047】
【表1】

【0048】
※1:日清大豆白絞油(S)、日清オイリオグループ(株)製
※2:SYグリスターMO−3S(モノオレイン酸テトラグリセリン)、阪本薬品工業(株)製、HLB:8.8、ポリグリセリンに結合している平均脂肪酸数:1、エステル化率:17%
※3:サンソフトQ−1710S(デカオレイン酸デカグリセリン)、太陽化学(株)製、HLB:3.0、ポリグリセリンに結合している平均脂肪酸数:10、エステル化率:83%
※4:サンソフトQ−175S(ペンタオレイン酸デカグリセリン)、太陽化学(株)製、HLB:4.5、ポリグリセリンに結合している平均脂肪酸数:5、エステル化率:42%
※5:レシチンDX、日清オイリオグループ(株)製大豆レシチン
※6:日清菜種サラダ油(S)、日清オイリオグループ(株)製
【0049】
表1によれば、HLB値が特定値である特定量のポリグリセリン脂肪酸エステルと、特定量のレシチンを含む炊飯用油脂組成物を用いた実施例1〜9は、比較例1〜7に比して、炊飯後の米飯の捌きが良好であるとともに炒め作業性にも優れ、得られる炒飯の風味や見た目も良好であることがわかる。また、冷凍品としての性能にも優れることも明らかである。これらは、特に乳化剤を添加した炒め油を用いずとも、充分な効果を発揮し得るものである。
【0050】
なかでも、乳化剤を含まない炒め油を用いた実施例1〜2は、乳化剤を含む炒め油を用いた比較例1に比して、乳化剤に由来する匂いや食味が顕著に抑制されていた。また、レシチンの含有量が適量である実施例3〜9は、レシチンの含有量が低い比較例4に比して、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が適量であることも相まって、炊飯後の米飯の捌きが非常に優れ、炒め時においても好影響を及ぼしていた。
特に、実施例4は、炊飯後の米飯、炒飯、冷凍品の全てに亘り、良好な風味や炒め作業性、食感等のバランスに優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炒飯用米飯を製造するための米飯の炊飯工程で用いられる炊飯用油脂組成物であって、該油脂組成物中に、HLB値が3.0以上8.0未満であり、かつ1.0質量%を超え18.0質量%以下の量のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び2.0〜15.0質量%の量のレシチンを含むことを特徴とする炊飯用油脂組成物。
【請求項2】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が、30〜90%であることを特徴とする請求項1に記載の炊飯用油脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の炊飯用油脂組成物を用いて米飯を炊飯することにより得られることを特徴とする炒飯用米飯。
【請求項4】
請求項3に記載の炒飯用米飯を用いて得られることを特徴とする炒飯。
【請求項5】
(A)油脂組成物中に、HLB値が3.0以上8.0未満であり、かつ1.0質量%を超え18.0質量%以下の量のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び2.0〜15.0質量%の量のレシチンを含む炊飯用油脂組成物を用いて、米飯を炊飯することにより炒飯用米飯を得る工程、及び
(B)得られた炒飯用米飯を炒め油で加工することにより、炒飯を得る工程
を含むことを特徴とする炒飯の製造方法。
【請求項6】
前記炒め油が、乳化剤を含まないことを特徴とする請求項5に記載の炒飯の製造方法。

【公開番号】特開2011−50301(P2011−50301A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201587(P2009−201587)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】