説明

炊飯釜搬送台車とそれを備えた炊飯装置

【課題】 列状に配置された複数台の炊飯機の上部の空間を走行する安全かつ衛生的な炊飯釜搬送台車と、それを備えた炊飯装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 複数台の炊飯機を列状に配置してなる炊飯機列の上部の空間を走行する炊飯釜搬送台車であって、当該搬送台車は、走行車輪を備えた台車と、台車の下方に、台車に対して昇降自在に取り付けられた把持装置とを有し、台車には、その上側に、少なくとも、走行車輪の車軸を回転自在に支承する軸受と、走行車輪を回転駆動する電動機と、把持装置を台車に対して昇降させるシリンダと、当該シリンダへの流体の供給を制御する電磁弁とが取り付けられており、台車が、台車の底面をカバーして有底のものとする底板を備えている炊飯釜搬送台車と、それを備えた炊飯装置を提供することによって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯釜搬送台車とそれを備えた炊飯装置に関し、詳細には、列状に配置された複数台の炊飯機の上部の空間を走行する安全かつ衛生的な炊飯釜搬送台車と、それを備えた炊飯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯釜の搬送装置を備えた自動炊飯装置としては、例えば特許文献1に示すようなものが知られている。この自動炊飯装置は、設置スペースを節約するために、複数の炊飯機を列状に配置した炊飯部を上段に、蒸らし部を下段に設け、さらに炊飯釜の炊飯部への搬入や、炊飯部から蒸らし部への移動を行う炊飯釜の搬送装置を備えている。この自動炊飯装置によれば、上下のスペースが有効に利用できるので、設置スペースの節約には有利である。
【0003】
しかしながら、この従来の自動炊飯装置においては、複数の炊飯機を列状に配置した炊飯部の上を機械的な可動部分を備えた走行機構が移動するので、走行機構から油やホコリ、ゴミ、さらには弛んで外れたビスやナットなどの機械部品が、搬送途中の炊飯釜の上、若しくは、下方にある炊飯機の上に落下する可能性があり、安全面及び衛生面で十分満足できるものとはいえない。すなわち、上述したような落下物が、例えば、炊飯機上に落下した場合には、炊飯機を汚損したり、その炊飯機構に損傷や障害を与えたりする恐れがある。また、炊飯釜上に落下した場合には、炊飯釜を汚損するだけでなく、そのまま炊飯釜とともにライン下流の工程に搬送され、炊飯釜の蓋が開けられたときに炊飯釜の内部や炊飯済みのご飯の上に落下する恐れがある。
【0004】
このような欠点を解決するために、例えば、特許文献2では、炊飯釜を把持する把持部の下側を、開閉自在なシャッター板で覆い、搬送装置からの落下物が下方にある炊飯機や、炊飯機にセットされている炊飯釜の上に落下しないようにした搬送装置が提案されている。しかし、この搬送装置においては、シャッター板が、把持部の下側に設けられているので、把持部が炊飯釜を把持している場合には、搬送装置からの落下物が把持している炊飯釜の上に落下することは防止できないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−128850号公報
【特許文献2】特開2005−287645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来の炊飯釜搬送装置が有する問題点を解決するために為されたもので、列状に配置された複数台の炊飯機の上部の空間を走行する安全かつ衛生的な炊飯釜搬送台車と、それを備えた炊飯装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を、複数台の炊飯機を列状に配置してなる炊飯機列の上部の空間を走行する炊飯釜搬送台車であって、当該搬送台車は、走行車輪を備えた台車と、台車の下方に、台車に対して昇降自在に取り付けられた把持装置とを有し、台車には、その上側に、少なくとも、走行車輪の車軸を回転自在に支承する軸受と、走行車輪を回転駆動する電動機と、把持装置を台車に対して昇降させるシリンダと、当該シリンダへの流体の供給を制御する電磁弁とが取り付けられており、台車が、台車の底面をカバーして有底のものとする底板を備えている炊飯釜搬送台車、及び、そのような炊飯釜搬送台車を備えた炊飯装置を提供することによって解決するものである。
【0008】
本発明の炊飯釜搬送台車によれば、走行車輪を備えた台車が、その底面をカバーして有底のものとする底板を備えているので、台車に取り付けられている軸受、電動機、シリンダ、及び、電磁弁などの構成要素から、油やホコリ、ビス、ナットなどが落下しても、それらの落下物は台車の底板で受けられ、下方に位置する炊飯釜や炊飯機等の上に落下する恐れがない。
【0009】
また、本発明の炊飯釜搬送台車の好ましい態様においては、把持装置には、少なくとも1対の把持爪と、把持爪を把持位置と解放位置との間で移動させるシリンダと、当該シリンダへの流体の供給を制御する電磁弁とが取り付けられており、把持装置は、把持爪によって把持される炊飯釜の上部開口面を覆う板状のカバー部材を備え、上記シリンダ及び電磁弁が、カバー部材よりも上方でカバー部材の外周よりも内側に位置しているので、把持装置のシリンダ及び電磁弁などからの落下物は勿論、万が一、上方の台車からの落下物があったとしても、それらの落下物はカバー部材で受けられ、下方に位置する炊飯釜などの上に落下する恐れがなく、より安全かつ衛生的な炊飯釜搬送台車を実現することができる。
【0010】
底板及びカバー部材は、それぞれ、台車又は把持装置に対して着脱自在に取り付けられるのが望ましく、また、底板及びカバー部材のそれぞれには上下に貫通した穴とその穴を塞ぐ着脱自在の蓋を備えるのが望ましい。この場合には、底板又はカバー部材を適宜台車又は把持装置から取り外したり、蓋を外して、落下物を穴から排出したりすることができるので、底板及びカバー部材の清掃が容易になるという利点が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炊飯釜搬送台車によれば、可動部分の多い台車が、台車を有底のものとする底板を備えているので、台車に取り付けられている種々の構成要素からの油、ホコリ、ビス、ネジ、ナット等の落下物があった場合でも、それらは底板で受け止められ、下方に位置する炊飯釜や炊飯機上に落下することがない。よって、極めて安全かつ衛生的に、炊飯釜搬送台車を炊飯機列の上部空間を走行させることができるという利点が得られる。
【0012】
また、台車の下方に位置する把持装置にカバー部材が取り付けられている場合には、把持装置の可動部分からの落下物は勿論、万が一、上方の台車からの落下物があった場合でも、カバー部材によってそれらの落下物を受け止めることができるので、落下物が炊飯釜の上部開口内に落下することがなく、より安全で衛生的な炊飯釜の搬送が可能になるという利点がある。また、複数台の炊飯機を列状に配置してなる炊飯機列と、その炊飯機列の上部の空間を走行する本発明の炊飯釜搬送台車を備えた本発明の炊飯装置によれば、より省スペースで、しかも安全かつ衛生的な炊飯が可能になるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の炊飯釜搬送台車の一例を示す正面図である。
【図2】本発明の炊飯釜搬送台車の一例を示す平面図である。
【図3】本発明の炊飯釜搬送台車の一例を示す側面図である。
【図4】図1のX−X’線で切断した断面図である。
【図5】図2のY−Y’線で切断した断面図である。
【図6】台車のフレームと底板との関係を示す図である。
【図7】本発明の炊飯釜搬送台車の他の一例における台車のフレームと底板との関係を示す図である。
【図8】図1のZ−Z’線で切断した把持装置の平面図である。
【図9】本発明の炊飯装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0015】
図1は本発明の炊飯釜搬送台車の一例を示す正面図である。図1において、1は炊飯釜搬送台車であり、炊飯釜搬送台車1は台車2と、台車2に対して昇降自在に取り付けられている把持装置3とを有している。4、4は台車2の走行車輪、5は走行車輪4、4を回転駆動する電動機、6は把持装置3を台車2に対して昇降させるシリンダ、7は把持装置3の昇降時のガイドバー、8はスプロケット、9はスプロケット8の回転が伝達されるロータリエンコーダ、10は台車2の底板、11は走行車輪4、4の走行路である。12はケーブルベアであり、ケーブルベア12内には、炊飯釜搬送台車1と外部の電源、制御装置、流体源などとを結ぶ電線、信号線、管路などが収容されている。12aはケーブルベア12を台車2に取り付ける取付体である。
【0016】
13は把持装置3に取り付けられている把持爪、13aは把持爪13の支持板、13b、13bは、把持爪13と支持板13aとを連結する連結体、14はカバー部材である。図1では把持爪13は手前側のものしか示されていないが、紙面の向こう側にも対となる把持爪13が存在し、把持爪13、13は一対となって炊飯釜を把持する。Pは炊飯釜であり、炊飯釜Pは、上部の鍔部Pと下部の鍔部Pの二重鍔を有している。上部鍔部Pは、その下面に把持爪13の上面を当接させることによって、炊飯釜Pを把持するのに使用され、下部鍔部Pはその下面を炊飯機の上面に当接させて、炊飯釜Pを炊飯機にセットするのに使用される。
【0017】
上記のように構成されてなる本発明の炊飯釜搬送台車1は、電動機5によって、台車2の走行車輪4、4を回転駆動することによって、走行路11上を図中左右方向に往復移動し、後述するとおり、ロータリエンコーダ9からの信号に基づいて、走行路11上の適宜の場所で停止することができる。また、炊飯釜搬送台車1は、シリンダ6のピストンを突出又は引き込むことによって、ピストン先端部に連結されている把持装置3を下降又は上昇させることができる。
【0018】
把持装置3は、図1には示されていないシリンダによって、支持板13a及び連結体13b、13bを介して、一対の把持爪13、13を解放位置と把持位置との間で移動させる。把持位置においては、把持爪13は、炊飯釜Pの上部鍔部Pの直下に位置し、シリンダ6によって把持装置3が上昇すると、把持爪13の上面が炊飯釜Pの上部鍔部Pの下面と当接し、炊飯釜Pを把持することができる。一方、解放位置においては、把持爪13は、炊飯釜Pの上部鍔部Pの直下には位置しないので、把持装置3が上昇しても、その上面は上部鍔部Pの下面と当接せず、炊飯釜Pは把持されない。
【0019】
図2は、図1に示される炊飯釜搬送台車1の平面図であり、図1におけると同じ部材には同じ符号を付してある。図2に示すように、台車2は、台車2の四囲の枠組みを構成する外周フレーム2aと、外周フレーム2aの底部において、その上辺と下辺とを連結する底部中央フレーム2bと、外周フレーム2aの上部においてその左辺と右辺とを連結する上部中央フレーム2cを備えている。
【0020】
4a、4aは走行車輪4、4の車軸、4b、4bは車軸4a、4aを回転自在に支承する軸受であり、軸受4b、4bは、例えばネジなどの手段によって、台車2の外周フレーム2aの上面に取り付けられている。5aは電動機5の回転軸に取り付けられた駆動側プーリであり、タイミングベルト5dを介して、車軸4b、4bの一方に取り付けられた従動側プーリ4cに回転動力を伝達し、走行車輪4、4を回転させる。15は、電動機5を固定する水平断面コの字状の固定部材であり、固定部材15の下端は台車2の底部中央フレーム2bに取り付けられている。
【0021】
8aはスプロケット8の回転軸、8b、8bは、回転軸8aを回転自在に支承する軸受であり、軸受8b、8bの一方は、台車2の外周フレーム2aの上面に、他方は、台車2の上部中央フレーム2cの上面に取り付けられている。8cは、回転軸8aに取り付けられた回転伝達プーリであり、タイミングベルト8dを介して、ロータリエンコーダ9の回転軸に取り付けられた従動側プーリ9bにその回転を伝達する。ロータリエンコーダ9は、台車2の上部中央フレーム2cの上面に取り付けられている。
【0022】
11cは、走行路11と平行に設置されたチェーンである。スプロケット8は、その歯をチェーン11cと係合させているので、炊飯釜搬送台車1が走行路11上を移動すると、その移動に伴いスプロケット8は回転し、その回転は、回転軸8a、回転伝達プーリ8c、タイミングベルト8d、従動側プーリ9bを介して、ロータリエンコーダ9に伝達され、ロータリエンコーダ9は、炊飯釜搬送台車1の走行路11上の位置に対応する信号を発生することになる。このロータリエンコーダ9からの信号に基づいて、図示しない制御装置は、炊飯釜搬送台車1を走行路11上の適宜の場所に移動させ、停止させることができる。なお、ロータリエンコーダ9としては、電源の一時的な遮断時にも位置情報が失われないように、アブソリュート式のものを用いるのが望ましい。
【0023】
16は、シリンダ6への作動流体の供給を制御する電磁弁であり、シリンダ6とともに台車2の底部中央フレーム2bに取り付けられている。シリンダ6としては、把持装置3を台車2に対して昇降させることができる限り、油圧、空気圧、ガス圧、水圧のいずれの流体圧を利用するものであっても良いが、簡便さと衛生面からは圧縮空気を作動流体とする空気圧シリンダを用いるのが良い。また、電磁弁16としては、シリンダ6への流体の供給を制御して、そのピストンを突出或いは引き込むように動作させることができる限り、どのような電磁弁を用いても良いが、電源が一時的に遮断された場合の動作の安定性という観点からは、ダブルソレノイド型の電磁弁を用いるのが望ましい。
【0024】
図3は、図1に示される炊飯釜搬送台車1の左側面図であり、図1におけると同じ部材には同じ符号を付してある。図3において、3aは把持装置3の天板であり、天板3aにはシリンダ6のピストンの先端が連結されている。図示の状態は、シリンダ6のピストンがシリンダ内に最も引き込まれた位置、すなわち、把持装置3が台車2に対して最も上昇した位置にあるときを示しており、図示の状態からシリンダ6のピストンが下方に突出すると、把持装置3は、2本のガイドバー7、7に案内されながら、下降することになる。
【0025】
3bは把持装置3の基板、17a、17bはシリンダ、18a、18bは、それぞれ、シリンダ17a、17bへの流体の供給を制御する電磁弁、19、19は、把持爪13、13の移動時にその支持板13a、13aの移動を案内するガイドバーであり、これらシリンダ17a、17b、電磁弁18a、18b、及びガイドバー19、19は、把持装置3の基板3bに取り付けられている。なお、図に示すとおり、カバー部材14は、把持装置3が把持する炊飯釜Pの上部開口面をすっぽりと覆う大きさ、形状とされており、シリンダ17a、17b及び電磁弁18a、18bは、カバー部材14よりも上方で、カバー部材14の外周よりも内側に位置している。したがって、基板3bに取り付けられているシリンダ17a、17b及び電磁弁18a、18bからの落下物は勿論、上方にある台車2から何らかの落下物があった場合でも、それらの落下物が、炊飯釜Pの上部開口面上に落下する恐れはない。
【0026】
図4は、図1のX−X’断面図である。図に示すとおり、台車2の四囲の枠組みを構成する外周フレーム2aは、底部中央フレーム2bによって、その底部において、上辺と下辺とが連結されている。シリンダ6及び電磁弁16は、底部中央フレーム2bに取り付けられており、図示しない電動機5も固定部材15を介して、底部中央フレーム2bに取り付けられている。10は底板であり、外周フレーム2aの四隅に設けられている取り付け用の穴20、20、・・・を利用して、外周フレーム2aに着脱自在に取り付けられている。外周フレーム2aには、底部中央フレーム2bの部分を除いて、中央部に部材が存在しないので、底板10がないときには台車2は有底ではない。底板10が存在することによって、台車2は、その底面がカバーされ、有底のものとされている。
【0027】
図5は、図2のY−Y’断面図である。図に示すとおり、外周フレーム2aは、断面コの字状であり、コの字状の上面に走行車輪4、4の軸受4b、4bが取り付けられ、コの字状の下面には、底板10が、例えば、ボルト、ナットからなる固定手段20a、20a・・・によって着脱自在に固定されている。この底板10が存在することにより、台車2は、その底面がカバーされ、有底のものとされている。したがって、外周フレーム2aに取り付けられている軸受4b、4b、底部中央フレーム2bに取り付けられている電動機5、シリンダ6、及び電磁弁16などの可動部分を含む部材から、油、ホコリ、ビス、ナットなどが落下しても、それらの落下物は、底板10で受けられ、台車2よりも下方に位置する炊飯釜や炊飯機などの上に落下することがない。
【0028】
なお、台車2の底部を、外周フレーム2a、底部中央フレーム2b、及び底板10で構成する代わりに、外周フレーム2aと底部中央フレーム2bとを連続させて一枚の基板として底板とし、台車2の底部を始めから有底のものとすることも可能である。しかし、その場合には、電動機やシリンダなどの重量物を取り付けるために、基板は、ある程度の強度を備えた肉厚の材料を用いて構成する必要があり、台車2の重量が大きくなってしまうという不都合がある。台車2の重量が大きくなると、走行に要するエネルギーも大きくなり、また、慣性も大きくなるので、所定位置への走行、停止の制御が容易でなくなるという欠点を生じる。
【0029】
これに対し、上記の例に示すように、台車2の底部を、外周フレーム2a及び底部中央フレーム2bと、それらのフレームが存在しない部分をカバーする底板10とで構成して、台車2を有底のものとする場合には、強度が要求されるフレーム部分をできるだけ小さくして、台車2の重量を小さくすることが可能である。底板10としては、落下物を受け止めることができるだけの強度があれば良く、薄い金属板やプラスチック板など、軽量の材料を適宜選択して用いることができる。また、上記の例に示すように、外周フレーム2aを、断面がコの字状の部材で構成する場合には、外周フレーム2aの強度を構造的に高めることができるので、外周フレームとして用いる材料の量をより一層減少させ、或いは、より低強度の軽い材料を用いることができるという利点がある。
【0030】
図6は、台車2のフレームと底板10との関係を示す図である。図に示すように、底板10の四隅には、外周フレーム2aの四隅に設けられている穴20、20、・・・と対応する位置に、取り付け用の穴20b、20b、・・・が設けられている。両者の穴を位置合わせし、その穴に、例えば、ボルトを通し、ナットで締めることによって、底板10を外周フレーム2aの底部に着脱自在に取り付けることができる。このように、底板10が外周フレーム2aに着脱自在に取り付けられているので、底板10上に、油やホコリなどの落下物が溜まった場合には、適宜、底板10を取り外し、清掃することが容易にできるので、炊飯釜搬送台車1を清潔に保つことが容易にできるという利点がある。
【0031】
10aは、底板10の適宜の位置に設けられている底板10を上下に貫通する穴、10bは、穴10aを塞ぐ蓋であり、穴10aに対し着脱自在に取り付けられている。このように、穴10aと蓋10bとが設けられている場合には、底板10を取り外すことなく、単に蓋10bを取り外すだけで、底板10上に溜まった油やホコリなどの落下物を、穴10aから外部へと排出することができるので、より簡便に底板10を清掃することが可能である。なお、21a、21aは、底部中央フレーム2b及び底板10の双方に設けられた、シリンダ6のピストン用の貫通穴、21b、21b、・・・は、底部中央フレーム2b及び底板10の双方に設けられた、ガイドバー7、7用の貫通穴である。
【0032】
図7は、台車2のフレームと底板10との関係の他の一例を示す図である。図に示すとおり、本例においては、台車2の底部は、外周フレーム2aと底部中央フレーム2bではなく、中央部で左辺と右辺とがつながり、上辺部と下辺部とに、外部と連続した空間部を有する略H字型の一枚の底部フレーム2dで構成されている。台車2の底部がこのような略H字型の底部フレーム2dであっても、底板10は、底部フレーム2dの上辺部と下辺部における空間部をカバーして、台車2を有底のものとするように底部フレーム2dに取り付けられる。10c、10cは、底板10に設けられた突起部であり、ちょうど底部フレーム2dが存在しない上辺及び下辺部の間隙を塞ぎ、これら間隙から、底板10上が受け止めた落下物がさらに下方に落下するのを防止する。
【0033】
なお、以上の例においては、底板10は、いずれも、台車2の底部を構成するフレームの底面に取り付けられているが、底板10は、台車2の底部を構成するフレームの上面、例えば、図6でいえば、外周フレーム2aの上面、図7でいえば、底部フレーム2dの上面に取り付けても良い。また、以上の例においては、底板10は、一枚の板状物で構成されているが、これを、例えば2つに分割し、そのそれぞれを、台車2の底部を構成するフレームの穴をカバーするように取り付けても良い。
【0034】
以上のように、本発明の炊飯釜搬送台車1の台車2には、台車2の底面をカバーして有底のものとする底板10が備えられているので、台車2に取り付けられている軸受4b、4b、電動機5、シリンダ6、電磁弁16などから、油、ホコリ、ビス、ボルト、ナットなどが落下しても、有底の台車2の底板10で受け止められ、下方に位置する炊飯釜Pや、炊飯機などの上に落下する恐れがない。
【0035】
図8は、図1のZ−Z’断面図であり、把持装置3のほぼ平面図に相当する。図に示すとおり、シリンダ17a、17bと、それぞれのシリンダへの流体の供給を制御する電磁弁18a、18bとは、把持装置3の基板3bに取り付けられており、シリンダ17a、17b及び電磁弁18a、18bは、カバー部材14の外周よりも内側に位置している。22a、22bは、それぞれ、シリンダ17a、17bのピストンであり、その先端は、把持爪13、13の支持板13a、13aに連結されている。
【0036】
図8に示す状態は、ピストン22a、22bが、シリンダ17a、17b内に最も引き込まれた状態にあり、一対の把持爪13、13は、互いに最も接近した把持位置にある。把持位置において、把持爪13、13は、炊飯釜Pの上部鍔部Pの直下にあり、その上面を上部鍔部Pの下面に当接させて、炊飯釜Pを把持できる状態にある。この状態からシリンダ17a、17bが作動して、ピストン22a、22bをシリンダから突出させると、ピストン22a、22bの先端が連結されている支持板13a、13aは、外側に押し出され、連結体13b、13bを介して支持板13a、13aに取り付けられている把持爪13、13は、互いに最も離れた解放位置へと移動する。
【0037】
シリンダ17a、17bとしては、把持爪13、13を把持位置と解放位置との間で移動させることができる限り、油圧、空気圧、ガス圧、水圧のいずれの流体圧を利用するものであっても良いが、簡便さと衛生面からは圧縮空気を作動流体とする空気圧シリンダを用いるのが良い。また、電磁弁18a、18bとしては、シリンダ17a、17bへの流体の供給を制御して、そのピストンを突出或いは引き込むように動作させることができる限り、どのような電磁弁を用いても良いが、電源が一時的に遮断された場合の動作の安定性という観点からは、ダブルソレノイド型の電磁弁を用いるのが望ましい。
【0038】
カバー部材14は、板状で、把持装置3の基板3bに着脱自在に取り付けられており、その大きさと形状は、把持装置3が把持する炊飯釜Pの上部開口面を覆う大きさ、形状とされている。すなわち、図8において水平なハッチングで示すPは、炊飯釜Pの上部鍔部Pよりも上に立ち上がる立設部であり、炊飯釜Pの上部開口面を区切るものであるが、カバー部材14は、この立設部Pの外周をすっぽりと覆い、立設部Pの内側の領域である炊飯釜Pの上部開口面を覆い、カバーしている。
【0039】
このように、炊飯釜Pの上部開口面を覆うカバー部材14が把持装置3に取り付けられている場合には、把持装置3に取り付けられているシリンダ17a、17b及び電磁弁18a、18bからの落下物は勿論、上方にある台車2からの落下物があった場合でも、それらが炊飯釜Pの上部開口面上に落下することを防止することができるので、落下物が炊き上がったご飯の中に混入する恐れはなく、極めて衛生的な炊飯が可能となる。
【0040】
また、カバー部材14は、基板3bに着脱自在に取り付けられているので、適宜、取り外して、その上面を清掃することが可能である。また、カバー部材14には、受け止めた落下物がさらに下方に落下するのを防止するために、カバー部材14の外周に沿って、折り返し部、立設部などの突起を設けることができる。このような突起をカバー部材14の外周に沿って設けた場合には、カバー部材14に上下に貫通する穴を設け、その穴を塞ぐ蓋を着脱自在に取り付けておくのが望ましい。このような穴と蓋が設けられている場合には、カバー部材14を取り外すことなく、単に、蓋を取り外して、その穴から落下物等を外部に排出することができるので、清掃が簡便に行えるという利点が得られる。
【0041】
なお、以上の例においては、炊飯釜Pは水平断面が円形であるので、カバー部材14の形状も円形となっているが、カバー部材14の形状、大きさは、炊飯釜Pの上部開口面の形状、大きさに応じて適宜変更できることはいうまでもない。例えば、上部開口面が長方形の炊飯釜の場合には、カバー部材14の形状は、その炊飯釜の上部開口面を覆う大きさの長方形とされる。
【0042】
図9は、本発明の炊飯釜搬送台車1を備えた本発明の炊飯装置の一例を示す図である。図9において、30は本発明の炊飯装置を示し、炊飯装置30は、列状に配置された複数台の炊飯機31a、31b、31c・・・を備えた炊飯部αを上段に、加熱装置32を備えた蒸らし部βを下段に有している。炊飯釜搬送台車1の走行路11は、図に示すとおり、炊飯機31a、31b、31c・・・の上部に設置されているので、炊飯釜搬送台車1は、列状に配置された複数台の炊飯機31a、31b、31c・・・から構成される炊飯機列の上部の空間を走行することになる。33は制御装置、34は電源、35は流体源であり、これらと炊飯釜搬送台車1とは、ケーブルベア12で結ばれている。
【0043】
制御装置33からの制御信号に基づいて、炊飯釜搬送台車1は、走行路11上を走行し、指定された位置で停止して、図中上下の矢印で示すように把持装置3を、実線で示す走行位置と、破線で示す把持・解放位置との間で昇降させる。実線で示す走行位置は、シリンダ6のピストンがシリンダ内に最も引き込まれ、把持装置3が最も上昇した位置に対応し、破線で示す把持・解放位置は、シリンダ6のピストンがシリンダから最も外に突出し、把持装置3が最も下降した位置に対応している。把持装置3は、最も下降した把持・解放位置において、把持爪13、13を把持位置から解放位置へ、又その逆へと移動させ、炊飯釜Pの把持、解放を行う。
【0044】
ここで、炊飯釜搬送台車1の台車2は、底板10によって有底のものとされているので、炊飯釜搬送台車1が炊飯機列の上部空間を走行しても、台車2に取り付けられている種々の部材からの落下物は底板10で受け止められ、下方に位置する炊飯釜Pや、炊飯機31a、31b、31c・・・の上に落下する恐れがない。また、炊飯釜搬送台車1の把持装置3には、カバー部材14が取り付けられているので、炊飯釜搬送台車1が炊飯機列の上部空間を走行しても、把持装置3に取り付けられている種々の部材からの落下物はカバー部材14で受け止められ、下方に位置する炊飯釜Pや、炊飯機31a、31b、31c・・・の上に落下する恐れがない。
【0045】
このように、本発明の炊飯釜搬送台車1を備えた本発明の炊飯装置30によれば、炊飯釜搬送台車1からの落下物は、底板10或いはカバー部材14で受け止められ、下方に位置する炊飯釜Pや、空の炊飯機や、炊飯釜Pをセットした炊飯機上に落下する恐れがないので、炊飯釜搬送台車1を炊飯機列の上部の空間を走行させ、炊飯装置30の設置スペースの節約を図った場合でも、安全かつ衛生的な炊飯を実行することが可能になる。また、本例の炊飯装置30においては、炊飯部αと蒸らし部βとが上下に配置されているので、炊飯部αと蒸らし部βとを備えているにもかかわらず、設置にそれほど大きなスペースを必要としないという利点が得られる。
【0046】
なお、36は、未炊飯の米と水を収容した炊飯釜Pを受け入れる受入部、37は、昇降して、炊飯を終えた炊飯釜Pを炊飯部αから蒸らし部βへと移動させるリフタ装置、38は、蒸らし工程を終了した炊飯釜Pを次の工程へと送り出す搬出部である。受入部36において、36aは炊飯釜Pを搬送する回転ローラ、36b、36bは、受入部36上の所定位置で炊飯釜Pを停止させるストッパである。図中紙面の奥の方向から搬送されてきた未炊飯の米と水を収容した炊飯釜Pは、ストッパ36b、36bと当接し、受入部36上の所定位置で停止する。このとき、炊飯部αの床面から、受入部36上の炊飯釜Pにおける上部鍔部Pの底面までの高さ「Hin」は、炊飯釜Pがその下部鍔部Pの下面を、例えば、炊飯機31aの上面に当接させて炊飯機31a上にセットされたときの、炊飯部αの床面から上部鍔部Pの底面までの高さ「H」と同じになるように設定されている。
【0047】
また、リフタ装置37が、炊飯を終了した炊飯釜Pを受け取る位置にまで上昇した図示の状態において、炊飯部αの床面から、リフタ装置37上の炊飯釜Pにおける上部鍔部Pの底面までの高さ「Hout」は、前述した「Hin」及び「H」と同じになるように設定されている。このため、炊飯釜搬送台車1は、受入部36、炊飯機31a、31b、31c・・・、及びリフタ装置37のいずれの位置においても、同じ高さまで把持装置3を下降させて、炊飯釜Pの把持、解放を行うことが可能である。つまり、把持装置3の把持・解放位置の高さは、受入部36、炊飯機31a、31b、31c・・・、及びリフタ装置37のいずれの位置においても同じであり、炊飯釜搬送台車1は、把持装置3を、最も上昇した走行位置と、最も下降した把持・解放位置という2位置間で昇降させるだけで良いということになる。このため、シリンダという簡便な駆動装置によって把持装置3の昇降を行わせることが可能となり、炊飯釜搬送台車1の構造を簡便なものとし、その動作の制御を容易なものとすることができる。
【0048】
受入部36の所定位置に未炊飯の炊飯釜Pが到達すると、炊飯釜搬送台車1は、受入部36上に移動し、把持装置3を把持・解放位置まで下降させて炊飯釜Pを把持すると、把持装置3を走行位置まで上昇させ、空いている適宜の炊飯機31a、31b、31c、又は31d上に搬送し、炊飯位置にセットする。いずれかの炊飯機31a、31b、31c、又は31dにおいて炊飯が終了すると、炊飯釜搬送台車1は、その炊飯が終了した炊飯機上に移動し、把持装置3を把持・解放位置まで下降させて炊飯が終了した炊飯釜Pを把持し、リフタ装置37上に移動して、把持装置3を把持・解放位置まで下降させて、リフタ装置37上に炊飯が終了した炊飯釜Pを解放する。炊飯が終了した炊飯釜Pが載置されると、リフタ装置37は図中破線で示す位置まで下降し、続く蒸らし部βへと炊飯釜Pを送り出す。炊飯釜Pは、蒸らし部βを時間を掛けて通過し、蒸らしが行われることになる。
【0049】
蒸らし部βには、その搬送方向の全長にわたって、加熱装置32が設けられている。加熱装置32としては、その上部を通過する炊飯釜Pや雰囲気空気を加温することができる限り、どのような機構で発熱するものであっても良く、例えば、管状部材を蛇行させて所定の面積をカバーするように構成し、その管状部材の内部に図示しない熱源からの加熱された空気や蒸気、或いは温水などを通過させることにより、輻射熱或いは放射熱を発生するものであっても良く、ヒータなどの電気的に熱を発生するものであっても良い。蒸らし部βを通過する炊飯釜Pには、加熱装置32によって、蒸らしに必要な熱量が供給されるので、効率の良い蒸らしを行うことが可能になる。蒸らしが終了した炊飯釜Pは、搬出部38へと送り出され、続く工程へと搬送される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明の炊飯釜搬送台車とそれを備えた炊飯装置によれば、省スペースな配置で、安全かつ衛生的な炊飯を実現できるという優れた産業上の利用可能性が得られる。
【符号の説明】
【0051】
1 炊飯釜搬送台車
2 台車
3 把持装置
4 走行車輪
5 電動機
6、17a、17b シリンダ
7、19 ガイドバー
8 スプロケット
9 ロータリエンコーダ
10 底板
11 走行路
13 把持爪
14 カバー部材
16、18a、18b 電磁弁
22a、22b ピストンロッド
30 炊飯装置
31a、31b・・・ 炊飯機
32 加熱装置
33 制御装置
34 電源
35 流体源
36 受入部
37 リフタ装置
38 搬出部
P 炊飯釜
α 炊飯部
β 蒸らし部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の炊飯機を列状に配置してなる炊飯機列の上部の空間を走行する炊飯釜搬送台車であって、当該搬送台車は、走行車輪を備えた台車と、台車の下方に、台車に対して昇降自在に取り付けられた把持装置とを有し、台車には、その上側に、少なくとも、走行車輪の車軸を回転自在に支承する軸受と、走行車輪を回転駆動する電動機と、把持装置を台車に対して昇降させるシリンダと、当該シリンダへの流体の供給を制御する電磁弁とが取り付けられており、台車が、台車の底面をカバーして有底のものとする底板を備えている炊飯釜搬送台車。
【請求項2】
底板が、台車に対して着脱自在に取り付けられている請求項1記載の炊飯釜搬送台車。
【請求項3】
底板が、上下に貫通する開口と、その開口を塞ぐ着脱自在の蓋とを備えている請求項1又は2記載の炊飯釜搬送台車。
【請求項4】
把持装置には、少なくとも1対の把持爪と、把持爪を把持位置と解放位置との間で移動させるシリンダと、当該シリンダへの流体の供給を制御する電磁弁とが取り付けられており、把持装置は、把持爪によって把持される炊飯釜の上部開口面を覆う板状のカバー部材を備え、上記シリンダ及び電磁弁が、カバー部材よりも上方でカバー部材の外周よりも内側に位置している請求項1〜3のいずれかに記載の炊飯釜搬送台車。
【請求項5】
カバー部材が、把持装置に対して着脱自在に取り付けられている請求項4記載の炊飯釜搬送台車。
【請求項6】
カバー部材が、上下に貫通する開口と、その開口を塞ぐ着脱自在の蓋とを備えている請求項4又は5記載の炊飯釜搬送台車。
【請求項7】
複数台の炊飯機を列状に配置してなる炊飯機列と、その炊飯機列の上部の空間を走行する請求項1〜6のいずれかに記載の炊飯釜搬送台車とを備えている炊飯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−252873(P2010−252873A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103438(P2009−103438)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(599103122)精宏機械株式会社 (26)
【Fターム(参考)】