説明

炎感知器

【課題】外部からの衝撃、振動等に対するプリント基板の共振による振幅の増大を構造的に防止するようにしてセンサへ伝達される振動エネルギーを抑制して、正確に火炎を検出することができる炎感知器を提供する。
【解決手段】表カバー2と裏カバー3とで構成された本体ケース1と、この本体ケース1内に複数の取付部で取付けられセンサ11、12が搭載されたプリント基板8と、このプリント基板8の接続部に接続され裏カバー3の通し穴27から引出されたリード線19とを備え、リード線19はプリント基板8の接続部と裏カバー3の通し穴27に樹脂で固着され、プリント基板8の複数の取付部に対応するネジ21、22,23、24間のそれぞれの距離L1〜L5及びプリント基板8の複数の取付部に対応するネジ21、22,23、24とリード線19が固着された接続部の固定部間のそれぞれの距離L7〜L10が互いに異なるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦電素子を内蔵したセンサを用いた炎感知器に係り、特に、センサへ伝達される振動エネルギーを抑制するプリント基板の取付構造を備えた炎感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炎感知器は、プリント基板に焦電素子を内蔵したセンサを搭載している。そして、部品配置面積を最大にするため、略正方形のプリント基板のコーナー4箇所に取付穴を設けており、この取付穴にネジを通し、本体ケースの取付基台の取付ボスにねじ込むことで、プリント基板は本体ケースに固定されていた。
また、炎感知器は、透過窓を透過した太陽光等の外光がセンサのケースに当たり、または環境温度の急激な温度変化により、ケースから発生した熱をセンサが検出して誤報を発生することを防ぐために、センサのケース側面を覆う温度調整部材を設け、センサが太陽光等で直接加熱されることを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−13978号公報(段落0019〜0030、図6〜9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の炎感知器は、例えば船等の移動体等、振動の影響が大きな環境に設置される場合、外部からの衝撃、振動等が加わると、その振動等の特定周波数や高調波に対してプリント基板に共振が発生するが、プリント基板の複数の取付穴間(本体ケースとの複数の固定部位間)の距離が等しいときは、その複数の固定部位間の共振周波数が同じであるため、プリント基板の振動の振幅が増幅されてしまう。
焦電素子は圧電体でもあるため、原理的に振動を信号に変換してしまう。即ち、プリント基板からセンサに振動が伝えられると、振動ノイズ成分を含んだセンサ出力が生じるが、外部からの衝撃等によりプリント基板に共振が発生した場合、プリント基板の振動の振幅が増幅されることによって、甚大な振動ノイズ成分を含んだセンサ出力が生じて、正確に火炎を検出できなくなり、誤報、失報の原因となっていた。
【0005】
また、温度調整部材はセンサの上面から被せられるため、センサのプリント基板との固定端に対してモーメントを大きくしていたため、温度調整部材の振動に起因して、センサ出力に更なる振動ノイズ成分が発生したり、固定端の剥離等が発生する問題があった。
【0006】
本発明は、外部からの衝撃、振動等に対するプリント基板の共振による振幅の増大を構造的に防止するようにしてセンサへ伝達される振動エネルギーを抑制して、正確に火炎を検出することができる炎感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炎感知器は、表カバーと裏カバーとで構成された本体ケース内に複数の固定部で固定され、焦電素子を内蔵したセンサが搭載されたプリント基板を有する炎感知器において、前記プリント基板が固定された固定部間のそれぞれの距離が互いに異なるようにしたものである。
【0008】
また、前記裏カバーに固定されるとともに前記プリント基板に接続固定された電気部品を備え、前記固定部は、前記本体ケースに取付固定された前記プリント基板の複数の取付部と、前記電気部品が接続固定された部分とであるものである。
【0009】
また、前記電気部品は、前記プリント基板の接続部に接続され、前記裏カバーの通し穴から引出されたリード線であり、前記リード線は前記プリント基板の前記接続部と前記裏カバーの前記通し穴に樹脂で固着されたものである。
【0010】
また、前記センサは、その側面および底面を覆うゴムキャップを介して、前記プリント基板に搭載されるものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、焦電素子を内蔵したセンサが搭載されたプリント基板が、本体ケース内に複数の固定部で固定され、プリント基板が固定された固定部間のそれぞれの距離が互いに異なるようにしたので、固定部間のそれぞれの共振周波数が互いに異なる。そのため、外部からの衝撃、振動等に対してプリント基板に共振が発生しても、プリント基板の振動の振幅が特定の周波数で増幅されずに分散し、センサへ伝達される振動エネルギーを抑制しているので、センサ出力における振動ノイズ成分を低減させることができ、正確に火炎を検出することができる。
なお、裏カバーに固定されるとともにプリント基板に接続固定された電気部品を備えている場合、固定部は、本体ケースに取付固定されたプリント基板の複数の取付部と、電気部品が接続固定された部分とである。
具体的には、電気部品は、プリント基板の接続部に接続され、裏カバーの通し穴から引出されたリード線であり、リード線はプリント基板の接続部と裏カバーの通し穴に樹脂で固着されたものである。
【0012】
また、焦電素子を内蔵したセンサは、その側面および底面を覆うゴムキャップを介して、プリント基板に搭載されるので、プリント基板を介してセンサへ伝達される振動エネルギーは抑制され、センサの出力における振動ノイズ成分を著しく低減させることができ、正確に火炎を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明にかかる炎感知器の一実施の形態を示す縦断面図、図2は図1の下面図、図3は図1の上面図、図4は図1のA矢視図である。なお、図1は図3のB−B断面図である。
図において、炎感知器は、外殻がほぼ鍋状の表カバー2と、表カバー2の内面側から立設した隔壁2a上を覆う裏カバー3とからなる本体ケース1を備え、本体ケース1の収納部4内にプリント基板8が図4にも示すようにプリント基板8の取付部である取付穴(表カバー2の内面側から立設した台座2b(図1)の中央に設けられている。)を介してネジ21、22、23、24により表カバー2に取付けられている。
プリント基板8には、炎検出素子としての第1、第2のセンサ11、12が、その側面および底面を覆う温度変化防止用のゴムキャップ17を介して、プリント基板8に搭載されている。また、プリント基板8の一部がシールドカバー20で覆われている。
【0014】
第1、第2のセンサ11、12は、詳細には図示しないが、その外面を覆うセンサケース内に、焦電素子がそれぞれ内蔵され、また、センサケースの最前面にバンドパスフィルタがそれぞれ配置されており、第1のセンサ11は、例えば、炎から放射されるCO2 共鳴放射の波長帯である概ね4.4μm付近の赤外線を受光し、第2のセンサ12は、例えばCO2 共鳴放射の波長帯近傍である概ね5.0μm付近の赤外線を受光して、それぞれセンサ出力を生じるものである。
【0015】
また、感知器の感度の切換選択をするスイッチ部18(電気部品の一例)が、裏カバー3の収納部4側に突出するように形成された凹部3a内に設けられ、凹部3aの底面孔部介してプリント基板8に電気的に接続されている。
【0016】
また、プリント基板8には、図5に示すようにリード線19(電気部品の一例)が電気接続されるとともに接続部が例えばエポキシ系の樹脂で固着され固定部25が形成されている。また、リード線19は裏カバー3に設けられた深み部28底面の通し穴27から引き出され、この通し穴27の部分でエポキシ系の樹脂でシールされるとともに固着され固定部26が形成されている。
このリード線19には、図示しないが、火災受信機等からの電源兼信号線が結線される。なお、リード線19の本数は、送り配線接続するため、4本引き出されている。
【0017】
表カバー2の中央部付近には窓部となる開口部15が形成されており、この開口部15を裏面から覆うように保護フィルターである例えばサファイアガラス16が樹脂接着により固定されてサファイア窓を形成している。なお、開口部15によって、第1、第2のセンサ11、12の視野角が決定される。
【0018】
裏カバー3は表カバー2の裏側から内部の収納部4を樹脂のシール部材5を介して接着することによって密閉されている。そして、本体ケース1は取付具7によって取り付けベース(図示せず)に結合されて、天井面等に取り付けられる。
【0019】
次に、例えば、船等の移動体等、振動の大きな環境に設置された場合の本発明の炎感知器の外部からの振動に対する挙動について図1〜5により説明する。本体ケース1は図1に示すように表カバー2、裏カバー3の厚さを厚くして剛性が高められているので共振は生じ難いが、プリント基板8は剛性が低いので、振動の高周波等によって共振が発生する場合がある。共振は、本体ケース1に固定されるプリント基板8の複数の固定部位間の互いの距離に関係する。プリント基板8の共振に関係する固定部位は固く固定されているところであり、まず、図4に示すようにネジ21、22、23、24による表カバー2への取付部である。また、リード線19がプリント基板8に電気接続され、エポキシ系の樹脂で固着された固定部25と裏カバー3の通し穴27にエポキシ系の樹脂で固着された固定部26は近距離であり、これら固定部25、26間は剛性が高いので、プリント基板8が裏カバー3に固定部25で固定されたと同様な状態なのでこれも固定部位である。
【0020】
なお、ネジ21とネジ24による固定部位間は、それぞれを結ぶ直線上L6(図4)の近傍に別の固定部位(固定部25)が介在している。そのため、ネジ21とネジ24による固定部位間は、ネジ21と固定部25による固定部位間と、固定部25とネジ24による固定部位間とに分割されており、この場合のネジ21とネジ24による固定部位間の距離は、共振に関係しない(固定部位間の距離に応じて共振周波数が決定されるため)。
また、スイッチ部18が取付けられる裏カバー3の凹部3aとプリント基板8間には
、防水性を考慮して、シール材が塗布されるが、シリコン系のものでエポキシ系の樹脂のように固く固着されていないので固定部位とみなさないが、エポキシ系の樹脂で固く固着された場合は、固定部位とみなす必要がある。
【0021】
これらの固定部位の間の互いの距離が同じときは、固定部位間のそれぞれの共振周波数が同じになるが、本発明では図4に示すようにプリント基板8の複数の取付部(取付穴)に対応するネジ21、22、23、24間のそれぞれの距離L1〜L5及びプリント基板8の複数の取付部(取付穴)に対応するネジ21、22、23、24とリード線19が固着された接続部の固定部25(裏カバー3との固定部)間のそれぞれの距離L7〜L10が互いに異なるようにしたので互いの距離の相違による共振周波数が異なるため互いに吸収され、プリント基板8は、特定の振動周波数での著しい共振が生じない。
これにより、プリント基板8の振動の振幅が特定の周波数で増幅されないので、センサ11、12へ伝達される振動エネルギーを抑制している。
【0022】
さらに、温度変化防止用のゴムキャップ17に緩衝材の機能を持たせ、プリント基板8とセンサ11、12とで挟むように取付けして、センサ11、12へ伝達される振動エネルギーを抑制している。
【0023】
次に、このように構成されたこの発明の実施の形態の炎検知器の動作について図1により説明する。
火炎により炎が発生すると、その放射光がサファイアガラス16を介して第1及び第2のセンサ11、12に到達する。すると、第1及び第2のセンサ11、12はそれぞれ前記した帯域の波長の赤外線のみに基づいたセンサ出力が生じる。そして、第1のセンサ11のセンサ出力と第2のセンサ12のセンサ出力との比率を演算する等の所定のアルゴリズムを用いて、炎の発生を感知することで火災を検知する。
なお、外部からの衝撃等が加わっても、第1及び第2のセンサ11、12はセンサ出力中の振動ノイズ成分が低減されるため、比率演算等にる炎発生判断を正確に行える。
【0024】
以上のように、本実施の形態によれば、プリント基板8の複数の取付部間及びプリント基板8の複数の取付部とリード線19が固着された接続部間のそれぞれの距離が互いに異なるようにしたので、センサ出力における振動ノイズ成分を低減させることができ、正確に火炎を検出することができる。
従って、本発明による炎感知器を、船等の移動体に取り付けるような場合にも、効果的である。
【0025】
また、センサ11、12は、その側面および底面を覆うゴムキャップを介して、プリント基板8に搭載されるので、さらに、センサ出力における振動ノイズ成分をよりよく低減させることができ、より正確に火炎を検出することができる。
また、ゴムキャップは、従来のようにセンサの上面から被せられていないので、センサのプリント基板との固定端に対してモーメントを大きくせず、固定端の剥離等が発生しない。
【0026】
なお、本実施の形態では、プリント基板8は表カバー2にネジ取付されたものを示したが、プリント基板8は本体ケース1に取付されるのであればよく、裏カバー3にネジ取付されてもよい。また、ネジ取付に限定されず、係合取付であってもよい。
また、本実施の形態では、炎感知器は防水型であるため、リード線19はプリント基板8に直接接続されたが、非防水型ならば、リード線19はプリント基板8に直接接続しなくてもよく、プリント基板8の固定部位とならない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態を示す炎感知器の縦断面図である。
【図2】図1の下面図である。
【図3】図1の上面図である。
【図4】図1のA矢視図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す炎感知器のリード線の固定部の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 本体ケース、2 表カバー、3 裏カバー、8 プリント基板、18 スイッチ部、19 リード線、21、22、23、24 ネジ、25、26 固定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表カバーと裏カバーとで構成された本体ケース内に複数の固定部で固定され、焦電素子を内蔵したセンサが搭載されたプリント基板を有する炎感知器において、
前記プリント基板が固定された固定部間のそれぞれの距離が互いに異なるようにしたことを特徴とする炎感知器。
【請求項2】
前記裏カバーに固定されるとともに前記プリント基板に接続固定された電気部品を備え、
前記固定部は、前記本体ケースに取付固定された前記プリント基板の複数の取付部と、
前記電気部品が接続固定された部分とであることを特徴とする請求項1記載の炎感知器。
【請求項3】
前記電気部品は、前記プリント基板の接続部に接続され、前記裏カバーの通し穴から引出されたリード線であり、
前記リード線は前記プリント基板の前記接続部と前記裏カバーの前記通し穴に樹脂で固着されたことを特徴とする請求項2記載の炎感知器。
【請求項4】
前記センサは、その側面および底面を覆うゴムキャップを介して、前記プリント基板に搭載されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炎感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−134032(P2006−134032A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321856(P2004−321856)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】